説明

蛇行量検出装置及び画像形成装置

【課題】比較的安価で、且つ調整及び校正が不要な蛇行量検出装置を提供する。
【解決手段】回走する無端ベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出装置であって、前記無端ベルトのベルト幅方向の移動に応じて回転するスリット円板を有し、該スリット円板の回転角度を示すデジタル信号を出力するアブソリュートエンコーダと、前記アブソリュートエンコーダから出力されるデジタル信号に基づいて前記無端ベルトのベルト幅方向の移動量を前記蛇行量として演算する演算手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇行量検出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、またはファクシミリ等の画像形成装置で用いられる画像形成方式の1つとして、無端帯状の中間転写ベルト上に、各色に対応して設けられる感光体ドラムから各色のトナー画像をそれぞれ転写して重ね合わせ、その重ね合わせによって得られるトナー画像を用紙に一括転写するタンデム方式が知られている。上記の中間転写ベルトは駆動ローラやテンションローラなどに張架されて回走するものであるため、ベルト幅方向に移動しながら走行するという蛇行現象が発生する。このような中間転写ベルトの回走中に蛇行が生じると、中間転写ベルト上における各色のトナー画像の転写位置にズレが生じてしまい、良好な画像を形成することができなくなる。
【0003】
例えば、下記特許文献1(特開平10−231041号公報)には、ベルト位置検出センサによって検出したベルト幅方向のベルト端部位置に基づいてベルト蛇行速度を演算し、このベルト蛇行速度が許容範囲内となるように速度制御を行った後、ベルト位置検出センサによって検出したベルト端部位置を新たな目標位置に設定し直してベルトの位置制御を行う技術が開示されている。また、下記特許文献2(特開平5−301652号公報)には、ベルト端部検知センサによって検知したベルト端部位置に基づいてベルト蛇行速度を演算し、このベルト蛇行速度を基に蛇行修正カムを回転制御することにより、ベルトの蛇行状態を修正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−231041号公報
【特許文献2】特開平5−301652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1及び2の技術は、光学式アナログセンサを用いてベルト端部の位置を検出し、その検出結果を基に無端ベルトの蛇行を修正するものである。しかしながら、上記の光学式アナログセンサは高価であると共に、温度特性のバラツキが大きいため、センサ毎に調整及び校正が必要となる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、比較的安価で、且つ調整及び校正が不要な蛇行量検出装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る蛇行量検出装置は、回走する無端ベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出装置であって、前記無端ベルトのベルト幅方向の移動に応じて回転するスリット円板を有し、該スリット円板の回転角度を示すデジタル信号を出力するアブソリュートエンコーダと、前記アブソリュートエンコーダから出力されるデジタル信号に基づいて前記無端ベルトのベルト幅方向の移動量を前記蛇行量として演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る蛇行量検出装置において、前記アブソリュートエンコーダは、一端が前記無端ベルトの側端部に接触し、他端が前記スリット円板の回転軸と接続された可動片を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る蛇行量検出装置において、前記可動片は、前記回転角度と前記蛇行量との対応関係が比例関係となるように形状設定されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係る画像形成装置は、回走する無端ベルトの蛇行を修正する機能を備える画像形成装置であって、上記の特徴を有する蛇行量検出装置を備え、該蛇行量検出装置によって検出された前記無端ベルトの蛇行量に基づいて前記無端ベルトの蛇行を修正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る蛇行量検出装置によれば、従来のように光学式アナログセンサを用いることなく、無端ベルトの蛇行量を検出することができるため、従来と比較して安価であると共に、温度特性のバラツキがないため、調整及び校正等が不要となる。そして、画像形成装置は、蛇行量検出装置によって検出された無端ベルトの蛇行量を基に無端ベルトのベルト幅方向の位置を正確に把握し、無端ベルトの蛇行を修正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態における画像形成装置100の構成概略図である。
