説明

薄板洗浄乾燥装置及び薄板の洗浄乾燥方法

【課題】 パンチング加工後の板金のような薄板を洗浄し、乾燥する小形で簡易な薄板洗浄乾燥装置及び方法を提供する。
【解決手段】 アルカリイオン水製造装置2と、製造されたアルカリイオン水を加温する加温装置4と、洗浄する薄板10を搬送する搬送装置5と、加温されたアルカリイオン水を搬送装置5で搬送されている薄板10の両面に吹き付ける噴射装置6と、搬送装置5の一部を構成し、加温されたアルカリイオン水が付着した薄板の両面を拭き取りながら薄板10を搬送する第1吸水ローラ71、72と第2吸水ローラ73,74を配置した吸水・乾燥装置7とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチング加工による油汚れが付着した板金等の薄板を洗浄し乾燥する洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板金加工では、例えばパンチングマシンで金属の板(板金)にいろいろな形状の穴を開けたり、切断、成形・タップ加工などを行い、次にバリ取り機で金属板の加工端縁に生じたバリを取り、最後にベンディングマシンで金属板を所望の形状に折り曲げる加工が行われる。
【0003】
パンチングマシンによるパンチング加工では、冷却、摩擦の低減効果のある切削油が必要不可欠であり、加工した板金の表面や切断面に切削油が付着している。切削油が付着したままの板金をバリ取り機で加工すると、切削油がバリ取り機で更に引き伸ばされ、その油に粉塵が付着してしまうという問題がある。そのため、パンチング加工した板金から付着している切削油を拭き取る必要がある。
【0004】
人手による板金に付着した油の拭き取り作業は不十分となることが多く、製品完成後に更に洗浄し、乾燥する必要があった。そのため、パンチング加工後の板金を機械で確実に洗浄し、乾燥まですることが求められている。
【0005】
なお、水の電気分解によって得られるアルカリイオン水が、油の洗浄効果に優れていることは、下記の特許文献1に開示されているように、公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−290336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
板金を洗浄し、乾燥する装置は、パンチングマシンとバリ取り機の中間に新たに配置するため、場所を取らない小形で、しかも安価であることが好ましい。
そのため、本発明は、パンチング加工後の板金のような薄板を洗浄し、乾燥する小形で簡易な薄板洗浄乾燥装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、簡易な薄板の洗浄乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の薄板洗浄乾燥装置は、上記目的を達成するため、アルカリイオン水製造装置と、前記アルカリイオン水製造装置で製造されたアルカリイオン水を加温する加温装置と、洗浄する薄板を搬送する搬送装置と、前記加温されたアルカリイオン水を前記搬送装置で搬送されている薄板の両面に吹き付ける噴射装置と、前記搬送装置の一部を構成し、加温されたアルカリイオン水が付着した薄板の両面を拭き取りながら前記薄板を搬送する一対の吸水ローラを2組以上配置した吸水・乾燥装置とを備える。
【0009】
この薄板洗浄乾燥装置は、アルカリイオン水製造装置で製造されたアルカリイオン水を洗浄液として用いる。アルカリイオン水は、油を乳化して洗浄する効果に優れるが、その洗浄効果をさらに高めるために、アルカリイオン水を加温装置で加温する。加温されたアルカリイオン水を搬送装置で搬送されている薄板の両面に噴射装置で噴射して薄板の両面をシャワー洗浄する。洗浄された薄板は加温されたアルカリイオン水の熱で加温される。搬送装置を構成する最初の一対の吸水ローラで搬送されるときに表面に付着していたアルカリイオン水が吸水ローラで吸い取られて薄いアルカリイオン水の水膜になる。この薄いアルカリイオン水の水膜は、次の一対の吸水ローラに搬送される間に薄板の余熱で蒸発してある程度乾燥し、次の一対の吸水ローラで搬送されるときに残りの水が吸水ローラで吸い取られ、2つめの吸水ローラから搬出されたときに全て消失する。そのため、少なくとも2組の吸水ローラで搬送される間に薄板の表面に付着したアルカリイオン水は蒸発し、自然乾燥でほぼ完全に乾燥される。その結果、本発明の薄板洗浄乾燥装置は乾燥装置を特に必要とせず、小型化が可能であると共に、簡易な装置となりコスト的に有利である。
【0010】
