説明

蓄電材料およびそれを用いた二次電池

【課題】クロム等の毒性の高い物質を使用することなく、水中で安定的に機能する蓄電材料、およびそれを用いた水溶液系二次電池を提供する。
【解決手段】慨蓄電材料は、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル等の親水性の主鎖に、環状ニトロキシドが置換することにより形成されたニトロキシドラジカル基からなる側鎖を少なくとも有するポリマーからなり、このポリマーの主鎖は架橋構造を含むものである。このポリマーに水と共に支持電解質を含有させて含水ゲルとする事により、水溶液系二次電池の正極または負極として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿あるいは水中で膨潤して含水ゲルを形成する有機ラジカルポリマーを用いた蓄電材料、およびそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
安定ラジカル分子を高分子化したポリマーが、酸化還元樹脂の一つとして従来から合成されている。このようなポリマーは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(以下「TEMPO」と略すことがある)が置換したアクリレートやスチレン誘導体のポリマーに代表され、例えばアルコールのアルデヒドやケトンへの酸化触媒能などを示す。
【0003】
本発明者は、電極反応が一般に一電子移動であるため安定ラジカル経由の有機電極反応が可逆性高く生起する点に着目し、このような酸化還元能を電子の授受機能としてとらえ、電荷貯蔵材料として応用している。
【0004】
【化1】

