蓄冷熱交換器
【課題】蓄冷器の蓄冷材に効率良く冷熱を加えることのできる蓄冷熱交換器を提供する。
【解決手段】蓄冷熱交換器1は、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部9および隣り合う冷媒流通管部9どうしの間に配置されたアウターフィン11を有するエバポレータ2と、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部9および隣り合う蓄冷材封入管部9どうしの間に配置されたアウターフィン11を有する蓄冷器3とを備えている。エバポレータ2および蓄冷器3を、エバポレータ2が風上側に来るように通風方向に並んで配置する。冷媒流通管部9の側面および蓄冷材封入管部9の側面に接する伝熱板31を、エバポレータ2および蓄冷器3に跨って配置する。
【解決手段】蓄冷熱交換器1は、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部9および隣り合う冷媒流通管部9どうしの間に配置されたアウターフィン11を有するエバポレータ2と、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部9および隣り合う蓄冷材封入管部9どうしの間に配置されたアウターフィン11を有する蓄冷器3とを備えている。エバポレータ2および蓄冷器3を、エバポレータ2が風上側に来るように通風方向に並んで配置する。冷媒流通管部9の側面および蓄冷材封入管部9の側面に接する伝熱板31を、エバポレータ2および蓄冷器3に跨って配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0003】
ところで、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決したカーエアコンとして、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ、コンデンサを通過した冷媒を減圧する減圧器、およびケース内の通風路に配置され、かつ減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータと、エバポレータの通風方向下流側においてケース内の通風路に配置され、かつ蓄冷材が封入された蓄冷器とを備えており、エバポレータが、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部および隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンとを有し、蓄冷器が、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部および隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンとを有しているものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載のカーエアコンによれば、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒がエバポレータに入り、エバポレータの冷媒流通管部を流れる間に、隣り合う冷媒流通管部どうしの間の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。このとき、エバポレータを通過した冷却風により蓄冷器の蓄冷材封入管部内に存在する蓄冷材が冷却され、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。また、圧縮機が停止した場合には、蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材の有する冷熱が、エバポレータおよび蓄冷器を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータを通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のカーエアコンの場合、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータの冷媒流通管部を流れる冷媒の有する冷熱は、伝熱性の低い空気を介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられるだけであるので、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が低くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−337537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、蓄冷器の蓄冷材に効率良く冷熱を加えることのできる蓄冷熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが通風方向に並んで配置されており、冷媒流通管部の側面および蓄冷材封入管部の側面に接する伝熱板が、エバポレータおよび蓄冷器に跨って配置されている蓄冷熱交換器。
【0011】
2)冷媒流通管部および蓄冷材封入管部が、幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、冷媒流通管部の並び方向の寸法である管部高さと、蓄冷材封入管部の並び方向の寸法である管部高さとが同一であり、エバポレータにおける冷媒流通管部の並び方向のピッチと、蓄冷器における蓄冷材封入管部の並び方向のピッチとが同一である上記1)記載の蓄冷熱交換器。
【0012】
3)エバポレータが、隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンを有するとともに、蓄冷器が、隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンを有しており、伝熱板が、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとの間に配置されるとともに、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとに接合されている上記1)または2)記載の蓄冷熱交換器。
【0013】
4)エバポレータの蓄冷器側の冷媒流通管部と蓄冷器のエバポレータ側の蓄冷材封入管部との間に排水路が設けられ、伝熱板における排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【0014】
5)エバポレータの冷媒流通管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ冷媒流通管部どうしの間に排水路が設けられ、蓄冷器の蓄冷材封入管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ蓄冷材封入管部どうしの間に排水路が設けられ、伝熱板における各排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【0015】
6)エバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部の側面が平坦面であり、伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部と対応する部分に、ろう付性を向上させる貫通穴が形成され、伝熱板と冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とがろう付されている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【0016】
7)蓄冷器のフィンの表面および伝熱板における蓄冷器の蓄冷材封入管部に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている上記3)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【発明の効果】
【0017】
上記1)〜3)の蓄冷熱交換器によれば、冷媒流通管部の側面および蓄冷材封入管部の側面に接する伝熱板が、エバポレータおよび蓄冷器に跨って配置されているので、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータの冷媒流通管部を流れる冷媒の有する冷熱は、伝熱性の高い伝熱板を通じて蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられる。しかも、エバポレータで発生しかつ伝熱板を伝わって蓄冷器側に流れる凝縮水の有する冷熱が、伝熱板を介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられる。したがって、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。また、エバポレータと蓄冷器とが伝熱板を介して連結一体化されることになるので、車両に搭載した際の振動に対する強度が増大する。
【0018】
上記2)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータおよび蓄冷器として共通の部品を使用することが可能となり、コストが安くなる。特に、従来から存在するエバポレータの部品を使用することが可能であり、この場合のコスト低減効果は優れたものになる。
【0019】
上記3)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータが風上側に配置されると、エバポレータの隣り合う冷媒流通管部間を通過した冷却風の有する冷熱がフィンを介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内に存在する蓄冷材に伝えられる。
【0020】
上記4)および5)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータおよび蓄冷器の表面、ならびに伝熱板の表面に発生した凝縮水は、伝熱板の排水促進用貫通部を通って排水路に入り、排水路内を下方に流れて排水される。したがって、凝縮水の排水性が向上する。
【0021】
上記6)の蓄冷熱交換器によれば、伝熱板とエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部とをろう付する場合、ろう材からなるフィレットが、伝熱板の貫通穴の周縁部と伝熱板との間に確実に形成されるので、伝熱板とエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部とのろう付性が向上する。
【0022】
上記7)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータのフィンの表面および伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部に接合されている部分の表面に親水性処理を施すことを省略することができる。あるいは、エバポレータの熱交換効率を高めるために、エバポレータのフィンの表面および伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部に接合されている部分の表面に、空気との伝熱性を高めるために撥水性処理を施すことができる。これらの場合においても、エバポレータのフィンおよび伝熱板の表面に発生した凝縮水は、伝熱板に沿って通風方向下流側に流れるが、当該凝縮水は蓄冷器のフィンの表面および伝熱板における蓄冷器の蓄冷材封入管部に接合されている部分の表面に留まることになり、凝縮水の飛散が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態1の蓄冷熱交換器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の蓄冷熱交換器の右側方から見た垂直断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図1に示す蓄冷熱交換器のエバポレータおよび蓄冷器の第1扁平中空体と伝熱板とを示す分解斜視図である。
