説明

薄膜製造装置

【課題】機械的な設計の観点及び電気的な設計の観点の両方を満足し、可撓性基板を連続的に搬送しつつ、電極の近傍にて可撓性基板とコンパクトチャンバとの間の電気的な接続を確保することが可能な薄膜製造装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、アノード電極4とカソード電極3との間にフィルム状の可撓性基板1を搬送させながら成膜室10内でプラズマCVD法により可撓性基板1上に薄膜を成膜する薄膜製造装置において、可撓性基板1の一方の側に臨んで、成膜室10の半分を内部に区画形成するカソード電極側シールドボックス5と、可撓性基板1の他方の側に臨んで、成膜室10の半分を内部に区画形成するアノード電極側シールドボックス6と、カソード電極側シールドボックス5に可撓性基板1を押し付けて接触させる押圧部材20,21,22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電力を供給して成膜室内でプラズマを発生させることにより、搬送するフィルム状の可撓性基板上に薄膜を成膜する薄膜製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流となると考えられており、かかる薄膜太陽電池の薄膜を成膜する手段の一つとして、容量結合型プラズマCVD方式の薄膜製造装置がある。
このような薄膜製造装置においては、巻出しロールと巻取りロールとの間に設置された成膜室(プラズマCVD室)内に可撓性基板を搬送し、当該成膜室内で高周波電力の印加により作用する電界効果にて電極間にプラズマを生成し、原材料となる物質を分解、励起することにより周辺雰囲気下で存在する可撓性基板上に、プラズマCVD法によってアモルファスシリコン膜などの半導体薄膜を成膜している。
【0003】
最近は、製造コスト低減などの要請から、成膜する可撓性基板の幅が約1mの幅広基板を連続的に搬送させながら成膜するロール・ツー・ロール方式の装置が連続成膜装置化される傾向にある。
この連続成膜装置の構成法として、例えば、これまで適用されてきたステップ成膜装置(例えば、特許文献1など)を基本構造とし、アースシールドの搬送方向側に、フィルム状の可撓性基板の移動を妨げないように開口を設け、可撓性基板の連続搬送を可能にする手法が考えられる。
かかる手法によれば、現有の設計資産を活用しつつ最低限の改造によって装置を構成することが可能となるため、短期間で装置、製品を市場に投入することができ、開発コストの極小化が図れるというメリットがある。
【0004】
上記特許文献1には、2列の可撓性基板の間に絶縁体を介して結合された2つの高電圧電極を配置し、それぞれに基板を挟んで接地電極を対向させ、高電圧電極と基板との間に形成されるコンパクトな成膜室において、成膜のための印加電圧の制御が別個に行うことができるようにした製造装置が開示されている。
すなわち、特許文献1の製造装置は、コンパクトチャンバ方式を採用し、高周波電力を印加してプラズマを発生させるものであり、成膜時に発生する迷走電流による装置への悪影響を極小化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−293491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1の製造装置においては、
(1)先ず、高周波電力を印加するカソード電極(高周波電極、RF電極)、ならびにヒータを内蔵した接地電位を与えるアノード電極(接地電極)の両方を取り囲むようにコンパクトチャンバが設置され、かつ該コンパクトチャンバは電気的にはアースシールドの効果を奏し、整合回路出口から反応容器方向を見たインピーダンスが小さくなり、電力を投入しやすい。
(2)また、アースシールドを兼ねるコンパクトチャンバは、可撓性基板を4辺で挟み、その接触面で可撓性基板とコンパクトチャンバとが電気的に接続されるため、成膜時に可撓性基板を流れる迷走電流はコンパクトチャンバに吸収され、給電構造の接地部ならびに本体を通過して整合回路の接地側に戻ることができ、迷走電流による装置への悪影響(たとえば、複数の電極間で電力のやり取りを行う)などは、問題にならない。
という、利点があった。
【0007】
しかしながら、成膜する薄膜が太陽電池であって、可撓性基板には当該太陽電池が発生する電力を取り出すための電極部となる構造が予め設けられている場合、この電極部が導電性を有するため、高周波電圧を印加する電極に対向配置され、加熱ヒータを内蔵した接地電位を与える電極側へ変位電流として抜ける電流のみならず、可撓性基板の表面も伝導電流として迷走し、意図しない場所での不要な放電や、予期せぬ箇所での漏電により装置が停止したりして、装置の安定した運転が難しくなるという問題があった。
また、特許文献1の装置を連続成膜化するためには、次の背反する要求がある。
すなわち、機械的な設計の観点からは、成膜時における可撓性基板とコンパクトチャンバとの干渉を回避するために、両者は接触しない構造が望ましい。
