説明

蓋材用基材

【課題】
層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に優れた蓋材用基材の製造方法を提供する。
【解決手段】
基紙の片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有する蓋材用基材であって、前記基紙は、主成分に広葉樹クラフトパルプを用い、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤の存在下で抄紙され、JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスが、350cc〜500ccであり、前記離解後パルプの重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmであり、前記離解後パルプのうち90重量%以上を繊維長1.5mm以下の繊維が占め、蓋材用基材の幅方向と流れ方向における、J.TAPPI No.18−2に準拠したインターナルボンドの平均値が、200mJ以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓋材用として層間強度、打抜き加工適性、寸法安定性、網点再現性を備えた蓋材用基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓋材として求められる要求品質の一つとして、蓋材を接着剤等の接着手段にて容器に装着後、蓋材を容器から剥離・開封する操作において、開封の容易性を指し示すイージーピール性(開封の容易さ)がある。
【0003】
従来は、接着剤の組成を、ポリエチレンやポリプロピレンを主体とすることで、イージーピール性を調整し、蓋を開封し始めた際、開封操作時の接着剤と容器間の剥離性を下げることで、イージーピール性を向上する手段が取られている。
【0004】
然しながら、近年は、素材の省資源化、内容物の品質維持、不用意な開封を防止するため、少量の接着剤で、強固に容器と蓋材を接着する方向に品質改善が進んでいる。
【0005】
強固な容器と蓋材の接着は、容器から蓋材を剥離・開封時に、蓋材用基材のZ軸にかかる物理的力(層間への剥離強度)が増し、蓋材用基材の層間で破れる問題が発生している。
【0006】
層間の強度をあげる対策として、蓋材用基材を構成する原料パルプのフリーネスダウン(叩解を進める)、基材中への紙力増強剤の増添等の手法があるが、フリーネスダウンにおいては、微細繊維の増加やフィブリル化の促進により、繊維の比表面積が増えることで寸法安定性が悪化するとともに、紙粉が発生しやすくなり、緊度が上がりクッション性が低下し、蓋材としての加工適性が低下する問題が生じる。
【0007】
また、紙力増強剤を添加することで層間強度をあげる対策は、フリーネスダウンと同様に、基材が硬くなり、クッション性が低下し、緊度が上がり、蓋材としての加工適性が低下する問題が生じる。
【0008】
更に、蓋材用基材の表出面には、コンビニエンスストア等での陳列における見栄えを良くし、購買意欲向上を促す目的で、高精細な印刷が施されるため、フリーネスダウン、基材中への紙力増強剤の増添による層間強度の向上策では、緊度の上昇すなわちクッション性が低下し、印刷版との密着性が低下するため、印刷適性の低下問題も引き起こす。
【0009】
特に、蓋材用基材には、購買意欲をそそる高精細なグラビア印刷が施されることが一般的であり、グラビア印刷においてはクッション性が印刷適性の重要なファクイターであるため、クッション性の低下は、印刷適性に対し致命的な問題となる。
【0010】
他方、従来の蓋材用基材は、密閉性の向上を目的に、容器と接着する側に、アルミフィルムや樹脂フィルムを貼合する方策が取られている。
【0011】
近年のアルミフィルムや樹脂フィルムの貼合は、環境対応の流れに伴いアルミフィルムや樹脂フィルムの薄膜化やアルミレス化、更には近年の傾向として、電子レンジ加工食品の普及が進み、特にアルミレスに対応する蓋材用基材の開発が求められている。
【0012】
従来の蓋材用基材では、アルミフィルムや樹脂フィルムを蓋材用基材裏面に貼合するため、カール挙動については大きな問題が生じていなかったが、先に記載した、近年の環境対応の流れに伴いアルミフィルムや樹脂フィルムの薄膜化やアルミレス化、更には近年の傾向として、電子レンジ加工食品の普及が進み、容器内が高温になる機会が多くなり、蓋材用基材が表出面側へカールする問題が出てきている。
【0013】
故に、近年の蓋材用基材には、前記、層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制をも求められている。
【0014】
引用文献1には、アルミ箔貼合を用途とするアルミ箔貼合用塗工紙において、原紙に由来するセルロース繊維のからみ合いや地合いにより、アルミ箔貼合時に生じる大小さまざまな凹凸を、アルミ箔貼合面に表面サイズ剤を付与することで解決する技術が開示されている。
【0015】
引用文献1に開示された技術は、アルミ箔貼合時に用いられる水性の接着剤により、貼合面に生じる凹凸を制御する手法を開示しているものの、前記近年の層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に対応した改善策については、記載も示唆も無い。
【0016】
引用文献2は、引用文献1と同様に、アルミ箔貼合を用途とするアルミ箔貼合用塗工紙であり、原紙に由来するセルロース繊維のからみ合いや地合いにより、アルミ箔貼合時に生じる大小さまざまな凹凸を、アルミ箔貼合面に予め顔料及び接着剤を主成分とする水性塗工液を塗工し、更に、前記水性塗工液上に表面サイズ剤を付与することで解決する技術が開示されている。
【0017】
引用文献2に開示された技術は、貼合面に生じる凹凸を更に改善する方策を開示しているものの、前記近年の層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に対応した改善策については、記載も示唆も無い。
【0018】
引用文献3には、引用文献1及び引用文献2と同様に、アルミ箔貼合を用途とするアルミ箔貼合用塗工紙であり、原紙に由来するセルロース繊維のからみ合いや地合いにより、アルミ箔貼合時に生じる大小さまざまな凹凸において、極めて微細な凹凸の改善を図るため、アルミ箔貼合面に表面サイズ剤を付与するとともに、表面サイズ剤付与面の表面粗さSRaを所定の範囲にすることを特徴とする技術である。
【0019】
引用文献3に開示された技術は、引用文献1から引用文献2と同様に、貼合面に生じる凹凸を更に改善する方策を開示しているものの、前記近年の層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に対応した改善策については、記載も示唆も無い。
【0020】
上記いずれの文献においても、近年の蓋材用基材の課題となる層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カールを改善できる技術的記載や示唆は無く、前記課題を解決する蓋材用基材の製造技術が所望されている。
【特許文献1】特開平5−44195
【特許文献2】特開平5−44196
【特許文献3】特開平7−173795
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明が解決しようとする主たる課題は、層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に優れた蓋材用基材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明における、課題を解決する手段は以下のとおりである。
