説明

薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用亜鉛系めっき鋼板

【課題】本発明は、廉価で用途特性に優れた薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とするものである。
【解決手段】薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーの外面となる面が、必要性能を有するように、亜鉛系めっき鋼板の表面に、着色有機系処理皮膜単層、または無機有機複合系処理皮膜と着色有機系処理皮膜の複層、またはZn−Coめっき皮膜と着色有機系処理皮膜の複層、またはZn−Coめっき皮膜と無機有機複合系処理皮膜と着色有機系処理皮膜の三層を設け、その上に場合によりクリアー有機系処理皮膜を設け、且つバックカバーの内面となる面は、必要性能を有するように、亜鉛系めっき鋼板の表面に、無機有機複合系処理皮膜単層またはZn−Coめっき皮膜と無機有機複合系処理皮膜の複層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用亜鉛系めっき鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、薄型ディスプレイパネル、特にプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、以下、PDPと略記する。)を用いる表示装置のバックカバー用材料として、下記のような提案がなされている。
【0003】
PDPを用いてテレビ映像等を表示する表示装置に係わり、電磁波の不要輻射を防止した表示装置の筐体構造に関するもので、PDPを収納する直方体の枠体を設け、その外部を外カバー(バックパネル)で被って筐体とし、枠体として導電性材料、バックカバーとしてプラスチック材料を用いるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また上記と同様に、PDPの電磁波の不要輻射ノイズ漏れを防止する表示装置に関するもので、PDPを用いる表示装置はPDPが粘着シートを介してシャーシに固定され、PDP側の前面からキャビネット、シャーシ側の後面からバックカバーで挟まれたサンドイッチ構造になっている。表示装置のバックカバーとしては導電性材料からなるものや、樹脂製パネルの内側に金属製またはアルミニウム製の箔を貼り付けて導電性を持たせたものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
他方、放熱性、導電性および耐疵付性が優れた金属板に関するもので、用途の一例として、PDPを用いる表示装置のバックカバーを挙げ、この金属板はアルミニウム素板の両面にリン酸クロメート皮膜を形成し、その上に樹脂皮膜を形成してなることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
上記に記述したように、PDPを用いる表示装置のバックカバー用途材料には、従来からパネルの導電性を主体要求としてアルミニウム板等の非鉄材料が使われてきた。その後、意匠性の要求が高まり、色彩のバリエーションに富んだPCM塗装鋼板等も用いられている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−172267号公報
【特許文献2】特開2000−200046号公報
【特許文献3】特開2004−160979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、PCM塗装鋼板は塗膜厚みが数10g/mと厚く、且つ塗装工程の作業性等の理由から比較的高価なため、近年、コストダウンの観点から、従来特性同等以上の性能を担保し、より低コストな意匠性めっき鋼板の開発が要求され始めた。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、廉価で用途特性に優れた薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは,上記の問題を解決すべく鋭意検討し,本発明を完成した。本発明の要旨は,以下の通りである。
【0011】
(1)薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜が形成されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
(2)薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜が形成されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
(3)薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜が形成され、前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
