説明

血管作動薬を含有する持続放出性眼内インプラント

眼症状の治療に有用な、血管作用性化合物およびポリマーを含んで成る眼内インプラント。血管作用化合物は血管拡張薬であってよい。ポリマーは、生分解性ポリマーであってよく、眼症状は緑内障であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管作動薬を含有する眼内インプラント、および眼症状を治療するための該インプラントの使用に関する。本発明は、特に、1つまたはそれ以上の血管作動薬を含有する生分解性眼内インプラント、および緑内障のような眼症状を治療するための該インプラントの使用に関する。
【0002】
医薬組成物(同義的に組成物とも称する)は、少なくとも1つの活性成分(例えば、血管拡張薬のような血管作動薬)、ならびに、例えば、1つまたはそれ以上の賦形剤、緩衝剤、担体、安定剤、防腐剤および/または増量剤を含有する配合物であり、所望の作用または効果を得るために患者に投与するのに好適である。本明細書に開示される医薬組成物は、さまざまな種、例えばヒト患者または被験体において、診断的、治療的、美容的および/または研究的実用性を有しうる。
【背景技術】
【0003】
眼症状は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒すかまたはそれに係わる疾患、病気または症状を包含しうる。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成する組織および液体、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球内にまたは近接に存在する視神経の一部を包含する。前眼症状は、前(即ち、眼の前方)眼領域または部位、例えば、水晶体嚢の後壁または毛様体筋の前方に位置する眼周囲筋、眼瞼、または眼球の組織または液体を、冒すかまたはそれに係わる疾患、病気または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前房、虹彩、後房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒すかまたはそれらに係わる。後眼(本明細書において、同義的に「後区」とも称する)症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁面の後方位置にある)、硝子体、硝子体房、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、および後眼(または後区)領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒すかまたはそれらに係わる。
【0004】
即ち、後眼症状は、例えば、以下の疾患、病気または症状である:黄斑変性(例えば、非滲出性加齢性黄斑変性および滲出性加齢性黄斑変性);脈絡膜血管新生;急性黄斑視神経網膜症;黄斑浮腫(例えば、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫);ベーチェット病、網膜障害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞性疾患;網膜中心静脈閉塞症;ブドウ膜炎(中間部および前部ブドウ膜炎を含む);網膜剥離;後眼部位または位置を冒す眼外傷;眼レーザー治療によって生じたまたは影響を受けた後眼症状;光線力学療法によって生じたまたは影響を受けた後眼症状;光凝固;放射線網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分枝閉塞症;前部虚血性視神経障害;非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性および緑内障。緑内障は後眼症状と考えることができる。なぜなら、治療の目的が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または損失による視力低下を予防するかまたは視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)でありうるからである。
【0005】
前眼症状は、例えば、以下の疾患、病気または症状である:無水晶体症;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞症;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障は、前眼症状と考えることもできる。なぜなら、緑内障治療の臨床目的が、眼の前房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0006】
黄斑浮腫は、糖尿病、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)および網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の患者における視力低下の主要原因である。レーザー光凝固は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)の患者において、さらなる視力低下を減少させることができるが、黄斑浮腫によって既に低下した視力は、レーザー光凝固によって一般に向上しない。現在、CRVOに関連した黄斑浮腫に関して、FDA(米国食品医薬品局)認可治療が存在しない。BRVOに関連した黄斑浮腫に関しては、グリッドレーザー光凝固患者に有効な治療となる場合もある。
【0007】
糖尿病性黄斑浮腫は、リポタンパク質のような高分子の、網膜毛細血管から血管外空間への異常漏出、次に、血管外空間への水の浸透流入から生じる。網膜色素上皮における異常も、糖尿病性黄斑浮腫を生じるかまたは一因となりうる。これらの異常は、脈絡膜毛細血管から液体が増加し、網膜に入るのを可能にするか、または網膜から脈絡毛細管への液体の正常な流出を減少させうる。網膜毛細管および網膜色素上皮のレベルでの血液網膜関門(blood-retina barrier)の分解のメカニズムは、オククルディンのような接着結合タンパク質への変化によると考えられる。Antcliff R.ら、Marshall J., The pathogenesis of edema in diabetic maculopathy, Semin Ophthalmol 1999; 14: 223-232。
【0008】
静脈閉塞性疾患からの黄斑浮腫は、篩板または動静脈交差部における血栓形成から生じうる。これらの変化は、網膜毛細管透過性の増加および付随する網膜浮腫を生じる。網膜毛細管透過性の増加、それに続く網膜浮腫は、血管内皮増殖因子(VEGF)、45kD糖タンパク質(VEGFは血管透過性を亢進しうることが知られている)によって部分的に媒介される血液網膜関門の分解から起こりうる。VEGFは、接着結合タンパク質、例えばオクルジンおよび閉鎖帯の、リン酸化を増加させることによって血管透過性を調節しうる。同様に、ヒト非眼疾患状態、例えば、腹水においても、VEGFは強力な血管透過性因子(VPF)としての特徴を有する。
【0009】
緑内障は、視神経の損傷および視力低下を生じる疾患である。減少した網膜血液循環が、特に正常血圧および高齢の患者における、緑内障性視神経委縮に関連付けられているので、網膜血流が減少し緑内障を生じる要因であると考えうる。例えば下記文献を参照:Alm, A., Etiological and pharmacological aspects of blood flow and glaucoma; Kaiser, H.ら、Blood flow in retrobulbar vessels in glaucoma patients and normals およびMichelson, G.ら、Retinal circulation in glaucoma、それぞれ、Vascular Risk Factors and Neuroprotection in Glaucoma(1996)(S.M. Drance 編, Kugler Publications の)p.167-173、p.135-138およびp.217-220。
【0010】
緑内障において、一般に、周辺視力がまず失われ、次に、治療せずに放置した場合、視力が完全に失われる。緑内障の3つの基本型は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、先天性緑内障である。解放隅角緑内障は、緑内障の一般型であり、解放隅角緑内障では視神経がゆっくり損傷され、それに伴って視力が徐々に低下する。両眼が同時に冒されうるが、一方が他方より多く冒される場合もある。それほど一般的でない閉塞隅角緑内障(慢性および急性型が既知である)においては、虹彩および水晶体が眼房間の液体の流動を遮断し、それによって圧力が増し、虹彩が眼の排液系(小柱網)を圧迫する。症状は、通常は片方の眼における、痛みおよび赤みを伴う突然の霧視、嘔気および嘔吐を含む。先天性緑内障はまれである。
【0011】
視神経の損傷は、眼において圧力が増加すること(即ち、高い眼内圧)によって生じうる。高い眼内圧(IOP)(高眼圧症)は、眼の房水産生が多すぎるかまたは房水排出が少なすぎるする故に、過剰の眼房水が蓄積することによって生じうる。注目すべきことに、緑内障は、高眼圧症を合併せずに発生することがあり、その場合、視神経への血流が減少した環境が、視力低下を生じる損傷の原因でありうる。
【0012】
緑内障は、眼の損傷、眼の手術、眼腫瘍の成長後、または糖尿病のような医学的症状の合併症として発生しうる。コルチコステロイドのような特定の薬剤が、眼炎症または他の疾患の治療に使用された場合に、緑内障を生じうる。他の疾患の結果として生じる緑内障は、続発性緑内障と呼ばれる。
【0013】
緑内障治療は、視神経の損傷を遅らせることによって視力を維持することに焦点が当てられている。ほとんどの治療は、IOPを降下させることによって視神経がさらに損傷するのを防ぐことを目的としている。緑内障は、一般に、点眼剤のような薬剤で治療される。レーザー治療または手術も、緑内障の治療のために行うことができる。緑内障の治療に使用される局所β遮断薬には、チモロール(Timoptic)、ベタキソロール(Betoptic)、レボブノロール(Betagan)、カルテオロール(Ocupress)およびメチプラノロール(OptiPranolol)が含まれる。β遮断薬が効かない場合、局所プロスタグランジンも極めて有益な選択肢であることが明らかにされつつあり、ラタノプロスト(Xalatan)およびウノプロストン(Rescula)が含まれる。局所炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)は、標準的なβ遮断薬ほど有効でないが、使用しうる。局所製剤は、ドルゾラミド(Trusopt)およびブリンゾラミド(Azopt)である。経口CAIは入手可能であり、より有効であるが、それらは強い副作用を有し、長期治療にほとんど使用されない。α2−アドレナリン作動薬(選択的αアドレナリン作動薬とも称される)は有効であるが、耐用性が不十分であると考えうる。それらには、ブリモニジン(Alphagan, Allergan)が含まれる。非選択的αアドレナリン作動薬には、エピネフリンのような旧薬が含まれる。縮瞳薬は、ピロカルピンを含む旧薬である。チモロールの導入前に、標準薬が存在したが、それらは大部分が置き換えられるか、または組み合わせて使用されている。旧薬には、縮瞳薬、経口炭酸脱水酵素阻害薬および非選択的αアドレナリン作動薬が含まれる。それらは、有用であるが、強い副作用を有しうる。
