説明

血圧反射機能測定装置

【課題】 簡便な構成により、非侵襲的に血管血圧反射機能を測定することが可能な血圧反射機能測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 所定期間において測定された、血圧の時系列データ及び脈波伝播時間の時系列データとから、血圧と、対応する脈波伝播時間との組を複数抽出する。これら血圧と対応する脈波伝播時間との複数の組を用いて回帰直線を求め、この回帰直線の傾きを血管血圧反射機能の感受性の度合を表す指標として求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧反射機能を測定する技術に関し、特に、血管を支配する自律神経と血管の相互作用である血管血圧反射機能を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人体には、例えば血圧が上昇すると血管を拡張させて血圧を下げるというような血圧を一定に保とうとする仕組み(自律神経系)が備わっている。しかし、例えば血管を支配する自律神経や血管の機能が低下している場合には、血圧が上昇しても血管の拡張がうまく行なわれずに、高血圧の症状を呈することになる。
【0003】
高血圧の原因には様々なものがあり、治療に際しては要因に応じた適切な薬品を適用することが重要である。例えば、β遮断薬は心臓を支配する自律神経系に作用し、心拍数を減少させたり、収縮力を低下させたりすることで血圧を低下させている。また、カルシウム拮抗薬は、血管に直接作用し、血管を拡張させることで血圧を低下させる。
従って、血管を支配する自律神経の機能異常が原因の高血圧症に対しては、β遮断薬ではなくカルシウム拮抗薬を投薬することが効果的な治療に繋がる。
【0004】
従来、血圧変動に関連する自律神経機能(血圧反射機能)を測定する方法としては、心臓血管作動性の昇圧剤や降圧剤等の薬剤を静脈注射し、血圧と心拍数との関係から求まる回帰直線に基づいて血圧反射機能を測定する方法が知られている(非特許文献1)。
【0005】
また、患者の橈骨動脈にカニューレを挿入し、連続的に血圧を測定しながら、ヘッドアップティルト装置により患者の体位を臥位から立位へ強制的に変化させることにより、血圧反射機能を測定する方法が知られている(非特許文献2)。
【0006】
さらに、薬剤を用いることなく、ホルター心電図や血圧モニターによって血圧と心拍数を持続的に計測し、血圧と心拍数との関係から求まる回帰直線から血圧反射機能を測定する方法も提案されている(非特許文献3)。
【0007】
【非特許文献1】McGarry K, Laher M, Fitzgerald D, Horgan J, O'Brien E, O'Malley K., ”Baroreflex function in elderly hypertensives”,Hypertension. 1983 Sep-Oct;5(5):763-6.
【非特許文献2】London GM, Levenson JA, Safar ME, Simon AC, Guerin AP, Payen D, ”Hemodynamic effects of head-down tilt in normal subjects and sustained hypertensive patients”, Am J Physiol. 1983 Aug;245(2):H194-202.
【非特許文献3】Bigger JT Jr, La Rovere MT, Steinman RC, Fleiss JL, Rottman JN, Rolnitzky LM, Schwartz PJ, ”Comparison of baroreflex sensitivity and heart period variability after myocardial infarction”, J Am Coll Cardiol. 1989 Nov 15;14(6):1511-8.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1の方法は、患者に薬剤を注射し、血圧の変動を人工的に惹起する侵襲的な方法であるため、患者に負担がかかる。また、血圧と心拍数との関係に基づいて血圧反射機能を測定しているため、この方法で測定されるのは、心臓を支配する自律神経と血管の機能であって、血管を支配する自律神経の機能は測定できない。生体の自律神経支配には地域性反応があるため、非特許文献1の方法での測定結果を、血管を支配する自律神経の機能である血管血圧反射機能の測定結果として用いることはできない。
【0009】
また、非特許文献2の方法も非特許文献1の方法と同様、患者に負担がかかる。さらに、ヘッドアップティルト装置のような大掛かりな設備を必要とするため、設置場所や費用の問題があった。また、非特許文献1の方法と同様、血圧と心拍数との関係に基づいて血圧反射機能を測定しているため、血管血圧反射機能の測定はできない。
【0010】
また、非特許文献3の方法は、非特許文献1や2の方法に比べ、患者の負担は少ないが、やはり血圧と心拍数との関係に基づいて血圧反射機能を測定しているため、血管血圧反射機能の測定はできない(非特許文献3)。
