説明

蓄電パックの車両搭載構造

【課題】車両の後面衝突時における蓄電パックの損傷を抑制することができると共に、低コスト化及び軽量化を図ることができる蓄電パックの車両搭載構造を得る。
【解決手段】本蓄電パックの車両搭載構造では、蓄電パック12のケース14内に収容された電池セル26がロアケース15に締結されており、当該締結部の下方でロアケース15に固定された支持ブラケット30が蓄電パック12を支持している。この支持ブラケット30は、ブラケット本体34と位置決めブラケット36とによって構成されている。位置決めブラケット36は、ブラケット本体34の前壁34Bと後壁34Cとの間に配置されており、この位置決めブラケット36によって、蓄電パック12の取付位置が車体に対して左右方向に位置決めされている。しかも、この位置決めブラケット36は、車両の後面衝突時の衝突荷重によるブラケット本体34の変形を抑制する機能も併せ持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部側に蓄電パックを搭載するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示された蓄電パックの車載構造では、一端側が車体側のマウントに回動可能に連結されると共に他端側が蓄電パックに回動可能に連結された左右一対の後部ブラケットを介して、蓄電パックが車体に支持されている。この構造では、車両の後面衝突時の衝撃によって後部ブラケットが回動することにより、蓄電パックの支持状態を変化させて蓄電パックの損傷を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−253933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リヤオーバーハングが短い車両では、ラゲッジルーム内に搭載される蓄電パックの後部側が、スペアタイヤの収容スペースの側方に配置された左右一対の支持ブラケットを介して車体側に支持される場合がある。このような支持ブラケットとしては、軽量化及び低コスト化の要請などから板金製のものが採用されることがある。この場合、このような支持ブラケットが後面衝突時にスペアタイヤ等から伝わる入力によって蓄電パックのケースと共に変形すると、当該ケースに締結された電池セルに亀裂が生じたり、電解液が漏れる等の問題が生じる可能性がある。
【0005】
この点、前述した如き蓄電パックの車載構造では、後部ブラケットの回動によって蓄電パックの支持状態を変化させることができるため、リヤオーバーハングが短い車両に対しても有効であると考えられる。しかしながら、前述の構造では、後部ブラケットが蓄電パック及びマウントに回動可能に連結された構成であるため、構造が複雑になっており、低コスト化の要請に反することになる。また、質量が大きい蓄電パックが後部ブラケットの一端側に連結された構成であるため、後部ブラケットには高い曲げ剛性が要求される。このため、後部ブラケットの厚さ寸法及び質量が増加し、軽量化の要請に反することにもなる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車両の後面衝突時における蓄電パックの損傷を抑制することができると共に、低コスト化及び軽量化を図ることができる蓄電パックの車両搭載構造を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造は、車両の後部側に配置された蓄電パックと、前記蓄電パック及び車体に固定されて前記蓄電パックを下側から支持する支持ブラケットと、を備え、前記支持ブラケットは、前記蓄電パックの下面に固定された固定壁と前記固定壁の前後両端から下方側へ延出された前壁及び後壁を有するブラケット本体と、前記前壁と前記後壁との間に配置されて前記ブラケット本体に固定され、車体側に係合することにより前記蓄電パックの取付位置を車体に対して左右方向に位置決めすると共に、車両の後面衝突時の衝突荷重による前記ブラケット本体の変形を抑制する位置決めブラケットと、を備えている。
【0008】
なお、請求項1に記載された前後左右上下の方向性は、車両に対する方向性を示している。この点は、後で説明する請求項2〜請求項4においても同様である。
【0009】