【0005】
例えば、電荷貯蔵材料の例として、有機ラジカルを側鎖に用いたポリマーの蓄電性能に着目し、正極、負極およびプロピレンカーボネート、アセトニトリルなどを用いた有機電解液を構成要素とする非水系二次電池の電極活物質として応用した例を先に出願した(特許文献1〜8参照)。
【0006】
しかしながら、これらの出願は、非水系二次電池向けの蓄電材料として開発に関するものであり、水中における安定的な導電性については全く検討されていない。
【0007】
一方、陽性レドックス・ゲル電解質と、陰性レドックス・ゲル電解質と、この二者の間の隔膜と、陽性レドックス・ゲル電解質に電気的に接続された陽極と、陰性レドックス・ゲル電解質に電気的に接続された陰極とから成る少なくとも一つのセルを含むレドックス・ゲル電池が開示されている(特許文献9参照)。具体的には、陽性レドックス・ゲル電解質と陰性レドックス・ゲル電解質に全ての反応種または反応物質がゲルに含まれるものであり、相間移動反応が含まれないことにより、レドックス・フロー電池で発生する系内の電解液の循環に関係するポンピング損失が最小限に抑えられ、高効率につながるとの記載がある。
【0008】
しかしながら、この技術は陽性レドックス・ゲル電解質と、陰性レドックス・ゲル電解質を組み合わせることで高効率化をはたしており、電極反応に用いるレドックス・ゲルは従来からあるもので、かつ、クロムのような毒性の高い重金属を含んでおり、環境負荷が高いという問題もある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−227945号公報
【特許文献2】特開2004−227946号公報
【特許文献3】特開2004−228008号公報
【特許文献4】特開2004−259618号公報
【特許文献5】特開2006−73239号公報
【特許文献6】特開2006−73241号公報
【特許文献7】特開2007−35375号公報
【特許文献8】特開2007−184227号公報
【特許文献9】特表2002−518795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、毒性の高い物質を用いることなく、水中で安定的に機能する蓄電材料およびそれを用いた二次電池を提供することを課題とする。
【0011】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、親水性の主鎖を有し、ニトロキシドラジカル基からなる側鎖を少なくとも有するポリマーを含水させた含水ゲルが、蓄電材料として使用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
かかる本発明の第1の態様は、親水性の主鎖に、ニトロキシドラジカル基からなる側鎖を少なくとも有するポリマーと、水とを含有する含水ゲルからなることを特徴とする蓄電材料にある。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記ポリマーの主鎖が、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、およびそれらの共重合体からなる群から選択される一種であることを特徴とする第1の態様に記載の蓄電材料にある。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記ニトロキシドラジカル基からなる側鎖が、前記ポリマーの主鎖に環状ニトロキシドが置換することにより形成されたものであることを特徴とする第1又は2の態様に記載の蓄電材料にある。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記環状ニトロキシドが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(=TEMPO)、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル(以下PROXYLと略すことがある)、又は4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキシル−3−オキシド(以下ニトロニルニトロキシドと略すことがある)であることを特徴とする第3の態様に記載の蓄電材料にある。
【0016】
本発明の第5の態様は、前記ポリマーの主鎖が架橋構造を含むものであることを特徴とする第1〜4の何れかの態様に記載の蓄電材料にある。
【0017】
本発明の第6の態様は、前記水と共に支持電解質を含有していることを特徴とする第1〜5の何れかの態様に記載の蓄電材料にある。
【0018】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様に記載の蓄電材料を活物質とし、金属電極と、電解質水溶液とを具備することを特徴とする二次電池にある。
【0019】
本発明の第8の態様は、前記金属電極は、亜鉛、アルミニウム、またはニッケルからなることを特徴とする第7の態様に記載の二次電池にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明で用いられるポリマーは、親水性の主鎖を有し、ニトロキシドラジカル基からなる側鎖を少なくとも有する有機ラジカルポリマーである。
【0021】
ここで、有機ラジカルポリマーの主鎖は、親水性を有し、高分子鎖内に水分あるいは水溶性電解質を取り込んでゲル化できるものであればいかなるものでもよい。
【0022】
ここでいう親水性を有するポリマーの主鎖とは、水に対する親和性が高いポリマー鎖を指す。より具体的には、主鎖となるポリマー鎖からなるポリマー単体と多量の水とを接触させることで、ポリマーの10質量%以上の水が含浸できて、かつゲル化するポリマー鎖を指す。
【0023】
具体的には、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、およびそれらの共重合体からなる群から選択されるものを主鎖とすることができる。
【0024】
また、有機ラジカルポリマーの主鎖は、架橋構造を含むものであってもよい。架橋構造を含むことにより、任意に導電性含水ゲルの機械的強度を高めることが可能となる。
【0025】
本発明において、主鎖が架橋構造を有するとは、高分子化合物が共有結合等により分子間に結合を生じ、三次元ポリマーもしくは網目ポリマーが形成された構造を有することを意味する。本発明の架橋構造を有する重合体は、架橋点の割合に依存して、ある程度の架橋点間距離で、三次元的又は網目状の高分子構造が形成されたものとなる。
【0026】
架橋構造を有する重合体の製造方法は特に限定されないが、例えば、重合反応後に親水性の主鎖を形成するモノマーと、少なくとも一種の多官能性モノマーとを共重合させることにより製造することができる。
【0027】
多官能性モノマーとしては、重合反応後に親水性の主鎖を形成するモノマーと重合する部位を2つ以上、例えば2〜4程度有するモノマーを使用する。重合反応後に親水性の主鎖を形成するモノマーと共重合することができる官能基としては、例えばエチレン系二重結合が挙げられる。多官能性モノマーとして、具体的には、ジビニルベンゼン、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等の多官能ビニル系モノマー等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用できる有機ラジカルポリマーの側鎖置換基を構成するためには、水中でも安定な酸化還元を繰り返すラジカル化合物を使用することができ、水中で安定な一電子移動を行うラジカル化合物であればいかなるものでもよく、例としては、環状ニトロキシドラジカルが挙げられる。