一方、電気的な設計の観点からは、可撓性基板とコンパクトチャンバとが接触する構造が望ましい。
したがって、このような2つの背反する要求を満たすことが可能な薄膜製造装置を見出す必要がある。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、機械的な設計の観点及び電気的な設計の観点の両方を満足し、可撓性基板を連続的に搬送しつつ、電極の近傍にて可撓性基板とコンパクトチャンバとの間の電気的な接続を確保することが可能な薄膜製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、フィルム状の可撓性基板を巻装した巻出しロールと前記可撓性基板を巻取る巻取りロールとの間で前記可撓性基板の搬送途中に設置される成膜室と、該成膜室内に設置されかつ内部に加熱ヒータを有するアノード電極と、前記成膜室内に設置されかつ高周波電源に接続されるカソード電極とを備え、前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記可撓性基板を搬送させながら前記成膜室内でプラズマCVD法により前記可撓性基板上に薄膜を成膜する薄膜製造装置において、前記可撓性基板の一方の側に臨んで、前記成膜室の半分を内部に区画形成するカソード電極側シールドボックスと、前記可撓性基板の他方の側に臨んで、前記成膜室の半分を内部に区画形成するアノード電極側シールドボックスと、前記カソード電極側シールドボックスに前記可撓性基板を押し付けて接触させる押圧部材とを備えている。
【0010】
そして、本発明は、具体的には、次のように構成されていることが好ましい。
(1)前記押圧部材は、基端部が前記アノード電極側シールドボックスに取付けられ、先端部が前記基端部から前記カソード電極側シールドボックス側へ向かって前記可撓性基板の表面に接する位置まで延び、弾性力により前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける弾性体によって構成されている。
(2)前記押圧部材は、前記アノード電極側シールドボックスの表面に転動可能に設けられ、外周面が前記可撓性基板の表面に接することにより前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける押えロールによって構成されている。
(3)前記押圧部材は、前記アノード電極側シールドボックスの表面に設けられ、外周面が前記可撓性基板の表面に接することにより前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける無限軌道状の導体によって構成されている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係る薄膜製造装置は、フィルム状の可撓性基板を巻装した巻出しロールと前記可撓性基板を巻取る巻取りロールとの間で前記可撓性基板の搬送途中に設置される成膜室と、該成膜室内に設置されかつ内部に加熱ヒータを有するアノード電極と、前記成膜室内に設置されかつ高周波電源に接続されるカソード電極とを備え、前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記可撓性基板を搬送させながら前記成膜室内でプラズマCVD法により前記可撓性基板上に薄膜を成膜するものであって、前記可撓性基板の一方の側に臨んで、前記成膜室の半分を内部に区画形成するカソード電極側シールドボックスと、前記可撓性基板の他方の側に臨んで、前記成膜室の半分を内部に区画形成するアノード電極側シールドボックスと、前記カソード電極側シールドボックスに前記可撓性基板を押し付けて接触させる押圧部材とを備えているので、次のような効果を得ることができる。
すなわち、本発明によれば、カソード電極をシールドするカソード電極側シールドボックス(カソード電極側のコンパクトチャンバ)を現状通りとし、アノード電極側シールドボックス(アノード電極側のコンパクトチャンバ)に1個または複数個の押圧部材を付加し、該押圧部材により、可撓性基板をカソード電極側シールドボックスの表面に機械的に押し付けることによって、可撓性基板を常時カソード電極側シールドボックスに接触させることができる。これによって、従来のコンパクトチャンバが有していた電流帰路構造に近い構造を確保することができる。
【0012】
しかも、本発明の薄膜製造装置においては、1個または複数個の押圧部材を付加するのみで、可撓性基板を介してアノード電極側シールドボックスとカソード電極側シールドボックスとを連結しているので、可撓性基板の連続搬送時においてシールドボックスと可撓性基板との間の摺動抵抗が小さく、可撓性基板の損傷を最小限に抑えることができる。
【0013】
