説明

虚像表示装置

【課題】輝度斑の発生を抑え照明光の利用効率を高めた虚像表示装置を提供すること。
【解決手段】光学部材14が角度変換部23から射出される画像光の指向性に関して非一様な分布、具体的には縦方向の周辺で傾斜角εが大きくなるような分布を形成するので、液晶表示デバイス32のY方向の位置によって液晶表示デバイス32から射出され観察者の眼EYに有効に取り込まれる光束の射出角度μが大きく異なっている場合であっても、このような光束取込みの角度特性に対応するような指向性の画像光を形成することができ、輝度斑の発生を抑えて照明光の利用効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの映像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。このような虚像表示装置用の導光板として、全反射を利用して映像光を導くとともに、導光板の主面に対して所定角度をなして互いに平行に配置される複数の部分反射面にて映像光を反射させ導光板から外部に取り出すことによって、映像光を観察者の網膜に到達させるものが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−536102号公報
【特許文献2】特開2004−157520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような虚像表示装置において、例えば表示素子の上下部分からの光束は、画角に対応する大きな傾斜角で観察者の瞳に入射させる必要があり、表示素子からも比較的大きな傾斜角で射出させることになる。なお、表示素子の中心からの光束は、正面から傾斜させることなく観察者の瞳に入射させるので、表示素子からも正面方向に射出させることになる。以上において、表示素子が例えば照明装置と液晶パネルとを組み合わせたものである場合、照明装置の配光分布は一般に液晶パネルに垂直な方向を強度ピークとして画面内で略一様であるから、照明光の傾斜が少ない画像の中心部分では輝度が高くても、照明光の傾斜が大きくなる画像の上下部分では輝度が低下し、画像の輝度斑の原因となる。この場合、画面の上下部分で照明光が有効に活用されていないことになり、照明光の利用効率が低下しているともいえる。
【0005】
そこで、本発明は、輝度斑の発生を抑え照明光の利用効率を高めた虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出される画像光の指向性に関して非一様な分布を形成する光学部材と、(c)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(d1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、(d2)対向して延びる第1及び第2の全反射面を有し光入射部から取り込まれた画像光を第1及び第2の全反射面での全反射により導く導光部と、(d3)所定の配列方向に配列される複数の反射面を有し導光部を経て入射する画像光を複数の反射面での反射により角度を変換して外部へ取出し可能にする角度変換部と、(d4)角度変換部を経た画像光を外部に射出する光射出部とを有する(d)導光板とを備える。ここで、画像光の指向性とは、画像表示装置から射出される画像光の輝度中心が特定の方向(具体的には特定の傾斜角及び方位角)に偏っていることを意味する。
【0007】
上記虚像表示装置では、光学部材が画像表示装置から射出される画像光の指向性に関して非一様な分布を形成するので、画像表示装置の位置によって画像表示装置から射出され観察者の眼に有効に取り込まれる光束の角度が大きく異なっている場合であっても、このような光束取込みの角度特性に対応するような指向性を有する画像光を形成することができ、輝度斑の発生を抑えて照明光の利用効率を高めることができる。なお、上記のような光束取込みの角度特性は、投射光学系や導光板の仕様に依存して生じるものであり、例えば画像表示装置の表示領域の中心側よりも周辺側で大きくなる傾向がある。
【0008】
本発明の具体的な側面では、上記虚像表示装置において、光学部材が画像表示装置の位置に応じて異なる角度に光束を屈曲させる。この場合、位置に応じた照明光や画像光の屈曲によって角度特性を調整することができ、光利用効率を高めることができる。
【0009】
本発明の別の側面では、光学部材が導光板の角度変換部の上記所定の配列方向に対応する第1方向に垂直な第2方向に関して、画像表示装置の周辺部から射出する画像光に対して上記非一様な分布として外側に指向性を与える偏向素子である。この場合、第1方向すなわち導光板の導光方向に垂直な第2方向に関する光束取込みの角度特性が画像表示装置の表示領域の中心側よりも周辺側で傾斜角がより大きくなるようなものになっていても、偏向素子によって与えられるような外向きの指向性によって第2方向の各位置で明るい画像の観察が可能になり、第2方向に関して輝度斑の発生を抑えることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、導光板の角度変換部の上記所定の配列方向に対応する第1方向に垂直な第2方向に関して、画像表示装置の中心から画像表示装置の周辺部に向かうほど画像光を外側に偏向させる偏向面を有する。この場合、第2方向に関する光束取込みの角度特性が画像表示装置の表示領域の中心から周辺部に向かうほど傾斜角が増加するものになっていても、かかる角度特性が光学部材又は偏向面によって補償され、第2方向の各位置で明るい画像の観察が可能になり、第2方向に関して輝度斑の発生を抑えることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、画像表示装置が、発光部と発光部からの光を制御して画像光を形成する画像光形成部とを備える。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、画像表示装置が、発光輝度の制御によって画像光を形成する画像光形成部を備え、光学部材が、画像光形成部に内蔵又は外付けされている。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、照明装置が、発光部と発光部からの光束を面光源状に広げるバックライト導光部とを有し、光学部材が、バックライト導光部と画像光形成部との間に配置される。この場合、バックライト導光部の光射出面から射出される照明光の配光特性が一様であっても、光学部材によって、画像光形成部に入射させる照明光の配光特性を所望の状態に調整することができ、画像表示装置から射出される画像光の指向性を上記光束取込みの角度特性に対応したものとすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、プリズムアレイシート、フレネルレンズ、及び回折格子の少なくとも1つである。この場合、光学部材を薄型にすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、バックライト導光部に貼り付けられてバックライト導光部と一体化されている。この場合、光学部材の画像表示装置内への組み付けが容易となる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、バックライト導光部からの照明光を、最も輝度が高い主方向(輝度中心の方向)が互いに異なる状態となるように通過させる複数の領域を有する。この場合、照明光の配光特性を複数の領域ごとに適切な状態とすることができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、複数の領域に対応して形状が互いに異なる複数のプリズムアレイシートを有する。この場合、各領域でプリズムアレイシートを構成するプリズムの楔角を調整することで照明光の配光特性を目的のものに調整することができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、画像光形成部が、光透過型の液晶表示素子であり、光学部材は、液晶表示素子の光入射側及び光射出側の少なくとも一方に近接して配置される。この場合、バックライト導光部の光射出面から射出される照明光の配光特性が一様であっても、光学部材によって、画像光形成部に入射させる照明光の方向や、画像光形成部から射出させる画像光の方向を調整することができる。つまり、画像表示装置から射出される画像光の指向性を上記光束取込みの角度特性に対応したものとすることができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、液晶表示素子の画素に対応して設けられるブレーズ格子である。この場合、液晶表示素子の画素単位で画像光の射出方向を調整することができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、光学部材が、液晶表示素子の画素に対応して設けられるマイクロレンズアレイである。この場合、液晶表示素子の画素単位で画像光の射出方向を調整することができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面では、指向性を与える方向に関するマイクロレンズアレイのピッチが、液晶表示素子の画素のピッチと異なる。この場合、マイクロレンズアレイの光軸を画素中心から徐々にずらすようにして画像光の射出方向の傾斜を徐々に増減させることができる。