【0029】
環状ニトロキシドラジカルは、環状ニトロキシドを主鎖に置換することに形成され、より詳しくは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(=TEMPO)、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル(=PROXYL)、又は4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキシル−3−オキシド(=ニトロニルニトロキシド)を置換させることにより形成されたものを挙げることができる。
【0030】
また、ラジカル化合物は、ラジカル化合物の前駆体となる化合物、すなわち、電極反応等で酸化又は還元されてラジカル状態となる化合物でもよく、この場合、ゲルを作成した後に電極反応等の酸化もしくは還元反応によりラジカル部位を生起させればよい。
【0031】
本発明に使用できる有機ラジカルポリマーの数平均分子量は、水に膨潤するが溶け出さない限り特に限定されないが、好ましくは500以上500000以下である。
【0032】
本発明の蓄電材料は、このような有機ラジカルポリマーと水とを含有するものであり、水の少なくとも一部がポリマーの主鎖に取り込まれてゲル化したものである。
【0033】
本発明の蓄電材料とする場合、有機ラジカルポリマーの含水前と含水後の質量変化が、膨潤時にそれほど大きな体積変化を伴わない範囲であることが好ましい。具体的には0.1質量%以上1000質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明の蓄電材料は水と共に支持電解質を含有してもよい。支持電解質を含有することにより、電極活物質の内部抵抗の低下ができることで、一段と優れた電池特性を備えることが可能となる。支持電解質を含有する場合の濃度は、水に溶解する限り特に限定されないが、好ましくは0.01〜10mol/lである。
【0035】
本発明で支持電解質として使用できる電解質塩は当該分野で公知の電解質塩であってよい。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化ニッケル、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸ニッケルなどを挙げることができる。
【0036】
本発明の二次電池は、少なくとも正極、負極及び電解液を構成成分とし、充電・放電反応といった電極反応に直接関与する正極もしくは負極の活物質として、上述した蓄電材料を用いたものである。本発明の蓄電材料は、二次電池の電極活物質の役割を果たす材料であり、正極活物質、負極活物質の何れに用いることもできる。
【0037】
すなわち、本発明に係る二次電池は、少なくとも正極と、負極と、電解液とを構成部材とし、正極もしくは負極の活物質として本発明の蓄電材料を用いたものであり、蓄電材料が正極もしくは負極と共に設けられていてもよいし、正極又は負極を蓄電材料で構成するようにしてもよい。
【0038】
なお、蓄電材料は、含水ゲルとして二次電池に組み込む必要はなく、含水させる前の有機ラジカルポリマーの薄膜などを二次電池の構成部材に設け、電解液を導入させる段階で電解液を薄膜に含水させて蓄電材料とすればよい。
【0039】
電極上への蓄電材料の形成は、本発明の蓄電材料に加えて、当該分野で公知の各種材料を添加して用いることができる。例えば、導電補助材、結着剤、又は電解質等の添加剤を含有してもよい。
【0040】
導電補助材は、電子伝導性を補助して集電を容易にし、電気抵抗を低減する効果があるものである。例えば、炭素素材、金属材料、導電性高分子、イオン伝導材などが挙げられ、具体的には、グラファイト、ケッチェンブラック、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素素材、ニッケル、チタン、銅、ステンレススチール、銀、金、白金、アルミニウム、コバルト、鉄、クロム等の金属材料、ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子等などが例示できる。
【0041】
結着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビリニデン、テトラフルオロエチレンポリマー、フッ化ビリニデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合ポリマー等のフッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体、スチレン−ブタジエンラバー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ポリエチレングリコール等などが挙げられる。
【0042】
本発明の二次電池において、電極活物質層として機能する含水ゲルからなる蓄電材料を形成する基材の種類に制限はなく、例えば、電極集電体や、表面に電極集電体層が形成された基材が用いられる。例えば、アルミニウム及びその合金、ニッケル、ステンレス、金、銀、銅、導電性の炭素電極素材、ガラス、プラスチック等が挙げられる。ガラスやプラスチックなど、通常、表面が絶縁体である場合は原則として表面に導電性層を設ける。導電性層としては、アルミニウム及びその合金、ニッケル、金、銀、銅、ITO等の導電体や、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子が好適に利用できる。なお、基材及びその表面が絶縁体であっても、最終的に蓄電デバイスを構成したときに電極活物質層として機能すればよく、例えば、対極との間に積層されるセパレーターを基材として、その上に、塗布液を塗布してもよい。セパレーターとしては、例えば、不織布や多孔性フィルムが挙げられる。集電体は当該分野で公知の集電体をいずれも使用することができる。例えば金、銀、白金、炭素、アルミなどが挙げられる。
【0043】
なお、上述した基材上に含水ゲルからなる蓄電材料を形成する場合には、上述したような含水ゲルを構成する有機ラジカルポリマーの薄膜を形成しておき、二次電池を構成する段階で電解液を導入することにより、薄膜に含水させて蓄電材料とすればよい。
【0044】
本発明の二次電池に使用できる負極は、当該分野で公知の負極であってよく、例えば亜鉛、アルミ、鉄、ニッケル、スズなどが挙げられる。これらの負極の中でも、亜鉛、アルミが高い起電力を得られること、および価格の点から特に好ましく使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の詳細について合成例、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
<重合体の合成>
[製造例1]
(製造例1−1)N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミドの合成
【0047】
【化2】

