説明

薬液容器の保持装置及び方法、並びに異物検査装置

【課題】薬液を収納した薬液容器の先端に取り付けられた栓部材に負荷をかけることなく、薬液容器を回転可能に正確に保持する。
【解決手段】保持装置20は開口部33を備えたアウターケース31とアウターケース内に配置されシリンジ21を保持する爪機構34とを備えた把持部23を有し、爪機構は、開口部から外方に突出した状態のときにアウターケースの半径方向の外側に拡がると共にアウターケースの内方に収納された状態のときにアウターケースの内面によって半径方向の内側に狭められる開閉可能な複数の爪を備えた爪部36を有し、アウターケースが下方に移動したときに、爪部が開口部からアウターケースの内方に収納させられて半径方向の内側に狭められることにより、爪部の内側に形成された空間部46にシリンジのゴム栓41が収納されると共に、爪部がゴム栓を越えた位置にあるシリンジの部位を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を内部に収納し先端に栓部材が取り付けられた薬液容器を回転可能に保持する薬液容器の保持装置及び方法、並びに異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
注射剤液体等の薬液を内部に収納する薬液容器として、バイアル、カートリッジあるいはシリンジが用いられている。
【0003】
薬液容器内の異物を検査する場合、薬液を収納した薬液容器を高速回転させた後に急停止させ、慣性力により薬液が回転しているうちに、薬液中に内在する異物の動きを捉え、異物の有無の検査を行うことが一般的に行われている。
【0004】
また、薬液中の異物の検査を行う前に、薬液中の気泡を除去するために、薬液容器を高速回転させることも一般的に行われている。
【0005】
上記のような異物検査において、薬液容器を回転自在に保持する場合、カムレールを用いてキャップを薬液容器に向けて下降させ、キャップとスピンドルとの間で薬液容器を保持する方法が一般的である。
【0006】
下記特許文献1には、載置台上の被検体である容器に向けて回転自在な椀状のカップを下降させて拘束した状態で容器を回転させ、回転中又は回転終了後の容器を光の反射又は透過を用いて撮影し、取得された画像に基づいて容器中の異物の検査を行うことが記載されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、瓶等の複数のワークをつかむ膨張体を備えた第1のつかみ機構と、ワークを収納するケースをつかむ第2のつかみ機構とを備えたつかみ装置であって、第1のつかみ機構はエアー等の流体の給排により膨張・縮小する膨張体の膨張時にワークをつかむように構成され、第2のつかみ機構は少なくとも2つのアーム状フックを移動させ、このアーム状フックをケース両側に掛止させてケースをつかむようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−107011号公報
【特許文献2】特開平8−108389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載された技術においては、モータの回転軸に連結された載置台上に被検体である容器が載せられ、容器の上部が、回転自在なカップで上方から押さえられる。
【0010】
しかしながら、容器先端に取り付けられた栓部材が容器の胴部若しくはルアーロックよりも太い場合には、回転自在なカップを容器に向けて下降させると、カップが容器先端の栓部材に当接することになる。このため、栓部材に負荷をかけずに回転可能に容器を保持することが困難であった。
【0011】
また、特許文献2には、膨張・縮小する膨張体を備えた、瓶等をつかむためのつかみ機構が記載されているが、このつかみ機構を、薬液容器を回転可能に正確に保持する装置に適用することは困難である。