請求項2の薄板洗浄乾燥装置は、前記加温装置が、前記アルカリイオン水製造装置から送られてくるアルカリイオン水と前記噴射装置によって噴射されたアルカリイオン水とを貯留する循環槽に設けられている。
【0011】
循環槽に貯留されているアルカリイオン水を加温することにより、加温されたアルカリイオン水の熱損失を最小にして効率的に加温することができる。
【0012】
請求項3の薄板洗浄乾燥装置は、前記薄板が前記2組以上の吸水ローラによって搬送されるときに、加温されたアルカリイオン水によって加温された薄板の余熱によって前記薄板の表面のアルカリイオン水が蒸発して乾燥することを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明の薄板洗浄乾燥装置は乾燥装置を特に必要とせず、小型化が可能であると共に、簡易な装置となりコスト的に有利である。
【0014】
請求項4の薄板の洗浄乾燥方法は、加温されたアルカリイオン水を薄板へ噴射して洗浄する洗浄工程と、前記薄板を吸水材で拭き取る拭き取り工程と、加温されたアルカリイオン水によって加温された薄板の余熱を利用して自然乾燥させる乾燥工程とを有する。
【0015】
油分の洗浄効果に優れるアルカリイオン水の洗浄効果を更に高めるために加温して薄板に噴射することによって、薄板に付着していた油分を効果的に洗浄できると共に、薄板が加温され、吸水材で付着していた水滴を拭き取ると、加温された薄板の余熱で自然乾燥により乾燥される。
【0016】
請求項5記載の薄板の洗浄乾燥方法は、前記アルカリイオン水のpHが12.1以上である。
pHが12.1以上の高アルカリのアルカリイオン水は、油分を乳化して洗浄する効果が高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薄板洗浄乾燥装置によれば、簡易で小形な装置でありながら、薄板を洗浄し、乾燥まですることができる。
本発明の薄板の洗浄乾燥方法によれば、簡便に薄板を洗浄し、乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の薄板洗浄乾燥装置の一実施形態を模式的に示した構成図である。
【図2】本発明の薄板洗浄乾燥装置の一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の薄板洗浄乾燥装置及び薄板の洗浄乾燥方法の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の薄板洗浄乾燥装置は、洗浄すべき薄板を搬送させながら洗浄し、乾燥する装置である。一実施形態を示す図1に示すように、本発明の薄板洗浄乾燥装置1は、アルカリイオン水製造装置2と、循環するアルカリイオン水を貯留する循環槽3と、アルカリイオン水製造装置2で製造されたアルカリイオン水を加温する加温装置4と、洗浄する薄板10を搬送する搬送装置5と、加温装置4で加温されたアルカリイオン水を搬送装置5で搬送されている薄板10の両面に吹き付ける噴射装置6と、搬送装置5の一部を構成し、加温されたアルカリイオン水が付着した薄板10の両面を拭き取りながら薄板10を搬送する一対の吸水ローラを2組以上配置した吸水・乾燥装置7とを備える。
【0021】
アルカリイオン水製造装置2は、電解槽21と貯水槽22とを備える。電解槽22は中央に電解液室211があり、その左右にアノード室212とカソード室213がそれぞれ隔膜214によって仕切られている。隔膜214は水中のイオン種を自由に通過させ、水そのものの自由な通過を阻害する。アノード室212にはアノード電極215が配置され、図示しない直流電源装置のマイナス極と接続され、カソード室213にはカソード電極216が配置され、直流電源装置のプラス極と接続されている。電解液室211には、ポンプ23を介して電解質を含む水L1が送り込まれ、電気分解で電解質が減少した水L2となって排出される。アノード室212と貯水槽22とは配管で接続され、アノード室212で電気分解によって製造されたアルカリイオン水は貯水槽22に送られ、更に、貯水槽22のアルカリイオン水L4はポンプ24を介してアノード室212へ戻され、循環するようになっている。これによって、高アルカリのアルカリイオン水L4が製造される。カソード室213で電気分解されて製造された酸性水L3はカソード室213から排出される。貯水槽22のアルカリイオン水L4はバルブ25を介して循環槽3に送られる。
【0022】
循環槽3は、アルカリイオン水L5を貯留するタンクであり、上部に噴射装置6で噴射されて薄板10を洗浄した後の流下するアルカリイオン水L8を受ける漏斗部31を備える。循環槽3と噴射装置6とを接続する配管には循環ポンプ61が配設され、循環ポンプ61によって循環槽3内のアルカリイオン水L5に圧力を加えたアルカリイオン水L6にして噴射装置6へ圧送することができる。循環槽3には貯留しているアルカリイオン水L5を加温する加温装置4が付設されている。