【0048】
4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 2.5g(15.9mmol)をベンゼン中、アクリルクロライド 1.29ml(15.9mmol)と反応させる。室温で2時間攪拌後、析出した固体を回収し、再結晶精製を経て白色板上結晶としてN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミド 1.38g(収率41%)を得た。
【0049】
得られたN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミドのNMR測定データ、質量分析、および元素分析結果を以下に示す。
【0050】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):6.30(d, 1H, J=1.5Hz), 6.09−6.04(q, 1H), 5.63(d, 1H, J=11.6Hz), 5.40(s, 1H), 4.36(m, 1H), 1.92(d, 1H, J=12.5Hz), 1.27(s, 6H), 1.13(s, 6H), 0.95(t, 2H, J=12.2Hz)
【0051】
13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):164.7, 131.3, 126.0, 50.9, 45.2, 42.7, 35.1, 28.6.
【0052】
Mass(m/z): [M+1]: found,211;calcd,211.
【0053】
元素分析Found:C,62.9; H, 9.5; N, 11.1%. Calcd : C,63.9; H, 9.7; N, 11.7%
【0054】
(製造例1−2)ポリ(N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミド)の合成
【0055】
【化3】

【0056】
N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミド 100mg(0.47mmol)をエタノ−ル中、アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す) 3.8mg(24μmol)を開始剤として、70℃で二時間攪拌し、ポリ(N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミド)を無色透明固体83mg(収率83%)として得た。
【0057】
(製造例1−3)ポリ(N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル)−アクリルアミド)の合成
【0058】
【化4】

【0059】
ポリ(N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アクリルアミド) 100mgを、3等量のm−クロロ過安息香酸(mCPBAと略す)246mgとアセトン中で24時間攪拌した。橙色固体を回収し、メタノールを用いて洗浄した。得られたポリマーの分子量は数平均分子量38000(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)2.2であった。(収量80mg、収率80%)ESR測定およびSQUID磁化測定よりラジカルの定量的な発生を確認した。
【0060】
[製造例2]
(製造例2−1)4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの合成
【0061】
【化5】

【0062】
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 2.57g(14.9mmol)、炭酸ナトリウム 944mg(8.92mmol)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(=[Ir(cod)Cl]2)103mg(141μmol)をトルエン中、アルゴン雰囲気下で攪拌し、さらに酢酸ビニル 2.8ml(29.2mmol)を加え、90℃で5時間反応させた。エーテル抽出、クロロホルムを用いカラム精製を経て4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 1.44g(収率49%)を得た。
【0063】
得られた4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのNMR測定データ、質量分析、および元素分析結果を以下に示す。
【0064】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):6.44(dd, 1H, J=8.7, 7.7Hz), 4.47(d, 1H, J=5.0Hz), 4.19(m, 2H), 1.68(t, 2H, J=12.1Hz), 1.33(s, 6H), 1.30(s, 6H).
【0065】
13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):150, 88.0, 58.5, 44.0, 20.3.
【0066】
Mass(m/z): [M]:found,198; calcd,198.
【0067】
元素分析Found:C,66.2; H,9.9; N, 7.0%. Calcd : C,67.0; H, 9.7; N, 7.1%
【0068】
(製造例2−2)ポリ(4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)の合成
【0069】
【化6】

【0070】
4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 97.0g(489mmol)をジクロロメタン溶媒 550ml中、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体 1.23ml(9.8mmol)を開始剤として−20℃で20時間反応させた。メタノール中に分散洗浄させた後、50℃で12時間減圧乾燥することでポリ(4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)を得た(収量92.6g、収率96%)。
【0071】
[製造例3]
(製造例3−1)4−グリシジロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの合成
【0072】
【化7】

