説明

蛍光体とその製造方法および発光器具

【課題】高い輝度の橙色や赤色発光特性を有し、化学的に安定な無機蛍光体を提供すること、さらに、この蛍光体を用いることにより演色性に優れた照明器具および耐久性に優れた画像表示装置の発光器具を提供する。
【解決手段】A2Si5-xAlxx8-x(ただし、Aは、Mg、Ca、Sr、またはBaから選ばれる1種または2種以上の元素の混合であり、xが、0.05以上0.8以下の値)で示される結晶を活性物質とし、これに金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)を固溶することによって基本蛍光体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物を主体とする蛍光体とその製造方法および用途に関する。さらに詳細には、該用途は、該蛍光体の有する性質、すなわち570nm以上の長波長の蛍光を発光する特性を利用した照明器具、画像表示装置の発光器具に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、可視光線を発する。しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に曝される結果、蛍光体の輝度が低下するという問題があり、輝度低下のない蛍光体が求められている。そのため、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体が提案されている。
【0003】
このサイアロン蛍光体は、概略以下に述べるような製造プロセスによって製造される。まず、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ユーロピウム(Eu23)、を所定のモル比に混合し、1気圧(0.1MP
a)の窒素中において1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される(例えば、特許文献1参照)。このプロセスで得られるEuイオンを付活したαサイアロンは、450から500nmの青色光で励起されて550から600nmの黄色の光を発する蛍光体となることが報告されている。しかしながら、紫外LEDを励起源とする白色LEDやプラズマディスプレイなどの用途には、黄色だけでなく橙色や赤色に発光する蛍光体も求められていた。また、青色LEDを励起源とする白色LEDにおいては、演色性向上のため橙色や赤色に発光する蛍光体が求められていた。
【0004】
赤色に発光する蛍光体として、Ba2Si58結晶にEuを付活した無機物質(Ba2-xEuxSi58:x=0.14〜1.16)がこの出願前に係る学術文献(非特許文献1
参照)に報告されている。さらに、刊行物「On new rare−earth doped M−Si−Al−O−N materials」(非特許文献2参照)の第2章には種々の組成のアルカリ金属とケイ素の3元窒化物、MxSiyz(M=Ca、Sr、
Ba、Zn;x、y、zは種々の値)を母体とする蛍光体が報告されている。同様に、MxSiyz:Eu(M=Ca、Sr、Ba、Zn;z=2/3x+4/3y)が、米国特
許6682663号(特許文献2)に提案、開示されている。
【0005】
これとは別の窒化物、または酸窒化物蛍光体として、特開2003−206481(特許文献3)、米国特許6670748(特許文献4)には、MSi35、M2Si47
4Si611、M9Si1123、M16Si15632、M13Si18Al121836、MSi5Al2ON9、M3Si5AlON10(ただし、MはBa、Ca、Sr、または希土類元素
)を母体結晶として、これにEuやCeを付活した蛍光体が記載されており、この中には赤色に発光する蛍光体とこの蛍光体を用いたLED照明ユニットが記載されている。そのなかで、Srを含む化合物として、SrSiAl232:Eu2+とSr2Si4AlON7:Eu2+が記載されている。また、特開2002−322474(特許文献5)には、Sr2Si58やSrSi710結晶にCeを付活した蛍光体が提案されている。
【0006】
特開2003−321675(特許文献6)には、Lxy(2/3x+4/3y):Z(LはC
a、Sr、Baなどの2価元素、MはSi、Geなどの4価元素、ZはEuなどの付活剤)蛍光体に関する記載があり、微量のAlを添加すると残光を抑える効果があることが記載されている。また、この蛍光体と青色LEDとを組み合わせることによる、やや赤みを帯びた暖色系の白色の発光装置が知られている。さらに、特開2003−277746(特許文献7)には、LxMyN(2/3x+4/3y):Z蛍光体として種々のL元素、M元素、Z
元素で構成した蛍光体が開示されている。特開2004−10786(特許文献8)には、L−M−N:Eu、Z系に関する幅広い組み合わせの記述があるが、特定の組成物や結晶相を母体とする場合の発光特性向上の効果は示されていない。
【0007】
以上に述べた特許文献2および5から8に代表される蛍光体は、2価元素と4価元素の窒化物を母体結晶とするものであり、種々の異なる結晶相を母体とする蛍光体が報告されており、赤色に発光するものも知られているが、青色の可視光での励起では赤色の発光輝度は十分ではなかった。また、組成によっては化学的に不安定であり、耐久性に問題があった。さらに、特許文献3、4に示されるSrSiAl232:Eu2+とSr2Si4
lON7:Eu2+の発光輝度は十分ではなかった。
【0008】
【非特許文献1】H.A.Hoppe ほか4名、Journal of Physics and Chemistry of Solids、 2000年、61巻、2001〜2006ページ
【非特許文献2】「On new rare−earth doped M−Si−Al−O−N materials」J.W.H.van Krevel著、TU Eindhoven 2000、ISBN 90−386−2711−4
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】米国特許第6682663号公報
【特許文献3】特開2003−206481号公報
【特許文献4】米国特許第6670748号明細書
【特許文献5】特開2002−322474号公報
【特許文献6】特開2003−321675号公報
【特許文献7】特開2003−277746号公報
【特許文献8】特開2004−10786号公報
【0009】
照明装置の従来技術として、青色発光ダイオード素子と青色吸収黄色発光蛍光体との組み合わせによる白色発光ダイオードが公知であり、各種照明用途に実用化されている。その代表例としては、特許第2900928号「発光ダイオード」(特許文献9)、特許第2927279号(特許文献10)「発光ダイオード」、特許第3364229号(特許文献11)「波長変換注型材料及びその製造方法並びに発光素子」などが例示される。これらの発光ダイオードで、特によく用いられている蛍光体は一般式(Y、Gd)3(Al
、Ga)512:Ce3+で表される、セリウムで付活したイットリウム・アルミニウム・
ガーネット系蛍光体である。
【0010】
しかしながら、青色発光ダイオード素子とイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とから成る白色発光ダイオードは赤色成分の不足から青白い発光となる特徴を有し、演色性に偏りがみられるという問題があった。
【0011】
このような背景から、2種の蛍光体を混合・分散させることによりイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体で不足する赤色成分を別の赤色蛍光体で補う白色発光ダイオードが検討された。このような発光ダイオードとしては、特開平10−163535(特許文献12)「白色発光素子」、特開2003−321675(特許文献6)「窒化物蛍光体及びその製造方法」などを例示することができる。しかし、これら発明においても演色性に関してまだ改善すべき問題点は残されており、その課題を解決した発光ダイオードが求められていた。特開平10−163535(特許文献12)に記載の赤色蛍光体はカドミウムを含んでおり、環境汚染の問題がある。特開2003−321675(特許文献6)に記載の、Ca1.97Si58:Eu0.03を代表例とする赤色発光蛍光体はカドミウムを含まないが、蛍光体の輝度が低いため、その発光強度についてはさらなる改善が望まれていた。
【0012】
【特許文献9】特許第2900928号
【特許文献10】特許第2927279号
【特許文献11】特許第3364229号
