説明

薄板支持容器用蓋体

【課題】 蓋開閉装置41で蓋体13を確実に着脱させる。
【解決手段】 内部に半導体ウエハが収納される薄板支持容器11の容器本体12を塞ぐ薄板支持容器用蓋体13である。薄板支持容器用蓋体13を構成する本体部18と、この本体部18のうち上記容器本体12側である内側面に取り付けられて半導体ウエハを押圧支持する薄板押さえ28とを備えた。上記本体部18の外側面には、内側へ凹ませて形成されて上記薄板押さえ28が上記半導体ウエハを押圧支持することで受ける反発力によって上記本体部18が外側へ膨らむ分を吸収して膨出を防ぐ凹部23を備えた。この凹部23は、膨出分を吸収する深さに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、記憶ディスク、液晶ガラス基板等の薄板が容器本体内に収納された状態でその内部を密封するために取り付けられると共に蓋開閉装置によって上記容器本体に対して自動的に着脱される薄板支持容器用蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の薄板を収納して保管、輸送するための薄板支持容器は一般に知られている。このような薄板支持容器の例を図2に示す。図2は薄板支持容器を示す概略断面図である。
【0003】
この薄板支持容器は主に、容器本体1と、この容器本体1の開口を塞ぐ蓋体2とから構成されている。蓋体2の内側には、半導体ウエハ等の薄板(図示せず)を支持するための薄板押さえ(図示せず)が設けられている。そして、蓋体2が容器本体1に取り付けられて内部が密封された状態で、薄板押さえが薄板を押圧支持する。この例としては、特許文献1に記載のものがある。
【0004】
薄板が収納された容器本体1内は清浄な状態に保たれているため、蓋体2は、クリーンルーム内等において通常、蓋開閉装置(図示せず)で自動的に着脱される。
【特許文献1】特開2004−186293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような薄板支持容器では、蓋開閉装置で蓋体2を自動的に着脱される際に、蓋開閉装置が蓋体2に係合できない場合がある。この理由を以下に述べる。
【0006】
上記容器本体1内に上記薄板が多数装着されていると、この多数の薄板を上記薄板押さえが押圧支持する際に各薄板から薄板押さえに強い反発力が作用して、上記蓋体2が、図2中のtのように、外側へ膨らむことがある。
【0007】
一方、蓋体2には通常2つのキー穴(図示せず)があり、そのキー穴に蓋開閉装置側のキーが挿入されて回動することで、蓋体2が容器本体1に対して、固定され又は固定解除されるようになっている。
【0008】
そして、上記蓋体2が外側へt分だけ膨らんでいると、この膨らんだ部分が上記蓋開閉装置に接触してこの蓋開閉装置と上記蓋体2の間隔を正確に位置決めすることができない場合がある。そしてこの場合、蓋開閉装置側のキーを上記蓋体2のキー穴に完全に挿入することができずに、蓋体2の固定又は固定解除ができなくなることがあるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、上記蓋体の膨らみを抑えて上記蓋開閉装置による自動的な着脱の際の障害を解消したものである。即ち、薄板支持容器用蓋体は、内部に薄板が収納される薄板支持容器の容器本体を塞ぐ薄板支持容器用蓋体であって、当該薄板支持容器用蓋体を構成する本体部と、当該本体部のうち上記容器本体側である内側面に取り付けられて上記薄板を押圧支持する薄板押さえとを備え、上記本体部の外側面に、内側へ凹ませて形成されて上記薄板押さえが上記薄板を押圧支持することで受ける反発力によって上記本体部が外側へ膨らむ分を吸収して膨出を防ぐ凹部を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記凹部は、上記薄板の整列方向に長く伸びた形状に構成することが望ましい。また、上記凹部は、膨出分を吸収する深さに形成し、膨らみの大きい上記本体部の中央部を深く、周縁部を浅く形成することが望ましい。膨出分を吸収する深さは、膨出力が大きなところほど深くなる。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したように、本発明の薄板支持容器用蓋体によれば、次のような効果を奏する。
【0012】
上記薄板支持容器用蓋体の本体部の外側面に凹部を備えて、上記薄板押さえが上記薄板を押圧支持することで受ける反発力によって上記本体部が外側へ膨らむ分を吸収して膨出を防ぐため、上記蓋開閉装置によって薄板支持容器用蓋体を確実に着脱できるようになる。
