説明

蓄電モジュールのセル監視装置、断線検出プログラムおよび断線検出方法

【課題】従来とは別の手段により、複数の単位セルそれぞれとセル監視装置との間を接続する電線の断線を検出するための技術を開示すること。
【解決手段】セル監視装置71のセル監視部70は、複数のセル1〜4それぞれに電圧計測線60〜64を介して並列接続された複数のスイッチ21〜24を、予め定められた順序で、オフからオンにして再オフにする。そして、各セルに接続された一対の電圧計測線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが再オフになった時以降であって、且つ、前記順序が次のスイッチがオンになった時以降に、各セルのセル電圧を計測する。そして、その計測された複数のセル電圧の中に、第1閾値以上である高異常セル電圧、および、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である低異常セル電圧の少なくとも一方が有ると判定した場合、電圧計測線が断線していることを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の単位セルそれぞれとセル監視装置との間を接続する電線の断線を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、組電池装置は、複数の単位電池が直列接続された組電池と、各単位電池に電線を介して接続された電圧計測回路とを備え、各単位電池を監視することが可能になっている(特許文献1)。また、電線が断線すると単位電池を正常に監視することができなくなるため、電線の断線検出機能を有する組電池装置がある(特許文献2)。この組電池装置では、各単位電池に並列接続され、互いに容量が異なる複数のコンデンサが設けられており、正常時と、断線が生じている異常時とで電圧挙動に変化が生じ、これを検知することで断線検出が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−56350号公報
【特許文献2】特開2002−204537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記組電池装置では、断線検出機能のために、容量が異なる複数のコンデンサを設けることが必須であるため、構成上の制約が生じるなどの問題があり、別の手段で断線検出することが好ましい。
【0005】
本明細書では、従来とは別の手段により、複数の単位セル(単位電池など)それぞれとセル監視装置(電圧計測回路など)との間を接続する電線の断線を検出するための技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される蓄電モジュールのセル監視装置は、複数のセルが直列接続された蓄電モジュールのセル監視装置であって、前記複数のセルそれぞれに電線を介して並列接続された複数のスイッチと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のスイッチのうち少なくとも2つのスイッチを、予め定められた順序で、オフからオンにして再オフにするスイッチ制御処理と、前記各セルに接続された一対の前記電線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが前記再オフになった時以降であって、且つ、前記順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、前記各セルに対応するセル電圧として計測するセル電圧計測処理と、前記セル電圧計測処理で計測した複数のセル電圧の中に、第1閾値以上である高異常セル電圧、および、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である低異常セル電圧の少なくとも一方が有るかどうかを判定する異常判定処理と、前記異常判定処理で前記高異常セル電圧および前記低異常セル電圧の少なくとも一方が有ると判定した場合、前記電線が断線していることを検出する断線検出処理と、を実行する構成を有する。
【0007】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、前記異常判定処理で前記高異常セル電圧および前記低異常セル電圧の両方が有ると判定した場合、前記高異常セル電圧に対応するセルと、前記低異常セル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることを検出してもよい。
【0008】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、スイッチ制御処理では、前記少なくとも2つのスイッチを、前記蓄電モジュールの一端側のセルから他端側のセルに向かうスイッチ順序で、オフからオンにして再オフにし、前記セル電圧計測処理では、前記各セルに接続された一対の前記電線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが前記再オフになった時以降であって、且つ、前記スイッチ順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、前記各セルに対応するセル電圧として計測してもよい。
【0009】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、前記異常判定処理では、前記他端側のセルに対応するセル電圧を先頭に、前記スイッチ順序とは逆のセル順序で、前記低異常セル電圧であるかどうかを判定していく低異常検索処理と、前記低異常検索処理で前記低異常セル電圧であると判定した場合、当該低異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記高異常セル電圧であるかどうかを判定していく高異常検索処理と、前記高異常検索処理で前記高異常セル電圧であると判定した場合、当該高異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記高異常セル電圧でないかどうかを判定していく非高異常検索処理と、を実行し、前記断線検出処理では、前記異常判定処理で、前記低異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルと、最後に前記高異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることを検出してもよい。
【0010】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、前記異常判定処理では、前記一端側のセルに対応するセル電圧を先頭に、前記スイッチ順序と同じセル順序で、前記高異常セル電圧であるかどうかを判定していく高異常検索処理と、前記高異常検索処理で前記高異常セル電圧であると判定した場合、当該高異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記低異常セル電圧であるかどうかを判定していく低異常検索処理と、前記低異常検索処理で前記低異常セル電圧であると判定した場合、当該低異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記低異常セル電圧でないかどうかを判定していく非低異常検索処理と、を実行し、前記断線検出処理では、前記異常判定処理で、前記高異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルと、最後に前記低異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることを検出してもよい。
【0011】
上記蓄電モジュールのセル監視装置であって、前記制御部は、前記複数のセルの両端に接続された最端の電線同士の間の電圧を、モジュール電圧として計測するモジュール電圧計測処理と、前記第1閾値および前記第2閾値を、前記モジュール電圧が小さいほど小さい値に変更する閾値変更処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0012】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、前記複数のセル電圧のうち、最端のセルまたは当該最端のセルを先頭に連続するセル群に対応する1または複数のセル電圧が、第3閾値以下である端側異常セル電圧であるかどうかを判定する端側判定処理と、前記端側判定処理で前記端側異常セル電圧であると判定した場合、当該端側異常セル電圧に対応するセルの両端に接続された2本の電線のうち、前記最端側の電線が断線していることを検出する端側断線検出処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0013】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、前記端側判定処理で複数のセル電圧が前記端側異常セル電圧であると判定した場合、前記異常判定処理では、前記複数のセル電圧のうち、前記最端のセルから最も離れた内側のセル以外のセル電圧を処理対象外としてもよい。