【図2】画像形成装置100に設けられた蛇行量検出装置60の構成概略図である。
【図3】蛇行量検出装置60による蛇行量検出原理に関する説明図である。
【図4】蛇行量検出装置60のアブソリュートエンコーダ61に設けられた可動片61aの形状設定手法に関する第1説明図である。
【図5】蛇行量検出装置60のアブソリュートエンコーダ61に設けられた可動片61aの形状設定手法に関する第2説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における蛇行量検出装置60を備えた画像形成装置100の構成概略図である。この画像形成装置100は、例えばコピー機、プリンタ等の機能を1台に集約した複合機(MFP:Multi Function Peripherals)である。図1に示すように、画像形成装置100は、原稿を読み取るための原稿読取装置1と、原稿読取装置1によって読み取った原稿の画像データ、または通信回線を介して外部から送信された画像データに基づいて用紙(記録媒体)に画像を形成するMFP本体2とから概略構成されている。
【0011】
原稿読取装置1は、スキャナ部10及びADF(Auto Document Feeder:自動原稿給紙装置)20から構成されている。スキャナ部10は、プラテンガラス11上にセットされた原稿、またはADF20によって自動給紙される原稿の読み取りを行うものであり、プラテンガラス11、白色基準板12、フルレートキャリッジ13、ハーフレートキャリッジ14、集光レンズ15及びCCD(Charge Coupled Devices)センサ16等を備えている。
【0012】
プラテンガラス11は、読み取り対象の原稿を1枚ずつセットするためのガラス板である。白色基準板12は、シェーディング補正用の白色基準データを取得するための白色板である。フルレートキャリッジ13は、プラテンガラス11の下方において、不図示のキャリッジ搬送機構によりプラテンガラス11に沿って左右方向(走査方向)に往復移動可能に設けられており、照明光を斜め上方に向けて出射するランプ13aと、照明光の反射光を後述するハーフレートキャリッジ14に向けて反射するミラー13bを内蔵している。
【0013】
ハーフレートキャリッジ14は、フルレートキャリッジ13と同様に、不図示のキャリッジ搬送機構によりプラテンガラス11に沿って左右方向に往復移動可能に設けられており、フルレートキャリッジ13のミラー13bからの入射光を下方に向けて反射するミラー14aと、ミラー14aからの入射光を後述する集光レンズ15に向けて反射するミラー14bを内蔵している。なお、キャリッジ搬送機構により、フルレートキャリッジ13の移動量とハーフレートキャリッジ14の移動量との比率は1:0.5となるように制御されている。これにより、集光レンズ15に達するまでの照明光の光路長が一定となるように制御される。
【0014】
プラテンガラス11上にセットされた原稿を読み取る場合は、フルレートキャリッジ13及びハーフレートキャリッジ14を走査方向に移動させることで原稿をスキャンするが、後述するADF20によって原稿を自動給紙する場合には、フルレートキャリッジ13及びハーフレートキャリッジ14を所定の原稿読取位置にて待機させ、原稿側を移動(搬送)させることで原稿をスキャンする。
【0015】
集光レンズ15は、ハーフレートキャリッジ14のミラー14bからの入射光を集光してCCDセンサ16の受光面に結像させる。CCDセンサ16は、不図示のCCD駆動部から供給されるタイミング信号に同期して作動し、受光面にて受光した光を光電変換することにより、読み取った原稿の画像に応じたアナログ電圧信号を生成してAFE(アナログフロントエンド:図示省略)に出力する。なお、AFEは、上記のアナログ電圧信号を所定のゲイン設定値にて増幅した後、デジタル変換して読み取った原稿の画像データを生成するものである。
【0016】
ADF20は、原稿載置トレイ22にセットされた複数枚の原稿を1枚ずつ順次自動給紙するものであり、プラテンカバー21、原稿載置トレイ22、ピックアップローラ23、レジストローラ24、プラテンローラ25及び排紙ローラ26等から構成されている。プラテンカバー21は、スキャナ部10の上面に対して開閉可能に設けられており、プラテンガラス11上に原稿をセットして読み取りを行う場合における原稿押さえカバーとしての役割と、ピックアップローラ23、レジストローラ24、プラテンローラ25及び排紙ローラ26等の自動給紙機構に使用される部材の収納用筐体としての役割を担っている。なお、図1では、プラテンカバー21が閉じられた状態を示している。