(4)薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
(5)薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
(6)薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
(7)着色有機系処理皮膜の上に、皮膜量が0.5〜5g/mであるクリアー有機系処理皮膜が更に形成されることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載に亜鉛系めっき鋼板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用亜鉛系めっき鋼板は、上述した構成よりなるので、皮膜厚みが小さくて低コスト化を実現でき、且つ薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用途性能を満足する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態に係る亜鉛系めっき鋼板は、薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーの外面となる面が必要性能(例えば、意匠性と耐食性)を有するように、亜鉛系めっき鋼板の表面に、着色有機系処理皮膜単層、または無機有機複合系処理皮膜と着色有機系処理皮膜の複層、またはZn−Coめっき皮膜と着色有機系処理皮膜の複層、またはZn−Coめっき皮膜と無機有機複合系処理皮膜と着色有機系処理皮膜の三層を設け、且つバックカバーの内面となる面が必要性能(例えば、導電性と耐食性)を有するように、亜鉛系めっき鋼板の表面に、無機有機複合系処理皮膜単層またはZn−Coめっき皮膜と無機有機複合系処理皮膜の複層を設ける。また、場合によっては、更に耐色落ち性を付与するために、上記単層構造または複層構造の着色有機系処理皮膜の上にクリアー有機系処理皮膜を更に備えてもよい。表裏異なる皮膜構成を基本設計に持ち、且つ表裏皮膜の最適化を図ることで、薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用途に優れた、意匠性亜鉛系めっき鋼板を提供できる。
【0014】
ここで、上記の薄型ディスプレイパネルとしては、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、電解放出ディスプレイパネル等のディスプレイパネルがある。また、本実施形態に係る亜鉛系めっき鋼板は、例えば、パーソナルコンピュータ用のディスプレイやTVに使用されるディスプレイパネル等、あらゆる薄型ディスプレイパネルに用いることが可能である。
【0015】
本実施形態に係る薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用意匠性亜鉛系めっき鋼板において、バックカバーの外面となる面は、亜鉛系めっき鋼板の表面に直接着色有機系処理皮膜を有することで亜鉛系めっき鋼板のめっき腐食生成物が保持され、このバリアー効果によって耐赤錆性が向上する。他方、亜鉛系めっきと着色有機系処理皮膜との間に無機有機複合系処理皮膜を被覆することで、このバリアー効果は向上する。これは、無機有機複合系処理皮膜が、めっき表面の−O、−OH基や有機系皮膜表面の親水性官能基と水素結合やファンデルワールス力を介して架橋構造を形成するため、界面の密着力を向上させると共に、腐食の過程で無機有機複合系処理皮膜から無機成分が溶解し、腐食生成物の安定化に寄与するものと推定している。
【0016】
同様に、亜鉛系めっきと着色有機系処理皮膜との間にZn−Coめっき皮膜を被覆することでも、このバリアー効果は向上する。これは、Zn−Coめっき皮膜表面の−O、−OH基が、有機系皮膜表面の親水性官能基と水素結合やファンデルワールス力を介して架橋構造を形成するため、界面の密着力を向上させると共に、腐食の過程でZn−Coめっき皮膜からCo成分が溶出し、塩基性塩化亜鉛等のZnの腐食生成物の安定化(化学的な保持効果)に寄与するものと推定している。
【0017】
更に、亜鉛系めっきの上にZn−Coめっき皮膜、無機有機複合系処理皮膜、着色有機系処理皮膜の順に皮膜被覆を行うことで、この効果は格段と向上し、優れた高耐食性が発現する。これは、無機有機複合系処理皮膜と着色有機系処理皮膜の腐食因子の透過抑制効果(物理的なバリアー効果)に加え、亜鉛系めっき鋼板のめっき腐食生成物が、Zn−Coめっき皮膜からの溶出したCoや、無機有機複合系処理皮膜から溶出した無機成分によって強力に保持(化学的な保持効果)され、これの物理的なバリアー効果によって、下地めっきの腐食を抑え、耐白錆性や耐赤錆性が向上するものと推定している。
【0018】
一方、意匠性の観点からは、有機系皮膜中の顔料、ビーズ、アルミペースト等の種類および含有率を変化させることで、要求に合った多種多様な深みを持った意匠性外観が可能となる。
【0019】