【0023】
基紙の片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有する蓋材用基材であって、
前記基紙は、主成分に広葉樹クラフトパルプを用い、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤の存在下で抄紙され、
JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスが、350cc〜500ccであり、
前記離解後パルプの重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmであり、
前記離解後パルプのうち90重量%以上を繊維長1.5mm以下の繊維が占め、
前記蓋材用基材の幅方向と流れ方向における、J.TAPPI No.18−2に準拠したインターナルボンドの平均値が、200mJ以上であることを特徴とする蓋材用基材。
【0024】
本発明において、蓋材とは、衣料用洗剤、柔軟剤、シャンプー、リンスなどのトイレタリー用品や化粧品、飲料や食料品などの内容物を収納する容器の開口部を封鎖する部材であり、当該蓋材を容器本体のフランジと熱封緘することで容器を密封するための部材である。蓋材は、基材、アルミニウム箔等の金属フィルム、熱封緘層等を積層した積層体からなり、蓋材の上面(容器を密封している際に容器外部の面)は美匠印刷可能な面であり、蓋材の下面(容器を密封している際に容器内部の面)にはアルミニウム箔等の金属フィルムや熱封緘性層等を有する。蓋材用基材とは、前記アルミニウム等の金属フィルムや熱封緘性層を積層するための基材のことをいう。蓋材用基材は、アルミニム等の金属フィルムや熱封滅層を下面に形成して積層体とした後、さらに美匠印刷等を上面に施し、各種容器の形状に沿って打ち抜き加工等をすることにより、蓋材に加工される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、層間強度、加工適性、及び、印刷適性が向上し、カールの発生が抑制された蓋材用基材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
・基紙の片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有する。
【0028】
本発明で好適に用いることができる前記顔料は、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有される。
【0029】
前記蓋材用基材の顔料は、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)を重量比で(A):(B)=30:70〜70:30、より好適には40:60〜60:40となるよう配合されたものを使用する。
【0030】
塗工層に含有させる顔料として、体積平均粒径0.10〜0.40μm、より好適には0.20〜0.35μm、アスペクト比が7〜13、より好適には、8〜12の微粒カオリン(A)と体積平均粒径0.20〜0.60μm、より好適には、0.30〜0.50μmの重質炭酸カルシウム(B)を用いることが好ましい。
【0031】
微粒カオリンの体積平均粒径が0.10μm未満では粒子が細かすぎてバインダーが相当量必要となり、バインダーマイグレーションが発生するためグラビア印刷時に塗工層におけるインキ受理性が悪くなり、乾燥不良が発生し、グラビア印刷時の操業性が悪化する。0.40μmを超えると、粒子径が大きすぎ、塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。好ましくは0.20〜0.30μmである。
【0032】
アスペクト比が7未満の微粉カオリンでは顔料中の空隙が大きくなるため高い網点再現性が得られない。逆に13を超えると塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。
【0033】
重質炭酸カルシウムの体積平均粒径が0.20μm未満では、粒子が細かすぎバインダーが相当量必要となり、バインダーマイグレーションが発生するためグラビア印刷時に塗工層におけるインキ受理性が悪くなり、乾燥不良が発生し、グラビア印刷時の操業性が悪化する。0.60μmを超えると、粒子径が大きすぎ、塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。好ましくは0.30〜0.50μmである。
【0034】
塗工層に含有させる顔料として、微粒カオリン(A):重質炭酸カルシウム(B)を重量比で30:70〜70:30の範囲で含有させることが好ましい。微粒カオリンの重量割合が30未満では、重質炭酸カルシウムの割合が多すぎるため、顔料中の空隙が多くなり、高い網点再現性が得られない。70を超えると塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。
【0035】
本発明で好適に用いられる接着剤としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体の各種ラテックスを挙げることができる。特にSBRラテックスのうち、スチレン含有量が50重量%〜80重量%のスチレンリッチであるものは、柔らかいブタジエンによる紙面のブロッキング効果がなく、平滑性を向上させる効果があるため好ましい。
【0036】
本発明における塗工層は、8〜20g/m、好適には12〜16g/m設けられる。塗工層が8g/m未満では、被覆性に欠け、20g/mを超えると、蓋材を容器から剥離・開封時に塗工層の割れや紙粉が生じる場合があり、好ましくない。
【0037】
塗布方式としては、例えばツーロールサイズプレス、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等の種々の公知の塗布方式を使用できるが、最も好適には、艶面(片面)への塗工が容易であり、高精細なグラビア印刷を可能にするため、ブレードコーターを用いることが好ましい。
【0038】
・前記基紙を構成するパルプの主成分に広葉樹クラフトパルプを用いる。
【0039】
本発明における広葉樹クラフトパルプとしては、広葉樹未晒クラフトパルプ(即ち、LUKP)でもよく、広葉樹晒クラフトパルプ(即ち、LBKP)でもよく、両者を混合したものでもよい。
【0040】
本発明においては、広葉樹クラフトパルプの含有割合を、パルプ総量のうち50重量%以上、好適には100重量%とすることで、離解後パルプのフリーネス、ルンケル比とあいまって、蓋材用基材の寸法安定性が高く、紙粉の発生がなく、クッション性を有する蓋材用基材を得ることができる。
【0041】
広葉樹クラフトパルプ以外のパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ、古紙パルプ等を配合してもよい。
【0042】
・前記基紙は、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤の存在下で抄紙する。
【0043】
アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドなどのポリアクリルアミドが挙げられる。アニオン性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアクリル酸又はメタクリル酸等のアニオン性モノマーとの共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物などが挙げられる。カチオン性ポリアクリルアミドとしては、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ホフマン分解物、あるいはアクリルアミドとジメチルアミノエチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性モノマーとの共重合物などが挙げられる。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドと上記アニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物などが挙げられる。これらの中でも両性ポリアクリルアミドが好ましい。これらのポリアクリルアミド系高分子化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
・JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスが、350cc〜500ccである。
【0045】
フリーネスが350cc未満だと繊維のフィブリル化が促され過ぎることにより繊維の比表面積が増えることで寸法安定性が悪化する。フリーネスが500ccを超えると繊維のフィブリル化が進まず層間の結合が弱くなるため蓋材開封時に紙剥けが発生する他、紙自体が剛直となり加工適性の悪化、紙粉の発生が起きる。
【0046】
JIS P 8220に準拠して離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスを350cc〜500ccに調整する手段は、原料パルプへの叩解度合いや物理的分級手段等による従来公知の方法で調整可能である。
【0047】
本発明において指標とする、JIS P 8220に準拠して離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスは、原料パルプ調整段階におけるフリーネスと異なり、抄紙時に原料パルプ中の微細繊維が白水中に流失し、更にアクリルアミドを基剤とする紙力増強剤により、蓋材用基材を構成する原料パルプが繊維間で凝集・結合を生じた結果における紙層形成においてのフリーネスであり、本発明の効果を反映する指標として好適に用いることができる。
【0048】
・前記離解後パルプの重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmである。
【0049】
重量平均繊維長が1.0mmを超えるパルプが用いられていると、パルプ繊維の結束が生じ、地合が悪くなるため、高精細なグラビア印刷適性を満たすためには塗工量を増加しなくてはならず、透気度が上がるためアルミフィルム、樹脂フィルム貼合時にバブリングが発生する。他方、重量平均繊維長が0.5mm未満のパルプが用いられていると、地合は良好となるが、緊度が上がりすぎるため、クッション性が低下し、蓋材としての打抜き加工適性が低下する。
【0050】
・前記離解後パルプのうち90重量%以上を繊維長1.5mm以下の繊維が占める。
【0051】
基紙を構成する原料パルプとして、前記離解後パルプにおいて繊維長1.5mm以下の繊維を90重量%以上含有するパルプを用いることで、紙層が均一となり、また、表面平滑性が優れた蓋材用基材を得ることが出来る。
【0052】
前記蓋材用基材は、基紙を構成するパルプ原料として、前記離解後パルプの重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90重量%以上、好適には93〜97重量%含有するパルプが用いられている。より好適には、前記重量平均繊維長が0.6〜0.9mm、更に好ましくは0.65〜0.85mmとなるように調整される。
【0053】
なお、この繊維長の調整は叩解処理及びスクリーニング処理にて行われる。
【0054】
クッション性を確保する手段として、原料パルプ中に機械パルプを配合する試みが考えられるが、機械パルプが配合されると、蓋材用基材のクッション性及び打抜き適性の向上を図ることはできるが、グラビア印刷用塗工紙の表面に繊維の浮出し現象が現れ、印刷物の見栄え、特に白紙の表面性の影響を受け易いハーフトーン部からハイライト部にかけて見栄えが悪化する傾向にあるため、主成分として広葉樹クラフトパルプを50重量%以上、好適には100重量%の広葉樹クラフトパルプを用いることが好ましい。
【0055】
更に重量平均繊維長が1.0mmを超えるパルプが用いられていると、パルプ繊維の結束が生じ、地合が悪くなるため、高精細なグラビア印刷適性を満たすためには塗工量を増加しなくてはならず、塗工量増加に伴い紙のクッション性が低下する。他方、重量平均繊維長が0.5mm未満のパルプが用いられていると、地合は良好となるが、緊度が上がりすぎるため、クッション性が低下し、グラビア印刷適性が低下する。
【0056】
JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスが、350cc〜500ccであり、
前記離解後パルプの重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmであり、
前記離解後パルプのうち90重量%以上を繊維長1.5mm以下の繊維が占めることで、相乗的に基紙の地合い向上による層間強度向上とクッション性、寸法安定性に優れ、更に紙力増強剤との組合わせにより、紙粉の発生抑制と打抜き適性の向上を得ることができる。
【0057】
・前記蓋材用基材の幅方向と流れ方向における、J.TAPPI No.18−2に準拠したインターナルボンドの平均値が、200mJ以上である
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18−2に規定の「紙及び板紙−内部結合強さ試験方法−第2部:インターナルボンドテスタ法」に基づく、インターナルボンドテスタ(熊谷理機工業(株)製)での測定による塗工層面からのインターナルボンド(内部結合強さ)について流れ方向、巾方向をそれぞれ各5回ずつ測定したN数=10の平均値が200mJ以上、好ましくは220mJ以上である。該内部結合強さが200mJ未満であると、例えば蓋材として用いた際に層間で剥離する問題がある。なお、該インターナルボンドがあまりにも大きい場合には、片艶紙自体が剛直になり、例えば蓋材加工時に、容器との接着性が劣ると共に、開封時に屈曲部で割れや破断状の割れ目が生じ易くなる恐れがあるので、内部結合強さは500mJ以下であることが好ましい。
【0058】
インターナルボンドの調整には、用いるパルプ種の選択のほか、ジェットワイヤー比の調整などで調整可能であるが、本発明における塗工層面からのインターナルボンド(内部結合強さ)が、200mJ以上、好ましくは220mJ以上とするに好適な手段には、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤を基材中に含有させる事が好ましい。
【0059】
本発明の好適な態様によれば、前記アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤が両性のポリアクリルアミドであり、その含有量が対パルプ固形分あたりの固形分として1.0〜3.0重量%であり、JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した時のルンケル比が0.9以下である。
【0060】
・前記紙力増強剤として両性のポリアクリルアミドを用いる。
【0061】