【0017】
原稿載置トレイ22は、読み取り対象の原稿をセットするためのトレイである。ピックアップローラ23は、原稿載置トレイ22にセットされた原稿を1枚ずつピックアップしてレジストローラ24に搬出するためのローラである。レジストローラ24は、所定のタイミングで原稿をプラテンローラ25に搬送するためのローラである。プラテンローラ25は、原稿を所定の原稿読取位置を経由して排紙ローラ26に搬送するためのローラである。排紙ローラ26は、読み取り完了後の原稿を外部に排出するためのローラである。
【0018】
MFP本体2は、原稿読取装置1にて読み取った原稿の画像データ、または通信回線を介して外部から送信された画像データに基づいて、電子写真方式によってトナー画像を形成し、そのトナー画像を用紙に転写するトナー画像形成部3と、トナー画像形成部3によって用紙に転写されたトナー画像を定着させる定着器4と、トナー画像形成部3及び定着器4を経由して用紙を外部に搬送するための用紙搬送機構5と、各種サイズの用紙を収容するための給紙カセット6、7、8とを備えている。さらに、MFP本体2には、手前側に開閉自在な手差しトレイ9が設けられており、手差しトレイ9に載置された用紙を用紙搬送機構5によって搬送可能な構成となっている。
【0019】
トナー画像形成部3は、中間転写ベルト(無端ベルト)31と、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各色にそれぞれ対応したトナー画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FB)と、駆動ローラ32と、テンションローラ33と、二次転写ローラ34と、クリーナー35とから構成されている。
中間転写ベルト31は、各トナー画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FB)によって形成される各色のトナー画像を1次転写するための中間転写体であり、駆動ローラ32及びテンションローラ33に張架されて、駆動ローラ32による回転駆動によって図1において時計回りに回走する構成となっている。
【0020】
トナー画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FB)は、それぞれ感光体ドラムFaと、帯電部Fbと、露光部Fcと、現像部Fdと、一次転写ローラFeとを備え、さらに不図示のクリーニング装置及び除電装置等とを備える。感光体ドラムFaは、円柱に形状設定され、その周面に静電潜像及び当該静電潜像に基づくトナー画像が形成されるものである。帯電部Fbは、感光体ドラムFaに対して対向配置され、感光体ドラムFaの周面を帯電状態とするものである。露光部Fcは、画像データに基づいてレーザ光を帯電状態の感光体ドラムFaの周面において走査して静電潜像を形成するものである。現像部Fdは、感光体ドラムFaの周面に対してトナーを付着させることによって感光体ドラムFaの周面上に静電潜像に基づくトナー画像を形成(現像)するものである。
【0021】
一次転写ローラFeは、中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラムFaと対向配置され、感光体ドラムFaに現像されたトナー画像を中間転写ベルト31に一次転写するものである。二次転写ローラ34は、中間転写ベルト31を挟んで駆動ローラ32と対向配置されており、給紙カセット6、7、8のいずれかから用紙搬送機構5によって搬送される用紙に、中間転写ベルト31表面に転写されているトナー画像を2次転写するものである。クリーナー35は、クリーニングローラやクリーニングブレード等を備え、中間転写ベルト31の残留トナーを除去するものである。
【0022】
定着器4は、用紙上に二次転写されたトナー画像を定着させるものであり、加圧・加熱することによりトナーを定着させる加熱ローラ41を備えている。用紙搬送機構5は、給紙カセット6、7、8から用紙を1枚ずつ搬出するためのピックアップローラ51、52、53と、ピックアップした用紙をトナー画像形成部3(駆動ローラ32と2次転写ローラ34との間)に搬送するための給紙ローラ54、55、56と、定着後の用紙を外部に排紙するための排紙ローラ57等から構成されている。給紙カセット6、7、8は、MFP本体2に対して引き出し自在に取り付けられており、各種サイズの用紙を収容するものである。
【0023】
