説明

蓄電装置

【課題】温度検出手段または冷却手段の状態を診断することが可能な信頼性の高い蓄電装置を提供すること。
【解決手段】一つまたは複数の蓄電器を備えた蓄電器モジュールと、複数の温度検出手段と、前記蓄電器モジュールを冷却する冷却手段と、を有する蓄電装置において、前記温度検出手段が、少なくとも、冷却媒体の前記蓄電装置への流入温度及び前記蓄電装置からの流出温度と、前記蓄電器又は前記蓄電器モジュールの少なくとも一方の温度と、を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池や鉛電池,ニッケル水素電池,電気二重層キャパシタなどの蓄電器を有した蓄電装置とこれを搭載した電源装置,分散型電力貯蔵装置,ハイブリッド電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス規制,燃費の向上からエンジンに二次電池をアシスト力として補助的に用いるハイブリッド電気自動車の開発が盛んに行われている。この自動車用の二次電池としては、リチウム二次電池やニッケル水素電池が多く用いられている。ハイブリッド電気自動車のバッテリに使用される二次電池は、エンジンの補助(加速時のアシスト)に用いたり、平坦な道路でのエンジンを停止してモータだけで走行といったときのモータの電力の供給を行うものである。したがって、この二次電池は、モータに大電流を供給するため、モータに電力を供給すると電力が低下してくるため、必要に応じて走行用モータを用いて発電し、二次電池に充電を行っている。
【0003】
このようにハイブリッド電気自動車のバッテリに使用される二次電池は、頻繁に充放電を繰り返しており、この二次電池の充放電の発熱量が大きく、かつ、電池性能の温度依存性もあるため、電池の寿命を考慮して電池の冷却性能を高める必要がある。この電池の冷却性能を高めるため、従来から多くの提案がなされている。
【0004】
そこで、特許文献1には、図9に示すように、従来は、第1乃至第7ルーバー28a〜28gを形成する補助リブの形状を異ならせ冷却空気の流路を絞ることによって、冷却空気排出側27に近づくにつれて冷却空気の流速を増加させ、タンデムセル間の温度のバラツキをなくし、タンデムセル間を流通し温度が昇温した空気に、バイパス経路から冷却空気を直接合流させることで冷却空気排出側27近傍にタンデムセルの温度上昇を抑え、全タンデムセルの冷却を均等に行うものが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、燃料電池モジュール出入口の冷却媒体の温度差を検出し、所定値を超えた場合に、燃料電池システム及び冷却システムの状態を判定する技術が開示されている。しかし、燃料電池モジュール出入口の冷却媒体の温度を検出するだけでは、冷却システムの状態を判定するには十分でなく、また温度検出手段の状態を判定することはできない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−155789号公報
【特許文献2】特開2003−109637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、冷却手段及び温度検出手段の状態を診断することが可能な、信頼性の高い冷却システムを備えた蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する為、本発明の蓄電装置は、一つまたは複数の蓄電器を備えた蓄電器モジュールと、複数の温度検出手段と、制御手段と、前記蓄電器モジュールに冷却媒体を導入し前記蓄電器を冷却する冷却手段と、を有する蓄電装置であって、前記温度検出手段が、少なくとも、冷却媒体の前記蓄電装置への流入温度及び前記蓄電装置からの流出温度と、前記蓄電器又は前記蓄電器モジュールの少なくとも一方の温度と、を測定する温度検出手段を備えている。
【0009】
そして、制御手段は、前記蓄電器温度又は前記蓄電器モジュール温度の少なくとも一方と、冷却媒体の流入温度及び流出温度とより、前記温度検出手段及び前記冷却手段の状態を診断する。前記蓄電器温度又は前記蓄電器モジュール温度が冷却媒体の流入温度より高い場合、冷却媒体の流出温度も高くなる。もし、流出温度が流入温度と同じ場合で、冷却手段が稼動している場合には、冷却手段が異常であり、冷却手段が稼動していない場合は、正常と診断できる。また、流出温度が流入温度より低い場合は、前記温度検出手段が異常と診断できる。
【0010】