本発明においては、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤が、クッション性を維持しながら、層間強度の向上、紙粉の発生を抑え、カール抑制効果をも有することで好適に用いることができるが、より好適には、両性のポリアクリルアミドを用いることが好ましい。
【0062】
両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドと上記アニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物などが挙げられる。これらのポリアクリルアミド系高分子化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本発明において好適に使用できる紙力増強剤である両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤は自己定着作用があるので、これを基紙に含有させることにより、従来の印刷用紙等への効果と同様に引張り強度(または裂断長)及び剛度のみならず、Z軸強度の向上を図ることが可能になり、更に蓋材用基材における特質である、寸法安定性が高く、紙粉の発生がなく、クッション性を維持し、印刷適性をも向上できる。
【0064】
・前記両性のポリアクリルアミドを、対パルプ固形分あたりの固形分として1.0〜3.0重量%含有する。
【0065】
ポリアクリルアミド系の紙力増強剤の含有量を多くすると、パルプスラリー中にフロックが発生するため、操業性、並びに製品の地合を良好な水準に維持するためには、紙力増強剤の含有量に制約がある。
【0066】
本発明者らの知見では、寸法安定性が高く、紙粉の発生がなく、クッション性を維持するための添加量として、対パルプ固形分あたりの固形分として1.0〜3.0重量%含有することが好適であることを見出している。
【0067】
対パルプ固形分あたりの固形分として1.0重量%未満では、引張り強度(または裂断長)及び剛度、更に蓋材用基材における特質である、Z軸強度の向上、寸法安定性、紙粉の発生の改善に寄与する効果が見られない。
【0068】
対パルプ固形分あたりの固形分として3.0重量%を超える含有量では、パルプスラリー中にフロックが発生するため、操業性、並びに製品の地合を良好な水準に維持することが困難であるとともに、紙粉の発生が生じる。
【0069】
・JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した時のルンケル比が0.9以下である。
【0070】
前記ルンケル比が0.9を超えると打抜き加工に必要なクッション性が得られない。
【0071】
ルンケル比の小さい(繊維壁の薄い)繊維を使用すると、例えば接着剤等を蓋材用基材裏面に設けた場合、接着剤の繊維内部への浸透性が過剰になる問題が発生することが考えられるとともに、クッション性を維持するためにウエットプレスが十分にかけられず、艶面の平坦性にムラが生じやすく好ましくない。また、ルンケル比の小さい(繊維壁の薄い)繊維は剛直性に劣るため、寸法安定性、水中伸度が悪化するといった問題が生じるため、ルンケル比が0.6を上回ることが好ましい。
パルプ繊維にはルーメン(内腔)が存在し、それ自体が潰れることによって、紙全体としてのクッション機能に繋がるため、内腔と外環(細胞壁)の厚みとの比率がクッション性にとって重要となる。そこで、パルプ繊維のクッション性を評価する指標としてルンケル比がある。
【0072】
ルンケル比(R)とは、繊維の内腔の幅(径)(L)と細胞壁の厚さ(t)によって求められる値であり、R=2・t/Lによって表される。実施例中に記載したルンケル比の測定は、Fiber Lab.(kajaani社)により測定された繊維幅、細胞壁厚より算出されたものである。このルンケル比が大きい方が剛直な繊維であると言え、このような繊維を使用すると密度の低い紙を抄造し易くなる。また、数値が低いほど同じ径に対して繊維壁の厚みが薄いことを意味し、繊維は柔軟性を持つ。JIS P 8220に準拠して離解したパルプのルンケル比の大きなパルプ繊維を用いて抄紙すると、繊維同士の結合面積の少ない、ポーラスな紙となり、クッション性が向上するが、ルンケル比が大きすぎると、繊維同士の結合面積が非常に小さくなるために、強度及びコシが低下するばかりでなく、表面性が低下するのでグラビア印字適性も低下する。
【0073】
本発明者等の知見によれば、離解後パルプのルンケル比が0.9以下、更に好適には0.6〜0.9であれば、グラビア印刷に適したクッション性が得られる。ルンケル比が0.9以下のパルプ繊維を得るには、パルプの原料となる木材として比較的若い段階で伐採した植林木や間伐材を用いるのが好ましい。ルンケル比の小さい(繊維壁の薄い)繊維を使用すると、例えば接着剤等を蓋材用基材裏面に設けた場合、接着剤の繊維内部への浸透性が過剰になる問題が発現しやすくなる問題が考えられるとともに、クッション性を維持するためにウエットプレスが十分にかけられず、艶面の平坦性にムラが生じやすく好ましくない。また、ルンケル比の小さい(繊維壁の薄い)繊維は剛直性に劣るため、寸法安定性(水中伸度)が悪化するといった問題が生じるため、ルンケル比が0.6を上回ることが好ましい。
【0074】
本発明の好適な態様によれば、前記基紙は、ヤンキードライヤーにて乾燥処理が施された艶面を有し、
前記艶面には、前記塗工層が設けられ、
JIS P 8119に準拠する、前記塗工層表面のベック平滑度が、500秒から2000秒であり、
前記蓋材用基材の幅方向と流れ方向における層間剥離強度の平均値が、200〜250N/mである。
【0075】
・前記基紙は、ヤンキードライヤーにて乾燥処理された艶面を有する。
【0076】
本発明で得られる蓋材用基材の使用用途として、食品包材を中心とする蓋材であるが構成として蓋材用基材の塗工層を有する艶面にグラビア印刷を行い、もう一方の面に接着層を設け、アルミフィルム又は樹脂フィルムとの貼合する加工が施される。グラビア印刷面は平滑度の高さが必要となり、一方、貼合面は、接合強度を上げるために接着剤と基紙及びアルミフィルム、樹脂フィルムとの比表面積を増やし接着度を増すために平滑度の低さが必要となるため、平滑度の表裏差を設けることが出来る事などからも、ヤンキー紙を本発明における基紙に使用することが好ましい。
【0077】
ヤンキー紙だと緊張乾燥のため、寸法安定性に優れ、しかも再吸湿時のカールが抑えられるため良い。
【0078】
ヤンキードライヤーで基紙が乾燥されていると、基紙のヤンキードライヤー接触面(艶面)がヤンキードライヤー鏡面を写し取るため表面平滑性が優れ、より平滑な塗工層を設けることができる。
【0079】
また、ヤンキードライヤーによる乾燥は、乾燥時の収縮が少ないためクッション性を有したまま乾燥されるためグラビア印刷時に高精細なグラビア印刷が可能になり見当ずれも発生しづらく、網点再現性も良好である。
【0080】
本発明における蓋材用基材の基紙の坪量としては40〜80g/m、更に好適には40〜60g/mで抄造されることが好ましい。40g/m未満だと、紙力確保が困難であると共に、高精細なグラビア印刷を行えるための十分なクッション性を付与出来ない場合が生じるためグラビア印刷時の網点再現性が出ない。
【0081】
また、80g/mを越えると嵩が増すことで層間強度が落ちる。そこでフリーネスダウンを更に行うことが考えられるが高精彩なグラビア印刷を行うためのクッション性を付与出来ない。
【0082】
・前記艶面に前記塗工層が設けられる。
【0083】