【0014】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記制御部は、前記複数のセルの両端に接続された最端の電線同士の間の電圧を、モジュール電圧として計測するモジュール電圧計測処理と、前記モジュール電圧を、前記複数のセルの総数と前記端側判定処理で前記端側異常セル電圧と判定されたセル電圧に対応するセルの数との差で除算した値である推測値を算出し、前記第1閾値および前記第2閾値を、前記推測値が小さいほど小さい値に変更する閾値変更処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0015】
上記蓄電モジュールのセル監視装置では、前記複数のセルそれぞれに並列接続された複数の定電圧素子を備え、前記制御部は、前記閾値変更処理では、前記第1閾値の変更範囲の上限値が、前記定電圧素子の反応電圧値、または、前記セル電圧計測処理での計測可能範囲の最大値でもよい。
【0016】
なお、本願明細書で開示された発明は、セル監視部、断線検出方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書によって開示される発明によれば、従来とは別の手段により、複数の単位セルそれぞれとセル監視装置との間を接続する電線の断線を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の電池パックの電気的構成図
【図2】制御処理を示すフローチャート(その1)
【図3】制御処理を示すフローチャート(その2)
【図4】断線パターン1を示す回路図
【図5】断線パターン2を示す回路図
【図6】断線パターン3を示す回路図
【図7】断線パターン4を示す回路図
【図8】実施形態2の中間側処理を示すフローチャート
【図9】実施形態3の中間側処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態のセル監視装置によれば、複数のスイッチの全部または一部が、予め定められた順序で、オフからオンにされ再びオフにされる。そして、各セルに接続された一対の電線間の電圧が、当該セルに並列接続されたスイッチが再オフになった時以降であって、且つ、前記順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、各セルに対応するセル電圧として計測される。ここで、電線が断線している異常時では、計測された複数のセル電圧の中に、断線していない正常時よりも大きい高異常セル電圧、および、正常時よりも小さい低異常セル電圧の少なくとも一方が存在する。
【0020】
そこで、本セル監視装置では、計測された複数のセル電圧の中に、第1閾値以上である高異常セル電圧、および、第2閾値(<第1閾値)以下である低異常セル電圧の少なくとも一方が有るかどうかが判定される。そして、高異常セル電圧および低異常セル電圧の少なくとも一方が有ると判定された場合、少なくとも1本いずれかの電線が断線していることが検出される。
【0021】
また、上記セル監視装置では、高異常セル電圧および低異常セル電圧の両方が有ると判定された場合、高異常セル電圧に対応するセルと低異常セル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることが検出されてもよい。これにより、単に断線の有無だけでなく、断線している電線がどの範囲内にあるかをおおよそ特定することができる。
【0022】
また、複数のスイッチの全部または一部のスイッチが、蓄電モジュールの一端側のセルから他端側のセルに向かうスイッチ順序で、オフからオンにされ再オフにされる。そして、各セルに接続された一対の電線間の電圧が、当該セルに並列接続されたスイッチが再オフになった時以降であって、且つ、スイッチ順序が次のスイッチがオンになった時以降に、各セルに対応するセル電圧として計測される。これにより、上記複数のスイッチの全部または一部のスイッチに接続された電線が断線しているかどうかをもれなく判定することができる。
【0023】
上記セル監視装置では、スイッチ順序とは逆のセル順序で、低異常セル電圧と高異常セル電圧が有ると判定された場合、当該高異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、上記セル順序で、高異常セル電圧でないかどうかが判定されていく。そして、低異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルと、最後に高異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることが検出されてもよい。これにより、低異常セル電圧に対応するセルと、高異常セル電圧に対応するセルとの間の断線だけでなく、互いに隣り合い、高異常セル電圧に対応する複数のセルの間の断線をも検出することができる。
【0024】
上記セル監視装置では、スイッチ順序と同じセル順序で、低異常セル電圧と高異常セル電圧が有ると判定された場合、当該高異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、上記セル順序で、低異常セル電圧でないかどうかが判定されていく。そして、高異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルと、最後に低異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることが検出されてもよい。これにより、高異常セル電圧に対応するセルと、低異常セル電圧に対応するセルとの間の断線だけでなく、互いに隣り合い、低異常セル電圧に対応する複数のセルの間の断線をも検出することができる。
【0025】
上記セル監視装置では、複数のセルの両端に接続された最端の電線同士の間の電圧が、モジュール電圧として計測され、第1閾値および第2閾値は、モジュール電圧が小さいほど小さい値に変更されてもよい。これにより、第1閾値および第2閾値を、蓄電モジュールの充電量の変化に応じて適切な値に変更することができる。
【0026】
上記セル監視装置では、最端のセルまたは当該最端のセルを先頭に連続するセル群に対応する1または複数のセル電圧が、第3閾値以下である端側異常セル電圧であるかどうかが判定される。そして、端側異常セル電圧であると判定された場合、当該端側異常セル電圧に対応するセルの両端に接続された2本の電線のうち、最端側の電線が断線していることが検出されてもよい。これにより、端側の電線が断線していることを検出することができる。
【0027】
上記セル監視装置では、複数のセル電圧が前記端側異常セル電圧であると判定された場合、異常判定処理では、前記複数のセル電圧のうち、前記最端のセルから最も離れた内側のセル以外のセル電圧が処理対象外とされてもよい。これにより、端側判定処理の判定結果に関係なく、全てのセル電圧を異常判定処理の処理対象とする構成に比べて、処理負担を軽減することができる。
【0028】
上記セル監視装置では、複数のセルの両端に接続された最端の電線同士の間の電圧が、モジュール電圧として計測され、そのモジュール電圧を、セルの総数と端側判定処理で端側異常セル電圧と判定されたセル電圧に対応するセルの数との差で除算した値である推測値が算出される。そして、第1閾値および前記第2閾値は、推測値が小さいほど小さい値に変更されてもよい。これにより、第1閾値および第2閾値を、蓄電モジュールの充電量の変化および端側の電線の断線に応じて適切な値に変更することができる。
【0029】
上記セル監視装置では、第1閾値の変更範囲の上限値が、定電圧素子の反応電圧値、または、セル電圧計測処理での計測可能範囲の最大値でもよい。これにより、セル電圧の計測可能範囲や定電圧素子のクランプによる断線の誤検出を抑制することができる。なお、定電圧素子の反応電圧は、温度変化等によって変動することがある。また、計測可能範囲の最大値は、ノイズ等の影響により仕様上の値から所定幅ずれることがある。このため、上限値が反応電圧であるとは、上限値が、予め定めた唯一の値であることだけでなく、上限値が、予め想定される反応電圧の変動範囲内であることも含まれる。また、上限値が計測可能範囲の最大値であるとは、上限値が、上限値が、予め定めた唯一の値であることだけでなく、仕様上の値を含む所定の範囲内であることが含まれる。
【0030】
<実施形態1>
実施形態1を図1〜図7を参照しつつ説明する。本実施形態の電池パック80は、蓄電パックの一例であり、組電池モジュール81、および、セル監視装置71を備える。なお、電池パック80は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載され、車内の各種機器に電力を供給する。
【0031】
(電池パックの電気的構成)
図1に示すように、組電池モジュール81は、蓄電モジュールの一例であり、4つの第1セル1〜第4セル4が直列接続された組電池である。なお、組電池モジュール81は、2つ、3つ、或いは5つ以上のセルが直列接続された構成でもよい。また、各セル1〜4は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池である。ただし、各セル1〜4は、単電池に限らず、蓄電素子であればよく、キャパシタなどでもよい。また、以下の説明では、各セル1〜4のセル電圧は、断線、過放電、過充電などの異常が発生していない正常時では、2.5〜4.2V程度とする。