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、薬液を収納した薬液容器の先端に取り付けられた栓部材に負荷をかけることなく、薬液容器を回転可能に正確に保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明に係る薬液容器の保持装置は、薬液を内部に収納し先端に栓部材が取り付けられた薬液容器を回転可能に保持する薬液容器の保持装置であって、上下方向に移動可能な保持本体と、前記保持本体に回転可能に連結され前記薬液容器を把持するための把持部と、前記薬液容器を回転可能に下側から支持する支持部とを有し、前記把持部は、前記薬液容器に臨む側が開放された開口部を備えたアウターケースと、前記アウターケース内に配置され前記薬液容器を保持するための爪機構とを有し、前記爪機構は、前記開口部から外方に突出した状態のときに前記アウターケースの半径方向の外側に拡がると共に前記アウターケースの内方に収納された状態のときに前記アウターケースの内面によって前記半径方向の内側に狭められる開閉可能な複数の爪を備えた爪部を有し、前記アウターケースが下方に移動したときに、前記爪部が前記開口部から前記アウターケースの内方に収納させられて前記半径方向の内側に狭められることにより、前記爪部の内側に形成された空間部に前記薬液容器の栓部材が収納されると共に、前記爪部が前記栓部材を越えた位置にある前記薬液容器の部位を保持することを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成すべく、本発明に係る薬液容器の保持方法は、薬液を内部に収納し先端に栓部材が取り付けられた薬液容器を回転可能に保持する薬液容器の保持方法であって、前記薬液容器の保持装置を用いて、前記薬液容器の先端に取り付けられた前記栓部材を前記アウターケース内に収納し、前記爪機構と前記栓部材との間に間隙を形成した状態で前記薬液容器を保持することを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成すべく、本発明に係る異物検査装置は、前記薬液容器の保持装置と、前記保持装置により保持された前記薬液容器を回転駆動させるための回転駆動装置と、前記回転駆動装置の動作を制御する回転駆動制御部と、回転中又は回転終了後の前記薬液容器を撮影する撮像装置と、前記撮像装置により取得された画像に基づいて前記薬液中の異物の検出を行う画像処理部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薬液を収納した薬液容器の先端に取り付けられた栓部材に負荷をかけることなく、薬液容器を回転可能に正確に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る異物検査装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】異物検査装置のカムレール配置を示す平面図である。
【図3】異物検査装置の主な制御構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る保持装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る保持装置を示す断面図である。
【図6】板カムの配置を示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る保持装置を示す断面図である。
【図8】図7に示す爪機構の拡大斜視図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る保持装置を示す断面図である。
【図10】図9に示す台座および上台座のセットの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る異物検査装置100の全体構成を示す斜視図である。図2は、異物検査装置100のカムレール配置200を示す平面図である。図3は、異物検査装置100の主な制御構成を示すブロック図である。
【0020】
以下では、注射剤液体等の薬液を内部に収納し先端に栓部材が取り付けられた薬液容器の例として、一般的なシリンジを使用した例について説明するが、本発明が適用される薬液容器はシリンジに限定されるものではなく、例えばバイアル、カートリッジ等の薬液容器にも適用可能である。
【0021】
図1において、異物検査装置100は、検査ロータ1、供給スターホイル2、及び搬出スターホイル3を有している。
【0022】
検査ロータ1は、円筒状の検査ロータ本体11を備えている。また、検査ロータ本体11の上方には、段差を有するカムレール12が配置されている。固定されたカムレール12上を多数のローラ13が走行し、カムレール12の段差に対応してローラ13は上下動する。各ローラ13は、検査ロータ本体11に対して上下動可能に設けられている。
【0023】
検査ロータ1は、検査ロータ回転駆動用モータ301(図3参照)によって、矢印に示される方向に回転される。検査ロータ回転駆動用モータ301は、モータ制御部302(図3参照)によって、回転や停止等の動作が制御される。