【図5】伝熱板の変形例を示す斜視図である。
【図6】伝熱板の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】伝熱板のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施形態2の蓄冷熱交換器の全体構成を示す斜視図である。
【図9】図8の蓄冷熱交換器の右側方から見た垂直断面図である。
【図10】図9のB−B線拡大断面図である。
【図11】図8に示す蓄冷熱交換器のエバポレータの冷媒流通管および蓄冷器の蓄冷材封入管と伝熱板とを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
以下の説明において、通風方向下流側(図1、図2、図8および図9に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後といい、図1および図8の上下、左右を上下、左右というものとする。また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
実施形態1
この実施形態は、図1〜図4に示すものである。
【0027】
図1および図2は実施形態1の蓄冷熱交換器の全体構成を示し、図3および図4はその要部の構成を示す。
【0028】
図1および図2において、蓄冷熱交換器(1)は、エバポレータ(2)と、蓄冷材(図示略)が封入され、かつエバポレータ(2)の前側(通風方向下流側)に配置された蓄冷器(3)とを備えている。
【0029】
エバポレータ(2)は積層型エバポレータと称されるものであって、熱交換部(4)と、熱交換部(4)の右端に接合された冷媒入出用扁平中空体(5)とを備えている。
【0030】
熱交換部(4)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けて左右方向に積層状に並べられるとともに相互に接合された縦長方形の複数の冷媒流通用扁平中空体(6)からなり、上下方向に間隔をおいて設けられた1対のタンク部(7)(8)と、両タンク部(7)(8)間に左右方向に間隔をおいて設けられ、かつ上下両端部が上下両タンク部(7)(8)に通じさせられた複数の冷媒流通管部(9)と、隣り合う冷媒流通管部(9)間および左端の冷媒流通管部(9)の外側に配置されたアルミニウム製コルゲート状アウターフィン(11)と、左端に配置されたアウターフィン(11)の外側に配置されてアウターフィン(11)および上下両タンク部(7)(8)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(12)とを備えている。熱交換部(4)の下側タンク部(8)に図示しない冷媒入口が形成され、上側タンク部(7)に図示しない冷媒出口が形成されている。
【0031】
以下、冷媒流通用扁平中空体(6)を第1扁平中空体と称し、冷媒入出用扁平中空体(5)を第2扁平中空体と称するものとする。
【0032】
図2〜図4に示すように、第1扁平中空体(6)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の縦長方形状アルミニウム板(13)よりなる。すべてのアルミニウム板(13)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は同一となっている。第1扁平中空体(6)を構成する2枚のアルミニウム板(13)間には、上下方向にのびる前後2つの膨出状冷媒流通管部(9)と、両冷媒流通管部(9)の上下両端部にそれぞれ連なる膨出状タンク形成部(14)とが設けられている。第1扁平中空体(6)の両冷媒流通管部(9)の左右方向の厚みである管部高さは相互に等しくなっている。また、第1扁平中空体(6)の両冷媒流通管部(9)の左右両側面(外面)は平坦面となっている。第1扁平中空体(6)の外面、すなわち左右両側面における前後の冷媒流通管部(9)間の部分、および第1扁平中空体(6)の外面における両冷媒流通管部(9)よりも前後方向外側の部分に、それぞれ上下方向にのびかつ凝縮水を排水する排水溝(15)(16)(排水路)が形成されている。アウターフィン(11)は、第1扁平中空体(6)の前後の冷媒流通管部(9)に共有されている。また、第1扁平中空体(6)の前後の冷媒流通管部(9)に跨るように、アルミニウム製コルゲート状インナーフィン(17)が配置されており、両アルミニウム板(13)にろう付されている。第1扁平中空体(6)におけるタンク形成部(14)の左右方向の高さは、冷媒流通管部(9)の左右方向の高さよりも大きくなっており、隣接する第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)どうしが相互にろう付されている。
【0033】
大部分の第1扁平中空体(6)を構成する左側のアルミニウム板(13)は、上下方向にのびかつ左方に膨出した前後2つの管部形成用膨出部(18)と、両管部形成用膨出部(18)の上下両端に連なり、かつ左方に膨出するとともに管部形成用膨出部(18)よりも膨出高さの高いタンク形成用膨出部(19)とを備えている。各タンク形成用膨出部(19)の頂壁はほぼ全体が打ち抜かれて貫通穴(21)が形成されている。大部分の第1扁平中空体(6)を構成する右側のアルミニウム板(13)は、左側アルミニウム板(13)を左右逆向きにするとともに上下逆向きにしたものであり、同一部分には同一符号を付す。なお、左右両端の第1扁平中空体(6)における左右方向外側のアルミニウム板(13)のタンク形成用膨出部(19)には、貫通穴は形成されていない。そして、2枚のアルミニウム板(13)を、インナーフィン(18)を介して膨出部(18)(19)の開口どうしが対向するように組み合わせてろう付することにより、第1扁平中空体(6)が形成されている。
【0034】
隣接する2つの第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)どうしは、第1扁平中空体(6)のタンク形成用膨出部(19)の貫通穴(21)どうしが通じるように相互にろう付されており、これにより隣り合う第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)どうしが連通状に接合されている。そして、すべての第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)により上下両タンク部(7)(8)が形成されており、下側タンク部(8)の冷媒入口から熱交換部(4)内に流入した冷媒が、すべての第1扁平中空体(6)を通って上側タンク部(7)の冷媒出口から流出するようになされている。なお、左右方向の適当な位置にある第1扁平中空体(6)におけるいずれかのアルミニウム板のタンク形成用膨出部に貫通穴が形成されていないこと、または当該アルミニウム板のタンク形成用膨出部の貫通穴が塞がれることによって、上下両タンク部が左右方向に並んだ複数の区画に仕切られることもある。
【0035】
図1に示すように、第2扁平中空体(5)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の縦長方形状アルミニウム板(22)(23)よりなる。両アルミニウム板(22)(23)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は、第1扁平中空体(6)のアルミニウム板(13)と同一になっている。第2扁平中空体(5)を構成する両アルミニウム板(22)(23)間には、熱交換部(4)の冷媒入口に通じる膨出状冷媒導入部(24)と、熱交換部(4)の冷媒出口に通じる膨出状冷媒排出部(25)とが前者が下方に位置するように上下方向に間隔をおいて設けられている。冷媒導入部(24)に冷媒導入口(26)が形成されているとともに、冷媒排出部(25)に冷媒排出口(27)が形成されている。冷媒導入部(24)および冷媒排出部(25)は、第2扁平中空体(5)を構成する右側のアルミニウム板(22)に冷媒導入部形成用膨出部(28)と冷媒排出部形成用膨出部(29)とを、前者が下方に位置するように上下方向に間隔をおいて形成することによって設けられている。
【0036】
蓄冷器(3)はエバポレータ(2)と同一の構成であり、各部には同一の符号を付す。そして、熱交換部(4)が蓄冷部、第2扁平中空体(5)が蓄冷材充填用中空体、第1扁平中空体(6)が蓄冷材封入用中空体、冷媒流通管部(9)が蓄冷材封入管部、冷媒入口が蓄冷材入口、冷媒出口が空気抜き口、冷媒導入部(24)が蓄冷材導入部、蓄冷材排出部(25)が空気抜き部、冷媒導入口(26)が蓄冷材充填口、冷媒排出口(27)が空気抜き口にそれぞれなっている。蓄冷材充填口(26)および空気抜き口(27)は、蓄冷器(3)内への蓄冷材の充填後にキャップ(30)により塞がれている。
【0037】
エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管部高さと、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管部高さとが同一になっているとともに、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)の左右方向のピッチと、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)の左右方向のピッチとが同一となっている。また、エバポレータ(2)の第1扁平中空体(6)の前側縁部の排水溝(16)と蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の後側縁部の排水溝(16)とが、エバポレータ(2)の最も蓄冷器(3)側の冷媒流通管部(9)と蓄冷器(3)の最もエバポレータ(2)側の蓄冷材封入管部(9)との間の排水溝となっている。
【0038】
蓄冷器(3)内へ封入される蓄冷材としては、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜7℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(3)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管部(9)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。
【0039】
