説明

薬剤を吐出する小型ポンプ

【課題】
【解決手段】小型の薬剤送り出しポンプは、形状記憶Ni−Ti合金を利用する。流れ制限器が設けられ、また、ポンプは再充填可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明は、薬剤を吐出する小型(miniature)の注入装置又はポンプ、より詳細には、超弾性的(superelastic)又は超変形可能(superdeformable)の何れかである形状記憶合金を有するリザーバを利用するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
[2]定量薬剤送り出しポンプは、典型的に、薬剤を約248.211kPa(約36p.s.i.)の一定の圧力に維持するため2相の推進剤を有する金属ベローズリザーバを利用している。薬剤は、所望の流量を発生させるよう較正されたガラス毛管のような、流れ制限器を通ってリザーバから流れ出る。定量(fixed rate)ポンプは、典型的に、80cc乃至100ccの寸法である。リザーバは、チタンのような、適した材料で作られた金属ベローズを利用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、かかる金属ベローズは、典型的に、余り弾性的でなく、また、リザーバは、アコーディオン状のリーブを受容するため比較的大きい寸法でなければならない。かかる構造は、小型のポンプとする設計を妨げることになり且つ高価である。本発明は、先行技術のポンプに伴う問題点の解決に取り組むものであり、また、薬剤を吐出する定量又は可変量の何れかの小型寸法のポンプで利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[3]1つの実施の形態において、本発明は、薬剤を吐出するときに使用される注入装置である。注入装置は、1つの室を有するハウジングを含む。ハウジングは出口を有する。隔膜は、ポンプハウジングと作用可能に接続され、隔膜は、室を薬剤貯蔵副室と、推進剤副室とに分割し、隔膜は、より大きい容積効率となるように中心線上を伸びる形態とされている。推進剤副室は、適した推進剤を受け入れるような形態とされている。薬剤副室は、適した薬剤を受け入れるような形態とされており、薬剤貯蔵室は、ハウジングの出口と流体的に連通した出口を有する。
【0005】
[4]別の実施の形態において、本発明は、薬剤を吐出するときに使用される注入装置である。注入装置は、室を有するハウジングを含み、ハウジングは出口を有する。隔膜は、ハウジングと作用可能に接続され、隔膜は、室を薬剤貯蔵副室と推進剤副室とに分割し、隔膜は形状記憶合金材料で作られる。推進剤室は、適した推進剤を受け入れる形態とされ、また、薬剤貯載副室は、適した薬剤を受け入れる形態とされ、薬剤貯蔵副室は、ハウジングの出口と流体的に連通した出口を有する。
【0006】
[5]別の実施の形態において、本発明は、薬剤を吐出するときに使用される注入装置である。注入装置は、室を有するハウジングを含み、ハウジングは出口を有する。隔膜は、ハウジングと作用可能に接続され、隔膜は、室を薬剤貯蔵副室と推進剤副室とに分割する。隔膜は、形状記憶合金で作られる。推進剤副室は、適した推進剤を受け入れる形態とされている。薬剤貯蔵副室は、適した薬剤を受け入れる形態とされ、薬剤貯蔵副室は、ハウジングの出口と流体的に連通した出口を有する。流れ制限器(flow restrictor)は、薬剤貯蔵副室の出口と流体的に連通した第一の端部と、ハウジングの出口と流体的に連通した第二の端部とを有する。流れ制限器は、微細加工した流れ制限器であり、流れ制限器は、平面状の頂面を有する第一のガラス部材を含む。第二のガラス部材は、平面状の底面を有し、第二のガラス部材の底面は、第一のガラス部材の頂面上に配置されてチップ組立体を形成する。頂面及及び底面の一方には、通路が機械加工されている。チップ組立体は、薬剤貯蔵副室と流体的に連通した入口と、ハウジングの出口と流体的に連通した出口とを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[37]幾つかの図面の全体を通じて同様の部品を同様の参照番号で表示する図面を参照すると、全体として、薬剤を吐出する小型ポンプが参照番号100で開示される。ポンプ100及び以下に説明するその他の実施の形態のポンプは、植え込み型として説明することができるが、ポンプは、パッチポンプのような、植え込み型でないポンプとして使用することも可能であることが理解される。次に、図1a乃至図1c、図2及び図3を参照すると、ポンプ100は、頂部半体101aと、底部半体101bとを有する適したハウジング101を含む。内壁102は、ハウジングと作用可能に接続されており且つ、ハウジング101の内部を上側キャビティ103と、下側キャビティ104とに分割する。