【特許文献12】特開平10−163535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような要望に応えようとするものであり、目的のひとつは、高い輝度の橙色や赤色発光特性を有し、化学的に安定な無機蛍光体を提供することにある。さらに本発明のもうひとつの目的として、係る蛍光体を用いた演色性に優れる照明器具および耐久性に優れる画像表示装置の発光器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らにおいては、かかる状況の下で、CaやSrなどの2価のアルカリ土類元素とAlとSiを主たる金属元素とする無機酸窒化物結晶を母体とする蛍光体について詳細な研究を行い、特定の組成を持つ無機結晶を母体とする蛍光体が、従来の希土類付活サイアロン蛍光体より長波長の橙色や赤色に発光し、また従来報告されている窒化物や酸窒化物を母体結晶とする赤色蛍光体よりも輝度が高く、かつ化学的安定性に優れることを見いだした。
【0015】
すなわち、発光イオンとなるM元素(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、2価のA元素(ただし、AはMg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Siと、Alと、窒素と酸素とを含有する酸窒化物を主体とする無機化合物について鋭意研究を重ねた結果、特定の組成の結晶相は、570nm以上の波長の橙色や赤色に発光し、かつ化学的安定性に優れた蛍光体となることを見出した。
【0016】
さらに、この蛍光体を用いることにより、高い発光効率を有する赤み成分に富む演色性の良い白色発光ダイオードや鮮やかな赤色を発色する画像表示装置が得られることを見いだした。
【0017】
本発明の蛍光体の母体結晶は、従来報告されているLxy(2/3x+4/3y)に代表される
2価と4価の元素の三元窒化物とは全く異なり、2価と4価の元素に加えてAlを主たる構成金属元素とした酸窒化物とすることにより、従来にない輝度の赤色発光が達成されることを見いだした。また、本発明は、特許文献3などで従来報告されているM13Si18Al121836、MSi5Al2ON9、M3Si5AlON10(MはCa、Ba、Srなど)
や、非特許文献2の第11章に記載されているCa1.47Eu0.03Si9Al316などのサイアロンとはまったく異なる組成および結晶構造を持つ結晶を母体とする新規な蛍光体である。さらに、特許文献6に記載されている数百ppm程度のAlを含む結晶と異なり、Alが母体結晶の主たる構成元素である結晶を母体とする蛍光体である。
【0018】
一般に、発光中心元素MとしてMnや希土類元素を無機母体結晶に付活した蛍光体は、M元素の周りの電子状態により発光色と輝度が変化する。例えば、2価のEuを発光中心
とするも蛍光体では、母体結晶を換えることにより、青色、緑色、黄色、赤色の発光が報告されている。すなわち、一見して似た組成であっても母体の結晶構造やMが取り込まれる結晶構造中の原子位置を換えると発光色や輝度はまったく違ったものとなり、異なる蛍光体と見なされる。本発明では従来の2価と4価の元素の3元窒化物とは異なる2価−3価―4価の多元酸窒化物を母体結晶としており、さらに従来報告されているサイアロン組成とはまったく異なる結晶を母体としており、このような結晶を母体とする蛍光体は従来報告されていない。しかも、本発明の組成を母体とする蛍光体は従来の結晶を母体とするものより輝度が高い赤色発光を呈する点で優れた蛍光体である。
【0019】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、以下(1)〜(14)に記載する構成を講ずることによって特定波長領域で高い輝度の発光現象を示す蛍光体を提供することに成功した。また、(15)〜(24)の方法を用いて優れた発光特性を持つ蛍光体を製造することに成功した。さらに、この蛍光体を使用し、(25)〜(34)に記載する構成を講ずることによって優れた特性を有する照明器具、画像表示装置を提供することにも成功した。すなわち、その構成は、以下(1)〜(34)に記載のとおりである。
【0020】
(1)A2Si5-xAlxx8-x(ただし、Aは、Mg、Ca、Sr、またはBaから選
ばれる1種または2種以上の元素の混合であり、xが、0.05以上0.8以下の値)で示される結晶に、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)が固溶してなる無機化合物を主成分とすることを特徴とする蛍光体。
(2)xが、0.05以上0.5以下の値であることを特徴とする前記(1)項に記載の蛍光体。
(3)無機化合物がA2-ySi5-xAlxx8-x:Myで示される固溶体結晶からなり、yが0.001≦y≦0.5の範囲の値であることを特徴とする前記(1)項ないし(2)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(4)金属元素Mに少なくともEuを含有することを特徴とする前記(1)項ないし(3)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(5)金属元素MがEuであり、金属元素AがSrであることを特徴とする前記(1)項ないし(4)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(6)金属元素MがEuであり、金属元素AがCaであることを特徴とする前記(1)項ないし(4)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(7)無機化合物がSraCabSi5-xAlxx8-x:Euyで示される固溶体結晶から
なり、a、b値が、
a+b=2−y
0.2 ≦ a/(a+b) ≦ 1.8
の範囲の値であることを特徴とする前記(1)項ないし(4)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(8)無機化合物が、平均粒径0.1μm以上20μm以下の粉体であることを特徴とする前記(1)項ないし(7)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(9)前記(1)項ないし(8)項に記載の無機化合物と他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成され、前記(1)項ないし(8)項に記載の無機化合物の含有量が10質量%以上であることを特徴とする蛍光体。
(10)前記(1)項ないし(8)項に記載の無機化合物の含有量が50質量%以上であることを特徴とする前記(9)項に記載の蛍光体。
(11)他の結晶相あるいはアモルファス相が導電性を持つ無機物質であることを特徴とする前記(9)項ないし(10)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(12)導電性を持つ無機物質が、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする前記(11)項に記載の蛍光体。
(13)100nm以上550nm以下の波長を持つ紫外線または可視光、あるいは電子線の励起源を照射することにより、570nm以上700nm以下の波長の橙色あるいは赤色を発光することを特徴とする前記(1)項ないし(12)項のいずれか1項に記載の蛍光体。
(14)励起源が照射されたとき発光する色がCIE色度座標上の(x、y)値で、0.4 ≦ x ≦0.7の条件を満たすことを特徴とする前記(13)項に記載の蛍光体。
【0021】
(15)金属化合物の混合物であって焼成することにより、M、A、Si、Al、O、N、からなる組成物(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素であり、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素)を構成しうる原料混合物を、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とする前記(1)項ないし(14)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
(16)金属化合物の混合物が、Mの金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、フッ化物、塩化物または酸窒化物と、Aの金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、フッ化物、塩化物または酸窒化物と、窒化ケイ素と、窒化アルミニウムとから選ばれる混合物であることを特徴とする前記(15)項に記載の蛍光体の製造方法。