【0011】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡便な構成により、非侵襲的に血管血圧反射機能を容易に測定することが可能な血圧反射機能測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の血圧反射機能測定装置は、所定期間において測定された、血圧の時系列データを取得する血圧取得手段と、所定期間に測定された、脈波伝播時間の時系列データを取得する脈波伝播時間取得手段と、血圧の時系列データと、脈波伝播時間の時系列データとを用い、血圧と、対応する脈波伝播時間との組を複数抽出する第1の抽出手段と、血圧と、対応する脈波伝播時間との複数の組を用いて第1の回帰直線を求め、第1の回帰直線の傾きを、血管血圧反射機能の感受性の度合を表す指標として求める第1の指標算出手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便な構成により、非侵襲的に血管血圧反射機能を容易に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
●(第1の実施形態)
(装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る血管血圧反射機能測定装置の一例としての生体情報測定装置の構成例を示すブロック図である。
【0015】
演算制御部10は、本実施形態の生体情報測定装置全体の動作を制御する。演算制御部10は、例えば図示しないCPU、ROM、RAM(不揮発性RAMを含む)、各種インタフェースを有する汎用コンピュータ装置であり、例えば内蔵もしくは外付けされたハードディスク、光ディスク等の大容量記憶装置やROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することにより、以下に説明する各種動作を実行、制御する。ここでは、全てをソフトウェアにより処理せず、少なくともその一部をハードウェアによって実現しても構わない。
【0016】
演算制御部10にはまた、各種の操作ガイダンスや計測結果、診断指標を表示可能な表示部70、計測結果、診断指標を記録出力可能な記録部75、計測結果、診断指標を保存する、例えばハードディスクドライブや書き込み可能な光ディスクドライブ、不揮発性半導体メモリ等からなる保存部80、音声でのガイダンス出力や各種報知音が出力可能な音声発生部85、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル等からなり、ユーザによる入力、指示を可能にする入力/指示部90が接続されている。
【0017】
また、これ以外にも、他の機器と通信を行うための有線及び/又は無線通信インタフェースや、リムーバブルメディアを用いる記憶装置等が設けられても良い。また、表示部70や記録部75は、別途外部に接続可能な構成としても良い。すなわち、機器本体が内蔵する表示部70や記録部75とは別に、より大きな表示領域を有する及び/又は表示色の多い外部表示装置や、より大きな印字領域及び/又は印刷色の多い外部記録装置を接続可能としても良い。これにより、本体の小型化と出力の多様性を同時に実現することができる。この場合、周知のディスプレイインタフェース、プリンタインタフェースを設ければ良い。
【0018】
血圧測定部205は、上腕や指先、手首等における血圧を測定する。本実施形態においては、周知の容積補償法により指先における圧波形(血圧波形)を検出するものとする。すなわち、指を挟んで発光部と受光部が位置する光電センサと、指の周囲を圧迫可能なカフとからなるセンサ25aを用い、血流量(容積)の変化を光電センサで検出しながら、容積変化を打ち消すようにカフの圧力を調整する。これにより、カフ圧の波形が血圧波形として得られる。なお、血圧測定部205における血圧測定は非観血的に測定可能な任意の方法により行なうことが可能である。
【0019】
心電信号検出部204は、胸部や四肢に装着した電極24a,24bから心電信号を検出する。なお、図1においては便宜上2つの電極24a,24bを示しているが、検出する誘導波形に応じて実際の電極の数は変化しうる。
【0020】
演算制御部10は、血圧測定部205が測定する圧波形と心電信号検出部204が検出する心電信号とから脈波伝播速度(PTT)を求める。そして、血圧測定部205が測定する血圧と、脈波伝播速度との関係を一拍毎に記録する。
そして、所定期間に渡って記録した血圧と脈波伝播速度との関係から得られる回帰直線を求め、その傾きを血管血圧反射機能の感受性の度合を表す指標として算出する。
この血管血圧反射機能の測定処理については、後で詳述する。
【0021】
心音検出部203は、心音マイク23を用いて検出された被検者の心音信号を演算制御部10に供給する。心音信号は主に、心臓における脈波の開始時点を決定するために用いられる。心音検出部203及び心音マイク23は本実施形態の生体情報測定装置に必須ではない。
【0022】
上述した構成を有する生体情報測定装置を用いて血管血圧反射機能の測定を行う際の手順、動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
血圧測定部205のセンサ25aを患者の手指、例えば人差し指に装着する。また、心電信号を測定するための電極24a,24bを、例えば患者の胸部に装着する。
さらに、測定データを記録するために、年齢、性別、身長、体重等、患者の個人情報を入力/指示部90を用いて入力する。
【0023】