【0022】
本発明のさらに別の側面では、指向性を与える方向に関するマイクロレンズアレイのピッチが、液晶表示素子の画素のピッチよりも大きい。この場合、画面の周辺部に向けて画像光の射出方向の傾斜を徐々に増加させることができる。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、導光板の角度変換部が、第1の反射面と第1の反射面に対して所定角度をなす第2の反射面とをそれぞれ有するとともに所定の配列方向に配列される複数の反射ユニットを有し、各反射ユニットは、第1の反射面により導光部を経て入射する画像光を反射するとともに第2の反射面により第1の反射面で反射された画像光をさらに反射することにより、画像光の光路を折り曲げて外部へ取出し可能にする。この場合、導光部を伝搬する大きな反射角の画像光を角度変換部の奥側で取り出し、導光部を伝搬する小さな反射角の画像光を角度変換部の入口側で取り出すことができるので、角度変換部による輝度低下や輝度斑を確実に抑えた高品位の画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は、第1実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光板の正面図及び平面図である。
【図2】(A)は、縦の第2方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第1方向に関する光路を展開した概念図である。
【図3】(A)は、液晶表示デバイスから射出される画像光の射出角度を説明する側面図であり、(B)は、縦方向に関する光束取込みの角度特性を概念的に説明するグラフである。
【図4】(A)〜(D)は、画像光の指向性を調整するための光学部材を説明する平面図、側面図、背面図、及び一部破断斜視図である。
【図5】(A)は、光学部材14の入口側における配光特性を示し、(B)は、光学部材14の出口側における配光特性を示す。
【図6】(A)は、光学部材の構造及び機能を説明する一部拡大側面図であり、(B)〜(D)は、光学部材の第2領域の各部分領域から射出される際における照明光の傾斜角又配向角度の状態を説明する斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は、角度変換部の構造及び角度変換部における画像光の光路について説明するための模式的な図である。
【図8】(A)、(C)は、第1実施形態の虚像表示装置によって形成される像の2次元輝度分布及び断面輝度分布を説明する図であり、(B)、(D)は、比較例の虚像表示装置によって形成される像の2次元輝度分布及び断面輝度分布を説明する図である。
【図9】第2実施形態に係る虚像表示装置に組み込まれる液晶表示デバイス等を説明する図である。
【図10】第2実施形態の変形例を説明する図である。
【図11】第3実施形態に係る虚像表示装置に組み込まれる液晶表示デバイス等を説明する図である。
【図12】第3実施形態の変形例を説明する図である。
【図13】第4実施形態に係る虚像表示装置を説明する図である。
【図14】変形例の虚像表示装置の一部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0026】
〔A.導光板及び虚像表示装置の構造〕
図1(A)に示す本実施形態に係る虚像表示装置100は、ヘッドマウントディスプレイに適用されるものであり、画像形成装置10と、導光板20とを一組として備える。なお、図1(A)は、図1(B)に示す導光板20のA−A断面に対応する。
【0027】
虚像表示装置100は、観察者に虚像による画像光を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものである。画像形成装置10と導光板20とは、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは右眼用のみを示し、左眼用については図示を省略している。なお、虚像表示装置100は、全体としては、例えば一般の眼鏡のような外観(不図示)を有するものとなっている。
【0028】
図1(A)に示すように、画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12と、光学部材14とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光を射出する照明装置31と、画像光形成部(具体的には透過型の空間光変調装置)である液晶表示デバイス32とを有する。液晶表示デバイス(画像光形成部)32は、照明装置31からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。光学部材14は、照明装置31から射出される照明光の配光特性を、利用効率を考慮した適切なものに修正するための偏向素子である。光学部材(偏向素子)14は、液晶表示デバイス32から射出される画像光の指向性を、液晶表示デバイス32から射出される画像光が結果的に観察者の眼EYに入射するような実効的な射出角度範囲(後述する光束取込みの角度特性)に対応するものにしている。
【0029】
図1(A)〜1(C)に示すように、導光板20は、導光板本体部20aと、入射光折曲部21と、画像取出部である角度変換部23とを備える。導光板20は、画像形成装置10で形成された画像光を虚像光として観察者の眼EYに向けて射出し、画像として認識させるものである。
【0030】
導光板20の全体的な外観は、図中YZ面に平行に延びる平板である導光板本体部20aによって形成されている。また、導光板20は、長手方向の一端において導光板本体部20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部23を有し、長手方向の他端において導光板本体部20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する入射光折曲部21を有する構造となっている。
【0031】
導光板本体部20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、YZ面に平行で画像形成装置10に対向する表側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射部である光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出部である光射出面OSとを有している。導光板本体部20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層21aが形成されている。ここで、ミラー層21aは、斜面RSと協働することにより、光入射面(光入射部)ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部21として機能する。また、導光板本体部20aにおいて、光射出面(光射出部)OSの裏側の平面に沿って微細構造である角度変換部23が形成されている。
【0032】
導光板本体部20aの光入射面ISに対向し傾斜して配置されるミラー層21aとしての入射光折曲部21は、導光板本体部20aの上記斜面RS上にアルミ蒸着等の成膜を施すことにより形成され、入射光を反射し光路を略直交方向に近い所定方向に折り曲げるための反射面として機能する。つまり、入射光折曲部21は、光入射面ISから入射し全体として−X方向に向かう画像光を、全体として+X方向に偏った+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光板本体部20a内に確実に結合させる。
【0033】
また、導光板本体部20aは、入口側の入射光折曲部21から奥側の角度変換部23にかけて、入射光折曲部21を介して内部に入射させた画像光を角度変換部23に導くための導光部22を有している。
【0034】
導光部22は、平板状の導光板本体部20aの主面であり互いに対向しYZ面に対して平行に延びる2平面として、入射光折曲部21で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1の全反射面22aと第2の全反射面22bとを有している。ここでは、第1の全反射面22aが画像形成装置10から遠い裏側にあるものとし、第2の全反射面22bが画像形成装置10に近い表側にあるものとする。この場合、第2の全反射面22bは、光入射面IS及び光射出面OSと共通の面部分となっている。入射光折曲部21で反射された画像光は、まず、第2の全反射面22bに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第1の全反射面22aに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光板20の奥側即ち角度変換部23を設けた+Z側に導かれる。
【0035】