図2〜図4に示すように、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)の左右両側面および蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)の左右両側面の全体を覆うアルミニウム製伝熱板(31)が、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とに跨るように配置されて冷媒流通管部(9)および蓄冷材封入管部(9)にろう付されている。エバポレータ(2)の熱交換部(4)のアウターフィン(11)、および蓄冷器(3)の蓄冷部(31)のアウターフィン(11)は、それぞれ伝熱板(31)にろう付されている。伝熱板(31)におけるエバポレータ(2)および蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の各排水溝(15)(16)と対応する部分に、それぞれ複数の排水促進用貫通部(32)(33)が上下方向に間隔をおいて形成されている。伝熱板(31)におけるエバポレータ(2)および蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の各排水溝(15)と対応する部分に形成された排水促進用貫通部(32)は貫通穴であり、エバポレータ(2)の第1扁平中空体(6)の後側縁部の排水溝(16)および蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の前側縁部の排水溝(16)に対応する部分に形成された排水促進用貫通部(33)は伝熱板(31)の後側縁部および前側縁部に形成された切り欠きである。また、伝熱板(31)の前後方向中央部の排水促進用貫通部(32)は、エバポレータ(2)の第1扁平中空体(6)の前側縁部の排水溝(16)と蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の後側縁部の排水溝(16)とに跨って形成されている。
【0040】
ここで、エバポレータ(2)および蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面と、伝熱板(31)全体の表面とに親水性処理が施されていてもよい。また、蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面および伝熱板(31)における蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されていてもよい。蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面および伝熱板(31)における蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている場合、エバポレータ(2)の熱交換効率を高めるために、エバポレータ(2)のアウターフィン(11)の表面および伝熱板(31)におけるエバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)に接合されている部分の表面に、空気との伝熱性を高めるために撥水性処理が施されていてもよい。
【0041】
上述した蓄冷熱交換器(1)のエバポレータ(2)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒導入口(26)から第2扁平中空体(5)の冷媒導入部(24)内に流入し、さらに冷媒入口を通って熱交換部(4)の下側タンク部(8)内に入る。下側タンク部(8)内に入った冷媒は、すべての第1扁平中空体(6)の冷媒流通管部(9)を通って上側タンク部(7)内に入り、冷媒出口を通って第2扁平中空体(5)の冷媒排出部(25)内に入り、冷媒排出口(27)から排出される。そして、気液混相の2相冷媒は、第1扁平中空体(6)の冷媒流通管部(9)を流れる間に、通風間隙を図1および図2に矢印Xで示す方向に流れる空気と熱交換をし、気相となって流出する。
【0042】
このとき、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)内を流れる冷媒が有する冷熱が、伝熱板(31)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)内の蓄冷材が伝えられる。しかも、エバポレータ(2)の隣り合う冷媒流通管部(9)間を通過した冷却風の有する冷熱がアウターフィン(11)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)内に存在する蓄冷材に伝えられるとともに、エバポレータ(2)で発生しかつ伝熱板(31)を伝わって蓄冷器(3)側に流れる凝縮水の有する冷熱が、伝熱板(31)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)内の蓄冷材が伝えられる。その結果、蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0043】
エバポレータ(2)および蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面、ならびに伝熱板(31)の表面に発生した凝縮水は、伝熱板(31)に沿って通風方向下流側に流れ、伝熱板(31)の排水促進用貫通部(32)(33)を通って排水溝(15)(16)内に入り、排水溝(15)(16)内を下方に流れて排水される。したがって、凝縮水の排水性が向上する。
【0044】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷器(3)内の蓄冷材の有する冷熱が、アウターフィン(11)を介してエバポレータ(2)および蓄冷器(3)を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータ(2)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器(3)により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0045】
図5〜図7は伝熱板(31)の変形例を示す。
【0046】
図5に示す伝熱板(35)におけるエバポレータ(2)の両冷媒流通管部(9)および蓄冷器(3)の両蓄冷材封入管部(9)と対応する部分に、それぞれろう付性を向上させる複数の貫通穴(36)が相互に間隔をおいて形成されている。
【0047】
この伝熱板(35)とエバポレータ(2)の両冷媒流通管部(9)および蓄冷器(3)の両蓄冷材封入管部(9)とがろう付された場合、伝熱板(35)における貫通穴(36)の周縁部と、冷媒流通管部(9)および蓄冷材封入管部(9)の外面との間にフィレットが形成され、伝熱板(35)と冷媒流通管部(9)および蓄冷材封入管部(9)とのろう付が確実に行われる。
【0048】
図6に示す伝熱板(37)には、図4に示す伝熱板(31)と同様の排水促進用貫通部(32)(33)の他に、図5に示す伝熱板(35)と同様のろう付性を向上させる複数の貫通穴(36)が形成されている。
【0049】
図7に示す伝熱板(38)には、図6に示す伝熱板(37)におけるエバポレータ(2)の隣り合う冷媒流通管部(9)間および蓄冷器(3)の隣り合う蓄冷材封入管部(9)間の全排水促進用貫通部(32)のうちの一部の排水促進用貫通部(32)と、伝熱板(37)におけるエバポレータ(2)の前側の冷媒流通管部(9)および蓄冷器(3)の後側の蓄冷材封入管部(9)と対応する部分の全貫通穴(36)のうちの一部の貫通穴(36)とを通じさせる貫通状の連通部(39)が形成されている。
【0050】
実施形態2
この実施形態は図8〜図11に示すものである。
【0051】
図8および図9は実施形態2の蓄冷熱交換器の全体構成を示し、図10および図11はその要部の構成を示す。
【0052】
図8および図9において、蓄冷熱交換器(40)は、エバポレータ(41)と、蓄冷材(図示略)が封入され、かつエバポレータ(41)の前側(通風方向下流側)に配置された蓄冷器(42)とを備えている。
【0053】
エバポレータ(41)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(43)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(44)と、両ヘッダタンク(43)(44)間に設けられた熱交換コア部(45)とを備えている。
【0054】
第1ヘッダタンク(43)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(46)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(46)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(47)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(46)の右端部に冷媒入口(48)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(47)の右端部に冷媒出口(49)が設けられている。第2ヘッダタンク(44)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(51)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(51)に一体化された第2中間ヘッダ部(52)とを備えている。第2ヘッダタンク(44)の右端部には、内部が第1中間ヘッダ部(51)内および第2中間ヘッダ部(52)内を通じさせる連通路となった連通部材(53)が接合されている。
【0055】
熱交換コア部(45)は、左右方向に間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管(54)(冷媒流通管部)からなる冷媒流通管群(55)が、前後方向に並んで複数列、ここでは2列配置され、各冷媒流通管群(55)の隣接する冷媒流通管(54)どうしの間の通風間隙、および各冷媒流通管群(55)の左右両端の冷媒流通管(54)の外側にそれぞれコルゲート状アウターフィン(56)が配置されて冷媒流通管(54)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(56)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(57)が配置されてアウターフィン(56)にろう付されることにより構成されている。
【0056】
前側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)の上下両端は冷媒入口ヘッダ部(46)および第1中間ヘッダ部(51)に接続され、後側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)の上下両端部は冷媒出口ヘッダ部(47)および第2中間ヘッダ部(52)に接続されている。そして、前後に並んだ冷媒流通管(54)間に、排水間隙(58)(排水路)が形成されている。冷媒流通管(54)はアルミニウム押出形材で形成されたベア材からなり、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに幅方向に並んだ複数の冷媒通路を有する扁平状である。前後の冷媒流通管群(55)を構成する冷媒流通管(54)の左右方向の厚みである管高さは相互に等しくなっている。また、前後の冷媒流通管群(55)を構成する冷媒流通管(54)の左右両側面(外面)は平坦面となっている。
【0057】
アウターフィン(56)は、前後の冷媒流通管群(55)を構成する前後両冷媒流通管(54)に共有されており、その前後方向の幅は前側冷媒流通管(54)の前側縁と後側冷媒流通管(54)の後側縁との間隔をほぼ等しくなっている。
【0058】
蓄冷器(42)はエバポレータ(41)と同一の構成であり、各部には同一の符号を付す。そして、熱交換コア部(45)が蓄冷コア部、入口ヘッダ部(46)が蓄冷材導入ヘッダ部、出口ヘッダ部(47)が空気抜きヘッダ部、冷媒入口(48)が蓄冷材入口、冷媒出口(49)が空気抜き口、冷媒流通管(54)が蓄冷材封入管(蓄冷材封入管部)にそれぞれなっている。蓄冷材入口(48)および空気抜き口(49)は、蓄冷器(42)内への蓄冷材の充填後にキャップ(59)により塞がれている。
【0059】