測定の準備が完了し、例えば入力/指示部90から測定開始指示が与えられると、演算制御部10はまず、血圧測定部205と心電信号検出部204(あるいは心音検出部203)に対し、測定処理の開始を指示する。
【0024】
これに応答して、血圧測定部205は、上述したように容積補償法による血圧測定を行い、カフ圧を血圧測定値として演算制御部10へ出力する。また、心電信号検出部204は、得られた心電信号を演算制御部10へ出力する(S101)。
【0025】
演算制御部10は、血圧測定値(血圧波形)と心電信号(心電図波形)とを用い、一拍毎の脈波伝播時間(PTT)を求める。具体的には、例えば、心電図波形におけるR波の発生時刻(ピーク時刻)と、対応する血圧波形の立ち上がり点の時刻との差を、脈波伝播時間として算出する(S103)。
【0026】
血圧波形の立ち上がり点の時刻を求める方法に制限はなく、任意の方法を用いて行ないうる。例えば、一拍分に対応する血圧波形における最小値が得られる時刻、あるいは、血圧波形の微分波形の立ち上がり点の時刻、あるいは、血圧波形における高周波成分の発生時刻として求めることができる。
【0027】
また、S103において、演算制御部10は、脈波伝播時間の算出とともに、血圧波形から、一拍内の代表血圧(最大血圧、最小血圧あるいは脈圧)を求める。演算制御部10は、一拍毎に求めた脈波伝播時間と、代表血圧とを保存部80に記録する(S105)。
【0028】
なお、測定期間中における患者の体位は特に制限されず、座位であっても仰臥位であっても良い。また、測定期間中安静を保った状態であっても良いし、血圧変動をもたらすような何らかの刺激を患者に与えても良い。刺激を与える場合、例えば座位から立位に変えながら測定を行なったり、ヘッドアップティルト装置を用いて体位を強制的に変更させながら測定を行なったりしても良い。また、体位や姿勢の変化といった重力による刺激以外にも、映像を見せたり、音を聞かせるといったような、情緒に影響を与えるような刺激を与えても良い。
【0029】
刺激を与えて血圧を変動させることで、血管血圧反射機能の測定精度の向上が見込まれるが、刺激の付与は本発明に必須ではない。安静時においても代表血圧は一定でなく、ある程度変動しているため、血管血圧反射機能の測定は可能である。
【0030】
以上の測定、記録処理を予め定めた測定期間(例えば数分間)継続する。測定期間が終了すると(S107,Y)、演算制御部10は、測定期間中に保存部80に記録した、脈波伝播時間と代表血圧の時系列データを、相互相関の算出に適した形式に変換する。具体的には、3次スプライン補間などの方法により補間した後、再サンプリングして補間データ系列を生成する(S109)。
そして、脈波伝播時間の補間データ系列と、代表血圧の補間データ系列とを用い、相互相関関数が最大値となる時間差(遅延量)を求める(S111)。
【0031】
次に、演算制御部10は、求めた遅延量により代表血圧の補間データ系列か脈波伝播時間の補間データ系列の一方を遅延して時間軸を補正し、代表血圧と対応する脈波伝播時間の組を複数抽出する。ここでは、一例として、脈波伝播時間の補間データ系列を遅延させるものとする(S113)。
【0032】
そして、代表血圧と対応する脈波伝播時間との複数の組から、最小二乗法等を用いて両者の関係を表す回帰直線を求める(S115)。血管血圧反射機能がうまく働いている場合、血圧が上昇すると、血管を支配する自律神経が血管を拡張させて血圧を下げようとする。血管の拡張は血管壁の緊張を緩めることであるため、脈波伝播時間は増加する(伝播速度が低下する)。つまり、血圧と脈波伝播時間とは正の相関を有するのが正常である。
【0033】
しかし、血管血圧反射機能が低下した状態では、血圧と脈波伝播時間との相関が低下し、血圧が上昇しても脈波伝播時間の増加が少なくなったり、増加が見られなくなったりする。
【0034】
従って、上述したような回帰直線の傾きを見ることにより、血管血圧反射機能の感受性の度合を評価することができる。回帰直線の算出が終了すると、演算制御部10は、回帰直線を表すパラメータ(例えば、回帰直線y=ax+bにおけるa,bの値)を、測定データと同様にして、患者及び測定日時の情報と関連付けて保存部80に記録する(S117)。
【0035】
図3は、演算制御部10が求めた補間データ系列の例を示す図であり、図3(a)が代表血圧、図3(b)が脈波伝播時間の補間データ系列である。また、個々の補間データ系列において、座位及び仰臥位での測定結果に基づく補間系列を示した。
【0036】
また、図4(a)は、図3における座位での測定結果に基づく補間データ系列の相互相関係数と遅延量との関係を示しており、遅延量d=約2.3秒、すなわち、脈波伝播時間の補間データ系列の時間軸を約2.3秒遅延させた場合において、最大の相互相関係数が得られている。
【0037】
代表血圧の補間データ系列と、遅延量dだけ遅延された脈波伝播時間の補間データ系列とから、代表血圧と対応する脈波伝播時間との組を複数抽出した結果と、両者の関係から算出した回帰直線とを図4(b)に示す。図4(b)は、x軸に代表血圧BP(mmHg)、y軸に脈波伝播時間PTT(msec)を取ったxy座標系に、代表血圧と、対応する脈波伝播時間との関係をプロットするとともに、最小二乗法により求めた回帰直線を示したものである。
【0038】
図4(b)に示す例では、回帰直線の傾きが正の値であり、血圧と脈波伝播時間とが正の相関を有していることが示される。従って、血管血圧反射機能が有効に機能していることが見て取れる。また、正の傾きが大きいほど、血管血圧反射機能の感受性の度合が高いことを意味する。