【0014】
残念なことに、緑内障の治療に使用されている局所薬は、例えば、所望の治療効果を得るために適用すべき薬剤の量により、重大な不利益、欠陥および副作用を有する。
【0015】
眼症状の治療のために、眼内インプラントを製造し使用することが知られている。例えば以下を参照:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6331313号、第6726918号、第6699493号、第5501856号、第6074661号および第6369116号、ならびに米国特許出願第11/070158号、第11/292544号、第10/966764号、第11/117879号、第11/119463号、第11/116698号、第11/119021号、第11/118519号、第11/119001号、第11/118288号、第11/119024号、第10/340237号、第10/837357号、第10/837355号、第10/837142号、第10/837356号、第10/836911号、第10/837143号、第10/837260号、第10/837379号、第10/836880号および第10/918597号。
【0016】
米国特許第6713081号は、ポリビニルアルコールから製造され、眼への治療薬の制御的および持続的送達に使用される、眼インプラント装置を開示している。このインプラントは、結膜下または硝子体内的に、眼に配置しうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、必要とされるのは、網膜血液循環を向上させるために、長期間にわたって、例えば何週間にもわたって、治療有効量の活性剤を網膜組織に送達することができ、それによって重大な全身性副作用を生じずに緑内障を治療することができる眼内インプラントである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明はこの要求を満たし、網膜血液循環を向上させるために、長期間にわたって、例えば何週間にもわたって、治療有効量の活性剤を網膜組織に送達することができ、それによって重大な全身性副作用を生じずに緑内障を治療することができる眼内インプラントを提供する。
【0019】
定義
本明細書において使用される以下の語句または用語は、以下に示す意味を有する。
【0020】
「約」は、それによって修飾されている項目、パラメーターまたは用語が、記載されている項目、パラメーターまたは用語の数値の±10%の範囲を含むことを意味する。
【0021】
「投与」または「投与すること」は、医薬組成物を対象に与える(即ち、投与する)工程を意味する。本明細書に開示される医薬組成物は「局所投与」することができ、治療効果または結果が所望される部位に、またはその部位に近接に、投与することができる。例えば、眼症状(例えば、緑内障、黄斑浮腫、ブドウ膜炎または黄斑変性)を治療するために、活性剤含有ポリマーインプラントのような持続放出装置の硝子体内注入または埋め込みを行うことができる。「持続放出」は、少なくとも約5〜7日間、および数年にもわたる活性剤(例えば、血管作動薬)の放出を意味する。
【0022】
「〜と組み合わした」は、〜と混合した、〜に分散した、〜に結合した、〜を覆っている、または〜を囲んでいることを意味する。
【0023】
「生分解性ポリマー」は、生体内で分解するポリマーを意味し、該ポリマーの経時侵食が治療薬の放出に並行して、または放出後に生じる。特に、ポリマー膨潤によって薬剤を放出する働きをするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から除外される。「生分解性」および「生侵食性」は同義語であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3つ以上の異なるポリマー単位を含むポリマーであってよい。
【0024】
「全く含まない」(即ち、「〜から成る」という用語)は、使用されている計測器および方法の検出範囲において、物質が検出できないか、またはその存在が確認できないことを意味する。
【0025】
「本質的に含有しない」(または、「本質的に〜から成る」)は、極微量の物質が検出しうるにすぎないことを意味する。
【0026】
「眼内インプラント」は、眼に配置するための構成にされ、大きさにされ、または形状にされた装置または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理的条件と生物適合的であり、許容されない有害な副作用を生じない。眼内インプラントは、視野を妨害せずに眼に配置することができる。
【0027】
「医薬組成物」は、その中の活性成分(活性剤)が血管拡張薬のような血管作動薬である製剤を意味する。「製剤」という用語は、活性成分の他に少なくとも1つの付加的成分が医薬組成物に存在することを意味する。従って、医薬組成物は、ヒト患者のような対象への診断的または治療的投与(即ち、デポー剤またはインプラントの眼内注入または挿入による)に好適な配合物である。
【0028】
「実質的に含有しない」は、医薬組成物の1%未満のレベルでの存在を意味する。
【0029】
「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの一部を意味する。治療成分は、眼内インプラントの孤立領域であってもよく、またはインプラントに均一に分布されていてもよい。治療成分の治療薬は、一般に眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に有害反応を生じない形態で与えられる。
【0030】
「治療有効量」は、眼または眼の領域に重大な負のまたは有害な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、または眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するために必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0031】
「治療する」、「治療すること」または「治療」は、眼症状、眼傷害または眼損傷を減少または回復または予防するか、または傷害したまたは損傷した眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0032】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長時間または持続薬剤放出用の新規薬剤送達システム、ならびにそのようなシステムの製造法および使用法を提供する。薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラントエレメントの形態である。本発明のシステムおよび方法により、有利なことに、1つまたはそれ以上の治療薬の放出時間が長くなる。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の追加投与を必要とせずに、長時間または延長した時間にわたって、治療量の薬剤を与えられる。例えば、患者は、比較的長時間、例えばインプラントを与えてから少なくとも約1週間程度、例えば約1ヵ月〜約6ヵ月間にわたって、眼の一貫治療に利用できる実質的に一定レベルの治療活性剤を与えられる。このように放出時間が長いと、良好な治療結果を得やすくする。
【0033】
本明細書における開示による眼内インプラントは、治療成分、および治療成分と組み合わされた薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、血管拡張薬のような血管作動薬である治療薬を含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれから成る。薬剤放出持続成分は、治療成分と組み合わされて、インプラントが配置されている眼へのある量の治療薬の放出を持続させる。ある量の治療薬が、インプラントを眼に配置してから約1週間以上の期間にわたって眼に放出され、患者の眼の視力を向上させるかまたは維持するために眼症状(例えば緑内障)を軽減するかまたは治療するのに有効である。
【0034】
(治療成分と組み合わされている)薬剤放出持続成分は、ポリマー、例えば生分解性ポリマーまたはポリマーマトリックスであり得る。例えば、マトリックスは、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せから成る群から選択されるポリマーを含んで成ってよい。
【0035】
本発明のインプラントの製造法は、治療薬を生分解性ポリマーまたは複数のポリマーと組み合わすかまたは混合することを含む。次に、混合物を押出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を加工して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。
【0036】
インプラントは、種々の眼症状を治療するため、例えば、緑内障に関連した少なくとも1つの症候、または過剰興奮活性またはグルタミン酸受容体活性化に関連した眼症状を、治療、予防または軽減するために、眼領域に配置しうる。
【0037】