エバポレータ(41)の冷媒流通管(54)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管高さと、蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管高さとが同一になっているとともに、エバポレータ(41)における冷媒流通管(54)の左右方向のピッチと、蓄冷器(42)における蓄冷材封入管(54)の左右方向のピッチとが同一となっている。
【0060】
蓄冷器(42)内へ封入される蓄冷材としては、実施形態1の場合と同様に、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜7℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(42)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管(54)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。
【0061】
エバポレータ(41)の前側の冷媒流通管(54)と、蓄冷器(42)の後側の蓄冷材封入管との間には、上下方向にのびかつ凝縮水を排水する排水間隙(61)(排水路)が形成されている。
【0062】
図9〜図11に示すように、エバポレータ(41)の冷媒流通管(54)の左右両側面および蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)の左右両側面の全体を覆うアルミニウム製伝熱板(62)が、エバポレータ(41)と蓄冷器(42)とに跨るように配置されて冷媒流通管(54)および蓄冷材封入管(54)にろう付されている。エバポレータ(41)のアウターフィン(56)、および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)は、それぞれ伝熱板(62)にろう付されている。伝熱板(62)におけるエバポレータ(41)および蓄冷器(42)の各排水間隙(58)と対応する部分、ならびにエバポレータ(41)の前側の冷媒流通管(54)と蓄冷器(42)の後側の蓄冷材封入管(54)との間の排水間隙(61)と対応する部分に、それぞれ複数の排水促進用貫通穴(63)(排水促進用貫通部)が上下方向に間隔をおいて形成されている。
【0063】
また、エバポレータ(41)における後側の冷媒流通管(54)の後側縁部と伝熱板(62)との間の部分、および蓄冷器(42)における前側の蓄冷材封入管(54)の前側縁部と伝熱板(62)との間の部分に、排水溝(65)が形成されている。そして、伝熱板(62)の前後両側縁部に、複数の排水促進用切り欠き(64)(排水促進用貫通部)が、排水溝(65)と対応するように上下方向に間隔をおいて形成されている。
【0064】
ここで、エバポレータ(41)および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面と、伝熱板(62)全体の表面とに親水性処理が施されていてもよい。また、蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面および伝熱板(62)における蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されていてもよい。蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面および伝熱板(62)における蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている場合、エバポレータ(41)の熱交換効率を高めるために、エバポレータ(41)のアウターフィン(56)の表面および伝熱板(62)におけるエバポレータ(41)の冷媒流通管(54)に接合されている部分の表面に、空気との伝熱性を高めるために撥水性処理が施されていてもよい。
【0065】
上述した蓄冷熱交換器(40)のエバポレータ(41)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(48)を通って第1ヘッダタンク(43)の冷媒入口ヘッダ部(46)内に入る。冷媒入口ヘッダ部(46)内に入った冷媒は左方に流れ、分流して前側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内に流入する。冷媒流通管(54)内に流入した冷媒は、冷媒流通管(54)内を下方に流れて第2ヘッダタンク(44)の第1中間ヘッダ部(51)内に入る。第1中間ヘッダ部(51)内に入った冷媒は右方に流れ、連通部材(53)内の連通路を通って第2中間ヘッダ部(52)内に入る。
【0066】
第2中間ヘッダ部(52)内に入った冷媒は、分流して後側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内に流入する。冷媒流通管(54)内に流入した冷媒は、冷媒流通管(54)内を上方に流れて第1ヘッダタンク(43)の冷媒出口ヘッダ部(47)内に入る。冷媒出口ヘッダ部(47)内に入った冷媒は、冷媒出口ヘッダ部(47)内を右方に流れ、冷媒出口(49)を通って流出する。
【0067】
そして、冷媒が前側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内、および後側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内を流れる間に、隣り合う冷媒流通管(54)どうしの間の通風間隙を通過する空気(図8および図9矢印X参照)と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0068】
このとき、エバポレータ(41)の冷媒流通管(54)内を流れる冷媒が有する冷熱が、伝熱板(62)を介して蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)内の蓄冷材が伝えられる。しかも、エバポレータ(41)の隣り合う冷媒流通管(54)間を通過した冷却風の有する冷熱がアウターフィン(56)を介して蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)内に存在する蓄冷材に伝えられるとともに、エバポレータ(41)で発生しかつ伝熱板(62)を伝わって蓄冷器(42)側に流れる凝縮水の有する冷熱が、伝熱板(62)を介して蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)内の蓄冷材が伝えられる。その結果、蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0069】
エバポレータ(41)および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面、ならびに伝熱板(62)の表面に発生した凝縮水は、伝熱板(62)に沿って通風方向下流側に流れ、伝熱板(62)の排水促進用貫通穴(63)を通って排水間隙(58)(61)内に入り、排水間隙(58)(61)内を下方に流れて排水される。また、エバポレータ(41)および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面、ならびに伝熱板(62)の表面に発生した凝縮水は、排水促進用切り欠き(64)を通って排水溝(65)内に入り、排水溝(65)内を下方に流れて排水される。したがって、凝縮水の排水性が向上する。
【0070】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷器(42)内の蓄冷材の有する冷熱が、アウターフィン(56)(44)を介してエバポレータ(41)および蓄冷器(42)を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータ(41)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器(42)により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0071】
なお、実施形態2の蓄冷熱交換器においても、伝熱板(62)の代わりに、図5〜図7に示す伝熱板(35)(37)(38)と同様な構成の伝熱板を用いることが可能である。
【0072】
上述した2つの実施形態においては、エバポレータ(2)(41)のアウターフィン(11)(56)と、蓄冷器(3)(42)のアウターフィン(11)(56)とは別々に形成されているが、これに限定されるものではなく、エバポレータ(2)(41)および蓄冷器(3)(42)に1つのアウターフィンが共有されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明による熱交換器は、カーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
(1)(40):蓄冷熱交換器
(2)(41):エバポレータ
(3)(42):蓄冷器
(9):冷媒流通管部(蓄冷材封入管部)
(11)(56):アウターフィン
(15)(16):排水溝(排水路)
(31)(35)(37)(38)(62):伝熱板
(32)(33):排水促進用貫通部
(36):貫通穴
(54):冷媒流通管(蓄冷材封入管)
(58)(61):排水間隙(排水路)
(63):排水促進用貫通穴(排水促進用貫通部)
(64):排水促進用切り欠き(排水促進用貫通部)
(65):排水溝(排水路)
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0003】
ところで、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決したカーエアコンとして、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ、コンデンサを通過した冷媒を減圧する減圧器、およびケース内の通風路に配置され、かつ減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータと、エバポレータの通風方向下流側においてケース内の通風路に配置され、かつ蓄冷材が封入された蓄冷器とを備えており、エバポレータが、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部および隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンとを有し、蓄冷器が、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部および隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンとを有しているものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載のカーエアコンによれば、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒がエバポレータに入り、エバポレータの冷媒流通管部を流れる間に、隣り合う冷媒流通管部どうしの間の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。このとき、エバポレータを通過した冷却風により蓄冷器の蓄冷材封入管部内に存在する蓄冷材が冷却され、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。また、圧縮機が停止した場合には、蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材の有する冷熱が、エバポレータおよび蓄冷器を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータを通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のカーエアコンの場合、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータの冷媒流通管部を流れる冷媒の有する冷熱は、伝熱性の低い空気を介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられるだけであるので、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が低くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−337537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、蓄冷器の蓄冷材に効率良く冷熱を加えることのできる蓄冷熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが通風方向に並んで配置されており、冷媒流通管部の側面および蓄冷材封入管部の側面に接する伝熱板が、エバポレータおよび蓄冷器に跨って配置されている蓄冷熱交換器。