【0032】
各セル1〜4は、5本の電圧計測線60〜64を介して、セル監視装置71のセル監視部70に接続されている。5本の電圧計測線60〜64は、電線の一例であり、以下では、最低電位の電圧計測線をグランド線60といい、残りの4本の電圧計測線を、各セル1〜4に対応付けて、第1計測線61、第2計測線62、第3計測線63、第4計測線64ということがある。
【0033】
セル監視装置71は、ツェナーダイオード11〜14、均等化回路91〜94、RCフィルタ101〜104、セル監視部70、および、モジュール計測回路72を有する。ツェナーダイオード11〜14は、各セル1〜4にそれぞれ並列に接続されており、これにより、例えば各セル1〜4が過充電状態になったりサージが発生したりした場合等に、ツェナー電圧を超える電圧がセル監視部70に入力されることが抑制される。なお、各ツェナーダイオード11〜14のツェナー電圧は6.5Vとし、順方向ドロップ電圧は0.7Vとする。また、ツェナーダイオード11〜14は、定電圧素子の一例であり、ツェナーダイオードに限らず、印加電圧が反応電圧以上になると、素子の電圧を反応電圧に保つ素子であればよい。
【0034】
均等化回路91〜94は、各セル1〜4にそれぞれ並列に接続されており、各均等化回路91〜94は、スイッチ21〜24と放電抵抗31〜34とが直列接続された直列回路(放電回路ともいう)である。各スイッチ21〜24は、セル監視部70によりオンオフ制御される。なお、スイッチ21〜24は、例えばFET等の半導体スイッチ素子やコンタクタ(電磁接触器)等のほか、IC内部において電流を制御するスイッチ手段でもよい。以下、各スイッチ21〜24を、各セル1〜4に対応付けて、第1スイッチ21、第2スイッチ22、第3スイッチ23、第4スイッチ24ということがある。セル監視部70は、各スイッチ21〜24をオフ(開状態)からオン(閉状態)にすることで、セル1〜4や、次述するコンデンサ51〜54を放電させる。これにより、各セル1〜4のセル電圧を均一にしたり、各コンデンサ51〜54の両端電圧を、それに対応するセルのセル電圧に一致させることができる。
【0035】
RCフィルタ101〜104は、各セル1〜4にそれぞれ並列に接続されている。各RCフィルタ101〜104は、フィルタ用の抵抗41〜44及びコンデンサ51〜54を有するローパスフィルタであり、高周波信号がセル監視部70に入力することを抑制する。なお、コンデンサ51〜54の容量は均一とする。
【0036】
セル監視部70は、中央処理装置(以下、CPU)70A、メモリ70Bおよびセル電圧計測回路70Cを有する。メモリ70Bには、セル監視部70の動作を制御するための各種のプログラム(断線検出プログラムを含む)が記憶されており、CPU70Aは、メモリ70Bから読み出したプログラムに従って、セル監視部70の各部を制御する。メモリ70Bは、RAMやROMを有する。なお、上記各種のプログラムが記憶される媒体は、RAM等以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリでもよい。
【0037】
セル電圧計測回路70Cは、各電圧計測線60〜64を介して各セル1〜4に接続されており、各電圧計測線60〜64間の電圧を、各セル1〜4のセル電圧として個別に計測し、その計測結果をCPU70Aに与える。以下、セル電圧計測回路70Cが計測したセル電圧を、計測セル電圧E1〜E4といい、セル1〜4の実際のセル電圧と区別する。なお、セル電圧計測回路70Cのセル電圧の計測可能範囲は0〜5Vとする。
【0038】
モジュール計測回路72は、グランド線60と第4計測線64との間の電圧を、組電池モジュール81のモジュール電圧として計測し、その計測結果をCPU70Aに与える。以下、モジュール計測回路72が計測したモジュール電圧を、計測モジュール電圧Emといい、組電池モジュール81の実際のモジュール電圧と区別する。なお、セル監視部70およびモジュール計測回路72が制御部の一例である。
【0039】
(セル監視装置の制御)
例えばセル監視部70の電源がオンされると、CPU70Aは、メモリ70Bから上記プログラムを読み出して、図2,3に示す断線検出に関する制御処理を実行する。この制御処理により、単に電圧計測線60〜64の断線の有無だけでなく、電圧計測線60〜64のいずれが断線したかを検出することができる。
【0040】
CPU70Aは、スイッチ制御処理、セル電圧計測処理およびモジュール電圧計測処理(図2では手順1と記載)を実行する。CPU70Aは、まず中間セル数(図2ではCount)、グランド順位(同図ではGND LINE)をゼロに初期化する(S1)。なお、グランド順位は、非断線グランド線に該当する電圧計測線の順位であり、非断線グランド線は、電圧計測線60〜64のうち、断線していない最低電位の電圧計測線である。例えば、グランド順位が0であれば非断線グランド線はグランド線60であり、グランド順位が1であれば非断線グランド線は第1計測線61である。
【0041】
(1−1)スイッチ制御処理
次に、CPU70Aは、スイッチ制御処理を実行する。スイッチ制御処理では、当初、すべてのスイッチ21〜24をオフにし、各スイッチ21〜24に対して、最高電位の第4セル4から最低電位の第1セル1に向かうスイッチ順序(降順)で、オフから所定の放電時間だけオンにして再オフにする放電動作を順次実行させる。具体的には、CPU70Aは、第4スイッチ24をオンにしてから再オフにし(S2)、第3スイッチ23をオンにしてから再オフにし(S3)、第2スイッチ22をオンにしてから再オフにし(S4)、最後に第1スイッチ21をオンにしてから再オフにする(S5)。
【0042】
(1−2)具体例
このスイッチ制御処理を実行することにより、セル監視部70で計測される各セル1〜4の計測セル電圧E1〜E4は、図4〜図7に示す断線パターン1〜4に応じた値になる。なお、各図ではセル監視装置71の構成および符号が一部省略されている。また、各図中、コンデンサ51〜54の横に記載された電圧値は、スイッチ制御処理を実行した後のコンデンサ51〜54の両端電圧である。各セル1〜4の実際のセル電圧は4.2Vとする。
【0043】
図4の断線パターン1では、グランド線60のみ断線している。この場合、セル2〜4は、正極端子および負極端子の両方に接続された電圧計測線がいずれも断線していないため、計測セル電圧E2〜E4は、セル2〜4それぞれの実際のセル電圧(4.2V)に略一致する。しかし、第1セル1は負極端子に接続されたグランド線60が断線しているため、ツェナーダイオード11に順方向に電流(同図の「電流フロー:実線矢印」)が流れる。その結果、計測セル電圧E1は、ツェナーダイオード11の順方向ドロップ電圧に相当する負の電圧(略−0.7V)に等しくなる。このように、最低電位の電圧計測線が断線した場合、その電圧計測線に接続されたセルの計測セル電圧は、上記正常時の最低値(2.5V)よりも小さい値になる。
【0044】
また、断線パターン1において、更に第1計測線61も断線している場合(同図の×印の箇所)、ツェナーダイオード11、12に順方向の電流(同図の「電流フロー:破線矢印」)が流れる。その結果、計測セル電圧E1,E2は、各ツェナーダイオード11,12の順方向ドロップ電圧に相当する負の電圧に等しくなる。このように、組電池モジュール81の最低電位の電圧計測線を先頭に連続する複数の電圧計測線が断線した場合、それら複数の電圧計測線にそれぞれ接続されたセルの計測セル電圧は、上記正常時の最低値よりも小さい値になる。
【0045】
図5の断線パターン2では、第4計測線64のみ断線している。この場合、セル1〜3は、正極端子および負極端子の両方に接続された電圧計測線がいずれも断線していないため、計測セル電圧E1〜E3は、セル1〜3それぞれの実際のセル電圧に略一致する。しかし、第4セル4は正極端子に接続された第4計測線64が断線しているため、ツェナーダイオード14に順方向に電流(同図の「電流フロー:実線矢印」)が流れる。その結果、計測セル電圧E4は、ツェナーダイオード14の順方向ドロップ電圧に相当する負の電圧に等しくなる。このように、組電池モジュール81の最高電位の電圧計測線が断線した場合、その電圧計測線に接続されたセルの計測セル電圧は、上記正常時の最低値よりも小さい値になる。
【0046】
また、断線パターン2において、更に第3計測線63も断線している場合(同図の×印の箇所)、ツェナーダイオード13,14に順方向の電流(同図の「電流フロー:破線矢印」)が流れる。その結果、計測セル電圧E3,E4は、各ツェナーダイオード13,14の順方向ドロップ電圧に相当する負の電圧に等しくなる。このように、組電池モジュール81の最高電位の電圧計測線を先頭に連続する複数の電圧計測線が断線した場合、それら複数の電圧計測線にそれぞれ接続されたセルの計測セル電圧は、上記正常時の最低値よりも小さい値になる。
【0047】
図6の断線パターン3では、第2計測線62のみ断線している。この場合、セル1,4は、正極端子および負極端子の両方に接続された電圧計測線がいずれも断線していないため、計測セル電圧E1,E4は、セル1,4それぞれの実際のセル電圧に略一致する。しかし、第2セル2と第3セル3の間に接続された第2計測線62が断線している。このため、上記スイッチ制御処理により第3スイッチ23がオンになったとき、セル2,3の合計セル電圧(8.4V=4.2V×2)のうち、ツェナーダイオード12のツェナー電圧(6.5V)がコンデンサ52に印加され、残りの電圧(1.9V=8.4V−6.5V)がコンデンサ53に印加される。