導光板本体部20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部23は、導光部22の奥側(+Z側)において、第1の全反射面22aの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部23は、導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部23は、画像光の角度を変換している。ここでは、角度変換部23に最初に入射する画像光が虚像光としての取出し対象であるものとする。角度変換部23の詳しい構造については、図7(A)等により後述する。
【0036】
なお、導光板本体部20aに用いる透明樹脂材料の屈折率nは、1.5以上の高屈折率材料であるものとする。導光板20に比較的屈折率の高い透明樹脂材料を用いることで、導光板20内部で画像光を導光させやすくなり、かつ、導光板20内部での画像光の画角を比較的小さくすることができる。
【0037】
導光板20が以上のような構造を有することから、画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光板20に入射した画像光は、入射光折曲部21で一様に反射されて折り曲げられ、導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて繰り返し全反射されて光軸OAに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部23において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
【0038】
〔B.画像光の光路の概要〕
図2(A)に示すように、第2方向D2に沿った縦断面すなわちXY面(展開後のX'Y'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中実線で示す表示領域32bの中央から射出される成分を画像光FL1とし、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光FL2とする。表示領域32bの中央から射出された画像光FL1は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸OA'に沿って、導光板20の入射光折曲部21、導光板本体部20a、及び角度変換部23を通って、観察者の眼EYに対して平行光束状態で正面方向から入射する。一方、表示領域32bの上端側(+Y側)から射出された画像光FL2は、投射光学系12によって平行光束化され、一旦展開された光軸OA'に対して高さHが最も増した状態となった後に光軸OA'に対して角度νで全体として収束するように、導光板20の入射光折曲部21、導光板本体部20a、及び角度変換部23を通って、観察者の眼EYに対して平行光束状態で角度ν'の方向から傾いて入射する。なお、図示を省略しているが、表示領域32bの下端側(−Y側)から射出された画像光も、投射光学系12によって平行光束化され、角度νで全体として収束するように導光板20を通って、角度ν'の方向から観察者の眼EYに傾いて入射する。ここで、眼EYに入射する画像光の上下の傾きを加算した角度2×ν'は、縦方向の画角に相当する。以上において、表示領域32bの中央からの画像光FL1については、光軸OA'に沿って進むものが導光板20に効率的に結合され眼EYに入射することで有効に活用される。一方、表示領域32bの上下端からの画像光FL2については、光軸OA'に対して外側に大きく傾いた射出角度μの方向に進むものが導光板20に効率的に結合され眼EYに入射することで有効に活用される。
【0039】
図3(A)を参照して、液晶表示デバイス32の表示領域32bのY方向の位置と画像光の射出角度との関係(光束取込みの角度特性)について説明する。液晶表示デバイス32の中央から徐々に離れて縦方向の射出位置(縦方向の物体高)yが大きくなると、これに応じて表示領域32bからの画像光FLの射出角度μが徐々に大きくなる。結果的に、詳細な説明を省略するが、観察者の眼EYに入射する画像光FLの角度も大きくなる。図3(B)は、液晶表示デバイス32から射出される画像光によって虚像を形成する際の縦方向の角度特性、すなわち虚像表示装置100における光束取込みの角度特性を例示するグラフである。グラフにおいて、横軸は液晶表示デバイス32における縦方向の射出位置yを表し、縦軸は液晶表示デバイス32からの画像光のうち眼EYに入射する実効的な画像光FLの射出角度μを表す。ここで、射出角度μは、液晶表示デバイス32の法線に対して縦方向上側すなわち+y向きの傾斜角を示している。グラフからも明らかなように、液晶表示デバイス32の位置によって液晶表示デバイス32から射出され観察者の眼EYに有効に取り込まれる光束の角度が大きく異なっており、より具体的には、有効活用される画像光FLの射出角度μは、液晶表示デバイス32の表示領域32bの中心側よりも周辺部側で大きくなる傾向がある。つまり、射出位置yが大きくなるほど、導光板20を介して眼EYに入射する画像光FLの液晶表示デバイス32からの射出角度が外側に傾いて大きくなっており、射出位置yの最大値すなわち表示領域32bの上端(周辺部)で、画像光FLの射出角度の傾きが最大となっている。以上の状況から、縦方向の結像に関しては、液晶表示デバイス32から射出された画像光FLに対して図3(B)に示すような光束取込みの角度特性に対応する指向性を持たせることで、液晶表示デバイス32から導光板20延いては眼EYへの光結合効率を高めることができ、輝度斑(輝度ムラ)の発生を抑え照明光の利用効率を高めることができると考えられる。なお、以上のような現象(光束取込みの角度特性の影響)は、虚像の画角が大きくなるにつれて顕著になるので、虚像の画角を大きくするためには、液晶表示デバイス32から射出される画像光FLに適切な指向性を持たせることが重要になる。
【0040】
図2(B)に示すように、第1方向D1に沿った横断面すなわちYZ面(展開後のY'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中点線で示す表示領域32bの中央から射出される成分を画像光GL1とし、図中一点鎖線で示す表示領域32bの右端側(−Z側)から射出される成分を画像光GL2とする。表示領域32bの中央から射出された画像光GL1は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸OA'に沿って、導光板20の入射光折曲部21、導光板本体部20a、及び角度変換部23を通って、観察者の眼EYに対して平行光束状態で正面方向から入射する。一方、表示領域32bの右端側(−Z側)から射出された画像光GL2は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸OA'に対して角度θで全体として収束、交差、及び発散後に最終的に収束するように導光板20等を通って、観察者の眼EYに対して平行光束状態で角度θ'の方向から傾いて入射する。ここで、角度変換部23は、画像光GL2の傾斜の角度θをZ'方向に関して反転させるが角度θの大きさを維持する役割を有している。なお、図示を省略しているが、表示領域32bの左端側(+Z側)から射出された画像光も、投射光学系12によって平行光束化され、角度θで全体として最終的に収束するように、導光板20を通って、角度θ'の方向から観察者の眼EYに傾いて入射する。ここで、眼EYに入射する画像光の左右の傾きを加算した角度2×θ'は、横方向の画角に相当する。以上において、表示領域32bの中央からの画像光GL1については、光軸OA'に沿って進むものが導光板20に効率的に結合され眼EYに入射することで有効に活用される。また、表示領域32bの左右端からの画像光FL2については、光軸OA'に略沿って進むものが導光板20に効率的に結合され眼EYに入射することで有効に活用される。つまり、横方向に関して、液晶表示デバイス32から射出される画像光によって虚像を形成する際の角度特性、すなわち虚像表示装置100における光束取込みの角度特性は、比較的一様であり、図3(B)のように液晶表示デバイス32の表示領域32bの中心側よりも周辺側で光束の角度が大きくなるといった顕著な傾向が生じにくい。よって、横方向の結像に関しては、液晶表示デバイス32から射出された画像光FLに特に指向性を持たせなくても、液晶表示デバイス32から導光板20延いては眼EYへの光結合効率を比較的高く維持することができると考えられる。
【0041】
〔C.照明装置、光学部材等〕
以下、画像表示装置11に設けた照明装置31や、画像表示装置11に付随する光学部材14の構造等について説明する。
【0042】
図4(A)〜4(D)に示すように、照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光SLを発生する発光部としての光源31aと、光源(発光部)31aからの光SLを拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを備える。
【0043】
光源(発光部)31aは、矩形板状のバックライト導光部31bの一側面である光取込面IPに沿って延びており、液晶表示デバイス32を照明するのに十分な光量の光を発生するとともに、これをバックライト導光部31bに向けて射出する。光源31aとしては、例えば細長い蛍光管や複数のLED光源を配列するもの等が適用できる。