【0023】
加温装置4は、循環槽3内に設けられているヒータ41と循環槽3内のアルカリイオン水L5の温度を検出する温度センサ42と制御盤43とを備える。制御盤43では温度設定と温度センサ42で検出した温度が表示されるようになっており、制御盤43で温度センサ42で検出した温度と設定温度の温度差に基づいてヒータ41に加える電流を調節して循環槽3内のアルカリイオン水L5の温度を設定温度に保つように調節する。設定温度は、例えば40℃〜90℃の範囲で行うことができる。
【0024】
搬送装置5は、洗浄すべき薄板(ワーク)10を水平方向へ搬送しながら、薄板10を洗浄し、乾燥するものである。図1及び図2の右側が搬入側で、左側が搬出側であり、薄板10は搬入側から搬出側へ搬送される。本実施形態では、搬入側には水平方向に並列に4本の駆動されないフリーローラ511〜514が配置されている。図示していないが、フリーローラ511〜514間に薄板10の搬入を検出するリミットスイッチが配置されている。このリミットスイッチが作動すると、搬送装置5と噴出装置6用の循環ポンプ61が駆動されるようになっている。搬送装置5の中間部には、搬入側から、水平方向に、上下一対の第1駆動ローラ531、532、フリーローラ515、上下一対の第2駆動ローラ533,534、フリーローラ516、上下一対の第3駆動ローラ535、536、上下一対の第4駆動ローラ537,538が配置されている。駆動ローラ531〜538は、図2に示す搬送モータ54で駆動される。搬出側には水平方向に並列に3本のフリーローラ517〜519が配置されている。第2駆動ローラ533,534の両側には噴射装置6が設けられている。
【0025】
噴射装置6は、一対の上側シャワーパイプ62,63と一対の下側シャワーパイプ64,65を有する。上側シャワーパイプ62は、フリーローラ515と第2駆動ローラ533,534の間の上方に配置され、上側シャワーパイプ63は、第2駆動ローラ533,534とフリーローラ516の間の上方に配置され、それぞれ搬送される薄板10に向かってアルカリイオン水のシャワーL7を下向きに噴射するシャワーノズル66が多数設けられている。一方、下側シャワーパイプ64は、フリーローラ515と第2駆動ローラ533,534の間の下方に配置され、下側シャワーパイプ65は、第2駆動ローラ533,534とフリーローラ516の間の下方に配置され、それぞれ搬送される薄板10に向かってアルカリイオン水のシャワーL7を上向きに噴射するシャワーノズル66が多数設けられている。これらのシャワーパイプ62〜65はそれぞれ循環ポンプ61の出口側と接続され、循環ポンプ61で圧力が高められた加温アルカリイオン水L6を薄板10の上下両面にノズル66から噴出できるようになっている。フリーローラ515とフリーローラ516の間が、図2に示すように、洗浄工程を行う搬送路となっている。なお、図2では、ノズル66を示すために、下側のシャワーパイプ64,65を図示している。
【0026】
第1駆動ローラ531,532とフリーローラ515との間及びフリーローラ516と第3駆動ローラ535との間の下方には、噴射されたアルカリイオン水L7を回収するための仕切67がそれぞれ設けられ、仕切67を流下するアルカリイオン水を循環槽3の漏斗部31が受けるようになっている。また、上側のシャワーパイプ62,63を覆って下端縁がそれぞれの仕切67の上端に近接して配置されるカバー68が着脱自在に配置されている。
【0027】
第3駆動ローラ535,536と第4駆動ローラ537,538は、それぞれ薄板10に付着しているアルカリイオン水を拭き取る吸水材としてのスポンジローラを有する第1吸水ローラ71,72と第2吸水ローラ73,74を兼用する。スポンジには、乾燥時に硬化するPVAと乾燥しても硬化しないウレタン系があるが、本発明の薄板洗浄乾燥装置ではウレタン系が好ましい。第1吸水ローラ71,72と第2吸水ローラ73,74とはローラの直径程度の離間距離があり、第1吸水ローラ71,72と第2吸水ローラ73,74との間の搬送路及び第2吸水ローラ73,74から搬出される薄板10が載置される搬出部としてのフリーローラ517〜519が自然乾燥を行う乾燥部となっている。これらの第1吸水ローラ71,72と第2吸水ローラ73,74とこれらの間の搬送路と搬出部としてのフリーローラ517〜519が、図2に示すように、拭き取り・乾燥工程を行う吸水・乾燥装置7を構成している。
【0028】