【0048】
次に、第3スイッチ23がオフになり第2スイッチ22がオンになったときに、ツェナーダイオード13のツェナー電圧(6.5V)がコンデンサ53に印加され、残りの電圧(1.9V)がコンデンサ52に印加される。その結果、計測セル電圧E2は1.9Vになり、計測セル電圧E3は、上記計測可能範囲の最大値(5V)になる。上記断線パターン3は、断線していない2本の電圧計測線の間に、断線した電圧計測線が1本あり、且つ、高電位から低電位に向かう順序でスイッチ制御処理を実行した場合の一例である。このような場合、上記断線していない2本の電圧計測線の間に接続された2つのセルのうち、低電位側のセルの計測セル電圧は、上記正常時の最低値よりも小さい値になる。また、高電位側のセルの計測セル電圧は、上記正常時の最高値よりも大きい値になる。
【0049】
図7の断線パターン4では、第1計測線61および第2計測線62が断線している。この場合、第4セル4は、正極端子および負極端子の両方に接続された電圧計測線がいずれも断線していないため、計測セル電圧E4は、第4セル4の実際のセル電圧に略一致する。しかし、セル1〜3それぞれの間に接続された第1計測線61および第2計測線62が断線している。このため、上記スイッチ制御処理により、スイッチ22,23がオフになり、第1スイッチ21がオンになったとき、略0Vの電圧がコンデンサ51に印加され、セル1〜3の合計セル電圧(12.6V=4.2V×3)がコンデンサ52,53により分圧される。その結果、計測セル電圧E1は略0Vになり、計測セル電圧E2,3は、いずれも5Vになる。
【0050】
なお、計測セル電圧E3が、ツェナー電圧(6.5V)にクランプされ、計測セル電圧E2が、6.1V(=12.6V−6.5V)になることもある。この場合、モジュール電圧が比較的に小さいときには、計測セル電圧E2が、上記正常時のセル電圧、或いは、それよりも小さい値になることがある。上記断線パターン4は、断線していない2本の電圧計測線の間に、断線した電圧計測線が複数本あり、且つ、高電位から低電位に向かう順序でスイッチ制御処理を実行した場合の一例である。このような場合、上記断線していない2本の電圧計測線の間に接続された複数のセルのうち、最低電位のセルの計測セル電圧は、上記正常時の最低値よりも小さい値になる。また、最高電位のセルに対応する計測セル電圧は、上記正常時の最高値よりも大きい値になる。また、最高電位および最低電位以外のセルの計測セル電圧は、状況に応じて、正常時の最低値よりも小さい値、正常時の値、正常時の最高値よりも大きい値のいずれかになる。
【0051】
(2)セル電圧計測処理、モジュール電圧計測処理
次に、CPU70Aは、セル電圧計測処理およびモジュール電圧計測処理を実行する(S6)。具体的には、CPU70Aは、セル電圧計測回路70Cからの計測結果を取得して、各計測セル電圧E1〜E4を、各セル1〜4に対応付けてメモリ70Bに記憶する。また、CPU70Aは、モジュール計測回路72からの計測結果を取得し、計測モジュール電圧Emをメモリ70Bに記憶する。
【0052】
(3−1)低電位側処理
次に、CPU70Aは、低電位側処理(図2では手順2と記載)を実行する。この低電位側処理では、CPU70Aは、最低電位のグランド線60から連続して断線している電圧計測線を検出することにより、上記グランド順位を確定する。低電位側処理は、異常判定処理の一例である。
【0053】
具体的には、CPU70Aは、まず順位Mを1に設定する(S11)。順位Mは、1であれば第1セル1を示し、2であれば第2セル2を示し、3であれば第3セル3を示し、4であれば第4セル4を示す。次に、CPU70Aは、端側判定処理を実行する。端側判定処理では、CPU70Aは、計測セル電圧E1〜E4のうち、最低電位の第1セル1または当該第1セル1を先頭に連続するセル群に対応する1または複数の計測セル電圧が、端側異常セル電圧であるかどうかを判定する。端側異常セル電圧は、端断線用閾値以下である計測セル電圧をいう。端断線用閾値は、第3閾値の一例であり、後述する低異常閾値以下が好ましく、更には、低異常閾値より小さい値がより好ましく、適切な値は、実験等により求めることができる。なお、端断線用閾値は、ノイズ等の影響を考慮して、所定範囲(例えば0V〜0.1V)としてもよい。以下、端断線用閾値は0Vとする。
【0054】
具体的には、CPU70Aは、第1セル1の計測セル電圧E1が、端断線用閾値以下であるかどうかを判断し(S12)、当該計測セル電圧E1が端断線用閾値より大きいと判断した場合(S12:NO)、最低電位側に端側異常セル電圧は無いとして、高電位側処理に移行する。このとき、グランド順位は0に確定され、非断線グランド線がグランド線60とされる。
【0055】
これに対し、CPU70Aは、計測セル電圧E1が、端断線用閾値以下であると判断した場合(S12:YES)、当該計測セル電圧E1は端側異常セル電圧であるとする。そして、CPU70Aは、順位Mが1であるため(S13:YES)、第1セル1の負極端子に接続されていたグランド線60が断線していることを検出し(S14)、グランド順位に1を加算する(S15)。即ち、非断線グランド線の候補が、グランド線60から第1計測線61に代わる。次に、CPU70Aは、順位Mに1を加算して(S16)、順位Mがセル総数である4に達していないと判断すれば(S17:NO),S12に戻る。
【0056】
次に、CPU70Aは、順位M(>1)の計測セル電圧が、端断線用閾値以下であると判断した場合(S12:YES)、順位Mは1でないから(S13:NO)、順位Mのセルの負極端子に連なるM−1の電圧計測線が断線していることを検出し(S18)、S15に進む。なお、S14、S18は端側断線検出処理の一例である。そして、S17で順位Mが4に達したと判断すれば(S17:YES)、この時点での順位Mがグランド順位として確定され、当該順位Mの電圧計測線が、非断線グランド線として決定される。
【0057】
(3−2)具体例
図4の断線パターン1では、計測セル電圧E1は、端断線用閾値以下になるため(S12:YES)、グランド線60が断線していることが検出される(S14)。次に、計測セル電圧E2は、端断線用閾値よりも大きいため(S12:NO)、グランド順位が1に確定され、第1計測線61が非断線グランド線として決定される。
【0058】
また、断線パターン1において第1計測線61も断線している場合、計測セル電圧E2も、端断線用閾値以下になるため(S12:YES)、第1計測線61も断線していることが検出される(S18)。次に、計測セル電圧E3は、端断線用閾値よりも大きいため(S12:NO)、グランド順位が2に確定され、第2計測線62が非断線グランド線として決定される。これにより、グランド線60だけでなく、当該グランド線60を先頭に連続する複数本の電圧計測線が断線していることを検出することができる。なお、断線パターン2〜4では、計測セル電圧E1は、端断線用閾値より大きいため(S12:NO)、低電位側の電圧計測線の断線は検出されずに、低電位側処理が終了する。
【0059】
(4−1)高電位側処理
CPU70Aは、低電位側処理の実行後、高電位側処理(図3では手順3と記載)を実行する。この高電位側処理では、CPU70Aは、最高電位の第4計測線64から連続して断線している電圧計測線を検出することにより、高電位順位を確定する。高電位順位は、非断線最高位線に該当する電圧計測線の順位であり、非断線最高位線は、電圧計測線60〜64のうち、断線していない最高電位の電圧計測線である。高電位側処理は、異常判定処理の一例である。
【0060】
具体的には、CPU70Aは、まず順位Nを4に設定する(S21)。順位Nは、4であれば第4セル4を示し、3であれば第3セル3を示し、2であれば第2セル2を示し、1であれば第1セル1を示す。高電位側処理の終了時の順位Nが高電位順位とされる。次に、CPU70Aは、端側判定処理を実行する。この端側判定処理では、CPU70Aは、計測セル電圧E1〜E4のうち、最高電位の第4セル4または当該第4セル4を先頭に連続するセル群に対応する1または複数の計測セル電圧が、端側異常セル電圧であるかどうかを判定する。
【0061】
具体的には、CPU70Aは、第4セル4の計測セル電圧E4が、端断線用閾値以下であるかどうかを判断し(S22)、当該計測セル電圧E4が端断線用閾値より大きいと判断した場合(S22:NO)、最高電位側に端側異常セル電圧は無いとして、閾値変更処理に移行する。このとき、高電位順位は4に確定され、非断線最高位線は第4計測線64とされる。
【0062】
これに対し、CPU70Aは、計測セル電圧E4が、端断線用閾値以下であると判断した場合(S22:YES)、当該計測セル電圧E4を端側異常セル電圧であるとする。そして、CPU70Aは、第4セル4の正極端子に接続されていた第4計測線64が断線していることを検出し(S23)、順位Nから1を減算し(S24)、減算後の順位Nが1に達していれば(S25YES)、すべての電圧計測線61〜64が断線しているとし、本制御処理を終了する。なお、CPU70Aは、断線検出時、或いは、制御処理の終了時に、断線検出結果を、例えば電気自動車のコントロール部など、外部機器に報知することが好ましい。