【0024】
供給スターホイル2は、回転駆動装置(図示せず)によって矢印に示される方向に回転され、これから検査しようとする円筒状の薬液容器としてのシリンジ21を検査ロータ1に搬入させることができる。
【0025】
搬出スターホイル3は、回転駆動装置(図示せず)によって矢印に示される方向に回転され、検査済のシリンジ21を検査ロータ1から搬出させることができる。
【0026】
シリンジの保持装置20は、ローラ13に係合され、ローラ13の上下動に伴って、上下方向に移動可能な保持本体22と、この保持本体22に回転可能に連結されシリンジ21を把持するための把持部23と、シリンジ21を回転可能に下側から支持する支持部としての台座14とを備えている。台座14は、把持部23に対向する下方位置に配置される。保持装置20の詳細説明は後述する。
【0027】
供給スターホイル2から搬入されたシリンジ21は、台座14上に載置され、検査済のシリンジ21は、台座14上から搬出スターホイル3に搬出される。
【0028】
各台座14は、ベルト若しくはギア等の回転駆動力伝達部材(図示せず)により、回転駆動装置としてのモータユニット303(図3参照)に接続されており、モータユニット303によって台座14は回転させられる。
【0029】
図2において、カムレール配置200は、保持区間と開放区間とを有している。保持区間は、把持部23がシリンジ21を保持する区間であり、開放区間は、把持部23がシリンジ21を保持しない、すなわち開放している区間である。開放区間の全体にカムレール12が配設される。
【0030】
供給スターホイル2及び搬出スターホイル3には、それぞれ搬送ライン15及び搬出ライン(図示せず)が接続される。
【0031】
供給スターホイル2からシリンジ21が次々に搬入されて検査ロータ1に載せられ、検査ロータ1に設けられカメラと照明を備えた撮像装置304(図3参照)によって、回転中又は回転終了後のシリンジ21の内部が撮映され、取得された画像から異物の有無の検出、すなわち検査が行われる。例えば、シリンジ21を高速回転させた後に急停止させ、慣性力により薬液が回転しているうちに、シリンジ21を撮映して、薬液中の異物の動きを捉え、異物の有無の検査が行われる。シリンジ21を高速回転させるときの回転速度は、シリンジ21の径や薬液の液質によるが、毎分数千回転程度である。
【0032】
上記異物検査のために、異物検査装置100は、図3に示すように、モータユニット303による回転パターンを与える検査モード設定部305、モータユニット303の回転や停止等の動作を制御する回転駆動制御部としてのモータ制御部302、及び撮像装置304により取得された画像に基づいて薬液中の異物の検出を行う画像処理部306を備えている。
【0033】
図4は、本発明の第1実施形態に係る保持装置20を示す断面図である。
シリンジ21は、その全部又は一部が透明な材料から形成されており、内部に収納された薬液を目視で確認することができる。シリンジ21の材質としては、例えばプラスチック、ガラス等が挙げられる。薬液を内部に収納したシリンジ21の先端には栓部材としてのゴム栓41が取り付けられている。ゴム栓41の材質としては、例えばブチルゴム、シリコーンゴム、あるいはエラストマー等の材料が挙げられる。シリンジ21に収納された薬液の基端側は、ガスケット80によってシールされており、使用時にガスケット80が先端側に移動させられることにより薬液が前方に押し出される。
【0034】
図4において、保持装置20は、前述したように、保持本体22、把持部23、及び台座14を備えている。保持装置20の把持部23は、シリンジ21に臨む側が開放された開口部33を備えたアウターケース31と、アウターケース31内に配置され、シリンジ21を保持するための爪機構34とを有している。
【0035】
爪機構34は、アウターケース31の内部で上下に摺動する。爪機構34は、その先端に設けられた開閉自在な複数の爪を備えた爪部36と、爪部36を軸支する爪保持棒37とを有している。爪機構34をアウターケース31の軸方向外方に付勢するスプリング45が設けられており、爪保持棒37に備えられたストップリング39によって移動が規制される。
【0036】
ここでは、爪部36は、周方向均等間隔に配設される3本の爪を備えている。本発明において、爪部36は複数本の爪を備えて構成可能であるが、正確な芯出しの観点から、3本が最も望ましい。なお、図4は2箇所の爪を通る断面を示している。
【0037】