更に、場合によって耐色落ち性を必要とするときは、着色有機系処理皮膜の上にクリアー有機系処理皮膜を被覆するようにしてもよい。このようなクリアー有機系処理皮膜を形成することで、双方の皮膜表面の官能基同士の水素結合やファンデルワールス力等を介して架橋構造が形成されるため、界面の密着力を担保し、且つクリアー有機系処理皮膜が着色有機系処理皮膜のガードコートの役割を担うため、加工時の面摺動や拭き取り時の着色有機系処理皮膜の耐色落ち性が著しく向上する。
【0020】
他方、本実施形態に係る意匠性亜鉛系めっき鋼板の薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーの内面となる面は、亜鉛系めっき鋼板の表面に薄膜の無機有機複合系処理皮膜を被覆することで導電性が確保され、且つめっきの腐食が抑制され、結果的に耐赤錆性が向上する。これは、無機有機複合系処理皮膜が、めっき表面の−O、−OH基と水素結合やファンデルワールス力を介して架橋構造を形成し、タイトな皮膜となっているため、めっき面への水、塩分等の腐食因子のバリアー効果を発現するためであると考えられる。同時に、腐食の過程で無機有機複合系処理皮膜から無機成分が溶解し、腐食生成物の安定化も寄与するものと推定している。
【0021】
更に、亜鉛系めっき鋼板の表面にZn−Coめっき皮膜を被覆し、極薄膜の無機有機複合系処理皮膜を被覆することで更なる導電性と耐食性の向上がなされる。これは、Zn−Coめっき皮膜と無機有機複合系処理皮膜の極薄複層皮膜でありながら、めっき腐食生成物保持の相乗効果によって耐食性が良好となる。このため良導電性に乏しい無機有機複合系処理皮膜の極薄膜化が可能となり、優れた導電性が確保できるものと推定される。
【0022】
上記Zn−Coめっき皮膜は、下限1.0g/m、上限5.0g/mの皮膜量で、下限0.2mass%、上限1.0mass%のめっき中のCo含有率で形成されたものである。皮膜量および組成がそれぞれ下限1.0g/m未満且つ下限Co含有率0.2mass%未満であると、白錆や赤錆が発生し易くなり、耐食性は低下する。この理由としては、主にZn−Coめっき皮膜量とCo含有率が少なくCo溶出量も極めて少ないため、充分なめっき腐食生成物の保持効果が発揮できなくなることから、めっきの腐食が起こり易いためであると考えられる。一方、上限皮膜量および組成の根拠としては、製造コストの観点から5.0g/mの皮膜量、1.0mass%のCo含有率を上限値とした。
【0023】
また、安定した耐食性の確保と製造コストの最小化を図るためには、例えば、上記皮膜量下限は1.2g/m、Co含有率下限は0.22mass%であることがより好ましく、上記皮膜量上限は4.8g/m、Co含有率上限は0.98mass%であることがより好ましい。
【0024】
上記Zn−Coめっきの亜鉛系メッキ鋼板へのめっき方法としては、電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、置換めっき、溶融塩電解めっき法等の所定のめっき組成およびめっき付着量が確保できれば、どの方法を使用しても良い。
【0025】
上記無機有機複合系処理皮膜は、下限0.3g/m、上限0.7g/mの皮膜量で形成されたものである。下限0.3g/m未満であると、白錆や赤錆が発生し易くなり、耐食性は低下する。この理由としては、主にめっき表面の無機有機複合系処理皮膜の被覆量が極めて少なく充分に表面を覆えないため、腐食因子のバリアー効果が不足し、めっきの腐食が起き易いからであると考えられる。一方、上限皮膜量決定の理由としては、バックカバーの内面となる側の面の表面において上限皮膜量が0.7g/mを超えると、皮膜が良伝導性でないため電磁波の不要輻射ノイズ漏れを防止するために必要とされる導電性が著しく低下するからである。安定した耐食性と導電性を確保するためには、例えば、上記下限は0.35g/mであることがより好ましく、上記上限は0.65g/mであることがより好ましい。
【0026】
他方、上記無機有機複合系処理皮膜がZn−Coめっき皮膜を介して被覆される複層皮膜においては、Zn−Coめっき皮膜が下限1.0g/m、上限5.0g/mの皮膜量で、めっき中のCo含有率が下限0.2mass%、上限1.0mass%で、且つ無機有機複合系処理皮膜が下限0.03g/m、上限0.3g/mの皮膜量で形成される。Zn−Coめっき皮膜量が下限1.0g/mから上限5.0g/mの皮膜量で、且つめっき中のCo含有率が下限0.2mass%から上限1.0mass%の範囲において、耐食性は良好であるが、更に無機有機複合系処理皮膜が下限0.03g/m以上で耐白錆性は格段と向上し、且つ上限0.3g/m以下の皮膜量で導電性も格段と向上する。この理由としては、主にZn−Coめっき皮膜と無機有機複合系処理皮膜によるめっき腐食生成物の保持効果(化学的作用)に加え、極薄膜でも無機有機複合系処理皮膜の腐食因子のバリアー効果およびめっき腐食生成物の表面固定効果(物理的作用)を有するため、耐食性が著しく向上するからであると考えられる。従って、無機有機複合系処理皮膜単層の場合に比べ、Zn−Coめっき皮膜があることで耐食性が確保されるため、その分、良伝導性でない無機有機複合系処理皮膜の極薄膜化が可能となり、電磁波の不要輻射ノイズ漏れを防止するために必要とされる導電性も飛躍的に向上できたと考えられる。