【0011】
2)冷媒流通管部および蓄冷材封入管部が、幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、冷媒流通管部の並び方向の寸法である管部高さと、蓄冷材封入管部の並び方向の寸法である管部高さとが同一であり、エバポレータにおける冷媒流通管部の並び方向のピッチと、蓄冷器における蓄冷材封入管部の並び方向のピッチとが同一である上記1)記載の蓄冷熱交換器。
【0012】
3)エバポレータが、隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンを有するとともに、蓄冷器が、隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンを有しており、伝熱板が、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとの間に配置されるとともに、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとに接合されている上記1)または2)記載の蓄冷熱交換器。
【0013】
4)エバポレータの蓄冷器側の冷媒流通管部と蓄冷器のエバポレータ側の蓄冷材封入管部との間に排水路が設けられ、伝熱板における排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【0014】
5)エバポレータの冷媒流通管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ冷媒流通管部どうしの間に排水路が設けられ、蓄冷器の蓄冷材封入管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ蓄冷材封入管部どうしの間に排水路が設けられ、伝熱板における各排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【0015】
6)エバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部の側面が平坦面であり、伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部と対応する部分に、ろう付性を向上させる貫通穴が形成され、伝熱板と冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とがろう付されている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【0016】
7)蓄冷器のフィンの表面および伝熱板における蓄冷器の蓄冷材封入管部に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている上記3)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【発明の効果】
【0017】
上記1)〜3)の蓄冷熱交換器によれば、冷媒流通管部の側面および蓄冷材封入管部の側面に接する伝熱板が、エバポレータおよび蓄冷器に跨って配置されているので、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータの冷媒流通管部を流れる冷媒の有する冷熱は、伝熱性の高い伝熱板を通じて蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられる。しかも、エバポレータで発生しかつ伝熱板を伝わって蓄冷器側に流れる凝縮水の有する冷熱が、伝熱板を介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられる。したがって、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。また、エバポレータと蓄冷器とが伝熱板を介して連結一体化されることになるので、車両に搭載した際の振動に対する強度が増大する。
【0018】
上記2)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータおよび蓄冷器として共通の部品を使用することが可能となり、コストが安くなる。特に、従来から存在するエバポレータの部品を使用することが可能であり、この場合のコスト低減効果は優れたものになる。
【0019】
上記3)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータが風上側に配置されると、エバポレータの隣り合う冷媒流通管部間を通過した冷却風の有する冷熱がフィンを介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内に存在する蓄冷材に伝えられる。
【0020】
上記4)および5)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータおよび蓄冷器の表面、ならびに伝熱板の表面に発生した凝縮水は、伝熱板の排水促進用貫通部を通って排水路に入り、排水路内を下方に流れて排水される。したがって、凝縮水の排水性が向上する。
【0021】
上記6)の蓄冷熱交換器によれば、伝熱板とエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部とをろう付する場合、ろう材からなるフィレットが、伝熱板の貫通穴の周縁部と伝熱板との間に確実に形成されるので、伝熱板とエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部とのろう付性が向上する。
【0022】
上記7)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータのフィンの表面および伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部に接合されている部分の表面に親水性処理を施すことを省略することができる。あるいは、エバポレータの熱交換効率を高めるために、エバポレータのフィンの表面および伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部に接合されている部分の表面に、空気との伝熱性を高めるために撥水性処理を施すことができる。これらの場合においても、エバポレータのフィンおよび伝熱板の表面に発生した凝縮水は、伝熱板に沿って通風方向下流側に流れるが、当該凝縮水は蓄冷器のフィンの表面および伝熱板における蓄冷器の蓄冷材封入管部に接合されている部分の表面に留まることになり、凝縮水の飛散が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態1の蓄冷熱交換器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の蓄冷熱交換器の右側方から見た垂直断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図1に示す蓄冷熱交換器のエバポレータおよび蓄冷器の第1扁平中空体と伝熱板とを示す分解斜視図である。
【図5】伝熱板の変形例を示す斜視図である。
【図6】伝熱板の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】伝熱板のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施形態2の蓄冷熱交換器の全体構成を示す斜視図である。
【図9】図8の蓄冷熱交換器の右側方から見た垂直断面図である。
【図10】図9のB−B線拡大断面図である。
【図11】図8に示す蓄冷熱交換器のエバポレータの冷媒流通管および蓄冷器の蓄冷材封入管と伝熱板とを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
以下の説明において、通風方向下流側(図1、図2、図8および図9に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後といい、図1および図8の上下、左右を上下、左右というものとする。また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
実施形態1
この実施形態は、図1〜図4に示すものである。
【0027】
図1および図2は実施形態1の蓄冷熱交換器の全体構成を示し、図3および図4はその要部の構成を示す。
【0028】
図1および図2において、蓄冷熱交換器(1)は、エバポレータ(2)と、蓄冷材(図示略)が封入され、かつエバポレータ(2)の前側(通風方向下流側)に配置された蓄冷器(3)とを備えている。
【0029】
エバポレータ(2)は積層型エバポレータと称されるものであって、熱交換部(4)と、熱交換部(4)の右端に接合された冷媒入出用扁平中空体(5)とを備えている。
【0030】
熱交換部(4)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けて左右方向に積層状に並べられるとともに相互に接合された縦長方形の複数の冷媒流通用扁平中空体(6)からなり、上下方向に間隔をおいて設けられた1対のタンク部(7)(8)と、両タンク部(7)(8)間に左右方向に間隔をおいて設けられ、かつ上下両端部が上下両タンク部(7)(8)に通じさせられた複数の冷媒流通管部(9)と、隣り合う冷媒流通管部(9)間および左端の冷媒流通管部(9)の外側に配置されたアルミニウム製コルゲート状アウターフィン(11)と、左端に配置されたアウターフィン(11)の外側に配置されてアウターフィン(11)および上下両タンク部(7)(8)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(12)とを備えている。熱交換部(4)の下側タンク部(8)に図示しない冷媒入口が形成され、上側タンク部(7)に図示しない冷媒出口が形成されている。
【0031】
以下、冷媒流通用扁平中空体(6)を第1扁平中空体と称し、冷媒入出用扁平中空体(5)を第2扁平中空体と称するものとする。
【0032】