また、前記蓄電器モジュールの電圧を検出する電圧検出手段または電流を検出する電流検出手段を設けても同様な診断が可能となる。即ち、前記電圧検出手段または前記電流検出手段の値から前記蓄電器の稼動状態を判定し、前記蓄電器の稼動状態と、冷却媒体の流入温度及び流出温度より前記温度検出手段または前記冷却手段の状態を診断する。
【0011】
前記蓄電器モジュールが複数の蓄電器を有する場合は、前記温度検出手段を複数の前記蓄電器にも配設する。そして、複数の前記蓄電器に配設された前記温度検出手段の検出値にばらつきがあり、差がある閾値を越えた場合、前記冷却手段を稼動させる。これにより、複数の蓄電器の温度が均一化され本発明の精度が高まる。
【0012】
また、前記蓄電器モジュールの入出力を制限する入出力制御装置を設け、前記制御手段が前記温度検出手段または前記冷却手段の異常を診断した場合、前記入出力制御装置は、前記蓄電器モジュールの入出力を、冷却手段が作動しない状態でも安全に使用できる値に制限する。これにより、異常を検知した場合でも電源装置を稼動できる高信頼な蓄電装置が実現できる。
【0013】
さらに、装置の状態を報知する報知手段を設け、前記制御手段が前記温度検出手段または前記冷却手段の異常を診断した場合、前記報知手段が異常を報知する。これにより、オペレータや保守員が蓄電装置の状態を把握することができる。
【0014】
同様に、複数の前記蓄電器に配設された前記温度検出手段の検出値にばらつきがあり、差がある閾値を越えた場合、前記入出力制御装置は前記蓄電器モジュールの入出力を制限すると、効率的に蓄電器の温度差を解消できる。また、その場合、前記報知手段が異常を報知し、オペレータや保守員がこれを把握することも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却手段の状態を診断するだけでなく温度検出手段の状態を診断することが可能となり、信頼性の高い電源装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図に於いて同一の部分が2つ以上あるものに関しては同一の符号を付し、説明を省略している。
【0017】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1を示す図である。図に於いて、101は筐体、102は蓄電器モジュール、103は吸入口、104a,104bは温度検出手段、105は排出口、106は制御手段、107は冷却手段である。
【0018】
筐体101は蓄電器モジュール102を包囲している。この、筐体101には吸入口
103及び排出口105が設けられており、吸入口103及び排出口105付近には温度検出手段104a,104bが配設されている。また、排出口105には冷却手段107が配設されている。これら、温度検出手段104a,104b及び冷却手段107は制御手段106に電気的に接続されている。
【0019】
蓄電器モジュール102は、リチウム二次電池,ニッケル水素電池,鉛電池,電気二重層キャパシタなどの蓄電器が一つまたは複数接続されて成り、電気エネルギーの蓄積(充電),供給(放電)を行う。蓄電器モジュール102は充放電により発熱する。
【0020】
温度検出手段104a,104bはサーミスタや熱電対などで構成され、温度を電気信号に変換する。
【0021】
制御手段106は、マイクロコンピュータなどの電子部品からなり、冷却手段107のON,OFF制御や、温度検出手段104a,104bの電気信号から温度検出を行う。
【0022】
冷却手段107はファンやポンプからなり、空気や不活性ガスなどの気体または、水やオイルなどの液体の冷却媒体を流入または流出させ、蓄電器モジュール102を冷却する。
【0023】
蓄電器モジュール102は充放電により発熱するため、冷却手段107が動作すると、吸入口103付近に配設された温度検出手段104aと排出口105付近に配設された温度検出手段104bの検出値に差が生じる。すなわち、温度検出手段104bの温度の方が高くなる。
【0024】
そこで、制御手段106は、冷却手段107が動作中に温度検出手段104bの値が温度検出手段104aの値より高ければ正常であり、それ以外は、温度検出手段104aまたは104bまたは冷却手段107または制御手段106の異常、あるいは吸入口103か排出口105が閉鎖され冷却媒体の流入,流出が妨げられていると診断できる。
【0025】
すなわち、本発明のように、冷却媒体の流入,流出温度を比較することにより、蓄電装置の構成要素の状態を診断することが可能となり、信頼性の高い蓄電装置が実現できる。
【0026】