【0063】
一方、CPU70Aは、減算後の順位Nが1に達していなければ(S25:NO)、S22に戻り、次の順位N(<4)の計測セル電圧が、端断線用閾値以下であると判断した場合(S22:YES)、上記S23〜S25の処理を繰り返す。これに対し、CPU70Aは、順位N(<4)の計測セル電圧が、端断線用閾値よりも大きいと判断した場合(S22:NO)、このときの順位Nを、高電位順位として確定する。そして、CPU70Aは、当該順位Nから上記グランド順位を減算した値を、中間セル数とし(S26)、次の閾値変更処理に移行する。中間セル数は、非断線最高位線と非断線グランド線との間に接続されたセル(以下、中間セルという)の総数である。
【0064】
(4−2)具体例
図5の断線パターン2では、計測セル電圧E4は、端断線用閾値以下になるため(S22:YES)、第4計測線64が断線していることが検出される(S23)。次に、計測セル電圧E3は、端断線用閾値よりも大きいため(S12:NO)、高電位順位は3に確定され、グランド順位は0であるため、中間セル数は3になる。
【0065】
また、断線パターン2において第3計測線63も断線している場合、計測セル電圧E3も、端断線用閾値以下になるため(S22:YES)、第3計測線63も断線していることが検出される(S23)。次に、計測セル電圧E2は、端断線用閾値よりも大きいため(S22:NO)、高電位順位は2に確定され、グランド順位は0であるため、中間セル数は2になる。これにより、第4計測線64だけでなく、当該第4計測線64を先頭に連続する複数本の電圧計測線が断線していることを検出することができる。なお、断線パターン1,3,4では、計測セル電圧E4は、端断線用閾値より大きいため(S22:NO)、高電位側の電圧計測線の断線は検出されずに、高電位側処理が終了する。
【0066】
(5)閾値変更処理
CPU70Aは、高電位側処理の実行後、閾値変更処理(図3では手順4と記載)を実行する。この閾値変更処理では、CPU70Aは、後述する高異常閾値および低異常閾値を、計測モジュール電圧Emの増減に応じて変更する。具体的には、CPU70Aは、S6で計測した計測モジュール電圧Emを、上記中間セル数で除算した値を、セル電圧の平均値の推測値として算出する(S31)。ここで、後述するように、高異常閾値および低異常閾値は、この推測値に所定の係数をそれぞれ乗算したものであるため、推定値の増減に応じて変更される。これにより、高異常閾値および低異常閾値を、組電池モジュール81の充電量の変化および端側の電圧計測線の断線に応じて適切な値に変更することができる。
【0067】
(6−1)中間側処理
CPU70Aは、閾値変更処理の実行後、中間側処理(図3では手順5と記載)を実行する。この中間側処理では、CPU70Aは、上記中間セルに対応する計測セル電圧を対象として、高異常セル電圧および低異常セル電圧の有無を判定することにより、非断線最高位線と非断線グランド線との間の電圧計測線(以下、中間計測線という)の断線検出を行う。
【0068】
具体的には、CPU70Aは、まず、上記グランド順位に1を加算した値を、順位Aとし(S41)、この順位Aのセルの計測セル電圧が以下の処理を行う最初の候補とされる。次に、CPU70Aは、中間計測線が有るかどうかを判断する(S42)。具体的には、CPU70Aは、上記高電位順位が、順位A以下であると判断した場合(S42:NO)、中間計測線は無いとして、本制御処理を終了する。
【0069】
一方、CPU70Aは、高電位順位が、順位Aよりも大きいと判断した場合(S42:YES)、中間計測線は1本以上有るとして、次に、低異常検索処理を開始する。この低異常検索処理では、CPU70Aは、最低電位の中間セルから最高電位の中間セルに向かうセル順序(昇順)で、各中間セルの計測セル電圧が、低異常セル電圧であるかどうかを判定していく。ここでのセル順序は、上記スイッチ制御処理のスイッチ順序とは逆である。
【0070】
具体的には、CPU70Aは、まず順位Aの計測セル電圧が、低異常セル電圧であるかどうかを判定する(S43)。低異常セル電圧は、低異常閾値以下の計測セル電圧をいう。低異常閾値は、第2閾値の一例であり、各セル1〜4のセル電圧E1〜E4のばらつきやセル電圧計測回路70Cの計測精度の許容範囲等を考慮して定められ、例えば、セルが過放電状態であるかどうかを判定するための過放電判定用閾値未満の値が好ましい。本実施形態では、低異常閾値は、S31で算出した推測値に係数を乗算したものであり、推測値の増減に応じて変更される。なお、この係数は、実際のセル電圧のバラツキ、誤差あるいは各ツェナーダイオード11〜14の順方向ドロップ電圧等を考慮したり実験等により定めることが好ましく、以下、上記係数は0.5とする。
【0071】
ただし、低異常閾値の変更範囲に下限値が定められている。これは、計測モジュール電圧Emが比較的に小さいときに、中間計測線の断線を検出できなくなることを回避するためである。例えば図7の断線パターン4では、前述したように、計測セル電圧E1は略0になると想定される。しかし、実際には、スイッチ21のオン抵抗等の影響により、計測セル電圧E1は、数百mV程度になることがある。
【0072】
ここで、仮に計測セル電圧E1が0.8Vとする。一方、例えば放電異常等により計測モジュール電圧Emが正常時よりも小さくなって推定値が1.5Vであるとき、低異常閾値は0.75V(=1.5V×0.5)になる。そうすると、計測セル電圧E1は、低異常閾値よりも大きいため、第1計測線61の断線を検出することができなくなってしまう。このため、低異常閾値の変更範囲に下限値が定められている。なお、下限値は、実験等により求めることができ、ノイズ等の影響を考慮して、所定範囲(例えば0.8V〜1.2V)としてもよい。以下、下限値は1Vとする。
【0073】
CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、低異常閾値よりも大きいと判断した場合(S43:NO)、当該計測セル電圧は低異常セル電圧ではないと判定して、順位Aに1を加算して(S44)、S42に戻る。順位Aが高電位順位に一致するまでに、低異常セル電圧が無ければ(S42:NO)、中間計測線は断線していないとして本制御処理を終了する。
【0074】
CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、低異常閾値以下であると判断した場合(S43:YES)、当該計測セル電圧は低異常セル電圧であると判定して、その正極端子に接続された中間計測線が断線していることを検出する(S45)。次に、CPU70Aは、順位Aに1を加算し(S46)、加算後の順位Aが高電位順位を超えたと判断した場合(S47:NO)、断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っていないとして、本制御処理を終了する。
【0075】
一方、CPU70Aは、順位Aが高電位順位以下であると判断した場合(S47:YES)、まだ断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っているとして、高異常検索処理を開始する。この高異常検索処理では、CPU70Aは、上記セル順序で、中間セルの計測セル電圧が、高異常セル電圧であるかどうかを判定していく。
【0076】
具体的には、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常セル電圧であるかどうかを判定する(S48)。高異常セル電圧は、高異常閾値以上の計測セル電圧をいう。高異常閾値は、第1閾値の一例であり、各セル1〜4のセル電圧E1〜E4のばらつきやセル電圧計測回路70Cの計測精度の許容範囲等を考慮して定められ、例えば、セルが過充電状態であるかどうかを判定するための過充電判定用閾値よりも大きい値が好ましい。本実施形態では、高異常閾値は、S31で算出した推測値に係数を乗算したものであり、推測値の増減に応じて変更される。なお、この係数は、実際のセル電圧のバラツキ、誤差あるいは各ツェナーダイオード11〜14のツェナー電圧等を考慮したり実験等により定めることが好ましく、以下、上記係数は1.4とする。
【0077】
ただし、高異常閾値の変更範囲に上限値が定められている。これは、上記セル電圧計測回路70Cの計測可能範囲や、ツェナーダイオード11〜14のツェナー電圧の影響による断線の誤検出を抑制するためである。例えば図6の断線パターン3では、計測セル電圧E3は5Vになる。一方、計測モジュール電圧Emが比較的に大きいために推定値が4.2Vであるとき、高異常閾値は5.88V(=4.2V×1.4)になる。そうすると、計測セル電圧E3は高異常閾値以下になるため、高異常セル電圧でないと判定され、第1計測線61の断線を検出することができなくなってしまう。このため、高異常閾値の変更範囲に上限値が定められている。
【0078】
なお、この上限値は、上記セル電圧の計測可能範囲の最大値、および、ツェナーダイオード11〜14のツェナー電圧のいずれか小さい方の値であることが好ましい。また、ノイズやツェナー電圧の変動等の影響を考慮して、上限値を、上記最大値(5V)を含む所定範囲(例えば4.9V〜5.1V)や、上記ツェナー電圧の想定値(6.5V)を含む所定範囲(例えば6.4V〜6.6V)としてもよい。以下、上限値は5Vとする。