【0044】
バックライト導光部31bは、全体として平板状の部材であり、液晶表示デバイス32の背後に近接してこれに平行に配設されている。バックライト導光部31bは、平板部材31eと反射フィルム31fと拡散フィルム31gとを有し、反射フィルム31fと拡散フィルム31gとの間に平板部材31eを挟んだ構造を有する。バックライト導光部31bは、光源31aからの光SLを光取込面IPを介して内部に入射させ、入射した光を反射により拡散するように導き、拡散フィルム31g及び射出面EPを介して外部の液晶表示デバイス32に向けて射出させることで、液晶表示デバイス32全体を背後から照明する照明光を形成する。射出面EPから射出される照明光は、バックライト導光部31bによって均一化されており、図5(A)のグラフに示すように、一般的な配光特性又は配光分布を有するものとなっている。グラフにおいて、横軸の右半分はバックライト導光部31bから射出される照明光のY方向の配向角度Eを表し、横軸の左半分はバックライト導光部31bから射出される照明光のZ方向の配向角度E'を表し、縦軸は各配向角度における照明光の輝度を表している。バックライト導光部31bの射出面EPから射出される照明光は、射出面EPに垂直な光軸AX(X方向)方向に輝度中心(強度ピーク)を有し、光軸AXに対して傾斜角すなわち配向角度E,E'が大きくなるほど低下する。
【0045】
バックライト導光部31bと液晶表示デバイス32との間に配置されるシート状の光学部材14は、バックライト導光部31bの射出面EPに貼り付けられて、光学部材14と一体化されている。光学部材14は、バックライト導光部31bの射出面EPから射出される照明光の配光特性を変化させる機能を有する。すなわち、光学部材14は、照明光の配光特性を調整することにより、液晶表示デバイス32から射出される画像光の指向性を、図3(B)等に示す虚像表示装置100の光束取込みの角度特性に対応したものとしている。つまり、図3(A)を参照して説明したように、液晶表示デバイス32の表示領域32bにおいて縦方向の射出位置yが大きくなるほど外側(+y側)に傾いた光束が投射光学系12や導光板20を通過して観察者の眼EYに有効に取り込まれることから、詳細は後述するが、このような光束取込みの角度特性に整合するように、液晶表示デバイス32から射出される画像光の指向性の分布を調整すること、すなわち光学部材14を用いて照明光の配光分布を調整することによって、照明光や画像光の効率的な利用が可能になる。
【0046】
光学部材14は、縦のY方向に例えば3分割されたプリズムアレイシートであり、横のZ方向に細長い帯状の第1〜第3領域A1,A2,A3を有し、その射出側面は、断面鋸歯状で階段状の偏向面14aとなっている。第1領域A1は、平坦なシートであり、中央に配置され、第2領域A2は、プリズムアレイシートであり、上側(+Y側)に配置され、第3領域A3は、プリズムアレイシートであり、下側(−Y側)に配置される。このうち、第1領域A1は、層状又は平板状であり照明光を略そのまま通過させるが、第2領域A2は、横方向(Z方向)に延びるプリズムアレイを有しており、バックライト導光部31bから入射した照明光を外側(+Y側)に屈曲させ、第3及領域A3も、横方向(Z方向)に延びるプリズムアレイを有しており、バックライト導光部31bから入射した照明光を外側(−Y側)に屈曲させる。
【0047】
図6(A)に示すように、光学部材14の第2領域A2は、上側(+Y側)に向かって楔角ωが徐々に増加する非一様なプリズムアレイを有しており、バックライト導光部31bから一様に射出された照明光ILは、第2領域A2の偏向面14aを通過する際に屈曲による傾斜角εを与えられて図1の液晶表示デバイス32に入射する。この傾斜角εは、照明光ILの配光分布の主方向に相当するものであり、第2領域A2を構成する各領域部分A21,A22,A23で例示するように、下側よりも上側で徐々に大きくなっている(図6(B)〜6(D)参照)。つまり、第2領域A2を通過した後の配光分布又は配光特性は、図5(B)に破線で示すように光軸AXから離れて上側(+Y側)の位置ほど(つまり上端の領域部分(周辺部)A21に向かうほど)、主方向(輝度中心の方向)の角度が増加するような指向性を有するものとなっている。一方、第1領域A1は、プリズムアレイを有しておらず、バックライト導光部31bから射出された照明光ILは、そのままの配光分布又は配光特性で液晶表示デバイス32に入射する。なお、図示を省略するが、第3領域A3は、第2領域A2と同様の構造を有するが上下反転している。つまり、第3領域A3は、下側(−Y側)に向かって楔角ωが徐々に増加する非一様なプリズムアレイを有しており、バックライト導光部31bから一様に射出された照明光ILは、第3領域A3を通過する際に上側よりも下側で大きい傾斜角εを与えられて液晶表示デバイス32に入射する。
【0048】
以上において、光学部材14による照明光ILの屈曲すなわち偏向は、縦方向に関して中心から周辺部に向かうほど照明光ILをより外側に偏向させるようなもの、すなわち照明光ILを全体として外側に発散させるようなものとなっている。つまり、光学部材14による照明光ILの縦方向の屈曲に関する傾斜角εの分布が図3(B)に示すような光束取込みの角度特性に対応するようなものとなっている。これにより、液晶表示デバイス32は、これから射出されて虚像形成に有効に活用される画像光FLの射出角度μに対応する傾斜角εの照明光ILによって照明されることになる。つまり、液晶表示デバイス32からの実効的な画像光FLの輝度中心に相当する射出角度μと、照明装置31からの照明光ILの輝度中心に相当する傾斜角εとを略一致させることが可能になる。このように、液晶表示デバイス32の各位置から射出され有効活用される画像光FLを高輝度成分とすることで、照明光の無駄がなくなり、虚像の輝度斑を低減することができる。
【0049】
以上において、第2領域A2のうち第1領域A1に近い部分では、楔角ωをゼロに近づけることで、両領域A1,A2のつなぎ目で輝度斑が生じることを防止できる。また、第1領域A1にも、プリズムアレイを設けることで、縦方向の中央周辺で輝度斑が発生することを確実に防止でき光利用効率をさらに高めることができる。
【0050】
以上では、第2及び第3領域A2,A3で、楔角ωが連続的に変化するとしたが、楔角ωを段階的に変化させることもできる。つまり、両領域A2,A3において、Y方向にさらに複数の分割領域を形成し、各分割領域内で楔角ωを一定にするとともに、隣接する分割領域間で互いに楔角ωが異なるものとできる。
【0051】
以上では、第2及び第3領域A2,A3にプリズムアレイを形成しているが、プリズムアレイをこれと同様の機能を有するフレネルレンズや回折格子に置き換えることがきる。例えばフレネルレンズを用いる場合、第2及び第3領域A2,A3において、光軸AXを通ってZ軸に平行に延びる母線に沿ったシリンドリカル型のフレネルレンズを形成することになる。周辺で傾斜角を大きくするためには、フレネルレンズの屈折面を凹又は負の屈折力を有するものとする。このようなフレネルレンズを用いることにより、傾斜角の増加すなわち偏向方向の変化を滑らかなものとできる。また、回折格子を用いる場合、第2及び第3領域A2,A3において、光軸AXを基準として±Y側で位置に応じて回折角度が漸次大きくなるようにする。このような回折格子を用いることにより、光学部材14を極めて薄くて軽量にできる。
【0052】
〔D.横方向に関する画像光の光路〕
図1(A)に示すように、液晶表示デバイス32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL1とし、射出面32aの紙面右側(−Z側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL2とし、射出面32aの紙面左側(+Z側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL3とする。
【0053】