【0013】
また、上記薄板支持容器用蓋体は、上記薄板の整列方向に沿って膨出する場合があるため、上記凹部を上記薄板の整列方向に長く伸びた形状に構成することで、上記凹部が上記薄板の整列方向に沿った膨出を吸収することができるようになる。
【0014】
また、上記凹部が、膨出分を吸収する深さに形成され、膨らみの大きい上記本体部の中央部を深く、周縁部を浅く形成されることで、上記本体部の膨出による変形後の面を平坦面状にすることが可能となり、上記蓋開閉装置によって薄板支持容器用蓋体を確実に着脱できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の薄板支持容器用蓋体が取り付けられる薄板支持容器は、半導体ウエハ、記憶ディスク、液晶ガラス基板等の薄板を収納して、保管、輸送、製造ライン等における使用に供するための容器である。なお、本実施形態では、半導体ウエハを収納する薄板支持容器を例に説明する。
【0017】
薄板支持容器11は図1、2に示すように主に、容器本体12と、この容器本体12の開口を塞ぐ薄板支持容器用の蓋体13とから構成されている。
【0018】
容器本体12は、全体をほぼ立方体状に形成されている。この容器本体12は、4枚の側壁部12A、12B、12C、12Dと底板部12Eとから構成され、その一側(図1中の左手前側)に開口12Fが設けられている。この容器本体12は、横置き状態(図1の状態)で底部となる側壁部12Aの外側には、薄板支持容器11の位置決め手段12G及び容器本体12の固定手段12Hが設けられている。横置き状態で横壁部となる側壁部12C、12Dの外側には持ち運び用ハンドル14が取り付けられている。この持ち運び用ハンドル14は、必ず取り付けられているものではなく、使用態様に応じて必要な場合のみ取り付けられる。なお、固定手段12Hは、後述の蓋開閉装置41の容器載置台43に薄板支持容器11を固定するための部材である。
【0019】
容器本体12の開口12Fには、蓋体13が嵌合するための蓋体受け部15が設けられている。この蓋体受け部15は、容器本体12の開口12Fの周縁部を、蓋体13の寸法まで広げて形成されている。これにより、蓋体13は、蓋体受け部15に嵌合することで、容器本体12側に取り付けられるようになっている。蓋体受け部15の四隅には、蓋体13の後述する着脱機構19の係止爪(図示せず)が嵌合して蓋体13を容器本体12側に固定するための被嵌合部(図示せず)が設けられている。
【0020】
容器本体12内には、各半導体ウエハを並列に一定間隔を空けて支持するウエハ支持部(図示せず)が設けられている。このウエハ支持部は、側壁部12C、12Dの内側面に互いに対向して設けられ、容器本体12内に収納される半導体ウエハを左右両側から支持ようになっている。これにより、多数の半導体ウエハが、ウエハ支持部に支持された状態で、並列に一定間隔を空けて容器本体12内に収納される。
【0021】
蓋体13は、容器本体12の蓋体受け部15に装着されて容器本体12内を密封するための部材である。蓋体13は、図1、3、4に示すように、本体部18と、着脱機構19とから構成されている。
【0022】
本体部18は、全体を肉厚の四角形板状に形成され、後述するウエハ押さえ28を装着する内側凹部21と、着脱機構19を装着する外側凹部22とを有している。内側凹部21は、本体部18の中央に位置して内側(容器本体12側)に開口している。外側凹部22は、内側凹部21を挟んで本体部18の両側に位置して外側に開口している。
【0023】
着脱機構19は、本体部18の両側の外側凹部22にそれぞれ装着されている。この着脱機構19は、そのキー溝20に、蓋体着脱装置(図示せず)のT字型のキー(図示せず)が挿入されて回動されることで、蓋体13を容器本体12に対して固定し、固定解除するようになっている。
【0024】
さらに、本体部18の内側凹部21の外側面には凹部23が設けられている。この凹部23は、内側(容器本体12側)へ凹ませて形成され、本体部18が外側へ膨らむ分を吸収して膨出を防ぐための凹みである。即ち、凹部23は、ウエハ押さえ28が多数の半導体ウエハを押圧支持することで受ける反発力によって本体部18が外側へ膨らむ分を吸収して本体部18の膨出を防ぐための凹みである。この凹部23は、内側凹部21の外側面を凹ませて形成されている。具体的には、横置き状態(図1の状態)で縦に伸びる円弧溝状に形成されている。凹部23の深さは、本体部18が外側へ膨ら際の膨出分を吸収する深さに設定されている。具体的には、図2の膨らみtと同じかそれ以上の深さに設定されている。さらに、凹部23を円弧溝状に形成して、本体部18が外側へ膨らんだ状態で、内側凹部21の外側面が面一になるように設定されている。なお、内側凹部21の内側にはウエハ押さえ28が設けられているため、そのウエハ押さえ28の取り付けスペースを確保できるように、内側凹部21の板厚が設定されている。