【0079】
CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値よりも小さいと判断した場合(S48:NO)、S45に戻り、順位Aのセルの正極端子に接続された中間計測線が断線していることを検出し、順位Aに1を加算し(S46)、S47に進む。これにより、少なくとも、低異常セル電圧に対応するセルと、高異常セル電圧に対応するセルとの間の断線を検出することができる。一方、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値以上であると判断した場合(S48:YES)、順位Aに1を加算し(S49)、加算後の順位Aが高電位順位を超えたと判断した場合(S50:NO)、断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っていないとして、本制御処理を終了する。
【0080】
一方、CPU70Aは、順位Aが高電位順位以下であると判断した場合(S50:YES)、まだ断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っているとして、非高異常検索処理を開始する。この非高異常検索処理では、CPU70Aは、上記セル順序で、残りの中間セルの計測セル電圧が、高異常セル電圧でないかどうかを判定していく。
【0081】
具体的には、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値より小さいと判断した場合(S51:NO)、S42に戻る。このとき、順位A−1の中間計測線は断線していないとされる。一方、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値以上であると判断した場合(S51:YES)、順位A−1の中間計測線が断線していることを検出し(S52)、S49に戻る。これにより、互いに隣り合い、高異常セル電圧に対応する複数のセルの間の断線をも検出することができる。なお、S45,S52の処理が、断線検出処理の一例である。
【0082】
(6−2)具体例
図6の断線パターン3では、低異常検索処理で、計測セル電圧E2が低異常セル電圧であると判定され(S43:YES)、高異常検索処理で、計測セル電圧E3が高異常セル電圧であると判定される(S48:YES)。これにより、第2セル2と第3セル3の間に接続された第2計測線62が断線していることが検出される(S45)。また、非高異常検索処理で、計測セル電圧E4が高異常セル電圧でないと判定されるため(S51:YES)、第3セル3と第4セル4の間に接続された第3計測線63は断線していないとされる。
【0083】
図7の断線パターン4では、低異常検索処理および高異常検索処理の処理結果は上記断線パターン3と同じである。一方、非高異常検索処理で、計測セル電圧E4も高異常セル電圧であると判定されるため(S51:NO)、第3セル3と第4セル4の間に接続された第3計測線63も断線していることが検出される。なお、断線パターン1,2では、低異常検索処理で、低異常セル電圧がないとされ(S42:NO)、中間側処理が終了する。
【0084】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、スイッチ21〜24が、スイッチ順序で、オフからオンにされ再びオフにされる。そして、各セル1〜4に接続された一対の電圧計測線間の電圧が、当該セルに並列接続されたスイッチが再オフになった時以降であって、且つ、上記スイッチ順序が次のスイッチがオンになった時以降に、各セル1〜4のセル電圧として計測される。
【0085】
ここで、電圧計測線が断線している異常時では、計測セル電圧E1〜E4の中に、高異常セル電圧、および、低異常セル電圧の少なくとも一方が存在する。例えば全電圧計測線のうち端の電圧計測線のみ断線している場合、低異常セル電圧が存在する。また、全電圧計測線のうち中間の電圧計測線のみ断線している場合、高異常セル電圧および低異常セル電圧が存在する。そこで、本セル監視装置80では、計測セル電圧E1〜E4の中に、高異常セル電圧、および、低異常セル電圧の有無が判定され、その判定結果に基づき、電圧計測線の断線の有無を検出することができる。
【0086】
また、上記セル監視装置80では、低電位側処理および高電位側処理で複数の計測セル電圧が端側異常セル電圧であると判定された場合、中間側処理では、それらの複数の計測セルセル電圧のうち、最端のセルから最も離れた内側のセルのセル電圧だけが、処理対象に含まれる。これにより、低電位側処理および高電位側処理の判定結果に関係なく、全ての計測セルセル電圧E1〜E4を中間側処理の処理対象とする構成に比べて、セル監視装置80の処理負担を軽減することができる。
【0087】
<実施形態2>
図8は実施形態2を示す。前記実施形態1との相違は、中間側処理にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。また、図8に示す処理のうち、ステップ番号の末尾にαが付された処理が、上記実施形態1の図3に示す中間側処理と相違する。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0088】
本実施形態2のスイッチ制御処理のスイッチ順序、および、中間側処理のセル順序は、いずれも実施形態1とは逆である。即ち、上記実施形態1では、スイッチ順序は降順であり、セル順序は昇順であった。これに対し、本実施形態2では、スイッチ順序は昇順であり、セル順序は降順である。従って、本実施形態2のスイッチ制御処理では、図示しないが、図2に示すS2〜S5の順序が逆になる。また、このスイッチ制御処理を実行することにより、図6,7の断線パターン3,4では、コンデンサ51〜53の両端電圧は、括弧内の値になる。
【0089】
本実施形態2の中間側処理では、CPU70Aは、まず順位Aを高電位順位に設定し(S41α)、この順位Aのセルの計測セル電圧が以下の処理を行う最初の候補とされる。次に、CPU70Aは、順位Aが0であると判断した場合(S42α:NO)、中間計測線は無いとして、本制御処理を終了する。CPU70Aは、順位Aが0より大きいと判断した場合(S42α:YES)、上記低異常検索処理を開始し(S43)、順位Aの計測セル電圧が、低異常閾値よりも大きいと判断した場合(S43:NO)、順位Aから1を減算して(S44α)、S42αに戻る。
【0090】
CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、低異常閾値以下であると判断した場合(S43:YES)、順位A−1の中間計測線が断線していることを検出する(S45α)。次に、CPU70Aは、順位Aから1を減算し(S46α)、減算後の順位Aが0であると判断した場合(S47α:NO)、断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っていないとして、本制御処理を終了する。
【0091】
一方、CPU70Aは、順位Aが0よりも大きいと判断した場合(S47α:YES)、まだ断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っているとして、高異常検索処理を開始する(S48)。
【0092】
CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値よりも小さいと判断した場合(S48:NO)、S45αに戻る。一方、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値以上であると判断した場合(S48:YES)、順位Aから1を減算し(S49α)、減算後の順位Aが0であると判断した場合(S50α:NO)、断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っていないとして、本制御処理を終了する。
【0093】
一方、CPU70Aは、順位Aが0よりも大きいと判断した場合(S50α:YES)、まだ断線検出の有無を判断していない中間計測線は残っているとして、非高異常検索処理を開始する(S51)。CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値より小さいと判断した場合(S51:NO)、S42に戻る。このとき、順位A−1の中間計測線は断線していないとされる。一方、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、高異常閾値以上であると判断した場合(S51:YES)、順位A+1の中間計測線が断線していることを検出し(S52α)、S49αに戻る。これにより、互いに隣り合い、高異常セル電圧に対応する複数のセルの間の断線をも検出することができる。なお、S45α,S52αの処理が、断線検出処理の一例である。
【0094】
<実施形態3>
図9は実施形態3を示す。前記実施形態1,2との相違は、中間側処理にあり、その他の点は前記実施形態1,2と同様である。また、図9に示す処理のうち、ステップ番号の末尾にβが付された処理が、上記実施形態2の図8に示す中間側処理と相違する。従って、実施形態1,2と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0095】