(17)粉体または凝集体形状の金属化合物を、相対嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で容器に充填した後に、焼成することを特徴とする前記(15)項ないし(16)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
(18)容器が窒化ホウ素製であることを特徴とする前記(17)項に記載の蛍光体の製造方法。
(19)該焼結手段がホットプレスによることなく、専ら常圧焼結法あるいはガス圧焼結法による手段であることを特徴とする前記(15)項から(18)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
(20)粉砕、分級 、酸処理から選ばれる1種ないし複数の手法により、合成した蛍光
体粉末の平均粒径を50nm以上20μm以下に粒度調整することを特徴とする前記(15)項から(19)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
(21)焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは粒度調整後の蛍光体粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理することを特徴とする前記(15)項から(20)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
(22)焼成後に生成物を水または酸の水溶液からなる溶剤で洗浄することにより、生成物に含まれるガラス相、第二相、または不純物相の含有量を低減させることを特徴とする前記(15)項ないし(21)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
(23)酸が、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸の単体または混合物からなることを特徴とする前記(22)項に記載の蛍光体の製造方法。
(24)酸がフッ化水素酸と硫酸の混合物であることを特徴とする前記(22)項ないし(23)項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0022】
(25)発光光源と蛍光体から構成される照明器具において、少なくとも請求項1項ないし前記(14)項のいずれか1項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする照明器具。
(26)該発光光源が330〜500nmの波長の光を発するLEDであることを特徴とする前記(25)項に記載の照明器具。
(27)該発光光源が330〜420nmの波長の光を発するLEDであり、請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体と、330〜420nmの励起光により420nm以上500nm以下の波長に発光ピークを持つ青色蛍光体と、330〜420nmの励起光により500nm以上570nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体とを用いることにより、赤、緑、青色の光を混ぜて白色光を発することを特徴とする前記(25)項または(26)項のいずれか1項に記載の照明器具。
(28)該発光光源が420〜500nmの波長の光を発するLEDであり、請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体と、420〜500nmの励起光により500nm以上570nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体とを用いることにより、白色光を発することを特徴とする前記(25)項または(26)項のいずれか1項に記載の照明器具。
(29)該発光光源が420〜500nmの波長の光を発するLEDであり、請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体と、420〜500nmの励起光により550nm以上600nm以下の波長に発光ピークを持つ黄色蛍光体とを用いることにより、白色光を発することを特徴とする前記(25)項または(26)項のいずれか1項に記載の照明器具。
(30)該黄色蛍光体がEuを固溶させたCa−αサイアロンであることを特徴とする前記(29)項に記載の照明器具。
(31)該緑色蛍光体がEuを固溶させたβ−サイアロンであることを特徴とする前記(27)項または(28)項のいずれか1項に記載の照明器具。
【0023】
(32)励起源と蛍光体から構成される画像表示装置において、少なくとも前記(1)項ないし(14)項のいずれか1項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする画像表示装置。
(33)励起源が、電子線、電場、真空紫外線、または紫外線であることを特徴とする前記(32)項に記載の画像表示装置。
(34)画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)のいずれかであることを特徴とする前記(32)項ないし(33)項のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明の蛍光体は、2価のアルカリ土類元素とAlとSiと酸素と窒素を含む元酸窒化物を主成分として含有していることにより、従来のサイアロンや酸窒化物蛍光体より高い波長での発光を示し、橙色や赤色の蛍光体として優れている。励起源に曝された場合でも、この蛍光体は、輝度が低下することなく、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される有用な蛍光体を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の蛍光体は、少なくとも付活元素Mと、2価のアルカリ土類元素Aと、Alと、Siと、窒素と、酸素とを含有する組成物である。代表的な構成元素としては、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素を挙げることができる。これらの構成元素により、橙色ないし赤色領域での発光を示す蛍光体が得られる。
【0026】
本発明の蛍光体を構成する母体結晶は、A2Si5-xAlxx8-x(ただし、xが、0
.05以上0.8以下の値)で示される、Siの一部がAlで、Nの一部がOで置換された置換型の固溶体であり、A2Si58結晶と類似の結晶構造を持つ。A2Si5-xAlxx8-xにAlとOとが固溶することは従来は報告はなく、本発明者が新たに見いだした知見であり、本発明において初めて合成された結晶である。
【0027】
2Si5-xAlxx8-x母体結晶に、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd
、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)が固溶することにより、橙色ないし赤色に発光する蛍光体となる。Alと酸素が固
溶することにより、A2Si58結晶の化学的安定性が増して蛍光体の耐久性が向上する
。置換量xが0.05より小さいと化学的安定性向上の効果が少なく、0.8より大きいと結晶構造が不安定になるため、蛍光体の輝度が低下する。このため、xの範囲は0.05以上0.8以下の値が良い。さらに、0.2以上0.5以下の値で優れた化学的安定性と高い輝度が両立した蛍光体が得られるので、この範囲の値を持つ組成が好ましい。
【0028】
蛍光体の母体となるA2Si5-xAlxx8-xはA2Si58(ただし、Aは、Mg、Ca、Sr、またはBa)と同じ結晶構造を有し、固溶量が小さい組成では格子定数だけが変化する。従って、本発明の無機化合物は、X線回折により同定することができる。
【0029】
Mの固溶はA元素の位置に入れ替わるため、好ましい組成は、A2-ySi5-xAlxx8-x:Myである。この組成からのずれが大きくなるとA2Si5-xAlxx8-xを母体とす
る無機化合物以外の第二相の割合が増加するため輝度が低下する。無機化合物全体に占めるMの含有量であるy値は、0.001以上0.5以下の範囲の値で、高い輝度の蛍光体が得られる。0.0001原子%より小さいと発光に関与する原子の量が少ないため輝度が低下し、5原子%より大きいと濃度消光のため輝度が低下する。