投射光学系12を経た各画像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光板20の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL1,GL2,GL3のうち、液晶表示デバイス32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL1は、平行光束として入射光折曲部21で反射された後、標準反射角γで導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。その後、画像光GL1は、標準反射角γを保った状態で、第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射を繰り返す。画像光GL1は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部23の中央部23kに入射する。画像光GL1は、この中央部23kにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから光射出面OSを含むYZ面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(−Z側)から射出された画像光GL2は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し入射光折曲部21で反射された後、最大反射角γで導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。画像光GL2は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部23のうち奥側(+Z側)の周辺部23hにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、入射光折曲部21側に戻されるようなものになっており、+Z軸に対して鈍角となる。液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(+Z側)から射出された画像光GL3は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し入射光折曲部21で反射された後、最小反射角γで導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。画像光GL3は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部23のうち入口側(−Z側)の周辺部23mにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、入射光折曲部21側から離れるようなものになっており、+Z軸に対して鋭角となる。なお、第1及び第2の全反射面22a,22bでの全反射による光の反射効率は非常に高いものであるため、上記のように画像光GL1,GL2,GL3間で反射回数が異なっていても、これによって輝度ムラが生じることは殆どなく、視認上画像ムラ等の影響を感じることはない。
【0054】
ここで、画像光GL2の反射角γはこの導光板20仕様上の最大値になっており、画像光GL3の反射角γはこの導光板20仕様上の最小値になっている。よって、他の有効な画像光の導光板20内における伝搬の全反射角は、これらの反射角γ,γの間の値となる。このような反射角の範囲即ち最大反射角γと最小反射角γとの差は、画像形成装置10側における光学設計上の横画角即ちZ方向についての画角に相当するものとなっている。
【0055】
入射光折曲部21及び導光部22に用いられる透明樹脂材料の屈折率nの値の一例として、n=1.5とすると、その臨界角γの値はγ≒41.8°となり、n=1.6とすると、その臨界角γの値はγ≒38.7°となる。各画像光GL1,GL2,GL3の反射角γ,γ,γのうち最小である反射角γを上記臨界角γよりも大きな値とすることで、必要な画像光について導光部22内における全反射条件を満たすものにできる。
【0056】
〔E.角度変換部〕
以下、図7(A)〜7(C)等を参照して、角度変換部23の構造及び角度変換部23による画像光の光路の折曲げについて詳細に説明する。
【0057】
まず、角度変換部23の構造について説明する。角度変換部23は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット23cで構成される。つまり、角度変換部23は、Y方向に延びる細長い反射ユニット23cを所定のピッチPTで導光部22の延びる第1方向即ちZ方向に多数配列させることで構成されている。各反射ユニット23cは、奥側即ち光路下流側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面23aと、入口側即ち光路上流側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面23bとを1組のものとして有する。これらのうち、少なくとも第2の反射面23bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。また、各反射ユニット23cは、隣接する第1及び第2の反射面23a,23bにより、XZ断面視においてV字又は楔状となっている。より具体的には、第1及び第2の反射面23a,23bは、図1(A)等に示す第1の全反射面22aに平行で反射ユニット23cの配列される配列方向であるZ方向に対して垂直に延びる方向即ちY方向を長手方向として、線状に延びている。さらに、第1及び第2の反射面23a,23bは、当該長手方向を軸として、第1の全反射面22aに対してそれぞれ異なる角度(即ちYZ面に対してそれぞれ異なる角度)で傾斜している。結果的に、第1の反射面23aは、周期的に繰り返して配列され互いに平行に延び、第2の反射面23bも、周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。図2(A)等に示す具体例において、各第1の反射面23aは、第1の全反射面22aに対して略垂直な方向(X方向)に沿って延びているものとしている。また、各第2の反射面23bは、対応する第1の反射面23aに対して反時計方向に所定角度(相対角度)αをなす方向に延びている。ここで、相対角度αは、具体例において例えば54.7°となっているものとする。
【0058】
図7(A)等に示す具体例において、第1の反射面23aは、第1の全反射面22aに対して略垂直であるものとしているが、第1の反射面23aの方向は、導光板20の仕様に応じて適宜調整されるものであり、第1の全反射面22aに対して−Z方向を基準として時計回りに例えば80°から100°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。また、第2の反射面23bの方向は、第1の全反射面22aに対して−Z方向を基準として時計回りに例えば30°から40°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。結果的に、第2の反射面23bは、第1の反射面23aに対して40°から70°までの範囲内でいずれかの相対角度を有するものとなる。
【0059】
なお、一対の反射面23a,23bを含む反射ユニット23cは、例えば下地のV溝の一方の斜面にアルミ蒸着等の成膜を施すことにより形成され、その後の樹脂の充填によって導光板20内に埋め込まれる。
【0060】
以下、角度変換部23による画像光の光路の折曲げについて詳しく説明する。ここでは、画像光のうち、角度変換部23の両端側に入射する画像光GL2及び画像光GL3について示し、他の光路については、これらと同様であるので図示等を省略する。
【0061】
まず、図7(A)及び7(B)に示すように、画像光のうち全反射角度の最も大きい反射角γで導かれた画像光GL2は、角度変換部23のうち光入射面IS(図1(A)参照)から最も遠い+Z側の周辺部23hに1つ以上配置された反射ユニット23cに入射する。当該反射ユニット23cにおいて、画像光GL2は、最初に奥側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、入口側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL2は、他の反射ユニット23cを経ることなく、図1(A)等に示す光射出面OSから射出される。つまり、画像光GL2は、角度変換部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0062】
また、図7(A)及び7(C)に示すように、全反射角度の最も小さい反射角γで導かれた画像光GL3は、角度変換部23のうち光入射面IS(図1(A)参照)に最も近い−Z側の周辺部23mに1つ以上配置された反射ユニット23cに入射する。当該反射ユニット23cにおいて、画像光GL3は、画像光GL2の場合と同様に、最初に奥側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、入口側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL3は、他の反射ユニット23cを経ることなく、角度変換部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0063】
ここで、上記のような第1及び第2の反射面23a,23bでの2段階での反射の場合、図7(B)及び7(C)に示すように、各画像光の入射時の方向と射出時の方向とのなす角である折り曲げ角ψは、いずれもψ=2(R−α)(R:直角)となる。つまり、折り曲げ角ψは、角度変換部23に対する入射角度即ち各画像光の全反射角度である反射角γ,γ,γ等の値によらず一定である。これにより、上記のように、画像光のうち全反射角度の比較的大きい成分を角度変換部23のうち+Z側の周辺部23h側に入射させ、全反射角度の比較的小さい成分を角度変換部23のうち−Z側の周辺部23m側に入射させた場合にも、画像光を全体として観察者の眼EYに集めるような角度状態で効率的に取り出すことが可能となる。このような角度関係で画像光を取り出す構成であるため、導光板20は、画像光を角度変換部23において複数回通過させず、1回だけ通過させることができ、画像光を少ない損失で虚像光として取り出すことを可能にする。