爪部36は、開口部33から外方に突出可能とされ、また開口部33からアウターケース31の内方へ収納、すなわち復帰可能とされている。爪部36は開口部33から外方に突出したときにシリンジ21の側方、すなわち半径方向の外側に拡がり、シリンジ21を側方から保持するときに、アウターケース31の内面によって狭められる。このように爪部36は、開閉自在な複数の爪を備えており、バネ機能を有して元の状態に復帰することができる。爪部36の材質としては、弾性を有するナイロン(商品名)等の樹脂材料が挙げられる。但し、金属等の弾性を有する他の材料を使用することも可能である。アウターケース31の材質としては、例えば金属等の硬い材料が挙げられる。
【0038】
爪機構34は、爪部36の内側に、シリンジ21の先端に取り付けられたゴム栓41を収納可能な上下方向の長さの空間部46を形成する。したがって、この空間部46内にゴム栓41を収納した状態で、爪部36は狭められ得る。
【0039】
爪保持棒37の先端部(上端部)には上述のようにストップリング39が設けられており、爪保持棒37が上方に移動可能なように、空間部46の上方側に、もう一つの空間部47がアウターケース31内に形成されている。アウターケース31は、ベアリング40を介して、保持本体22に回転自在に係合されている。
【0040】
次に、上記のように構成されたシリンジの保持装置20の作用について説明する。
シリンジ21は、上述のように上方端(先端)にゴム栓41を備え、下方端(基端)にフランジ42を備えており、中央部に略円錐状の突起を有する台座14上に載置される。シリンジ21のゴム栓41の下側には、肩部44が形成されている。すなわち、この場合、下方に向けてシリンジ21のゴム栓41を越えた部位に、肩部44が形成されている。
【0041】
図4(a)は、爪機構34が下降する以前の状態を示しており、爪部36は開口部33から外方に突出している。そして、爪部36は、この突出した状態で複数の爪がシリンジ21のゴム栓41を囲むように、ゴム栓41の側方(半径方向、紙面で水平方向)に下降させられる。このとき、ゴム栓41が太い場合にあっても、ゴム栓41を空間部46に充分に収納可能である。
【0042】
シリンジ21に注射針を固定するための金属あるいはプラスチックからなるルアーロックが、シリンジ21に設けられる場合がある。このようなルアーロックが設けられる場合であって、ゴム栓41がルアーロックよりも太いときでも、空間部46は、ルアーロック及びゴム栓41を充分にその内部に収納することができる。この状態で、保持装置20は、上下方向の矢印のように下降され得る。なお、台座14は随時回転可能とされる。
【0043】
図4(b)は、ローラ13(図1参照)のカムレール12上の走行状態に応じて、保持本体22及び把持部23が矢印のように下降している状況を示す。この状況では、爪機構34の一部、すなわち爪保持棒37がゴム栓41に接触(当接)し、それ以上の爪機構34の下降は阻止される。爪機構34の下降阻止の状態で、更に保持本体22が下降することにより、アウターケース31が下降する。
【0044】
保持本体22の自重によるアウターケース31の下降によって、爪部36の内側に形成された空間部46は、ゴム栓41を完全に収納するに至る。このとき、爪部36の先端側に形成されたテーパ48の位置は、シリンジ21の肩部44の位置に対応した位置となる。
【0045】
図4(c)は、更にアウターケース31が下降した状態を示す。アウターケース31の下降により、開放されていた爪部36が外方からアウターケース31の内面によって締め付けられ、徐々に狭められ、閉じていく。このとき、スプリング45は縮み、爪保持棒37は、他の空間部47内を上昇する。
【0046】
そして、爪部36は狭められて完全に閉じる。爪部36が挟められて閉じることによって、爪部36の爪はシリンジ21の肩部44をしっかりと保持する。この場合に、爪部36の内側には、ゴム栓41を収納するのに充分な長さの空間部46が形成されているので、爪部36は、ゴム栓41を空間部46に収納することにより、ゴム栓41を避けて、シリンジ21の肩部44を保持する。
【0047】
そして、爪部36の爪の先端側に形成されたテーパ48が肩部44に乗り上げることにより、ゴム栓41に接触していた爪機構34の一部、すなわち、この場合には爪保持棒37が上方に持ち上がって間隙が形成され、爪機構34とゴム栓41との接触がなくなる。したがって、これらの双方の間に機械的な力は働かなくなる。この状態で、シリンジ21を高速回転させたときに、ゴム栓41には接触による機械的な力が一切かからない。