さらに、蓄電器モジュール102にも温度検出手段を設け、吸入口103及び排出口
105,蓄電器モジュール102の温度から蓄電装置の状態を診断すると、確実に診断できる。すなわち、熱発生源である蓄電器モジュール102の温度より、温度検出手段104bの温度が温度検出手段104aの温度より高くなるべきか否かが明確になり、確実な診断が可能となる。
【0027】
(実施例2)
図2は、本発明の実施例2を示す図である。図に於いて、201は蓄電器、202は電流検出手段、203は電圧検出手段、104a,104b(冷却媒体の吸入・排出温度),102a(蓄電器モジュール温度),204a,204b(蓄電器温度)は温度検出手段、205は選択手段、206はマイクロコンピュータ、207は通信手段である。
【0028】
複数の蓄電器201が直列に接続され、蓄電器モジュール102を構成している。また、制御手段106は電圧検出手段203,選択手段205,マイクロコンピュータ206,通信手段207で構成されている。
【0029】
電流検出手段202は蓄電器モジュール102に配設され、その出力はマイクロコンピュータ206に入力されている。また、蓄電器モジュール102の両端に電圧検出手段
203が接続され、電圧検出手段203の出力はマイクロコンピュータ206に入力されている。さらに、温度検出手段204a,204bが蓄電器201に配設され、複数の温度検出手段、即ち、吸入口又は排出口の冷却媒体温度を検出する温度検出手段104a,
104bと、蓄電器温度を検出する204a,204b又は蓄電器モジュールの温度を検出する102aの少なくとも一方、の出力は選択手段205を介してマイクロコンピュータ206に入力されている。マイクロコンピュータ206は冷却手段107,通信手段
207とも接続されている。
【0030】
電流検出手段202は、電流センサやシャント抵抗の両端に生じる電圧から電流値に変換する回路からなり、蓄電器モジュール102に流れる電流を検出する。ここでは、制御手段106の外に設けたが、電流検出手段202の一部または全部を制御手段106内に構成することも可能である。
【0031】
電圧検出手段203は、分圧抵抗やオペアンプなどの回路で構成され、蓄電器モジュール102の電圧をマイクロコンピュータ206に入力できる値に変換する。
【0032】
温度検出手段204a,204bはサーミスタや熱電対などで構成され、温度を電気信号に変換する。また、複数の蓄電器がある場合、各蓄電器温度は平均化され(平均蓄電器温度)、演算に用いられる。
【0033】
選択手段205はマルチプレクサなどからなり、複数の温度検出手段、即ち、温度検出手段104a,104bと、204b又は102aの少なくとも一方と、の出力を一つ選択し、マイクロコンピュータ206に入力する。そして複数の温度検出手段104a,
104b,204a,204b,102aの選択は適宜切り替えて行う。
【0034】
マイクロコンピュータ206にはアナログデジタル変換回路も内蔵されており、電流検出手段202、電圧検出手段203,温度検出手段104a,104b,204a,204b又は102aの出力値をデジタル値に変換し、蓄電器モジュール102の状態を演算する。そして、その演算結果に基づいて冷却手段107のON,OFF制御や、通信手段207を介してその他のマイクロコンピュータやコントローラと通信を行う。
【0035】
ここではアナログデジタル変換回路をマイクロコンピュータ206内に設けたが、マイクロコンピュータ206外または、アナログデジタル変換回路を有した電流検出手段202,電圧検出手段203,吸入排出温度検出手段104a,104b,204a,204b,102a等を用いることも可能である。
【0036】
通信手段207はCAN(Controller Area Network) IC,RS232CドライバICなどからなり、各種通信プロトコルに適合した信号に変換する。
【0037】
マイクロコンピュータ206は蓄電器モジュール102の状態を演算し、同時に冷却手段107も制御するため、蓄電器モジュール102の稼動状態と、温度検出手段104a,104bと、204a,204b又は102aと、の値から冷却手段107または、温度検出手段104a,104bなどの異常を診断できる。
【0038】