本実施形態においては、第1駆動ローラ531、532と第2駆動ローラ533,534は、第3駆動ローラ535,536と第4駆動ローラ537,538と同じ素材の吸水ローラを使用しており、薄板に傷を付けないように考慮されている。また、駆動ローラ531〜538を覆う安全カバー55が着脱自在に配置されている。
【0029】
次に、このような薄板洗浄乾燥装置1の動作について説明する。薄板10を洗浄する前に、循環槽3にアルカリイオン水L5を貯水し、所定の温度まで加温しておく必要がある。電解槽21の電解液室211に電解質を含有する水L1を供給しながら、アノード電極215とカソード電極216に電圧を印加し、電解槽21内の水に直流電流を流し、電気分解を行うと、アノード室212では金属イオン等の陽イオンがアノード電極215に引き寄せられて増加し、pHが高いアルカリイオン水が生成する。一方、カソード室213では陰イオンがカソード電極216に引き寄せられてpHが低い酸性水が生成する。アノード室212で生成したアルカリイオン水は、一旦貯水槽22に蓄えられ、ポンプ24によってアノード室212と循環してpHが高められたアルカリイオン水L4となる。これによってpHが12.1以上のアルカリイオン水を製造することができる。循環槽3に貯水されているアルカリイオン水L5の水位は、図示しない水位計によって測定され、水位が一定水準以下になるとバルブ25が開き、貯水槽22内のアルカリイオン水L4が循環槽3内に流下する。このようにして循環槽3内に一定の水位のアルカリイオン水L5が貯水される。また、加温装置4を動作させて、循環槽3内のアルカリイオン水L5を一定の温度に加温しておく。
【0030】
循環槽3内のアルカリイオン水L5が所定の温度になった後、薄板洗浄乾燥装置1を稼働させる。洗浄すべき薄板10を搬入口のフリーローラ511〜514上に載置すると、リミットスイッチが作動し、第1〜第4駆動ローラ531〜538が回転駆動されると共に、循環ポンプ61が駆動され、ノズル66から循環ポンプ61で圧力が高められたアルカリイオン水L6がシャワーL7として噴射され運転開始状態になる。
【0031】
この状態で、薄板10の先端を第1駆動ローラ531,532に挿入すると、薄板10は第1駆動ローラ531,532で搬送され、次に第2駆動ローラ533,534で搬送される。第2駆動ローラ533,534の前後で、ノズル66からシャワーL7が薄板10の両面に噴射され、薄板10表面の油汚れはアルカリイオン水によって乳化され、噴射の圧力でゴミなども除去され、薄板10の両面が洗浄される洗浄工程が行われる。シャワーL7の薄板10への噴射によって、薄板10が洗浄されるだけでなく、薄板10が加温されたシャワーL7の熱によって加温される。加温されたアルカリイオン水のシャワー水L7は薄板10を洗浄すると、油分が乳化した状態となるアルカリイオン水L8となって漏斗部31を介して循環槽3に戻される。
【0032】
シャワーL7で洗浄された薄板10は、第3駆動ローラとしての第1吸水ローラ71,72を通り抜けると、吸水ローラ71,72で上下両面に付着している水滴が吸収され、薄板10の表面に極薄い水膜として残留する。この薄い水膜は薄板10が加温されているため、第1吸水ローラ71,72と第2吸水ローラ73,74の間を薄板10が搬送される間に蒸発し、ほとんど消失する。次の第2吸水ローラ73,74で残っている水膜がほぼ吸収され、第2吸水ローラ73,74から搬出されて搬出側のフリーローラ517〜519へ送り出されたときにはほぼ完全に乾燥している状態となる。更に、フリーローラ517〜519の上に載置されているときにも水膜の蒸発が生じる可能性があり、これによって乾燥は完全に行われる。
【0033】
そのため、本実施形態の薄板洗浄乾燥装置1では、特に乾燥手段を設けていない。不純物がごく少ないにもかかわらず優れた洗浄力を有するアルカリイオン水を用いたことにより、乾燥手段を用いずに拭き取りと自然乾燥だけで水滴の除去が可能になった。洗剤を使用して洗浄する場合は、残留する洗剤を除去するためのすすぎ工程と乾燥工程が必要になり、装置が大型化し、高価になる。
【0034】
使用している間に循環使用しているアルカリイオン水L5が蒸発して水位が低下すると、水位計が働いてバルブ25を開け、貯水槽22から電解槽21によって製造されたアルカリイオン水L4が循環槽3へ流入し、蒸発で減少した分を補うようになっている。
【0035】
実際に、図2に示した薄板洗浄乾燥装置を用いてパンチングマシンでうち抜き加工され、表面に加工油が付着している鉄板の洗浄を行った。使用した装置の寸法は、170cm×99.5cmの大きさであった。装置全体は台車の上に設置され、移動自在になっている。装置1の右前面に電解槽21が配置され、その後ろに貯水槽22が配置されている。制御盤43は装置1の左前面に設置され、循環槽3は装置中央左に配置されている。
