血管疾患の治療のための抗増殖薬と抗炎症薬の組み合わせ
エベロリムスなどの抗増殖薬とクロベタゾールなどの抗炎症薬とを有する、ドラッグデリバリーステントなどのドラッグデリバリーシステムを提供する。また、再狭窄または脆弱性プラークなどの血管障害を治療する方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、再狭窄および脆弱性プラークなどの疾患を治療するための、エベロリムスなどの抗増殖薬とクロベタゾールなどの抗炎症薬とを含む多剤併用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラークは、狭窄および再狭窄に関連付けられている。プラークにより誘導される狭窄および再狭窄の治療は、ここ数十年の間に有意に進歩したが、血管プラークに関連した罹病率および死亡率は、未だに有意である。最近の研究は、プラークが2つの異なる一般的タイプ(標準的狭窄性プラークおよび脆弱性プラーク)のうちの一方に分類されることを示唆している。狭窄性プラークは、抗血栓性プラークと呼ばれることもあり、一般に、公知血管内腔拡大法によって有効に治療することができる。プラークは、狭窄を誘導するが、これらのアテローム性プラークそれら自体は、良性であることが多く、有効に治療できる疾病である。
【0003】
残念なことに、プラークが成熟すると、平滑筋細胞の増殖、マトリックス合成および脂質蓄積による血管の狭窄により、標準的狭窄性プラークとは全く異なるプラークの形成が生じ得る。このようなアテローム性プラークは、易血栓形成性になり、非常に危険な場合がある。この易血栓形成性または脆弱性プラークは、急性冠動脈性症候群のよくある原因であり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラーク治療の公知手順は、広く受け入れられており、標準的な狭窄性プラークの治療に良好な効力を示しているが、血栓性状態がアテローム性プラークに重なると効果がない(また、ことによると危険な)こともある。具体的にいうと、実際、ステント留置術などの経皮経管的インターベンション(PTI)のような一次治療に起因する機械的ストレスが、脆弱性プラークから血流への液体および/または固体の放出を誘発し、その結果、ことによると冠動脈血栓性閉塞が生じる。例えば、血栓形成性壊死性コアの上にある線維性キャップの破断は、卒中、一過性脳虚血発作、心筋梗塞および不安定狭心症などの急性虚血性事象において重要な役割を果たすと考えられている(Virmani R,et al.Arterioscler Thromb Vasc Biol.20:1262-1275(2000))。線維性キャップはステント配置中に破断されることがあるという証拠がある。様々な源からの人間のデータは、症候性冠動脈性アテローム硬化症における高脂質病変および/またはポジティブリモデリングされた病変および/またはエコー透過性病変には、より高い再狭窄への可能性があることを示している(例えば、J.Am.Coll.Cardiol.21(2):298−307(1993);Am.J.Cardiol.89(5):505(2002);Circ.94(12):3098−102(1996)参照)。従って、脆弱性プラークおよび再狭窄の治療が求められている。
【0005】
さらに、生体分解性で移植可能な医療器具をPTI治療に利用することが望ましいことがある。多くの治療的用途において、例えば血管開通性の維持および/またはドラッグデリバリーに関するその目的とする機能が達成されるまでの限られた期間、体内にステントが在ることが必要とされ得る。従って、生体吸収性ポリマーなどの生体分解性、生体吸収性および/または生体侵食性材料から作製されるステントは、それらの臨床的必要性がなくなった後でのみ完全に侵食されるように構成しなければならない。
【0006】
しかし、生体吸収性ステントの主な臨床上の課題の1つは、ステントの分解により誘発される急性または慢性炎症反応の充分な抑制である。完全生体分解性ステントに対する血管の反応は、金属またはポリマー被覆ステントのものとは大いに異なることがある。抗増殖薬は、多くの場合、新生血管内膜の形成を減少させるには充分であるが、炎症を充分に抑制する能力は有さない。これは、薬剤溶出ステントを用いる長期にわたるブタでの試験においてよく見られる多数の肉芽腫に反映される。
【0007】
本発明の実施形態は、これらおよび他の要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ドラッグデリバリーシステムおよびそのドラッグデリバリーシステムの使用方法を本明細書に記載する。本ドラッグデリバリーシステムは、血管疾患または関連疾患を治療するための2つ以上の薬剤を有する。前記薬剤は、少なくとも1つの抗増殖薬と、少なくとも1つの抗炎症薬と、場合によっては第三の生体活性薬剤との組み合わせであり得る。1つの実施形態において、前記抗増殖薬は、エベロリムスなどの薬剤であり得、前記抗炎症薬は、クロベタゾールなどの薬剤であり得る。
【0009】
再狭窄および脆弱性プラークなどの血管疾患の治療または予防方法も開示し、この方法は、少なくとも1つの抗増殖薬と、少なくとも1つの抗炎症薬と、場合によっては第三の生体活性薬剤との組み合わせを患者に投与することを含む。デリバリー様式は、局所性であってもよく、全身性であってもよい。
【0010】
血管疾患または関連疾患の治療または予防用の、有効量の抗増殖薬と、移植可能医療器具の構造体と、前記器具の構造体内の有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを含むドラッグデリバリーシステムを記載する。
【0011】
血管の再狭窄または脆弱性プラークを治療する方法を記載し、この方法は、有効量の抗増殖薬を患者に投与することを含む。この方法は、移植可能医療器具の構造体内から有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を血管に溶出させることをさらに含む。前記抗増殖薬と抗炎症薬の併用は、血管疾患の治療または予防用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
抗増殖薬および抗炎症薬
1つの実施形態に従って、ドラッグデリバリーシステムおよびそのドラッグデリバリーシステムの使用方法を本明細書に記載する。用語「治療」は、血管疾患の予防、軽減、遅延または除去を含む。一部の実施形態において、治療は、疾患および/または機械的介入に起因する損傷の修復も含む。本ドラッグデリバリーシステムは、血管疾患または関連疾患を治療するための2つ以上の薬剤を有する。前記薬剤は、少なくとも1つの抗増殖薬と、少なくとも1つの抗炎症薬と、場合によっては第三の生体活性薬剤との組み合わせであり得る。
【0013】
1つの実施形態において、本明細書に記載する組成物は、有効量の少なくとも1つの抗炎症薬および有効量の抗増殖薬を含む。もう1つの実施形態において、本明細書に記載する組成物は、抗炎症薬としても、抗増殖薬としても有効である、有効量の薬剤を含む。
【0014】
一部の実施形態において、前記抗増殖薬は、エベロリムス(商品名Certican(商標)、ドイツのNovartis Pharma AGで入手可能)であり得、前記抗炎症薬は、クロベタゾール(商品名Temovate(商標)、英国のGlaxosmithklaineで入手可能)であり得る。
【0015】
前記抗増殖薬および抗炎症薬は、医療器具上のポリマーマトリックスを伴うおよび/または伴わないコーティングの形態であってもよく、前記薬剤のうちの少なくとも1つを、別の用量形態、例えば、蛍光透視用色素を場合によっては伴う遊離薬剤のボーラス用量または薬剤を内包しているゲルのボーラス用量で投与してもよい。本ドラッグデリバリーシステムまたは組成物は、高密度リポタンパク質模倣物(HDL模倣物)などの第三の薬剤をさらに含む場合がある。例えば、クロベタゾールなどの抗炎症薬は、HDL模倣物のカテーテル利用デリバリーと一緒に送達することができるが、エベロリムスは、ステントにより投与される。
【0016】
本明細書に開示するドラッグデリバリーシステムまたは組成物は、血栓症、高コレステロール、出血、血管解離または穿孔、動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトの吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、I型糖尿病患者、II型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄およびアテローム硬化症進行、メタボリック症候群およびX症候群、脆弱性病変(薄い線維性キャップを有するアテローム病変(thin−capped fibroatheromatous lesion)を伴うものを含む)、全身性感染症(歯肉炎、ヘロバクテリア(hellobacteria)およびサイトメガロウイルスを含む)ならびにこれらの組み合わせなどの疾患を治療または予防するために使用することができる。
【0017】
血管へのステント留置の際の炎症
バルーンまたはステント留置などによる血管の機械的変形に関連した一般的な疾患は、再狭窄である。血管の再狭窄を導く多数の細胞メカニズムが報告されている。これらのメカニズムのうちの2つは、(1)損傷部位への平滑筋細胞の移動およびその損傷部位での平滑筋細胞の増殖、ならびに(2)損傷および異物の存在に対する急性および慢性炎症反応。
【0018】
炎症は、損傷、感染または突然の組織恒常性変化への生体防御反応である。炎症は、体中どこにでも発生することがあり、その期間の殆どが、体のその部分に限定される。炎症の周知の指標は、疼痛、発赤、暖かみ、腫脹および機能喪失である。本来、炎症反応は、有害物質を破壊、減弱および隔離し、その後、罹患組織の回復および修復を導くためのものである。炎症反応の強度は、必要とする治療的介入が少ない自己制御的であるものから、強度の介入を必要とする命にかかわるものまで様々であり得る。炎症プロセスの1つの欠点は、進行性になるその能力であり、これは、組織損傷が刺激の中和または除去後に継続することを意味する。
【0019】
血管の炎症は、炎症反応の第一段階であり、これは刺激と最初に接触した後に発現し、時には数日間継続する。血液中または組織内の刺激物質の存在が、内皮細胞を通して身体の反応を誘発する。内皮細胞層は、より大きな血管の最も内側の層であり、最も小さな血管、毛細血管、の唯一の細胞層である。内皮細胞は、好中球および他の白血球を損傷部位に誘引するケモカインと呼ばれる物質を生産する。この部位内で、好中球および内皮は、接着分子およびサイトカインの提示により細胞膜を横断して前後に情報をリレーする。細胞のクロストークは、「炎症した」好中球と「炎症した」内皮の間の物理的相互作用を促進する。
【0020】
加えて、血管内の生体分解性異物、例えば生体分解性で移植可能な医療器具(例えば、ステント)の存在は、炎症反応を導くかさらに悪化させ、従って、より積極的な再狭窄プロセスを導く。生体分解性は、血管環境の場合のように体液に暴露されると(例えば、ポリマーにおいて)発生する物理的および化学的特性の変化を一般に指す。前記特性の変化には、分子量の低下、機械的特性の変質、および侵食または吸収に起因する質量の低下が挙げられ得る。分子量の低下は、体液とポリマーとの化学反応、例えば、加水分解および/または代謝プロセスに起因し得る。このような分解反応の副産物が、炎症を誘発する原因であり得る。例えば、加水分解の副産物は、水の添加によりポリマー分子が構成成分へと切断されたときに生成される。生体分解性ポリマーの様々な分解副産物が炎症反応を誘発することは公知である。例えば、乳酸(ポリ(乳酸)ポリマーの分解副産物)が炎症反応を生じさせることは公知である。
【0021】
さらに、生体分解性器具から身体への副産物の放出は、体液に最初に暴露されたときから、その器具が完全に分解され、身体から排除または除去されるときまで、継続的に発生する。その後、この時間枠を通して、身体は、炎症誘発性副産物に継続的に暴露される。従って、分解する移植器具から抗炎症薬がこの時間枠を通して持続的に放出されることが望ましい。
【0022】
血管の炎症のもう1つの重要な病理学的特徴は、内皮細胞腫脹である。この作用は、血流速度が有意に低下し、血管がうっ滞してくるように、機能的血管径を減少させる。これらの状態が優勢であると、炎症した好中球が、血管を詰まらせるように誘導される。結果として、内皮細胞は、緊密な連結を失って、好中球を周囲組織に浸潤させる。
【0023】
最初の刺激の数時間中に、好中球は組織への侵入を開始し、何日にもわたって浸潤し続けることがある。周囲組織における炎症性細胞の出現は、組織損傷開始の特徴である。一部の炎症状態では、組織損傷は、血管の直接的損傷により生じ、その組織へのその後の好中球動員により増幅される。
【0024】
局所媒介因子により活性化されると、好中球および組織マクロファージは、その領域内の毒素を破壊し、死滅細胞を除去する物質を放出するように誘発される。残念なことに、同じこれらの物質が健康な細胞にも付帯的損傷をもたらし、それにより初期組織破壊の境界がさらに拡大する。
【0025】
組織修復は、炎症の第三および最終段階である。組織破壊は、消滅する前に完全な強度に達するために数日かかることがある。そのときまで、新たな血管の成長と破壊組織片を除去するための単球の侵入とからなる組織修復プロセスは、延期される。線維芽細胞も局所組織に侵入して、細胞外マトリックスおよびコラーゲンを置換する。組織修復プロセスは、その組織部位内で厳重に制御される。そのプロセスが調節困難になると、不適切な組織修復により、過剰な瘢痕化が導かれることとなる。組織、および炎症状態の強度/継続時間に依存して、瘢痕化の量が有意である場合もある。
【0026】
血管の炎症が関係する疾患の例は、脆弱性プラーク(VP)破裂である。ブタにおいて炎症がバルーン血管形成術部位およびステント留置部位での増殖を促進することは、以前の研究により実証されている(Kornowski,et al.,Coron Artery Dis.12(6):513−5(2001))。脆弱性プラーク部位は、他のタイプのアテローム硬化性病変より高い密度のマクロファージおよびリンパ球を有するので、これらの部位は、ステントを留置すると、平滑筋細胞増殖を促進するサイトカイン(IL−1、TNF−α)を大量に生産する。
【0027】
血管の炎症が関係する疾患のもう1つの例は、糖尿病である。2型糖尿病を有する患者が一般の集団より再狭窄の率が高いことは、研究により証明されている。糖尿病病変は多数の炎症性細胞(例えば、マクロファージ、リンパ球など)を含有するため、糖尿病患者は、再狭窄を増幅し得る前炎症性状態にある。
【0028】
移植可能医療器具
用語「移植可能医療器具」は、自己拡張式ステント、バルーン拡張式ステント、ステント・グラフトおよびグラフトを含むことを意図する。移植可能医療器具は、構造体、基質、または足場を含む。この器具の構造は、実際にはいずれのデザインのものであってもよい。例えばステントは、相互に連結している構造要素またはストラットのパターンまたは網目構造を含むことができる。図1は、ステント10の三次元投影図の一例を図示する。このステントは、多数の相互に連結している要素またはストラット15を含むパターンを有することができる。本明細書に開示する実施形態は、図1に図解されているステントまたはステントパターンに限定されない。例えば、ストラットの断面は、(図1に図示されているような)長方形、円形、楕円形などであり得る。
【0029】
図1におけるステントのストラットは、管腔外(外側)面20、内腔(内側)面25および側壁30を有するように、さらに記載することができる。これらの実施形態は、他のパターンおよび他の器具に容易に適用することができる。一般に、パターンの構造に関するバリエーションは、実際には無制限にある。図1に示されているように、ステントの幾何学的配置または形状は、その構造全体にわたって多様である。
【0030】
一部の実施形態において、ステントは、管にストラットのパターンのレーザーカッティングを施すことにより、管から形成することができる。ポリマーシートまたは金属シートをレーザーカッティングし、そのパターンを円筒型ステントの形状に丸め、縦溶接を施してステントを形成することにより、ステントを形成することもできる。他のステント形成法は周知であり、シートを化学エッチングし、円筒形にし、その後、それを溶接してステントを形成することを含む。ポリマーワイヤまたは金属ワイヤを渦巻状に巻いてステントを形成することもできる。熱可塑性樹脂の射出成形または熱硬化性ポリマー材料の反応射出成形により、ステントを形成することができる。配合ポリマーのフィラメントを押出す、または溶融紡糸することができる。その後、これらのフィラメントを切断し、リング要素にし、溶接して閉じ、波形をつけてクラウンを形成し、その後、そのクラウンを熱または溶媒により互いに溶接して、ステントを形成することができる。最後に、フープまたはリングを在庫管材料から切り出し、それらの管要素を型押ししてクラウンを形成し、溶接またはレーザー融合によりそれらのクラウンを連結させて、ステントを形成することができる。
【0031】
ステントなどの移植可能医療器具の基礎構造または基質は、完全にまたは少なくとも一部は、生体分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組み合わせ、または生体分解性ポリマーと生体安定性ポリマーの組み合わせから製造することができる。加えて、器具表面用のポリマー系コーティングは、生体分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組み合わせ、または生体分解性ポリマーと生体安定性ポリマーの組み合わせであることができる。
【0032】
抗増殖薬
抗増殖効果を有するあらゆる薬剤を本発明で使用することができる。抗増殖薬は、細胞毒素などの天然タンパク質系物質であってもよく、合成分子であってもよい。好ましくは、活性薬剤には、抗増殖性物質、例えば、アクチノマイシンDまたはその誘導体および類似体(Sigma−Aldrich 1001 West Saint Paul Avenue,Milwaukee,WI53233製;またはMerckから入手可能なCOSMEGEN)(アクチノマイシンDの別名としては、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1、およびアクチノマイシンC1が挙げられる)、すべてのタキソイド類、例えばタキソール、ドセタキソール、およびパクリタキセル、パクリタキセル誘導体、すべてのオリムス薬、例えばマクロライド系抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造的誘導体および機能的類似体、エベロリムスの構造的誘導体および機能的類似体、FKBP−12媒介mTOR阻害剤、バイオリムス、パーフェニドン、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ(co−drug)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。代表的なラパマイシン誘導体としては、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、または40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(イリノイ州、Abott ParkのAbbot Laboratories製のABT−578)、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、これらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
1つの実施形態において、抗増殖薬は、エベロリムスである。エベロリムスは、先ず、FKBP12に結合して複合体を形成することにより作用する(Neuhhaus,P.,et al.,Liver Transpl.2001 7(6):473−84(2001)(概説))。その後、そのエベロリムス/FKBP12複合体は、mTORに結合し、その活性(Id.)を遮断する。mTOR活性の遮断により、細胞は、細胞周期のG1を経ることができなくなり、結果として、増殖が阻害される。mTOR阻害は、血管平滑筋細胞移動を阻害することも証明されている。