例えば、蓄電器モジュール102はある電流値以上の電流で充放電を行うと、発熱が増加する。これを蓄電器201に配設した温度検出手段204a,204b又は102aで確認する。さらに蓄電器モジュール102は充放電を行うと蓄電器モジュール102の電圧が変化する。これを電圧検出手段203で確認する。そして、これらより蓄電器モジュール102の稼動状態と発熱を確認する。このとき、温度検出手段104bの値が温度検出手段104aの値より高ければ正常であり、それ以外は、吸入排出温度検出手段104aまたは104bまたは冷却手段107または制御手段106の異常、あるいは吸入口103か排出口105が閉鎖され冷却媒体の流入,流出が妨げられていると診断できる。
【0039】
具体例として、本発明の実施例の一形態を以下に示す。また、図3に以下の実施例のフローチャートを示す。
【0040】
蓄電器モジュール102が稼動し発熱しており、蓄電器温度又は蓄電器モジュール温度が吸入温度より高い状態である。これらの関係は制御手段106により蓄電器モジュール102の稼動状態が確認され、正しい状態と判定されている。各蓄電器の温度にばらつきがある場合、冷却手段107へはON信号が入力され、冷却手段107が作動し、各蓄電器の温度は均一となる。
【0041】
この場合、冷却手段が作動している場合、冷却媒体に蓄電器の熱が伝達し、排出温度が吸入温度より高くなる。しかし、蓄電器の熱が100%冷却媒体に伝わることは無いため、排出温度は蓄電器温度より低くなれば冷却手段及び温度検出手段は正常である。
【0042】
もし、排出温度が蓄電器温度よりさらに高く検出された場合は排出温度検出手段104bの異常と診断できる。
【0043】
また、排出温度が吸入温度より低く検出された場合も吸入口又は排出口に設けられた温度検出手段の異常と診断できる。
【0044】
吸入温度と排出温度が等しく検出された場合は、冷却手段が実際に動作しているため、冷却手段の異常又は温度検出手段の異常であると考えられる。
【0045】
また、冷却手段が動作していない場合は、熱が伝達されない為、吸入温度と排出温度が等しく検出されたとしても、正常であると診断できる。
【0046】
このように、本発明によれば、蓄電器モジュール102の稼動状態と、温度検出手段
104a,104bと、204a,204b又は102aの少なくとも一方と、の値から冷却手段107または、温度検出手段104a,104bなどの異常を診断することが可能であり、信頼性の高い冷却システムを備えた蓄電装置を提供することができる。
【0047】
図4は蓄電器モジュールを充放電した時の各蓄電器の温度を示した図である。充放電により蓄電器は発熱し、時間経過に伴い温度が上昇する。
【0048】
そこで、制御手段106は蓄電器温度検出手段204a,204bを介して蓄電器201の温度を測定し、ある温度以上になると、冷却手段107を動作させ、蓄電器201の温度上昇を抑える。また、蓄電器201の温度がある温度以下になると、冷却手段107を停止させる。
【0049】
また、充放電等により蓄電器201の温度にばらつきが生じる。そこで、制御手段106は温度検出手段204a,204bの温度差を演算し、その差が所定値を超えた場合も冷却手段107を動作させる。これにより図5に示す様に各蓄電器201の温度差が改善される。例えば、最も高温である蓄電器温度及び最も低温である蓄電器温度を検出し、それらの温度差がある閾値を超える場合には、冷却ファンを作動させることができる。
【0050】
蓄電器201は温度に応じて入出力特性や発熱特性,劣化速度などが変るため、各蓄電器の温度を均一化して使用することが、電源装置として重要である。
【0051】
この様に本発明によれば、蓄電器モジュール102の稼動状態と、温度検出手段104a,104bと、204a,204b又は102aの少なくとも一方と、の値から冷却手段107または、温度検出手段104a,104bなどの異常を診断し、また、温度検出手段204a,204bの値から各蓄電器201を適切に冷却することにより、信頼性の高い冷却システムを備えた蓄電装置を提供することができる。
【0052】
また、本発明で用いる二次電池として、リチウム二次電池を用いることができる。リチウム二次電池は、リチウムを吸蔵放出可能な正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極と、が電解液を介して形成されるものであり、例えば、図6で示す円筒型リチウム二次電池でよい。
【0053】
正極は、正極集電体に、正極活物質,導電材及び結着材等からなる正極合剤を塗布することにより得られる。
【0054】