本発明は、眼症状を治療するための眼内インプラントを含む。インプラントは、血管作用性化合物および該血管作用性化合物と組み合わされた担体を含んで成り、それによって、眼症状を治療するのに好適な眼内インプラントを形成することができる。血管作用性化合物は血管拡張薬であり得る。血管拡張薬は、以下の物質であり得る:ムスカリン薬(例えばピロカルピン)、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)(選択的ERA、例えばシタクスセンタン、ならびにエンドセリンAおよびBの両方に作用する二重ERA、例えばボセンタン)、ホスホジエステル−5(PDE5)阻害薬、例えば、バルデナフィル(Levitra)、シルデナフィルおよびタダラフィル、血管作用性プロスタグランジン、エンドセリン誘導弛緩因子、血管作用性腸ポリペプチド作動薬、平滑筋弛緩薬、ロイコトリエン阻害薬、および薬理的に活性なそれらの塩、エステル、プロドラッグおよびその代謝産物、ならびに任意のそれらの組合せ。インプラントの担体は、生分解性ポリマーおよび/または非生分解性ポリマーを含んで成ることができる。局所点眼剤に使用するために、ピロカルピンナノ粒子を製造することは知られている。Kao H.ら、Characterization of pilocarpine-loaded chitosan/carbopol nanoparticles, J Pharm & Pharmaco, 58(2); 179-186(Feb 2006)。
【0038】
インプラントの生分解性ポリマーは、例えば、以下の物質であってよい:ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、ポリメチルビニルエーテル無水マレイン酸、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエートおよびキトサン。
【0039】
インプラントの非生分解性ポリマーは、例えば、以下の物質であってよい:エチルセルロース、エチル酢酸ビニル、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリ塩化ビニルおよびタルク。
【0040】
インプラントの生体内配置後に、インプラントは治療有効量の血管拡張薬を、約7日まで、約10日まで、約20日まで、約40日まで、約60日まで、約80日まで、約100日まで、または約3年までの期間にわたって放出する。
【0041】
本発明のインプラントにおいて、担体への血管拡張薬の均質分布が得られるように担体および血管拡張薬を混合することによって、担体を血管拡張薬と組み合わすことができる。
【0042】
本発明の他の態様は、血管拡張化合物および該血管拡張化合物と組み合わされた生分解性ポリマーを含んで成る眼症状治療用眼内インプラントであり、それによって眼症状の治療に好適な眼内インプラントを形成し、該インプラントの生体内配置後にインプラントが治療有効量の血管拡張化合物を約40日までの期間にわたって放出する。
【0043】
インプラントは眼の硝子体に配置されるように構成することができ、インプラントはロッド、ウエハまたは粒子として形成することができ、インプラントは押出法によって製造することができる。
【0044】
血管拡張化合物および生分解性ポリマーの混合物を押出し、それによって眼症状の治療に好適な硝子体内インプラントを形成することを含んで成る生分解性硝子体内インプラント製造法も本発明の範囲に含まれ、該インプラントは、インプラントの生体内配置後に治療有効量の血管拡張化合物を約40日までの期間にわたって放出する。
【0045】
生分解性眼内インプラントを患者の眼に配置することを含んで成る患者の視力を向上または維持する方法も本発明の範囲に含まれる、該インプラントは血管拡張薬である治療薬を含んで成り、該インプラントは、患者の視力を向上または維持するのに有効なある量の治療薬のインプラントからの放出を持続するのに有効な速度で分解する。この方法は、網膜眼症状、例えば、網膜損傷、緑内障または増殖性硝子体網膜症を治療するのに有効でありうる。
【0046】
インプラントは、例えばトロカールまたは25〜30ゲージ注射器を用いて、眼の後方に配置することができる。
【0047】
本発明の範囲には、緑内障の治療法であって、生分解性ポリマーおよび該ポリマーと組み合わされた治療有効量の血管作動薬を含んで成る持続放出性薬剤送達システムの硝子体内投与によって行われる治療法;および、視力を向上させる方法であって、血管作用性化合物および該血管作用性化合物と組み合わされた担体を含んで成る眼内インプラントの眼内配置によって行われる方法も含まれる。
【0048】
最後に、本発明は、血管作用性化合物および該血管作用性化合物と組み合わされた担体を含んで成る眼内インプラントの眼内配置によって行われる、視力低下を予防する方法も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明は、血管作動薬を、インプラント、例えば生分解性ポリマー(例えばPLGA)から製造されたインプラントに組み込んで、緑内障のような網膜障害の治療に使用しうるという発見に基づく。本明細書に記載されるように、1つまたはそれ以上の眼内インプラントの使用による治療薬の制御された持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させうる。インプラントは、医薬的に許容される高分子組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬活性剤、例えば、血管作動薬、抗血管新生化合物、眼出血治療化合物、非ステロイド性抗炎症薬、VEGF阻害薬および抗生物質から成る群から選択される治療薬を、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼疾患の1つまたはそれ以上の症候を、治療し、予防しおよび/または軽減するために、治療有効用量の1つまたはそれ以上の薬剤を眼領域に直接的に与えるのに有効である。即ち、患者に反復注射を受けさせるのではなく、または自己投与点滴剤の場合のような、活性剤への限定された突発的暴露だけでの無効治療ではなく、または全身投与の場合のような、より高い全身暴露およびそれに伴う副作用を生じずに、または非持続放出投与量の場合のような、パルス非持続放出投与に関連した潜在的毒性の一過性高組織濃度を生じずに、単一投与によって、治療薬が、それを必要とする部位で使用可能になり、かつ、長時間にわたって維持される。
【0050】
本発明者は、種々の時間にわたって薬剤装填量を放出することができる眼内インプラントを開発した。このようなインプラントは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルの治療薬、例えば血管拡張薬を、長期間(例えば、約1週間またはそれ以上)にわたって与える。開示されているインプラントは、眼症状、例えば後眼症状、例えば緑内障の治療に有効であり、一般に、視力を向上させるかまたは維持する。
【0051】
本発明の1つの態様において、眼内インプラントは生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つの種類である。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに有効である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスと組み合わされた治療薬を含んで成る。マトリックスは、眼領域または眼部位、例えば眼の硝子体にインプラントを配置してから約1週間以上にわたって、ある量の治療薬の放出を持続するのに有効な速度で分解する。
【0052】
治療薬は、血管作用性化合物、例えば血管拡張薬であり得る。血管拡張薬は、例えば、血管作用性プロスタグランジン、エンドセリン誘導弛緩因子、血管作用性腸ポリペプチド作動薬、平滑筋弛緩薬、ロイコトリエン阻害薬、および薬理的に活性なそれらの塩、エステル、プロドラッグおよびその代謝産物、ならびに任意のそれらの組合せであり得る。血管作用性プロスタグランジンは、天然プロスタグランジン、半合成プロスタグランジン、合成プロスタグランジン、および医薬的に許容され、薬理的に活性なそれらの塩、エステル、アミド、包接複合体、プロドラッグおよびその代謝物および類似体、ならびにそれらの任意の組合せであり得る。血管作用性プロスタグランジンは、天然プロスタグランジンおよびその加水分解性低級アルキルエステルであってよい。
【0053】
血管作用性プロスタグランジンは下記から成る群から選択できる:PGE0、PGE1、19−ヒドロキシ−PGE1、PGE2、19−ヒドロキシ−PGE2、PGA1、19−ヒドロキシ−PGA1、PGA2、19−ヒドロキシ−PGA2、PGB1、19−ヒドロキシ−PGB1、PGB2、19−ヒドロキシ−PGB2、PGB3、PGD2、PGF1、PGF2、PGE3、PGF3、PG1、およびそれらの加水分解性低級アルキルエステル、ならびにそれらのメチル、エチルおよびイソプロピルエステル。
【0054】
血管作用性プロスタグランジンは、下記の物質であり得る:アルボプロスチル、カルバプロスタサイクリン、カルボプロストトロメタミン、ジノプロストトロメタミン、ジノプロストン、エンプロスチル、イロプロスト、リポプロスト、ゲメプロスト、メテノプロスト、スルプロストン、チアプロスト、ビプロスチル、ビプロスチルメチルエステル、16,16−ジメチル1_2−PGE1メチルエステル、15−デオキシ−16−ヒドロキシ−16−メチル−PGE1メチルエステル、16,16−ジメチル−PGE1、11−デオキシ−15−メチル−PGE1、16−メチル−18,18,19,19−テトラヒドロ−カルバサイクリン、16(RS)−15−デオキシ−16−ヒドロキシ−16−メチル−PGEsメチルエステル、(+)−4,5−ジデヒドロ−16−フェノキシ−テトラノル−PGE2メチルエステル、11−デオキシ−11,16,16−トリメチル−PGE3(+)−11,16,16p−ジヒドロキシ−1,9−ジオキソ−1−(ヒドロキシメチル)−16−メチル−トランス−プロステン、9−クロロ−16,16−ジメチル−PGE2、16,16−ジメチル−PGE2、15(S)−15−メチル−PGE2、9−デオキシ−9−メチレン−16,16−ジメチル−PGE2、カリウム塩、19(R)−ヒドロキシ−PGE2、11−デオキシ−16,16−ジメチル−PGE2、およびそれらの組合せ。
【0055】
エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)は、エンドセリン受容体をブロックする薬剤である。主な2種類のERAが存在する:選択的ERA(例えばシタクスセンタン)、およびエンドセリンAおよびBの両方に作用する二重ERA(例えばボセンタン)。
【0056】
エンドセリンは、血管ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たす21−アミノ酸血管収縮性ペプチドである。種々の発現領域を有する3つのイソ型、および2つの主要受容体型ETAおよびETBが存在する。ETAは平滑筋に見出され、ETAへのエンドセリンの結合は、血管収縮およびナトリウム保持を増加させる。ETBは、内皮細胞に主に存在し、この受容体の活性化は、ナトリウム排泄増加および利尿を増加する。エンドセリンは、サラフォトキシンと呼ばれる毒素におけるIsraeli Borrowing Aspから分離された。健康な個体において、血管収縮と血管拡張との微妙なバランスが、一方のエンドセリン、カルシトニンおよび他の血管収縮物質、および他方の酸化窒素、プロスタサイクリンおよび他の血管拡張物質によって維持されている。