【0008】
ドーム形の隔膜105がハウジング101及び内壁102と作用可能に接続され且つ、下側キャビティ104を薬剤貯蔵副室106と、推進剤副室107とに分割する。推進剤副室107は、当該技術において周知であるように、2相推進剤のような任意の適した推進剤で充填することができる。隔膜105は、超弾性又は超変形可能なNi−Ti合金である、ニチノール(NITINOL)のような形状記憶合金で作られる。超弾性金属材料は、薄い膜が大きい歪みに遭遇しても破断しない一方により、多数回のサイクルで変位することを許容する。該超弾性金属材料は、超弾性的であることにより、典型的な金属と比較して、大きい弾性的変形又は歪みを受けることができる。薄い円形の隔膜105は、薬剤貯蔵副室106が満杯から空に変化するとき、膜が動くのを許容するドーム形をしている。隔膜105の形成される主要な曲げ応力は、小さく且つ、薬剤貯蔵副室106内の薬剤に対し顕著な圧力変化を与えない。
【0009】
隔膜105は、Ni−Ti合金、すなわちニチノール(NITINOL)のような超弾性型式の材料で製造することができる。ニチノールの特定の組成は、必要とされる特徴に依存して変更可能であるが、ニチノールは、約55%Ni及び45%Tiであり、又は、別の見方をすれば、Ni及びTiは、各々、約50原子率である。この材料をそのオーステナイト相又はマルテンサイト相の何れかで使用すれば、有用な結果が得られる。ニチノール材料は、薬剤リザーバが満杯から空に変化する間、隔膜105が曲がることによって発生される大きい歪みに抵抗し得る設計とすることができる。オーステナイト相材料は、荷重除去後(満杯から空へのサイクル)、永久的な変形及び永久的な歪みを伴わずに曲がりに対応する超弾性的性質を提供する。マルテンサイト相材料は、超変形可能な性質、すなわち破断せずに、大きい歪み及び変形を受ける能力を提供し且つ、薬剤貯蔵副室106内に保持された薬剤に加わる圧力変化を少なくする、その相対的な柔軟性による有利な効果を更に提供する。
【0010】
チタン又はタンタルのようなその他の材料は、優れた生物適合性及び薬剤適合性を有しており、また、疲労特性が亀裂を生じさせる前に、大きい歪み状態に十分に対応することができる。超弾性材料を使用することが好ましいが、特定の状況下において、チタン又はタンタルを使用してもよい。チタン及びタンタルは、超弾性材料の場合に利用可能である、多数回のサイクルに耐えることはできない。しかし、かかる場合、チタン又はタンタルでつくられた隔膜は、要求されるサイクル数がより少ない用途で依然として適用可能である。更に、チタン又はタンタル製の隔膜105は、薬剤の特定の組成と一層良く適合可能である。
【0011】
[38]内壁102は、その内部に隔壁108が配置される入口部分102aを有している。ハウジング101は、隔壁108を通して薬剤貯蔵副室106にアクセスすることを許容する開口部101cを有している。入口部分102aは、薬剤貯蔵副室106内への流体的連通を可能にするボア102bを有している。チタンフィルタ109のような適した型式のフィルタが副室106の出口106aに近接する位置に配置されている。このフィルタは、薬剤が副室106から出て且つ流れ制限器110に入るとき、薬剤をフィルタリングする。図面に示した流れ制限器110は、入口110a及び出口110bを有する丸形の毛管である。入口110a及び出口110bは、当該技術において周知の手段により、また、各々、以下に説明する手段によって流体的連通状態に置くことができる。出口110bは、薬剤がポンプ100から出るときに通るボア111aを有するポンプ出口111と流体的に連通している。
【0012】
[39]図1a乃至図1c、図2及び図3に示したように、ポンプ100は、約9mmの高さ、約27mmの直径、及び約4立方cm(cc)の全体寸法を有する。ポンプは、約1mlの薬剤貯蔵副室106を有している。ポンプ100は約30ccのように大きくし、これに相応して副室106を10mlにすることができるが、しかし、これは依然として、小型のポンプであることが認識される。
【0013】
[40]次に、図4及び図5を参照すると、ポンプ200の第二の実施の形態が示されている。ポンプ200は、ポンプ100と同様であるが、異なる流れ制限器(flow restrictor)を使用する。従って、流れ制限器210のみについて詳細に説明するが、隔膜205のようなその他の構成要素は同様であることが認識される。流れ制限器210は、第一の被覆層210aを含む。第二の層210bは、一定の流れ絞り通路と、可変型又は可調節型の通路とを含み、最終的に、入口210cは、全てこの層210b内に保持される。かかる流れ制限器210用の材料は、パイレックス(登録商標)(pyrex)又は流動化ガラス(flowd glass)又はチタンとすることができる。これらの層は、平坦なドーナツ形状をしている。