ここで、中間転写ベルト31は駆動ローラ32やテンションローラ33などに張架されて回走するものであるため、ベルト幅方向に移動しながら走行するという蛇行現象が発生する。このような中間転写ベルト31の回走中に蛇行が生じると、中間転写ベルト31上における各色のトナー画像の転写位置にズレが生じてしまい、良好な画像を形成することができなくなる。そのため、本実施形態における画像形成装置100は、中間転写ベルト31の蛇行を修正する蛇行修正機能を備えている。
【0024】
以下、図2を参照して、中間転写ベルト31の蛇行量を検出する蛇行量検出装置60について説明する。図2(a)に示すように、本実施形態における蛇行量検出装置60は、アブソリュートエンコーダ61及び蛇行量演算部62を備えている。なお、図2(a)において、X軸は中間転写ベルト31のベルト幅方向(主走査方向)を示し、Z軸は中間転写ベルト31の走行方向を示し、またY軸はXZ平面に垂直な鉛直方向を示している。
【0025】
アブソリュートエンコーダ61は、中間転写ベルト31の側端部近傍に設置されており、可動片61aと、スリット円板61bと、フォトカプラ61cとから概略構成されている。
可動片61aは、一端が中間転写ベルト31の側端部に接触し、他端がスリット円板61bの回転軸と接続された棒状部材である。スリット円板61bは、図2(b)に示すように、アブソリュートエンコーダ61の出力ビット数(本実施形態では10ビットと仮定する)と同数の光学トラックを有し、各光学トラックには回転角度に対応する角度値が2値コードによって明暗のスリット模様として形成されている。このようにスリット円板61bに形成する各光学トラックのコードパターンとしてはグレイコードを用いることが望ましい。
【0026】
フォトカプラ61cは、スリット円板61bを挟んでスリット円板61bの径方向に一列に対向配置された複数の発光素子(例えば発光ダイオード)と受光素子(例えばフォトトランジスタ)とから構成されている。ここで、発光素子及び受光素子はスリット円板61bに形成された光学トラックの各々に対応して設けられている。つまり、発光素子及び受光素子はそれぞれ10個ずつ設けられており、各光学トラックに対応する発光素子から出射された光は、スリット円板61bの回転に伴う各光学トラックのスリットの回転によってオン(透過)/オフ(遮断)され、各光学トラックに対応する受光素子はその光のオン/オフの検出結果に応じた2値信号を出力する。
【0027】
上記のようにスリット円板61bの各光学トラックに対応する受光素子から出力される2値信号は、スリット円板61bの回転角度の現在値を示すデジタル信号である。つまり、フォトカプラ61cは、スリット円板61bの回転角度の現在値を示す10ビットのデジタル信号(以下、回転角度信号と称す)Raを蛇行量演算部62に出力する。
【0028】
このような構成のアブソリュートエンコーダ61において、蛇行により中間転写ベルト31の側端部がX軸方向に移動(+方向の移動だけでなく、−方向の移動も含む)すると、Y軸に対する可動片61aの傾き角が変化し、それに伴いスリット円板61bが回転して回転角度も変化する(可動片61aの傾き角とスリット円板61bの回転角度は等しいので、以下ではこれらの角度をθとする)。つまり、アブソリュートエンコーダ61は、蛇行による中間転写ベルト31のX軸方向の移動量xに応じた回転角度θを示す回転角度信号Raを蛇行量演算部62に出力する。
【0029】
ここで、可動片61aに対し、中間転写ベルト31のX軸方向の移動による外力以外の他の外力を加えないもの仮定すると、図3(a)に示すように、中間転写ベルト31のX軸方向の移動が無い場合、可動片61aは重力によってY軸方向と平行な状態(Y軸に対する可動片61aの傾き角0°)に保たれることになる。本実施形態では、このような状態でアブソリュートエンコーダ61から回転角度θ=0°を示す回転角度信号Raが出力されるように、スリット円板61bの原点調整が行われているものとする。
【0030】
また、上記のように、可動片61aに対し、中間転写ベルト31のX軸方向の移動による外力以外の他の外力を加えないとすると、可動片61aはX軸方向の−側に傾くことは無いため、図3(a)に示すように、中間転写ベルト31がX軸方向の−側へ最大に移動した状態で中間転写ベルト31の側端部に可動片61aが接触するようにアブソリュートエンコーダ61を配置する必要がある。つまり、本実施形態では、中間転写ベルト31がX軸方向の−側へ最大に移動した状態を基準としており、この基準状態での回転角度θ=0°を把握することにより、現在、中間転写ベルト31がX軸方向の−側最大移動位置(x=0)で回走していることを知ることができる。
【0031】