【0034】
抗炎症薬
抗炎症効果を有するあらゆる薬剤を本発明で使用することができる。この抗炎症薬は、ステロイド性抗炎症薬であってもよく、非ステロイド性抗炎症薬であってもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、抗炎症薬としては、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザク、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメラインス、ブロフェラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリゾン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサル、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコルト、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニゾリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルキアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダプ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、二酪酸メクロリゾン、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサン多硫酸ナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、パーフェニドン、ピロキシカム、桂皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、ラロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラクナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス、ピメコルリムス、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
1つの実施形態において、抗炎症薬は、クロベタゾールである。クロベタゾールは、コルチコステロイド受容体(核受容体の一類)に結合するコルチコステロイドである。その後、そのコルチコステロイド受容体へのクロベタゾールの結合は、炎症を抑制するように遺伝子発現を改変する。例えば、コルチコステロイドは、NFkB(炎症を促進する遺伝子発現を変化させる原因である核因子)の活性化を阻害する。炎症の軽減は、小分子細胞(SMC)過剰増殖を促進するメカニズムも阻害し得る。これは、デキサメタゾン(クロベタゾールと比較すると効力が低いグルココルチコイド)がPGDFの生産を減少させ、従って、抗増殖特性を有することで証明される。クロベタゾールは、類似の経路により作用し、デキサメタゾンより効力が高い。
【0036】
投薬量
好ましい治療効果を生じさせるために必要な抗増殖薬および抗炎症薬の投薬量または濃度は、その生体活性薬剤が毒性効果を生じさせるレベルより低く、且つ、未治療の結果が得られるレベルより高くなければならない。これらの薬剤の投薬量または濃度は、患者の特定の環境、外傷の性質、望まれる療法の性質、投与された成分が血管部位に存在する時間、ならびに他の活性薬剤を利用する場合には、その物質または物質の組み合わせの性質およびタイプなどの因子に依存し得る。治療有効投薬量は、経験的に、例えば、適する動物モデル系から血管を浸出させ、免疫組織化学的、蛍光または電子顕微鏡法を用いて、薬剤およびその効果を検出することにより、または適するインビトロ試験を行うことにより、決定することができる。
【0037】
1つの実施形態において、生体活性薬剤は、約0%超から約100%の抗増殖薬および約100%未満から約0%超の抗炎症薬を含む全薬剤負荷材料が約0.01重量%から約100重量%未満の間、さらに好ましくは約5重量%から50重量%の間である負荷率で、ポリマーコーティングに組み込むことができる。抗増殖薬と抗炎症薬の相対量は、治療する病変のタイプにより決定することができる。例えば、エベロリムスを抗増殖薬として使用し、クロベタゾールを抗炎症薬として使用する場合、エベロリムスとクロベタゾールの相対量は、病変のタイプの違いによって変えることができ、すなわち、エベロリムスの相対量は、増殖性病変が多いほど多いはずであり、一方、クロベタゾールの相対量は、炎症性病変が多いほど多いはずである。
【0038】
他の生物活性薬剤
一部の実施形態において、他の薬剤を抗増殖薬および抗炎症薬と併用することができる。これらの生物活性薬剤は、治療薬、予防薬または診断薬である任意の薬剤であり得る。これらの薬剤も抗増殖特性および/もしくは抗炎症特性を有することがあり、または抗新生物薬、抗血小板物質、抗凝血薬、抗フィブリン薬、抗血栓症薬、細胞分裂抑制薬、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化物質ならびに細胞増殖抑制剤のように他の特性を有することもある。適する治療および予防薬の例としては、合成無機および有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖類および他の糖類、脂質、ならびに治療、予防または診断活性を有するDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列としては、遺伝子、相補DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。他の生体活性薬剤の他の幾つかの例としては、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、阻害剤または血餅溶解剤、例えばストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子、免疫用抗原、ホルモンおよび成長因子、オリゴヌクレオチド、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに遺伝子療法用のリボザイムおよびレトロウイルスベクターが挙げられる。抗新生物薬および/または細胞分裂抑制薬の例としては、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、ニュージャージー州、PeapackのPharmacia & UpjohnからのAdriamycin(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、コネチカット州、StamfordのBristol−Myers Squibb Co.からのMutamycin(登録商標))が挙げられる。このような抗血小板物質、抗凝血薬、抗フィブリン薬、抗トロンビン物質の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン物質)、ジピリダモール、糖蛋白IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤、例えばAngiomax a(マサチューセッツ州、CambridgeのBiogen,Inc.)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、コルチシン、線維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、ニュージャージー州、Whitehouse StationのMerck & Co.,Inc.からの商標名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、窒素酸化物または窒素酸化物供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、栄養補助食品、例えば様々なビタミン類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このような細胞増殖抑制物質の例としては、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えばカプトプリル(例えば、コネチカット州、StamfordのBristol−Myers Squibb Co.からのCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、ニュージャージー州、Whitehouse StationのMerck & Co.,Inc.からのPrinivil(登録商標)およびPrinizide(登録商標))が挙げられる。抗アレルギー薬の一例は、ペミロラストカリウムである。適切であり得る他の治療物質または治療薬としては、α−インターフェロンおよび遺伝子操作上皮細胞が挙げられる。上述の物質は、例として挙げたものであり、限定する意味はない。現在入手可能または将来開発され得る他の活性薬剤も同様に適用可能である。
【0039】
デリバリー調合物
抗増殖薬と抗炎症薬の両方を含む組成物を、任意のデリバリー様式によるデリバリーに適する任意の調合物に調合することができる。例えば、前記組成物を移植可能医療器具上のコーティングにして、抗増殖薬および抗炎症薬の制御放出をもたらすことができる。前記組成物を他の適する調合物、例えば、蛍光透視用色素を場合によっては伴うボーラス用量の遊離薬剤、ボーラス用量のゲル内包型薬剤、に調合することもできる。
【0040】
前記ゲルは、ゲル形成性材料またはポリマー、例えばヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、アカシア、トラガカントゴム、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、Carbopol(商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリエチレンオキシド、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(電解質複合体)、加水分解可能な結合で架橋されているポリ(ビニルアセテート)、水膨潤性N−ビニルラクタム多糖類、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン、フルセララン、ラミナラン、カズノイバラ(hypnea)、キリンサイ(eucheuma)、アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、親水性コロイド、例えばカルボキシルメチルセルロースゴムまたはアルジネートゴム(非架橋型アルジネートゴムと架橋型アルジネートゴムの両方を含み、この場合の架橋型アルジネートゴムは、二価のイオンで架橋されていてもよく、三価のイオンで架橋されていてもよい)、ポリオール、例えばプロピレングリコール、または他の架橋剤、Cyanamer(商標)ポリアクリルアミド、Good−rite(商標)ポリアクリル酸、デンプングラフトコポリマー、Aqua−Keeps(商標)アクリレートポリマー、エステル架橋ポリグリカンなど、ならびにこれらの組み合わせで形成することができる。ゲル形成性材料の一部は、米国特許、米国特許第3,640,741号、同第3,865,108号、同第3,992,562号、同第4,002,173号、同第4,014,335号および同第4,207,893号において論じられている。ヒドロゲルは、オハイオ州、ClevelandのChemical Rubber Companyにより出版されたScottおよびRoffによるthe Handbook of Common Polymersにおいても論じられている。所与のゲル形成性材料またはポリマーのいずれについても、使用する材料の平均分子量が高いほど、いずれの所与濃度の水溶液も高い粘度になる。従って、使用する分子量が高いほど、必要な溶解遅延を達成するために使用するポリマーの量を少なくすることができる。一部の実施形態において、ゲル形成性材料またはポリマーは、19〜24%メトキシル置換および7〜12%ヒドロキシプロピル置換ならびに少なくとも20,000の数平均分子量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり得る。このようなポリマーとしては、商品名Methocel K4M、Methocel K15MおよびMethocel K100MでDow Chemical Co.により販売されているものが挙げられる。
【0041】
デリバリー方法
1つの実施形態において、クロベタゾールなどの抗炎症薬は、蛍光透視用色素を場合によっては伴うボーラス用量の遊離薬剤に調合する。エベロリムスなどの抗増殖薬は、ポリマー材料とともにコーティング組成物に調合し、その後、移植可能器具(例えば、ステント)にコーティングすることができる。ボーラス用量の抗炎症薬を先ず投与し、その後、ドラッグデリバリーステントなどの移植可能器具からの放出により抗増殖薬を送達する。この組成物は、第三の薬剤、例えば、米国特許第6,367,479号に記載されているようなHDL(高密度リポタンパク質)模倣物をさらに含むことができる。あるいは、HDL模倣物は、ステントにより送達することができる。
【0042】
もう1つの実施形態において、クロベタゾールなどの抗炎症薬は、ボーラス用量のゲルに調合することができる。エベロリムスなどの抗増殖薬は、ポリマー材料とともにコーティング組成物に調合し、その後、移植可能器具にコーティングすることができる。ボーラス用量の抗炎症薬を先ず投与し、その後、ドラッグデリバリーステントなどの移植可能器具からの放出により抗増殖薬を送達する。
【0043】
さらなる実施形態では、抗炎症薬および抗増殖薬をポリマーマトリックス中に含め、その後、ステントなどの医療器具にコーティングする。この医療器具コーティングは、コーティングに含まれている薬剤ごとに様々な異なる放出パラメータを有するように設計することができる。
【0044】
上に示したように、生体分解性器具から身体への炎症誘発副産物の放出は、その器具が体内で分解している間、継続的に発生し得る。従って、移植された器具から抗炎症薬が持続放出されるドラッグデリバリーシステムの実施形態を記載する。
【0045】
ドラッグデリバリーシステムの一定の実施形態は、有効量の抗増殖薬を含むことができる。このドラッグデリバリーシステムは、移植可能医療器具の構造体をさらに含むことができる。一部の実施形態において、前記構造体は、ステントなどの移植可能医療器具の基質または足場であり得る。前記基質または足場は、生体安定性ポリマーであってもよく、生体吸収性ポリマーであってもよい。ドラッグデリバリーシステムの1つの実施形態は、その器具の構造体内に有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬をさらに含むことができる。生体分解性構造体内の抗炎症薬により、その構造体の分解プロセス全体を通してその炎症性物質の持続放出に対処することができる。
【0046】
1つの実施形態では、前記抗増殖薬の少なくとも一部を前記器具の構造体上のコーティングに含めることができる。このコーティングは、純粋または実質的に純粋な薬剤であってもよく、生体安定性または生体吸収性ポリマーマトリックスに混合または分散されていてもよい。あるいは、前記抗増殖薬の少なくとも一部分を何らかの他の局所的方法で送達してもよく、全身的に送達してもよい。
【0047】
血管の再狭窄または脆弱性プラークを治療する方法の1つの実施形態は、器具上のコーティングにより、全身的に、および/または何らかの他の局所的方法により、有効量の抗増殖薬を患者に投与することを含むことができる。この方法は、前記器具の構造体内から血管に有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を溶出させることをさらに含むことができる。少なくとも1つのデポー内の抗炎症薬および/または前記構造体の中に混合または分散されている抗炎症薬の少なくとも一部分は、その構造体から溶出することができる。一部の実施形態において、前記抗炎症薬は、前記抗増殖薬の少なくとも一部分を含有するコーティングを通って溶出することができる。前記抗炎症薬の少なくとも一部分は、前記構造体のすべてまたは大部分が分解する間にその構造体から溶出し、血管の炎症を抑制することができる。
【0048】
さらに、前記コーティングの特性、例えば厚さおよび気孔率は、前記器具からの抗炎症薬の放出速度に影響を与え得る。一部の実施形態は、前記コーティングの特性を変性することによる抗増殖薬の放出速度の制御を含むことができる。
【0049】
1つの実施形態において、前記構造体内の抗炎症薬の少なくとも一部分は、その構造体の表面の少なくとも一部分の上にある少なくとも1つのデポーまたは空洞に含有することができる。前記デポー内の薬剤は、純粋または実質的に純粋な薬剤であってもよい。あるいは、前記デポー内の薬剤は、ポリマーマトリックスに混合または分散されていてもよい。
【0050】
薬剤を保持するように形成されたデポーを有する移植可能な医療器具については非常に多数の実施形態が可能である。デポーは、器具上の1つ以上の任意の位置に配置することができる。一部の実施形態において、デポーは、炎症の治療が必要な血管の領域に隣接する器具の部分にまたはその部分の付近に選択的に配置することができる。例えば、長い病変の場合、その病変の中央部分のほうがその病変の末端より大きな炎症を起こすことがある。ステントの末端よりステントの中央の近くにある、より高濃度の分解副産物に起因して、より大きな炎症が生じることがある。従って、病変の中央のほうが病変の末端より多くの抗炎症薬を必要とすることがある。あるいは、病変の末端に刺激または損傷をもたらす機械的ストレスに起因して、病変の末端のほうが大きな炎症を起こすことがある。従って、ステントは、デポーを含む、すなわち、より大きな炎症を有する病変部分に隣接するステントの領域に、より多数のデポーを含むことができる。
【0051】
加えて、デポーは、ステントの管腔外面、内腔面および/または側壁に選択的に配置することができる。例えば、血管の炎症部と接触していることができるので、管腔外面にデポーを有することが望ましい場合がある。しかし、デポーは、再狭窄を治療する際に臨床的に有益であり得る、ステント上のいずれの位置に配置してもよい。図2は、図1からのステント10の断面図50を図示する。断面図50において、デポー55は、管腔外面20に配置されており、デポー60は、側壁30に配置されている。
【0052】
加えて、サイズ(例えば、深さ、直径など)および形状などのデポーを特徴付ける幾何学的パラメータは、炎症反応の治療を助長するように設定することができる。例えば、デポーの幾何学的配置は、分解副産物の炎症効果を打ち消すために、器具が分解している間の抗炎症薬の持続性デリバリーを最大にするように設定することができる。
【0053】
ステント10などの移植可能医療器具の本体上に、単一のデポーまたは複数のデポーを、1つのレーザー溝または複数のレーザー溝として形成することができ、これは、その器具の表面をエキシマーレーザーなどのレーザーからのエネルギー放出に暴露することによりできる。別のデポー形成法としては、物理的または化学的エッチング法が挙げられるが、これらに限定されない。デポーを形成するためのレーザー加工法またはエッチング法は、当業者には周知である。デポーは、実際にあらゆるステント構造に形成することができ、上記の構造だけではない。
【0054】