【0036】
貯水槽22に蓄えられたアルカリイオン水L4は、pHが12.5、無色・無臭・無刺激で、BODとCODがゼロ、酸化物イオンと有機物イオンがゼロであった。循環槽3に蓄えられている循環水L5の加温設定温度を60℃とした。
【0037】
厚さが約1mmの鉄板の洗浄を行ったところ、仕上がった鉄板に油分の付着はなく、第2吸水ローラ73,74から搬出された鉄板は完全に乾燥され、熱いほどの熱が残っていた。また、第1吸水ローラ71,72を出たときには鉄板の表面に薄い水膜が見られたが、第2吸水ローラ73,74の手前で水膜は蒸発して消失していた。
【0038】
長期間の運転でも、第1吸水ローラ71,72の吸水力は衰えることがなかった。長期間使用すると、加温されたアルカリイオン水の潜熱で拭き取られる水の量と蒸発する水の量がほぼ同じである平衡状態に達すると考えられる。そのため、通常は吸水ローラと対で使われる絞りローラは不要である。しかし、場合によっては絞りローラを使用しても良い。
【0039】
また、循環水L5は白濁が観察されたが、洗浄力や仕上げに変化は見られなかった。長期間使用する場合は、循環槽3に乳濁している油分を除去する脱油装置を設けるようにしてもよい。
【0040】
薄板洗浄乾燥装置1の洗浄対象となる薄板としては、パンチング加工後の鉄板その他の鋼板加工品、プラスチック板やガラス板の洗浄などに適用することができる。上記説明では、上下一対の吸水ローラを2組使用していたが、3組以上配置しても良い。また、アルカリイオン水製造装置の説明は一例であり、他の構造のものでも勿論差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の薄板洗浄乾燥装置は、板金加工後の金属板の洗浄などの分野に利用可能である。
また、本発明の薄板の洗浄乾燥方法は、板金加工後の金属板の洗浄などの分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1: 薄板洗浄乾燥装置
2: アルカリイオン水製造装置
21: 電解槽
22: 貯水槽
3: 循環槽
4: 加温装置
41: ヒータ
5: 搬送装置
535:第3搬送ローラ
536:第3搬送ローラ
537:第4搬送ローラ
538:第4搬送ローラ
6: 噴出装置
61: 循環ポンプ
66: ノズル
7: 吸水・乾燥装置
71: 第1吸水ローラ
72: 第1吸水ローラ
73: 第2吸水ローラ
74: 第2吸水ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリイオン水製造装置と、前記アルカリイオン水製造装置で製造されたアルカリイオン水を加温する加温装置と、洗浄する薄板を搬送する搬送装置と、前記加温されたアルカリイオン水を前記搬送装置で搬送されている薄板の両面に吹き付ける噴射装置と、前記搬送装置の一部を構成し、加温されたアルカリイオン水が付着した薄板の両面を拭き取りながら前記薄板を搬送する一対の吸水ローラを2組以上配置した吸水・乾燥装置とを備えることを特徴とする薄板洗浄乾燥装置。
【請求項2】
前記加温装置が、前記アルカリイオン水製造装置から送られてくるアルカリイオン水と前記噴射装置によって噴射されたアルカリイオン水とを貯留する循環槽に設けられていることを特徴とする請求項1記載の薄板洗浄乾燥装置。
【請求項3】
前記薄板が前記2組以上の吸水ローラによって搬送されるときに、加温されたアルカリイオン水によって加温された薄板の余熱によって前記薄板の表面のアルカリイオン水が蒸発して乾燥することを特徴とする請求項1又は2記載の薄板洗浄乾燥装置。
【請求項4】
加温されたアルカリイオン水を薄板へ噴射して洗浄する洗浄工程と、前記薄板を吸水材で拭き取る拭き取り工程と、加温されたアルカリイオン水によって加温された薄板の余熱を利用して自然乾燥させる乾燥工程とを有することを特徴とする薄板の洗浄乾燥方法。
【請求項5】
前記アルカリイオン水のpHが12.1以上であることを特徴とする請求項4記載の薄板の洗浄乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35203(P2012−35203A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178177(P2010−178177)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(503340047)株式会社リ・フォース (1)
【Fターム(参考)】