本発明の蓋材用基材の基紙を製造するには、少なくとも湿紙形成工程、プレス工程及びヤンキードライヤーによる乾燥工程が行われる。この乾燥工程でヤンキードライヤーと接触する側の片艶紙の片面(艶面)に、塗工液を塗工する。
【0084】
塗工手段は従来公知の塗工手段を適宜用いることが出来るが、グラビア印刷適性に対応した塗工面を得るために、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等、公知の各種塗工方式で基材に塗布乾燥する方法で形成される。
【0085】
本発明の塗工においてはグラビア印刷適性に対応して、ブレードコーターによる塗工手段が好適に用いられる。
【0086】
本発明の塗工においては、該湿紙形成工程と乾燥工程との間で、乾燥工程でヤンキードライヤーと接触する側の片艶紙の片面に、塗工液を塗工する手段も、簡便な塗工手段として用いることもできる。
【0087】
・JIS P 8119に準拠する、前記塗工層表面のベック平滑度が、500秒から2000秒である。
【0088】
本発明で用いる片艶紙の艶面に設けられた塗工層表面の平滑度は500〜2000秒、より好ましくは1000〜1500秒である。500秒未満では蓋材用基材へのアルミフィルムや樹脂フィルムの貼合性が十分でなく、更に、裏面に塗工する水溶性樹脂の被膜性が劣り、カールの改善性が劣るものとなる。また、平滑度は高い程、アルミフィルムや樹脂フィルムの貼合性が向上し、貼合のための糊剤が少なくて済み、より経済的であるという意味からは望ましいが、艶面の平滑度として2000秒を越えるためには、フリーネスダウンや抄紙プレス工程でのプレス圧向上等が必要となり、クッション性が低下する。更に、平坦性の指標として、本発明の蓋材用基材表面の平滑性(正反射平滑度)は、東洋精機製作所製のマイクロトポグラフを使用して24.4kg/cmの圧力でプリズムの一面に圧着し、波長0.5μmの光を用いて測定したときのRp値にて評価した。
【0089】
塗工層表面のベック平滑度を500秒から2000秒に調整する手段には、従来公知のカレンダー方式による平坦化処理も可能であるが、好適には、密度の変化量を抑えながら塗工層表面の平坦化を行うことが可能な金属ロールと弾性ロールの組合せからなるソフトカレンダーを用いることが好適である。ソフトカレンダーの金属面を塗工層面側に充てる1スタック処理にて平坦化処理することが、密度の変化量が少なく、本発明の課題である層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に優れた蓋材用基材を得るに好適である。
【0090】
グラビア印刷下でのニップ圧力は通常10〜20kgf/cmで、ニップの通過時間は1ミリ秒前後といわれており、非常に短時間の加圧下での用紙の平滑性、即ち、用紙とグラビア印刷版との接触率が重要であることが分かる。従来より、加圧下でのガラス面と紙の光学的接触率を測定する装置として、正反射平滑度計(東洋精機製作所製のマイクロトポグラフ)が知られている。マイクロトポグラフでは、加圧開始後1ミリ秒前後の接触率の読み取りは不可能であるが、最短で加圧開始後10ミリ秒後のガラス面と紙の光学的接触率を読み取ることが可能であり、ヤンキー紙を基紙とした蓋材用基材における艶面(塗工層)とガラス面との接触率から算出される平滑性の指標となるRp値(凹部の平均深さに比例した物理量:単位μm)とミッシングドットの発生率を調べた結果、マイクロトポグラフの加圧圧力24.4kgf/cmの設定で加圧開始後10ミリ秒後のRp値がミッシングドットの発生率と最も相関性の高いことがわかった。
【0091】
即ち、ヤンキー紙は従来の上質紙からなる基紙を用いた塗工紙と異なり、裏面が粗面で塗工層をもうけた艶面が高平滑であるため、裏面の粗面の凹凸に対し、グラビア印刷下でのニップ圧力を高めに設定したマイクロトポグラフの設定圧力24.4kgf/cmにおける加圧開始後10ミリ秒後のRp値を2.0μm以下、好適には1.8μm以下に成るようにヤンキー紙からなる基紙と塗工層を設けることで、良好なグラビア印刷適性を得ることが可能となる。
【0092】
本発明が所望するRp値を得る方法としては、基紙を構成するパルプ主原料として、ルンケル比が0.9以下の広葉樹クラフトパルプを用いることのほか、基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプを用いること、塗工層に用いる顔料が、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有されることが好適な手段として挙げられる。
【0093】
なお、Rp値の下限としては特に限定するものではないが、艶消し塗被紙の外観特性等を考慮すると、Rp値の下限値としては0.5μmである。因みに、0.5μm未満では高精細なグラビア印刷適性が低下する恐れが有る。また、2μmを超えると高精細なグラビア印刷に必要な網点再現性が得られない。
【0094】
・前記蓋材用基材の幅方向と流れ方向における層間剥離強度の平均値が、200〜250N/mである
本発明で云う層間剥離強度は、層間強度の評価として剥離試験機(型番:SP−2000、IMASS社製)を用いて測定する。
【0095】
剥離強度測定方向に200mm、巾方向に15mmのサンプルを用意し、両面粘着テープ(型番:4970 TESA社製)に紙サンプルの両面に貼り木板を用いて10回ずつ机上で擦りつける。
【0096】
紙の層間で破れるように紙の両面に貼ったテープを同時に素早く引張る。
【0097】
紙に貼った片面の粘着テープを剥し、鉄板に貼付け、鉄板を剥離試験機にセットする。
【0098】
90度の角度が出来るように鉄板と貼合していない側の紙の片端を剥離試験機の荷重測定用クリップにて固定する。
【0099】
鉄板を速度756cm/分(300インチ/分)で移動させ剥離を伴う。その際にクリップにかかった荷重を測定し、移動間の平均値を層間剥離強度(N/m)として算出する。蓋材用基材の流れ方向と幅方向について各3回測定したN数=6の平均値を測定値とした。
【0100】
層間剥離強度は、インターナルボンドテスターによる衝撃的な剥離力と異なり、蓋材として本発明の蓋材用基材を用いた際における、開封時の持続的剥離力を示す指標として好適に用いられ、紙力増強剤等による瞬間的な剥離力向上効果と異なり、本発明で好適に用いる特有の繊維長、ルンケル比、フリーネスなどが相俟って効果を発揮する構成における指標として好適に用いられ、最も好適には、インターナルボンドテスターによる衝撃的な剥離力を有すると共に、層間剥離強度においても所定の強度以上の効果を持たせ、両者の効果を満足することが好ましいことを発明者らは見出している。
【0101】
本発明の好適な態様によれば、前記基紙の裏面には、水溶性樹脂が固形分で0.1〜3.0g/m塗工され、
前記水溶性樹脂が、主成分として、酸化澱粉(A)とポリアミド系耐水化剤(B)を含有し、
酸化澱粉(A)とポリアミド系耐水化剤(B)の配合割合が、固形分重量比で(A):(B)=95:5〜85:15である。
【0102】
前記基紙の裏面の耐水化剤としては、公知の耐水化剤が使用できるが、ポリアミド樹脂やエポキシ樹脂などを2級、3級アミノ基や4級アンモニウム塩基でカチオン変性したものが好ましく、1種類以上で使用される。その中でも2級アミノ基で変性したポリアミド樹脂が、酸化澱粉との相溶性とカール抑制の費用対効果が高く好ましく用いられる。
【0103】