【0048】
上述したように、保持装置20を用いて、シリンジ21の先端に取り付けられたゴム栓41をアウターケース31内に収納し、爪機構34とゴム栓41との間に間隙を形成した状態でシリンジ21を保持して、シリンジ21の高速回転時に、シリンジ21のゴム栓41に接触による機械的な力がかからないようにしたシリンジ21の保持方法が形成される。
【0049】
第1実施形態によれば、シリンジ21の先端に取り付けられたゴム栓41がシリンジ21若しくはルアーロックよりも太い場合であっても、保持装置20は、シリンジ21のゴム栓41を収納可能な空間部46を形成する爪部36により、シリンジ21のゴム栓41を避けて、シリンジ21を回転可能に保持することができる。しかも、保持装置20は、開閉可能な複数の爪を備えた爪部36により、シリンジ21の重心と回転中心とがずれないようにシリンジ21を保持して、シリンジ21の製造誤差を吸収しつつ芯出しを行うことができる。これは、シリンジ21を高速回転させる場合に大切なことである。すなわち、第1実施形態によれば、薬液を収納したシリンジ21の先端に取り付けられたゴム栓41に負荷をかけることなく、シリンジ21を回転可能に正確に保持することが可能となる。さらに、保持装置20は、爪部36をアウターケース31で包むことにより、シリンジ21の半径方向の保持を強固に行うことができる。
【0050】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る保持装置20を示す断面図である。図1〜図4に示す第1実施形態と共通する部分については、図1〜図4に示した構成及び説明を援用するものとする。第1実施形態と相違する部分について主に説明する。なお、第1実施形態と機能が共通する部材については同一の符号を付してある。以降の実施形態についても同様である。
【0051】
第2実施形態の第1実施形態に対する相違は、第1実施形態のアウターケース31に対応したアウターケース31Aが、保持本体22から分離して構成されアウターケース31Aを下方に移動可能な駆動機構によって駆動されるように構成されていることである。そのため、保持本体22とアウターケース31Aとの間には間隔があって、両者は係合されない構成とされる。アウターケース31Aは、爪機構34の外側を摺動可能である。
【0052】
アウターケース31Aの外面には、半径方向の外側に突出する環状の突起51が設けられている。この突起51は、図5(b)に示す板カム54に形成されている溝に保持され得る。板カム54の溝は、アウターケース31Aを予め決められた通りに上下方向に移動させる駆動を行うように形成されている。
【0053】
爪機構34は、アウターケース31Aの内部に配置され当該アウターケース31A内を摺動可能に相対的に上下動させられる円筒形状の内方部材35を備える。爪機構34の内方部材35の外面には、上下2つの環状の係合溝53が形成されている。この係合溝53のいずれかに、アウターケース31Aに設けられたプランジャー52の先端が係合し、アウターケース31Aの位置決めがなされる。プランジャー52は、ばね部材により先端方向に付勢されるボールを備えるものである。
【0054】
図6は、板カム54の配置を示す平面図である。図6に示すように、板カム54は、保持区間と開放区間との切替えに用いられる。
【0055】
第2実施形態では、アウターケース31Aは、突起51及び板カム54によって上下方へ移動可能な円筒状の外方ケース部である。ここで、突起51及び板カム54は駆動機構を構成する。アウターケース31Aは、その内部に配置された爪機構34の内方部材35に対して、その外周面を摺動可能に上下動させられ、プランジャー52及び係合溝53を備える保持機構によって上下方向の所定位置で保持されて停止される。
【0056】
図5(a)は、爪機構34が下降する以前の状態を示しており、爪部36は開口部33から外方に突出している。そして、爪部36は、この突出した状態で、シリンジ21の側方、すなわち半径方向に拡がっている。
【0057】
図5(b)は、ローラ13(図1参照)のカムレール12上の走行状態に応じて、保持本体22及び把持部23が矢印のように下降している状況を示す。
【0058】
このとき、プランジャー52は、上方の係合溝53に係合されてアウターケース31Aと爪機構34とは固定、一体化される。
【0059】