【0039】
演算制御部10は、血管血圧反射機能の測定結果として、図4(b)に示すような2次元グラフを表示部70及び/又は記録部75に出力することが可能である。この出力は、血管血圧反射機能の測定が終了したら自動的に行なっても良いし、入力/指示部90からのユーザ指示に応答して行なっても良い。
【0040】
血管血圧反射機能が低い、あるいは有効に機能していない場合、回帰直線の傾きが小さくなり、場合によっては例えば図5(a)に示すように、負の傾きを有する回帰直線が得られる。高血圧症の患者において、このような血管血圧反射機能の測定結果が得られた場合には、例えばカルシウム拮抗薬のような血管を支配する自律神経に作用する降圧剤を処方することで、適切な治療を行なうことが可能となる。図5(b)は、図5(a)の測定結果を呈した患者に対して、カルシウム拮抗薬を所定期間投与した後、再度血管血圧反射機能の測定を行なった結果を示したものである。
【0041】
図5(a)と図5(b)との比較から明らかなように、血管血圧反射機能が改善されていることが分かる。血管血圧反射機能の改善は、血圧の上昇を抑制する機能の改善にほかならず、従って、図5に示す症例では、適切な薬剤の投与により、高血圧の改善が実現されている。
【0042】
(変形例1)
なお、本実施形態において、脈波伝播時間(PTT)を求める際に、心電図のR波発生時刻を用いたが、他の情報を用いることも可能である。例えば、心II音の発生時刻を用いることができる。この場合、電極24a,24bの代わりに心音マイク23を患者の胸部所定位置(第II肋間胸骨縁部)に装着する。そして、測定時には、心音検出部203が心音マイク23で得られた心音信号を演算制御部10へ出力し、心音波形から演算制御部10が心II音の発生時刻を求める。この発生時刻と、血圧波形の立ち上がり時刻との差を求めることで、一拍毎のPTTが求まる。
【0043】
(変形例2)
同様に、血圧は、容積補償法による手指での測定に限定されず、測定方法、測定部位共に変更することが可能である。例えば、上腕動脈や橈骨動脈において測定を行なっても良いし、測定方法についてもトノメトリ法や容積脈波法などを用いても良い。
【0044】
(変形例3)
なお、本実施形態においては、代表血圧や脈波伝播時間の測定機能を有する生体情報測定装置に本発明を適用した例を説明した。しかし、測定機能は必須でなく、既に記録された代表血圧や脈波伝播時間のデータに対して図2のフローチャートにおけるS109以降の処理を適用することにより、血管血圧反射機能を測定することも可能である。また、この場合、測定済みデータの取得先は任意であり、例えば保存部80であっても、通信可能に接続された外部装置であっても良い。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、血圧の変動とそれに伴う脈波伝播時間の変動との関係に基づいて、血管血圧反射機能を測定することができる。血圧及び脈波伝播時間はいずれも非侵襲的に、かつ簡便な構成により測定可能であり、患者の負荷も小さい。また、血圧と脈波伝播時間とを測定可能な従来の装置に対して容易に適用するが可能である。
【0046】
血管血圧反射機能を測定することにより、高血圧症の要因が血管血圧反射機能の低下にあるかどうかを把握することが可能となるため、治療に用いる薬剤を適切に選定することが可能になる。また、同一患者に対して薬剤の投与前、投与後に測定を行なうことで、薬剤の投与の効果を容易に確認することもできる。
【0047】
●(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、血管血圧反射機能の測定のみを行なう生体情報測定装置について説明したが、血管についてのさらに他の生体情報を測定することにより、より総合的な血管血圧反射機能の評価を行なうことが可能である。
図6は、第2の実施形態に係る生体情報測定装置の構成例を示すブロック図であり、第1の実施形態と共通の構成には同じ参照数字を付し、重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態の生体情報測定装置は、カフを用いて上肢及び下肢における血圧を測定可能であるほか、心電信号とカフから検出される脈波とを用いて脈波伝播速度を測定可能な生体情報測定装置である。
【0049】
すなわち、本実施形態において、演算制御部10は、上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202から得られる脈波情報から、上腕、足首及び足趾における収縮期血圧Psを測定し、その結果から上肢下肢血圧指数を求めることができる。上肢下肢血圧指数としては、ABI(右又は左足首収縮期血圧と上腕(代表)血圧との比)及びTBI(右又は左足趾収縮期血圧と上腕(代表)血圧との比)を求めることができる。これらは従前、動脈の閉塞有無を診断する上で有用な指標として用いられている。また、演算制御部10は、拡張期血圧Pd及び平均血圧Pmも求めることができる。
【0050】
演算制御部10はさらに、上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202から供給される脈波信号(必要に応じ、さらに心音検出部203から供給される心音信号、心電信号検出部204から供給される心電信号等を選択的に用いても良い)と、測定部位間の血管長(予め求めた血管長相当値)を用いて、心臓(大動脈弁口部)−足首又は心臓−足趾間の脈波伝播速度(PWV)を算出することができる。