本発明の好適な構成においては、ヤンキー紙からなる蓋材用基材の裏面(前記塗工層が設けられた面と反対面)に、水溶性樹脂が塗工される。水溶性樹脂は、澱粉と耐水化剤との混合水性塗工液を固形分で0.1〜8.0g/mをバーコーター、ロールコーター等の塗工手段で塗布し乾燥後、更に表面温度が180℃である金属ロールからなるカレンダーを用いて線圧約60kN/m程度にて平滑化処理を行うことで、本発明に係る蓋材用基材のカール対策、粘着剤塗工面の粘着剤塗工性等、蓋材用基材の表面性に関わる品質を向上できる。
【0104】
・前記基紙の裏面には、水溶性樹脂が固形分で0.1〜8.0g/m塗工される。
【0105】
原紙上の一方に塗工層を設けた場合、原紙層と塗工層の吸湿性・伸縮性の違いからカールが発生しやすい。そのため、片面に塗工層を形成する場合は、反対面に寸法安定化を目的とした水溶性樹脂を塗工することが好ましい。
塗工量については0.1〜8.0g/mで好ましくは0.5〜2.5g/mが良い。0.1g/m未満では、寸法安定化を図るための水溶性樹脂としての効果を発揮しないほか、カール抑制に繋がらない。8.0g/mを超えるとクッション性の低下による打抜き加工適性が低下する。
【0106】
・前記水溶性樹脂が、主成分として、酸化澱粉(A)とポリアミド系耐水化剤(B)を含有する。
【0107】
蓋材用基材の基紙の裏面に酸化澱粉とポリアミド系耐水化剤からなるカール防止を目的とした水溶性樹脂を塗工したものが良い。他の手法として顔料と接着剤からなる塗料を塗工する構成や、カール防止の水をつける構成等も考えられるが、顔料塗工では吸湿によるカール等は避けられるが、通気性が低下するためアルミフィルム又は樹脂フィルムとの貼合時に熱が紙層から逃げず、バブリング等の加工上の問題が発生する。水をつける構成においてもアルミフィルム又は樹脂フィルム貼合時に乾燥することで再度基紙の艶面側にカール発生する問題がある。
【0108】
一方で酸化澱粉+耐水化剤の組合せについて澱粉は安価品であるとともにアルミフィルム又は樹脂フィルム貼合時の加温条件下で粘度上昇する性質があるため耐水化剤の耐水性を付与することで吸水を防止し、貼合後に最も寸法安定性の優れた蓋材となる。また酸化澱粉は粘弾性流体であるので印刷時のクッション性も保持することが出来る。
【0109】
本発明においては、酸化澱粉の中でも、アルデヒド変性を行った酸化澱粉を好適に用いることができる。アルデヒド基を生成官能基とする粘性の低いアルデヒド変性を行った酸化澱粉を用いることにより、紙中への浸透性を高めて繊維間結合を強化し、内部結合強度を向上させ、紙表面のカバーリングを減らして透気性を向上させることを見い出している。
【0110】
これにより、自家変性澱粉を用いた場合と較べて、同等以上の層間強度を確保でき、アクリルアミド系の紙力増強剤の添加量の減量が図れ、叩解の程度も、JIS P 8220に準拠して蓋材用基材を離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスの、350cc〜500ccへの調整が容易になり、故に濾水性や地合に影響が及ばない範囲内で叩解を粗くすることが可能となり、緊度の上昇を抑え、層間強度、加工適性の向上と共に、印刷適性の向上、カール抑制に優れた蓋材用基材を得ることができる。
【0111】
・酸化澱粉(A)とポリアミド系耐水化剤(B)の配合割合が、固形分重量比で(A):(B)=95:5〜85:15である。
【0112】
耐水化剤(B)の重量比が5未満では、耐水化剤の効果が薄くなるため吸水によるカールの発生を十分に防止することが出来ず寸法安定性の向上に繋がらない。耐水化剤(B)の重量比が15を超えると、蓋材の裏面アルミフィルム貼合時に用いる接着剤は水系であるため撥水性を強めすぎることで接着剤の紙基材への浸透が弱くなるため貼合時の接着力低下が発生する他、被膜性が上がることによりアルミフィルム貼合時にバブリングが発生する。
【0113】
(本発明の好適な態様)
基紙表面の塗工層中に湿潤紙力増強剤を含有させる事が好ましい。塗工層に含有される湿潤紙力増強剤としては特に限定されるものではなく、例えば尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、アルデヒドデンプン、ケトンアルデヒド樹脂等が挙げられ、必要に応じて2種類以上を併用することも可能である。中でも、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂が好ましく用いられる。
【0114】
湿潤紙力増強剤は、含有量が少なすぎると十分な耐水性・水中伸度が得られにくく、多すぎると塗料調整における操業性不良、不用意な凝固が発生しやすくなるため、固形分で対顔料当たり、0.3〜1.0重量%含有することが望ましい。本発明ではこの範囲で含有することにより、操業性に支障をきたすことなく目標とする耐水性・水中伸度を効率良く得ることができる。より好ましくは0.3〜0.5重量%である。
【0115】
固形分で対顔料当たり、0.3重量%未満では、十分な耐水性・水中伸度が得られにくく、1.0重量%を超える含有量では、元来アニオン性を呈する塗工層の形成において、塗工液のゲル化や凝集物発生の問題が生じやすく、操業性に問題が生じる。
【0116】
前記蓋材用基材は、ガーレ透気度(JIS P 8117)が1000秒以上で水中伸度が2.5%以下(紙の幅方向)であることが好ましい。
【0117】
本発明においては、ガーレ透気度を1000秒以上とすることにより、グラビア印刷における、印刷後の乾燥時における加熱に対し寸法安定性を維持すると共に、特にラベル用途で用いた場合における、接着剤の過度の浸透性を抑制し、使用後の廃棄性、接着剤使用量の低減を図ることができる。
【0118】
蓋材の透気性を抑えるためには、蓋材用基材の透気性を高くすることのほか、塗工層の透気性を抑える。本発明においては、基紙を構成するパルプ主原料として、ルンケル比0.9以下の広葉樹クラフトパルプを含有させることのほか、基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプを用いる方策が好適であり、塗工層の形成においては、塗工層に用いる顔料に、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有させることが好適な手段として用いられる。
【0119】
また、抄造時におけるプレス線圧を高くする等、紙層の緊度を上げる試みを考えられるが、過度の対応はクッション性を低下させる問題があり、原料パルプ、塗工層の構成を主体に調整することが好ましい。
【0120】
また、透気度が1000秒未満ではインキが紙へ浸透しやすくなり、塗工表面でのインキの目止め性が悪くなり、網点再現性が出ない。好ましくは1000秒〜3500秒が好ましい。3500秒を超えるとアルミやフィルムとの貼合時に熱が紙層から逃げないため、バブリング等の加工上の問題が発生する。
【0121】
本発明の蓋材用基材は、クロス方向(紙の幅方向)のJ.TAPPI No.27に基づく20分後の水中伸度が2.5%以下、より好適には2.2%以下であることが好ましい。
【0122】
水中伸度は2.5%以下とする。高精細なグラビア印刷用途においては高い網点再現性が必要とされるが、2.5%を超えるとグラビア印刷時の乾燥工程における紙の収縮により印刷時の見当ずれが発生する。
【0123】
また、本発明の蓋材用基材が好適に用いられるラベル用途において、水中伸度が2.5%を超えると、蓋材用基材の裏面に設けられた粘着剤などが塗布されたり、艶面に設けられた塗工層、基紙に水分が含まれたりすると、基材や塗工層に寸法変化が生じてしまうため、被着体に貼着時に作業性が悪化するなどの問題が生じる。水中伸度は理想的には0%であるが、水中伸度の下限は現実的には0.5%程度である。
【実施例】
【0124】
以下、本発明に係る実施例を、比較例を参照しつつ詳説する。尚、各薬品の添加量は固形分である。以下、部数は重量部を表し、%は重量%を表す。