突起51及び板カム54によるアウターケース31Aの下降によって、爪部36の内側に形成された空間部46は、ゴム栓41を完全に収納するに至る。このとき、爪部36に形成されたテーパ48の位置は、肩部44の位置に対応した位置となる。この第2実施形態の場合、爪保持棒37、すなわち爪機構34と、ゴム栓41との接触はない。
【0060】
この状態で、突起51を板カム54に係合させ、アウターケース31Aを更に下降させ得る。但し、突起51と板カム54とは、全周において常時係合されてアウターケース31Aを上下動させる構成であってもよい。この場合には、上記保持機構は必ずしも必要ではない。
【0061】
図5(c)は、更にアウターケース31Aが下降した状態を示す。このとき、プランジャー52と上方の係合溝53との係合は解かれている。
【0062】
アウターケース31Aの下降により、開放されていた爪部36が外方からアウターケース31Aの内面によって締め付けられ、徐々に狭められ、閉じていく。
【0063】
そして、爪部36は完全に狭められて閉じる。爪部36が挟められて閉じることによって、爪部36の爪はシリンジ21の肩部44をしっかりと保持する。
【0064】
この状態で、プランジャー52は、下方の係合溝53に係合する。したがって、この状態で、シリンジ21を回転させることができる。
【0065】
シリンジ21を高速回転させたときに、ゴム栓41には接触による機械的力が一切かからない。このような第2実施形態によっても、上述した実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0066】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る保持装置20を示す断面図である。第3実施形態は第1実施形態に類似しており、図7は、第1実施形態の図4に対応している。
【0067】
第3実施形態の場合、シリンジ21の先端に取り付けられたゴム栓41とシリンジ21との間には段差が無く、また、シリンジ21には、図4に示すような、爪部36によって押さえるべき肩部44が無い。
【0068】
この第3実施形態では、図8に示す爪機構34が用いられる。図7に示すように、爪機構34は、シリンジ21の軸方向に、すなわち下方に伸長した筒状部61を備える。筒状部61は、爪部36よりも半径方向の外側に突出することはなく、アウターケース31が下降したときに、障害なく、アウターケース31内に収納されるものである。そして、この筒状部61には、爪部36の爪に対応する箇所に、爪が通過することのできる矩形の貫通孔62が形成されている。
【0069】
図7(a)は、爪機構34が下降する以前の状態を示しており、爪部36は、貫通孔62を半径方向の外側へ通過した状態で、開口部33から外方に突出している。
【0070】
そして、爪部36は、この突出した状態で、シリンジ21の側方、すなわち半径方向に拡がっている。筒状部61は、シリンジ21の方に向いており、受け入れ可能状態とされる。
【0071】
図7(b)は、ローラ13(図1参照)のカムレール12上の走行状態に応じて、保持本体22及び把持部23が矢印のように下降している状況を示す。筒状部61は、爪機構34と一体形成されているため、爪機構34の下降動作と共に下降し、その内部にシリンジ21を収納する。
【0072】
筒状部61の下端がシリンジ21の基端に形成されたフランジ42に当接すると、筒状部61の下降は止まる。このように筒状部61は、シリンジ21の上方からかぶせられて、フランジ42を押さえる。爪保持棒37はゴム栓41に当接しない。
【0073】
図7(c)は、筒状部61がフランジ42に当接した後に、更に保持本体22が下降することにより、アウターケース31が下降した状態を示す。
【0074】
アウターケース31の下降により、開放されていた爪部36が外方からアウターケース31の内面によって締め付けられ、徐々に狭められ、貫通孔62を半径方向の内側へ通過して閉じていく。そして、爪部36は狭められて完全に閉じる。爪部36が挟められて閉じることによって、爪部36の爪はシリンジ21の胴の当接部分を保持する。
【0075】
したがって、シリンジ21は、筒状部61及び爪部36によって保持されるため、シリンジ21に図4に示すような肩部44が形成されていない場合にあっても、シリンジ21は充分にしっかりと保持されることになる。
【0076】