請求項1に記載の蓄電パックの車両搭載構造では、支持ブラケットを構成するブラケット本体の固定壁が蓄電パックの下面に固定されており、この固定壁の前後両端からは前壁及び後壁が下方側へ延出されている。前壁と後壁との間には、位置決めブラケットが配置されており、この位置決めブラケットによって、蓄電パックが車体に対して左右方向に位置決めされている。しかも、この位置決めブラケットは、ブラケット本体の前壁と後壁との間に配置されているため、車両の後面衝突時の衝突荷重によるブラケット本体の変形を抑制する機能も併せ持っている。これにより、ブラケット本体の変形を抑制するための専用部品を省略しつつ、ブラケット本体の変形に伴う蓄電パックの損傷を抑制することができる。さらに、この発明では、上述の固定壁、前壁、及び後壁によってブラケット本体が構成されているため、ブラケット本体を簡素に構成することができる。したがって、低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造は、請求項1に記載の蓄電パックの車両搭載構造において、前記位置決めブラケットは、前記固定壁の下面に固定された上壁と、前記上壁の左右両端から下方側へ延出された左壁及び右壁とを有することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の蓄電パックの車両搭載構造では、ブラケット本体の前壁と後壁との間に配置された位置決めブラケットが、ブラケット本体の固定壁の下面に固定された上壁を有しており、この上壁の左右両端からは左壁及び右壁が下方側へ延出されている。したがって、車両の後面衝突時の衝突荷重がブラケット本体に入力された際には、これらの左壁及び右壁が前壁と後壁とのそれぞれに当接し、両者の間で突っ張る。これにより、前壁と後壁との接近を伴うブラケット本体の変形を良好に抑制することができる。しかも、蓄電パックが位置決めブラケットの上壁によっても支持されるため、蓄電パックからブラケット本体に入力される荷重を低減することができる。これにより、ブラケット本体の板厚を薄くする等してブラケット本体の剛性を低下させることができるので、ブラケット本体の更なる低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造は、請求項2に記載の蓄電パックの車両搭載構造において、前記位置決めブラケットには、車両前後方向に沿った稜線が形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の蓄電パックの車両搭載構造では、位置決めブラケットには、車両前後方向に沿った稜線が形成されているため、これらの稜線によって車両前後方向の荷重に対する位置決めブラケットの剛性を向上させることができる。これにより、ブラケット本体の変形を一層良好に抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の蓄電パックの車両搭載構造において、前記位置決めブラケットは、前記ブラケット本体の前記前壁と前記後壁とに当接していることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の蓄電パックの車両搭載構造では、位置決めブラケットが、ブラケット本体の前壁と後壁とに当接しているため、車両の後面衝突時の衝突荷重がブラケット本体に入力された際には、前壁と後壁との間で支持ブラケットが直ちに突っ張る。これにより、これにより、前壁と後壁との接近を直ちに抑制することができるので、前壁と後壁との接近を伴うブラケット本体の変形を一層良好に抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造は、請求項2又は請求項3に記載の蓄電パックの車両搭載構造において、車体側には、車両前後方向視で山型状に形成されたマウントが設けられ、前記位置決めブラケットは、前記左壁の下端部が前記マウントの左斜面に当接し、前記右壁の下端部が前記マウントの右斜面に当接していることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の蓄電パックの車両搭載構造では、位置決めブラケットの左壁の下端部が、車体側に設けられた山型状のマウントの左斜面に当接し、右壁の下端部が当該マウントの右斜面に当接している。これにより、位置決めブラケットがマウントに対して車両左右方向に位置決めされるので、ブラケット本体を介して位置決めブラケットが固定された蓄電パックを、車体に対して容易に左右方向に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造では、車両の後面衝突時における蓄電パックの損傷を抑制することができると共に、低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造では、前壁と後壁との接近を伴うブラケット本体の変形を良好に抑制することができると共に、ブラケット本体の更なる低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造では、車両前後方向の荷重に対する左壁及び右壁の剛性を向上させることができ、ブラケット本体の変形を一層良好に抑制することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造では、前壁と後壁との接近を伴うブラケット本体の変形を一層良好に抑制することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明に係る蓄電パックの車両搭載構造では、蓄電パックを車体に対して容易に車両左右方向に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄電パックの車両搭載構造が適用されて構成された車両の後部側の部分的な構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る蓄電パックを含む周辺部材の構成を示す概略的な平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る蓄電パック、左側ブラケット、及び右側ブラケットの構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る左側ブラケットの拡大斜視図である。
【図5】図1及び図6の5−5線に沿った切断面を示す拡大縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る蓄電パックが車両に組み付けられる際の状況を説明するための背面図である。
【図7】位置決めブラケットが省略された場合のブラケット本体の変形モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図7を参照して、本発明の実施形態に係る蓄電パックの車両搭載構造10について説明する。なお、各図中矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左方向を示し、矢印RHは車両右方向を示している。また、以下の説明で記載する前後左右上下の方向は、車両前進時での方向として表記する。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態では、蓄電パック12が車両の後部に搭載されている。この蓄電パック12は、二次電池やキャパシタ等の蓄電機器がケース14内に収容されたものであり、ケース14の長手方向が車両左右方向に沿う状態で、車両のリヤシート16の後方のラゲージルーム18内に配置されている。
【0026】
なお、本実施形態に係る車両は、リヤオーバーハングが短く設定された小型車である。このため、図2に示されるように、ラゲージルーム18の床部を構成するリヤフロアパネル20に形成されたスペアタイヤ収容部22の前端側と蓄電パック12の後部側とが車両上下方向にオーバーラップする状態で蓄電パック12が配置されており、スペアタイヤ24は、車両前方側の一部が蓄電パック12の下側に潜り込むようにしてスペアタイヤ収容部22に収容されている。
【0027】
図3に示されるように、上述のケース14は、アッパケース13及びロアケース15を備えており、両者が図示しない締結具によって締結されることにより箱状に構成されている。ロアケース15の上面には、複数の電池セル26が取り付けられている。これらの電池セル26は、車両左右方向に積層するように並んで配置されており、アッパケース13によって覆われている。各電池セル26は、ロアケース15を貫通した前後一対のボルト27、28によってロアケース15に締結されている。なお、本実施形態では、図2に示されるように、電池セル26がケース14内の中央部周辺から左端側にかけて配置されており、ケース14内の右端側には、蓄電機器を構成する図示しない内部構成部品が配置されている。この内部構成部品には、例えば、蓄電機器を冷却するための冷却装置や電力を変換する電気機器が含まれている。
【0028】
上記構成の蓄電パック12は、前部側が図示しないブラケット等を介してフロアパネルに固定されており、後部側が左右一対の支持ブラケット30、32を介してリヤフロアパネル20に固定されている。右側の支持ブラケット32は、スペアタイヤ収容部22に対して車両右側で蓄電パック12の下側に配置され、蓄電パック12の後部の右端側を下側から支持している。
【0029】
一方、左側の支持ブラケット30は、スペアタイヤ収容部22に対して車両左側で蓄電パック12の下側に配置されており、蓄電パック12の後部の左端側(電池セル26が配置された側)を下側から支持している。この支持ブラケット30は、図4に示されるように、ブラケット本体34と位置決めブラケット36とによって構成されている。
【0030】