【0030】
A元素の中で特に輝度が高い元素は、CaおよびSrである。これらを用いた蛍光体の発光色は異なるので、用途に応じて選択すると良い。
【0031】
金属元素MとしてEuを用いると570〜650nmの範囲にピークを持つ発光特性が得られるため、照明用途の赤色蛍光体として好ましい。
【0032】
本発明で特に輝度が高いAとMの組み合わせは、AがCaでMがEuであるCa2Si58:EuとAがSrでMがEuであるSr2Si58:Euである。
【0033】
特に中間の色調の蛍光体が必要な場合は、CaとSrを混合すると良い。なかでも、SraCabSi5-xAlxx8-x:Euyで示される固溶体結晶組成(ただし、a+b=2
−y)において、a/(a+b)値が0.2以上1.8以下の組成で輝度が高く、色調の変化が大きいので好ましい。
【0034】
本発明の蛍光体を粉体として用いる場合は、樹脂への分散性や粉体の流動性などの点から平均粒径が0.1μm以上20μm以下が好ましい。また、粉体をこの範囲の単結晶粒子とすることにより、より発光輝度が向上する。
【0035】
発光輝度が高い蛍光体を得るには、無機化合物に含まれる不純物は極力少ない方が好ましい。特に、Fe、Co、Ni不純物元素が多く含まれると発光が阻害されるので、これらの元素の合計が500ppm以下となるように、原料粉末の選定および合成工程の制御を行うとよい。
【0036】
本発明では、蛍光発光の点からは、その酸窒化物の構成成分たるA2Si5-xAlxx8-x:My組成物は、高純度で極力多く含むこと、できれば単相から構成されていることが望ましいが、特性が低下しない範囲で他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成することもできる。この場合、A2Si5-xAlxx8-x:My組成物の含有量が10質量%以上であることが高い輝度を得るために望ましい。さらに好ましくは50質量%以上で輝度が著しく向上する。本発明において主成分とする範囲は、A2Si5-xAlxx8-x:My組成物の含有量が少なくとも10質量%以上である。A2Si5-xAlxx8-x
:My組成物の含有量はX線回折を行い、リートベルト法の多相解析により求めることが
できる。簡易的には、X線回折結果を用いて、A2Si5-xAlxx8-x:My組成物結晶と他の結晶の最強線の高さの比から含有量を求めることができる。
【0037】
本発明の蛍光体を電子線で励起する用途に使用する場合は、導電性を持つ無機物質を混合することにより蛍光体に導電性を付与することができる。導電性を持つ無機物質としては、Zn、Al、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0038】
本発明の蛍光体は赤色に発色するが、黄色、緑色、青色などの他の色との混合が必要な場合は、必要に応じてこれらの色を発色する無機蛍光体を混合することができる。
【0039】
本発明の蛍光体は、組成により励起スペクトルと蛍光スペクトルが異なり、これを適宜選択組み合わせることによって、さまざまな発光スペクトルを有してなるものに設定することができる。その態様は、用途に基づいて必要とされるスペクトルに設定すればよい。なかでも、A2Si5-xAlxx8-x:MyにおいてM元素がEuであり、A元素がCaまたはSrあるいは両者の混合組成である組成物は、200nmから600nmの範囲の波長の光で励起されたとき600nm以上700nmの範囲の波長にピークを持つ発光を示し、赤色の蛍光として優れた発光特性を示す。
【0040】
以上のようにして得られる本発明の蛍光体は、通常の酸化物蛍光体や既存のサイアロン蛍光体と比べて、電子線やX線、および紫外線から可視光の幅広い励起範囲を持つこと、570nm以上の橙色や赤色の発光をすること、特に特定の組成では600nmから700nmの赤色を呈することが特徴であり、CIE色度座標上の(x、y)の値で、0.45≦x≦0.7の範囲の赤色の発光を示す。以上の発光特性により、照明器具、画像表示装置に好適である。これに加えて、高温にさらしても劣化しないことから耐熱性に優れており、酸化雰囲気および水分環境下での長期間の安定性にも優れている。
【0041】
本発明の蛍光体は製造方法を規定しないが、下記の方法で輝度が高い蛍光体を製造することができる。
【0042】
金属化合物の混合物であって焼成することにより、M、A、Si、Al、O、N、で示される組成物を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することにより、高輝度蛍光体が得られる。
【0043】
Eu、Ca、Si、Al、N,Oを含有する蛍光体を合成する場合は、窒化ユーロピウムまたは酸化ユーロピウムと、窒化カルシウムと、窒化ケイ素と、窒化アルミニウムを粉末の混合物を出発原料とするのがよい。これらの窒化物原料には通常不純物の酸素が含まれているため酸素源となる。
【0044】
また、ストロンチウムを含有する組成を合成する場合は、上記に加えて窒化ストロンチウムを添加すると結晶中のカルシウム原子の一部がストロンチウムで置換された無機化合物が得られ、高い輝度の蛍光体が得られる。
【0045】
上記の金属化合物の混合粉末は、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成するとよい。嵩密度とは粉末の体積充填率であり、一定容器に充填したときの質量と体積の比を金属化合物の理論密度で割った値である。容器としては、金属化合物との反応性が低いことから、窒化ホウ素焼結体が適している。
【0046】
嵩密度を40%以下の状態に保持したまま焼成するのは、原料粉末の周りに自由な空間がある状態で焼成すると、反応生成物が自由な空間に結晶成長することにより結晶同士の接触が少なくなるため、表面欠陥が少ない結晶を合成することが出来るためである。
【0047】
次に、得られた金属化合物の混合物を窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することにより蛍光体を合成する。焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり焼成雰囲気が窒素を含有する不活性雰囲気であることから、金属抵抗加熱抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式であり、炉の高温部の材料として炭素を用いた電気炉が好適である。焼成の手法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が、嵩密度を高く保ったまま焼成するために好ましい。
【0048】
焼成して得られた粉体凝集体が固く固着している場合は、例えばボールミル、ジェットミル等の工場的に通常用いられる粉砕機により粉砕する。粉砕は平均粒径20μm以下となるまで施す。特に好ましくは平均粒径0.1μm以上5μm以下である。平均粒径が20μmを超えると粉体の流動性と樹脂への分散性が悪くなり、発光素子と組み合わせて発光装置を形成する際に部位により発光強度が不均一になる。0.1μm以下となると、蛍光体粉体表面の欠陥量が多くなるため蛍光体の組成によっては発光強度が低下する。
【0049】
焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは粒度調整後の蛍光体粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理すると粉砕時などに表面に導入された欠陥が減少して輝度が向上する。
【0050】
焼成後に生成物を水または酸の水溶液からなる溶剤で洗浄することにより、生成物に含まれるガラス相、第二相、または不純物相の含有量を低減させることができ、輝度が向上する。この場合、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸の単体または混合物から選ぶことができ、なかでもフッ化水素酸と硫酸の混合物を用いると不純物の除去効果が大きい。
【0051】
以上説明したように、本発明蛍光体は、従来のサイアロン蛍光体より高い輝度を示し、励起源に曝された場合における蛍光体の輝度の低下が少ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に有する蛍光体である。
【0052】
本発明の照明器具は、少なくとも発光光源と本発明の蛍光体を用いて構成される。照明器具としては、LED照明器具、蛍光ランプなどがある。LED照明器具では、本発明の蛍光体を用いて、特開平5−152609、特開平7−99345、特許第2927279号などに記載されているような公知の方法により製造することができる。この場合、発光光源は330〜500nmの波長の光を発するものが望ましく、中でも330〜420nmの紫外(または紫)LED発光素子または420〜500nmの青色LED発光素子が好ましい。