【0027】
安定した耐食性と、導電性の確保と、製造コストの最小化とを図るためには、例えば、Zn−Coめっき皮膜量の下限は1.2g/m、Co含有率の下限は0.22mass%であり、皮膜量の上限は4.8g/m、Co含有率上限は0.98mass%であることが好ましく、且つ無機有機複合系処理皮膜の下限が0.03g/m、上限が0.28g/mであることがより好ましい。
【0028】
上記無機有機複合系処理皮膜は、無機化合物を主体とし、無機塩は特に限定されないが、例えば、リン酸塩及びケイ酸塩の単独もしくは両方が配合されていることが望ましい。無機塩の種類としては、特に限定されることはないが、無機塩中のカチオン成分は亜鉛イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオンが好ましい。
【0029】
また、成膜性向上の観点から、上記無機有機複合系処理皮膜中に有機化合物を含有させている。有機化合物としては、例えば、有機チタン化合物、有機ケイ素化合物、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂等を挙げることができる。これらの有機化合物のうち、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル酸系樹脂、有機ケイ素化合物が好ましく、上記無機塩と混合するか脱水縮合等の化学結合を用いて複合化しても良い。有機化合物の有機系官能基としては、脂肪族および芳香族炭化水素系官能基であれば、特に限定されることはなく、上記無機塩と脱水縮合等の化学結合を用いて複合化されることが望ましい。成膜性を向上させるために、有機系官能基の末端にアミノ基、エポキシ基等の反応性の異なる単独もしくは二種類以上の官能基を導入すると、更に好適である。
【0030】
上記無機有機複合系処理皮膜は、耐食性向上の観点から、防錆処理剤に使用されうる防錆インヒビターを適宜含有してもよい。防錆インヒビターとしては、特に限定されることはないが、例えば、亜鉛、ケイ素、リン、マグネシウム、ジルコニウム、硫黄、バナジウム、アルミニウム、コバルト、チタン、マンガン、ニオブ、モリブデン、バリウム、タングステンの単体もしくはこれらを含有する酸化物、フッ化物、窒化物等の化合物の単独もしくは二種以上が配合されていることが好ましい。
【0031】
上記の無機有機複合系処理皮膜における無機化合物(無機系成分)の具体例として、例えば、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、バナジン酸アンモニウム、オキシ二塩化バナジウム、三酸化バナジウム、五酸化バナジウム、オキシシュウ酸バナジウム、チッ化バナジウム、オキシ硫酸バナジウム、バナジン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト、酸化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、酸化チタン、塩化チタン、チタン酸バリウム、チタンフッ化水素酸、塩化マンガン、硫酸マンガン、炭酸マンガン、四三酸化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、二酸化マンガン、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、五酸化ニオブ、シュウ酸水素ニオブ、ニオブ酸バリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデン、三酸化タングステン、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸カルシウム、塩化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、酸化バリウム、硫酸バリウム、過酸化バリウム等を挙げることができる。しかしながら、本発明に係る無機有機複合系処理皮膜における無機化合物成分は、上記の化合物に限定されるわけではない。
【0032】
上記無機有機複合系処理皮膜を形成する処理液としては、無機塩の解離イオンを主成分として、さらに有機樹脂等の有機系官能基を含む有機化合物、防錆インヒビター等が必要に応じて添加された処理液が使用できる。
【0033】
上記無機有機複合系処理剤による亜鉛系めっき鋼板への処理方法としては、浸漬型処理、塗布型処理のいずれの方法によっても上記無機有機複合系処理皮膜を形成させることが可能である。浸漬型処理としては、例えば、亜鉛系めっき鋼板に脱脂、水洗を行った後に、上記無機系処理液と接触させ、リンガーロール法やエアナイフ法等によって膜厚を制御した後に乾燥を行うことにより、上記無機有機複合系処理皮膜を形成することができる。上記無機有機複合系処理皮膜の皮膜量は、たとえばリンガーロール法であればロール押し付け圧、エアナイフ法ではエア圧の調整によりそれぞれ制御が可能である。