図3A〜Bは、デポーの幾何学的構造を図解するストラットの断面図を図示する。図3Aを参照して、デポー70は、一般に円筒形の形状を有する。デポー70は、深さD1および直径D2を有する。D1およびD2の適切な値は、薬剤の有効量、そのストラットの機械的強度、デポーの密度、および活性薬剤の放出の望ましい時間枠などの因子に依存する。例えば、薬剤の有効量が多いほど、深さD1および直径D2の両方またはいずれかが大きくなければならない。ストラット上に配置されるデポーの密度が高いほど、個々のストラット内の薬剤要求量を減少させることができ、従って、デポーの必要サイズを低下させることができる。さらに、デポーのサイズおよび密度が増大するにつれて、ストラットの機械的強度は低下し得る。加えて、深さD1が深いほど、長期の活性薬剤持続放出が助長され得る。円筒形デポー70の直径D2は、幅W1の約10%から約95%、約20%から約80%、30%から約70%、または約40%から約60%の範囲を有することができる。
【0055】
図3Bは、一般に形状が円錐形であるデポー75を図解する。円錐形状デポー75は、開口端80および閉塞端85を有する。開口端80は、管腔外面20にあるので、開口端80は、組織の表面に接触する末端である。円錐形状デポー75の直径D3は、閉塞端85から開口端80へと減少するように示されている。最大直径D3’は、円錐形状デポー75の閉塞端85でのものある。D3’は、幅W1の約10%から約95%、約20%から約80%、30%から約70%、または約40%から約60%の範囲を有することができる。円錐形状デポー75の開口端80での最小直径D3”は、幅W1の約30%から約50%の約1%から約70%、約5%から約70%、約15%から約60%の範囲を有することができる。円筒形状デポー70のものと比較して円錐形状デポー75の開口部80の縮小されたサイズは、ステントが所望の治療位置にいったん移植されると、抗炎症薬が放出される速度を低下させることができる。これらのデポーは、細長い溝などの様々な他の幾何学的形状(図解なし)を有することができる。
【0056】
他の実施形態では、前記構造体内の抗炎症薬の少なくとも一部分を前記器具の構造体の中に混合または分散させることができる。生体分解性構造体の中に混合または分散された抗炎症薬は、その構造体が分解するのと実質的に同じ速度で血管に溶出することができる。1つの実施形態において、前記抗炎症薬は、前記器具の製造中にその構造体内に組み込む(混合または分散させる)ことができる。例えば、前記薬剤は、押出または射出成形などの製造プロセス前、中、および/または後に、溶融状態のポリマーと混合することができる。しかし、混合プロセス中、薬剤含有溶融ポリマーの温度を制御して、その活性薬剤の分解を抑制または防止することが重要である。溶融ポリマーの温度は、分解温度または分解温度範囲より下になるように制御することができる。約80℃より上の温度で分解する傾向がある薬剤もある。約100℃より上で分解する傾向がある場合もある。
【0057】
図4A〜Bは、コーティング105および115の中、すなわち下に抗炎症薬を有するストラットの断面図を図示する。コーティング105および115は、抗増殖薬を含んでいてもよい。図4Aでは、純粋な抗炎症薬であるか、ポリマーマトリックスの中に分散された抗炎症薬である組成物100が、デポー70の中に配置されている。抗炎症薬は、血管の炎症部を治療するためにコーティング105を通って溶出するように配置されている。図4Bは、そのストラットの中に分散された抗炎症薬110を図示している。抗炎症薬110は、血管の炎症部を治療するためにコーティング115を通って溶出するように配置されている。
【0058】
抗炎症薬は、パルス放出、急速またはバースト放出および持続放出を含む放出プロフィールの1つまたは組み合わせを有することができる。同様に、抗増殖薬は、ステントからのパルス放出、急速またはバースト放出および持続放出を含む放出プロフィールの1つまたは組み合わせを有することができる。一部の実施形態において、前記併用薬は、同時に、または少なくとも薬物治療期間(それらの薬剤の放出の間に少なくとも多少の重なりがある)中に送達することができる。一部の実施形態において、抗炎症薬は、抗増殖薬への放出前に完全に放出させることができ、または両方の薬剤の放出の間に多少または有意な重なりをもって一部分放出させることができる。「パルス放出」は、薬剤の放出速度の突然のサージを特徴とする薬剤放出プロフィールを一般に指す。その後、この薬剤放出速度サージは、一定期間内に消失する。この用語のさらに詳細な定義は、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Edith Mathiowitz,Ed.,Culinary and Hospitality Industry Publications Servicesにおいて見出すことができる。
【0059】
本明細書で用いる場合、用語「急速放出」は、1つの実施形態では、18mmステントについて1日当たり約15μgから約40μgの間、13mmステントについて1日当たり約10μgから約27μg、および8mmステントについては1日当たり約6.7μgから約17.2μgの範囲での放出速度を特徴とする薬剤放出プロフィールを指す。通常の当業者は、他のサイズを有するステントについて同等のプロフィールを導出することができる。もう1つの実施形態において、用語「急速放出」は、24時間で約20%の薬剤放出を指す。用語「急速放出」は、用語「バースト放出」と同義で用いている。
【0060】
本明細書で用いる場合、用語「持続放出」は、0次放出、指数関数的減衰、段階関数放出、または一定期間にわたって、例えば数日から数年の範囲の期間にわたって持ち越す他の放出プロフィールを包含し得る、薬剤放出プロフィールを一般に指す。用語「0次放出」、「指数関数的減衰」および「段階関数放出」ならびに他の持続放出プロフィールは、当分野では周知である(例えば、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Edith Mathiowitz,Ed.,Culinary and Hospitality Industry Publications Services参照)。
【0061】
1つの実施形態において、抗炎症薬(例えば、クロベタゾール)および抗増殖薬(例えば、エベロリムス)のうちの少なくとも一方は、他方が他の局所的投与手段により投与されている間にステントにより投与されるか、あるいは他方が全身投与されている間にステントにより投与される。他の実施形態では、両方がステント以外の手段により局所投与されるか、あるいは全身投与される。全身投与は、経口的に、または非経口的に(血管内的に、直腸内的に、経鼻的に、気管支内的に、または経皮的に含む)達成することができる。液体担体は、滅菌溶液または懸濁液であり、筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内注入することができる。直腸内投与は、従来どおりの坐剤の形態であり得る。経鼻または気管支内吸入法または通気法による投与のために、薬剤を水性または部分的水性溶液に調合することができ、その後、それをエーロゾルの形態で利用することができる。経皮パッチと、活性成分に対して不活性であり活性成分と互いに相溶性であり、皮膚に対して非毒性であり、全身吸収用の薬剤を皮膚を通して血流に送達することができる担体とを使用することにより、薬剤を経皮投与することができる。前記担体は、クリーム、軟膏、ペーストおよびゲルなどの多くの形態をとることができる。クリームおよび軟膏は、粘稠液であってもよく、水中油型または油中水型いずれかの半固体エマルジョンであってもよい。活性成分を含有する鉱油または親水性鉱油中に分散された吸収性粉末で作られたペーストが適することもある。血流に薬剤を放出することができる他の器具としては、担体を伴うまたは伴わない薬剤を含有しているレザバーを覆う半透膜が挙げられる。
【0062】
局所投与は、標的部位にまたは付近に活性成分を投与する様々な技法により達成することができる。局所デリバリー法についての以下の例は、例証を目的として提供するものであり、限定するためのものではない。例としては、局所デリバリーカテーテル、部位特異的担体、インプラント、直接塗布、または直接注入が挙げられる。カテーテルによる局所デリバリーにより、標的部位に薬剤を直接投与することができる。
【0063】
部位特異的担体による局所デリバリーは、標的細胞に薬剤を向けるまたは連結させる担体に薬剤を取り付けることにより行われる。このデリバリー法の例としては、タンパク質リガンド、モノクローナル抗体または膜固定型リンカーなどの担体の使用が挙げられる。
【0064】
インプラント(ステント以外)による局所デリバリーは、その部位への薬剤を担持するマトリックスの配置である。このマトリックスは、例えば拡散、分解、化学反応、溶媒アクチベータなどにより、活性成分を放出することができる。インプラントによる局所デリバリーの一例としては、小胞またはミクロ粒子の直接注入を挙げることができる。これらのミクロ粒子は、タンパク質、脂質、炭水化物または合成ポリマーなどの物質から構成することができる。ミクロ粒子は、それらの中に含浸された、および/またはそれらの上にコーティングされた薬剤を有することができる。インプラントによる適用は、上に記載した経路に限定されず、通常の当業者は、他の技法、例えば、グラフト、マイクロポンプ、または血管の指定領域の外面の周囲への活性成分を含有するフィブリン糊またはヒドロゲルの塗布を実行することもできる。
【0065】
直接注入による局所デリバリーは、薬剤を含有する液体担体をその部位に直接注入することを表す。液体担体は、薬剤に対して不活性であり、その薬剤と互いに相溶性でなければならない。成分は、真溶液の状態であってもよく、担体中の微粒子に懸濁させてもよい。不活性担体の適する例としては、滅菌食塩溶液が挙げられる。
【0066】
生体適合性および生体吸収性ポリマー
一般に、ポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生体分解性または生体侵食性であり得る。生体安定性は、生体分解性でないポリマーを指す。用語生体分解性、生体吸収性および生体侵食性、ならびに分解される、侵食されるおよび吸収されるは同義で用いており、血液などの体液に暴露されたときに完全に侵食または吸収され得、身体により徐々に再吸収、吸収および/または排除されるポリマーを指す。
【0067】
移植可能医療器具を製造するため、移植可能器具をコーティングするため、または抗増殖薬および/もしくは抗炎症薬を有するドラッグデリバリー粒子を生じさせるために使用することができるポリマーの代表例としては、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(L−ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー(ポリアクリレート以外)、ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリ塩化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル(例えば、ポリビニルアセテート)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン66およびポリカプロラクタム)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロール、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示する移植可能医療器具の製造実施形態における使用に特によく適することがあるポリマーのさらなる代表例としては、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名EVOHまたは商品名EVALにより一般に知られているもの)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、SOLEF 21508、ニュージャージー州、ThorofareのSolvay Solexis PVDFから入手可能)、ポリフッ化ビニリデン(別様に、KYNARとして知られているもの、ペンシルバニア州、PhiladelphiaのATOFINA Chemicalから入手可能)、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリ(ビニルアセテート)、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロックコポリマー、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0068】
器具をコーティングする方法
本明細書に記載するコーティングは、スプレーコーティングまたは当分野において利用可能な他の任意のコーティングプロセスによって形成することができる。一般に、コーティングは、組成物またはその1つもしくはそれ以上の成分を溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁させて、前記組成物またはその1つ以上の成分の溶液、懸濁液または分散液を作ること、その溶液または懸濁液を移植可能器具に塗布すること、および溶媒または溶媒混合物を除去して、コーティングまたはコーティングの層を形成することを含む。本明細書に記載する組成物の懸濁液または分散液は、1ナノメートルから100ミクロンの間、好ましくは1ナノメートルから10ミクロンの間のサイズを有するマイクロ粒子のラテックスまたはエマルジョンの形態であり得る。ここに含まれる任意の段階に熱および/または加圧処理を適用することができる。加えて、所望される場合には、本明細書に記載するコーティングをさらなる熱および/または加圧処理に付すことができる。用いることができる移植可能器具のコーティングプロセスの幾つかの追加例は、例えば、Lambert TL,et al.Circulation,1994,90:1003−1011;Hwang CW,et al.Circulation,2001;104:600−605;Van der Giessen WJ,et al.Circulation,1996;94:1690−1697;Lincoff AM,et al.J Am Coll Cardiol 1997;29:808−816;Grube E.et al,J American College Cardiology Meeting,March 6 2002,ACCIS2002,poster 1174−15;Grube E,et al,Circulation,2003,107:1,38−42;Bullesfeld L,et al.Z Kardiol,2003,92:10,825−832;and Tanabe K,et al.Circulation 2003,107:4,559−64に記載されている。
【0069】
本明細書で用いる場合、用語「溶媒」は、ポリマーと相溶性であり、ポリマー組成物またはその1つもしくはそれ以上の成分を所望の濃度で溶解または懸濁することができる、液体物質または組成物を指す。溶媒の代表例としては、クロロホルム、アセトン、水(緩衝食塩液)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PM)、イソ−プロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1−トリフルオロエタノール、およびヘキサメチルホスホルアミド、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
このような移植可能器具の例としては、自己拡張式ステント、バルーン拡張式ステント、ステント・グラフトおよびグラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、および心臓内リード(例えば、FINELINEおよびENDOTAK、カリフォルニア州、Santa ClaraのGuidant Corporationから入手可能)が挙げられる。前記器具の基礎構造は、実際にはいずれのデザインのものであってもよい。前記器具は、金属材料または合金、例えばコバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR 108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、「ELASTINITE」(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、金、マグネシウム、またはこれらの組み合わせ(それらに限定されない)から製造することができる。「MP35N」および「MP20N」は、ペンシルバニア州、JenkintownのStandard Press Steel Co.から入手可能なコバルトとニッケルとクロムとモリブデンの合金の商品名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。生体吸収性または生体安定性ポリマーから製造された器具も、本発明の実施形態とともに使用することができる。1つの実施形態において、前記移植可能器具はステントであり、これは、生分解性ステントであってもよく、生体耐久性ステントであってもよく、デポーステントであってもよく、金属製ステント、たとえばステンレス鋼またはニチノール製のステントであってもよい。前記ステントは、バルーン拡張性ステントであってもよく、自己拡張式ステントであってもよい。
【0071】
使用方法
本発明の実施形態に従って、様々な記載の実施形態のコーティングを、移植可能器具またはプロテーゼ、例えばステント上に形成することができる。1つ以上の活性薬剤を含むコーティングについては、薬剤は、医療器具(例えば、ステント)を送達および拡張している間はその器具の上に保持され、移植部位において所定の期間にわたって望ましい速度で放出される。好ましくは、前記医療器具は、ステントである。上記コーティングを有するステントは、一例として胆管、食道、気管/気管支および他の生物学的通路内の腫瘍に起因する閉塞の治療を含む、様々な医療処置に有用である。上記コーティングを有するステントは、平滑筋細胞の異常なまたは不適切な移動および増殖、血栓症ならびに再狭窄に起因する血管の閉塞領域の治療に特に有用である。ステントは、多種多様な血管(動脈と静脈の両方)に配置することができる。部位の代表例としては、腸骨動脈、腎動脈および冠動脈が挙げられる。
【0072】
ステントの移植については、先ず血管造影を行って、ステント療法の適切な位置決めを行う。血管造影は、X線写真を撮るので、動脈または静脈に挿入されたカテーテルにより放射線不透過性造影剤を注入することによって一般に達成される。その後、ガイドワイヤを病変または治療提案部位まで進める。そのガイドワイヤによってデリバリーカテーテルを通し、そのカテーテルによってステントを折り畳まれた形状で生物学的通路に挿入することができる。デリバリーカテーテルは、経皮的にまたは手術により大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈または上腕静脈に挿入し、そのカテーテルを蛍光透視鏡のガイダンスのもとで血管系を通して進めることにより、適切な血管へと前進させる。その後、上記コーティングを有するステントは、所望の治療領域で拡張させることができる。挿入後の血管造影図を利用して、適切な位置決めを確認することもできる。
【0073】
本明細書に記載のコーティングを含む移植可能器具は、治療を必要とする状態または疾患を有する動物を治療するために使用することができる。このような動物は、例えば、本明細書に記載の器具をその動物に移植することにより、治療することができる。好ましくは、前記動物は、人間である。本明細書に開示する方法により治療することができる具体例としての疾患または状態としては、血栓症、高コレステロール、出血、血管解離または穿孔、動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトの吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、I型糖尿病患者、II型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄およびアテローム硬化症進行、メタボリック症候群およびX症候群、脆弱性病変(薄い線維性キャップを有するアテローム病変を伴うものを含む)、全身性感染症(歯肉炎、ヘロバクテリアおよびサイトメガロウイルスを含む)ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0074】