【0064】
また、導光部22の形状や屈折率、角度変換部23を構成する反射ユニット23cの形状等の光学的な設計において、画像光GL2,GL3等が導かれる角度等を適宜調整することで、光射出面OSから射出される画像光を、基本の画像光GL1即ち光軸AXを中心として、全体として対称性が保たれた状態の虚像光として観察者の眼EYに入射させることができる。ここでは、一端の画像光GL2のX方向又は光軸AXに対する角度θ(導光板20内ではθ')と、他端の画像光GL3のX方向又は光軸AXに対する角度θ(導光板20内ではθ')導光板20とは、大きさが略等しく逆向きとなっているものとする。つまり、画像光は、光軸AXを中心にして対称性のある状態で眼EYに対して射出されている。このように、角度θと角度θとの角度が等しく、光軸AXに対して対称性があるとすることで、角度θ及び角度θは、横画角の半分の値である横半画角θとなる。
【0065】
なお、既に説明したように、一群の反射ユニット23cを構成する第1の反射面23a又は第2の反射面23bは、ピッチが一定で互いに平行になっている。これにより、観察者の眼EYに入射する虚像光である画像光を一様なものとでき、観察される画像の品質の低下を抑えることができる。角度変換部23を構成する各反射ユニット23cの間隔であるピッチPTの具体的な数値範囲は、0.2mm以上、より好ましくは0.2mm〜1.3mmとする。この範囲にあることにより、取り出されるべき画像光が、角度変換部23において回折による影響を受けることなく、かつ、反射ユニット23cによる格子縞が観察者にとって目立つものとならないようにすることができる。
【0066】
図8(A)は、実施形態の虚像表示装置100によって形成される虚像型の画像光の2次元輝度分布を説明する図であり、図8(B)は、比較例の虚像表示装置によって形成される虚像型の画像光の2次元輝度分布を説明する図である。両図を比較すれば明らかように、実施形態の虚像表示装置100の場合、輝度ムラの発生が大幅に低減されている。なお、比較例の虚像表示装置は、実施形態の虚像表示装置100と同様の構造を有するが、照明装置31の光射出側に光学部材14を設けていない点で異なる。
【0067】
図8(C)は、実施形態の虚像表示装置100によって形成される画像光のBB断面に沿ったY方向の輝度分布を示すグラフであり、図8(D)は、比較例の虚像表示装置によって形成される画像光のBB断面に沿ったY方向の輝度分布を示すグラフである。両グラフを比較すれば明らかように、実施形態の虚像表示装置100の場合、縦のY方向の輝度分布が比較的高輝度で一様になっている。
【0068】
以上のように、本実施形態の虚像表示装置100によれば、光学部材14が角度変換部23から射出される画像光の指向性に関して非一様な分布、具体的には縦方向の周辺で傾斜角εが徐々に大きくなるような分布を形成するので、液晶表示デバイス32のY方向の位置に応じて液晶表示デバイス32から射出され観察者の眼EYに有効に取り込まれる光束の射出角度μが徐々に大きくなる場合に、このような眼EYへの光束取込みの角度特性に画像光の指向性を適合させることができ、輝度斑の発生を抑えて照明光の利用効率を高めることができる。
【0069】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1実施形態の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0070】
図9に示す液晶表示デバイス132は、画像光の指向性に関して非一様な分布を形成するための光学部材114を内蔵している。
【0071】
液晶表示デバイス132は、空間光変調装置、より具体的には光透過型の液晶表示素子であり、液晶パネル51と、これを挟む一対の偏光フィルター52a,52bとを備える。液晶表示デバイス(液晶表示素子)132において、入射側の第1偏光フィルター52aと、射出側の第2偏光フィルター52bとは、液晶パネル51を挟んでクロスニコルを構成するように配置されている。液晶パネル51は、第1偏光フィルター52a側から入射した照明光ILの偏光方向を入力信号に応じて画素単位で2次元的に変化させ、変化後の変調光を画像光MLとして第2偏光フィルター52b側に射出する。
【0072】
液晶パネル51は、液晶層71を挟んで、入射側に第1基板72と、射出側に第2基板73とを備える。なお、入射光LIが入射する第1基板72は、光軸AXに垂直なYZ面に沿って延在するブレーズ格子72aと、ブレーズ格子72aの内側に配置される本体部分72bとを備える。このブレーズ格子72aは、画像光MLの指向性を調整する光学部材114として機能しており、透明画素電極77すなわち画素部分PPに対応する所定パターンで2次元的に配列された多数の微小なプリズム要素PEを有する。
【0073】
液晶パネル51において、第1基板72の液晶層71側の面上には、透明な共通電極75が設けられており、その上には、例えば配光膜76が形成されている。一方、第2基板73の液晶層71側の面上には、マトリクス状に配置された複数の透明画素電極77と、各透明画素電極77に電気的に接続されている薄膜トランジスター(不図示)とが設けられており、その上には、例えば配光膜78が形成されている。ここで、第1基板72の内側部分(すなわち本体部分72b)と、第2基板73と、これらに挟まれた液晶層71と、電極75,77とは、光能動素子、すなわち入射光LIの偏光状態を入力信号に応じて変調するための液晶デバイス80として機能する部分である。この液晶デバイス80を構成する各画素部分PPは、1つの画素電極77と、共通電極75の一部と、両配光膜76,78の一部と、液晶層71の一部とを含む。各画素部分PPには、入射側の第1基板72に設けたブレーズ格子72aの各要素によって、照明光ILの傾斜角を調節して入射させることができるようになっている。なお、第1基板72と共通電極75との間には、各画素部分PPを区分するように格子状のブラックマトリクス79が設けられている。
【0074】
光学部材114であるブレーズ格子72aは、図6(A)等に示す第1実施形態の光学部材14に代えて組み込まれるものであり、第1実施形態の場合と同様に、バックライト導光部31bから入射した照明光を外側(+Y側)に屈曲させる。この際、ブレーズ格子72aは、中央より上側の部分において、上側(+Y側)に向かって楔角ωが徐々に増加するプリズム要素PEを有しており、バックライト導光部31bから一様に射出された照明光ILは、プリズム要素PEを通過する際に上向きの傾斜角εを与えられて液晶デバイス80に入射する。なお、図示を省略するが、ブレーズ格子72aは、中央より下側の部分において、下側(−Y側)に向かって楔角ωが徐々に増加するプリズム要素PEを有しており、バックライト導光部31bから一様に射出された照明光ILは、プリズム要素PEの屈折面又は偏向面を通過する際に下向きの傾斜角εを与えられて液晶デバイス80に入射する。この傾斜角εの分布は、第1実施形態の場合と同様に、図3(B)に示すような光束取込みの角度特性と対応するようなものとなっている。これにより、液晶表示デバイス132は、これから取り出されて虚像形成に有効に活用される実効的な画像光FLの射出角度μに対応する傾斜角εの照明光ILによって照明されることになり、照明光の無駄がなくなり、虚像の輝度斑を低減することができる。本実施形態の場合、液晶表示デバイス132から光学部材114を除いたものと照明装置31とによって画像表示装置が構成されている。
【0075】
図10は、図9に示す液晶表示デバイス132の変形例である。この場合、ブレーズ格子73aを射出側の第2基板73に埋め込んでいる。つまり、第2基板73は、光軸AXに垂直なYZ面に沿って延在するブレーズ格子73aと、ブレーズ格子73aの内側に配置される本体部分73bとを備える。このブレーズ格子73aは、透明画素電極77すなわち画素部分PPに対応する所定パターンで2次元的に配列された多数のプリズム要素PEを有する。ブレーズ格子73aは、中央より上側の部分において、上側(+Y側)に向かって楔角ωが徐々に増加するプリズム要素PEを有しており、液晶デバイス80から射出された画像光MLは、プリズム要素PEの屈折面又は偏向面を通過する際に上向きの傾斜角εを与えられて液晶表示デバイス132から射出される。
【0076】
本実施形態の虚像表示装置100では、液晶表示デバイス132の画素単位で画像光MLの射出方向を調整することができる。これにより、液晶表示デバイス132から射出され観察者の眼EYに有効に取り込まれる実効的な画像光FL(画像光ML)の傾きが周辺で大きくなる場合であっても、これに対応する指向性を有する画像光MLを形成することができ、輝度斑の発生を抑えて照明光の利用効率を高めることができる。
【0077】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1又は第2実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1実施形態の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0078】