【0053】
これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより、所定の波長の光を発する発光光源となり得る。
【0054】
照明器具において本発明の蛍光体を単独で使用する方法の他に、他の発光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する照明器具を構成することができる。この一例として、330〜420nmの紫外LED発光素子とこの波長で励起され420nm以上480nm以下の波長に発光ピークを持つ青色蛍光体と、500nm以上550nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体と本発明の蛍光体の組み合わせがある。このような青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Euを、緑色蛍光体としてはBaMgAl1017:Eu、Mnやβ−サイアロンにEuを固溶させた、β−サイアロン:Euを挙げることができる。この構成では、LEDが発する紫外線が蛍光体に照射されると、赤、緑、青の3色の光が発せられ、これの混合により白色の照明器具となる。
【0055】
別の手法として、420〜500nmの青色LED発光素子とこの波長で励起されて5
50nm以上600nm以下の波長に発光ピークを持つ黄色蛍光体および本発明の蛍光体との組み合わせがある。このような黄色蛍光体としては、特許第2927279号に記載の(Y、Gd)2(Al、Ga)512:Ceや特開2002−363554に記載のα−サイアロン:Euを挙げることができる。なかでもEuを固溶させたCa−α−サイアロンが、発光輝度が高いのでよい。この構成では、LEDが発する青色光が蛍光体に照射されると、赤、黄の2色の光が発せられ、これらとLED自身の青色光が混合されて白色または赤みがかった電球色の照明器具となる。
【0056】
別の手法として、420〜500nmの青色LED発光素子とこの波長で励起されて500nm以上570nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体および本発明の蛍光体との組み合わせがある。このような緑色蛍光体としては、Y2Al512:Ceやβ−サイアロンにEuを固溶させた、β−サイアロン:Euを挙げることができる。この構成では、LEDが発する青色光が蛍光体に照射されると、赤、緑の2色の光が発せられ、これらとLED自身の青色光が混合されて白色の照明器具となる。
【0057】
本発明の画像表示装置は少なくも励起源と本発明の蛍光体で構成され、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などがある。本発明の蛍光体は、100〜190nmの真空紫外線、190〜380nmの紫外線、電子線などの励起で発光することが確認されており、これらの励起源と本発明の蛍光体との組み合わせで、上記のような画像表示装置を構成することができる。
【実施例】
【0058】
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1;
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m2/g、酸素含有量0.79%の窒化アルミニウム粉末
、比表面積13.6m2/gの酸化アルミニウム粉末、窒化ストロンチウム粉末、金属ユ
ーロピウムをアンモニア中で窒化して合成した窒化ユーロピウム粉末を用いた。組成式Eu0.001Sr0.1323Al0.0333Si0.30.03330.5で示される化合物(表1に設計組成のパラメータ、表2に原料粉末の混合組成を示す。)を得るべく、窒化ケイ素粉末と、窒化アルミニウム粉末と、酸化アルミニウム粉末と、窒化ストロンチウム粉末と、窒化ユーロピウム粉末とを、各々49重量%、1.592重量%、3.96重量%、44.84重量%、0.58重量%となるように秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。得られた混合物を、500μmのふるいを通して窒化ホウ素製のるつぼに自然落下させて、るつぼに粉末を充填した。粉体の嵩密度は約24%であった。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行った。この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.5MPaとし、毎時500℃で700℃まで昇温し、1700℃で2時間保持して行った。
【0060】
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製のるつぼと乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを通した。粒度分布を測定したところ、平均粒径は8μmであった。
【0061】
次に、合成した化合物をメノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線
回折測定を行った。その結果得られたチャートを図1に、比較のためのSr2Si58
比較例2で合成)のチャートを図2に示す。X線回折から、合成した無機化合物はSr2
Si58と同じ結晶構造であり格子定数だけが変化しており、Sr2Si58の固溶体で
あることを確認した。また、Sr2Si5-xAlxx8-x結晶以外の相は検出されなかっ
た。
【0062】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、赤色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトル(図3)を蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起および発光スペクトルのピーク波長は418nmに励起スペクトルのピークがあり418nmの励起による発光スペクトルにおいて、617nmの赤色光にピークがある蛍光体であることが分かった。ピークの発光強度は、0.9475カウントであった。なおカウント値は測定装置や条件によって変化するため単位は任意単位である。本発明では、市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトニクス製、P46Y3)の450nmにおける568nmの発光強度が1となるように規格化して示してある。また、418nmの励起による発光スペクトルから求めたCIE色度は、x=0.5776、y=0.3616の赤色であった。
【0063】
この蛍光体を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0064】
比較例2;
実施例1と同じ出発原料粉末を用いて、組成式Eu0.001Sr0.1323Si0.33330.5333で示されるAlおよび酸素を含まない化合物(Sr2Si58:Eu)(表1に設計組成のパラメータ、表2に原料粉末の混合組成を示す。)を得るべく、窒化ケイ素粉末と、窒化ストロンチウム粉末と、窒化ユーロピウム粉末とを、各々54.5重量%、44.89重量%、0.58重量%となるように秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。以降は実施例1と同様の工程で蛍光体を合成した。
【0065】
次に、合成した化合物をメノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線
回折測定を行った結果、図2に示す様にSr2Si58の単相が検出された。
【0066】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、赤色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起および発光スペクトルのピーク波長は427nmに励起スペクトルのピークがあり427nmの励起による発光スペクトルにおいて、612nmの赤色光にピークがある蛍光体であることが分かった。ピークの発光強度は、1.0932カウントであった。また、427nmの励起による発光スペクトルから求めたCIE色度は、x=0.5413、y=0.3275の赤色であった。
【0067】