本発明の実施形態は、以下に示す実施例により例証される。すべてのパラメータおよびデータは、本発明の実施形態の範囲を不当に制限するように解釈してはならない。
【実施例1】
【0075】
ブタインプラント試験
クロベタゾールのみのデリバリーステント、エベロリムスのみのステント、およびエベロリムス−クロベタゾール併用ドラッグデリバリーステントでの200μg/cm2用量Lemans試験と比較した28日ブタインプラント試験をこの実施例に記載する。この試験は、3つの異なるドラッグデリバリーステント、Arm 1、Arm 2およびArm 3を使用して行った。Arm 1は、Lemansステント(PVDF−co−HFPに基づく、Guidantから入手可能なステント)であり、これは、105μgのエベロリムスを含み、対照として使用した。Arm 2には185μgのクロベタゾールのみを負荷し、エベロリムスは負荷しなかった。Arm 3には105μgのエベロリムスおよび80μgのクロベタゾールを負荷する。
【0076】
前記Arm 1、Arm 2およびArm 3ステントを30%過伸張モデルで移植した。過伸張モデルは、ステントが損傷を生じさせる可能性がより高く、従って、再狭窄を生じさせる可能性がより高くなるように、その動物の動脈を(ステントおよびバルーンを使用して)それらの本来の直径より30%以下大きく拡張させる技法を指す。これは、時として、様々なステントシステムの効力の差別化に役立つ。
【0077】
各Armステントの9つのサンプルを各冠動脈に1つ移植した。ブタの血清における24時間放出データを収集した。28日定量的冠動脈形成術(QCA)、組織構造および形態計測であったので、3、7および28日インビボ放出データを(それらの哺乳動物の動脈から)収集した。
【0078】
この試験では、12mm Vision Smallステント(Guidantから入手可能)を使用した。すべての薬剤溶液は、アセトン/シクロヘキサノン調合物中、2%のSolef(商標)でスプレーした。すべてのステントは、100μgのPBMAプライマーを有した。表1は、この試験で使用したステントのコーティングデザインを示す。
【表1】
【0079】
放出速度データを表2に示す。表2からわかるように、Solef(商標)に基づくコーティングは、エベロリムスとクロベタゾールの両方の同時放出が可能である。
【表2】
【0080】
28日QCAの結果は、図5に示し、28日組織構造データは、図6にあり、ならびに28日形態計測データは、図7に示し、下の表3にまとめる。
【0081】
新生血管内膜面積は、横断面血管切片により測定した新生血管内膜の全量である。これは、本質的に、内弾性板(IEL)の内側の面積マイナス血管内腔の全面積である。新生血管内膜は、IELと血管内腔の間に存する、ステント留置後に形成される新たな血管内膜成長を指す。新生血管内膜厚は、IELと血管内腔の間の平均距離である。これは、本質的に、ステント留置後にそのステントの内側で成長する新たな血管内膜の平均厚である。
【0082】
損傷スコアは、ステント移植により血管内に作られた損傷の量を採点する標準化採点システムである。現在、本発明者らは、0から4の範囲を使用し、この場合の0は、損傷なしであり、4は、最高損傷である。血管に所与のスコアを割り当てるための特別な定量的および定性的基準がある。
【表3】
【0083】
図7からのデータのt検定からのp値を表4にまとめる。「t検定」は、2つのサンプルが、同じ平均を有する2つの同じ基礎集団からのものである可能性が高いかどうかを判定するスチューデントt検定に関連した確立を報告する。この検定から報告される値「p」は、2つのデータ群が同じ集団からのものである確立である。0.10または0.05であるかそれ未満のp値は、一般に有意であると考えられる(Zar,JH.Biostatistical Analysis.Englewood Cliffs,NJ:Prentice−Hall Inc,1974. pp 101−108)。
【表4】
【実施例2】
【0084】
ブタインプラント試験
エベロリムスのみのステント、エベロリムス−クロベタゾール併用ドラッグデリバリーステント、およびクロベタゾールのみのステントを比較する、28日ブタインプラント試験をこの実施例に記載する。ニュージャージー州、ThorofareのSolvary Solexis PVDFから入手可能なSolefポリマーマトリックスに薬剤を分散させた。この試験は、3つの異なるドラッグデリバリーステント、Arm 1、Arm 2およびArm 3を使用して行った。Arm 1は、64μgのエベロリムスを含み、1:4.9の薬剤−ポリマー比を有するLemansステント(PVDF−co−HFPに基づく、Guidantから入手可能なステント)であり、これを対照として使用した。Arm 2には、1:4の薬剤−ポリマー比で64μgのエベロリムスおよび32μgのクロベタゾールを負荷する。Arm 3には、1:4の薬剤比で32μgのクロベタゾールのみを負荷し、エベロリムスは負荷しなかった。表5は、この試験で使用したステントのコーティングデザインを示す。
【0085】
Arm 1、Arm 2およびArm 3ステントを30%の過伸張モデルで移植した。各Armステントの9つのサンプルを各冠動脈に1つ移植した。ブタの血清における24時間放出データを収集した。28日定量的冠動脈形成術(QCA)、組織構造および形態計測であったので、3、7および28日インビボ放出データを(それらの哺乳動物の動脈から)収集した。28日QCA、組織構造および形態計測データは、冠動脈から収集した。
【0086】
この試験では、12mm Vision Smallステント(Guidantから入手可能)を使用した。すべての薬剤溶液は、アセトン/シクロヘキサノン調合物中、2%のSolef(商標)でスプレーした。すべてのステントは、100μgのPBMAプライマーを有した。
【表5】
【0087】
放出速度データを表6に示す。表6からわかるように、Solef(商標)に基づくコーティングは、エベロリムスとクロベタゾールの両方の同時放出が可能である。
【表6】
【0088】
28日組織構造データの結果を図8に示し、下の表7にまとめる。
【表7】
【0089】
図8からのデータのt検定からのp値を表8にまとめる。
【表8】
【0090】
クロベタゾールは、細胞培養で一般に検査される最高濃度(10−6M)でさえ非毒性である。図9は、血管平滑筋増殖の用量依存性阻害および3×10−11Mの低いEC50値を示す増殖アッセイを図示する。この薬剤の効力は、25%である。
【0091】
増殖アッセイは、平滑筋細胞を様々な濃度の所与薬剤に暴露する細胞培養アッセイである。y軸は、DNA鎖または細胞核の全数の尺度である。細胞が分裂している(増殖している)場合、DNAの量は増加する。EC50は、全効果の半分を生じさせる薬剤の濃度である。例えば、最大量の増殖減少が、薬剤なしと比較して60%減少である場合には、EC50は、増殖の30%減少を生じさせる薬剤の濃度である。効力は、平滑筋細胞の増殖の防止に関するその薬剤の有効性である。
【0092】
図10は、エベロリムスのみでの増殖アッセイを図示し、これも血管平滑筋増殖の阻害を示している。この薬剤の効力は、62%である。
【0093】
図11は、エベロリムスとクロベタゾールの比率を変えた増殖アッセイの結果を図示する。図11は、エベロリムス−クロベタゾール比の対数に対する血管平滑筋増殖の阻害効力のプロットを示す。図11における曲線の丸で囲んだ部分は、エベロリムスとクロベタゾールが相乗効果を有し、その結果、これら2つの薬剤の一定範囲内の比率で、より高い効力が生じることを示している。
【0094】
本発明の特定の実施形態を示し、説明したが、より広い態様での本発明から逸脱することなく変更および修飾を行うことができることは、当業者には明らかである。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に入るようなすべての変更および修飾を、それらの範囲内に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ステントの実例を図示する図である。
【図2】ステントの断面の実例を図示する図である。
【図3A】デポーの幾何学的配置を図解するストラットの断面を図示する図である。
【図3B】デポーの幾何学的配置を図解するストラットの断面を図示する図である。
【図4A】コーティングを有するストラットの断面を図示する図である。
【図4B】コーティングを有するストラットの断面を図示する図である。
【図5】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日定量的冠動脈形成術(QCA)の結果を示す図である。
【図6】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日組織構造データを示す図である。
【図7】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日形態計測データを示す図である。
【図8】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日定量的冠動脈形成術(QCA)の結果を示す図である。
【図9】血管平滑筋増殖の用量依存性阻害を示す増殖アッセイを図示する図である。
【図10】同じく血管平滑筋増殖の阻害を示すエベロリムスでの増殖アッセイを図示する図である。
【図11】エベロリムスとクロベタゾールの比率を変えた増殖アッセイの結果を図示する図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、再狭窄および脆弱性プラークなどの疾患を治療するための、エベロリムスなどの抗増殖薬とクロベタゾールなどの抗炎症薬とを含む多剤併用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラークは、狭窄および再狭窄に関連付けられている。プラークにより誘導される狭窄および再狭窄の治療は、ここ数十年の間に有意に進歩したが、血管プラークに関連した罹病率および死亡率は、未だに有意である。最近の研究は、プラークが2つの異なる一般的タイプ(標準的狭窄性プラークおよび脆弱性プラーク)のうちの一方に分類されることを示唆している。狭窄性プラークは、抗血栓性プラークと呼ばれることもあり、一般に、公知血管内腔拡大法によって有効に治療することができる。プラークは、狭窄を誘導するが、これらのアテローム性プラークそれら自体は、良性であることが多く、有効に治療できる疾病である。
【0003】
残念なことに、プラークが成熟すると、平滑筋細胞の増殖、マトリックス合成および脂質蓄積による血管の狭窄により、標準的狭窄性プラークとは全く異なるプラークの形成が生じ得る。このようなアテローム性プラークは、易血栓形成性になり、非常に危険な場合がある。この易血栓形成性または脆弱性プラークは、急性冠動脈性症候群のよくある原因であり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラーク治療の公知手順は、広く受け入れられており、標準的な狭窄性プラークの治療に良好な効力を示しているが、血栓性状態がアテローム性プラークに重なると効果がない(また、ことによると危険な)こともある。具体的にいうと、実際、ステント留置術などの経皮経管的インターベンション(PTI)のような一次治療に起因する機械的ストレスが、脆弱性プラークから血流への液体および/または固体の放出を誘発し、その結果、ことによると冠動脈血栓性閉塞が生じる。例えば、血栓形成性壊死性コアの上にある線維性キャップの破断は、卒中、一過性脳虚血発作、心筋梗塞および不安定狭心症などの急性虚血性事象において重要な役割を果たすと考えられている(Virmani R,et al.Arterioscler Thromb Vasc Biol.20:1262-1275(2000))。線維性キャップはステント配置中に破断されることがあるという証拠がある。様々な源からの人間のデータは、症候性冠動脈性アテローム硬化症における高脂質病変および/またはポジティブリモデリングされた病変および/またはエコー透過性病変には、より高い再狭窄への可能性があることを示している(例えば、J.Am.Coll.Cardiol.21(2):298−307(1993);Am.J.Cardiol.89(5):505(2002);Circ.94(12):3098−102(1996)参照)。従って、脆弱性プラークおよび再狭窄の治療が求められている。
【0005】
さらに、生体分解性で移植可能な医療器具をPTI治療に利用することが望ましいことがある。多くの治療的用途において、例えば血管開通性の維持および/またはドラッグデリバリーに関するその目的とする機能が達成されるまでの限られた期間、体内にステントが在ることが必要とされ得る。従って、生体吸収性ポリマーなどの生体分解性、生体吸収性および/または生体侵食性材料から作製されるステントは、それらの臨床的必要性がなくなった後でのみ完全に侵食されるように構成しなければならない。
【0006】
しかし、生体吸収性ステントの主な臨床上の課題の1つは、ステントの分解により誘発される急性または慢性炎症反応の充分な抑制である。完全生体分解性ステントに対する血管の反応は、金属またはポリマー被覆ステントのものとは大いに異なることがある。抗増殖薬は、多くの場合、新生血管内膜の形成を減少させるには充分であるが、炎症を充分に抑制する能力は有さない。これは、薬剤溶出ステントを用いる長期にわたるブタでの試験においてよく見られる多数の肉芽腫に反映される。
【0007】
本発明の実施形態は、これらおよび他の要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ドラッグデリバリーシステムおよびそのドラッグデリバリーシステムの使用方法を本明細書に記載する。本ドラッグデリバリーシステムは、血管疾患または関連疾患を治療するための2つ以上の薬剤を有する。前記薬剤は、少なくとも1つの抗増殖薬と、少なくとも1つの抗炎症薬と、場合によっては第三の生体活性薬剤との組み合わせであり得る。1つの実施形態において、前記抗増殖薬は、エベロリムスなどの薬剤であり得、前記抗炎症薬は、クロベタゾールなどの薬剤であり得る。
【0009】
再狭窄および脆弱性プラークなどの血管疾患の治療または予防方法も開示し、この方法は、少なくとも1つの抗増殖薬と、少なくとも1つの抗炎症薬と、場合によっては第三の生体活性薬剤との組み合わせを患者に投与することを含む。デリバリー様式は、局所性であってもよく、全身性であってもよい。
【0010】
血管疾患または関連疾患の治療または予防用の、有効量の抗増殖薬と、移植可能医療器具の構造体と、前記器具の構造体内の有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを含むドラッグデリバリーシステムを記載する。
【0011】
血管の再狭窄または脆弱性プラークを治療する方法を記載し、この方法は、有効量の抗増殖薬を患者に投与することを含む。この方法は、移植可能医療器具の構造体内から有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を血管に溶出させることをさらに含む。前記抗増殖薬と抗炎症薬の併用は、血管疾患の治療または予防用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
抗増殖薬および抗炎症薬
1つの実施形態に従って、ドラッグデリバリーシステムおよびそのドラッグデリバリーシステムの使用方法を本明細書に記載する。用語「治療」は、血管疾患の予防、軽減、遅延または除去を含む。一部の実施形態において、治療は、疾患および/または機械的介入に起因する損傷の修復も含む。本ドラッグデリバリーシステムは、血管疾患または関連疾患を治療するための2つ以上の薬剤を有する。前記薬剤は、少なくとも1つの抗増殖薬と、少なくとも1つの抗炎症薬と、場合によっては第三の生体活性薬剤との組み合わせであり得る。
【0013】
1つの実施形態において、本明細書に記載する組成物は、有効量の少なくとも1つの抗炎症薬および有効量の抗増殖薬を含む。もう1つの実施形態において、本明細書に記載する組成物は、抗炎症薬としても、抗増殖薬としても有効である、有効量の薬剤を含む。
【0014】
一部の実施形態において、前記抗増殖薬は、エベロリムス(商品名Certican(商標)、ドイツのNovartis Pharma AGで入手可能)であり得、前記抗炎症薬は、クロベタゾール(商品名Temovate(商標)、英国のGlaxosmithklaineで入手可能)であり得る。
【0015】
前記抗増殖薬および抗炎症薬は、医療器具上のポリマーマトリックスを伴うおよび/または伴わないコーティングの形態であってもよく、前記薬剤のうちの少なくとも1つを、別の用量形態、例えば、蛍光透視用色素を場合によっては伴う遊離薬剤のボーラス用量または薬剤を内包しているゲルのボーラス用量で投与してもよい。本ドラッグデリバリーシステムまたは組成物は、高密度リポタンパク質模倣物(HDL模倣物)などの第三の薬剤をさらに含む場合がある。例えば、クロベタゾールなどの抗炎症薬は、HDL模倣物のカテーテル利用デリバリーと一緒に送達することができるが、エベロリムスは、ステントにより投与される。
【0016】
本明細書に開示するドラッグデリバリーシステムまたは組成物は、血栓症、高コレステロール、出血、血管解離または穿孔、動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトの吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、I型糖尿病患者、II型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄およびアテローム硬化症進行、メタボリック症候群およびX症候群、脆弱性病変(薄い線維性キャップを有するアテローム病変(thin−capped fibroatheromatous lesion)を伴うものを含む)、全身性感染症(歯肉炎、ヘロバクテリア(hellobacteria)およびサイトメガロウイルスを含む)ならびにこれらの組み合わせなどの疾患を治療または予防するために使用することができる。
【0017】
血管へのステント留置の際の炎症
バルーンまたはステント留置などによる血管の機械的変形に関連した一般的な疾患は、再狭窄である。血管の再狭窄を導く多数の細胞メカニズムが報告されている。これらのメカニズムのうちの2つは、(1)損傷部位への平滑筋細胞の移動およびその損傷部位での平滑筋細胞の増殖、ならびに(2)損傷および異物の存在に対する急性および慢性炎症反応。
【0018】
炎症は、損傷、感染または突然の組織恒常性変化への生体防御反応である。炎症は、体中どこにでも発生することがあり、その期間の殆どが、体のその部分に限定される。炎症の周知の指標は、疼痛、発赤、暖かみ、腫脹および機能喪失である。本来、炎症反応は、有害物質を破壊、減弱および隔離し、その後、罹患組織の回復および修復を導くためのものである。炎症反応の強度は、必要とする治療的介入が少ない自己制御的であるものから、強度の介入を必要とする命にかかわるものまで様々であり得る。炎症プロセスの1つの欠点は、進行性になるその能力であり、これは、組織損傷が刺激の中和または除去後に継続することを意味する。
【0019】
血管の炎症は、炎症反応の第一段階であり、これは刺激と最初に接触した後に発現し、時には数日間継続する。血液中または組織内の刺激物質の存在が、内皮細胞を通して身体の反応を誘発する。内皮細胞層は、より大きな血管の最も内側の層であり、最も小さな血管、毛細血管、の唯一の細胞層である。内皮細胞は、好中球および他の白血球を損傷部位に誘引するケモカインと呼ばれる物質を生産する。この部位内で、好中球および内皮は、接着分子およびサイトカインの提示により細胞膜を横断して前後に情報をリレーする。細胞のクロストークは、「炎症した」好中球と「炎症した」内皮の間の物理的相互作用を促進する。