【0057】
エンドセリンの過剰産生は、肺動脈高血圧症を生じうる。これは、時には、エンドセリン受容体拮抗薬、例えばボセンタンまたはシタクスセンタンの使用によって、治療することができる。後者は、エンドセリンAを選択的にブロックし、血管収縮作用を減少させ、エンドセリンB刺激の増加した有利な作用、例えば酸化窒素生成を可能にする(しかし、エンドセリンB受容体の作用は、宿主細胞の型に依存して活性化される)。
【0058】
シタクスセンタンまたはシタクスセンタンナトリウム(Thelin(登録商標))は、エンドセリン−A受容体においてエンドセリンの作用を選択的にブロックする(ERBと比較して6000倍ブロックする)小分子ナトリウム塩であり、肺高血圧症の治療に関してFDA認可を受けている。ボセンタン(非選択的ERブロッカー)と比較したその主要有益性は、ERB刺激の有利な作用、例えば酸化窒素生成の、より少ない阻害であると考えられる。
【0059】
米国食品医薬品局(FDA)は、2001年に、肺動脈高血圧症(PAH)の治療用にボセンタン(Tracleer(商標);Actelion Pharmaceuticals US, Inc.)を認可した。ボセンタンは、ETAおよびETB(エンドセリンAおよびB型)受容体の両方の経口活性非ペプチド競合的拮抗薬であり、ETA受容体にわずかにより高い親和性を有する。ボセンタンは、エンドセリン−1(ET-1)、ETAおよびETB受容体に結合する神経ホルモン、と競合し、ETA受容体に結合した場合に肺動脈の収縮を生じ、ETB受容体に結合した場合に血管拡張を生じる。ET-1の濃度が、PAH患者の血漿および肺組織において増加し、従って、この疾患におけるET-1の病原性役割を示唆している。
【0060】
本発明のインプラントは、開示されている治療薬の塩も含有しうる。本発明の化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩であり、例えば、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩または硫酸水素塩、リン酸塩または酸性リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0061】
治療薬は、微粒子または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスによって封入されていてもよい。一般に、眼内インプラント中の治療薬粒子は約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。特定のインプラントにおいて、粒子は3000ナノメートルより小さいオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は約400ナノメートル未満の有効平均粒度を有してよく、さらに他の態様において、約200ナノメートル未満の大きさであってもよい。
【0062】
インプラントの治療薬は、好ましくは、インプラントの約10wt%〜90wt%である。より好ましくは、治療薬は、インプラントの約20wt%〜約80wt%である。好ましい態様において、治療薬は、インプラントの約40wt%を占める(例えば、30wt%〜50wt%)。他の態様において、治療薬は、インプラントの約60wt%を占める。
【0063】
インプラントに使用される好適な高分子材料または組成物は、眼に適合的、即ち生物適合的であり、それによって眼の機能または生理に実質的な害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に、生分解的または生侵食的である。
【0064】
有用な高分子材料の例は、限定されないが、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であり、それらは分解した際に、生理学的に許容される分解生成物(モノマーを含む)を生じる。さらに、無水物、アミド、オルトエステル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有する高分子材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わして使用してもよい。高分子材料は、付加または縮合ポリマー、好都合には縮合ポリマーであってよい。高分子材料は、架橋または非架橋、例えば低架橋であってよく、例えば、高分子材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。大抵の場合、ポリマーは、炭素および水素の他に、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として、存在しうる。窒素は、アミド、シアノ、アミノとして存在してもよい。制御薬剤送達のための被包を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, In: CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、第1巻、CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0065】
他に関心の持たれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖である。関心の持たれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食するポリマーまたは高分子材料が得られ、ラクテートラセミ体によって侵食がかなり増強される。
【0066】
有用な多糖として挙げられるのは、限定するものではないが、アルギン酸カルシウム、および機能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、例えば約5kD〜500kDの分子量のカルボキシメチルセルロースエステルである。
【0067】
関心の持たれる他のポリマーは、限定するものではないが、生物適合性であり、かつ生分解性および/または生侵食性であってよいポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せを包含する。
【0068】
本発明に使用されるポリマーまたは高分子材料の、いくつかの好ましい特徴は、生物適合性;治療成分との適合性;本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使用容易性;少なくとも約6時間、好ましくは約1日以上の、生理的環境における半減期;硝子体の粘性を有意に増加させないこと;および水不溶性を包含しうる。
【0069】
マトリックスの形成に使用される生分解性高分子材料は、酵素または加水分解不安定性になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解性または生分解性不安定架橋によって架橋させて、有用な水不溶性ポリマーを与えうる。安定度は、モノマーの選択;ホモポリマーまたはコポリマーのいずれを使用するか;ポリマーの混合物の使用;および、ポリマーが末端酸基を有するか否かに依存して、広く変化させることができる。
【0070】
ポリマーの生分解、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを制御するために、インプラントに使用される高分子組成物の相対平均分子量も同様に重要である。種々の分子量の同じかまたは異なる高分子組成物を、放出プロフィールの調節のためにインプラントに含有しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0071】
あるインプラントにおいて、グリコール酸および乳酸のコポリマーが使用され、生分解の速度は、グリコール酸/乳酸の比率によって制御される。最も急速に分解するコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または同じでない比率を有するコポリマーが、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟なインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸の%は、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%であってよい。あるインプラントにおいては、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0072】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含んで成ってよい。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含んで成ってよい。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸基を有しうる。
【0073】
侵食性ポリマーからの薬剤の放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路を通る拡散、および侵食である。侵食は、バルクまたは表面、またはその両方の組合せであり得る。本明細書に記載するように、眼内インプラントのマトリックスは、眼への埋め込みから1週間以上にわたって、ある量の治療薬の放出を持続するのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。あるインプラントにおいては、治療量の治療薬が、約1ヵ月以上、さらには約6ヵ月またはそれ以上にわたって放出される。
【0074】
生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る眼内インプラントからの治療薬の放出は、初期突発的放出、次に、放出される治療薬の量の漸増を含みうるか、または放出は、治療薬の放出の初期遅延、次に、放出の増加を含みうる。インプラントが実質的に完全に分解した際に、放出された治療薬の割合は約100%である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示するインプラントは、眼に配置してから約1週間後までは、完全に放出しないか、または治療薬の約100%を放出しない。
【0075】