正極活物質としては、Li1+αMnxM1yM2z2(M1はCo,Niから選ばれる少なくとも1種;M2はCo,Ni,Al,B,Fe,Mg,Crから選ばれるすくなくとも1種を表わし、x+y+z=1,0.2≦X≦0.6,0.1≦y≦0.5 ,0.05≦z≦0.5,0.01≦α≦0.3 を満たす)で表されるリチウム複合酸化物を用いることができる。例えば、Li1.15Mn4Ni3Co22,Li1.15Mn1/3Ni1/3Co1/32
Li1.15Mn3Ni4Co32,Li1.15Mn3.5Ni3Co3Al0.52
Li1.15Mn3.5Ni3Co30.52,Li1.15Mn3.5Ni3Co3Fe0.52
Li1.15Mn3.5Ni3Co3Mg0.52,LiMn4Ni3Co22
LiMn1/3Ni1/3Co1/32,LiMn3Ni4Co32
LiMn3.5Ni3Co3Al0.52,LiMn3.5Ni3Co30.52
LiMn3.5Ni3Co3Fe0.52,LiMn3.5Ni3Co3Mg0.52などを用いることができる。中でも、Li1+αMnxNiyCoz2(x+y+z=1,0<x≦1,0<y≦1,0<z≦1,0.01≦α≦0.3を満たす)で表されるリチウム複合酸化物であることが好ましく、Li1+αMnxNiyCoz2(x+y+z=1,0.2≦x≦0.6,
0.1≦y≦0.5,0.05≦z≦0.5,0.01≦α≦0.3を満たす)であることがより好ましい。また、本発明の実施例で用いたLi1.15Mn1/3Ni1/3Co1/32は低温特性とサイクル安定性が高くHEV用デバイスの材料として最適である。
【0055】
負極は、負極集電体に、負極活物質,導電材及び結着材等からなる負極合剤を塗布することにより得られる。
【0056】
負極活物質としては、天然黒鉛,天然黒鉛に乾式のCVD(Chemical Vapor Deposition)法や湿式のスプレイ法で形成される被膜を形成した複合炭素質材料,エポキシ,フェノール等の樹脂原料、または、石油や石炭から得られるピッチ系材料を原料として焼成して造られる人造黒鉛や非晶質炭素材料などの炭素質材料、または、リチウムと化合物を形成することでリチウムを吸蔵放出できるリチウム金属,リチウムと化合物を形成したり、結晶間隙に挿入されることでリチウムを吸蔵放出できる珪素,ゲルマニウム,錫など第四族元素の酸化物または窒化物を用いることができる。例えば、SiO2,TiO2又はSiN2等が挙げられる。なかでも、炭素質材料は導電性が高く、低温特性,サイクル安定性の面から優れた材料である。炭素質材料の中では、炭素網面層間(d002) の広い材料が急速充放電や低温特性に優れ、本発明の材料としては好適である。しかし、炭素網面層間d002が広い材料は充電の初期での容量低下や充放電効率が低いことがあるので、d002は0.39nm以下が好ましい。更に、電極を構成するには黒鉛質、非晶質、活性炭などの導電性の高い炭素質材料を混合すると良い。
【0057】
電解液としては、直鎖状もしくは環状カーボネート類を主成分とすることができる。これにエステル類,エーテル類等を混合することもできる。カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(EC),プロピレンカーボネート,ブチレンカーボネート,ジメチルカーボネート(DMC),ジエチルカーボネート(DEC),メチルエチルカーボネート,ジエチルカーボネート,メチルアセテートなどが挙げられる。これらを単独あるいは混合した非水溶媒を用いることができる。
【0058】
図6は、作製した正極板と負極板を用いて製作した円筒型リチウム二次電池の一部断面図である。円筒型リチウム二次電池は、次の手順で作製した。まず、正極板4と負極板5が直接接触しないように間にセパレータ6を配置して捲回して電極群を作製した。このとき、正極リード片7と負極リード片8とが電極群の互いに反対側の両端面に位置するようにした。さらに、正極板4と負極板5の配置で、正極の合材塗布部が負極の合材塗布部からはみ出すことがないようにした。次に、電極群をSUS製の電池缶9に挿入し、負極リード片8を缶底部に溶接し、正極電流端子を兼ねる密閉蓋部10に正極リード片7に溶接した。この電極群を配置した電池缶9に電解液を注入した後、上下に各々パッキン11を取り付け、密閉蓋部10を電池缶9にかしめて密閉し、円筒型電池とした。ここで、密閉蓋部10には電池内の圧力が上昇すると開裂して電池内部の圧力を逃がす開裂弁があり、
12は絶縁材である。
【0059】
(実施例3)
図7は本発明の実施例3を示す図である。本発明の電源装置の一実施形態を適用した、ハイブリッド電気自動車の電源供給の実施形態を示す図である。図に於いて、501はエンジン、502は動力分割伝達機構、503はモータ、504はインバータ、505はシステムコントローラ、506は報知手段、507a,507bは駆動輪、508はドライブシャフトである。