【0034】
塗布型処理としては、例えば、亜鉛系めっき鋼板に、必要な皮膜量に応じた量の上記無機有機複合系処理液をロールコート法により必要な塗布量に調整する方法がある。上記無機有機複合系処理液を亜鉛系めっき鋼板に塗布した後、乾燥炉等を用いて乾燥させることにより、皮膜を形成させる。
【0035】
上記着色有機系処理皮膜単層は、亜鉛系めっきの上に下限0.5g/m、上限5g/mの皮膜量で形成されたものである。下限0.5g/m未満であると、白錆や赤錆が発生し易くなり、耐食性は低下する。この理由としては、めっき表面のうねりの頂上部位での有機皮膜厚みが薄くなり、この部位での腐食因子の透過性が高くなるため、めっきの腐食が起き易いからであると考えられる。一方、上限5g/mの皮膜量を超えると、ロールコーター系の塗布方法で容易に有機皮膜厚みを制御することが難しく(すなわち均一膜厚成膜がしづらく)、塗布ムラ模様が発生しやすくなるため、外観品位上も難しい。安定した耐食性と、成膜性の確保と、製造コストの最小化とを図るためには、例えば、上記下限は0.7g/mであることがより好ましく、上記上限は4.5g/mであることがより好ましい。
【0036】
更に、上記着色有機系処理皮膜と亜鉛系めっきとの間に、上記の皮膜量上下限を有するZn−Coめっき皮膜や無機有機複合系処理皮膜を被覆することで、耐食性は著しく向上し、且つ意匠性には特に影響を与えない。
【0037】
上記着色有機系処理皮膜は、有機化合物に各種着色顔料を含む皮膜であるが、更に、この中にビーズ、アルミペースト、増粘剤、有機防錆剤、無機防錆剤、染料、界面活性剤、潤滑剤等の他の添加剤が、単独もしくは二種以上配合されていてもよい。ここで、添加剤の材質等は特に限定されない。特に、ビーズやアルミペーストを添加することで、ゆず肌感やメタリック調の意匠性を得ることができる。
【0038】
上記有機化合物の役割は、着色有機系処理皮膜中に含有させることによって、めっき上に欠陥のない均一な着色有機系処理皮膜を形成させることである。また、着色顔料等の添加剤を皮膜中で固定するのに好適である。更に、無機有機複合系処理皮膜をめっきと着色有機系処理皮膜との間に形成させると、めっきと着色有機系処理皮膜間の密着性は更に向上する。
【0039】
上記有機化合物としては主に有機樹脂であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の単独もしくは二種以上の混合物、または複数樹脂の変性体を使用することが、添加剤の皮膜中での固定および無機有機複合系処理皮膜もしくはめっきと着色有機系処理皮膜の密着性の向上に好適である。
【0040】
上記着色有機系処理皮膜は、亜鉛系めっき鋼板に直接またはZn−Coめっきや無機有機複合系処理皮膜を介して、上記着色有機系処理剤を塗布することによって形成することができる。上記塗布方法としては、均一な成膜がなされ塗膜厚が制御出来さえすれば、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、エアレススプレー法、ロール法等を挙げることができる。
【0041】
上記クリアー有機系処理皮膜は、下限0.5g/m、上限5g/mの皮膜量で形成されたものである。下限0.5g/m未満であると、耐色落ち性は低下する。この理由としては、クリアー有機系処理皮膜量が少ないと、着色有機系処理皮膜の色落ちのバリアー効果が効かず、上限5g/mの皮膜量を超えると、ロールコーター系の塗布方法で容易に有機皮膜厚みを制御することが難しく(すなわち均一膜厚成膜がしづらく)、塗布ムラ模様が発生しやすくなるため外観品位上も難しい。安定した耐色落ち性と成膜性とを確保するためには、例えば、上記下限は0.7g/mであることがより好ましく、上記上限は4.5g/mであることがより好ましい。
【0042】
上記クリアー有機系処理皮膜は、有機化合物であるが、更に、この中に増粘剤、有機防錆剤、無機防錆剤、界面活性剤、潤滑剤等の他の添加剤が、単独あるいは二種以上配合されていてもよい。ここで、添加剤の材質等は特に限定されない。
【0043】
上記有機化合物の役割は、クリアー有機系処理皮膜中に含有されることによって、めっき上に欠陥のない均一なクリアー有機系処理皮膜を形成させることである。また、潤滑剤(wax)等の添加剤を皮膜中で固定するのに好適である。更に、有機化合物は着色有機系処理皮膜とクリアー有機系処理皮膜間の密着性の向上に寄与する。
【0044】
上記有機化合物としては主に有機樹脂であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の単独もしくは二種以上の混合物、または複数樹脂の変性体を使用することが、添加剤の皮膜中での固定および着色有機系処理皮膜とクリアー有機系処理皮膜の密着性の向上に好適である。
【0045】