ブラケット本体34は、板金材料が断面略ハット状に曲げ加工されることで形成されたものであり、固定壁34A、前壁34B、及び後壁34Cを備えている。固定壁34Aは、長尺矩形状に形成されており、長手方向が車両左右方向に沿う状態で車体に対して水平に配置されている。この固定壁34Aは、前述したロアケース15の下面にスポット溶接等により固定されている。
【0031】
前壁34Bは、固定壁34Aの前端から下方側へ延出された前側鉛直部34B1と、前側鉛直部34B1の下端から車両前方側の斜め下方側へ延出された前側傾斜部34B2と、前側傾斜部34B2の下端から車両前方側へ延出された前方延出部34B3とを備えている。一方、後壁34Cは、固定壁34Aの後端から下方側へ延出された後側鉛直部34C1と、この後側鉛直部34C1の下端から車両後方側の斜め下方側へ延出された後側傾斜部34C2とを備えている。
【0032】
さらに、前壁34Bの前側鉛直部34B1と固定壁34Aとの間に形成された屈曲部付近には、複数(ここでは2つ)の開口38が固定壁34Aの長手方向に並んで形成されている。これらの開口38は、前側鉛直部34B1の上端側の一部と固定壁34Aの前端側の一部とが切り欠かかれることで形成されたものであり、これら開口38の内周よりも内側には、前述した電池セル締結用のボルト28の頭部が配置されている。つまり、これらの開口38は、ロアケース15の下面から突出した複数のボルト28の頭部の車両左右方向のピッチに対応して配置されており、ボルト28の頭部が開口38の内側に挿入された状態で固定壁34Aがロアケース15の下面に溶接されている。これにより、ブラケット本体34とボルト28との非接触状態が確保されている。
【0033】
上述のブラケット本体34は、図5に示されるように、リヤフロアパネル20の上面に固定された車両側ブラケット40(マウント)に固定されている。この車両側ブラケット40は、四角錐台状(車両前後方向視及び車両左右方向視で山型状)に形成されており、図示しないリヤサイドメンバの上方でリヤフロアパネル20に固定されている。ブラケット本体34は、前壁34Bの前側傾斜部34B2が車両側ブラケット40の前斜面40Aに当接し、後壁34Cの後側傾斜部34C2が車両側ブラケット40の後斜面40Bに当接している。これにより、蓄電パック12が車両側ブラケット40及びブラケット本体34を介して車両に対し前後方向に位置決めされている。
【0034】
また、後壁34Cの後側傾斜部34C2には円形のボルト孔42が形成されており、車両側ブラケット40には、ボルト孔42と対向する位置にボルト孔44が形成されている。これらのボルト孔42、44にはボルト46が挿通されており、このボルト46が、車両側ブラケット40の裏面に溶接されたウェルドナット48に螺合することにより、ブラケット本体34が車両側ブラケット40に締結されている。なお、ブラケット本体34と車両側ブラケットとの固定構造は、上述の構成に限らず、適宜変更することができる。
【0035】
一方、図4及び図6に示されるように、位置決めブラケット36は、板金材料が断面ハット状に曲げ加工されることで形成されたものであり、ブラケット本体34よりも小型に形成されている。この位置決めブラケット36は、上壁36A、左壁36B、及び右壁36Cを備えており、ブラケット本体34の前壁34Bと後壁34Cとの間においてブラケット本体34の左右方向中央部付近に配置されている。つまり、位置決めブラケット36は、ブラケット本体34を垂直軸周りに90度回転させたような形状・配置とされている。
【0036】
上壁36Aは、車体に対して水平に配置されており、ブラケット本体34の固定壁34Aの下面にスポット溶接等により固定されている。左壁36Bは、上壁36Aの左端から下方側へ延出されており、車体に対して鉛直に配置された左側鉛直部36B1と、左側鉛直部36B1の下端から車両左側へ延出された左側フランジ状部36B2とを備えている。右壁36Cは、上壁36Aの右端から下方側へ延出されており、車体に対して鉛直に配置された右側鉛直部36C1と、右側鉛直部36C1の下端から車両右側へ延出された右側フランジ状部36C2とを備えている。
【0037】
図4に示されるように、上壁36Aと左壁36Bとの間に設けられた屈曲部、及び、上壁36Aと右壁36Cとの間に設けられた屈曲部にはそれぞれ、車両前後方向に延びる稜線L1、L2が形成されている。また、左壁36Bの左側鉛直部36B1と左側フランジ状部36B2との間に設けられた屈曲部、及び、右壁36Cの右側鉛直部36C1と右側フランジ状部36C2との間に設けられた屈曲部にはそれぞれ、車両前後方向に延びる稜線L3、L4が形成されている。
【0038】
上述の位置決めブラケット36は、左壁36B及び右壁36Cの各前端が、ブラケット本体34の前壁34Bの前側鉛直部34B1に対して当接又は近接して配置されている。同様に、左壁36B及び右壁36Cの各後端が、ブラケット本体34の後壁34Cの後側鉛直部34C1に対して当接又は近接して配置されている。