【0060】
エンジン501とモータ503、駆動輪507a,507bとが、動力分割伝達機構
502とドライブシャフト508を介して接続され、駆動輪507a,507bがモータ503とエンジン501とに駆動されるいわゆるパラレルハイブリッド電気自動車を構成している。
【0061】
駆動力の配分や伝達は、動力分割伝達機構502がエンジン501やモータ503を機械的に接続したり切り離したりし、ドライブシャフト508を駆動して行う。
【0062】
また、ここでは蓄電器モジュール102はインバータ504を介してモータ503に接続され、モータ503への電力供給(放電)及びモータ503からの回生電力の蓄積(充電)を行う。
【0063】
そして、制御手段106はシステムコントローラ505と接続され、システムコントローラ505は報知手段506とも接続されている。
【0064】
これら、駆動力の配分や伝達の制御,蓄電器モジュール102の充放電の制御は、システムコントローラ505が行う。また、システムコントローラ505は図示していないが、インバータ504のコントローラやエンジン501のコントローラなどにも接続され、ハイブリッド自動車全体の制御や各種構成要素の状態を報知手段506にて報知する。
【0065】
ここで、報知手段506はディスプレー装置や音声発生装置、振動装置などからなり、画像や音声などにより情報を報知する。
【0066】
本発明により、制御手段106が冷却手段107または温度検出手段104a,104bなどの異常を診断した場合、制御手段106は、通信手段207を介してその情報をシステムコントローラ505へ伝える。
【0067】
システムコントローラ505はその情報を受けて、蓄電器モジュール102の入出力を制限する指令をインバータ504のコントローラへ伝える。そして、インバータ504は蓄電器モジュール102を、冷却手段107が作動しない状態でも安全に使用できる充放電電力内に制御する。すなわち、インバータ504は蓄電器モジュール102の入出力制御装置としても機能する。
【0068】
これにより、冷却手段107または温度検出手段104a,104bなどが異常を生じた場合でも、電源装置及びハイブリッド電気自動車全体を安全に制御することができる。
【0069】
また、本発明により、制御手段106が冷却手段107または温度検出手段104a,104bなどの異常を診断した場合、制御手段106は、通信手段207を介してその情報をシステムコントローラ505へ伝え、システムコントローラ505はその情報を報知手段506を介して搭乗者に報知する。これにより、搭乗者は制御手段106が冷却手段107または温度検出手段104a,104bなどの異常を認識することが可能となり、適切な対処を取ることが可能となる。
【0070】
同様に、制御手段106が温度検出手段204a,204bの検出値の差がある閾値を越えたと診断した場合、制御手段107は冷却手段107を動作させ、その情報を、通信手段207を介してシステムコントローラ505へ伝える。
【0071】
システムコントローラ505はその情報を受けて、蓄電器モジュール102の入出力を制限する指令をインバータ504のコントローラへ伝える。そして、インバータ504は、温度差が拡大しないように、蓄電器モジュール102の充放電電力を制限する。これにより、蓄電器201の温度差が発生した場合でも、その温度差を減少させると同時に、電源装置及びハイブリッド電気自動車全体を安全に制御することができる。
【0072】
また、システムコントローラ505はその情報を報知手段506を介して搭乗者に報知する。これにより、搭乗者は制御手段106が冷却手段107または温度検出手段104a,104bなどの異常を認識することが可能となり、適切な対処を取ることが可能となる。
【0073】
(実施例4)
図8は本発明の第4の実施例を示す図である。本発明の電源装置の一実施の形態を適用した、分散型電力貯蔵装置の実施の形態を示す図である。図7に於いて、701は商用電源、702は太陽光発電装置、703は負荷装置、704は制御変換器、705は切替器である。
【0074】
蓄電器モジュール102の両端は制御変換器704に接続され、制御変換器704は、更に、切替器705をそれぞれ介して商用電源701,太陽光発電装置702,負荷装置703に接続されている。
【0075】
また、太陽光発電装置702,負荷装置703,制御変換器704のMCU,切替器
705,制御手段106は双方向通信で結ばれている。