【0073】
50質量%水酸化ナトリウム水溶液 4mlにエピクロロヒドリン 2.5ml(30mmol)テトラブチルアンモニウム硫酸水素ナトリウム 84mg(239μmol)を加え、攪拌する。4−ヒドロキシ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン−1−オキシル 1.03g(5.98mmol)をさらに加え、室温で12時間反応させる。エーテル抽出、エ−テル/ヘキサン混合溶媒(混合容積比=1/1)を用いカラム精製を経て4−グリシジロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 1.14g(収率84%)を得た。
【0074】
得られた4−グリシジロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのNMR測定データ、質量分析、および元素分析結果を以下に示す。
【0075】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):3.71(dd, 1H, J=11.3, 3.0Hz), 3.64(m, 1H), 3.40(dd, 1H, J=11.3, 5.8Hz), 3.11(m, 1H), 2.77(t, 1H, J=4.6Hz), 2.58(dd, 1H, J=5.2, 2.7Hz), 1.92(m, 2H), 1.44(q, 2H, J=12.2Hz), 1.14(s, 6H).
【0076】
13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):71.1, 68.9, 58.9, 50.9, 44.5, 44.3, 32.0 ,20.5.
【0077】
Mass(m/z): [M]: found,228; calcd,228.
【0078】
元素分析Found:C,62.9; H, 9.5; N, 6.2%. Calcd : C,63.1; H, 9.7; N, 6.1%
【0079】
(製造例3−2)ポリ((2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル)−グリシジルエーテル)の合成
【0080】
【化8】

【0081】
4−グリシジロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 228mg(1.00mmol)をテトラヒドロフラン(=THF)中、tert−ブトキシカリウム(=t−BuOK) 5.6mg(0.05mmol)を重合開始剤として加え、窒素雰囲気下、60℃で24時間反応後、ジエチルエーテルへの再沈殿精製を経て橙色粉末としてポリ((2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−オキシル−4−イル)−グリシジルエーテル)を得た。得られたポリマーの分子量は数平均分子量3600(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)1.4であった(収量150mg、収率66%)。
【0082】
[製造例4]
(製造例4−1)4−ビニルベンズアルデヒドの合成
【0083】
【化9】

【0084】
メチルトリフェニルホスフィンブロミド 2.70g(7.58mmol)をTHF中、炭酸カリウム 1.24gと、氷浴中で攪拌し、イリドを形成させる。テレフタルアルデヒド 1.00g(7.46mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。クロロホルム抽出、およびヘキサン/クロロホルム混合溶媒(混合容積比=1/2)を用いカラム精製を経て4−ビニルベンズアルデヒド 531mg(収率54%)を得た。
【0085】
得られた4−ビニルベンズアルデヒドのNMR測定データ、および質量分析結果を以下に示す。
【0086】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):9.94(s, 1H), 7.78(d, 2H, J=8.5Hz), 7.61(d, 2H, J=8.5Hz), 6.76(dd, 4H, J=10.7, 17.5Hz), 5.86(d, 1H, J=17.4Hz), 5.38(d, 1H, J=11.0Hz).
【0087】
13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):191.1, 142.9, 135.5, 135.3, 129.6, 126.3, 117.0.
【0088】
Mass(m/z): [M]: found,132; calcd,132.
【0089】
(製造例4−2)4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン−1,3−ジオールの合成
【0090】
【化10】

【0091】
4−ビニルベンズアルデヒド 3.11g(23.5mmol)を水、メタノール混合溶媒中、酢酸ナトリウム 2.12g(25.8mmol)とビスヒドロキシルアンモニウムスルフェート塩 6.36g(25.8mmol)を加え、24時間攪拌した。反応終了後、溶媒を除去し、固体を水洗し、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン−1,3−ジオール 4.92g(収率80%)を得た。
【0092】
得られた4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン−1,3−ジオールのNMR測定データ、質量分析、および元素分析結果を以下に示す。
【0093】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.48(q, 4H, J=27.7, 4.0Hz), 6.76(dd, 1H, J=10.6, 17.7Hz), 5.84(d, 1H, J=18.0Hz), 5.22(d, 1H, J=10.7Hz), 4.64(s, 1H), 1.15(s, 6H).
【0094】
13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):165.0, 145.3, 139.8, 131.5, 128.3, 115.8, 93.3, 69.3, 37.5, 32.3, 27.0, 19.7.
【0095】
Mass(m/z): [M+1]: found,263; calcd,263.
【0096】
元素分析Found:C,49.1; H, 5.7; N, 8.9%. Calcd:C,49.5; H,6.1; N,8.9%
【0097】
(製造例4−3)1,3−ビス−(t−ブチル−ジメチルシロキシ)−4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジンの合成
【0098】
【化11】