この状態で、シリンジ21を高速回転させたときに、ゴム栓41には接触による機械的力が一切かからない。このような第3実施形態によっても、上述した実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0077】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係る保持装置20を示す断面図である。第4実施形態は、図7及び図8に示す第3実施形態に類似している。
【0078】
第4実施形態の場合、第3実施形態と同様に、シリンジ21の先端に取り付けられたゴム栓41とシリンジ21との間には段差が無く、また、シリンジ21には、図4に示すような、爪部36によって押さえるべき肩部44が無い。
【0079】
図7に示す第3実施形態では、フランジ42が筒状部61により台座14の方へ押圧されて押さえられるように構成されているが、第4実施形態の場合、図9に示すように2つの台座の組み合わせにより、フランジ42が挟まれて押さえられ、支持される。
【0080】
図10に示すように、保持装置20は、支持部としての台座14の上方側に、上支持部としての上台座71を備えている。台座14と上台座71とは、相互に近接離反移動可能であり、セット構成とされている。上台座71には側方に切込み部72が形成されており、シリンジ21の胴部が矢印で示すように、水平方向に側方から切込み部72に挿入可能とされている。
【0081】
図9(a)は、爪機構34が下降する以前の状態を示しており、爪部36は開口部33から外方に突出している。そして、爪部36は、この突出した状態で、シリンジ21の側方、すなわち半径方向に拡がっている。
【0082】
このとき、シリンジ21の胴部が上台座71の切込み部72を図10に示すように通過して、シリンジ21が台座14上に載置される。なお、シリンジ21が台座14上に載置された後に、上台座71が側方から台座14の上方側に移設されるように構成することも可能である。
【0083】
図9(b)は、アウターケース31が下降し、爪部36によって形成された空間部46にゴム栓41が収納された状態を示す。この状態では、爪機構34はゴム栓41に当接しない。なお、アウターケース31は、保持本体22から分離して構成されアウターケース31を下方に移動可能な駆動機構によって駆動される。
【0084】
図9(c)は、更にアウターケース31を下降させた状態を示す。この状態では、アウターケース31の下降により、開放されていた爪部36が外方からアウターケース31の内面によって締め付けられ、徐々に狭められ、閉じていく。そして、爪部36は狭められて完全に閉じる。爪部36が挟められて閉じることによって、爪部36の爪はシリンジ21の胴の当接部分を保持する。
【0085】
図9(d)は、次いで、台座14を矢印で示すように上方に移動させ、フランジ42を台座14と上台座71との間に挟み込んで押さえ、支持した状態を示す。なお、上台座71を下方に移動させて、フランジ42を台座14と上台座71との間に挟み込むように構成することも可能である。
【0086】
したがって、シリンジ21は、その胴部が爪部36によって、そしてフランジ42が台座14及び上台座71のセットによって、挟み込み押さえられて支持される。このため、シリンジ21に図4に示すような肩部44が形成されていない場合にあっても、シリンジ21は充分にしっかりと保持されることになる。
【0087】
この状態で、シリンジ21を高速回転させたときに、ゴム栓41には接触による機械的力が一切かからない。このような第4実施形態によっても、上述した実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0088】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせることを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 検査ロータ
2 供給スターホイル
3 搬出スターホイル
14 台座(支持部)
20 保持装置
21 シリンジ(薬液容器)
22 保持本体
23 把持部
31 アウターケース
31A アウターケース(外方ケース部)
33 開口部
34 爪機構
35 内方部材
36 爪部
41 ゴム栓(栓部材)
42 フランジ
44 肩部
46 空間部
51 突起(駆動機構)
52 プランジャー(保持機構)
53 係合溝(保持機構)
54 板カム(駆動機構)
61 筒状部
62 貫通孔
71 上台座(上支持部)
72 切込み部
100 異物検査装置
302 モータ制御部(回転駆動制御部)
303 モータユニット(回転駆動装置)
304 撮像装置