【0076】
太陽光発電装置702は、太陽電池により、太陽光を直流電力に変換し、インバータ装置により交流電力を出力する装置である。
【0077】
また、負荷装置703は、エアコン,冷蔵庫,電子レンジ,照明などの家電品や、モータ,エレベータ,コンピュータ,医療機器などの電気機器や、第2の電源装置である。そして、制御変換器704は、交流電力を直流電力に変換、または、直流電力を交流電力に変換する充放電器である。また、これら充放電の制御や上述の太陽光発電装置702,負荷装置703などの機器を制御する制御器を兼ねる。
【0078】
ここで、これらの機器は装置内に切替器705を有することもある。また、本発明の電源装置は、図示した構成以外の接続形態をとることも可能である。本実施の形態によれば、負荷装置703が必要とする電力を、商用電源701や太陽光発電装置702で賄い切れない時、制御変換器704を介して、蓄電器モジュール102から電力を供給する。そして、商用電源701や太陽光発電装置702からの電力供給が過剰となっている時に、制御変換器704を介して、蓄電器モジュール102に蓄電する。
【0079】
これらの動作の中で、制御手段106は本発明による温度検出手段104a,104bや冷却手段107の診断や冷却手段107の制御などを行う。そして、その情報を制御変換器704に送る。制御変換器704はこれに応じて充放電等を制御する。
【0080】
すなわち、制御変換器704は、冷却手段107が作動しない状態でも安全に使用できる充放電電力内で蓄電器モジュール102の入出力を制御する。これにより、冷却手段
107または温度検出手段104a,104bなどが異常を生じた場合でも、電源装置を安全に制御することができる。
【0081】
また、本発明により、制御手段106が冷却手段107または温度検出手段104a,104bなどの異常を診断した場合、制御手段106は、通信手段207を介してその情報を制御変換器704へ伝え、制御変換器704は報知手段506やオペレータセンター(図示せず)等へ報知する。
【0082】
これにより、オペレータや作業者は、冷却手段107または温度検出手段104a,
104bなどの異常を認識することが可能となり、適切な対処を取ることが可能となる。
【0083】
同様に、制御手段106が、温度検出手段204aの検出値(流入温度)より温度検出手段204bの検出値(排出温度)が低いと診断した場合や温度検出手段204a,204bの検出値の差がある閾値を越えたと診断した場合、制御手段106は冷却手段107を動作させ、その情報を、通信手段207を介して制御変換器704へ伝える。
【0084】
制御変換器704はその情報を受けて、蓄電器モジュール102の入出力を制限するし、温度差が拡大しないように、蓄電器モジュール102の充放電電力を制限する。これにより、蓄電器201の温度差が発生した場合も、その温度差を減少させると同時に、電源装置を安全に制御することができる。
【0085】
ここで、本実施の形態では、蓄電器モジュール102を設けているため、商用電源701の契約電力や消費電力,太陽光発電装置702の発電定格を下げることが可能となり、設備費やランニングコストの削減を図ることができる。
【0086】
そして、消費電力がある時間帯に集中している時に、電源装置から商用電源701に電力を供給し、消費電力が少ない時に、電源装置に蓄電することで、消費電力の集中を緩和し、消費電力の平準化を図ることが可能となる。
【0087】
更に、制御変換器704は負荷装置703の電力消費を監視し、負荷装置703を制御するため、省エネや電力の有効利用が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例2を示す図である。
【図3】本発明の実施例2を示すフローチャート図である。
【図4】実施例2の蓄電器モジュールを充放電した時の各蓄電器の温度を示す図である。
【図5】実施例2の蓄電器モジュールを冷却した時の各蓄電器の温度を示す図である。
【図6】本発明に用いるリチウム二次電池の一部断面図である。
【図7】本発明の実施例3を示す図である。
【図8】本発明の実施例4を示す図である。
【図9】従来の蓄電器冷却構造を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