この蛍光体を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度が70%に低下した。
【0068】
この蛍光体は、実施例1より発光強度は高いものの、化学的安定性に劣る。
【0069】
比較例3;
実施例1と同じ出発原料粉末を用いて、組成式Eu0.001Sr0.1323Al0.1333Si0.20.13330.4で示される化合物(表1に設計組成のパラメータ、表2に原料粉末の混合
組成を示す。)を得るべく、窒化ケイ素粉末と、窒化アルミニウム粉末と、酸化アルミニウム粉末と、窒化ストロンチウム粉末と、窒化ユーロピウム粉末とを、各々32.6重量
%、6.347重量%、15.79重量%、44.7重量%、0.58重量%となるように秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。以降は実施例1と同様の工程で蛍光体を合成した。
【0070】
次に、合成した化合物をメノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線
回折測定を行った結果、A2Si5-xAlxx8-x結晶の他に未知の相が検出された。
【0071】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、赤色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起および発光スペクトルのピーク波長は412nmに励起スペクトルのピークがあり412nmの励起による発光スペクトルにおいて、624nmの赤色光にピークがある蛍光体であることが分かった。ピークの発光強度は、0.6635カウントであった。また、412nmの励起による発光スペクトルから求めたCIE色度は、x=0.5969、y=0.3967の赤色であった。
【0072】
この蛍光体を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下は見られなかった。
【0073】
この蛍光体は、化学的安定性に優れるものの、発光強度の低下が著しい。
【0074】
実施例4〜10;
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m2/g、酸素含有量0.79%の窒化アルミニウム粉末
、比表面積13.6m2/gの酸化アルミニウム粉末、窒化マグネシウム粉末、窒化スト
ロンチウム粉末、窒化カルシウム粉末、窒化バリウム粉末、金属ユーロピウムをアンモニア中で窒化して合成した窒化ユーロピウム粉末を用いた。表1に示す設計組成のパラメータからなる組成を得るべく、表2に示す混合組成に従い粉末を秤量し、実施例1と同じ工程で無機化合物を合成した。次に、合成した化合物をメノウの乳鉢を用いて粉砕した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定した結果、表3に示す励起発光特性であった。
【0075】
なかでも、実施例5に示す無機化合物(CaSrSi4.5Al0.50.57.5:Eu)は、発光強度が高く化学的安定性に優れることに加えて、発光波長が637nmと照明や画像表示装置用の蛍光体として好ましい値であり、実用上優れた組成である。この無機化合物をX線回折により測定したところ、Sr2Si58と同一の結晶構造を持つ固溶体である
ことを確認した。
【0076】
実施例および比較例の結果を、以下、表1〜3に纏めた。
表1は、各例1〜10の設計組成のパラメータを示した。
表2は、各例1〜10の原料粉末の混合組成を示した。
表3は、各例1〜10の励起および発光スペクトルのピーク波長とピーク強度を示した。
【0077】
【表1】

【表2】

【表3】

【0078】
次ぎに、本発明の窒化物からなる蛍光体を用いた照明器具について説明する。
【0079】
実施例11;
照明器具に用いる緑色の蛍光体として、以下の組成を有する蛍光体(βサイアロン:Eu)を、次の手順で合成した。先ず、組成式Eu0.00296Si0.41395Al0.013340.004440.56528で示される化合物を得るべく、窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と酸
化ユーロピュウム粉末とを、各々94.77重量%、2.68重量%、2.556重量%
となるように混合し、窒化ホウ素製るつぼに入れ、1MPaの窒素ガス中で、1900℃で8時間焼成した。得られた粉末は、β−サイアロンにEuが固溶した無機化合物であり、図4の励起発光スペクトルに示す様に緑色蛍光体であった。
【0080】
図5に示すいわゆる砲弾型白色発光ダイオードランプ(1)を製作した。2本のリードワイヤ(2、3)があり、そのうち1本(2)には、凹部があり、青色発光ダイオード素子(4)が載置されている。青色発光ダイオード素子(4)の下部電極と凹部の底面とが導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(3)とが金細線(5)によって電気的に接続されている。蛍光体は第一の蛍光体と第二の蛍光体の混合である。第一の蛍光体は、本実施例で合成したβ−サイアロン:Euである。第二の蛍光体は実施例1で合成した蛍光体である。第一の蛍光体と第二の蛍光体とを混合したもの(7)が樹脂に分散され、発光ダイオード素子(4)近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂(6)は、透明であり、青色発光ダイオード素子(4)の全体を被覆している。凹部を含むリードワイヤの先端部、青色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂は、透明な第二の樹脂(8)によって封止されている。透明な第二の樹脂(8)は全体が略円柱形状であり、その先端部がレンズ形状の曲面となっていて、砲弾型と通称されている。
【0081】
本実施例では、第一の蛍光体粉末と第二の蛍光体粉末の混合割合を5対1とし、その混合粉末を35重量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサを用いて適量滴下して、蛍光体を混合したもの(7)を分散した第一の樹脂(6)を形成した。得られた色度はx=0.33、y=0.33であり、白色であった。図6にこの白色発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【0082】
次に、この第一の実施例の砲弾型白色発光ダイオードの製造手順を説明する。 まず、1組のリードワイヤの一方(2)にある素子載置用の凹部に青色発光ダイオード素子(4)を導電性ペーストを用いてダイボンディングし、リードワイヤと青色発光ダイオード素子の下部電極とを電気的に接続するとともに青色発光ダイオード素子(4)を固定する。次に、青色発光ダイオード素子(4)の上部電極ともう一方のリードワイヤとをワイヤボンディングし、電気的に接続する。あらかじめ緑色の第一の蛍光体粉末と赤色の第二の蛍光体粉末とを混合割合を5対2として混ぜておき、この混合蛍光体粉末をエポキシ樹脂に35重量%の濃度で混ぜる。次にこれを凹部に青色発光ダイオード素子を被覆するようにしてディスペンサで適量塗布し、硬化させ第一の樹脂部(6)を形成する。最後にキャスティング法により凹部を含むリードワイヤの先端部、青色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂の全体を第二の樹脂で封止する。本実施例では、第一の樹脂と第二の樹脂の両方に同じエポキシ樹脂を使用したが、シリコーン樹脂等の他の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を選定することが好ましい。
【0083】
実施例12;
基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(21)を製作した。構図を図7に示す。可視光線反射率の高い白色のアルミナセラミックス基板(29)に2本のリードワイヤ(22、23)が固定されており、それらワイヤの片端は基板のほぼ中央部に位置しもう方端はそれぞれ外部に出ていて電気基板への実装時にはんだづけされる電極となっている。リードワイヤのうち1本(22)は、その片端に、基板中央部となるように青色発光ダイオード素子ダイオード素子(24)が載置され固定されている。青色発光ダイオード素子(24)の下部電極と下方のリードワイヤとは導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(23)とが金細線(25)によって電気的に接続されている。
【0084】