〔実施例1〕
<基紙の調整>
チリ産ユーカリチップを主原料とした広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100%を用い、パルプ調整段階で粘状叩解を施して、ルンケル比0.75に調整した広葉樹晒クラフトパルプを用い、硫酸バンドを1.5重量%、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤(商品名:DS4366、星光PMC株式会社製、両性ポリアクリルアミド)を表1記載の量で、サイズ剤(商品名:NES555、ハリマ化成株式会社製)を0.4重量%内添し、原料調整した後、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で抄紙し、坪量60g/mの基紙を抄造した。
【0125】
<艶面塗工層用塗液の調整>
顔料として微粒カオリン(商品名:カオファイン、シール社製、平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:10)50部と、重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル97、イメリスミネラルズジャパン社製、平均粒子径:0.4μm)50部、分散剤(商品名:アロンT−540、東亜合成社製)0.1部を加え、コーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調製した。
【0126】
この顔料スラリーに、接着剤として、リン酸エステル化澱粉(商品名:PN700S、三和澱粉工業社製)3.0部、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:R1395、旭化成ケミカルズ社製)12部、湿潤紙力増強剤(星光P
MC社製、型番:WS4024 ポリアミド・エピクロロヒドリン)0.4部を添加、攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度が60%の塗工液を調製した。
【0127】
<艶面塗工層の形成>
前記基紙艶面に前記塗工液を、ブレードコーターを用いて塗工量が15.0g/mとなるように塗工し、カレンダーにて塗工面の平坦化処理を行った。
【0128】
<非艶面水溶性樹脂の調整>
非艶面水溶性樹脂として酸化澱粉(商品名:MS3600 日本食品加工株式会社製)100部とポリアミド系耐水化剤(商品名:スミレーズレジン633 住友化学工業株式会社製)8部を添加、攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度が30%の塗工液を調整した。前記基紙裏面に前記塗工液を、ロールコーターを用いて塗工量が1.5g/mとなるように塗工した。
【0129】
実施例及び比較例では、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)として、チリ産ユーカリチップを用い、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)には、タスマニア産ダグラスファーを用い、古紙パルプには、古紙再生促進センターによる古紙統計分類における、模造・色上を主原料古紙として脱墨処理した古紙パルプを用い、それぞれに対し、叩解・離解、分級処理を施しルンケル比を調整した。
【0130】
本発明におけるフリーネスや重量平均繊維長や、繊維長分布は、シングルディスクレファイナーを用い叩解手段を用いると共に、分級手段を併用して調整した。
【0131】
比較例5については、紙力増強剤として、カチオン澱粉(CATO304、日本エヌエスシー(株)製)を用いた。
【0132】
実施例7〜12では、酸化澱粉として、ジアルデヒド変性の酸化澱粉(ナショナル・スターチ:コボンド)を用いた。
【0133】
本発明で用いた無機微粒子は以下のとおりである。
(1)微粒カオリン
実施例1〜9、15、16、比較例7
・カオファイン(シール社製)平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:10
実施例10
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。
平均粒子径:0.20μm、アスペクト比:10
実施例11
・カピムCC(リオカピム社製)を更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。
平均粒子径:0.35μm、アスペクト比:10
実施例12
・デラミネーテッドクレー(エンゲルハード社製)、平均粒子径:0.45μm、アスペクト比:13
実施例13
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。
平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:8
実施例14
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。
平均粒子径:0.10μm、アスペクト比:12
【0134】
(2)クレー
比較例1〜5
・市販の1級クレーを、更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。
平均粒子径:0.55μm、アスペクト比:10
比較例6
・市販の1級クレーを、更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。
平均粒子径:0.55μm、アスペクト比:5
【0135】
(3)重質炭酸カルシウム
実施例1〜11、13、14 比較例1〜5、7
・カービタル97(イメリスミネラルズジャパン社製)平均粒子径:0.40μm
実施例12
・カービタル97を更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。平均粒子径:0.20μm
実施例15
・カービタル97を更に湿式粉砕機にて粒度を調整した。平均粒子径:0.30μm
実施例16
・カービタル60(イメリスミネラルズジャパン社製)を分級、湿式粉砕して製造した。平均粒子径:0.5μm
比較例6
・中国産重質炭酸カルシウムを、分級、乾式粉砕して製造した。平均粒子径:1.20μm
各実施例、比較例の諸条件は、表1〜2に準拠して実施し、評価した。
【0136】
<評価手段>
〔ルンケル比〕
実施例に基づいて製造した蓋材用基材について、JIS P 8220に準拠して離解した離解後パルプを用い、そのパルプの繊維の内腔の幅(径)Lと細胞壁の厚さtをカヤニFiberlabを使用して測定した後、次式により算出した。
ルンケル比=t(μm)×2/L(μm)
〔米坪(坪量)〕
JIS P 8124に準拠して測定した。
【0137】
〔離解後フリーネス〕
実施例に基づいて製造した蓋材用基材を、JIS P 8220に準拠して離解した離解後パルプを用い、JIS P 8121に準拠して測定した。
【0138】
〔重量平均繊維長〕
得られた蓋材用基材を、JIS P 8220に準拠して離解し、得られた離解パルプを基に、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙−繊維長試験方法−光学的自動計測法」に準拠して、カヤニ繊維長測定機FS−100を用いて離解後パルプの重量平均繊維長を測定した。
【0139】
〔繊維長分布〕