【0025】
蓋体13の内側面には、図4に示すように、薄板押さえとしてのウエハ押さえ28が設けられている。このウエハ押さえ28は、容器本体12内に収納された複数枚の半導体ウエハを、その上側から支持するための部材である。ウエハ押さえ28は、基端支持部30と、弾性支持板部31と、当接片32と、連接支持板部33とから構成されている。
【0026】
基端支持部30は、ウエハ押さえ28の両端にそれぞれ設けられて2つの弾性支持板部31を直接的に支持するための部材である。弾性支持板部31は、基端支持部30に支持されて当接片32を弾性的に支持するための部材である。当接片32は、各半導体ウエハの周縁部に直接に当接して各半導体ウエハを直接的に支持するための部材である。連接支持板部33は、2つの当接片32の間を互いに連接して支持するための部材である。この構成のウエハ押さえ28により、その弾性支持板部31で支持された各当接片32が、容器本体12内に収納された各半導体ウエハの周縁部にそれぞれ当接して、各半導体ウエハを一定間隔を空けて弾性的に支持している。
【0027】
蓋開閉装置41は図5に示すように主に、筐体42と、容器載置台43と、容器載置台移動機構44と、種類判別センサ45と、蓋体着脱機構46と、昇降機構47とから構成されている。
【0028】
筐体42は、装置全体を支えるための部材である。容器載置台43は、薄板支持容器11を正確に位置決めして支持するための部材である。容器載置台移動機構44は、筐体42容器載置台43を前後へ移動させるための装置である。種類判別センサ45は、薄板支持容器11の種類を判別するセンサである。
【0029】
蓋体着脱機構46は、薄板支持容器11の蓋体13を着脱させるための装置である。この蓋体着脱機構46は、上記着脱機構のキー溝20に嵌合するT字型のキー(図示せず)を備えている。蓋体着脱機構46は、薄板支持容器11の蓋体13に面する平坦面部を備え、この平坦面部に一定間隔を空けて2つのキーが配設されている。このキーは、回転駆動部(図示せず)に一体的に設けられ、蓋体13の容器本体12への固定、固定解除に応じて回転制御されるようになっている。
【0030】
昇降機構47は蓋体着脱機構46を支持して昇降させるための装置である。昇降機構47は、薄板支持容器11の蓋体13を容器本体12から取り外す際に蓋体着脱機構46を上昇させ、蓋体13を取り外した後は蓋体着脱機構46を下降させる。
【0031】
以上のように構成された薄板支持容器11は次のように動作する。
【0032】
まず、容器本体12内に多数の半導体ウエハを、並列に一定間隔を空けて収納される。この状態で、蓋体13を容器本体12に取り付ける。これにより、蓋体13の内側面のウエハ押さえ28の各当接片32が各半導体ウエハに嵌合して、各半導体ウエハがそれぞれ支持される。この状態で、T字型のキーをキー溝20に嵌合させて回動させ、蓋体13を容器本体12に固定する。これにより、内部が密封され、搬送される。
【0033】
搬送先では、蓋開閉装置41に設置される。具体的には、薄板支持容器11は、蓋開閉装置41の容器載置台43に載置される。薄板支持容器11は、容器載置台43に位置決め固定され、容器載置台移動機構44で蓋体着脱機構46に面する位置に移動される。この状態で、蓋体着脱機構46のT字型のキーが蓋体13のキー溝20に嵌合して着脱機構を回動させる。これにより、蓋体13が容器本体12から外れて蓋体着脱機構46側に支持される。蓋体着脱機構46は蓋体13を支持した状態で、昇降機構47によって下方に移動され、容器本体12が開放状態になる。そして、ウエハ搬送装置(図示せず)容器本体12内の半導体ウエハを取り出して加工等される。
【0034】
このとき、薄板支持容器11の蓋体13が、容器本体12内に多数収納された半導体ウエハがウエハ押さえ28で押圧支持されるときに、その反動として蓋体13が外側に膨らむことがあるが、この場合、蓋体13の凹部23によって、その膨らみが吸収される。
【0035】
これにより、膨らみが蓋体着脱機構46につかえて蓋体着脱機構46のT字型のキーが蓋体13のキー溝20に完全に嵌合できなくなる状態を解消できる。
【0036】
この結果、蓋開閉装置41によって蓋体13を確実に着脱させることができるようになる。
【0037】
[変形例]