インプラントの寿命にわたって、インプラントからの治療薬の比較的一定した放出速度を与えることが望ましい。例えば、インプラントの寿命にわたって、治療薬が約0.01μg〜約2μg/日の量で放出されるのが好ましい。しかし、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して、放出速度を増加または減少させるように変化させうる。さらに、治療薬の放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の線形部分および/または1つまたはそれ以上の非線形部分を有しうる。好ましくは、いったんインプラントが分解または侵食し始めたら、放出速度はゼロより大きい。
【0076】
インプラントは、一体構造であってもよく、即ち、1つまたは複数の活性剤をポリマーマトリックスに均一に分布させてもよく、または封入されもよく、その場合、活性剤の貯蔵層がポリマーマトリックスによって封入されている。製造の容易さにより、一体構造インプラントが封入形態より一般に好ましい。しかし、封入された貯蔵層型インプラントによって得られるより優れた制御は、薬剤の治療レベルが狭いウインドー内にあるいくつかの状況において有利な場合がある。さらに、本明細書に記載する治療薬を包含する治療成分を、マトリックスに不均一に分布させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分と比較して、より高い濃度の治療薬を含有する部分を有してもよい。
【0077】
本明細書に開示する眼内インプラントは、針での投与については約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさであってよく、外科的埋め込みによる投与については1mmより大、または2mmより大、例えば3mm、または10mmまでの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さの、種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは、約2mm × 0.75mm直径の寸法の円柱形ペレット(即ちロッド)であってよい。または、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円柱形ペレットであってもよい。
【0078】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にしうるように、少なくともいくらか柔軟性であってもよい。インプラントの総重量は一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは、約500μgまたは約1000μgであってよい。非ヒト個体の場合、インプラントの寸法および総重量は、個体の種類に依存して、より大きいかまたはより小さくてもよい。例えば、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有するのに対して、ウマは約30mL、ゾウは約60〜100mLである。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするか小さくしてもよく、例えば、ウマ用のインプラントは約8倍大きくし、ゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0079】
例えば、中心が1つの材料で構成され、表面は同じかまたは異なる組成の1つまたはそれ以上の層を有するインプラントを製造することができ、該層は、架橋していてもよく、または異なる分子量、異なる密度または多孔度等であってよい。例えば、薬剤の初期大量投与を急速に放出することが望ましい場合、中心は、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解の速度を速めうる。または、中心はポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、ポリラクテート外面の分解時に、中心が溶解して眼から急速に流れ出る。
【0080】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、小球体、球体、円板、プラーク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントの耐性、挿入における大きさ制限、取扱容易性等の要素によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱を容易にするために、少なくとも約0.5mm × 0.5mm、通常は約3〜10mm × 5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmの範囲であり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmの範囲である。球体は、直径約0.5μm〜4mmの範囲であり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有する。
【0081】
インプラントの大きさおよび形状は、放出速度、治療期間、埋め込み部位における薬剤濃度を調節するためにも使用しうる。より大きいインプラントは、それに比例して、より多い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有しうる。インプラントの粒度および形状は、埋め込み部位に適合するように選択される。
【0082】
治療薬、ポリマーおよび任意の他の調節剤の割合は、種々の割合でいくつかのインプラントを処方することによって、経験的に決定しうる。溶解または放出試験のUSP認可方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23; NF 18(1995)p.1790-1798)。例えば、無限降下法(infinite sink method)を使用して、水中に0.9%のNaClを含有する測定量の溶液に、計量したインプラント試料を添加する。この溶液量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%より低くなる量である。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌してインプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々の方法、例えば、分光光度法、HPLC、質量分析等によって、吸収度が一定になるまでか、または薬剤の90%より以上が放出されるまで、追跡する。
【0083】
本明細書中既に記載した眼内インプラントに含有される治療薬に加えて、眼内インプラントは1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療薬も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の種々の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗悪性腫瘍薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0084】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、限定するものではないが、米国特許第4474451号第4〜6欄、および第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含する。
【0085】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたは複数の薬剤の量は、必要とされる有効投与量およびインプラントからの所望の放出速度に依存して、大きく変化する。本明細書に示すように、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般にインプラントの約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0086】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、限定するものではないが、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩等、例えば、リン酸、クエン酸、ホウ酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等のナトリウム塩である。これらの物質は、好都合には、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに有効な量で存在する。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%までの量であってよい。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの物質は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。
【0087】
さらに、インプラントは、溶解促進成分を含有しない実質的に同じインプラントと比較して治療薬の溶解性を高めるのに有効な量で添加される溶解促進成分も含有しうる。例えば、インプラントは、治療薬の溶解性を高めるのに有効なβ−シクロデキストリンを含有しうる。β−シクロデキストリンは、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で添加しうる。特定のインプラントにおいて、β−シクロデキストリンは、インプラントの約5%(w/w)〜約15%(w/w)の量で添加される。
【0088】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用してもよい。これによって、単一投与での二相性または三相性放出を与える様々な放出プロフィールが得られ、放出パターンが大きく変化しうる。
【0089】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有しうる。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下の治療薬の放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有しうる。緩衝剤または緩衝促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲む物質のより速い溶解(これは、露出薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤侵食速度を速める)によって放出速度を速める作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または緩衝促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤侵食速度を遅くする。