306 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を内部に収納し先端に栓部材が取り付けられた薬液容器を回転可能に保持する薬液容器の保持装置であって、
上下方向に移動可能な保持本体と、
前記保持本体に回転可能に連結され前記薬液容器を把持するための把持部と、
前記薬液容器を回転可能に下側から支持する支持部とを有し、
前記把持部は、
前記薬液容器に臨む側が開放された開口部を備えたアウターケースと、
前記アウターケース内に配置され前記薬液容器を保持するための爪機構とを有し、
前記爪機構は、前記開口部から外方に突出した状態のときに前記アウターケースの半径方向の外側に拡がると共に前記アウターケースの内方に収納された状態のときに前記アウターケースの内面によって前記半径方向の内側に狭められる開閉可能な複数の爪を備えた爪部を有し、
前記アウターケースが下方に移動したときに、前記爪部が前記開口部から前記アウターケースの内方に収納させられて前記半径方向の内側に狭められることにより、前記爪部の内側に形成された空間部に前記薬液容器の栓部材が収納されると共に、前記爪部が下方に向けて前記栓部材を越えた位置にある前記薬液容器の部位を保持することを特徴とする薬液容器の保持装置。
【請求項2】
前記栓部材を越えた位置にある前記薬液容器の部位は、前記薬液容器に形成された肩部であることを特徴とする請求項1に記載の薬液容器の保持装置。
【請求項3】
前記保持本体の自重によって前記アウターケースが下方に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液容器の保持装置。
【請求項4】
前記保持本体から分離して構成され前記アウターケースを下方に移動可能な駆動機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液容器の保持装置。
【請求項5】
前記アウターケースは、前記駆動機構によって下方に移動可能な円筒状の外方ケース部であり、前記爪機構は、前記外方ケース部の内部に配置され当該外方ケース部内を摺動可能に相対的に上下動させられる内方部材を備え、
前記薬液容器の保持装置は、前記外方ケース部を前記内方部材に対して上下方向の所定位置で保持するための保持機構を有することを特徴とする請求項4に記載の薬液容器の保持装置。
【請求項6】
前記爪機構は、前記薬液容器の軸方向に伸長し当該薬液容器の基端に形成されたフランジに当接し得る筒状部を有し、当該筒状部の側面に、前記爪部の爪が通過可能な貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬液容器の保持装置。
【請求項7】
前記薬液容器を側方から挿入するための切込み部が形成された上支持部を有し、
前記上支持部および前記支持部は、相互に近接離反移動可能であり、前記薬液容器の基端に形成されたフランジを間に挟み込んで前記薬液容器を支持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の薬液容器の保持装置。
【請求項8】
薬液を内部に収納し先端に栓部材が取り付けられた薬液容器を回転可能に保持する薬液容器の保持方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬液容器の保持装置を用いて、前記薬液容器の先端に取り付けられた前記栓部材を前記アウターケース内に収納し、前記爪機構と前記栓部材との間に間隙を形成した状態で前記薬液容器を保持することを特徴とする薬液容器の保持方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬液容器の保持装置と、
前記保持装置により保持された前記薬液容器を回転駆動させるための回転駆動装置と、
前記回転駆動装置の動作を制御する回転駆動制御部と、
回転中又は回転終了後の前記薬液容器を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置により取得された画像に基づいて前記薬液中の異物の検出を行う画像処理部と、
を有することを特徴とする異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−359(P2012−359A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140203(P2010−140203)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】