本実施形態3のスイッチ制御処理のスイッチ順序と、中間側処理のセル順序が同じである点で、上記実施形態1,2と異なる。具体的には、本実施形態3のスイッチ順序は、降順であり、実施形態1と同じであり、実施形態2とは逆である。また、本実施形態3のセル順序も降順であり、実施形態2と同じであり、実施形態1とは逆である。
【0096】
上記実施形態1,2では、CPU70Aは、低異常検索処理(S43)、高異常検索処理(S48)、非高異常検索処理(S51)の順で実行した。これに対し、本実施形態3の中間側処理では、図8に対し、低異常検索処理(S43)の代わりに高異常検索処理(S43β)を実行し、高異常検索処理(S48)の代わりに低異常検索処理(S48β)を実行する。また、CPU70Aは、非高異常検索処理(S51)の代わりに、非低異常検索処理(S51β)を実行する。この非低異常検索処理では、CPU70Aは、上記セル順序で、残りの中間セルの計測セル電圧が、低異常セル電圧でないかどうかを判定していく。
【0097】
具体的には、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、低異常閾値より大きいと判断した場合(S51β:NO)、S42αに進む。一方、CPU70Aは、順位Aの計測セル電圧が、低異常閾値以下であると判断した場合(S51β:YES)、順位A+1の中間計測線が断線していることを検出し(S52α)、S49αに戻る。これにより、互いに隣り合い、低異常セル電圧に対応する複数のセルの間の断線をも検出することができる。
【0098】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0099】
上記実施形態では、セル監視装置71は、ツェナーダイオード11〜14を有する構成であった。しかし、これに限らず、セル監視装置71は、ツェナーダイオード11〜14を有しない構成や、ツェナーダイオード11〜14に代えて通常のダイオードを有する構成でもよい。
【0100】
上記実施形態では、セル監視装置71は、RCフィルタ101〜104を有する構成であった。しかし、これに限らず、セル監視装置71は、RCフィルタ101〜104を有しない構成でもよい。
【0101】
上記実施形態では、コンデンサ51〜54の容量は、均一であったが、これに限らず、不均一でもよい。この場合、スイッチ制御処理でのスイッチ21〜24のオン時間は、容量が最も大きいコンデンサが十分に放電可能な時間に一律に設定してもよいし、各スイッチ21〜24に対応するコンデンサ51〜54の容量に応じた時間に個別に設定してもよい。
【0102】
上記実施形態では、セル監視部70は、1つのCPUで制御処理を実行する構成であった。しかし、セル監視部70は、これに限らず、複数のCPUで制御処理を実行する構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などのハード回路で制御処理を実行する構成や、ハード回路及びCPUの両方で制御処理を実行する構成でもよい。例えば上記スイッチ制御処理、セル電圧計測処理、低電位側処理、高電位側処理、閾値変更処理、および、中間側処理の少なくとも2つを、別々のCPUやハード回路で実行する構成でもよい。
【0103】
上記実施形態では、セル監視部70は、電圧計測線60〜64のうちどれが断線したかを検出する構成であった。しかし、これに限らず、セル監視部70は、例えば端側異常セル電圧、低異常セル電圧、高異常セル電圧の少なくとも1つの有無を判定することにより、単に断線の有無だけを検出する構成でもよい。また、セル監視部70は、低異常セル電圧、高異常セル電圧の両方が有ると判定した場合、低異常セル電圧に対応するセルと高異常セル電圧に対応するセルとの間の電圧計測線が断線していることを検出する構成でもよい。これにより、単に断線の有無だけでなく、断線している電圧計測線がどの範囲内にあるかをおおよそ特定することができる。
【0104】
上記実施形態では、スイッチ制御処理は、スイッチ21〜24に、1つずつ時分割で放電動作を順次実行させる処理であったが、これに限らず、一のスイッチのオン期間と、次の順位のスイッチのオン期間とが一部重なっていてもよい。また、スイッチ制御処理は、互いに隣り合う複数個のスイッチを、上記スイッチ順序で、1つずつずらしながら順次選択しつつ、選択された複数個のスイッチに同時に放電動作をさせる構成でもよい。例えば、第4及び第3のスイッチ24,23に放電動作を実行させ、第3及び第2のスイッチ23,22に放電動作を実行させ、第2及び第1のスイッチ22,21に放電動作を実行させ、最後に第1スイッチ21に放電動作を実行させる構成でもよい。この構成であれば、スイッチを1つずつオンオフさせる構成に比べて、セル1〜4やコンデンサ51〜54からの放電時間を短縮することができ、また、各スイッチ21〜24の放電動作後のセル1〜4のセル電圧のバラツキを抑制することができる。
【0105】
上記実施形態では、セル監視部70は、全てのスイッチ21〜24の放電動作終了後、セル1〜4のセル電圧をまとめて計測した。しかし、これに限らず、セル監視部70は、スイッチ制御処理に並行してセル電圧計測処理を実行してもよい。即ち、各セルのセル電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが放電動作により再オフになった時以降であって、且つ、次のスイッチが放電動作によりオンになった時以降に計測する構成であればよい。例えば、第4スイッチ24が放電動作により再オフになり、且つ、次の第3スイッチ23が放電動作によりオンになった時またはそれ以降に、第4セル4のセル電圧を検出すればよい。
【0106】
上記実施形態では、モジュール電圧計測処理において、グランド線60と第4計測線64との間の電圧を、モジュール電圧Emとして計測する構成であった。しかし、これに限らず、セル電圧計測処理での各計測セル電圧を合算し、その合算値をモジュール電圧Emとする構成でもよい。但し、例えば断線によってコンデンサにツェナー電圧が印加される場合、計測セル電圧Eは、本来6.5Vではなく、セル電圧計測回路70Cの上記計測可能範囲により、5Vになり、正確な値でなくなる。その結果、上記合算値によるモジュール電圧Emも正確な値でなくなる。これに対し、上記実施形態の構成であれば、計測可能範囲の影響なく、モジュール電圧Emを正確に計測することができる。
【0107】
上記実施形態では、セル監視部70は、低電位側処理の次に高電位側処理を実行する構成であった。しかし、これに限らず、セル監視部70は、高電位側処理の次に低電位側処理を実行する構成や、高電位側処理および低電位側処理を並行して実行する構成でもよい。更に、セル監視部70は、低電位側処理及び高電位側処理の少なくとも一方を、上記スイッチ制御処理の前に実行する構成でもよい。
【0108】
上記実施形態では、セル監視部70は、中間側処理において、非高異常検索処理や非低異常検索処理を実行する構成であった。しかし、セル監視部70は、これに限らず、非高異常検索処理や非低異常検索処理を実行しない構成でもよい。この構成でも、少なくとも、高異常検索処理で検索された高異常セル電圧に対応するセルと、低異常検索処理で検索された低異常セル電圧に対応するセルとの間に接続された中間計測線の断線を検出することができる。
【0109】
上記実施形態1〜3とは異なり、スイッチ順序およびセル順序が昇順である構成でもよい。また、スイッチ順序は、昇順や降順でなく、ランダムな順序でもよい。また、上記実施形態では、セル監視部70は、全てのセル1〜4およびスイッチ21〜24を対象として上記制御処理を実行する構成であった。しかし、これに限らず、セル1〜4の一部のセル、および、当該セルに対応する一部のスイッチだけを対象として上記制御処理を実行する構成でもよい。この構成でも、対象とされたセルに接続された電圧計測線について断線の有無を判定することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1〜4:セル 11〜14:ツェナーダイオード 21〜24:スイッチ 31〜34:放電抵抗 41〜44:フィルタ用抵抗、51〜54:フィルタ用コンデンサ 60〜64:電圧計測線 70:セル監視部 71:セル監視装置 72:モジュール電圧計測回路 81:組電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが直列接続された蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記複数のセルそれぞれに電線を介して並列接続された複数のスイッチと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のスイッチのうち少なくとも2つのスイッチを、予め定められた順序で、オフからオンにして再オフにするスイッチ制御処理と、
前記各セルに接続された一対の前記電線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが前記再オフになった時以降であって、且つ、前記順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、前記各セルに対応するセル電圧として計測するセル電圧計測処理と、