【0099】
4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン−1,3−ジオール 3.00g(11.4mmol)をジメチルホルムアミド(=DMF)中、イミダゾ−ル 3.89g(57.2mmol)とtert−ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS−Clと略す) 8.6g(57.2mmol)を加えて、50℃、アルゴン雰囲気下で12時間攪拌した。クロロホルム抽出、およびヘキサンを用いたカラム精製を経て1,3−ビス−(t−ブチル−ジメチルシロキシ)−4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン 3.81g(収率68%)を得た。
【0100】
得られた1,3−ビス−(t−ブチル−ジメチルシロキシ)−4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジンのNMR測定データ、質量分析、および元素分析結果を以下に示す。
【0101】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.37(s, 4H), 6.76(dd, 4H, J=17.7, 11.1Hz), 5.79(d, 1H, J=17.7Hz), 5.29(d, 2H, J=11.0 Hz), 4.63(s, 1H), 1.20(s, 12H), 0.83(s, 18H), −0.04(s, 6H), −0.82(s, 6H).
【0102】
13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):137.2, 137.0, 130.9, 125.4, 113.2, 93.9, 24.8, 26.3, 17.9, 17.2, −3.8, −5.04.
【0103】
Mass(m/z): [M]: calcd,489;found,490.
【0104】
元素分析Found:C,66.3; H, 10.0; N, 5.7%. Calcd for C275222Si2:C,66.1; H,10.3; N,5.7%
【0105】
(製造例4−4)1,3−ビス−(t−ブチル−ジメチルシロキシ)−4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン−アクリルアミド共重合体の合成
【0106】
【化13】

【0107】
1,3−ビス−(t−ブチル−ジメチルシロキシ)−4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン 100mg(204μmol)とアクリルアミド 10mg(136μmol)をTHF溶媒中AIBN 2.7mg(17μmol)を開始剤として用い、70℃で12時間攪拌した。ジエチルエーテルへの再沈殿精製を経て白色粉末として1,3−ビス−(t−ブチル−ジメチルシロキシ)−4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ビニルフェニル)−イミダゾリジン−アクリルアミド共重合体を得た。得られたポリマーの分子量は数平均分子量8600(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)1.5であった(収量84mg、収率76%)。
【0108】
(製造例4−5)ニトロニルニトロキシド置換ポリスチレン−ポリアクリルアミド共重合体の合成
【0109】
【化14】