上記クリアー有機系処理皮膜の塗布方法としては、均一な成膜がなされ塗膜厚が制御出来さえすれば、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、エアレススプレー法、ロール法等を挙げることができる。
【0046】
本実施形態に係る薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用意匠性亜鉛系めっき鋼板に使用する亜鉛系めっき鋼板としては、特に限定されず、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき、置換めっき鋼板等の亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。
【0047】
なお、上記のZn−Coめっき皮膜や無機有機複合系処理皮膜や着色有機系処理皮膜やクリアー有機系処理皮膜の付着量は、例えば皮膜形成前および皮膜形成後の亜鉛系めっき鋼板の質量をそれぞれ測定し、皮膜形成前後での質量差を被覆面積で除することで決定することができる。
【0048】
また、上記の無機有機複合系処理皮膜や着色有機系処理皮膜やクリアー有機系処理皮膜を形成するための塗布液は、例えば蒸留水に所定比率の成分を固形分濃度が所定範囲(例えば、10〜20質量%)になるように添加し、常温で均一分散するまで撹拌を行うことで製造することができる。
【0049】
また、上記のZn−Coめっき皮膜におけるCo含有率は、例えば以下のような方法を用いることで測定することができる。まず、所定面積の試料上のZn−Coめっきを、所定量の酸溶液で完全に溶解させた後、Zn−Coめっきが溶けた溶液を化学分析し、Zn、Co濃度(g/リットル)を求める。これより、溶液中に溶解したZn、Co量(g)=所定量の酸溶液(リットル)×Zn、Co濃度(g/リットル)の関係を用いて、溶液中に溶解したZn,Co量(g)を求める。続いて、得られた溶液中に溶解したZn、Co量(g)を試料面積(m)で除することで、単位面積あたりのZn,Co付着量(g/m)を求める。ここで、Co含有率(mass%)=Co付着量/(Zn付着量+Co付着量)×100の関係を用いることで、Co含留率を決定することができる。ここで、上記の化学分析を行う機器として、例えば原子吸光光度計(ICP)を用いることができる。
【0050】
本発明は、薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーの外面となる側の面には、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜を形成するか、または皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、かつ、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜を第一層として形成し、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜を第二層として形成するか、または、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜を第一層として形成し、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜を第二層として形成するか、または、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、かつ、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜を第一層として形成し、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜を第二層として形成し、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜を第三層として形成し、その上に場合により皮膜量が0.5〜5.0g/mであるクリアー有機系処理皮膜を形成する。また、カバーの内面となる側の面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜を形成するか、または皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、かつ、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜を第一層として形成し、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜を第二層として形成する。このようにして各皮膜を形成することにより、鋼板の全面を、均一皮膜で覆うことができる。
【0051】