蛍光体は第一の樹脂と第二の蛍光体を混合したもの(27)が樹脂に分散され、発光ダイオード素子近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂(26)は、透明であり、青色発光ダイオード素子(24)の全体を被覆している。また、セラミック基板上には中央部に穴の開いた形状である壁面部材(30)が固定されている。壁面部材(30)は、図7に示したとおりその中央部が青色発光ダイオード素子(24)及び蛍光体(27)を分散させた第一の樹脂(26)がおさまるための穴となっていて、中央に面した部分は斜面となっている。この斜面は光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面の曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する面は白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。本実施例では、該壁面部材を白色のシリコーン樹脂(30)によって構成した。壁面部材の中央部の穴は、チップ型発光ダイオードランプの最終形状としては凹部を形成するが、ここには青色発光ダイオード素子(24)及び蛍光体(27)を分散させた第一の樹脂(26)のすべてを封止するようにして透明な第二の樹脂(28)を充填している。本実施例では、第一の樹脂(26)と第二の樹脂(28)とには同一のエポキシ樹脂を用いた。第一の蛍光体と第二の蛍光体の混合割合、達成された色度等は、第一の実施例と略同一である。製造手順は、アルミナセラミックス基板(29)にリードワイヤ(22、23)及び壁面部材(30)を固定する部分を除いては、第一の実施例の製造手順と略同一である。
【0085】
実施例13;
上記とは異なる構成の照明装置を示す。図5の照明装置において、発光素子として450nmの青色LEDを用い、本発明の実施例1の蛍光体と、Ca0.75Eu0.25Si8.625
A13.3751.12514.875の組成を持つCa−α−サイアロン:Euの黄色蛍光体とを樹脂層に分散させて青色LED上にかぶせた構造とする。導電性端子に電流を流すと、該LEDは450nmの光を発し、この光で黄色蛍光体および赤色蛍光体が励起されて黄色および赤色の光を発し、LEDの光と黄色および赤色が混合されて電球色の光を発する照明装置として機能することが確認された。
【0086】
実施例14;
上記配合とは異なる構成の照明装置を示す。図5の照明装置において、発光素子として380nmの紫外LEDを用い、本発明の実施例1の蛍光体と、青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu)と緑色蛍光体(BaMgAl1017:Eu、Mn)とを樹脂層に分散させて紫外LED上にかぶせた構造とする。導電性端子に電流を流すと、LEDは380nmの光を発し、この光で赤色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体が励起されて赤色と緑色と青色の光を発する。これらの光が混合されて白色の光を発する照明装置として機能することが確認された。
【0087】
次ぎに、本発明の蛍光体を用いた画像表示装置の設計例について説明する。
【0088】
実施例15;
図8は、画像表示装置としてのプラズマディスプレイパネルの原理的概略図である。本発明の実施例1の赤色蛍光体と緑色蛍光体(Zn2SiO4:Mn)および青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu)がそれぞれのセル34、35、36の内面に塗布されている。電極37、38、39、40に通電するとセル中でXe放電により真空紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて、赤、緑、青の可視光を発し、この光が保護層43、誘電体層42、ガラス基板45を介して外側から観察され、画像表示として機能することが明らかにされた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の窒化物蛍光体は、従来のサイアロンや酸窒化物蛍光体より高い波長での発光を示し、赤色の蛍光体として優れ、さらに励起源に曝された場合の蛍光体の輝度の低下が少
ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される窒化物蛍光体である。今後、各種表示装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に寄与することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】蛍光体(実施例1)のX線回折チャートを示す図。
【図2】蛍光体(実施例1)のX線回折チャートを示す図。
【図3】蛍光体(実施例1)の発光および励起スペクトルを示す図。
【図4】β−サイアロン:Eu緑色蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図。
【図5】本発明による照明器具(LED照明器具)の概略図。
【図6】照明器具の発光スペクトルを示す図。
【図7】本発明による照明器具(LED照明器具)の概略図。
【図8】本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)の概略図。
【符号の説明】
【0091】
1.砲弾型発光ダイオードランプ。
2、3.リードワイヤ。
4.発光ダイオード素子。
5.ボンディングワイヤ。
6、8.樹脂。
7.蛍光体。
11.基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ。
12、13.リードワイヤ。
14.発光ダイオード素子。
15.ボンディングワイヤ。
16、18.樹脂。
17.蛍光体。
19.アルミナセラミックス基板。
20.側面部材。
31.赤色蛍光体。
32.緑色蛍光体。
33.青色蛍光体。
34、35、36.紫外線発光セル。
37、38、39、40.電極。
41、42.誘電体層。
43.保護層。
44、45.ガラス基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2Si5-xAlxx8-x(ただし、Aは、Mg、Ca、Sr、またはBaから選ばれ
る1種または2種以上の元素の混合であり、xが、0.05以上0.8以下の値)で示される結晶に、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)が固溶してなる無機化合物を主成分とすることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
xが、0.05以上0.5以下の値であることを特徴とする請求項1項に記載の蛍光体。
【請求項3】
無機化合物がA2-ySi5-xAlxx8-x:Myで示される固溶体結晶からなり、yが0.001≦y≦0.5の範囲の値であることを特徴とする請求項1項ないし2項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項4】
金属元素Mに少なくともEuを含有することを特徴とする請求項1項ないし3項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項5】
金属元素MがEuであり、金属元素AがSrであることを特徴とする請求項1項ないし4項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
金属元素MがEuであり、金属元素AがCaであることを特徴とする請求項1項ないし4項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項7】
無機化合物がSraCabSi5-xAlxx8-x:Euyで示される固溶体結晶からなり
、a、b値が、
a+b=2−y
0.2 ≦ a/(a+b) ≦ 1.8
の範囲の値であることを特徴とする請求項1項ないし4項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項8】
無機化合物が、平均粒径0.1μm以上20μm以下の粉体であることを特徴とする請求項1項ないし7項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項9】
請求項1項ないし8項に記載の無機化合物と他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成され、請求項1項ないし8項に記載の無機化合物の含有量が10質量%以上であることを特徴とする蛍光体。