【0020】
加えて、血管内の生体分解性異物、例えば生体分解性で移植可能な医療器具(例えば、ステント)の存在は、炎症反応を導くかさらに悪化させ、従って、より積極的な再狭窄プロセスを導く。生体分解性は、血管環境の場合のように体液に暴露されると(例えば、ポリマーにおいて)発生する物理的および化学的特性の変化を一般に指す。前記特性の変化には、分子量の低下、機械的特性の変質、および侵食または吸収に起因する質量の低下が挙げられ得る。分子量の低下は、体液とポリマーとの化学反応、例えば、加水分解および/または代謝プロセスに起因し得る。このような分解反応の副産物が、炎症を誘発する原因であり得る。例えば、加水分解の副産物は、水の添加によりポリマー分子が構成成分へと切断されたときに生成される。生体分解性ポリマーの様々な分解副産物が炎症反応を誘発することは公知である。例えば、乳酸(ポリ(乳酸)ポリマーの分解副産物)が炎症反応を生じさせることは公知である。
【0021】
さらに、生体分解性器具から身体への副産物の放出は、体液に最初に暴露されたときから、その器具が完全に分解され、身体から排除または除去されるときまで、継続的に発生する。その後、この時間枠を通して、身体は、炎症誘発性副産物に継続的に暴露される。従って、分解する移植器具から抗炎症薬がこの時間枠を通して持続的に放出されることが望ましい。
【0022】
血管の炎症のもう1つの重要な病理学的特徴は、内皮細胞腫脹である。この作用は、血流速度が有意に低下し、血管がうっ滞してくるように、機能的血管径を減少させる。これらの状態が優勢であると、炎症した好中球が、血管を詰まらせるように誘導される。結果として、内皮細胞は、緊密な連結を失って、好中球を周囲組織に浸潤させる。
【0023】
最初の刺激の数時間中に、好中球は組織への侵入を開始し、何日にもわたって浸潤し続けることがある。周囲組織における炎症性細胞の出現は、組織損傷開始の特徴である。一部の炎症状態では、組織損傷は、血管の直接的損傷により生じ、その組織へのその後の好中球動員により増幅される。
【0024】
局所媒介因子により活性化されると、好中球および組織マクロファージは、その領域内の毒素を破壊し、死滅細胞を除去する物質を放出するように誘発される。残念なことに、同じこれらの物質が健康な細胞にも付帯的損傷をもたらし、それにより初期組織破壊の境界がさらに拡大する。
【0025】
組織修復は、炎症の第三および最終段階である。組織破壊は、消滅する前に完全な強度に達するために数日かかることがある。そのときまで、新たな血管の成長と破壊組織片を除去するための単球の侵入とからなる組織修復プロセスは、延期される。線維芽細胞も局所組織に侵入して、細胞外マトリックスおよびコラーゲンを置換する。組織修復プロセスは、その組織部位内で厳重に制御される。そのプロセスが調節困難になると、不適切な組織修復により、過剰な瘢痕化が導かれることとなる。組織、および炎症状態の強度/継続時間に依存して、瘢痕化の量が有意である場合もある。
【0026】
血管の炎症が関係する疾患の例は、脆弱性プラーク(VP)破裂である。ブタにおいて炎症がバルーン血管形成術部位およびステント留置部位での増殖を促進することは、以前の研究により実証されている(Kornowski,et al.,Coron Artery Dis.12(6):513−5(2001))。脆弱性プラーク部位は、他のタイプのアテローム硬化性病変より高い密度のマクロファージおよびリンパ球を有するので、これらの部位は、ステントを留置すると、平滑筋細胞増殖を促進するサイトカイン(IL−1、TNF−α)を大量に生産する。
【0027】
血管の炎症が関係する疾患のもう1つの例は、糖尿病である。2型糖尿病を有する患者が一般の集団より再狭窄の率が高いことは、研究により証明されている。糖尿病病変は多数の炎症性細胞(例えば、マクロファージ、リンパ球など)を含有するため、糖尿病患者は、再狭窄を増幅し得る前炎症性状態にある。
【0028】
移植可能医療器具
用語「移植可能医療器具」は、自己拡張式ステント、バルーン拡張式ステント、ステント・グラフトおよびグラフトを含むことを意図する。移植可能医療器具は、構造体、基質、または足場を含む。この器具の構造は、実際にはいずれのデザインのものであってもよい。例えばステントは、相互に連結している構造要素またはストラットのパターンまたは網目構造を含むことができる。図1は、ステント10の三次元投影図の一例を図示する。このステントは、多数の相互に連結している要素またはストラット15を含むパターンを有することができる。本明細書に開示する実施形態は、図1に図解されているステントまたはステントパターンに限定されない。例えば、ストラットの断面は、(図1に図示されているような)長方形、円形、楕円形などであり得る。
【0029】
図1におけるステントのストラットは、管腔外(外側)面20、内腔(内側)面25および側壁30を有するように、さらに記載することができる。これらの実施形態は、他のパターンおよび他の器具に容易に適用することができる。一般に、パターンの構造に関するバリエーションは、実際には無制限にある。図1に示されているように、ステントの幾何学的配置または形状は、その構造全体にわたって多様である。
【0030】
一部の実施形態において、ステントは、管にストラットのパターンのレーザーカッティングを施すことにより、管から形成することができる。ポリマーシートまたは金属シートをレーザーカッティングし、そのパターンを円筒型ステントの形状に丸め、縦溶接を施してステントを形成することにより、ステントを形成することもできる。他のステント形成法は周知であり、シートを化学エッチングし、円筒形にし、その後、それを溶接してステントを形成することを含む。ポリマーワイヤまたは金属ワイヤを渦巻状に巻いてステントを形成することもできる。熱可塑性樹脂の射出成形または熱硬化性ポリマー材料の反応射出成形により、ステントを形成することができる。配合ポリマーのフィラメントを押出す、または溶融紡糸することができる。その後、これらのフィラメントを切断し、リング要素にし、溶接して閉じ、波形をつけてクラウンを形成し、その後、そのクラウンを熱または溶媒により互いに溶接して、ステントを形成することができる。最後に、フープまたはリングを在庫管材料から切り出し、それらの管要素を型押ししてクラウンを形成し、溶接またはレーザー融合によりそれらのクラウンを連結させて、ステントを形成することができる。
【0031】
ステントなどの移植可能医療器具の基礎構造または基質は、完全にまたは少なくとも一部は、生体分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組み合わせ、または生体分解性ポリマーと生体安定性ポリマーの組み合わせから製造することができる。加えて、器具表面用のポリマー系コーティングは、生体分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組み合わせ、または生体分解性ポリマーと生体安定性ポリマーの組み合わせであることができる。
【0032】
抗増殖薬
抗増殖効果を有するあらゆる薬剤を本発明で使用することができる。抗増殖薬は、細胞毒素などの天然タンパク質系物質であってもよく、合成分子であってもよい。好ましくは、活性薬剤には、抗増殖性物質、例えば、アクチノマイシンDまたはその誘導体および類似体(Sigma−Aldrich 1001 West Saint Paul Avenue,Milwaukee,WI53233製;またはMerckから入手可能なCOSMEGEN)(アクチノマイシンDの別名としては、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1、およびアクチノマイシンC1が挙げられる)、すべてのタキソイド類、例えばタキソール、ドセタキソール、およびパクリタキセル、パクリタキセル誘導体、すべてのオリムス薬、例えばマクロライド系抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造的誘導体および機能的類似体、エベロリムスの構造的誘導体および機能的類似体、FKBP−12媒介mTOR阻害剤、バイオリムス、パーフェニドン、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ(co−drug)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。代表的なラパマイシン誘導体としては、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、または40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(イリノイ州、Abott ParkのAbbot Laboratories製のABT−578)、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、これらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
1つの実施形態において、抗増殖薬は、エベロリムスである。エベロリムスは、先ず、FKBP12に結合して複合体を形成することにより作用する(Neuhhaus,P.,et al.,Liver Transpl.2001 7(6):473−84(2001)(概説))。その後、そのエベロリムス/FKBP12複合体は、mTORに結合し、その活性(Id.)を遮断する。mTOR活性の遮断により、細胞は、細胞周期のG1を経ることができなくなり、結果として、増殖が阻害される。mTOR阻害は、血管平滑筋細胞移動を阻害することも証明されている。
【0034】
抗炎症薬
抗炎症効果を有するあらゆる薬剤を本発明で使用することができる。この抗炎症薬は、ステロイド性抗炎症薬であってもよく、非ステロイド性抗炎症薬であってもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、抗炎症薬としては、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザク、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメラインス、ブロフェラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリゾン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサル、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコルト、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニゾリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルキアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダプ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、二酪酸メクロリゾン、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサン多硫酸ナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、パーフェニドン、ピロキシカム、桂皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、ラロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラクナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス、ピメコルリムス、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
1つの実施形態において、抗炎症薬は、クロベタゾールである。クロベタゾールは、コルチコステロイド受容体(核受容体の一類)に結合するコルチコステロイドである。その後、そのコルチコステロイド受容体へのクロベタゾールの結合は、炎症を抑制するように遺伝子発現を改変する。例えば、コルチコステロイドは、NFkB(炎症を促進する遺伝子発現を変化させる原因である核因子)の活性化を阻害する。炎症の軽減は、小分子細胞(SMC)過剰増殖を促進するメカニズムも阻害し得る。これは、デキサメタゾン(クロベタゾールと比較すると効力が低いグルココルチコイド)がPGDFの生産を減少させ、従って、抗増殖特性を有することで証明される。クロベタゾールは、類似の経路により作用し、デキサメタゾンより効力が高い。
【0036】
投薬量
好ましい治療効果を生じさせるために必要な抗増殖薬および抗炎症薬の投薬量または濃度は、その生体活性薬剤が毒性効果を生じさせるレベルより低く、且つ、未治療の結果が得られるレベルより高くなければならない。これらの薬剤の投薬量または濃度は、患者の特定の環境、外傷の性質、望まれる療法の性質、投与された成分が血管部位に存在する時間、ならびに他の活性薬剤を利用する場合には、その物質または物質の組み合わせの性質およびタイプなどの因子に依存し得る。治療有効投薬量は、経験的に、例えば、適する動物モデル系から血管を浸出させ、免疫組織化学的、蛍光または電子顕微鏡法を用いて、薬剤およびその効果を検出することにより、または適するインビトロ試験を行うことにより、決定することができる。
【0037】
1つの実施形態において、生体活性薬剤は、約0%超から約100%の抗増殖薬および約100%未満から約0%超の抗炎症薬を含む全薬剤負荷材料が約0.01重量%から約100重量%未満の間、さらに好ましくは約5重量%から50重量%の間である負荷率で、ポリマーコーティングに組み込むことができる。抗増殖薬と抗炎症薬の相対量は、治療する病変のタイプにより決定することができる。例えば、エベロリムスを抗増殖薬として使用し、クロベタゾールを抗炎症薬として使用する場合、エベロリムスとクロベタゾールの相対量は、病変のタイプの違いによって変えることができ、すなわち、エベロリムスの相対量は、増殖性病変が多いほど多いはずであり、一方、クロベタゾールの相対量は、炎症性病変が多いほど多いはずである。
【0038】
他の生物活性薬剤
一部の実施形態において、他の薬剤を抗増殖薬および抗炎症薬と併用することができる。これらの生物活性薬剤は、治療薬、予防薬または診断薬である任意の薬剤であり得る。これらの薬剤も抗増殖特性および/もしくは抗炎症特性を有することがあり、または抗新生物薬、抗血小板物質、抗凝血薬、抗フィブリン薬、抗血栓症薬、細胞分裂抑制薬、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化物質ならびに細胞増殖抑制剤のように他の特性を有することもある。適する治療および予防薬の例としては、合成無機および有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖類および他の糖類、脂質、ならびに治療、予防または診断活性を有するDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列としては、遺伝子、相補DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。他の生体活性薬剤の他の幾つかの例としては、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、阻害剤または血餅溶解剤、例えばストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子、免疫用抗原、ホルモンおよび成長因子、オリゴヌクレオチド、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに遺伝子療法用のリボザイムおよびレトロウイルスベクターが挙げられる。抗新生物薬および/または細胞分裂抑制薬の例としては、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、ニュージャージー州、PeapackのPharmacia & UpjohnからのAdriamycin(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、コネチカット州、StamfordのBristol−Myers Squibb Co.からのMutamycin(登録商標))が挙げられる。このような抗血小板物質、抗凝血薬、抗フィブリン薬、抗トロンビン物質の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン物質)、ジピリダモール、糖蛋白IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤、例えばAngiomax a(マサチューセッツ州、CambridgeのBiogen,Inc.)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、コルチシン、線維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、ニュージャージー州、Whitehouse StationのMerck & Co.,Inc.からの商標名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、窒素酸化物または窒素酸化物供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、栄養補助食品、例えば様々なビタミン類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このような細胞増殖抑制物質の例としては、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えばカプトプリル(例えば、コネチカット州、StamfordのBristol−Myers Squibb Co.からのCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、ニュージャージー州、Whitehouse StationのMerck & Co.,Inc.からのPrinivil(登録商標)およびPrinizide(登録商標))が挙げられる。抗アレルギー薬の一例は、ペミロラストカリウムである。適切であり得る他の治療物質または治療薬としては、α−インターフェロンおよび遺伝子操作上皮細胞が挙げられる。上述の物質は、例として挙げたものであり、限定する意味はない。現在入手可能または将来開発され得る他の活性薬剤も同様に適用可能である。
【0039】
デリバリー調合物
抗増殖薬と抗炎症薬の両方を含む組成物を、任意のデリバリー様式によるデリバリーに適する任意の調合物に調合することができる。例えば、前記組成物を移植可能医療器具上のコーティングにして、抗増殖薬および抗炎症薬の制御放出をもたらすことができる。前記組成物を他の適する調合物、例えば、蛍光透視用色素を場合によっては伴うボーラス用量の遊離薬剤、ボーラス用量のゲル内包型薬剤、に調合することもできる。
【0040】