図3(a)の基準状態から中間転写ベルト31がX軸方向の+側へ移動すると、その移動量xに応じた回転角度θを示す回転角度信号Raがアブソリュートエンコーダ61から出力されることになる。図3(b)は、中間転写ベルト31が蛇行無しでX軸方向の理想的な位置(x=xh)で回走している状態を示している。この状態での回転角度θ=θhを把握することにより、現在、中間転写ベルト31が蛇行無しでX軸方向の理想的な位置(x=xh)で回走していることを知ることができる。また、図3(c)は、中間転写ベルト31がX軸方向の+側へ最大に移動した状態を示している。この状態での回転角度θ=θmaxを把握することにより、現在、中間転写ベルト31がX軸方向の+側最大移動位置(x=xmax)で回走していることを知ることができる。
【0032】
図2に戻って説明を続けると、蛇行量演算部62は、上記のアブソリュートエンコーダ61から入力される回転角度信号Ra(回転角度θ)に基づいて中間転写ベルト31のX軸方向の移動量xを蛇行量として演算し、その蛇行量演算結果を出力する。具体的には、蛇行量演算部62の内部メモリには、予め求めておいた、中間転写ベルト31のX軸方向の移動量(蛇行量)xとスリット円板61bの回転角度θとの対応関係を示す演算式が記憶されており、蛇行量演算部62は、回転角度信号Raが示す回転角度θに対応する移動量xを上記演算式から算出することにより、中間転写ベルト31の蛇行量を求める。
【0033】
ここで、上記演算式を簡略化するためにも、回転角度θと蛇行量xとの対応関係が比例関係となるように、可動片61aの形状を設定することが望ましい。以下、このような可動片61aの形状設定の手法について説明する。まず、図4(a)において、θは通常形状(棒形状)での可動片61aの傾き角(回転角度)、yは可動片61aの軸芯(回転中心)から中間転写ベルト31までの距離を示している。この傾き角θの時の軸芯から可動片61aと中間転写ベルト31との接触点までの長さlは下記(1)式で表され、また、傾き角θの時の中間転写ベルト31の移動量(蛇行量)xは下記(2)式で表される。
l=y/cosθ ・・・・(1)
x=l・tanθ ・・・・(2)
【0034】
一方、希望とする傾き角と蛇行量との比例定数をKとすると、形状変更時における傾き角θの時の蛇行量x’は下記(3)式で表される。図4(b)は、下記(3)式に基づく傾き角θと形状変更時の蛇行量x’との対応関係を示す特性曲線である。この図に示すように、傾き角θと形状変更時の蛇行量x’との対応関係は比例関係となる。
x’=K・θ ・・・・(3)
【0035】
また、形状変更時での可動片61aの傾き角θ’は下記(4)式で表され、また、傾き角θ’の時の軸芯から可動片61aと中間転写ベルト31との接触点までの長さl’は下記(5)式で表される。
θ’=tan−1(x’/y) ・・・・(4)
l’=y/cosθ’ ・・・・(5)
【0036】
また、通常形状時と形状変更時の可動片61aの位置の差分をdは下記(6)式で表され、さらに、上記(5)式をcosθ’=y/l’に変形して下記(6)式で代入すると下記(7)式が得られる。
d=(x’−x)・cosθ’ ・・・・(6)
d=y・(x’−x)/l’ ・・・・(7)
【0037】
図5(a)は、上記(7)式に基づく差分dと長さl’との対応関係を示す特性曲線である。このような差分dと長さl’との対応関係を示す曲線が、回転角度θと蛇行量xとの対応関係が比例関係となるような可動片61aの形状を示している。ここで、傾き角0°の時の長さl’を0とすることにより、図5(b)に示すような可動片61aの形状が得られる。このように可動片61aの形状を設定することにより、蛇行量演算部62の内部メモリに記憶する演算式を回転角度と蛇行量との比例関係式に簡略化することができ、蛇行量演算部62の処理負荷を軽減することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態における蛇行量検出装置60によれば、従来のように光学式アナログセンサを用いることなく、中間転写ベルト31の蛇行量を検出することができるため、従来と比較して安価であると共に、温度特性のバラツキがないため、調整及び校正等が不要となる。そして、画像形成装置100は、蛇行量検出装置60から出力される蛇行量検出結果を基に中間転写ベルト31のX軸方向の位置を正確に把握することができ、その蛇行量検出結果に応じて中間転写ベルト31の蛇行を修正することが可能となる。蛇行の修正手法については、従来手法(特開平10−231041号公報や特開平5−301652号公報の技術など)を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、回転角度θと蛇行量xとの対応関係が比例関係となるように可動片61aの形状を設定する場合を説明したが、このような形状の可動片61aはアブソリュートエンコーダ61に限らず、他のエンコーダ、例えばインクリメンタルエンコーダにも用いることができる。