図11に示す液晶表示デバイス(液晶表示素子)232は、画像光の指向性に関して非一様な分布を形成するための光学部材214を内蔵している光透過型の液晶表示素子である。本実施形態の場合、液晶表示デバイス232から光学部材214を除いたものと照明装置31とによって画像表示装置が構成されている。
【0079】
液晶表示デバイス232の液晶パネル51において、光入射側の第1基板72は、光軸AXに垂直なYZ面に沿って延在するマイクロレンズアレイ272aと、マイクロレンズアレイ272aの内側に配置される本体部分72bとを備える。このマイクロレンズアレイ272aは、画像光MLの指向性を調整する光学部材214として機能しており、透明画素電極77すなわち画素部分PPに対応する所定パターンで2次元的に配列された多数のレンズ要素LEを有する。ここで、マイクロレンズアレイ272aのY方向のピッチPmは、画素部分PPのY方向のピッチPcよりも僅かに大きくなっている。このため、レンズ要素LEの光軸又は中心は、画素部分PPの中心から徐々に偏芯している。つまり、このマイクロレンズアレイ272aでは、中央より上側の部分において、上側(+Y側)に向かって偏芯が徐々に大きくなっており、中央より下側の部分においも、下側(−Y側)に向かって偏芯が徐々に大きくなっている。バックライト導光部31bから一様に射出された照明光ILは、マイクロレンズアレイ272aの屈折面又は偏向面を通過する際に、単に集光されるだけでなく、発散するように上向き又は下向きの傾斜角εを与えられて液晶デバイス80に入射する。この傾斜角εの分布は、第1実施形態の場合と同様に、図3(B)に示すような光束取込みの角度特性と対応するようなものとなっている。これにより、液晶表示デバイス232は、これから取り出されて虚像形成に有効に活用される画像光FLの射出角度μに対応する傾斜角εの照明光ILによって照明されることになり、照明光の無駄がなくなり、虚像の輝度斑を低減することができる。なお、マイクロレンズアレイ272aを用いた場合、照明光ILを集光することでブラックマトリクス79で遮光される光束を低減でき、光利用効率の更なる向上を期待することができる。
【0080】
図12は、図11に示す液晶表示デバイス232の変形例である。この場合、マイクロレンズアレイ273aを射出側の第2基板273に埋め込んでいる。つまり、第2基板273は、光軸AXに垂直なYZ面に沿って延在するマイクロレンズアレイ273aと、マイクロレンズアレイ273aの内側に配置される本体部分73bとを備える。このマイクロレンズアレイ273aは、透明画素電極77すなわち画素部分PPに対応する所定パターンで2次元的に配列された多数のレンズ要素LEを有する。マイクロレンズアレイ273aは、中央より上側の部分において、上側(+Y側)に向かって偏芯が徐々に大きくなっている。液晶デバイス80から射出された画像光MLは、レンズ要素LEの屈折面又は偏向面を通過する際に上向きの傾斜角εを与えられて液晶表示デバイス232から射出される。
【0081】
なお、図12に示す液晶表示デバイス232において、入射側の第1基板72にも、光学部材214としてのマイクロレンズアレイ272aを埋め込むことができる。
【0082】
本実施形態の虚像表示装置100では、液晶表示デバイス232の画素単位で画像光MLの射出方向を調整することができる。これにより、液晶表示デバイス132から射出され観察者の眼EYに有効に取り込まれる実効的な画像光FL(画像光ML)の傾きが周辺で大きくなる場合であっても、これに対応する指向性を有する画像光MLを形成することができ、輝度斑の発生を抑えて照明光の利用効率を高めることができる。
【0083】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1又は第2実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1実施形態の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0084】
図13(A)及び13(B)に示すように、本実施形態の場合、導光板20の角度変換部423は、多数の画像光反射面23dを所定のピッチでZ方向に多数配列した構造を有する。これらの画像光反射面23dは、画像光反射面23dの配列されるZ方向に対して垂直に延びる方向即ちY方向を長手方向として、帯状に延びている。これらの画像光反射面23dは、互いに平行であり、第1の全反射面22aに対して同一の角度βをそれぞれなしている。画像光反射面23dは、反射率の調整により、画像光の光成分の一部を透過させ、残りを反射させる部分反射面となっている。なお、隣接する画像光反射面23d間は、画像光を取り出すための反射面等としての機能を有しない境界部23eによって繋がれている。結果的に、画像光反射面23dは、分離した状態で光軸OAに沿って即ちZ方向に沿って周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。なお、画像光反射面23dは、例えば下地のV溝の一方の斜面にアルミ蒸着等の成膜を施すことにより形成され、その後の樹脂の充填によって導光板20内に埋め込まれる。
【0085】
図13(A)に示すように、最小反射角γで導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GL2は、角度変換部423を複数回通過した後、角度変換部423のうち最も奥側(+Z側)の周辺部23hに達し、周辺部23hでの反射により、眼EYの光軸AXに対して角度θで光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。一方、図13(B)に示すように、最大反射角γで導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GL3は、角度変換部423のうち最も入口側(−Z側)の周辺部23mに達し、周辺部23mでの反射により、眼EYの光軸AXに対して角度θで光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。
【0086】
以上のような角度変換部423を組み込んだ導光板20でも、第1実施形態の図2(A)や3(A)の場合と同様に、液晶表示デバイス32から射出される画像光FLは、液晶表示デバイス32の中央から徐々に離れて射出位置(物体高)yが大きくなるに従って、外向きの射出角度μが徐々に大きくなる傾向がある。したがって、照明装置31に光学部材14を組み付けることで、照明光ILに対応する配光特性を持たせることができ、液晶表示デバイス32からから射出される画像光FLを図3(B)に示すような光束取込みの角度特性に適合するものとできる。
【0087】
なお、本実施形態において、照明装置31に光学部材14を組み込む代わりに、第2、第3実施形態のように、液晶表示デバイス132,232に光学部材114,214を組み込むこともできる。
【0088】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0089】
上記実施形態では、画像光FLの射出角度が、液晶表示デバイス32の中央から上下方向に離れて射出位置が大きくなるほど外向きに大きく傾斜するとしたが、このような傾向と異なる光束取込みの角度特性を有する投射光学系12及び導光板20を用いる場合も、本発明の手法を用いることができる。例えば、導光板20が画像光を横方向ではなく縦方向に導光させるものである場合、画像光FLの射出角度は、液晶表示デバイス32の中央から左右方向に離れて射出位置が大きくなるほど左右の外向きに大きく傾斜するので、この場合、光学部材14,114等によって与えられる配光特性も縦横を入れ替えることになる。また、上記実施形態では、光学部材14,114等が縦方向にのみ配光特性を与えるとしたが、縦方向及び横方向の双方に配光特性を与えることもできる。
【0090】
上記第1実施形態では、光学部材14が平板状の部材であるとしたが、光学部材14を肉厚のレンズやプリズムに置き換えることもできる。
【0091】
上記第1実施形態では、光学部材14を縦のY方向に3分割された第1〜第3領域A1,A2,A3からなるものとしているが、光学部材14を縦方向に4分割以上することができ、横のZ方向にも複数領域に分割し、各領域で異なるプリズム形状を設定することができる。
【0092】
上記第2、3実施形態では、ブレーズ格子72aやマイクロレンズアレイ273aを用いたが、これらに代えてフォログラム素子、回折光学素子等を用いることもできる。
【0093】
上記第2、3実施形態では、特に説明しなかったが、液晶パネル51と一対の偏光フィルター52a,52bの少なくとも一方との間に位相差補償板を挿入してコントラスト向上を図ることもできる。
【0094】
また、角度変換部23を構成する反射ユニット23cの配列のピッチPTについては、各第1の反射面23a間において全て同一となっている場合に限らず、各ピッチPTにある程度の差異がある場合も含むものとする。
【0095】