また、本発明の薄膜製造装置において、前記押圧部材は、基端部が前記アノード電極側シールドボックスに取付けられ、先端部が前記基端部から前記カソード電極側シールドボックス側へ向かって前記可撓性基板の表面に接する位置まで延び、弾性力により前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付けるばねなどの弾性体によって構成されているので、ばねなどの弾性力を有する簡単な機構により、可撓性基板を常時カソード電極側シールドボックスに押し付けて接触させることが可能となり、電流帰路を確実に保持することができる。
【0014】
さらに、本発明の薄膜製造装置において、前記押圧部材は、前記アノード電極側シールドボックスの表面に転動可能に設けられ、外周面が前記可撓性基板の表面に接することにより前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける押えロールによって構成されているので、転動する押えロールによりアノード電極側シールドボックスと可撓性基板との間の接触を安定して保持でき、アノード電極側シールドボックスを可撓性基板及びカソード電極側シールドボックスに常時安定的に結合することができる。
【0015】
また、本発明の薄膜製造装置において、前記押圧部材は、前記アノード電極側シールドボックスの表面に設けられ、外周面が前記可撓性基板の表面に接することにより前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける無限軌道状の導体によって構成されているので、可撓性基板との押圧面積が大きくなり、アノード電極側シールドボックスと可撓性基板及びカソード電極側シールドボックスとの間に生じる接触面圧を大きくすることができ、その結果、電流帰路を安定して確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の各実施形態に係る薄膜製造装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る薄膜製造装置を示す図1のY部詳細図であって、左半分が断面図、右半分が正面図である。
【図3】上記第1実施形態の別形態を示す図1のY部詳細図における右半分の正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る薄膜製造装置を示す図1のY部詳細図であって、左半分が断面図、右半分が正面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る薄膜製造装置を示す図1のY部詳細図であって、左半分が断面図、右半分が正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る薄膜製造装置について、その実施形態に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る薄膜製造装置は、可撓性基板を連続搬送して成膜するロール・ツー・ロール方式の装置であり、アノード電極側シールドボックス、可撓性基板、カソード電極側シールドボックス及び押圧部材を備えている。
【0018】
図1は、本発明の各実施形態が適用される薄膜製造装置の概略断面図である。
図1において、可撓性基板1を巻装した巻出しロール2aと、可撓性基板1を巻取る巻取りロール2bとの間であって、可撓性基板1の搬送途中には、本実施形態の薄膜製造装置において可撓性基板1の成膜を行う成膜装置100が設置されており、可撓性基板1は、2つのロール2a,2bの回転駆動により送りロール11等を介して連続搬送されるようになっている。
【0019】
成膜装置100の成膜室(反応室)10内には、内部に可撓性基板1への加熱ヒータ8を有するアノード電極(接地電極)4と、高周波電源3aに電気的に接続されるカソード電極3とが、搬送する可撓性基板1を挟んで所定の間隔を空けて対向して配置されている。しかも、加熱ヒータ8を有するアノード電極4とカソード電極3とは、お互いが平行になるように配置されている。なお、図1中の符号7a,7bは、可撓性基板1の端部を挟持する基板端部保持機構部である。
【0020】
また、成膜装置100の成膜室10は、可撓性基板1を境界として2つの領域に分離されており、可撓性基板1の一方の側に臨んで、成膜室10の半分を内部に区画形成するカソード電極側(RF側)シールドボックス5と、可撓性基板1の他方の側に臨んで、成膜室10の半分を内部に区画形成するアノード電極側シールドボックス6とによって形成されている。このため、シールドボックス5,6は、互いの開口部が向き合う断面コ字状に形成され、少なくとも一方のアノード電極側シールドボックス6は移動可能に構成されており、これらシールドボックス5,6の周辺部を重ね合わせることによって可撓性基板1を挟み込み、成膜室10を分離している。
【0021】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態の薄膜製造装置を示す図1のY部詳細図であって、左半分が断面図、右半分が正面図である。