【0040】
インクリメンタルエンコーダは、スリット円板の回転に応じたパルス信号を出力するものであるので、蛇行量演算部62に上記のパルス信号を基にスリット円板の回転角度を算出する機能(具体的には、パルス信号のパルス数をカウントすることで回転角度を算出する機能)を設ければ良い。なお、インクリメンタルエンコーダから出力されるパルス信号から得られる回転角度は相対値であるため、その回転角度から得られる蛇行量も相対値となる。よって、中間転写ベルト31のX軸方向の正確な位置を把握するためには、電源投入時における中間転写ベルト31の側端部の位置を初期位置として認識するための手段を設ける必要がある。
【0041】
(2)上記実施形態では、回転角度θと蛇行量xとの対応関係が比例関係となるように可動片61aの形状を設定する場合を説明したが、可動片61aの形状はこれに限定されるものではない。つまり、回転角度θと蛇行量xとの対応関係さえ予め求めておけば、可動片61aの形状はどのような形状でも良い。
【0042】
(3)上記実施形態では、中間転写ベルト31のX軸方向の移動をスリット円板61bの回転運動に変換するために、一端が中間転写ベルト31の側端部に接触し、他端がスリット円板61bの回転軸と接続された可動片61aを用いる場合を説明したが、中間転写ベルト31の移動に応じてスリット円板61bを回転させることさえできれば、可動片61a以外のどのような機構を用いても良い。
【0043】
(4)上記実施形態では、蛇行量演算部62の内部メモリに蛇行量xと回転角度θとの対応関係を示す演算式を記憶する場合を例示したが、例えば、蛇行量xと回転角度θとの対応関係を示すテーブルデータを記憶しておき、回転角度信号Raが示す回転角度θに対応する蛇行量xを上記テーブルデータから抽出することで中間転写ベルト31の蛇行量を求めるような構成としても良い。
【0044】
(5)上記実施形態では、画像形成装置100としてMFPを例示して説明したが、本発明はこれに限定されず、コピー機や、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置にも適用することができる。また、上記実施形態では、タンデム方式の画像形成装置100を例示したが、その他の方式において無端ベルトの蛇行に起因して画像不良などの問題が発生する画像形成装置であれば本発明を適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
100…画像形成装置、1…原稿読取装置、2…MFP本体、10…スキャナ部、20…ADF(Auto Document Feeder)、3…トナー画像形成部、4…定着器、5…用紙搬送機構、6、7、8…給紙カセット、31…中間転写ベルト、60…蛇行量検出装置、61…アブソリュートエンコーダ、62…蛇行量演算部、61a…可動片、61b…スリット円板、61c…フォトカプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回走する無端ベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出装置であって、
前記無端ベルトのベルト幅方向の移動に応じて回転するスリット円板を有し、該スリット円板の回転角度を示すデジタル信号を出力するアブソリュートエンコーダと、
前記アブソリュートエンコーダから出力されるデジタル信号に基づいて前記無端ベルトのベルト幅方向の移動量を前記蛇行量として演算する演算手段と、
を備えることを特徴とする蛇行量検出装置。
【請求項2】
前記アブソリュートエンコーダは、一端が前記無端ベルトの側端部に接触し、他端が前記スリット円板の回転軸と接続された可動片を備えることを特徴とする請求項1記載の蛇行検出装置。
【請求項3】
前記可動片は、前記回転角度と前記蛇行量との対応関係が比例関係となるように形状設定されていることを特徴とする請求項2記載の蛇行量検出装置。
【請求項4】
回走する無端ベルトの蛇行を修正する機能を備える画像形成装置であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛇行量検出装置を備え、該蛇行量検出装置によって検出された前記無端ベルトの蛇行量に基づいて前記無端ベルトの蛇行を修正することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−224008(P2010−224008A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68345(P2009−68345)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】