【0039】
また、上述の位置決めブラケット36は、蓄電パック12が車両に組み付けられる際に、左壁36Bの左側鉛直部36B1の下端が車両側ブラケット40の左斜面40Cに当接し、右壁36Cの右側鉛直部36C1の下端が車両側ブラケット40の右斜面40Dに当接する(図6参照)。これにより、蓄電パック12が車両側ブラケット40、位置決めブラケット36、及びブラケット本体34を介して車体に対し左右方向に位置決めされる構成になっている。
【0040】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
本実施形態では、支持ブラケット30を構成するブラケット本体34の前壁34Bと後壁34Cとの間には、位置決めブラケット36が配置されている。この位置決めブラケット36は、左壁36Bの左側鉛直部36B1の下端が車両側ブラケット40の左斜面40Cに当接すると共に、右壁36Cの右側鉛直部36C1の下端が車両側ブラケット40の右斜面40Dに当接している。これにより、蓄電パック12が車体に対して左右方向に位置決めされるので、蓄電パック12を車体に組み付ける際の蓄電パック12の位置決め作業を容易なものにすることができる(図6参照)。
【0042】
しかも、この位置決めブラケット36は、車両の後面衝突時の衝突荷重によるブラケット本体34の変形を抑制する機能も併せ持っている。つまり、後面衝突時にスペアタイヤ24等から伝わる入力によって、ブラケット本体34の後壁34Cに対して車両前方側への荷重F(図5参照)が作用した際には、位置決めブラケット36の左壁36B及び右壁36Cが前壁34Bと後壁34Cとにそれぞれ当接し、両者の間で突っ張る。これにより、車両前方側への後壁34Cの変形を伴ったブラケット本体34の変形(図7参照)が効果的に抑制される。
【0043】
これにより、ブラケット本体34の固定壁34Aが溶接されたロアケース15の変形が抑制されるため、当該溶接部付近でロアケース15と電池セル26とのボルト締結部が損傷することを回避することができる。これにより、電池セル26に亀裂が生じることや、電池セル26からの電解液漏れ等を防止することができる。
【0044】
このように、本実施形態では、蓄電パック12を車体に対して左右方向に位置決めするための位置決めブラケット36によってブラケット本体34の変形が抑制されるため、ブラケット本体34の変形を抑制するための専用部品を省略することができる。しかも、ブラケット本体34が固定壁34A、前壁34B、及び後壁34Cによって簡素に構成されると共に、同様に簡素に構成された位置決めブラケット36によってブラケット本体34の変形が抑制される。これにより、支持ブラケット30の低コスト化および軽量化を図ることができる。
【0045】
さらに、この実施形態では、背景技術の欄で説明した蓄電パックの車載構造のように、曲げ剛性確保のために必然的に厚さ寸法(高さ寸法)が大きくなる後部側ブラケットを、蓄電パックとリヤフロアパネルとの間に介在させる必要がないため、質量が大きい蓄電パック12を車体に対して低い位置に配置させることができる。これにより、車両の重心を低くすることができる。
【0046】
また、この実施形態では、蓄電パック12が位置決めブラケット36の上壁36Aによっても支持されるため、蓄電パック12からブラケット本体34に入力される荷重を低減することができる。これにより、ブラケット本体34の板厚を薄くする等してブラケット本体34の剛性を低下させることができるので、ブラケット本体34の更なる低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0047】
またさらに、この実施形態では、位置決めブラケット36には、図4に示されるように、左壁36Bの上下に稜線L1、L3が形成され、右壁36Cの上下に稜線L2及びL4が形成されている。これにより、これらの稜線によって車両前後方向の荷重に対する位置決めブラケット36の剛性が向上している。したがって、位置決めブラケット36によってブラケット本体34の変形を一層効果的に抑制することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、蓄電パック12の電池セル26がケース14内の央部周辺から左端側にかけて配置された関係上、蓄電パック12の左側端部を支持する左側の支持ブラケット30に対して本発明が適用された場合について説明したが、本発明はこれに限らず、蓄電パックの構成によっては右側の支持ブラケット32に対して本発明を適用してもよいし、或いは支持ブラケット30、32の両方に対して本発明を適用してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、位置決めブラケット36がフランジ状部36B2、36C2を備えた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、フランジ状部36B2、36C2が省略された構成にしてもよい。