【0014】
[41]図6a及び図6bには、ポンプ300の別の実施の形態が示されている。ポンプ300は、流れ制限器310をより詳細に説明するために示されている。図面は、隔膜及びその他の構成要素の一部分のようなポンプ300の構成要素部品の幾つかは図示しない。しかし、当該技術の当業者には、かかるポンプの製造方法が理解されよう。ポンプ300は、上述したように、入口部分302a及び外側リング302bを有する内壁302を含む。流れ制限器310は、外側リング302bに複数の溝312を形成することにより形成される。溝は、連続的なら旋により形成される。内壁302及びハウジング301用の材料は、チタンのような適した材料で作られたものとすることができる。溝の適した寸法は、約50μmの幅、15μmの深さ及び100μmのピッチであろう。しかし、所望の流量に依存して、溝に対してその他の適した寸法を利用することができることが理解される。2つの部分、すなわちハウジング301及び外側リング302bは、以下に更により詳細に説明するように、熱収縮のような手段によって適宜に接続することができる。
【0015】
[42]次に、図7乃至図11を参照すると、ポンプ1100の別の実施の形態が示されている。ポンプ1100は、ポンプ200と同様であるが、異なる流れ制限器を使用する。従って、流れ制限器1110についてのみ詳細に説明するが、隔膜(図示せず)のようなその他の構成要素は同様であることが認識される。ポンプ1100も図7においてあまり詳細にではなく示されており、流れ制限器1110の一部分は図8乃至図11により詳細に示されている。流れ制限器1110は、入口1112aを有する第一の層1112を含む。第一の層の頂部には、第二の層1113があり、該第二の層の上にはら旋状流路1113aがある。第三の層1114が頂部に配置され、また、流路1114bと共に、複数の出口1114aを有する。第三の層は、特定の出口1114aが使用されるように、回転させることができる。このことは、流路1114bの長さを変化させ、このため、異なる流量を生じさせる。かかる流れ制限器1110用の材料は、パイレックス(登録商標)又は流動ガラス又はチタンとすることができる。層1112乃至1114に対する可能な寸法は、外径25mm、内径6mm及び厚さ約1.5mmである。
【0016】
[43]次に、図12a、図12b、図13及び図14を参照すると、ポンプ400の別の実施の形態が示されている。この場合にも、ポンプ400は、適した流れ制限器を説明すべく図示されており、従って、隔膜105と同様の隔膜のような、ポンプ内の多数の部品は図示されていない。内壁402は、複数の溝402bが形成された頂面402aを有している。内壁402及びハウジング401は、チタンのような、適した材料で形成される一方、シリコーンシール412が頂面402aとハウジング401との間に配置されている。溝402bは、この場合にも、連続的なら旋状であり、また、30μmの幅及び15μmの深さのような適した寸法を有することができる。化学的エッチングは、溝を形成する1つの適した方法である。図13及び図14に示したように、シリコーンシール412は内壁402上に配置され、また、熱及び(又は)圧力が加えられて、シリコーンシール412を部分的に溝402b内に押し込む。加えられた力に依存して、溝402b内へのシリコーンシール412の変位量は変化し、これにより、流れ制限器410の流れ特性を変化させる。
【0017】
[44]上述したポンプ内の流れ制限器は、約1ミリリットル(ml)/月の流量を提供することを予定する。このため、極めて小さい通路又は流路であることが望まれる。これを実現するため、上述した設計のものが利用されている。適した流れ制限器内で利用できる色々な設計のより詳細な説明は、図15乃至図47に示されており、また、以下に説明する。
【0018】
[45]全体として、溝は材料層上に配置され、次に、別の層で覆い、溝を閉鎖し且つ、必要とされる通路を提供する。通路は、必要な長さを実現し得るよううに任意の数のパターン形状とすることができる。同様に、1つ以上の通路層を最終的なチップ組立体により組み合わせることができる。この一般的な着想は、溝の技術、接着及び較正を組み合わせることによって完成されることができる。
【0019】