図2〜図4に示すように、第1扁平中空体(6)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の縦長方形状アルミニウム板(13)よりなる。すべてのアルミニウム板(13)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は同一となっている。第1扁平中空体(6)を構成する2枚のアルミニウム板(13)間には、上下方向にのびる前後2つの膨出状冷媒流通管部(9)と、両冷媒流通管部(9)の上下両端部にそれぞれ連なる膨出状タンク形成部(14)とが設けられている。第1扁平中空体(6)の両冷媒流通管部(9)の左右方向の厚みである管部高さは相互に等しくなっている。また、第1扁平中空体(6)の両冷媒流通管部(9)の左右両側面(外面)は平坦面となっている。第1扁平中空体(6)の外面、すなわち左右両側面における前後の冷媒流通管部(9)間の部分、および第1扁平中空体(6)の外面における両冷媒流通管部(9)よりも前後方向外側の部分に、それぞれ上下方向にのびかつ凝縮水を排水する排水溝(15)(16)(排水路)が形成されている。アウターフィン(11)は、第1扁平中空体(6)の前後の冷媒流通管部(9)に共有されている。また、第1扁平中空体(6)の前後の冷媒流通管部(9)に跨るように、アルミニウム製コルゲート状インナーフィン(17)が配置されており、両アルミニウム板(13)にろう付されている。第1扁平中空体(6)におけるタンク形成部(14)の左右方向の高さは、冷媒流通管部(9)の左右方向の高さよりも大きくなっており、隣接する第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)どうしが相互にろう付されている。
【0033】
大部分の第1扁平中空体(6)を構成する左側のアルミニウム板(13)は、上下方向にのびかつ左方に膨出した前後2つの管部形成用膨出部(18)と、両管部形成用膨出部(18)の上下両端に連なり、かつ左方に膨出するとともに管部形成用膨出部(18)よりも膨出高さの高いタンク形成用膨出部(19)とを備えている。各タンク形成用膨出部(19)の頂壁はほぼ全体が打ち抜かれて貫通穴(21)が形成されている。大部分の第1扁平中空体(6)を構成する右側のアルミニウム板(13)は、左側アルミニウム板(13)を左右逆向きにするとともに上下逆向きにしたものであり、同一部分には同一符号を付す。なお、左右両端の第1扁平中空体(6)における左右方向外側のアルミニウム板(13)のタンク形成用膨出部(19)には、貫通穴は形成されていない。そして、2枚のアルミニウム板(13)を、インナーフィン(18)を介して膨出部(18)(19)の開口どうしが対向するように組み合わせてろう付することにより、第1扁平中空体(6)が形成されている。
【0034】
隣接する2つの第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)どうしは、第1扁平中空体(6)のタンク形成用膨出部(19)の貫通穴(21)どうしが通じるように相互にろう付されており、これにより隣り合う第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)どうしが連通状に接合されている。そして、すべての第1扁平中空体(6)のタンク形成部(14)により上下両タンク部(7)(8)が形成されており、下側タンク部(8)の冷媒入口から熱交換部(4)内に流入した冷媒が、すべての第1扁平中空体(6)を通って上側タンク部(7)の冷媒出口から流出するようになされている。なお、左右方向の適当な位置にある第1扁平中空体(6)におけるいずれかのアルミニウム板のタンク形成用膨出部に貫通穴が形成されていないこと、または当該アルミニウム板のタンク形成用膨出部の貫通穴が塞がれることによって、上下両タンク部が左右方向に並んだ複数の区画に仕切られることもある。
【0035】
図1に示すように、第2扁平中空体(5)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の縦長方形状アルミニウム板(22)(23)よりなる。両アルミニウム板(22)(23)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は、第1扁平中空体(6)のアルミニウム板(13)と同一になっている。第2扁平中空体(5)を構成する両アルミニウム板(22)(23)間には、熱交換部(4)の冷媒入口に通じる膨出状冷媒導入部(24)と、熱交換部(4)の冷媒出口に通じる膨出状冷媒排出部(25)とが前者が下方に位置するように上下方向に間隔をおいて設けられている。冷媒導入部(24)に冷媒導入口(26)が形成されているとともに、冷媒排出部(25)に冷媒排出口(27)が形成されている。冷媒導入部(24)および冷媒排出部(25)は、第2扁平中空体(5)を構成する右側のアルミニウム板(22)に冷媒導入部形成用膨出部(28)と冷媒排出部形成用膨出部(29)とを、前者が下方に位置するように上下方向に間隔をおいて形成することによって設けられている。
【0036】
蓄冷器(3)はエバポレータ(2)と同一の構成であり、各部には同一の符号を付す。そして、熱交換部(4)が蓄冷部、第2扁平中空体(5)が蓄冷材充填用中空体、第1扁平中空体(6)が蓄冷材封入用中空体、冷媒流通管部(9)が蓄冷材封入管部、冷媒入口が蓄冷材入口、冷媒出口が空気抜き口、冷媒導入部(24)が蓄冷材導入部、蓄冷材排出部(25)が空気抜き部、冷媒導入口(26)が蓄冷材充填口、冷媒排出口(27)が空気抜き口にそれぞれなっている。蓄冷材充填口(26)および空気抜き口(27)は、蓄冷器(3)内への蓄冷材の充填後にキャップ(30)により塞がれている。
【0037】
エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管部高さと、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管部高さとが同一になっているとともに、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)の左右方向のピッチと、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)の左右方向のピッチとが同一となっている。また、エバポレータ(2)の第1扁平中空体(6)の前側縁部の排水溝(16)と蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の後側縁部の排水溝(16)とが、エバポレータ(2)の最も蓄冷器(3)側の冷媒流通管部(9)と蓄冷器(3)の最もエバポレータ(2)側の蓄冷材封入管部(9)との間の排水溝となっている。
【0038】
蓄冷器(3)内へ封入される蓄冷材としては、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜7℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(3)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管部(9)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。
【0039】
図2〜図4に示すように、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)の左右両側面および蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)の左右両側面の全体を覆うアルミニウム製伝熱板(31)が、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とに跨るように配置されて冷媒流通管部(9)および蓄冷材封入管部(9)にろう付されている。エバポレータ(2)の熱交換部(4)のアウターフィン(11)、および蓄冷器(3)の蓄冷部(31)のアウターフィン(11)は、それぞれ伝熱板(31)にろう付されている。伝熱板(31)におけるエバポレータ(2)および蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の各排水溝(15)(16)と対応する部分に、それぞれ複数の排水促進用貫通部(32)(33)が上下方向に間隔をおいて形成されている。伝熱板(31)におけるエバポレータ(2)および蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の各排水溝(15)と対応する部分に形成された排水促進用貫通部(32)は貫通穴であり、エバポレータ(2)の第1扁平中空体(6)の後側縁部の排水溝(16)および蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の前側縁部の排水溝(16)に対応する部分に形成された排水促進用貫通部(33)は伝熱板(31)の後側縁部および前側縁部に形成された切り欠きである。また、伝熱板(31)の前後方向中央部の排水促進用貫通部(32)は、エバポレータ(2)の第1扁平中空体(6)の前側縁部の排水溝(16)と蓄冷器(3)の第1扁平中空体(6)の後側縁部の排水溝(16)とに跨って形成されている。
【0040】
ここで、エバポレータ(2)および蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面と、伝熱板(31)全体の表面とに親水性処理が施されていてもよい。また、蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面および伝熱板(31)における蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されていてもよい。蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面および伝熱板(31)における蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている場合、エバポレータ(2)の熱交換効率を高めるために、エバポレータ(2)のアウターフィン(11)の表面および伝熱板(31)におけるエバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)に接合されている部分の表面に、空気との伝熱性を高めるために撥水性処理が施されていてもよい。
【0041】
上述した蓄冷熱交換器(1)のエバポレータ(2)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒導入口(26)から第2扁平中空体(5)の冷媒導入部(24)内に流入し、さらに冷媒入口を通って熱交換部(4)の下側タンク部(8)内に入る。下側タンク部(8)内に入った冷媒は、すべての第1扁平中空体(6)の冷媒流通管部(9)を通って上側タンク部(7)内に入り、冷媒出口を通って第2扁平中空体(5)の冷媒排出部(25)内に入り、冷媒排出口(27)から排出される。そして、気液混相の2相冷媒は、第1扁平中空体(6)の冷媒流通管部(9)を流れる間に、通風間隙を図1および図2に矢印Xで示す方向に流れる空気と熱交換をし、気相となって流出する。
【0042】
このとき、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(9)内を流れる冷媒が有する冷熱が、伝熱板(31)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)内の蓄冷材が伝えられる。しかも、エバポレータ(2)の隣り合う冷媒流通管部(9)間を通過した冷却風の有する冷熱がアウターフィン(11)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)内に存在する蓄冷材に伝えられるとともに、エバポレータ(2)で発生しかつ伝熱板(31)を伝わって蓄冷器(3)側に流れる凝縮水の有する冷熱が、伝熱板(31)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(9)内の蓄冷材が伝えられる。その結果、蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0043】