前記ゲルは、ゲル形成性材料またはポリマー、例えばヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、アカシア、トラガカントゴム、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、Carbopol(商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリエチレンオキシド、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(電解質複合体)、加水分解可能な結合で架橋されているポリ(ビニルアセテート)、水膨潤性N−ビニルラクタム多糖類、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン、フルセララン、ラミナラン、カズノイバラ(hypnea)、キリンサイ(eucheuma)、アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、親水性コロイド、例えばカルボキシルメチルセルロースゴムまたはアルジネートゴム(非架橋型アルジネートゴムと架橋型アルジネートゴムの両方を含み、この場合の架橋型アルジネートゴムは、二価のイオンで架橋されていてもよく、三価のイオンで架橋されていてもよい)、ポリオール、例えばプロピレングリコール、または他の架橋剤、Cyanamer(商標)ポリアクリルアミド、Good−rite(商標)ポリアクリル酸、デンプングラフトコポリマー、Aqua−Keeps(商標)アクリレートポリマー、エステル架橋ポリグリカンなど、ならびにこれらの組み合わせで形成することができる。ゲル形成性材料の一部は、米国特許、米国特許第3,640,741号、同第3,865,108号、同第3,992,562号、同第4,002,173号、同第4,014,335号および同第4,207,893号において論じられている。ヒドロゲルは、オハイオ州、ClevelandのChemical Rubber Companyにより出版されたScottおよびRoffによるthe Handbook of Common Polymersにおいても論じられている。所与のゲル形成性材料またはポリマーのいずれについても、使用する材料の平均分子量が高いほど、いずれの所与濃度の水溶液も高い粘度になる。従って、使用する分子量が高いほど、必要な溶解遅延を達成するために使用するポリマーの量を少なくすることができる。一部の実施形態において、ゲル形成性材料またはポリマーは、19〜24%メトキシル置換および7〜12%ヒドロキシプロピル置換ならびに少なくとも20,000の数平均分子量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり得る。このようなポリマーとしては、商品名Methocel K4M、Methocel K15MおよびMethocel K100MでDow Chemical Co.により販売されているものが挙げられる。
【0041】
デリバリー方法
1つの実施形態において、クロベタゾールなどの抗炎症薬は、蛍光透視用色素を場合によっては伴うボーラス用量の遊離薬剤に調合する。エベロリムスなどの抗増殖薬は、ポリマー材料とともにコーティング組成物に調合し、その後、移植可能器具(例えば、ステント)にコーティングすることができる。ボーラス用量の抗炎症薬を先ず投与し、その後、ドラッグデリバリーステントなどの移植可能器具からの放出により抗増殖薬を送達する。この組成物は、第三の薬剤、例えば、米国特許第6,367,479号に記載されているようなHDL(高密度リポタンパク質)模倣物をさらに含むことができる。あるいは、HDL模倣物は、ステントにより送達することができる。
【0042】
もう1つの実施形態において、クロベタゾールなどの抗炎症薬は、ボーラス用量のゲルに調合することができる。エベロリムスなどの抗増殖薬は、ポリマー材料とともにコーティング組成物に調合し、その後、移植可能器具にコーティングすることができる。ボーラス用量の抗炎症薬を先ず投与し、その後、ドラッグデリバリーステントなどの移植可能器具からの放出により抗増殖薬を送達する。
【0043】
さらなる実施形態では、抗炎症薬および抗増殖薬をポリマーマトリックス中に含め、その後、ステントなどの医療器具にコーティングする。この医療器具コーティングは、コーティングに含まれている薬剤ごとに様々な異なる放出パラメータを有するように設計することができる。
【0044】
上に示したように、生体分解性器具から身体への炎症誘発副産物の放出は、その器具が体内で分解している間、継続的に発生し得る。従って、移植された器具から抗炎症薬が持続放出されるドラッグデリバリーシステムの実施形態を記載する。
【0045】
ドラッグデリバリーシステムの一定の実施形態は、有効量の抗増殖薬を含むことができる。このドラッグデリバリーシステムは、移植可能医療器具の構造体をさらに含むことができる。一部の実施形態において、前記構造体は、ステントなどの移植可能医療器具の基質または足場であり得る。前記基質または足場は、生体安定性ポリマーであってもよく、生体吸収性ポリマーであってもよい。ドラッグデリバリーシステムの1つの実施形態は、その器具の構造体内に有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬をさらに含むことができる。生体分解性構造体内の抗炎症薬により、その構造体の分解プロセス全体を通してその炎症性物質の持続放出に対処することができる。
【0046】
1つの実施形態では、前記抗増殖薬の少なくとも一部を前記器具の構造体上のコーティングに含めることができる。このコーティングは、純粋または実質的に純粋な薬剤であってもよく、生体安定性または生体吸収性ポリマーマトリックスに混合または分散されていてもよい。あるいは、前記抗増殖薬の少なくとも一部分を何らかの他の局所的方法で送達してもよく、全身的に送達してもよい。
【0047】
血管の再狭窄または脆弱性プラークを治療する方法の1つの実施形態は、器具上のコーティングにより、全身的に、および/または何らかの他の局所的方法により、有効量の抗増殖薬を患者に投与することを含むことができる。この方法は、前記器具の構造体内から血管に有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を溶出させることをさらに含むことができる。少なくとも1つのデポー内の抗炎症薬および/または前記構造体の中に混合または分散されている抗炎症薬の少なくとも一部分は、その構造体から溶出することができる。一部の実施形態において、前記抗炎症薬は、前記抗増殖薬の少なくとも一部分を含有するコーティングを通って溶出することができる。前記抗炎症薬の少なくとも一部分は、前記構造体のすべてまたは大部分が分解する間にその構造体から溶出し、血管の炎症を抑制することができる。
【0048】
さらに、前記コーティングの特性、例えば厚さおよび気孔率は、前記器具からの抗炎症薬の放出速度に影響を与え得る。一部の実施形態は、前記コーティングの特性を変性することによる抗増殖薬の放出速度の制御を含むことができる。
【0049】
1つの実施形態において、前記構造体内の抗炎症薬の少なくとも一部分は、その構造体の表面の少なくとも一部分の上にある少なくとも1つのデポーまたは空洞に含有することができる。前記デポー内の薬剤は、純粋または実質的に純粋な薬剤であってもよい。あるいは、前記デポー内の薬剤は、ポリマーマトリックスに混合または分散されていてもよい。
【0050】
薬剤を保持するように形成されたデポーを有する移植可能な医療器具については非常に多数の実施形態が可能である。デポーは、器具上の1つ以上の任意の位置に配置することができる。一部の実施形態において、デポーは、炎症の治療が必要な血管の領域に隣接する器具の部分にまたはその部分の付近に選択的に配置することができる。例えば、長い病変の場合、その病変の中央部分のほうがその病変の末端より大きな炎症を起こすことがある。ステントの末端よりステントの中央の近くにある、より高濃度の分解副産物に起因して、より大きな炎症が生じることがある。従って、病変の中央のほうが病変の末端より多くの抗炎症薬を必要とすることがある。あるいは、病変の末端に刺激または損傷をもたらす機械的ストレスに起因して、病変の末端のほうが大きな炎症を起こすことがある。従って、ステントは、デポーを含む、すなわち、より大きな炎症を有する病変部分に隣接するステントの領域に、より多数のデポーを含むことができる。
【0051】
加えて、デポーは、ステントの管腔外面、内腔面および/または側壁に選択的に配置することができる。例えば、血管の炎症部と接触していることができるので、管腔外面にデポーを有することが望ましい場合がある。しかし、デポーは、再狭窄を治療する際に臨床的に有益であり得る、ステント上のいずれの位置に配置してもよい。図2は、図1からのステント10の断面図50を図示する。断面図50において、デポー55は、管腔外面20に配置されており、デポー60は、側壁30に配置されている。
【0052】
加えて、サイズ(例えば、深さ、直径など)および形状などのデポーを特徴付ける幾何学的パラメータは、炎症反応の治療を助長するように設定することができる。例えば、デポーの幾何学的配置は、分解副産物の炎症効果を打ち消すために、器具が分解している間の抗炎症薬の持続性デリバリーを最大にするように設定することができる。
【0053】
ステント10などの移植可能医療器具の本体上に、単一のデポーまたは複数のデポーを、1つのレーザー溝または複数のレーザー溝として形成することができ、これは、その器具の表面をエキシマーレーザーなどのレーザーからのエネルギー放出に暴露することによりできる。別のデポー形成法としては、物理的または化学的エッチング法が挙げられるが、これらに限定されない。デポーを形成するためのレーザー加工法またはエッチング法は、当業者には周知である。デポーは、実際にあらゆるステント構造に形成することができ、上記の構造だけではない。
【0054】
図3A〜Bは、デポーの幾何学的構造を図解するストラットの断面図を図示する。図3Aを参照して、デポー70は、一般に円筒形の形状を有する。デポー70は、深さD1および直径D2を有する。D1およびD2の適切な値は、薬剤の有効量、そのストラットの機械的強度、デポーの密度、および活性薬剤の放出の望ましい時間枠などの因子に依存する。例えば、薬剤の有効量が多いほど、深さD1および直径D2の両方またはいずれかが大きくなければならない。ストラット上に配置されるデポーの密度が高いほど、個々のストラット内の薬剤要求量を減少させることができ、従って、デポーの必要サイズを低下させることができる。さらに、デポーのサイズおよび密度が増大するにつれて、ストラットの機械的強度は低下し得る。加えて、深さD1が深いほど、長期の活性薬剤持続放出が助長され得る。円筒形デポー70の直径D2は、幅W1の約10%から約95%、約20%から約80%、30%から約70%、または約40%から約60%の範囲を有することができる。
【0055】
図3Bは、一般に形状が円錐形であるデポー75を図解する。円錐形状デポー75は、開口端80および閉塞端85を有する。開口端80は、管腔外面20にあるので、開口端80は、組織の表面に接触する末端である。円錐形状デポー75の直径D3は、閉塞端85から開口端80へと減少するように示されている。最大直径D3’は、円錐形状デポー75の閉塞端85でのものある。D3’は、幅W1の約10%から約95%、約20%から約80%、30%から約70%、または約40%から約60%の範囲を有することができる。円錐形状デポー75の開口端80での最小直径D3”は、幅W1の約30%から約50%の約1%から約70%、約5%から約70%、約15%から約60%の範囲を有することができる。円筒形状デポー70のものと比較して円錐形状デポー75の開口部80の縮小されたサイズは、ステントが所望の治療位置にいったん移植されると、抗炎症薬が放出される速度を低下させることができる。これらのデポーは、細長い溝などの様々な他の幾何学的形状(図解なし)を有することができる。
【0056】
他の実施形態では、前記構造体内の抗炎症薬の少なくとも一部分を前記器具の構造体の中に混合または分散させることができる。生体分解性構造体の中に混合または分散された抗炎症薬は、その構造体が分解するのと実質的に同じ速度で血管に溶出することができる。1つの実施形態において、前記抗炎症薬は、前記器具の製造中にその構造体内に組み込む(混合または分散させる)ことができる。例えば、前記薬剤は、押出または射出成形などの製造プロセス前、中、および/または後に、溶融状態のポリマーと混合することができる。しかし、混合プロセス中、薬剤含有溶融ポリマーの温度を制御して、その活性薬剤の分解を抑制または防止することが重要である。溶融ポリマーの温度は、分解温度または分解温度範囲より下になるように制御することができる。約80℃より上の温度で分解する傾向がある薬剤もある。約100℃より上で分解する傾向がある場合もある。
【0057】
図4A〜Bは、コーティング105および115の中、すなわち下に抗炎症薬を有するストラットの断面図を図示する。コーティング105および115は、抗増殖薬を含んでいてもよい。図4Aでは、純粋な抗炎症薬であるか、ポリマーマトリックスの中に分散された抗炎症薬である組成物100が、デポー70の中に配置されている。抗炎症薬は、血管の炎症部を治療するためにコーティング105を通って溶出するように配置されている。図4Bは、そのストラットの中に分散された抗炎症薬110を図示している。抗炎症薬110は、血管の炎症部を治療するためにコーティング115を通って溶出するように配置されている。
【0058】
抗炎症薬は、パルス放出、急速またはバースト放出および持続放出を含む放出プロフィールの1つまたは組み合わせを有することができる。同様に、抗増殖薬は、ステントからのパルス放出、急速またはバースト放出および持続放出を含む放出プロフィールの1つまたは組み合わせを有することができる。一部の実施形態において、前記併用薬は、同時に、または少なくとも薬物治療期間(それらの薬剤の放出の間に少なくとも多少の重なりがある)中に送達することができる。一部の実施形態において、抗炎症薬は、抗増殖薬への放出前に完全に放出させることができ、または両方の薬剤の放出の間に多少または有意な重なりをもって一部分放出させることができる。「パルス放出」は、薬剤の放出速度の突然のサージを特徴とする薬剤放出プロフィールを一般に指す。その後、この薬剤放出速度サージは、一定期間内に消失する。この用語のさらに詳細な定義は、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Edith Mathiowitz,Ed.,Culinary and Hospitality Industry Publications Servicesにおいて見出すことができる。
【0059】
本明細書で用いる場合、用語「急速放出」は、1つの実施形態では、18mmステントについて1日当たり約15μgから約40μgの間、13mmステントについて1日当たり約10μgから約27μg、および8mmステントについては1日当たり約6.7μgから約17.2μgの範囲での放出速度を特徴とする薬剤放出プロフィールを指す。通常の当業者は、他のサイズを有するステントについて同等のプロフィールを導出することができる。もう1つの実施形態において、用語「急速放出」は、24時間で約20%の薬剤放出を指す。用語「急速放出」は、用語「バースト放出」と同義で用いている。
【0060】
本明細書で用いる場合、用語「持続放出」は、0次放出、指数関数的減衰、段階関数放出、または一定期間にわたって、例えば数日から数年の範囲の期間にわたって持ち越す他の放出プロフィールを包含し得る、薬剤放出プロフィールを一般に指す。用語「0次放出」、「指数関数的減衰」および「段階関数放出」ならびに他の持続放出プロフィールは、当分野では周知である(例えば、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Edith Mathiowitz,Ed.,Culinary and Hospitality Industry Publications Services参照)。
【0061】
1つの実施形態において、抗炎症薬(例えば、クロベタゾール)および抗増殖薬(例えば、エベロリムス)のうちの少なくとも一方は、他方が他の局所的投与手段により投与されている間にステントにより投与されるか、あるいは他方が全身投与されている間にステントにより投与される。他の実施形態では、両方がステント以外の手段により局所投与されるか、あるいは全身投与される。全身投与は、経口的に、または非経口的に(血管内的に、直腸内的に、経鼻的に、気管支内的に、または経皮的に含む)達成することができる。液体担体は、滅菌溶液または懸濁液であり、筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内注入することができる。直腸内投与は、従来どおりの坐剤の形態であり得る。経鼻または気管支内吸入法または通気法による投与のために、薬剤を水性または部分的水性溶液に調合することができ、その後、それをエーロゾルの形態で利用することができる。経皮パッチと、活性成分に対して不活性であり活性成分と互いに相溶性であり、皮膚に対して非毒性であり、全身吸収用の薬剤を皮膚を通して血流に送達することができる担体とを使用することにより、薬剤を経皮投与することができる。前記担体は、クリーム、軟膏、ペーストおよびゲルなどの多くの形態をとることができる。クリームおよび軟膏は、粘稠液であってもよく、水中油型または油中水型いずれかの半固体エマルジョンであってもよい。活性成分を含有する鉱油または親水性鉱油中に分散された吸収性粉末で作られたペーストが適することもある。血流に薬剤を放出することができる他の器具としては、担体を伴うまたは伴わない薬剤を含有しているレザバーを覆う半透膜が挙げられる。
【0062】
局所投与は、標的部位にまたは付近に活性成分を投与する様々な技法により達成することができる。局所デリバリー法についての以下の例は、例証を目的として提供するものであり、限定するためのものではない。例としては、局所デリバリーカテーテル、部位特異的担体、インプラント、直接塗布、または直接注入が挙げられる。カテーテルによる局所デリバリーにより、標的部位に薬剤を直接投与することができる。
【0063】
部位特異的担体による局所デリバリーは、標的細胞に薬剤を向けるまたは連結させる担体に薬剤を取り付けることにより行われる。このデリバリー法の例としては、タンパク質リガンド、モノクローナル抗体または膜固定型リンカーなどの担体の使用が挙げられる。
【0064】
インプラント(ステント以外)による局所デリバリーは、その部位への薬剤を担持するマトリックスの配置である。このマトリックスは、例えば拡散、分解、化学反応、溶媒アクチベータなどにより、活性成分を放出することができる。インプラントによる局所デリバリーの一例としては、小胞またはミクロ粒子の直接注入を挙げることができる。これらのミクロ粒子は、タンパク質、脂質、炭水化物または合成ポリマーなどの物質から構成することができる。ミクロ粒子は、それらの中に含浸された、および/またはそれらの上にコーティングされた薬剤を有することができる。インプラントによる適用は、上に記載した経路に限定されず、通常の当業者は、他の技法、例えば、グラフト、マイクロポンプ、または血管の指定領域の外面の周囲への活性成分を含有するフィブリン糊またはヒドロゲルの塗布を実行することもできる。
【0065】
直接注入による局所デリバリーは、薬剤を含有する液体担体をその部位に直接注入することを表す。液体担体は、薬剤に対して不活性であり、その薬剤と互いに相溶性でなければならない。成分は、真溶液の状態であってもよく、担体中の微粒子に懸濁させてもよい。不活性担体の適する例としては、滅菌食塩溶液が挙げられる。
【0066】
生体適合性および生体吸収性ポリマー
一般に、ポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生体分解性または生体侵食性であり得る。生体安定性は、生体分解性でないポリマーを指す。用語生体分解性、生体吸収性および生体侵食性、ならびに分解される、侵食されるおよび吸収されるは同義で用いており、血液などの体液に暴露されたときに完全に侵食または吸収され得、身体により徐々に再吸収、吸収および/または排除されるポリマーを指す。
【0067】