[46]溝は、フォトリソグラフィ及び化学的エッチング、深反応イオンエッチング(DRIF)、イオンエッチング、リソグラフィ、電気めっき、射出成形法(LIGA)のような湿式エッチング法を使用することによりエッチングすることができる。溝は、イオン結合、拡散結合のような方法を使用することにより1つの層をエッチングした層の頂部に結合し、またはエラストマー層をエッチングした通路の頂部に圧縮することにより、閉鎖することができる。装置の全体的な流れの精度に寄与すべく使用することが望まれる正確な制限作用を決定するため、通路の寸法及び長さが使用される。正確な制限作用を実現するため、溝の寸法を正確な寸法となるように制御しなければならならず、又は、長さを多数の方法の1つによって較正することができる。これらの方法は、1umの変動以下となるように高精密にエッチングし、較正が全く不要であるようにするステップを含む。較正した長さを提供すべく栓止めした穴の適した数又は位置を選ぶことにより、栓止めされるであろう長さの端部付近に多数の出口が設けられる。通路のループ又は選んだ領域をブロックする通路を含めるステップ含む。または、結合中、通路の深さを変化させ又は覆うエラストマー層の圧縮量を変化させる。
【0020】
[47]図15乃至43を参照すると、これら着想の多数が示されている。図15には、内壁の外径部に形成された溝が示されている。図16は、外壁における平坦なら旋を示す図である。図17には、内壁上の円錐形のら旋が示される。図18には、内壁における部分的に平坦な溝が開示されている。図19には、マイクロレーザ焼結を利用する部品内の構造が開示されている。図20は、溝に対する中心対称が存在しない一例である。図21には、チタンシートが複数の溝を有する構造とされ、次に、折り重ねられて円錐形の形状となるようにした図が示されている。図22は、図2及び図3で先に示したように、ガラス毛管の図である。この場合、ガラス毛管の内径は、約40μmであり、外径は100μmである。管は、適正に較正し得るよう適した長さに切断することになろう。
【0021】
[48]図23には、溝が平坦なシートで形成され、次に、ら旋状に折り重ねられるチタンシートが示されている。[49]図24乃至図28は、溝を閉じ又は密封する色々な技術の図である。図24には、締まり嵌めを実現するため示差熱を使用して締まり嵌め状態に溝及び覆う部品が組み立てられる図が示されている。図25は拡散接合を示す図である。拡散接合は周知であり、熱及び圧力を使用する。図26は、図13及び図14に関して示したように、圧縮したシリコーンの図である。図27には、強い圧縮状態が示され、また、図28には、中程度の圧縮状態が示されている。
【0022】
[50]図29乃至図36には、色々な溝の製造技術が示されている。図29には、放電加工機(EDM)技術が示されている。図30は、フォトリソグラフィ又は化学的エッチングの図である。図31には、深反応性イオンエッチングが示され、図32には、水ジェット誘導レーザ技術が示されている。図33には、リソグラフィ電気めっき射出成形法(LIGA)が示され、また、図34には、マイクロレーザ焼結法が示されている。図35には、ガラス毛管が示され、最後に、図36には、薄いチタン層をガラス基板上にエッチングする状態が示されている。
【0023】
[51]図37乃至図43は、流れ制限器の較正方法を示す図である。図37には、ガラス毛管を所望の長さに切断する状態が示されている。図38には、多数の出口を有する毛管と、正確な長さとなるように適正な出口を選ぶステップと、その他の出口を栓止めするステップとが示されている。図39には、流量を変化させるべく溝の断面を変化させる状態が示されている(破線で図示)。図40は、一定長さの毛管と、較正又は調節のため、微細加工した部分とを有する組み合わせシステムの図である。図41には、断面の長さを局所的に変化させる状態が示されている。図42には、ゴム栓を有する正確な出口を選ぶステップと、その他を取り外すステップとが示されている。図43は、xで標識された通路を閉鎖することにより通路の長さを短くし、これにより長さを変化させるステップが示されている。
【0024】
[52]流れ制限器を流路の入口部分及び出口部分と接続する手段を有することが必要である。コネクタは、図44乃至図47に示したように、Oリング又はその他のガスケットと共に拡散接合し又は圧縮し、溶接し又はねじ止めすることができる。[53]図44乃至図47は、流路の異なる接続部の図である。流れ制限器の溝を薬剤を保持する副室とポンプの出口との双方と接続する必要がある。図44には、貫通するボア701を有する接続部700が示されている。装着部はOリング702で密封されている。図45には、装着部800を溶接し、これによりシールを形成する状態が示されている。図46には、インサート900を拡散接合する状態が示されている。図47は、流れ制限器に近似する部分にねじ止めされたねじ付き装着部1000の図である。密封のためOリング1001が利用される。[54]図48及び図49は、図48に示したようにレーザ溶接され又は図49に示したように圧力嵌めされる一体型のチタンフィルタの図である。