【0051】
加えて、本実施形態において演算制御部10は、例えば図7に示す1〜5の式のいずれかに基づいて、血管弾性を表す生体情報(血管弾性指数と呼ぶ)を算出可能である。なお、図7の式1〜5のうち、左側の式を用いるか、右側の式(左側の式の平方根)を用いるかは、任意に定めることが可能である。血管弾性指数は、動脈硬化の程度を診断する上で有用な指標である。
【0052】
上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202は、演算制御部10の制御に従い、図示しないポンプや排気弁等を用いて、ホース21h、22hを介して接続される各2つのカフ21R、L及び22R、Lのゴム嚢(21aR,21aL,22aR,22aL)の加圧/減圧(駆血)制御を行う。上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202にはまた、ホース21h、22hを伝播してくる脈波を検出するセンサ、例えば圧力センサ(211R、L及び221R、L)が設けられ、ゴム嚢及びホースを介して伝播する脈波を電気信号変換し、演算制御部10へ出力する。なお、図6では上肢用駆血制御部201と下肢用駆血制御部202とが独立して設けられる構成を示すが、一体化されていても良い。
【0053】
(測定処理:測定前の準備)
このような構成を有する生体情報測定装置を用いて測定を行う際の手順、動作について説明する。なお、時刻設定等の装置動作に関する初期設定処理は予め行ってあるものとする。また、以下では、説明及び理解を容易にするため、2組ずつあるカフのうち、上肢、下肢一つずつを用いた測定について記述するが、4つのカフを全て用いて測定を行うことももちろん可能である。
【0054】
まず、準備段階として、カフ、センサ等を被検者に装着する。具体的には、上肢用のカフ21Rを被検者の右上腕部に、下肢用のカフ22Rを被検者の足首又は足趾に装着する。なお、足首に装着するカフと足趾に装着するカフとはその構成が異なるが、ここではいずれも下肢用カフ22Rとして説明する。カフ21、22の装着は面ファスナー等により行うことができる。
【0055】
また、心音マイク23を被検者の胸部所定位置(第II肋間胸骨縁部)にテープ等で貼り付ける。
【0056】
次に、年齢、性別、身長、体重被検者の個人情報を入力/指示部90を用いて入力する。また、第II肋間胸骨縁部と、カフ21R及びカフ22R取付部位までの血管長をそれぞれスケール等で測定(もしくは測定値から換算)するなどして、入力する。以上で測定前の準備は終了する。
【0057】
(測定処理:ABI測定)
測定の準備が完了し、例えば入力/指示部90から測定開始指示が与えられると、演算制御部10はまず、ABIを測定するため、血圧測定処理を開始する。順番は任意に設定可能であるが、まず上肢用駆血制御部201に対して、右上腕部カフ21Rへの加圧開始を指示する。
【0058】
上肢用駆血制御部201は、カフ21Rに対して空気を送り込み、ゴム嚢21aRを膨らませる。また、同時に、ゴム嚢21aRからホース21hを介して脈波が空気の圧力波として伝播し、圧力センサ211Rで検出され、この脈波を電気信号に変換し(一般には圧力センサ自体が圧力を電気信号に変換して出力する)、カフ21Rから得られた脈波信号として演算制御部10へ出力する。
【0059】
演算制御部10は、圧力センサ211Rで脈波が検出されなくなるまで、すなわち駆血されるまで上肢用駆血制御部201によってゴム嚢21aRへ空気を送り込ませ、脈波が検出されなくなった時点で加圧を停止させる。この時点でのカフ圧は、圧力センサ211Rで検出することが可能である。そして、カフ圧を徐々に減少するよう上肢用駆血制御部201に指示する。
【0060】
上肢用駆血制御部201は、図示しない排気弁を調整し、ゴム嚢21aRから空気を逃がすことにより、カフを一定の割合で減圧する。減圧の過程で、脈波が再度検出され始め、その後脈波が急激に増加する点及び、脈波の最大振幅が得られた点及び、脈波が急激に減少する点におけるカフ圧からそれぞれ収縮期血圧Ps、平均血圧Pm、拡張期血圧Pdを求める。カフ圧は減圧開始時の値、減圧率及び減圧時間を用いて算出することが可能である。このような血圧測定法はオシロメトリック法(容積脈波振動法)として知られている。拡張期血圧が求まると、カフの減圧は一気に行われる。このような血圧測定処理を、残りカフに対しても同様に行い、上肢、下肢の血圧測定を終了する。
【0061】
求めた血圧から、演算制御部10は例えば以下のようにABIを求める。
ABI=右足首収縮期血圧/右上腕血圧
測定した収縮期血圧、平均血圧及び拡張期血圧並びに、算出したABIはそれぞれ保存部80に記憶する。
【0062】
(測定処理:TBI測定)
下肢測定用カフ22Rを足趾(例えば右足親指)に装着して、ABIと同様にしてTBIを測定、算出する。算出したTBIは保存部80に記憶する。
【0063】
(測定処理:PWV測定)
次に、PWVの測定処理に移る。PWV測定時、演算制御部10は、カフ21R及び22Rを、脈波の検出に適した圧力に制御し、上腕脈波及び足首(又は足趾)脈波を取得する。また、心音検出部203を介して取得した心音信号から、脈波の立ち上がりに対応する心音(例えばII音)の発生を検出する。脈波及び心音信号はそれぞれA/D変換等の適切な処理を行い、保存部80へ記憶する。そして、PWVを以下のように求める。