【請求項10】
請求項1項ないし8項に記載の無機化合物の含有量が50質量%以上であることを特徴とする請求項9項に記載の蛍光体。
【請求項11】
他の結晶相あるいはアモルファス相が導電性を持つ無機物質であることを特徴とする請求項9項ないし10項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項12】
導電性を持つ無機物質が、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項11項に記載の蛍光体。
【請求項13】
100nm以上550nm以下の波長を持つ紫外線または可視光、あるいは電子線の励起源を照射することにより、570nm以上700nm以下の波長の橙色あるいは赤色を
発光することを特徴とする請求項1項ないし12項のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項14】
励起源が照射されたとき発光する色がCIE色度座標上の(x、y)値で、
0.4 ≦ x ≦0.7の条件を満たすことを特徴とする請求項13項に記載の蛍光体。
【請求項15】
金属化合物の混合物であって焼成することにより、M、A、Si、Al、O、N、からなる組成物(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素であり、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素)を構成しうる原料混合物を、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とする請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項16】
金属化合物の混合物が、Mの金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、フッ化物、塩化物または酸窒化物と、Aの金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、フッ化物、塩化物または酸窒化物と、窒化ケイ素と、窒化アルミニウムとから選ばれる混合物であることを特徴とする請求項15項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項17】
粉体または凝集体形状の金属化合物を、相対嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で容器に充填した後に、焼成することを特徴とする請求項15項ないし16項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項18】
容器が窒化ホウ素製であることを特徴とする請求項17項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項19】
該焼結手段がホットプレスによることなく、専ら常圧焼結法あるいはガス圧焼結法による手段であることを特徴とする請求項15項から18項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項20】
粉砕、分級 、酸処理から選ばれる1種ないし複数の手法により、合成した蛍光体粉末
の平均粒径を50nm以上20μm以下に粒度調整することを特徴とする請求項15項から19項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項21】
焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは粒度調整後の蛍光体粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理することを特徴とする請求項15項から20項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項22】
焼成後に生成物を水または酸の水溶液からなる溶剤で洗浄することにより、生成物に含まれるガラス相、第二相、または不純物相の含有量を低減させることを特徴とする請求項15項ないし21項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項23】
酸が、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸の単体または混合物からなることを特徴とする請求項22項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項24】
酸がフッ化水素酸と硫酸の混合物であることを特徴とする請求項22項ないし23項のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項25】
発光光源と蛍光体から構成される照明器具において、少なくとも請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする照明器具。
【請求項26】
該発光光源が330〜500nmの波長の光を発するLEDであることを特徴とする請求項25項に記載の照明器具。
【請求項27】
該発光光源が330〜420nmの波長の光を発するLEDであり、請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体と、330〜420nmの励起光により420nm以上500nm以下の波長に発光ピークを持つ青色蛍光体と、330〜420nmの励起光により500nm以上570nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体とを用いることにより、赤、緑、青色の光を混ぜて白色光を発することを特徴とする請求項25項または26項のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項28】
該発光光源が420〜500nmの波長の光を発するLEDであり、請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体と、420〜500nmの励起光により500nm以上570nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体とを用いることにより、白色光を発することを特徴とする請求項25項または26項のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項29】
該発光光源が420〜500nmの波長の光を発するLEDであり、請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体と、420〜500nmの励起光により550nm以上600nm以下の波長に発光ピークを持つ黄色蛍光体とを用いることにより、白色光を発することを特徴とする請求項25項または26項のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項30】
該黄色蛍光体がEuを固溶させたCa−αサイアロンであることを特徴とする請求項29項に記載の照明器具。
【請求項31】
該緑色蛍光体がEuを固溶させたβ−サイアロンであることを特徴とする請求項27項または28項のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項32】
励起源と蛍光体から構成される画像表示装置において、少なくとも請求項1項ないし14項のいずれか1項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする画像表示装置。
【請求項33】
励起源が、電子線、電場、真空紫外線、または紫外線であることを特徴とする請求項32項に記載の画像表示装置。
【請求項34】
画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)のいずれかであることを特徴とする請求項32項ないし33項のいずれか1項に記載の画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−89547(P2006−89547A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274782(P2004−274782)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】