【0025】
[55]次に、図50乃至図57を参照すると、ポンプ500の別の実施の形態が示されている。ポンプ500は、試作品として使用することができるポンプを示す。従って、試作品の設計にとって有益であるが、必ずしも製造設計に組み込むことを必要としない構造の特定の部分が示されている。ポンプ500は適したハウジング501を含む。ハウジングは、頂部半体501aと、底部半体501bと、内壁又は隔壁502とを含む。内壁502は、ハウジングと作用可能に接続され且つハウジング501の内部を上側キャビティ503と、下側キャビティ504とに分割する。隔膜505は、ハウジング及び内壁502と作用可能に接続され、また、隔膜505は、下側キャビティ504を薬剤貯蔵副室506と、推進剤室507とに分割する。この場合にも、隔膜505は、ニチノールのような超弾性材料である。図51に図示しないが、隔膜505は、図2及び図3に示した隔膜105と同一の形状とすることができる。推進剤室507は、当該技術で周知であるように、二相推進剤のような適した推進剤を充填することができる。推進剤通路540が底部半体501bに形成され且つ推進剤室507と流体的に連通している。充填された後、気体ピン541を推進剤通路540内に挿入して推進剤を推進剤副室507内に保持することができる。
【0026】
[56]内壁502は、その内部に中隔508が配置される入口部分502aを有している。中隔リング542を利用することができ、また、中隔508をその内部に配置することができる。ハウジング501は、中隔508を通じて薬剤貯蔵副室506へのアクセスを許容する開口部501cを有する。入口部分502aは、薬剤貯蔵副室506内への流体的連通状態を提供するボア502bを有する。チタンフィルタ509のような適した型式のフィルタが副室506の出口506aに近接する位置に配置される。このフィルタは、薬剤が副室506から出て且つ流れ制限器510に入るとき、薬剤をフィルタリングする。ポンプ500について上述した構成要素は、当該技術で周知であり、溶接を含むことができる手段によって組み立てることができる。
【0027】
[57]流れ制限器510は、図52により明確に示され、その構成要素の一部は図53乃至図57に示されている。流れ制限器510は、第一の基板511と、第二の基板512とを含むチップ組立体である。チップ組立体という語は、マイクロチップを形成する場合と同様の態様に形成されるときに使用される。基板511、512は、ガラス又はシリコーンであることが好ましい。基板511は全体として四角形であり、また、第一の平面状面511aと、第二の平面状面511bとを有する。第二の基板512は、第一の平面状面512aと、第二の平面状面512bとを有する。平面状面511a、512aは、互いに近接する位置に配置される。基板511は、第一の面511aから第二の面511bまで伸びる第一の開口部511cを有する。同様に、第二の開口部511dはまた、面511aから面511bまで伸びている。連続的な通路512cが面512aに微細加工される。通路512cの経路は図53に最も良く示されており、通路512cの形状は図55に最も良く示されている。通路512cは、0.02mm±200nmの幅、0.005mm±50nmの高さである。
【0028】
通路512cは隣接する通路から約0.1mmだけ隔てられている。通路の寸法及び長さを変化させることにより、貫通して流れる薬剤の量を変更することができる。通路512cは薬剤に対する流路を提供する。穴511c、511dは粉体ブラストする。通路512cは微細加工により形成される。かかる微細加工過程は、マイクロ流体業界と同様、半導体業界で一般的なものである。開口部511cは、薬剤貯蔵室506の出口に近接し、また、開口部511dはカテーテルの出口530に近接する。カテーテル531は、出口530と作用可能に接続され、該出口530と流体的に連通している。2つのガスケット513、514が基板511、512の回りに配置されている。ガスケット513は、開口部511c、511dの上方に位置する2つの開口部513a、513bを有する。ガスケット514は、同様の穴を有するものとして示されている。しかし、穴は必ずしも必要ではなく、ガスケット513、514は同一であり、追加的な部分を有する必要がないことを示すためだけのものである。しかし、穴は必ずしもガスケット514に形成する必要はないことが理解される。
【0029】
シム515がガスケット514の頂部に配置される。流れ制限器は、ねじ519を受け入れるようねじを有するボス520内に固定されたねじ519により互いに圧縮される。上記に説明したように、図50には、試作品の設計にとって有用な1つの実施の形態が示されている。製造モデルの場合、ねじ519は省略してよく、流れ制限器は、圧縮嵌めされて且つ簡単に内壁502に配置されるように形成することができる。