これにより、亜鉛系めっき鋼板のめっき表面と無機有機複合系処理皮膜、およびZn−Coめっきのめっき表面と無機有機複合系処理皮膜、亜鉛系めっき鋼板のめっき表面と着色有機系処理皮膜、Zn−Coめっきのめっき表面と着色有機系処理皮膜、無機有機複合系処理皮膜と着色有機系処理皮膜、着色有機系処理皮膜とクリアー有機系処理皮膜の各界面の密着力を向上させることが可能となり、薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーの具備すべき主たる性能要件である、バックカバーの外面となる側の面の必要性能(例えば、意匠性と耐食性、外観品位、特にクリアー有機系処理皮膜の被覆があることで耐色落ち性)、および内面となる側の面の必要性能(例えば、導電性と耐食性)が同時に確保できる。従って、本発明の意匠性亜鉛系めっき鋼板を適用することで、充分な薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用途性能を満足できる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施
例のみに限定されるものではない。
【0053】
用いためっき鋼板を表1、Zn−Coめっき作製水準を表2、無機有機複合系処理皮膜
水準を表3、着色有機系処理皮膜水準を表4−1、クリアー有機系処理皮膜を表4−2にそれぞれ示す。なお、Zn−Coめっき皮膜は、表2に記載のめっき条件に基づいて作製した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】






【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
これらの組み合わせによって、本発明に示す意匠性亜鉛系めっき鋼板を作製し、導電性、外観品位性、耐食性、耐色落ち性を調査した。なお、無機有機複合系処理皮膜は、表3に示した1〜11の塗布液を市販のゴムロールコーターにて塗布し、鋼板到達温度110〜180℃で焼付け放冷し作製した。着色有機系処理皮膜は、表4−1に示した1〜10の塗布液を市販のゴムロールローターにて塗布し、鋼板到達温度110〜180℃で焼付け放冷し作製した。また、各皮膜の付着量は、皮膜形成前後の質量差を被覆面積で除することで決定した。なお、表3に示した1〜11の塗布液の無機系成分と有機系成分との質量比、および、有機樹脂と有機チタン化合物もしくは有機ケイ素化合物との質量比は、表3に記載の通りである。クリアー有機系処理皮膜は表4−2に示したに示した1〜10の塗布液を市販のゴムロールローターにて塗布し、鋼板到達温度110〜180℃で焼付け放冷し作製した。各種評価内容および基準は次の通りである。
【0060】
(導電性評価方法)
平滑なA4サイズの平板表面をロレスター4探針法(ロレスターEP)を用いて、任意に10点の表面抵抗を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0061】
導電性(評価4点以上が合格)
評点5:1mΩ未満が10点中10点
4:1mΩ未満が10点中8〜9点
3:1mΩ未満が10点中6〜7点
2:1mΩ未満が10点中4〜5点
1:1mΩ未満が10点中0〜3点
以上の評価結果を、以下に示す表5−1から5−6中に示した。
【0062】
(外観品位性評価方法)
ロールコーター法を用いてA4サイズの平板に着色有機系処理皮膜を塗布し、目視にて塗布ムラ模様発生の有無を目視評価した。評価基準は以下の通りである。
【0063】
外観品位性(評価2点が合格)
評点2:目視判定で塗布ムラ模様発生無し
1:目視判定で塗布ムラ模様発生有り
以上の評価結果を、以下に示す表5−1から5−7中に示した。
【0064】
(耐食性評価方法)
平板を150mm(長手)×70mm(幅)サイズに切断し、長手方向下から50mmの位置に7mm高さのエルクセン張り出しを行い、板端面部と裏面部を市販の防錆テープでシーリングした後で、塩水噴霧試験SST(JIS Z2371)環境に仰角60°で放置し、3日後の腐食外観を下記の評点で評価した。評価基準は以下の通りである。百分率は部位の錆発生面積率を表す。平面部、張り出し部それぞれについて、耐食性評価3点以上が合格である。
【0065】
平面部
評点5:白錆発生なし
4:白錆発生50%
3:全面白錆発生
2:白錆発生多、赤錆発生微少
1:赤錆発生多
【0066】
張り出し部
評点5:白錆発生50%未満
4:全面白錆発生
3:赤錆発生50%未満
2:全面赤錆発生
1:全面赤錆発生
以上の評価結果を、以下に示す表5−1から5−6中に示した。
【0067】
(耐色落ち性評価方法)
平板を150mm(長手)×70mm(幅)サイズに切断し、長手方向に摺動試験機により、市販の白ネル(布)を用いて、荷重500g/cm、ストローク30mmの往復スライド摩耗にて5000回往復後の布への色付き、平板上の色落ち痕の発生を、目視評価により下記の評点で評価した。評価基準は以下の通りである。耐色落ち性評価3点以上が合格である。
【0068】
評点5:平板表面外観変化なし、布着色なし
4:平板表面外観変化なし、布着色微少
3:平板上の色落ち痕微少、布着色微少
2:明らかな平板上の色落ち痕あり、布着色あり
1:メッキ下地露出、布着色大
以上の評価結果を、以下の表5−7中に示した。
【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