【0090】
種々の方法を使用して、本明細書に記載するインプラントを製造しうる。有用な方法は、必ずしも限定されるものではないが、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス法、打抜き法、熱圧縮、それらの組合せ等を包含する。
【0091】
ある種の方法が米国特許第4997652号に記載されている。製造における溶媒の必要性をなくすために、押出法を使用しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度、一般に少なくとも摂氏約85℃において、安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0092】
さらに、インプラントの製造中にコア領域を覆う被膜を形成するために、インプラントを同時押出してもよい。
【0093】
インプラントを製造するために圧縮法を使用してもよく、一般に、押出法より速い放出速度を有するインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力、および約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用しうる。
【0094】
本発明のインプラントは、強膜における2〜3mmの切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる装置の一例が、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤の放出動態に影響を及ぼしうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より深く硝子体内にインプラントを配置し、これによってインプラントが硝子体の縁により近くなる。インプラントの位置は、エレメント周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与え、従って放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁により近く配置されたエレメントは、より遅い放出速度を生じうる)。
【0095】
本発明のインプラントは、眼疾患の症候、例えば緑内障のような眼症状を、治療するかまたは軽減するのに有効なある量の治療薬を放出するように構成される。特に、本発明は、緑内障または増殖性硝子体網膜症の1つまたはそれ以上の症候を治療するかまたは軽減する方法に使用しうる。
【0096】
本明細書に開示されるインプラントは、前記のような付加的治療薬を放出するようにも構成しうる。本明細書に示すインプラントは、下記の症状を包含する種々の眼症状を治療するために使用することができる:
【0097】
緑内障、黄斑症/網膜変性: 黄斑変性(加齢性黄斑変性(ARMD)、例えば、非滲出性加齢性黄斑変性および滲出性加齢性黄斑変性を含む)、脈絡膜新生血管形成、網膜症(糖尿病性網膜症を含む)、急性および慢性黄斑視神経網膜症、中心性漿液性網脈絡膜症、および黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を含む)。
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎: 急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット脈絡網膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核症、トキソプラスマ症)、ブドウ膜炎(中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)および前部ブドウ膜炎を含む)、多病巣性脈絡膜炎、多発消失性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症、ブドウ膜炎症候群、およびフォークト−小柳−原田症候群。
血管疾患/滲出性疾患: 網膜動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固症、網膜分岐静脈閉塞症、高血圧性眼底変化、眼虚血症候群、網膜動脈毛細血管瘤、コーツ病、傍中心窩毛細管拡張症、半網膜静脈閉塞症、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞症、網膜分岐動脈閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症、イールズ病。
外傷性/外科手術性: 交感性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固術、手術中の低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症。
増殖性疾患: 増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
感染性疾患: 眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核症、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、およびハエウジ病。
遺伝病: 色素性網膜炎、関連網膜ジストロフィーを伴う全身疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病および黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、両性同心性黄斑症、ビエッティ(Biett's)結晶状ジストロフィー、弾性線維性仮性黄色腫。
網膜断裂/円孔: 網膜剥離、黄斑円孔、巨大網膜断裂。
腫瘍: 腫瘍に関連した網膜疾患、先天性RPE肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合(combined)過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ性腫瘍。
その他: 点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎など。
【0098】
1つの態様において、インプラント、例えば本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生きているヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、インプラントは、眼の網膜下領域に接近せずに投与される。例えば、患者を治療する方法は、インプラントを後眼房に直接的に配置することを含みうる。他の態様において、患者を治療する方法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン嚢下注入、眼球後注入、および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、インプラントを患者に投与することを含んで成る。
【0099】
少なくとも1つの態様において、患者における緑内障の治療法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上の治療薬を含有する1つまたはそれ以上のインプラントを、硝子体内埋め込みまたは注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な大きさの針、例えば、22ゲージ針、27ゲージ針または30ゲージ針を有する注射器を有効に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に組成物を注入することができる。インプラントからの治療薬の長時間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
【0100】
本発明の他の態様において、眼症状治療用キットを提供し、該キットは下記を含んで成る:a) 本明細書に記載する治療薬を含有する治療成分、および薬剤放出持続成分を含んで成る長時間放出インプラントを含有する容器;および、b) 使用説明書。使用説明は、インプラントの取扱方法、眼領域へのインプラントの挿入方法、およびインプラントの使用から予期される事柄を含みうる。
【0101】
実施例
以下の非限定的実施例は、本発明の態様を例示するものである。
【実施例1】
【0102】
圧縮タブレット血管作動薬インプラントの製造
血管作動薬、例えばエンドセリン受容体拮抗薬(例えばボセンタン)、ホスホジエステル−5阻害薬(例えばバルデナフィル)またはピロカルピンを使用することができる。血管作動薬およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)を計量し、ステンレススチール混合容器に入れることができる。容器を密閉し、Turbulaミキサー上に置き、所定の強度、例えば96rpmで、約15分間混合することができる。得られる粉末ブレンドを、一度に1単位用量で、1個取りタブレットプレスに装填することができる。プレスを事前設定した圧力(例えば25psi)および時間(例えば6秒)で作動させ、タブレットを形成し、室温でプレスから取り出すことができる。血管拡張薬/PLGAの比率は、全ての圧縮タブレットインプラントについて70/30にすることができる。タブレットインプラントを眼内インプラントとして使用して、緑内障のような眼症状を治療するために治療レベルでの血管作動薬の持続放出を与えることができる。
【実施例2】
【0103】
押出インプラントの製造
血管作動薬、例えばエンドセリン受容体拮抗薬(例えばボセンタン)、ホスホジエステル−5阻害薬(例えばバルデナフィル)またはピロカルピン、およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)を計量し、ステンレススチール混合容器に入れることができる。容器を密閉し、Turbulaミキサー上に置き、所定の強度(例えば96rpm)および時間(例えば10〜15分間)で混合することができる。PLGAは、親水性末端PLGA(Boehringer Ingelheim, Wallingford, CT)および疎水性末端PLGA(Boehringer Ingelheim, Wallingford, CT)の30/10 w/w混合物を含んで成ることができる。得られた粉末ブレンドをDACA Microcompounder-Extruder(DACA, Goleta, CA)に供給し、事前設定温度(例えば115℃)およびスクリュー速度(例えば12rpm)に付すことができる。フィラメントを案内装置に押出し、指定インプラント重量に対応する正確な長さにカットすることができる。血管拡張薬/全PLGA(親水性および疎水性末端)の比率は、全ての押出インプラントについて60/40 w/wにすることができる。押出インプラントを眼内インプラントとして使用して、緑内障のような眼症状を治療するために治療レベルでの血管作動薬の持続放出を与えることができる。