【0110】
前駆体ポリマー 100mg(310μmol)をTHF中でテトラ(n−ブチル)アンモニウムフロリド(=n−Bu4NF) 202mg(775μmol)と室温で24時間攪拌した。続いて過ヨウ素酸ナトリウムの飽和溶液を加え、さらに30分攪拌し、ジクロロメタン抽出、水への再沈殿精製を経てニトロニルニトロキシド置換ポリスチレン−ポリアクリルアミド共重合体を得た。得られたポリマーの分子量は数平均分子量8600(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)1.6であった(収量36mg、収率81%)。
ESR測定およびSQUID磁化測定よりラジカルの定量的な発生を確認した。
【0111】
<蓄電材料及びそれを用いた二次電池の作成>
(実施例1)
製造例1で合成した重合体をスピンコート法によりグラッシーカーボンプレート電極上に厚さ100nmで塗布した。これを、真空中40℃で一晩乾燥し、薄膜電極を得た。
【0112】
次に、得られた薄膜電極を電解液に浸して、電極中の空隙に電解液を染み込ませ、蓄電材料からなる薄膜ゲル電極とした。電解液として、1.0mol/Lの塩化亜鉛、および1.0mol/Lの塩化アンモニウムの混合水溶液を用いた。また、負極として亜鉛を用いた。
【0113】
以上のように作製した測定セルを、1mAの定電流で、電圧が2.1Vになるまで充電、その後、1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は1.6V付近で1時間20分間ほぼ一定となり、その後急激に低下した。これにより電池として動作していることを確認した。電圧が1.4Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに、1.4〜2.1Vの範囲で充放電を10回繰り返し、二次電池としての動作を確認した。
【0114】
(実施例2)
製造例2で合成した重合体をスピンコート法によりグラッシーカーボンプレート電極上に厚さ100nmで塗布した。これを、真空中40℃で一晩乾燥し、薄膜電極を得た。
【0115】
次に、得られた薄膜電極を電解液に浸して、電極中の空隙に電解液を染み込ませ、蓄電材料からなる薄膜ゲル電極とした。電解液として、1.0mol/Lの塩化亜鉛、および1.0mol/Lの塩化アンモニウムの混合水溶液を用いた。また、負極として亜鉛を用いた。
【0116】
以上のように作製した測定セルを、1mAの定電流で、電圧が2.2Vになるまで充電、その後、1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は1.7V付近で1時間10分間ほぼ一定となり、その後急激に低下した。これにより電池として動作していることを確認した。電圧が1.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに、1.5〜2.2Vの範囲で充放電を10回繰り返し、二次電池としての動作を確認した。
【0117】
(実施例3)
製造例3で合成した重合体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で薄膜電極を作成した。さらに、実施例1と同様の操作で測定セルを作成した。
【0118】
以上のように作製した測定セルは1.6Vの起電力を示し、電池としての動作が確認された。
【0119】
(実施例4)
製造例4で合成した重合体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で薄膜電極を作成した。さらに、実施例1と同様の操作で測定セルを作成した。
【0120】
以上のように作製した測定セルは1.8Vの起電力を示し、電池としての動作が確認された。
【0121】
(実施例5)
製造例5で合成した重合体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で薄膜電極を作成した。さらに、実施例1と同様の操作で測定セルを作成した。
【0122】
以上のように作製した測定セルは1.7Vの起電力を示し、電池としての動作が確認された。
【0123】
(実施例6)
電解液に0.1mol/lの塩化ニッケル、塩化アンモニウム水溶液を、負極にニッケルを用いた以外は実施例1と同様の操作でビーカーセルを作成した。
【0124】
作製した測定セルは0.83Vの起電力を示し、電池としての動作が確認された。
【0125】
(実施例7)
電解液に0.1mol/lの塩化アルミニウム、塩化アンモニウム水溶液を、負極にアルミニウムを用いた以外は実施例1と同様の操作でビーカーセルを作成した。
【0126】
作製した測定セルは1.43Vの起電力を示し、電池としての動作が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の主鎖に、ニトロキシドラジカル基からなる側鎖を少なくとも有するポリマーと、水とを含有する含水ゲルからなることを特徴とする蓄電材料。
【請求項2】
前記ポリマーの主鎖が、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、およびそれらの共重合体からなる群から選択される一種であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電材料。
【請求項3】
前記ニトロキシドラジカル基からなる側鎖が、前記ポリマーの主鎖に環状ニトロキシドが置換することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電材料。
【請求項4】
前記環状ニトロキシドが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、又は4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキシル−3−オキシドであることを特徴とする請求項3に記載の蓄電材料。
【請求項5】
前記ポリマーの主鎖が架橋構造を含むものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の蓄電材料。
【請求項6】
前記水と共に支持電解質を含有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の蓄電材料。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の蓄電材料を活物質とし、金属電極と、電解質水溶液とを具備することを特徴とする二次電池。
【請求項8】
前記金属電極は、亜鉛、アルミニウム、またはニッケルからなることを特徴とする請求項7に記載の二次電池。

【公開番号】特開2009−104819(P2009−104819A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273190(P2007−273190)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000222691)東洋合成工業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】