移植可能医療器具を製造するため、移植可能器具をコーティングするため、または抗増殖薬および/もしくは抗炎症薬を有するドラッグデリバリー粒子を生じさせるために使用することができるポリマーの代表例としては、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(L−ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー(ポリアクリレート以外)、ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリ塩化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル(例えば、ポリビニルアセテート)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン66およびポリカプロラクタム)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロール、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示する移植可能医療器具の製造実施形態における使用に特によく適することがあるポリマーのさらなる代表例としては、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名EVOHまたは商品名EVALにより一般に知られているもの)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、SOLEF 21508、ニュージャージー州、ThorofareのSolvay Solexis PVDFから入手可能)、ポリフッ化ビニリデン(別様に、KYNARとして知られているもの、ペンシルバニア州、PhiladelphiaのATOFINA Chemicalから入手可能)、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリ(ビニルアセテート)、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロックコポリマー、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0068】
器具をコーティングする方法
本明細書に記載するコーティングは、スプレーコーティングまたは当分野において利用可能な他の任意のコーティングプロセスによって形成することができる。一般に、コーティングは、組成物またはその1つもしくはそれ以上の成分を溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁させて、前記組成物またはその1つ以上の成分の溶液、懸濁液または分散液を作ること、その溶液または懸濁液を移植可能器具に塗布すること、および溶媒または溶媒混合物を除去して、コーティングまたはコーティングの層を形成することを含む。本明細書に記載する組成物の懸濁液または分散液は、1ナノメートルから100ミクロンの間、好ましくは1ナノメートルから10ミクロンの間のサイズを有するマイクロ粒子のラテックスまたはエマルジョンの形態であり得る。ここに含まれる任意の段階に熱および/または加圧処理を適用することができる。加えて、所望される場合には、本明細書に記載するコーティングをさらなる熱および/または加圧処理に付すことができる。用いることができる移植可能器具のコーティングプロセスの幾つかの追加例は、例えば、Lambert TL,et al.Circulation,1994,90:1003−1011;Hwang CW,et al.Circulation,2001;104:600−605;Van der Giessen WJ,et al.Circulation,1996;94:1690−1697;Lincoff AM,et al.J Am Coll Cardiol 1997;29:808−816;Grube E.et al,J American College Cardiology Meeting,March 6 2002,ACCIS2002,poster 1174−15;Grube E,et al,Circulation,2003,107:1,38−42;Bullesfeld L,et al.Z Kardiol,2003,92:10,825−832;and Tanabe K,et al.Circulation 2003,107:4,559−64に記載されている。
【0069】
本明細書で用いる場合、用語「溶媒」は、ポリマーと相溶性であり、ポリマー組成物またはその1つもしくはそれ以上の成分を所望の濃度で溶解または懸濁することができる、液体物質または組成物を指す。溶媒の代表例としては、クロロホルム、アセトン、水(緩衝食塩液)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PM)、イソ−プロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1−トリフルオロエタノール、およびヘキサメチルホスホルアミド、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
このような移植可能器具の例としては、自己拡張式ステント、バルーン拡張式ステント、ステント・グラフトおよびグラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、および心臓内リード(例えば、FINELINEおよびENDOTAK、カリフォルニア州、Santa ClaraのGuidant Corporationから入手可能)が挙げられる。前記器具の基礎構造は、実際にはいずれのデザインのものであってもよい。前記器具は、金属材料または合金、例えばコバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR 108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、「ELASTINITE」(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、金、マグネシウム、またはこれらの組み合わせ(それらに限定されない)から製造することができる。「MP35N」および「MP20N」は、ペンシルバニア州、JenkintownのStandard Press Steel Co.から入手可能なコバルトとニッケルとクロムとモリブデンの合金の商品名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。生体吸収性または生体安定性ポリマーから製造された器具も、本発明の実施形態とともに使用することができる。1つの実施形態において、前記移植可能器具はステントであり、これは、生分解性ステントであってもよく、生体耐久性ステントであってもよく、デポーステントであってもよく、金属製ステント、たとえばステンレス鋼またはニチノール製のステントであってもよい。前記ステントは、バルーン拡張性ステントであってもよく、自己拡張式ステントであってもよい。
【0071】
使用方法
本発明の実施形態に従って、様々な記載の実施形態のコーティングを、移植可能器具またはプロテーゼ、例えばステント上に形成することができる。1つ以上の活性薬剤を含むコーティングについては、薬剤は、医療器具(例えば、ステント)を送達および拡張している間はその器具の上に保持され、移植部位において所定の期間にわたって望ましい速度で放出される。好ましくは、前記医療器具は、ステントである。上記コーティングを有するステントは、一例として胆管、食道、気管/気管支および他の生物学的通路内の腫瘍に起因する閉塞の治療を含む、様々な医療処置に有用である。上記コーティングを有するステントは、平滑筋細胞の異常なまたは不適切な移動および増殖、血栓症ならびに再狭窄に起因する血管の閉塞領域の治療に特に有用である。ステントは、多種多様な血管(動脈と静脈の両方)に配置することができる。部位の代表例としては、腸骨動脈、腎動脈および冠動脈が挙げられる。
【0072】
ステントの移植については、先ず血管造影を行って、ステント療法の適切な位置決めを行う。血管造影は、X線写真を撮るので、動脈または静脈に挿入されたカテーテルにより放射線不透過性造影剤を注入することによって一般に達成される。その後、ガイドワイヤを病変または治療提案部位まで進める。そのガイドワイヤによってデリバリーカテーテルを通し、そのカテーテルによってステントを折り畳まれた形状で生物学的通路に挿入することができる。デリバリーカテーテルは、経皮的にまたは手術により大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈または上腕静脈に挿入し、そのカテーテルを蛍光透視鏡のガイダンスのもとで血管系を通して進めることにより、適切な血管へと前進させる。その後、上記コーティングを有するステントは、所望の治療領域で拡張させることができる。挿入後の血管造影図を利用して、適切な位置決めを確認することもできる。
【0073】
本明細書に記載のコーティングを含む移植可能器具は、治療を必要とする状態または疾患を有する動物を治療するために使用することができる。このような動物は、例えば、本明細書に記載の器具をその動物に移植することにより、治療することができる。好ましくは、前記動物は、人間である。本明細書に開示する方法により治療することができる具体例としての疾患または状態としては、血栓症、高コレステロール、出血、血管解離または穿孔、動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトの吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、I型糖尿病患者、II型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄およびアテローム硬化症進行、メタボリック症候群およびX症候群、脆弱性病変(薄い線維性キャップを有するアテローム病変を伴うものを含む)、全身性感染症(歯肉炎、ヘロバクテリアおよびサイトメガロウイルスを含む)ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0074】
本発明の実施形態は、以下に示す実施例により例証される。すべてのパラメータおよびデータは、本発明の実施形態の範囲を不当に制限するように解釈してはならない。
【実施例1】
【0075】
ブタインプラント試験
クロベタゾールのみのデリバリーステント、エベロリムスのみのステント、およびエベロリムス−クロベタゾール併用ドラッグデリバリーステントでの200μg/cm2用量Lemans試験と比較した28日ブタインプラント試験をこの実施例に記載する。この試験は、3つの異なるドラッグデリバリーステント、Arm 1、Arm 2およびArm 3を使用して行った。Arm 1は、Lemansステント(PVDF−co−HFPに基づく、Guidantから入手可能なステント)であり、これは、105μgのエベロリムスを含み、対照として使用した。Arm 2には185μgのクロベタゾールのみを負荷し、エベロリムスは負荷しなかった。Arm 3には105μgのエベロリムスおよび80μgのクロベタゾールを負荷する。
【0076】
前記Arm 1、Arm 2およびArm 3ステントを30%過伸張モデルで移植した。過伸張モデルは、ステントが損傷を生じさせる可能性がより高く、従って、再狭窄を生じさせる可能性がより高くなるように、その動物の動脈を(ステントおよびバルーンを使用して)それらの本来の直径より30%以下大きく拡張させる技法を指す。これは、時として、様々なステントシステムの効力の差別化に役立つ。
【0077】
各Armステントの9つのサンプルを各冠動脈に1つ移植した。ブタの血清における24時間放出データを収集した。28日定量的冠動脈形成術(QCA)、組織構造および形態計測であったので、3、7および28日インビボ放出データを(それらの哺乳動物の動脈から)収集した。
【0078】
この試験では、12mm Vision Smallステント(Guidantから入手可能)を使用した。すべての薬剤溶液は、アセトン/シクロヘキサノン調合物中、2%のSolef(商標)でスプレーした。すべてのステントは、100μgのPBMAプライマーを有した。表1は、この試験で使用したステントのコーティングデザインを示す。
【表1】
【0079】
放出速度データを表2に示す。表2からわかるように、Solef(商標)に基づくコーティングは、エベロリムスとクロベタゾールの両方の同時放出が可能である。
【表2】
【0080】
28日QCAの結果は、図5に示し、28日組織構造データは、図6にあり、ならびに28日形態計測データは、図7に示し、下の表3にまとめる。
【0081】
新生血管内膜面積は、横断面血管切片により測定した新生血管内膜の全量である。これは、本質的に、内弾性板(IEL)の内側の面積マイナス血管内腔の全面積である。新生血管内膜は、IELと血管内腔の間に存する、ステント留置後に形成される新たな血管内膜成長を指す。新生血管内膜厚は、IELと血管内腔の間の平均距離である。これは、本質的に、ステント留置後にそのステントの内側で成長する新たな血管内膜の平均厚である。
【0082】
損傷スコアは、ステント移植により血管内に作られた損傷の量を採点する標準化採点システムである。現在、本発明者らは、0から4の範囲を使用し、この場合の0は、損傷なしであり、4は、最高損傷である。血管に所与のスコアを割り当てるための特別な定量的および定性的基準がある。
【表3】
【0083】
図7からのデータのt検定からのp値を表4にまとめる。「t検定」は、2つのサンプルが、同じ平均を有する2つの同じ基礎集団からのものである可能性が高いかどうかを判定するスチューデントt検定に関連した確立を報告する。この検定から報告される値「p」は、2つのデータ群が同じ集団からのものである確立である。0.10または0.05であるかそれ未満のp値は、一般に有意であると考えられる(Zar,JH.Biostatistical Analysis.Englewood Cliffs,NJ:Prentice−Hall Inc,1974. pp 101−108)。
【表4】
【実施例2】
【0084】
ブタインプラント試験
エベロリムスのみのステント、エベロリムス−クロベタゾール併用ドラッグデリバリーステント、およびクロベタゾールのみのステントを比較する、28日ブタインプラント試験をこの実施例に記載する。ニュージャージー州、ThorofareのSolvary Solexis PVDFから入手可能なSolefポリマーマトリックスに薬剤を分散させた。この試験は、3つの異なるドラッグデリバリーステント、Arm 1、Arm 2およびArm 3を使用して行った。Arm 1は、64μgのエベロリムスを含み、1:4.9の薬剤−ポリマー比を有するLemansステント(PVDF−co−HFPに基づく、Guidantから入手可能なステント)であり、これを対照として使用した。Arm 2には、1:4の薬剤−ポリマー比で64μgのエベロリムスおよび32μgのクロベタゾールを負荷する。Arm 3には、1:4の薬剤比で32μgのクロベタゾールのみを負荷し、エベロリムスは負荷しなかった。表5は、この試験で使用したステントのコーティングデザインを示す。
【0085】
Arm 1、Arm 2およびArm 3ステントを30%の過伸張モデルで移植した。各Armステントの9つのサンプルを各冠動脈に1つ移植した。ブタの血清における24時間放出データを収集した。28日定量的冠動脈形成術(QCA)、組織構造および形態計測であったので、3、7および28日インビボ放出データを(それらの哺乳動物の動脈から)収集した。28日QCA、組織構造および形態計測データは、冠動脈から収集した。
【0086】
この試験では、12mm Vision Smallステント(Guidantから入手可能)を使用した。すべての薬剤溶液は、アセトン/シクロヘキサノン調合物中、2%のSolef(商標)でスプレーした。すべてのステントは、100μgのPBMAプライマーを有した。
【表5】
【0087】
放出速度データを表6に示す。表6からわかるように、Solef(商標)に基づくコーティングは、エベロリムスとクロベタゾールの両方の同時放出が可能である。
【表6】
【0088】
28日組織構造データの結果を図8に示し、下の表7にまとめる。
【表7】
【0089】
図8からのデータのt検定からのp値を表8にまとめる。
【表8】
【0090】
クロベタゾールは、細胞培養で一般に検査される最高濃度(10−6M)でさえ非毒性である。図9は、血管平滑筋増殖の用量依存性阻害および3×10−11Mの低いEC50値を示す増殖アッセイを図示する。この薬剤の効力は、25%である。
【0091】
増殖アッセイは、平滑筋細胞を様々な濃度の所与薬剤に暴露する細胞培養アッセイである。y軸は、DNA鎖または細胞核の全数の尺度である。細胞が分裂している(増殖している)場合、DNAの量は増加する。EC50は、全効果の半分を生じさせる薬剤の濃度である。例えば、最大量の増殖減少が、薬剤なしと比較して60%減少である場合には、EC50は、増殖の30%減少を生じさせる薬剤の濃度である。効力は、平滑筋細胞の増殖の防止に関するその薬剤の有効性である。
【0092】
図10は、エベロリムスのみでの増殖アッセイを図示し、これも血管平滑筋増殖の阻害を示している。この薬剤の効力は、62%である。
【0093】
図11は、エベロリムスとクロベタゾールの比率を変えた増殖アッセイの結果を図示する。図11は、エベロリムス−クロベタゾール比の対数に対する血管平滑筋増殖の阻害効力のプロットを示す。図11における曲線の丸で囲んだ部分は、エベロリムスとクロベタゾールが相乗効果を有し、その結果、これら2つの薬剤の一定範囲内の比率で、より高い効力が生じることを示している。
【0094】
本発明の特定の実施形態を示し、説明したが、より広い態様での本発明から逸脱することなく変更および修飾を行うことができることは、当業者には明らかである。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に入るようなすべての変更および修飾を、それらの範囲内に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ステントの実例を図示する図である。
【図2】ステントの断面の実例を図示する図である。
【図3A】デポーの幾何学的配置を図解するストラットの断面を図示する図である。
【図3B】デポーの幾何学的配置を図解するストラットの断面を図示する図である。
【図4A】コーティングを有するストラットの断面を図示する図である。
【図4B】コーティングを有するストラットの断面を図示する図である。
【図5】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日定量的冠動脈形成術(QCA)の結果を示す図である。
【図6】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日組織構造データを示す図である。
【図7】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日形態計測データを示す図である。
【図8】本明細書に記載するドラッグデリバリーシステムを用いたブタインプラント試験の28日定量的冠動脈形成術(QCA)の結果を示す図である。
【図9】血管平滑筋増殖の用量依存性阻害を示す増殖アッセイを図示する図である。
【図10】同じく血管平滑筋増殖の阻害を示すエベロリムスでの増殖アッセイを図示する図である。
【図11】エベロリムスとクロベタゾールの比率を変えた増殖アッセイの結果を図示する図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管疾患または関連疾患の治療または予防用の、有効量のエベロリムスまたはその誘導体および有効量のクロベタゾールを含むドラッグデリバリーシステム。
【請求項2】
ステントである、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項3】
前記疾患が、再狭窄である、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項4】