【実施例3】
【0104】
血管拡張薬を含有する生分解性眼内インプラントを製造するための押出工程および圧縮法
血管拡張活性剤および生分解性ポリマー組成物を、ステンレススチール乳鉢において合わすことによって、インプラントを製造する。合わしたものを、96rpmに設定したTurbula振とう機で15分間混合する。粉末ブレンドを乳鉢の側壁からこすり落とし、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定温度で合計30分間にわたって、半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0105】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、所定のコア押出し温度で材料をフィラメントに押出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを約1mgの大きさのインプラントまたは薬剤送達システムにカットする。ロッドは約2mm長さ × 0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントの重さは約500μg〜約1200μgである。
【0106】
ポリマーメルトを所定温度でカーバー(Carver)プレスで平板化し、平板化材料を、ぞれぞれ約1mgの重さのウエハにカットすることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mmおよび厚さ約0.13mmを有する。ウエハインプラントの重さは約900μg〜1100μgである。
【0107】
生体外放出試験を、各インプラント(ロッドまたはウエハ)について行うことができる。各インプラントを、10mLのリン酸緩衝生理食塩水と共に24mLのねじ蓋ガラス瓶に37℃で入れ、1日目、4日目、7日目、14日目、28日目およびその後2週間ごとに、1mLのアリコートを取り出して同量の新しい媒質と入れ替える。
【0108】
薬剤分析をHPLCによって行うことができ、該HPLCは、Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る。30℃で加熱したUltrasphere C-18(2)、4.6 × 150mmカラムを、分離に使用することができ、検出器を264nmに設定しうる。移動相は、流速1mL/分および全実行時間12分/試料の、(10:90)MeOH−緩衝移動相であってよい。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩、氷酢酸、トリエチルアミン、メタノールを含んで成ってよい。時間経過に伴って所定量の媒質に放出される薬剤の量(μg/日)を算出することによって、放出速度を測定することができる。
【0109】
インプラント用に選択されたポリマーは、例えば、Boehringer IngelheimまたはPurac Americaから得られる。ポリマーの例は、RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)である。RG502は(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは酸末端基または末端酸基を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGのインヘレント粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
【実施例4】
【0110】
インプラントを硝子体に配置する方法
20ゲージの微小硝子体網膜(MVR)ナイフを使用して、結膜および強膜を10〜12時の位置で切開することによって、インプラントをニュージーランド白ウサギの右目の後区に配置することができる。27ゲージ針を取り付けた1-cc注射器で、50〜100μLの硝子体液を除去することができる。実施例1、2または3の1つまたは複数のインプラントを前もって装填した滅菌トロカールを、強膜切開を通して5mm挿入し、次に、プッシュワイヤで所定の位置に引き込み、インプラントを後区に残す。次に、7-0Vicryl縫合糸を使用して強膜および結膜を閉じる。
【実施例5】
【0111】
緑内障治療用の血管作用性PLA/PLGA眼内ンプラント
両眼が緑内障に罹患した72才の女性に、血管作動薬およびPLAとPLGAの組合せを含有する眼内インプラントを、各眼に投与する。インプラントは、重さが約1mgであり、約500mgの血管作動薬、例えば、ボセンタン、バルデナフィルまたはピロカルピンを含有する。1つのインプラントを、注射器で各眼の硝子体に配置する。約2日後に、患者が、眼の不快感のかなりの軽減を報告する。実験は、眼内圧が減少したことを示し、8:00AMに測定した平均眼内圧は、28mmHgから14.3mmHgに減少した。患者を約6ヵ月間にわたって毎月モニターする。眼内圧レベルは6ヵ月間にわたって15mmHg未満に維持され、患者は眼の不快感の減少を報告する。
【実施例6】
【0112】
網膜血流を増加させるための血管拡張薬PLA眼内インプラント
62才の男性が、緑内障による左眼の周辺視野減少を示す。400mgのピロカルピンおよび600mgのPLAを含有するインプラントを、米国特許出願第10/917909号または第11/021947号に示されているアプリケーターによって、左眼の硝子体に挿入する。レーザードップラー流速計(HRF)を使用して、網膜の上窩および下窩領域における血流を測定した。埋め込みから30日後に、網膜血流が10%〜30%増加し、患者の視力はさらに低下していない。
【実施例7】
【0113】
視力を向上させるための血管拡張薬PLGA眼内インプラント
69才の男性が、両眼において緑内障による周辺視野減少を示す。400mgのピロカルピンおよび600mgのPLGAを含有するインプラントを、米国特許出願第10/917909号または第11/021947号に示されているアプリケーターによって、各眼の硝子体に挿入する。レーザードップラー流速計(HRF)を使用して、網膜の上窩および下窩領域における血流を測定した。埋め込みから30日後に、網膜血流が各眼において10%〜30%増加し、6ヵ月間にわたって患者は失った視野の50%を回復する。
【実施例8】
【0114】
緑内障予防用の血管拡張薬PLGA眼内インプラント
51才の男性が、22〜24mmHgのIOP、緑内障の家族歴および初期視神経陥没損傷の所見を包含する緑内障危険因子を有するが、視野欠損は有さない。その患者に、両眼に硝子体内インプラントを投与する。インプラントは、400mgのピロカルピンおよび600mgのPLGAを含んで成り、米国特許出願第10/917909号または第11/021947号に示されているアプリケーターによって、各眼の硝子体に挿入される。レーザードップラー流速計(HRF)を使用して、網膜の上窩および下窩領域における血流を測定した。埋め込みから30日後に、網膜血流が10%〜30%増加しうる。患者を2年間にわたって追跡調査し、その間に、患者は視力低下およびさらなる視神経損傷を示さない。このような危険因子を有する患者は緑内障によるいくらかの視力低下を示すと考えられるので、これは統計的に有意である。
【実施例9】
【0115】
網膜血流減少に関与する網膜遺伝子
血管作動薬を使用して、網膜組織血流を増加させることによって緑内障のような網膜障害を治療しうることを示す実験を行った。即ち、正常網膜および緑内障網膜の遺伝子発現を比較するために、微小配列試験を行った。2つの正常対照群および4つの緑内障群を比較した。これらの6つの群のそれぞれは、6人の患者からのプールRNAを有していた。この試験は、2つの遺伝子ファミリーが緑内障患者群において一貫して変化していることを見出した。即ち、全てのヘモグロビンファミリー遺伝子が緑内障群において減少していたが、大部分のメタロチオネインIファミリー遺伝子は緑内障群において増加していた。データを表1および表2に示す。
【0116】
メタロチオネインは、虚血によって誘導される亜鉛結合ペプチドであり、その人工過発現は、虚血誘導損傷を予防することができる。例えば下記を参照:Campagne M.ら、Evidence for a protective role of metallothionein-1 in focal cerebral ischemia, Proc Natl Acad Sci USA. 1999 Oct 26; 96(22): 12870-5;Carmel J.ら、Mediators of ischemic preconditioning identified by microarray analysis of rat spinal cord, Exp Neurol. 2004 Jan; 185(1): 81-96;および、Yanagitani S.ら、Ischemia induces metallothionein III expression in neurons of rat brain, Life Sci. 1999; 64(8): 707-15。
【表1】

【表2】

【0117】
表1および表2のデータは、下記の手順および機器を使用して得られた。正常および緑内障患者からの眼試料を、死亡から1〜6時間後に得、RNAlater試薬(Ambion, Inc., Austin, Texas)に保存した。次に、各眼試料の網膜を注意深く切り離し、RNAをTrizol試薬(Invitrogen Corporation, Carlsbad, California)に分離した。そのようにして得たRNAを、RNアーゼ阻害剤の存在下にRNアーゼ不含DNアーゼIで処理して、混入DNAを除去した。次に、RNAeasyキット(Qiagen, Inc., Valencia, California)を使用して、RNAをさらに精製し、Ribogreenキット(Molecular Probes, Inc., Eugene, Oregon)で定量した。
【0118】