PWV=AF/(t+tc)
ここで、
AF:第II肋間胸骨縁部とカフ22R取付部位(足首又は足趾)までの血管長
t:上腕脈波)の立ち上がりから足首(又は足趾)脈波の立ち上がりまでの時間差
tc:心音第II音の立ち上がりから上腕脈波の切痕点までの時間差
である。
【0064】
PWVの測定が終了すると、演算制御部10は上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202によってカフを解放させ、測定結果を保存部80に記憶し、測定処理を終了する。
【0065】
なお、上述したように、ここでは右上腕部と右足首及び右足趾での血圧及び脈波測定のみを行った場合を説明したが、左上腕部、左足首及び左足趾でも同様に血圧及び脈波測定を行うことも可能である。また、PWVについても、心臓−足首、心臓−足趾の両方について算出しても良いし、さらに左右それぞれについて算出しても良い。
【0066】
(血管弾性指数の算出)
次に、演算制御部10は、血管弾性指数を算出する。血管弾性指数としては例えば図7に示す式1〜5で求められる値を用いることが可能である。なお、式1〜5において、kは定数である。いずれの式を用いて血管弾性指数を算出するかは、予め定めておく。また、2つ以上の式について算出することももちろん可能である。
【0067】
なお、式1〜5において用いる血圧Ps、Pm及びPdは、PWVを測定した区間の中央点の血圧を用いることが理想的であるが、例えば上腕での測定値で代用することも可能である。なお、中央点の血圧は、例えばPWVを算出するために脈波を測定した部位で血圧を測定し、この測定値と予め算出した換算式とから推定することも可能である。具体的には、図8に示すような系統的体血圧分布特性と、この特性図に示される部位の2箇所で測定した値から、測定箇所の間に存在する部位の血圧を推定することが可能である。
【0068】
推定は、系統的体血圧分布特性が、大動脈弁口部から膝窩部まではPs、Pdとも線形に増加又は減少し、Pmについては全区間についてほぼ一定であることを用いて行う。具体的には、例えば足首での収縮期血圧Psと上腕での収縮期血圧Psbから、鼠蹊部での収縮期血圧Psiを推定する場合には、
(Ps−Psb):(足首−上腕の距離)=(Psi−Psb):(鼠蹊部−上腕の距離)
との関係式からPsiを推定することができる。また、Pdiについても同様にしてPd、Pdbとから推定することができる。
また、血管弾性指数の算出に用いるPWVは、心臓−足首、心臓−足趾のいずれで測定した結果を用いても良い。
【0069】
なお、ここで測定した、血圧(収縮期血圧Ps、拡張期血圧Pd及び平均血圧Pm)を含む各種生体情報及び、算出したABI、TBI、PWV、血管弾性指数等の値は、被検者の個人情報及び測定日時と対応付けして保存部80に保存しておく。例えば、被検者毎にフォルダ又はディレクトリを作成し、測定を行う都度、被検者のフォルダ又はディレクトリの中に測定毎のフォルダ又はディレクトリを更に作成し、これら生体情報や算出したパラメータ、取得した波形情報等を保存しておく。
【0070】
なお、PWV測定において求める(t+tc)は脈波伝播時間であるため、PWV測定処理を所定時間継続して行なうと共に、血圧測定部205における血圧測定をPWV測定と並行して行なうことで、血圧の変動と脈波伝播時間の変動との相関に基づく、第1の実施形態で説明した血管血圧反射機能の測定処理を行なうことができる。もちろん、上述のPWV測定処理とは独立して、血管血圧反射機能時に別途血圧測定とPWV測定を行なっても良い。
また、心電信号検出部204を用い、第1の実施形態と同様に心電信号を用いて脈波伝播時間を測定しても良いことは言うまでもない。
【0071】
本実施形態によれば、血管血圧反射機能の測定に加え、血管弾性係数の測定が可能であるため、血管血圧反射機能が低い患者がいた場合、血管弾性係数を併せて評価することにより、血管を支配している自律神経の機能の問題であるのか、血管が硬化していることにより、自律神経の制御による血管の収縮、拡張反応が鈍くなっているのかを把握することが可能になる。
また、ABIやTBIといった血管の閉塞有無に関する情報も得られるため、血管の疾患に関する総合的な評価が可能になる。
【0072】
●(第3の実施形態)
第2の実施形態においては、血管血圧反射機能に加え、血管弾性係数やABI等の生体情報を測定する生体情報測定装置を説明した。本実施形態では、さらに心臓を支配する自律神経系の血圧反射機能の測定を行なうことを特徴とする。心臓血圧反射機能を測定することで、より多面的な血圧反射機能の評価を行なうことが可能となる。
【0073】
心臓血圧反射機能の測定方法としては、例えば血圧変動と心拍数の変動との相互相関を用いる方法がある。これは、第1の実施形態において、一拍毎の脈波伝播時間の代わりに、一拍毎の瞬時心拍数を用いる方法である。
【0074】
具体的には、図2のS103において、脈波伝播時間を求める代わりに、心電信号から一拍毎の瞬時心拍数を求め、その後の処理においても、脈波伝播時間の測定結果の代わりに瞬時心拍数を用いれば良い。瞬時心拍数は、例えば心電信号のR−R間隔をn(sec)とすれば、瞬時心拍数(回/min)=60/nとして求めることができる。
図3(c)は、第1の実施形態と同様にして、瞬時心拍数を補間して得られた心拍数補間データ系列を示している。