得られた蓋材用基材を、JIS P 8220に準拠して離解し、得られた離解パルプを基に、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙−繊維長試験方法−光学的自動計測法」に準拠して、カヤニ繊維長測定機FS−100を用いて繊維長1.5mm以下の繊維の割合を測定した。
【0140】
〔アスペクト比〕
電子顕微鏡(嶋津製作所製:S−2150)を用いて、200倍にて撮影した写真に対し、任意の直線を引き、直線に掛かる微粒カオリンの100個の粒子について長径、短径を測定し、長径、短径からアスペクト比(=長径/短径)の平均を求めた。
【0141】
〔体積平均粒子径〕
塗工組成物に含有する顔料のメタノール分散溶液をレーザー粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した。
【0142】
〔ベック平滑度〕
蓋材用基材の表出面に設けた塗工層表面について、JIS P 8119に準拠して測定した。
【0143】
〔正反射平滑度〕
本明細で言う正反射平滑度は東洋精機(株)製マイクロトポグラフを用い、加圧24.4kgf/cm、加圧開始10ミリ秒後、波長0.5mmについて測定した値を言う。
【0144】
〔層間剥離強度〕
剥離強度測定方向に200mm、巾方向に15mmのサンプルを用意し、両面粘着テープ(TESA社製)に紙サンプルの両面に貼り木板を用いて10回ずつ机上で擦りつける。
紙の層間で破れるように紙の両面に貼ったテープを同時に素早く引張る。
紙に貼った片面の粘着テープを剥し、鉄板に貼付け、鉄板を剥離試験機にセットする。
90度の角度が出来るように鉄板と貼合していない側の紙の片端を剥離試験機の荷重測定用クリップにて固定する。
鉄板を速度756cm/分(300インチ/分)で移動させ剥離を伴う。その際にクリップにかかった荷重を測定し、移動間の平均値を層間剥離強度(N/m)として算出する。蓋材用基材の流れ方向及び幅方向について各3回測定したN数=6の平均値を測定値とした。
【0145】
〔インターナルボンド〕
J・TAPPI−No18−2法に準じて測定した。本発明に係る蓋材用基材を用い、長辺が流れ方向の試料と幅方向の試料を用意し、幅方向と流れ方向をそれぞれ各5回ずつ測定したN数=10の平均値を測定値とした。
【0146】
〔透気度〕
蓋材用基材の表出面に塗工層を設けた状態で、JIS P 8117に準拠して測定した。
【0147】
〔水中伸度〕
J・TAPPI−No27−28A法に準じて測定した、本発明に係る蓋材用基材の幅方向の値である。
【0148】
〔打抜き加工適性〕
打抜き加工適性の評価方法として25mm径のSC45C炭素鋼製ベルトポンチ(スリーエイチ社製)で紙15枚を打抜き、断面の毛羽立ち、切れ具合、カール度合いを目視判定し、下記1〜5の5段階で評価した。
【0149】
(評価基準)
5:断面の毛羽立ち、切れ不良、カールもなく極めて優れているレベル
4:断面の毛羽立ちは若干見られるが、切れ不良、カールに問題無く優れているレベル
3:断面の毛羽立ち、切れ不良、カールが少量観察されるが、実用上問題ないレベル。
2:断面の毛羽立ち、切れ不良、カールが多量に観察され、実用上問題ありのレベル。
1:断面の毛羽立ち、切れ不良、カールが著しく観察され、実用上問題ありのレベル。
【0150】
〔耐水性〕
耐水性の評価として、オフセット輪転印刷(オフセット輪転印刷機:型番LITHRONE44、(株)小森コーポレーション製を用いて、両面が4色ベタ図柄で印刷速度600rpm)後、印刷ブランケットの汚れ状態を目視判定し、下記1〜5の5段階で評価した。
【0151】
(評価基準)
5:ブランケットに汚れが全く観察されず、極めて優れているレベル。
4:ブランケットに汚れは殆ど観察されず、優れているレベル。
3:ブランケットに塗被層の剥がれが少量観察されるが、実用上問題ないレベル。
2:ブランケットに塗被層の剥がれが多量に観察され、実用上問題ありのレベル。
1:ブランケットに塗被層の剥がれが著しく観察され、実用上問題ありのレベル。
【0152】
〔網点再現性〕
蓋材用基材の塗工層上にグラビア印刷による印刷を施し、インキの載り具合を目視で観察し、下記1〜5の基準で評価した。
【0153】
(評価基準)
5:白抜けがない。
4:白抜けが少ない。
3:白抜けがやや目立つ。
2:白抜けが多く目立つ。
1:白抜けがかなり多く目立つ。
【0154】
〔カール〕
23℃、65%RH環境下に15時間調湿した、実施例および比較例の各蓋材用基材を用いて、120℃の恒温槽に約1分間保持する。この時、それぞれの各蓋材用基材各10枚を入れ違いに3分置きに連続で測定し、恒温槽から取り出した後、平らな測定台に載せ、測定台から記録用紙の4隅について、記録用紙と測定台表面との直線距離を測定し、最も距離の大きい値をカールの測定値として評価した。評価基準は以下の通りであり、1〜5の5段階で評価した。
【0155】
(評価基準)
5:3mm未満
4:3mm〜6mm未満
3:6mm〜10mm未満
2:10mm〜15mm未満
1:15mm以上
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有する蓋材用基材であって、
前記基紙は、主成分に広葉樹クラフトパルプを用い、アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤の存在下で抄紙され、
JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した離解後パルプの、JIS P 8121に準拠したフリーネスが、350cc〜500ccであり、
前記離解後パルプの重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmであり、
前記離解後パルプのうち90重量%以上を繊維長1.5mm以下の繊維が占め、
前記蓋材用基材の幅方向と流れ方向における、J.TAPPI No.18−2に準拠したインターナルボンドの平均値が、200mJ以上であることを特徴とする蓋材用基材。
【請求項2】
前記アクリルアミドを基剤とする紙力増強剤が両性のポリアクリルアミドであり、その含有量が対パルプ固形分あたりの固形分として1.0〜3.0重量%であり、JIS P 8220に準拠して前記蓋材用基材を離解した時のルンケル比が0.9以下であることを特徴とする請求項1記載の蓋材用基材。
【請求項3】
前記基紙は、ヤンキードライヤーにて乾燥処理が施された艶面を有し、
前記艶面には、前記塗工層が設けられ、
JIS P 8119に準拠する、前記塗工層面のベック平滑度が、500秒から2000秒であり、
前記蓋材用基材の幅方向と流れ方向における層間剥離強度の平均値が、200〜250N/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋材用基材。
【請求項4】
前記基紙の裏面には、水溶性樹脂が固形分で0.1〜8.0g/m塗工され、
前記水溶性樹脂が、主成分として、酸化澱粉(A)とポリアミド系耐水化剤(B)を含有し、
酸化澱粉(A)とポリアミド系耐水化剤(B)の配合割合が、固形分重量比で(A):(B)=95:5〜85:15であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の蓋材用基材。


【公開番号】特開2010−149881(P2010−149881A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328062(P2008−328062)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】