また、上記実施形態では、フランジ状部36B2、36C2が互いに反対向きに延出された構成にしたが、フランジ状部36B2、36C2が互いに接近する向きに延出された構成にしてもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態では、位置決めブラケット36が4つの稜線L1〜L4を備えた構成にしたが、本発明はこれに限らず、稜線の数は適宜変更することができる。また、稜線が省略された構成にしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、位置決めブラケット36が上壁36A、左壁36B、及び右壁36Cを備えた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、位置決めブラケットは、蓄電パックを車体に対して左右方向に位置決めする機能と、後突時のブラケット本体34の変形を抑制する機能とを兼ね備えたものであればよく、その形状は適宜変更することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、位置決めブラケット36の左壁36Bの下端が車両側ブラケット40の左斜面40Cに当接すると共に、右壁36Cの下端が車両側ブラケット40の右斜面40Dに当接することにより、蓄電パック12が車体に対して左右方向に位置決めされる構成にしたが、本発明はこれに限らず、位置決めブラケット36による蓄電パック12の位置決め構造は、車両側ブラケット40の形状等により変更されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
10 蓄電パックの車両搭載構造
12 蓄電パック
20 リヤフロアパネル(車体の一部)
30 支持ブラケット
34 ブラケット本体
34A 固定壁
34B 前壁
34C 後壁
36 位置決めブラケット
36A 上壁
36B 左壁
36C 右壁
40 車両側ブラケット(マウント)
40C 左斜面
40D 右斜面
L1、L2、L3、L4 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部側に配置された蓄電パックと、
前記蓄電パック及び車体に固定されて前記蓄電パックを下側から支持する支持ブラケットと、
を備え、
前記支持ブラケットは、
前記蓄電パックの下面に固定された固定壁と前記固定壁の前後両端から下方側へ延出された前壁及び後壁を有するブラケット本体と、
前記前壁と前記後壁との間に配置されて前記ブラケット本体に固定され、車体側に係合することにより前記蓄電パックの取付位置を車体に対して左右方向に位置決めすると共に、車両の後面衝突時の衝突荷重による前記ブラケット本体の変形を抑制する位置決めブラケットと、
を備えた蓄電パックの車両搭載構造。
【請求項2】
前記位置決めブラケットは、前記固定壁の下面に固定された上壁と、前記上壁の左右両端から下方側へ延出された左壁及び右壁とを有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電パックの車両搭載構造。
【請求項3】
前記位置決めブラケットには、車両前後方向に沿った稜線が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電パックの車両搭載構造。
【請求項4】
前記位置決めブラケットは、前記ブラケット本体の前記前壁と前記後壁とに当接していることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の蓄電パックの車両搭載構造。
【請求項5】
車体側には、車両前後方向視で山型状に形成されたマウントが設けられ、前記位置決めブラケットは、前記左壁の下端部が前記マウントの左斜面に当接し、前記右壁の下端部が前記マウントの右斜面に当接していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の蓄電パックの車両搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219037(P2011−219037A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92494(P2010−92494)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】