【0030】
[58]隔膜105、205、505は全て、図面に示したように、隔膜が下方に位置する満杯の位置から空の位置まで動く。このことは、より大きい薬剤貯蔵副室を提供することになる。次に、薬剤が分与されると、隔膜は「中心線上を動く」。すなわち、中心は、隔膜の全体と共に、隔膜が頂部半体101a、201a、501aの下方部分に近接する迄、上方に動く。このことは、薬剤貯蔵副室内の薬剤の少なくとも90%を分与することができるから、良好な容積効率を実現することになる。
【0031】
[59]本発明は、その小さい寸法のため、体内の多数の位置で使用することもできる。ポンプは、耳の後方の頭蓋又は胸部領域を含む体内のほぼ任意の位置に配置することができる。ポンプは、所望の送り出し箇所に近接して植え込むことを予定する。
【0032】
[60]上記の設計上の着想に加えて、利用可能であるその他の着想は、より小径の管を利用することにより、メドトロニックインク(Medtronic,Inc)が販売するイソメド(ISOMED)(登録商標名)ポンプにおいて使用されるものと同様のガラス管を含む。また、マイクロねじ溝をシリンダ表面に切り込み、次に、熱加圧のような締まり嵌め部として装着された同様の平滑な面によって閉鎖してもよい。圧縮されたエラストマーが機械加工したチタン通路を覆うようにしてもよい。金属射出成形法を使用することもできる。水ジェット誘導レーザ切削法でチタン又はその他の金属に溝を形成することも可能である。チタン又はその他の金属に溝を精密機械加工し、チタン又はその他の金属に溝を化学的エッチングし又はマイクロレーザ焼結法を含めることができる。
【0033】
[61]本発明は、植え込み型薬剤送り出しシステムで使用されるポンプ機構である。ポンプは、室を薬剤貯蔵副室と、推進剤副室とに分割するポンプ隔膜を有する。推進剤副室は、適した推進剤を受け入れ得るような形態とされている。隔膜は、超弾性金属材料で製造される。かかる材料の一例は、超弾性Ni−Ti合金であるニチノール(NITINOL)である。1つの好ましい実施の形態において、隔膜は、隔膜が中心線上を伸びることを許容し、また、最小応力において比較的大きい偏向を有する形態を備える。かかる形態の一例はドーム形である。注入装置は、定量又は可変量ポンプの何れかとすることができることが理解される。ポンプの全体寸法は30cc以下であり、また、約4ccの寸法であることが好ましい。より小型の4cc寸法のポンプは、約1mlの薬剤貯蔵副室を有することになろう。
【0034】
[62]注入装置は再充填可能であり、また、薬剤貯蔵副室と流体的に連通した充填ポートを含むことが好ましい。セプタムが充填ポート内に配置されている。更に、フィルタが薬剤貯蔵副室と流れ制限器との間に配置される一方、該流れ制限器は出口と流体的に連通している。中隔は、シリコーン中隔とし、フィルタはチタンフィルタとすることができる。[63]注入装置機構は、薬剤貯蔵副室と出口との間に配置された適した流れ制限器を含むことができる。流れ制限器の例は、微細加工したガラス又はシリコーンチップ組立体又はガラス毛管、ハウジングの回りのマイクロねじ、溝の上の複数の多数出口ディスク又はシリコーンシーリングを含む。この場合にも、上述したポンプ及び装置は、非植え込み型ポンプとして使用することもできる。[64]このように、薬剤送り出し用の小型ポンプの実施の形態を開示した。[65]当該技術の当業者には、本発明が開示された以外の実施の形態において実施可能であることが理解されよう。開示された実施の形態は、説明の目的のために掲げたものであり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1a】本発明に従ったポンプの第一の実施の形態を示す斜視図である。
【図1b】ポンプの側面図である。
【図1c】ポンプの頂面図である。
【図2】図1cに示したポンプのほぼ線2−2に沿った断面図である。
【図3】図2の一部分の拡大図である。
【図4】本発明に従ったポンプの別の実施の形態を示す断面図である。
【図5】図4の一部分の拡大図である。
【図6】図6aは、一部分を切欠いた、本発明に従ったポンプの別の実施の形態を示す斜視図である。図6bは、図6aに示したポンプの一部分の拡大図である。
【図7】本発明に従ったポンプの別の実施の形態を示す一部分を切欠いた、斜視図である。
【図8】図7に示した、流れ制限器の第一の層を示す頂面図である。
【図9】図7に示した、流れ制限器の第二の層を示す頂面図である。
【図10】図7に示した、流れ制限器の第三の層を示す頂面図である。
【図11】組み立てた状態にある、図8乃至図10に示した層の拡大側面図である。