上記の説明では、画像光形成部として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像光形成部としては、透過型の液晶表示デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像光形成部又は画像表示装置として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。なお、自発光型素子を画像光形成部として代用する場合、図6(A)に示すような光学部材14を外付けすることもできるが、自発光型素子自体に配光特性を持たせることができる。この場合、図14に示すように、画像光形成部としての自発光型素子532は、図6(A)に示すような光学部材14、又は、図10及び12に示すような光学部材114,214と等価の部分514を内蔵したものとなる。つまり、自発光型素子532は、画像光形成部を照明するための発光部としての機能と、照明光の配光特性を変化させる光学部材としての機能とを有するものとなる。
【0096】
上記の説明では、虚像表示装置100は、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光板20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光板20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0097】
上記の説明では、シースルー型の虚像表示装置について説明しているが、角度変換部23等は、シースルー型以外の虚像表示装置についても適用可能である。なお、外界像を観察させる必要がない場合、第1及び第2の反射面23a,23b双方の光反射率を略100%することが可能である。
【0098】
上記の説明では、光入射面ISと光射出面OSとを同一の平面上に配置しているが、これに限らず、例えば、光入射面ISを第1の全反射面22aと同一の平面上に配置し、光射出面OSを第2の全反射面22bと同一の平面上に配置する構成とすることもできる。
【0099】
上記の説明では、入射光折曲部21を構成するミラー層21aや斜面RSの傾斜角度について特に触れていないが、本発明は、ミラー層21a等を光軸OAに対して用途の他の仕様に応じて様々な値とすることができる。
【0100】
上記の説明では、反射ユニット23cによるV字状の溝は、先端を尖った状態で図示しているが、V字状の溝の形状については、これに限らず、先端を平らにカットしているものや先端にR(丸み)を付けているものであってもよい。
【0101】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0102】
上記の説明では、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2の全反射面22a,22b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、全反射面22a,22bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって全反射面22a,22bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
A1,A2,A3…第1〜3領域、 AX…光軸、 D1…第1方向、 D2…第2方向、 EY…眼、 FL,FL1,FL2…画像光、 GL1,GL2,GL3…画像光、 IL…照明光、 LI…入射光、 ML…画像光、 OA…光軸、 OS…光射出面、 PS…プリズム部、 10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 14,114,214…光学部材、 20…導光板、 20a…導光板本体部、 21…入射光折曲部、 22…導光部、 22a,22b…第1、第2の全反射面、 23…角度変換部、 23c…反射ユニット、 31…照明装置、 31a…光源(発光部)、 31b…バックライト導光部、 32…液晶表示デバイス(空間変調装置)、 32a…射出面、 32b…表示領域、 100…虚像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出される前記画像光の指向性に関して非一様な分布を形成する光学部材と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、対向して延びる第1及び第2の全反射面を有し前記光入射部から取り込まれた前記画像光を前記第1及び第2の全反射面での全反射により導く導光部と、所定の配列方向に配列される複数の反射面を有し前記導光部を経て入射する前記画像光を前記複数の反射面での反射により角度を変換して外部へ取出し可能にする角度変換部と、前記角度変換部を経た前記画像光を外部に射出する光射出部と、を有する導光板と
を備える、虚像表示装置。
【請求項2】
前記光学部材は、前記画像表示装置の位置に応じて異なる角度に光束を屈曲させる、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記光学部材は、前記導光板の角度変換部の前記所定の配列方向に対応する第1方向に垂直な第2方向に関して、前記画像表示装置の周辺部から射出する前記画像光に対して前記非一様な分布として外側に指向性を与える偏向素子である、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記光学部材は、前記導光板の角度変換部の前記所定の配列方向に対応する第1方向に垂直な第2方向に関して、前記画像表示装置の中心から前記画像表示装置の周辺部に向かうほど前記画像光を外側に偏向させる偏向面を有する、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記画像表示装置は、発光部と、前記発光部からの光を制御して前記画像光を形成する画像光形成部とを備える、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記画像表示装置は、発光輝度の制御によって前記画像光を形成する画像光形成部を備え、
前記光学部材は、前記画像光形成部に内蔵又は外付けされている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記照明装置は、発光部と、前記発光部からの光束を面光源状に広げるバックライト導光部とを有し、
前記光学部材は、前記バックライト導光部と前記画像光形成部との間に配置される、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記光学部材は、プリズムアレイシート、フレネルレンズ、及び回折格子の少なくとも1つである、請求項7記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記光学部材は、前記バックライト導光部に貼り付けられて前記バックライト導光部と一体化されている、請求項8に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記光学部材は、前記バックライト導光部からの照明光を、最も輝度が高い主方向が互いに異なる状態となるように通過させる複数の領域を有する、請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
前記光学部材は、前記複数の領域に対応して形状が互いに異なる複数のプリズムアレイシートを有する、請求項10に記載の虚像表示装置。
【請求項12】
前記画像光形成部は、光透過型の液晶表示素子であり、
前記光学部材は、前記液晶表示素子の光入射側及び光射出側の少なくとも一方に近接して配置される、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項13】
前記光学部材は、前記液晶表示素子の画素に対応して設けられるブレーズ格子である、請求項12に記載の虚像表示装置。
【請求項14】
前記光学部材は、前記液晶表示素子の画素に対応して設けられるマイクロレンズアレイである、請求項12に記載の虚像表示装置。
【請求項15】
前記指向性を与える方向に関する前記マイクロレンズアレイのピッチは、前記液晶表示素子の画素のピッチと異なる、請求項14に記載の虚像表示装置。
【請求項16】
前記指向性を与える方向に関する前記マイクロレンズアレイのピッチは、前記液晶表示素子の画素のピッチよりも大きい、請求項15に記載の虚像表示装置。
【請求項17】
前記導光板の前記角度変換部は、第1の反射面と前記第1の反射面に対して所定角度をなす第2の反射面とをそれぞれ有するとともに所定の配列方向に配列される複数の反射ユニットを有し、
各反射ユニットは、前記第1の反射面により前記導光部を経て入射する前記画像光を反射するとともに前記第2の反射面により前記第1の反射面で反射された前記画像光をさらに反射することにより、前記画像光の光路を折り曲げて外部へ取出し可能にする、請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−83458(P2012−83458A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228183(P2010−228183)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】