エバポレータ(2)および蓄冷器(3)のアウターフィン(11)の表面、ならびに伝熱板(31)の表面に発生した凝縮水は、伝熱板(31)に沿って通風方向下流側に流れ、伝熱板(31)の排水促進用貫通部(32)(33)を通って排水溝(15)(16)内に入り、排水溝(15)(16)内を下方に流れて排水される。したがって、凝縮水の排水性が向上する。
【0044】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷器(3)内の蓄冷材の有する冷熱が、アウターフィン(11)を介してエバポレータ(2)および蓄冷器(3)を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータ(2)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器(3)により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0045】
図5〜図7は伝熱板(31)の変形例を示す。
【0046】
図5に示す伝熱板(35)におけるエバポレータ(2)の両冷媒流通管部(9)および蓄冷器(3)の両蓄冷材封入管部(9)と対応する部分に、それぞれろう付性を向上させる複数の貫通穴(36)が相互に間隔をおいて形成されている。
【0047】
この伝熱板(35)とエバポレータ(2)の両冷媒流通管部(9)および蓄冷器(3)の両蓄冷材封入管部(9)とがろう付された場合、伝熱板(35)における貫通穴(36)の周縁部と、冷媒流通管部(9)および蓄冷材封入管部(9)の外面との間にフィレットが形成され、伝熱板(35)と冷媒流通管部(9)および蓄冷材封入管部(9)とのろう付が確実に行われる。
【0048】
図6に示す伝熱板(37)には、図4に示す伝熱板(31)と同様の排水促進用貫通部(32)(33)の他に、図5に示す伝熱板(35)と同様のろう付性を向上させる複数の貫通穴(36)が形成されている。
【0049】
図7に示す伝熱板(38)には、図6に示す伝熱板(37)におけるエバポレータ(2)の隣り合う冷媒流通管部(9)間および蓄冷器(3)の隣り合う蓄冷材封入管部(9)間の全排水促進用貫通部(32)のうちの一部の排水促進用貫通部(32)と、伝熱板(37)におけるエバポレータ(2)の前側の冷媒流通管部(9)および蓄冷器(3)の後側の蓄冷材封入管部(9)と対応する部分の全貫通穴(36)のうちの一部の貫通穴(36)とを通じさせる貫通状の連通部(39)が形成されている。
【0050】
実施形態2
この実施形態は図8〜図11に示すものである。
【0051】
図8および図9は実施形態2の蓄冷熱交換器の全体構成を示し、図10および図11はその要部の構成を示す。
【0052】
図8および図9において、蓄冷熱交換器(40)は、エバポレータ(41)と、蓄冷材(図示略)が封入され、かつエバポレータ(41)の前側(通風方向下流側)に配置された蓄冷器(42)とを備えている。
【0053】
エバポレータ(41)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(43)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(44)と、両ヘッダタンク(43)(44)間に設けられた熱交換コア部(45)とを備えている。
【0054】
第1ヘッダタンク(43)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(46)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(46)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(47)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(46)の右端部に冷媒入口(48)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(47)の右端部に冷媒出口(49)が設けられている。第2ヘッダタンク(44)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(51)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(51)に一体化された第2中間ヘッダ部(52)とを備えている。第2ヘッダタンク(44)の右端部には、内部が第1中間ヘッダ部(51)内および第2中間ヘッダ部(52)内を通じさせる連通路となった連通部材(53)が接合されている。
【0055】
熱交換コア部(45)は、左右方向に間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管(54)(冷媒流通管部)からなる冷媒流通管群(55)が、前後方向に並んで複数列、ここでは2列配置され、各冷媒流通管群(55)の隣接する冷媒流通管(54)どうしの間の通風間隙、および各冷媒流通管群(55)の左右両端の冷媒流通管(54)の外側にそれぞれコルゲート状アウターフィン(56)が配置されて冷媒流通管(54)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(56)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(57)が配置されてアウターフィン(56)にろう付されることにより構成されている。
【0056】
前側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)の上下両端は冷媒入口ヘッダ部(46)および第1中間ヘッダ部(51)に接続され、後側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)の上下両端部は冷媒出口ヘッダ部(47)および第2中間ヘッダ部(52)に接続されている。そして、前後に並んだ冷媒流通管(54)間に、排水間隙(58)(排水路)が形成されている。冷媒流通管(54)はアルミニウム押出形材で形成されたベア材からなり、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに幅方向に並んだ複数の冷媒通路を有する扁平状である。前後の冷媒流通管群(55)を構成する冷媒流通管(54)の左右方向の厚みである管高さは相互に等しくなっている。また、前後の冷媒流通管群(55)を構成する冷媒流通管(54)の左右両側面(外面)は平坦面となっている。
【0057】
アウターフィン(56)は、前後の冷媒流通管群(55)を構成する前後両冷媒流通管(54)に共有されており、その前後方向の幅は前側冷媒流通管(54)の前側縁と後側冷媒流通管(54)の後側縁との間隔をほぼ等しくなっている。
【0058】
蓄冷器(42)はエバポレータ(41)と同一の構成であり、各部には同一の符号を付す。そして、熱交換コア部(45)が蓄冷コア部、入口ヘッダ部(46)が蓄冷材導入ヘッダ部、出口ヘッダ部(47)が空気抜きヘッダ部、冷媒入口(48)が蓄冷材入口、冷媒出口(49)が空気抜き口、冷媒流通管(54)が蓄冷材封入管(蓄冷材封入管部)にそれぞれなっている。蓄冷材入口(48)および空気抜き口(49)は、蓄冷器(42)内への蓄冷材の充填後にキャップ(59)により塞がれている。
【0059】
エバポレータ(41)の冷媒流通管(54)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管高さと、蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)の左右方向の厚さ(並び方向の寸法)である管高さとが同一になっているとともに、エバポレータ(41)における冷媒流通管(54)の左右方向のピッチと、蓄冷器(42)における蓄冷材封入管(54)の左右方向のピッチとが同一となっている。
【0060】
蓄冷器(42)内へ封入される蓄冷材としては、実施形態1の場合と同様に、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜7℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(42)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管(54)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。
【0061】
エバポレータ(41)の前側の冷媒流通管(54)と、蓄冷器(42)の後側の蓄冷材封入管との間には、上下方向にのびかつ凝縮水を排水する排水間隙(61)(排水路)が形成されている。
【0062】
図9〜図11に示すように、エバポレータ(41)の冷媒流通管(54)の左右両側面および蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)の左右両側面の全体を覆うアルミニウム製伝熱板(62)が、エバポレータ(41)と蓄冷器(42)とに跨るように配置されて冷媒流通管(54)および蓄冷材封入管(54)にろう付されている。エバポレータ(41)のアウターフィン(56)、および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)は、それぞれ伝熱板(62)にろう付されている。伝熱板(62)におけるエバポレータ(41)および蓄冷器(42)の各排水間隙(58)と対応する部分、ならびにエバポレータ(41)の前側の冷媒流通管(54)と蓄冷器(42)の後側の蓄冷材封入管(54)との間の排水間隙(61)と対応する部分に、それぞれ複数の排水促進用貫通穴(63)(排水促進用貫通部)が上下方向に間隔をおいて形成されている。
【0063】
また、エバポレータ(41)における後側の冷媒流通管(54)の後側縁部と伝熱板(62)との間の部分、および蓄冷器(42)における前側の蓄冷材封入管(54)の前側縁部と伝熱板(62)との間の部分に、排水溝(65)が形成されている。そして、伝熱板(62)の前後両側縁部に、複数の排水促進用切り欠き(64)(排水促進用貫通部)が、排水溝(65)と対応するように上下方向に間隔をおいて形成されている。
【0064】
ここで、エバポレータ(41)および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面と、伝熱板(62)全体の表面とに親水性処理が施されていてもよい。また、蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面および伝熱板(62)における蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されていてもよい。蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面および伝熱板(62)における蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている場合、エバポレータ(41)の熱交換効率を高めるために、エバポレータ(41)のアウターフィン(56)の表面および伝熱板(62)におけるエバポレータ(41)の冷媒流通管(54)に接合されている部分の表面に、空気との伝熱性を高めるために撥水性処理が施されていてもよい。
【0065】