【図12】図12aは、本発明に従ったポンプの別の実施の形態を示す、一部分を切欠いた、斜視図である。図12bは、図12aに示したポンプの一部分を示す拡大図である。
【図13】図12bを示した流れ制限器を製造する過程を示す図である。
【図14】図12bを示した流れ制限器を製造する過程を示す別の図である。
【図15】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図16】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図17】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図18】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図19】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図20】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図21】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図22】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図23】図6に示したポンプのような、本発明に従ったポンプ用の流れ制限器を製造する溝の配置の実施の形態を示す図である。
【図24】本発明と共に使用される流れ制限器を閉じ且つ密封する溝の技術を示す実施の形態の図である。
【図25】本発明と共に使用される流れ制限器を閉じ且つ密封する溝の技術を示す実施の形態の図である。
【図26】本発明と共に使用される流れ制限器を閉じ且つ密封する溝の技術を示す実施の形態の図である。
【図27】本発明と共に使用される流れ制限器を閉じ且つ密封する溝の技術を示す実施の形態の図である。
【図28】本発明と共に使用される流れ制限器を閉じ且つ密封する溝の技術を示す実施の形態の図である。
【図29】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図30】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図31】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図32】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図33】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図34】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図35】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図36】本発明と共に使用される流れ制限器を製造するため溝を形成する実施の形態を示す図である。
【図37】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図38】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図39】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図40】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図41】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図42】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図43】較正のため異なる設計を利用する流れ制限器を示す図である。
【図44】流れ制限器を流路の入口部分及び出口部分と接続する色々な接続部の実施の形態を示す図である。
【図45】流れ制限器を流路の入口部分及び出口部分と接続する色々な接続部の実施の形態を示す図である。
【図46】流れ制限器を流路の入口部分及び出口部分と接続する色々な接続部の実施の形態を示す図である。
【図47】流れ制限器を流路の入口部分及び出口部分と接続する色々な接続部の実施の形態を示す図である。
【図48】本発明のポンプと共に使用される一体型フィルタの実施の形態を示す図である。
【図49】本発明のポンプと共に使用される一体型フィルタの別の実施の形態を示す図である。
【図50】本発明の別の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図51】図50に示した実施の形態の断面図である。