上記実施形態では、図1に示すように凹部23を縦に伸びる円弧溝状に形成して、その深さは縦方向全域で同じ(直線状)にしたが、図6に示すように、凹部51を縦方向に湾曲させて形成してもよい。即ち、横方向だけでなく縦方向にも湾曲させて形成してもよい。なおここでは、蓋体にカバーが設けられた構成になっている。このため、凹部51は蓋体のカバーに形成されている。蓋体は、その縦方向においても、横方向の湾曲と同じように、ウエハ押さえ28での反動によって膨らむことがある。このため、凹部51を横方向と共に縦方向にも凹ませておくことで、ウエハ押さえ28での反動による膨らみを確実に吸収することができる。
【0038】
この場合、凹部23、51は、円弧状に湾曲させる場合と、楕円等の他の曲面にする場合がある。曲面の形状は、本体部18の変形状態に応じて設定される。この曲面の具体的な形状(深さ)は、変形した後の本体部18の外側表面が面一になるように設定される。即ち、膨出力が小さいところで浅く、膨出力が大きなところほど深くなる。例えば、膨らみの大きい本体部18の中央部を深く、周縁部に行くに従って浅く形成してもよい。この場合、内部の半導体ウエハによって蓋体13が膨らむことで、変形後の本体部18の外側表面全体が均一な平坦面状になり、蓋体着脱機構46側の面と整合させることができる。
【0039】
また、凹部23、51では、円弧状等の曲面にしたが、円弧状以外の形状でもよい。例えば、円弧に沿って段階的に変化するステップ状であったり、多角形状であったりしてもよい。
【0040】
また、凹部23、51として、蓋体13の全面を凹ませて形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る薄板支持容器を示す斜視図である。
【図2】従来の薄板支持容器用蓋体を示す側面断面である。
【図3】本発明の実施形態に係る薄板支持容器を底面側から示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る薄板支持容器用蓋体のウエハ押さえを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る蓋開閉装置を示す側面断面図である。
【図6】本発明の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
11:薄板支持容器、12:容器本体、12A,12B,12C,12D:側壁部、12E:底板部、12F:開口、13:蓋体、15:蓋体受け部、18:本体部、19:皿板部、20:カバー部、21:内側凹部、22:外側凹部、23:凹部、24:キー溝、25:キー穴、26:凹部、28:ウエハ押さえ、30:基端支持部、31:弾性支持板部、32:当接片、33:連接支持板部、41:蓋開閉装置、42:筐体、43:容器載置台、44:容器載置台移動機構、45:種類判別センサ、46:蓋体着脱機構、47:昇降機構、51:凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に薄板が収納される薄板支持容器の容器本体を塞ぐ薄板支持容器用蓋体であって、
当該薄板支持容器用蓋体を構成する本体部と、当該本体部のうち上記容器本体側である内側面に取り付けられて上記薄板を押圧支持する薄板押さえとを備え、
上記本体部の外側面に、内側へ凹ませて形成されて上記薄板押さえが上記薄板を押圧支持することで受ける反発力によって上記本体部が外側へ膨らむ分を吸収して膨出を防ぐ凹部を備えたことを特徴とする薄板支持容器用蓋体。
【請求項2】
請求項1に記載の薄板支持容器用蓋体において、
上記凹部が、膨出分を吸収する深さに形成されたことを特徴とする薄板支持容器用蓋体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄板支持容器用蓋体において、
上記薄板が上記容器本体内に複数枚収納されると共に、上記凹部が、上記薄板の整列方向に長く伸びた形状に構成されたことを特徴とする薄板支持容器用蓋体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薄板支持容器用蓋体において、
上記凹部が、膨らみの大きい上記本体部の中央部を深く、周縁部を浅く形成されたことを特徴とする薄板支持容器用蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−88064(P2007−88064A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272744(P2005−272744)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】