上述した蓄冷熱交換器(40)のエバポレータ(41)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(48)を通って第1ヘッダタンク(43)の冷媒入口ヘッダ部(46)内に入る。冷媒入口ヘッダ部(46)内に入った冷媒は左方に流れ、分流して前側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内に流入する。冷媒流通管(54)内に流入した冷媒は、冷媒流通管(54)内を下方に流れて第2ヘッダタンク(44)の第1中間ヘッダ部(51)内に入る。第1中間ヘッダ部(51)内に入った冷媒は右方に流れ、連通部材(53)内の連通路を通って第2中間ヘッダ部(52)内に入る。
【0066】
第2中間ヘッダ部(52)内に入った冷媒は、分流して後側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内に流入する。冷媒流通管(54)内に流入した冷媒は、冷媒流通管(54)内を上方に流れて第1ヘッダタンク(43)の冷媒出口ヘッダ部(47)内に入る。冷媒出口ヘッダ部(47)内に入った冷媒は、冷媒出口ヘッダ部(47)内を右方に流れ、冷媒出口(49)を通って流出する。
【0067】
そして、冷媒が前側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内、および後側冷媒流通管群(55)の冷媒流通管(54)内を流れる間に、隣り合う冷媒流通管(54)どうしの間の通風間隙を通過する空気(図8および図9矢印X参照)と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0068】
このとき、エバポレータ(41)の冷媒流通管(54)内を流れる冷媒が有する冷熱が、伝熱板(62)を介して蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)内の蓄冷材が伝えられる。しかも、エバポレータ(41)の隣り合う冷媒流通管(54)間を通過した冷却風の有する冷熱がアウターフィン(56)を介して蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)内に存在する蓄冷材に伝えられるとともに、エバポレータ(41)で発生しかつ伝熱板(62)を伝わって蓄冷器(42)側に流れる凝縮水の有する冷熱が、伝熱板(62)を介して蓄冷器(42)の蓄冷材封入管(54)内の蓄冷材が伝えられる。その結果、蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0069】
エバポレータ(41)および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面、ならびに伝熱板(62)の表面に発生した凝縮水は、伝熱板(62)に沿って通風方向下流側に流れ、伝熱板(62)の排水促進用貫通穴(63)を通って排水間隙(58)(61)内に入り、排水間隙(58)(61)内を下方に流れて排水される。また、エバポレータ(41)および蓄冷器(42)のアウターフィン(56)の表面、ならびに伝熱板(62)の表面に発生した凝縮水は、排水促進用切り欠き(64)を通って排水溝(65)内に入り、排水溝(65)内を下方に流れて排水される。したがって、凝縮水の排水性が向上する。
【0070】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷器(42)内の蓄冷材の有する冷熱が、アウターフィン(56)(44)を介してエバポレータ(41)および蓄冷器(42)を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータ(41)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器(42)により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0071】
なお、実施形態2の蓄冷熱交換器においても、伝熱板(62)の代わりに、図5〜図7に示す伝熱板(35)(37)(38)と同様な構成の伝熱板を用いることが可能である。
【0072】
上述した2つの実施形態においては、エバポレータ(2)(41)のアウターフィン(11)(56)と、蓄冷器(3)(42)のアウターフィン(11)(56)とは別々に形成されているが、これに限定されるものではなく、エバポレータ(2)(41)および蓄冷器(3)(42)に1つのアウターフィンが共有されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明による熱交換器は、カーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
(1)(40):蓄冷熱交換器
(2)(41):エバポレータ
(3)(42):蓄冷器
(9):冷媒流通管部(蓄冷材封入管部)
(11)(56):アウターフィン
(15)(16):排水溝(排水路)
(31)(35)(37)(38)(62):伝熱板
(32)(33):排水促進用貫通部
(36):貫通穴
(54):冷媒流通管(蓄冷材封入管)
(58)(61):排水間隙(排水路)
(63):排水促進用貫通穴(排水促進用貫通部)
(64):排水促進用切り欠き(排水促進用貫通部)
(65):排水溝(排水路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが通風方向に並んで配置されており、冷媒流通管部の側面および蓄冷材封入管部の側面に接する伝熱板が、エバポレータおよび蓄冷器に跨って配置されている蓄冷熱交換器。
【請求項2】
冷媒流通管部および蓄冷材封入管部が、幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、冷媒流通管部の並び方向の寸法である管部高さと、蓄冷材封入管部の並び方向の寸法である管部高さとが同一であり、エバポレータにおける冷媒流通管部の並び方向のピッチと、蓄冷器における蓄冷材封入管部の並び方向のピッチとが同一である請求項1記載の蓄冷熱交換器。
【請求項3】
エバポレータが、隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンを有するとともに、蓄冷器が、隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンを有しており、伝熱板が、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとの間に配置されるとともに、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとに接合されている請求項1または2記載の蓄冷熱交換器。
【請求項4】
エバポレータの蓄冷器側の冷媒流通管部と蓄冷器のエバポレータ側の蓄冷材封入管部との間に排水路が設けられ、伝熱板における排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項5】
エバポレータの冷媒流通管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ冷媒流通管部どうしの間に排水路が設けられ、蓄冷器の蓄冷材封入管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ蓄冷材封入管部どうしの間に排水路が設けられ、伝熱板における各排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項6】
エバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部の側面が平坦面であり、伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部と対応する部分に、ろう付性を向上させる貫通穴が形成され、伝熱板と冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とがろう付されている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項7】
蓄冷器のフィンの表面および伝熱板における蓄冷器の蓄冷材封入管部に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている請求項3〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項1】
互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが通風方向に並んで配置されており、冷媒流通管部の側面および蓄冷材封入管部の側面に接する伝熱板が、エバポレータおよび蓄冷器に跨って配置されている蓄冷熱交換器。
【請求項2】
冷媒流通管部および蓄冷材封入管部が、幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、冷媒流通管部の並び方向の寸法である管部高さと、蓄冷材封入管部の並び方向の寸法である管部高さとが同一であり、エバポレータにおける冷媒流通管部の並び方向のピッチと、蓄冷器における蓄冷材封入管部の並び方向のピッチとが同一である請求項1記載の蓄冷熱交換器。
【請求項3】
エバポレータが、隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンを有するとともに、蓄冷器が、隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンを有しており、伝熱板が、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとの間に配置されるとともに、冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とフィンとに接合されている請求項1または2記載の蓄冷熱交換器。
【請求項4】
エバポレータの蓄冷器側の冷媒流通管部と蓄冷器のエバポレータ側の蓄冷材封入管部との間に排水路が設けられ、伝熱板における排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項5】
エバポレータの冷媒流通管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ冷媒流通管部どうしの間に排水路が設けられ、蓄冷器の蓄冷材封入管部が通風方向に並んで複数列設けられるとともに、通風方向に並んだ蓄冷材封入管部どうしの間に排水路が設けられ、伝熱板における各排水路と対応する部分に排水促進用貫通部が形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項6】
エバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部の側面が平坦面であり、伝熱板におけるエバポレータの冷媒流通管部および蓄冷器の蓄冷材封入管部と対応する部分に、ろう付性を向上させる貫通穴が形成され、伝熱板と冷媒流通管部および蓄冷材封入管部とがろう付されている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項7】
蓄冷器のフィンの表面および伝熱板における蓄冷器の蓄冷材封入管部に接合されている部分の表面のみに親水性処理が施されている請求項3〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−175167(P2010−175167A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19299(P2009−19299)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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