【図52】図51に示した部分の拡大断面図である。
【図53】図50に示したチップ組立体の頂面図である。
【図54】図53のほぼ線54−54に沿った断面図である。
【図55】図54にXで標識した一部分の拡大断面図である。
【図56】図50に示したガスケットの頂面図である。
【図57】図56のほぼ線57−57に沿った断面図である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の吐出に使用される注入装置であって、
a)室及び出口を有するハウジングと、
b)ハウジングと作用可能に接続されて、室を薬剤貯蔵副室及び推進剤副室に分割する、形状記憶合金材料で作られた隔膜と、
c)適した推進剤を受け入れる形態とされた前記推進剤副室と、
d)適した薬剤を受け入れる形態とされ、ハウジングの出口と流体的に連通した出口を有する前記薬剤貯載副室と、を備える注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の注入装置であって、
a)より大きい容積効率となるように中心線上を伸びるように構成された前記隔膜と、
b)ハウジングと作用可能に接続され且つ薬剤貯蔵副室と流体的に連通したセプタムと、を更に備える注入装置。
【請求項3】
前記隔膜がNi−Ti合金により製造される請求項2に記載の注入装置。
【請求項4】
請求項2に記載の注入装置であって、薬剤貯蔵副室の出口と流体的に連通した第一の端部及びハウジングの出口と流体的に連通した第二の端部を有する流れ制限器を更に備え、前記流れ制限器が微細加工した流れ抵抗器であり、前記微細加工した流れ抵抗器が、
a)平面状の頂面を有する第一の基板部材と、
b)平面状の底面を有する第二の基板部材であって、第二の基板部材の底面は第一の基板部材の頂面に配置されてチップ組立体を形成する前記第二の基板部材と、
c)機械加工された通路を有する頂面及び底面の一方と、
d)薬剤貯蔵副室の出口と流体的に連通した入口と、ハウジングの出口と流体的に連通した出口とを有するチップ組立体と、を備える注入装置。
【請求項5】
前記第一及び第二の基板がガラス基板である請求項4に記載の注入装置。
【請求項6】
前記通路が約1ml/月の流量となる寸法とされる請求項4に記載の注入装置。
【請求項7】
前記ポンプが定量ポンプである請求項4に記載の注入装置。
【請求項8】
請求項1に記載の注入装置であって、薬剤リザーバが完全に分与されたとき、薬剤リザーバの満杯時の少なくとも90%を分与する注入装置。
【請求項9】
前記Ni−Ti合金が超弾性的である請求項3に記載の注入装置。
【請求項10】
前記Ni−Ti合金が超変形可能である請求項3に記載の注入装置。
【請求項11】
前記注入装置が植え込み型である請求項1に記載の注入装置。
【請求項12】
薬剤の吐出に使用される注入装置であって、
a)室及び出口を有するハウジングと、
b)ハウジングと作用可能に接続されて、室を薬剤貯蔵副室と推進剤副室とに分割する、形状記憶合金でつくられる隔膜と、
c)適した推進剤を受け入れる形態とされた推進剤副室と、
d)適した薬剤を受け入れる形態とされて、ハウジングの出口と流体的に連通した出口を有する薬剤貯蔵副室と、
e)薬剤貯蔵副室の出口と流体的に連通した第一の端部と、ハウジングの出口と流体的に連通した第二の端部とを有する流れ制限器と、を備え、
前記流れ制限器が微細加工した流れ抵抗器であり、該流れ抵抗器が、
i)平面状の頂面を有する第一のガラス部材と、
ii)平面状の底面を有する第二のガラス部材であって、第二のガラス部材の底面が第一のガラス部材の頂面に配置されてチップ組立体を形成する第二のガラス部材と、
iii)機械加工された通路を有する前記頂面及び底面の一方と、
iv)薬剤貯蔵副室の出口と流体的に連通した入口、及びハウジングの出口と流体的に連通した出口を有する前記チップ組立体と、を備える注入装置。
【請求項13】
前記形状記憶合金がNi−Ti合金である請求項12に記載の注入装置。
【請求項14】
前記注入装置が植込み型である請求項13に記載の注入装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【公表番号】特表2009−516792(P2009−516792A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522995(P2008−522995)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028374
【国際公開番号】WO2007/014040
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】