3組のRNA試料(6つの眼より)をプールして群を形成し、2つの対照群および4つの緑内障群を形成した。6つの群のRNA試料を、Expression Analysis Inc. Durham, North Carolinaにおいて、Affymetrix HU133 2.0-Plus whole genome Genechipsで分析した。生命情報科学分析も、Expression Analysisにおいて行い、対照と緑内障試料とで識別的に発現される遺伝子を同定した。表1および表2のデータは、対照と比較して緑内障試料において変化した発現レベルを有する遺伝子を示す測定蛍光単位である。対照は、緑内障と診断されなかった患者から得た。蛍光単位は、スキャナーで測定した。
【0119】
対照が非緑内障患者から得たプール試料であるので、表1の2つの対照における発現レベルの違いは通常の変動である。
【0120】
緑内障患者における変化したヘモグロビンおよびメタロチオネインRNAレベルは、転写レベルで影響を受けた血流減少を示す。重要なことに、この試験における緑内障患者は、IOP降下薬を摂取し、正常なIOPを有していた。血流を増加させる薬剤は、緑内障の治療においてあまり成功しておらず、その主な理由は、他の組織の血管系に影響を及ぼさずに眼の後部に血管作動薬を送達する簡単な方法がなかったからである。本明細書に開示する本発明の眼内インプラントの使用によって、眼の後部に血管作動薬を特異的に送達して、緑内障および緑内障リスク患者における局所網膜血流を増加させることができる。
【0121】
血管作動薬は、血流を増加させる任意の薬剤、例えば、ピロカルピン、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ−5阻害薬であってよい。眼内インプラントに組み込む必要のある活性剤量(数種の特異的かつ好適な血管作動薬に関する)は、治療有効硝子体濃度を達成できる量である。エンドセリン受容体拮抗薬、例えばボセンタンについては、0.3〜3μg/mLの濃度が有効になりうる。例えば、Giersbergen P.ら、Comparative investigation of the pharmacokinetics of Bosentan in Caucasian and Japanese healthy subjects, J Clin Pharmacol 2005; 45: 42-47参照。ホスホジエステラーゼ−5阻害薬、例えばバルデナフィル1-aについては、10μg/Lの濃度が有効になりうる。例えば、Rajagopalan P.ら、Effect of high fat breakfast and moderate fat evening meal on the pharmacokinetics of vardenafil, an oral phosphodiesterase-5 inhibitor for the treatment of erectile dysfunction, J Clin Pharmacol 2003; 43: 260-267参照。ピロカルピンについては、1〜10μMが有効になりうる。例えば、Yoshitomi T.ら、Pharmacological effects of pilocarpine on rabbit ciliary artery, Curr Eye Res 2000; 20(4): 254-259参照。
【0122】
本明細書に引用した全ての文献、論文、刊行物ならびに特許および特許出願の全内容は、参照して本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 血管作用性化合物、および;
(b) 血管作用性化合物と組み合わされた担体であって眼症状の治療に好適な眼内インプラントを形成する担体
を含んで成る、眼症状の治療用の眼内インプラント。
【請求項2】
血管作用性化合物が、血管拡張薬である請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
血管拡張薬が、ムスカリン薬、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ−5阻害薬、血管作用性プロスタグランジン、エンドセリン誘導弛緩因子、血管作用性腸ポリペプチド作動薬、平滑筋弛緩薬、ロイコトリエン阻害薬、および薬理的に活性なそれらの塩、エステル、プロドラッグおよび代謝産物、ならびに任意のそれらの組合せから成る群から選択される請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
担体が、生分解性ポリマーおよび非生分解性ポリマーから成る群から選択される請求項2に記載のインプラント。
【請求項5】
生分解性ポリマーが、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、ポリメチルビニルエーテル無水マレイン酸、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエートおよびキトサンから成る群から選択される請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
非生分解性ポリマーが、エチルセルロース、エチル酢酸ビニル、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリ塩化ビニルおよびタルクから成る群から選択される請求項4に記載のインプラント。
【請求項7】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約7日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項8】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約10日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項9】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約20日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項10】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約40日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項11】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約60日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項12】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約80日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項13】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約100日間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項14】
インプラントの生体内配置後に、インプラントが、治療有効量の血管拡張薬を約3年間までの期間にわたって放出する請求項2に記載のインプラント。
【請求項15】
担体への血管拡張薬の均質分布が得られるように、担体およびインプラントを混合することによって、担体が血管拡張薬と組み合わされた請求項2に記載のインプラント。
【請求項16】
(a) 血管拡張化合物、および;
(b) 血管作用性化合物と組み合わされた生分解性ポリマーであって、眼症状の治療に好適な眼内インプラントを形成するポリマー;
を含んで成り、インプラントの生体内配置後に、インプラントが治療有効量の血管拡張化合物を約40日間までの期間にわたって放出する、眼症状の治療用の眼内インプラント。
【請求項17】
眼の硝子体に配置される構造である請求項16に記載のインプラント。
【請求項18】
ロッド、ウエハまたは粒子として形成される請求項17に記載のインプラント。
【請求項19】
押出法によって形成される請求項18に記載のインプラント。
【請求項20】
血管拡張化合物および生分解性ポリマーの混合物を押出す工程を含んで成り、それによって眼症状の治療に好適な硝子体内インプラントを形成し、該インプラントの生体内配置後にインプラントが治療有効量の血管拡張化合物を約40日までの期間にわたって放出する、生分解性硝子体内インプラントの製造法。
【請求項21】
ポリマーが、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)およびそれらの組合せから成る群から選択されるポリマーを含んで成る請求項20に記載の方法。
【請求項22】
患生分解性眼内インプラントを患者の眼に配置する工程を含んで成る患者の眼の視力を向上させるかまたは維持する方法であって、インプラントが血管拡張薬である治療薬を含んで成り、インプラントが、患者の眼の視力を向上させるかまたは維持するのに有効な量の治療薬のインプラントからの放出を持続するのに有効な速度で分解する方法。
【請求項23】
網膜眼症状を治療するのに有効な請求項22に記載の方法。
【請求項24】
眼症状が網膜損傷を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
眼症状が緑内障である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
眼症状が増殖性硝子体網膜症である請求項23に記載の方法。
【請求項27】
インプラントを眼の後部に配置する請求項22に記載の方法。
【請求項28】
インプラントをトロカールで眼に配置する請求項22に記載の方法。
【請求項29】
インプラントを25〜30ゲージ注射器で眼に配置する請求項19に記載の方法。
【請求項30】
生分解性ポリマーおよび該ポリマーと組み合わされた治療有効量の血管作動薬を含んで成る持続放出薬剤送達システムを硝子体内に投与する、緑内障の治療法。
【請求項31】
血管作用性化合物および該血管作用性化合物と組み合わされた担体を含んで成る眼内インプラントを眼内に配置する工程を含んで成る、視力を向上させる方法。
【請求項32】
血管作用性化合物および該血管作用性化合物と組み合わされた担体を含んで成る眼内インプラントを眼内に配置する工程を含んで成る、視力低下を予防する方法。

【公表番号】特表2009−535422(P2009−535422A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510011(P2009−510011)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/067883
【国際公開番号】WO2007/130945
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】