本実施形態のアノード電極側シールドボックス6には、図2に示すように、弾性力を有し、可撓性基板1をカソード電極側シールドボックス5側に押し付けて接触させ、アース電位を与える押圧部材たる皿ばね(弾性体)20が取付けられている。
【0022】
皿ばね20は、基端部20bがアノード電極側シールドボックス6の周縁部表面6cに接着剤、溶接、ねじ等で固定され、先端部20aが基端部20bから成膜室10の中心線C側に位置し、かつカソード電極側シールドボックス5側へ向かって可撓性基板1の表面に接する位置まで斜めに立ち上がって延びている。このため、可撓性基板1は、皿ばね20の先端部20aが基板表面に接すると、皿ばね20の弾性力によりカソード電極側シールドボックス5の表面5cに、機械的に押し付けられることになる。
【0023】
なお、第1実施形態の皿ばね20は、図3に示すように、図2とは逆に、先端部20aが基端部20bから成膜室10の中心線Cと反対側に位置し、かつカソード電極側シールドボックス5側へ向かって可撓性基板1の表面に接する位置まで斜めに立ち上がって延びていても良い。
【0024】
次に、本発明の第1実施形態に係る薄膜製造装置の作用効果について説明する。
フィルム状の可撓性基板1は、図示しない搬送ロールやグリップロール等の張力確保手段により、平坦面で皺の無いフィルム状態が確保されているものとする。
本発明の第1実施形態の薄膜製造装置では、当該フィルム状態の可撓性基板1の一方の側に臨んで、成膜室10の半分を内部に区画形成するカソード電極側シールドボックス5と、可撓性基板1の他方の側に臨んで、成膜室10の半分を内部に区画形成するアノード電極側シールドボックス6と、基端部20bがアノード電極側シールドボックス6の周縁部表面6cに固定され、先端部20aが基端部20bからカソード電極側シールドボックス5側へ向かって可撓性基板1の表面に接する位置まで斜めに立ち上がって延びる押圧部材の皿ばね20とを備え、皿ばね20の弾性力によりフィルム状の可撓性基板1をカソード電極側シールドボックス5の表面5cに機械的に押し付けるように構成されている。
【0025】
したがって、カソード電極3をシールドするカソード電極側シールドボックス5(カソード電極側のコンパクトチャンバ)を現状通りとして、アノード電極側シールドボックス(アノード電極側のコンパクトチャンバ)6に取付けられる押圧部材の皿ばね20を付加することによって、可撓性基板1を常時カソード電極側シールドボックス5に押し付けて接触させることができる。これによって、従来のコンパクトチャンバが有していた電流帰路構造に近い構造となり、電流帰路を確保することができる。
【0026】
また、本実施形態の押圧部材が弾力性を有する皿ばね20によって構成されているので、皿ばね20という簡単な機構にて、可撓性基板1を常時カソード電極側シールドボックス5に押し付けることができ、従来の薄膜製造装置と比べて設備コストの低減化を図ることができる。
【0027】
さらに、皿ばね20を付加するのみで、基板1を介してアノード電極側シールドボックス6とカソード電極側シールドボックス5とが連結されているので、可撓性基板1の連続搬送時におけるシールドボックス5,6と可撓性基板1との間の摺動抵抗が小さくなり、可撓性基板1の損傷を最小限に抑えることができる。
【0028】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る薄膜製造装置を示す図1のY部詳細図であって、左半分が断面図、右半分が正面図である。
この第2実施形態においては、第1実施形態の皿ばね20に代えて、押圧部材が転動式の押えロール21によって構成されている。
押えロール21は、図4に示すように、アノード電極側シールドボックス6の表面6cに転動可能に設けられている。このため、アノード電極側シールドボックス6の表面6cには、押えロール21の一部を収納配置する凹部6aが形成されている。
しかも、押えロール21は、その外周面が可撓性基板1の表面1sに接するように配置されており、可撓性基板1は、押えロール21により、カソード電極側シールドボックス5の表面5cに押し付けられている。
その他の構成は、図1に示す第1実施形態と同一であり、同一の部材は同一の符号で示している。
【0029】
したがって、第2実施形態によれば、押えロール21がアノード電極側シールドボックス6の表面6cの凹部6aに転動可能に設けられているので、転動する押えロール21により、可撓性基板1とカソード電極側シールドボックス5との接触を安定して保持でき、アノード電極側シールドボックス6を可撓性基板1及びカソード電極側シールドボックス5に常時安定的に結合でき、電流帰路を確実に保持できる。
【0030】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態の薄膜製造装置を示す図1のY部詳細図であって、左半分が断面図、右半分が正面図である。