101…筐体、102…蓄電器モジュール、102a,104a,104b,204a,204b…温度検出手段、103…吸入口、105…排出口、106…制御手段、107…冷却手段、201…蓄電器、202…電流検出手段、203…電圧検出手段、205…選択手段、206…マイクロコンピュータ、207…通信手段、501…エンジン、502…動力分割伝達機構、503…モータ、504…インバータ、505…システムコントローラ、506…報知手段、507a,507b…駆動輪、508…ドライブシャフト、
701…商用電源、702…太陽光発電装置、703…負荷装置、704…制御変換器、705…切替器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つまたは複数の蓄電器を備えた蓄電器モジュールと、複数の温度検出手段と、前記蓄電器モジュールに冷却媒体を導入し前記蓄電器を冷却する冷却手段と、を有する蓄電装置において、
前記温度検出手段が、少なくとも、冷却媒体の前記蓄電装置への流入温度及び前記蓄電装置からの流出温度と、前記蓄電器又は前記蓄電器モジュールの少なくとも一方の温度と、を測定することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
複数の前記温度検出手段の検出値から、前記温度検出手段及び前記冷却手段の状態を診断する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電器の稼動状態から、前記温度検出手段及び前記冷却手段の状態を診断する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記冷却手段の稼動状態から、前記温度検出手段及び前記冷却手段の状態を診断する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記制御手段が前記温度検出手段または前記冷却手段の異常を診断した場合、前記報知手段が異常を報知することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電器モジュールの入出力を制限する入出力制御装置を設けた蓄電装置において、前記制御手段が前記温度検出手段または前記冷却手段の異常を診断した場合、前記入出力制御装置は前記蓄電器モジュールの入出力を制限することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項7】
一つまたは複数の蓄電器を備えた蓄電器モジュールと、複数の温度検出手段と、前記蓄電器モジュールに冷却媒体を導入し前記蓄電器を冷却する冷却手段と、を有する蓄電装置において、
前記温度検出手段が、少なくとも、前記冷却媒体の前記蓄電装置への流入温度及び前記蓄電装置からの流出温度と、前記蓄電器の温度と、を測定することを特徴とする蓄電装置。
【請求項8】
複数の前記蓄電器に配設された前記温度検出手段の検出値の差がある閾値を越えた場合、前記冷却手段を稼動させることを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記蓄電器モジュールの入出力を制限する入出力制御装置を設けた蓄電装置において、複数の前記蓄電器に配設された前記温度検出手段の検出値の差がある閾値を越えた場合、前記入出力制御装置が前記蓄電器モジュールの入出力を制限することを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記蓄電装置の状態を報知する報知手段を設けた蓄電装置において、複数の前記蓄電器に配設された前記温度検出手段の検出値の差がある閾値を越えた場合、前記報知手段が異常を報知することを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項11】
複数の蓄電器を備えた蓄電器モジュールと、複数の温度検出手段と、前記蓄電器モジュールに冷却媒体を導入し前記蓄電器を冷却する冷却手段と、を有する蓄電装置において、
前記温度検出手段が、少なくとも、冷却媒体の前記蓄電装置への流入温度及び前記蓄電装置からの流出温度と、前記蓄電器温度と、前記蓄電器モジュール温度と、を測定することを特徴とする蓄電装置。
【請求項12】
前記温度検出手段が、少なくとも、最も高温である蓄電器及び最も低温である蓄電器の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−84625(P2008−84625A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261650(P2006−261650)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】