【0075】
第1の実施形態と同様にして、血圧の変動と心拍数の変動との相互相関係数が最大になる遅延量を求め、遅延量だけ時間軸をずらした心拍数の補間データ系列と血圧補間データ系列とから代表血圧に対応する心拍数を求める。そして、得られた結果をxy座標系にプロットし、回帰直線を求める。
【0076】
図9は、心臓血圧反射機能の測定結果を示す図である。血圧が上昇すると、心臓を支配する自律神経は心拍数を下げて血圧を低下させようとする。従って、心臓血圧反射機能が正常である場合、血圧と心拍数とは逆相関を有する。図9の例では、回帰直線の傾きが負であるから、心臓血圧反射機能が正しく機能していると評価できる。負の傾きの大きさは、反射機能の感受性の度合を示す。
【0077】
演算制御部10は、心臓血圧反射機能の測定結果として、図9に示すような2次元グラフを表示部70及び/又は記録部75に出力することが可能である。この出力は、血管血圧反射機能の測定が終了したら自動的に行なっても良いし、入力/指示部90からのユーザ指示に応答して行なっても良い。また、血管血圧反射機能の測定結果である図4(b)の2次元グラフと、図9に示す2次元グラフとが対比可能なよう、同一画面又は記録媒体上に配置して出力することもできる。
【0078】
(変形例1)
本実施形態では、心臓血圧反射機能を血圧の変動と心拍数の変動との関係に基づいて測定した。しかし、例えば一回拍出量もまた心臓支配の自律神経系によって血圧変動に応じて制御されることから、一回拍出量の変動と血圧の変動との関係を用いても心臓血圧反射機能を測定することが可能である。
【0079】
一回拍出量は、例えば超音波心臓断層法、超音波ドプラ血流計測法、及びアドミッタンス法などにより算出することが可能であるが、これに限定されることはない。測定法に応じて本実施形態の生体情報測定装置に測定機器を接続することによって血圧と同時に測定することが可能である。もちろん、本変形例においても、測定機能は必須でなく、他の機器で測定された結果を用いることが可能である。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、血管血圧反射機能とともに心臓血圧反射機能を測定することにより、血圧反射機能のより総合的な評価が可能になる。例えば、降圧剤を処方する際、心臓反射機能に作用する薬剤か、血管血圧反射機能に作用する薬剤のどちらを投与するのが適当であるのかを判断する上で有用である。
さらに、第2の実施形態で述べたように、血管弾性指数や上肢下肢血圧指数等の他の指標をも参酌することで、多面的な血管疾患の評価を行なうことが可能になる。
【0081】
●(第4の実施形態)
血圧反射機能に関するさらに別の指標を測定することも可能である。例えば、映像などによる刺激などによる情動反応に基づく血圧や心拍数の変化もまた、血圧反射機能を評価する上で有用な指標と考えられる。
【0082】
心拍数変動、血圧変動などに、特に安静時に明確に含まれる、約10秒を周期とするゆらぎの成分(Mayer波と呼ばれる)に注目し、Mayer波帯に制限した心拍数変動と血圧変動の相互相関係数の最大値ρmaxを、情動反応に対する感受性の度合の指標として用いることが提案されている。
【0083】
本実施形態では、上述した血管血圧反射機能、心臓血圧反射機能に加え、このρmaxを求めることを特徴とする。
具体的には、第3の実施形態と同様に、一拍毎に測定した瞬時心拍数と代表血圧の補間曲線を再サンプリングした補間データ系列に対し、演算制御部10において低周波成分(0.04〜0.15Hz)のみを抽出し、血圧低周波成分及び心拍低周波成分として求める。
【0084】
そして、血圧低周波成分、心拍低周波成分をそれぞれx(t)およびy(t)としたとき、ある時刻においてその前後60秒間、合計120秒間にわたり、規格化相互相関関数(相互相関係数)ρxy(τ)を、以下のように求める。

【0085】
さらに、以下の式に基づいて、0≦τ[s]≦10の領域においてρxy(τ)の最大値を、最大相互相関係数ρmaxとして求める。なお、Mayer波の周期が約10秒であるため、1周期内のゆらぎを得るためにτの上限を10秒としている。

【0086】
低周波成分の抽出(フィルタリング処理)、相互相関関数及びρmaxの算出処理は、演算制御部10がソフトウェア的に行なうことが可能であり、上述の第1〜第3の実施形態に係る何れの生体情報処理装置においても、ρmaxの算出を行なうことが可能である。
【0087】
このように、ρmaxはτ[s]が正の領域における時系列データとして得られる。例えば映像によって情動反応が誘発された場合、血圧の変動と心拍数の変動の間の相関が低くなるため、ρmaxは低下する。この低下度合いの大きさは、情動反応に対する感受性の度合を表すものである。また、安静になるに従いρmaxは上昇するが、上昇のしやすさは個人によってばらつきがあり、乗り物酔いしやすい人は上昇しにくいという報告もなされている。
なお、脈波伝播時間と血圧とについても、同様にしてρmaxを求めることが可能である。