前記疾患が、I型糖尿病患者およびII型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄および/またはアテローム硬化症進行である、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項5】
前記疾患が、脆弱性プラークである、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項6】
ポリマーまたはポリマーコーティングである、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項7】
有効量のエベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体と、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を含み、この組み合わせは、血管疾患の治療または予防用である、ドラッグデリバリーシステム。
【請求項8】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項9】
ステントである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項10】
前記疾患が、再狭窄である、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
前記疾患が、I型糖尿病患者およびII型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄および/またはアテローム硬化症進行である、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項12】
前記疾患が、脆弱性プラークである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項13】
ポリマーまたはポリマーコーティングである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項14】
血管の再狭窄を治療する方法であって、有効量のエベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体と、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを患者に投与することを含み、この併用は、血管疾患の治療または予防用である、方法。
【請求項15】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体が、ステントにより送達され、前記抗炎症薬が、他の局所性手段によりまたは全身性手段により送達される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤の組み合わせが、ドラッグデリバリーステントにより投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
血管の脆弱性プラークを治療する方法であって、有効量のエベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体と、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを患者に投与することを含み、この併用は、血管疾患の治療または予防用である、方法。
【請求項19】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体が、ステントにより送達され、前記抗炎症薬が、ステント以外の局所性手段によりまたは全身性手段により送達される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤の組み合わせが、ドラッグデリバリーステントにより投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
血管疾患または関連疾患の治療または予防用のドラッグデリバリーシステムであって、有効量の抗増殖薬と、移植可能医療器具の構造体と、前記器具の構造体内の有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを含む、ドラッグデリバリーシステム。
【請求項23】
前記器具が、ステントである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記構造体が、生体吸収性である、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記構造体が、ポリマー製である、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記抗増殖剤が、エベロリムス、ラパマイシン、ABT−578(40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン)、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、および/またはそれらの組み合わせである、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
前記疾患が、I型糖尿病患者およびII型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける、再狭窄、脆弱性プラークおよび/またはアテローム硬化症進行である、請求項22に記載のシステム。
【請求項29】
少なくとも前記抗増殖薬の一部を含有する前記構造体上のコーティングをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項30】
前記コーティングが、生体吸収性である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分を含有している少なくとも1つのデポーを前記構造体の表面の少なくとも一部分にさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
前記デポー内のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬が、ポリマーマトリックスの中に混合または分散されている、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記構造体の中に混合または分散されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項34】
血管の再狭窄または脆弱性プラークを治療する方法であって、有効量の抗増殖薬を患者に投与することと、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を移植可能医療器具の構造体内から血管に溶出させることとを含み、前記抗増殖薬と抗炎症薬の併用が、血管疾患の治療または予防用である、方法。
【請求項35】
前記器具が、ステントである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記構造体が、生体吸収性である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記構造体が、ポリマー製である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記抗増殖剤が、エベロリムス、ラパマイシン、ABT−578(40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン)、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、および/またはそれらの組み合わせである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記抗増殖薬の少なくとも一部分が、前記器具の構造体上のコーティングからの抗増殖薬の溶出により投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記抗増殖薬の少なくとも一部分が、局所性手段によりまたは全身性手段により投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記構造体の表面の少なくとも一部分の上にある少なくとも1つのデポーから溶出する、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記構造体の中に混合または分散されている、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記抗増殖薬の少なくとも一部分を含むコーティングを通って溶出する、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記構造体が、生体吸収性であり、前記構造体がすべてまたは大部分分解する間に、前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、その構造体から溶出して血管の炎症を抑制する、請求項34に記載の方法。
【請求項1】
血管疾患または関連疾患の治療または予防用の、有効量のエベロリムスまたはその誘導体および有効量のクロベタゾールを含むドラッグデリバリーシステム。
【請求項2】
ステントである、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項3】
前記疾患が、再狭窄である、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項4】
前記疾患が、I型糖尿病患者およびII型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄および/またはアテローム硬化症進行である、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項5】
前記疾患が、脆弱性プラークである、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項6】
ポリマーまたはポリマーコーティングである、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項7】
有効量のエベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体と、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を含み、この組み合わせは、血管疾患の治療または予防用である、ドラッグデリバリーシステム。
【請求項8】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項9】
ステントである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項10】
前記疾患が、再狭窄である、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
前記疾患が、I型糖尿病患者およびII型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける再狭窄および/またはアテローム硬化症進行である、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項12】
前記疾患が、脆弱性プラークである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項13】
ポリマーまたはポリマーコーティングである、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項14】
血管の再狭窄を治療する方法であって、有効量のエベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体と、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを患者に投与することを含み、この併用は、血管疾患の治療または予防用である、方法。
【請求項15】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体が、ステントにより送達され、前記抗炎症薬が、他の局所性手段によりまたは全身性手段により送達される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤の組み合わせが、ドラッグデリバリーステントにより投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
血管の脆弱性プラークを治療する方法であって、有効量のエベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体と、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを患者に投与することを含み、この併用は、血管疾患の治療または予防用である、方法。
【請求項19】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エベロリムス、ラパマイシンまたはエベロリムスもしくはラパマイシンの誘導体が、ステントにより送達され、前記抗炎症薬が、ステント以外の局所性手段によりまたは全身性手段により送達される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤の組み合わせが、ドラッグデリバリーステントにより投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
血管疾患または関連疾患の治療または予防用のドラッグデリバリーシステムであって、有効量の抗増殖薬と、移植可能医療器具の構造体と、前記器具の構造体内の有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬とを含む、ドラッグデリバリーシステム。
【請求項23】
前記器具が、ステントである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記構造体が、生体吸収性である、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記構造体が、ポリマー製である、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記抗増殖剤が、エベロリムス、ラパマイシン、ABT−578(40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン)、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、および/またはそれらの組み合わせである、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記抗炎症薬が、クロベタゾールである、請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
前記疾患が、I型糖尿病患者およびII型糖尿病患者を含む患者サブセットにおける、再狭窄、脆弱性プラークおよび/またはアテローム硬化症進行である、請求項22に記載のシステム。
【請求項29】
少なくとも前記抗増殖薬の一部を含有する前記構造体上のコーティングをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項30】
前記コーティングが、生体吸収性である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分を含有している少なくとも1つのデポーを前記構造体の表面の少なくとも一部分にさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
前記デポー内のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬が、ポリマーマトリックスの中に混合または分散されている、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記構造体の中に混合または分散されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項34】
血管の再狭窄または脆弱性プラークを治療する方法であって、有効量の抗増殖薬を患者に投与することと、有効量のステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬を移植可能医療器具の構造体内から血管に溶出させることとを含み、前記抗増殖薬と抗炎症薬の併用が、血管疾患の治療または予防用である、方法。
【請求項35】
前記器具が、ステントである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記構造体が、生体吸収性である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記構造体が、ポリマー製である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記抗増殖剤が、エベロリムス、ラパマイシン、ABT−578(40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン)、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、および/またはそれらの組み合わせである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記抗増殖薬の少なくとも一部分が、前記器具の構造体上のコーティングからの抗増殖薬の溶出により投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記抗増殖薬の少なくとも一部分が、局所性手段によりまたは全身性手段により投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記構造体の表面の少なくとも一部分の上にある少なくとも1つのデポーから溶出する、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記構造体の中に混合または分散されている、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、前記抗増殖薬の少なくとも一部分を含むコーティングを通って溶出する、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記構造体が、生体吸収性であり、前記構造体がすべてまたは大部分分解する間に、前記ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも一部分が、その構造体から溶出して血管の炎症を抑制する、請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−505093(P2008−505093A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519366(P2007−519366)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/022968
【国際公開番号】WO2006/014270
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/022968
【国際公開番号】WO2006/014270
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】
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