前記セル電圧計測処理で計測した複数のセル電圧の中に、第1閾値以上である高異常セル電圧、および、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である低異常セル電圧の少なくとも一方が有るかどうかを判定する異常判定処理と、
前記異常判定処理で前記高異常セル電圧および前記低異常セル電圧の少なくとも一方が有ると判定した場合、前記電線が断線していることを検出する断線検出処理と、を実行する構成を有する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記異常判定処理で前記高異常セル電圧および前記低異常セル電圧の両方が有ると判定した場合、前記高異常セル電圧に対応するセルと、前記低異常セル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることを検出する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
スイッチ制御処理では、前記少なくとも2つのスイッチを、前記蓄電モジュールの一端側のセルから他端側のセルに向かうスイッチ順序で、オフからオンにして再オフにし、
前記セル電圧計測処理では、
前記各セルに接続された一対の前記電線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが前記再オフになった時以降であって、且つ、前記スイッチ順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、前記各セルに対応するセル電圧として計測する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記異常判定処理では、
前記他端側のセルに対応するセル電圧を先頭に、前記スイッチ順序とは逆のセル順序で、前記低異常セル電圧であるかどうかを判定していく低異常検索処理と、
前記低異常検索処理で前記低異常セル電圧であると判定した場合、当該低異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記高異常セル電圧であるかどうかを判定していく高異常検索処理と、
前記高異常検索処理で前記高異常セル電圧であると判定した場合、当該高異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記高異常セル電圧でないかどうかを判定していく非高異常検索処理と、を実行し、
前記断線検出処理では、
前記異常判定処理で、前記低異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルと、最後に前記高異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることを検出する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項5】
請求項3に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記異常判定処理では、
前記一端側のセルに対応するセル電圧を先頭に、前記スイッチ順序と同じセル順序で、前記高異常セル電圧であるかどうかを判定していく高異常検索処理と、
前記高異常検索処理で前記高異常セル電圧であると判定した場合、当該高異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記低異常セル電圧であるかどうかを判定していく低異常検索処理と、
前記低異常検索処理で前記低異常セル電圧であると判定した場合、当該低異常セル電圧の次のセル電圧を先頭に、前記セル順序で、前記低異常セル電圧でないかどうかを判定していく非低異常検索処理と、を実行し、
前記断線検出処理では、
前記異常判定処理で、前記高異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルと、最後に前記低異常セル電圧であると判定されたセル電圧に対応するセルとの間の電線が断線していることを検出する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記複数のセルの両端に接続された最端の電線同士の間の電圧を、モジュール電圧として計測するモジュール電圧計測処理と、
前記第1閾値および前記第2閾値を、前記モジュール電圧が小さいほど小さい値に変更する閾値変更処理と、を実行する構成を有する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記複数のセル電圧のうち、最端のセルまたは当該最端のセルを先頭に連続するセル群に対応する1または複数のセル電圧が、第3閾値以下である端側異常セル電圧であるかどうかを判定する端側判定処理と、
前記端側判定処理で前記端側異常セル電圧であると判定した場合、当該端側異常セル電圧に対応するセルの両端に接続された2本の電線のうち、前記最端側の電線が断線していることを検出する端側断線検出処理と、を実行する構成を有する蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項8】
請求項7に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記端側判定処理で複数のセル電圧が前記端側異常セル電圧であると判定した場合、前記異常判定処理では、前記複数のセル電圧のうち、前記最端のセルから最も離れた内側のセル以外のセル電圧を、処理対象外とする、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記制御部は、
前記複数のセルの両端に接続された最端の電線同士の間の電圧を、モジュール電圧として計測するモジュール電圧計測処理と、
前記モジュール電圧を、前記複数のセルの総数と前記端側判定処理で前記端側異常セル電圧と判定されたセル電圧に対応するセルの数との差で除算した値である推測値を算出し、前記第1閾値および前記第2閾値を、前記推測値が小さいほど小さい値に変更する閾値変更処理と、を実行する構成を有する、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項10】
請求項6または9に記載の蓄電モジュールのセル監視装置であって、
前記複数のセルそれぞれに並列接続された複数の定電圧素子を備え、
前記制御部は、
前記閾値変更処理では、前記第1閾値の変更範囲の上限値が、前記定電圧素子の反応電圧値、または、前記セル電圧計測処理での計測可能範囲の最大値である、蓄電モジュールのセル監視装置。
【請求項11】
蓄電モジュールを構成する複数のセルそれぞれに電線を介して並列接続された複数のスイッチを備えるセル監視装置に、
前記複数のスイッチのうち少なくとも2つのスイッチを、予め定められた順序で、オフからオンにして再オフにするスイッチ制御処理と、
前記各セルに接続された一対の前記電線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが前記再オフになった時以降であって、且つ、前記順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、前記各セルに対応するセル電圧として計測するセル電圧計測処理と、
前記セル電圧計測処理で計測した複数のセル電圧の中に、第1閾値以上である高異常セル電圧、および、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である低異常セル電圧の少なくとも一方が有るかどうかを判定する異常判定処理と、
前記異常判定処理で前記高異常セル電圧および前記低異常セル電圧の少なくとも一方が有ると判定した場合、前記電線が断線していることを検出する断線検出処理と、を実行させる、断線検出プログラム。
【請求項12】
蓄電モジュールを構成する複数のセルそれぞれに電線を介して並列接続された複数のスイッチを備えるセル監視装置において前記電線の断線検出方法であって、
前記複数のスイッチのうち少なくとも2つのスイッチを、予め定められた順序で、オフからオンにして再オフにし、
前記各セルに接続された一対の前記電線間の電圧を、当該セルに並列接続されたスイッチが前記再オフになった時以降であって、且つ、前記順序が次のスイッチが前記オンになった時以降に、前記各セルに対応するセル電圧として計測し、
その計測した複数のセル電圧の中に、第1閾値以上である高異常セル電圧、および、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である低異常セル電圧の少なくとも一方が有るかどうかを判定し、
その判定で前記高異常セル電圧および前記低異常セル電圧の少なくとも一方が有ると判定した場合、前記電線が断線していることを検出する、断線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11596(P2013−11596A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122692(P2012−122692)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】