【0074】
【表11】

【0075】
【表12】

【0076】
表5−1から5−6の評価結果に示す通り、本発明の製造方法で作製した本発明鋼板(実施例No.1〜123)は、内面となる側の面の導電性と耐食性、および外面となる側の面の外観品位性、耐食性が良好である。それに比較して、本発明範囲を逸脱する場合(比較例No.1〜42)は、導電性あるいは外観品位、耐食性が不良である。すなわち、本発明は、薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーの外面となる側の面と内面となる側の面にそれぞれ前出の構成からなる皮膜を所定量有することで薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバーとして必要とされる性能を具備できることがわかった。
【0077】
その上に更に皮膜量が0.5〜5.0g/mであるクリアー有機系処理皮膜を形成することで、前出の表5−7の評価結果に示す通り、上記の製造方法で作製した本発明鋼板(実施例No.124−139)は、耐色落ち性と外面品位性に極めて優れることがわかった。それに比較して、本発明範囲を逸脱する場合(比較例No.43−52)は、耐色落ち性または外面品位性のどちらかが不良であることがわかった。また、クリアー有機系処理皮膜を形成しない場合(比較例No.53−58)は、耐色落ち性が不良であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用意匠性亜鉛系めっき鋼板は、上述した構成よりなるので、皮膜厚みが小さくて低コスト化を実現でき、且つ薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用途性能を満足している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、
前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜が形成されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
【請求項2】
薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、
前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜が形成されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
【請求項3】
薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜が形成され、
前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
【請求項4】
薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が0.3〜0.7g/mである無機有機複合系処理皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、
前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
【請求項5】
薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、
前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
【請求項6】
薄型ディスプレイパネルを用いる表示装置のバックカバー用の亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき鋼板の前記バックカバーの外面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、皮膜量が0.5〜5g/mである着色有機系処理皮膜と、が順に積層され、
前記バックカバーの内面となる側の面の表面には、皮膜量が1.0〜5.0g/mであり、めっき中のCo含有率が0.2〜1.0mass%であるZn−Coめっき皮膜と、皮膜量が0.03〜0.3g/mである無機有機複合系処理皮膜と、が順に積層されることを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
【請求項7】
前記着色有機系処理皮膜の上に、皮膜量が0.5〜5g/mであるクリアー有機系処理皮膜が更に形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載に亜鉛系めっき鋼板。

【公開番号】特開2008−25019(P2008−25019A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272049(P2006−272049)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】