この第3実施形態においては、第1実施形態の皿ばね20及び第2実施形態の押えロール21に代えて、押圧部材が無限軌道状の導体22によって構成されている。
無限軌道状の導体22は、図5に示すように、無限軌道状のリング状ベルト22aに2個の転動可能なロール22bを巻付けて形成されている。このため、アノード電極側シールドボックス6の表面6cには、無限軌道状の導体22の一部を収納配置する凹陥部6dが形成されている。
しかも、無限軌道状の導体22を構成するベルト22aは、その外周面が可撓性基板1の表面1sに接するように配置されており、可撓性基板1は、無限軌道状の導体22により、カソード電極側シールドボックス5の表面5cに押し付けられている。
【0031】
したがって、第3実施形態によれば、無限軌道状の導体22がアノード電極側シールドボックス6の表面6cの凹陥部6dに設けられているので、作動する無限軌道状の導体22のベルト22aにより、可撓性基板1とカソード電極側シールドボックス5との間に比較的広い範囲で一定の接触面圧が生じ、より安定して接触面圧を保持でき、アノード電極側シールドボックス6を可撓性基板1及びカソード電極側シールドボックス5に常時安定的に結合でき、電流帰路をより一層確実に保持できる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更及び変形が可能である。
【0033】
例えば、既述の実施形態における押圧部材20,21,22は、アノード電極側シールドボックス6の周縁部表面において、可撓性基板1の搬送方向に沿って2つ以上間隔を空けて並べて配置したり、あるいは可撓性基板1の搬送方向と直交する方向に位置する左右両側のそれぞれに配置することも可能である。
また、第1実施形態の皿ばね20、第2実施形態の押えロール21、第3実施形態の無限軌道状の導体22のうち、2つあるいは3つを組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 可撓性基板
2a 巻出しロール
2b 巻取りロール
3 カソード電極
3a 高周波電源
4 アノード電極
5 カソード電極側(RF側)シールドボックス
5c 表面
6 アノード電極側シールドボックス
6c 表面
8 加熱ヒータ
10 成膜室
20 皿ばね(押圧部材)
21 押えロール(押圧部材)
22 無限軌道状の導体(押圧部材)
100 成膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の可撓性基板を巻装した巻出しロールと前記可撓性基板を巻取る巻取りロールとの間で前記可撓性基板の搬送途中に設置される成膜室と、該成膜室内に設置されかつ内部に加熱ヒータを有するアノード電極と、前記成膜室内に設置されかつ高周波電源に接続されるカソード電極とを備え、前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記可撓性基板を搬送させながら前記成膜室内でプラズマCVD法により前記可撓性基板上に薄膜を成膜する薄膜製造装置において、
前記可撓性基板の一方の側に臨んで、前記成膜室の半分を内部に区画形成するカソード電極側シールドボックスと、前記可撓性基板の他方の側に臨んで、前記成膜室の半分を内部に区画形成するアノード電極側シールドボックスと、前記カソード電極側シールドボックスに前記可撓性基板を押し付けて接触させる押圧部材とを備えたことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、基端部が前記アノード電極側シールドボックスに取付けられ、先端部が前記基端部から前記カソード電極側シールドボックス側へ向かって前記可撓性基板の表面に接する位置まで延び、弾性力により前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける弾性体によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記アノード電極側シールドボックスの表面に転動可能に設けられ、外周面が前記可撓性基板の表面に接することにより前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける押えロールによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記アノード電極側シールドボックスの表面に設けられ、外周面が前記可撓性基板の表面に接することにより前記可撓性基板を前記カソード電極側シールドボックスに押し付ける無限軌道状の導体によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149050(P2011−149050A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10898(P2010−10898)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】