本実施形態によれば、患者の情動に対する感受性の度合をも測定することが可能であり、より総合的な血圧反射機能の診断の一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る血管血圧反射機能測定装置の一例としての生体情報測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る生体情報測定装置における、血管血圧反射機能測定処理を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る生体情報測定装置において生成される、補間データ系列の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る生体情報測定装置における、血管血圧反射機能測定処理を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る生体情報測定装置における、血管血圧反射機能の測定結果の例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る血管血圧反射機能測定装置の一例としての生体情報測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る生体情報測定装置が測定可能な血管弾性指数の算出式の例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る生体情報測定装置が、血管弾性指数を求める際に用いる血圧を推定する際に用いる系統的体血圧分布特性の例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る生体情報測定装置が測定可能な心臓血管反射機能の測定結果の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間において測定された、血圧の時系列データを取得する血圧取得手段と、
前記所定期間に測定された、脈波伝播時間の時系列データを取得する脈波伝播時間取得手段と、
前記血圧の時系列データと、前記脈波伝播時間の時系列データとを用い、血圧と、対応する脈波伝播時間との組を複数抽出する第1の抽出手段と、
前記血圧と、対応する前記脈波伝播時間との複数の組を用いて第1の回帰直線を求め、当該第1の回帰直線の傾きを血管血圧反射機能の感受性の度合を表す指標として求める第1の指標算出手段とを有することを特徴とする血圧反射機能測定装置。
【請求項2】
前記抽出手段が、前記血圧の変動と、前記脈波伝播時間の変動との相関が最も高くなるように前記代表血圧、もしくは、前記脈波伝播時間の時系列データの時間軸を補正し、補正後の時系列データに基づいて、前記血圧と、対応する前記脈波伝播時間との組を複数抽出することを特徴とする請求項1記載の血圧反射機能測定装置。
【請求項3】
前記血圧と、対応する前記脈波伝播時間との複数の組と、前記第1の回帰直線とを含んだ2次元グラフを出力する出力手段とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血圧反射機能測定装置。
【請求項4】
前記所定期間において測定された瞬時心拍数又は一回拍出量の時系列データを取得する心拍情報取得手段と、
前記血圧の時系列データと、前記瞬時心拍数又は一回拍出量の時系列データとを用い、血圧と、対応する瞬時脈拍数又は一回拍出量との組を複数抽出する第2の抽出手段と、
前記血圧と対応する前記瞬時心拍数又は一回拍出量との複数の組を用いて第2の回帰直線を求め、当該第2の回帰直線の傾きを心臓血圧反射機能の感受性の度合を表す指標として求める第2の指標算出手段とをさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の血圧反射機能測定装置。
【請求項5】
前記出力手段が、
前記血圧と、対応する前記脈波伝播時間との複数の組と、前記第1の回帰直線とを含んだ第1の2次元グラフと、
前記血圧と、対応する前記瞬時心拍数又は一回拍出量との複数の組と、前記第2の回帰直線とを含んだ第2の2次元グラフとを、
対比可能に出力することを特徴とする請求項4記載の血圧反射機能測定装置。
【請求項6】
さらに、上肢下肢血圧指数を取得する上肢下肢血圧指数取得手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の血圧反射機能測定装置。
【請求項7】
さらに、血管弾性指数を取得する血管弾性指数取得手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の血圧反射機能測定装置
【請求項8】
さらに、
前記所定期間において測定された瞬時心拍数又は一回拍出量の時系列データを取得する心拍情報取得手段と、
前記血圧の時系列データ及び前記瞬時心拍数又は一回拍出量の時系列データの低周波成分を抽出し、血圧低周波成分及び心拍低周波成分として出力するフィルタ手段と、
前記血圧低周波成分及び心拍低周波成分の規格化相互相関係数の最大値を、情動反応に対する感受性の度合の指標として求める第3の指標算出手段とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の血圧反射機能測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−86568(P2008−86568A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271105(P2006−271105)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(505089614)国立大学法人福島大学 (34)
【Fターム(参考)】