説明

衝突回避装置、ヘリコプタ、及び衝突回避プログラム

【課題】ヘリコプタが障害物に近接した状態でも、ヘリコプタの障害物への衝突を回避する飛行を可能とする、ことを目的とする。
【解決手段】ヘリコプタ10は、GPS受信部34によって、受信したGPS信号に基づいて自機の位置を検知し、距離センサ18によって、自機と周囲の障害物との距離を測定する。そして、ヘリコプタ10は、詳細情報生成部40によって、地図情報記憶装置52に記憶されている地図情報から距離センサ18で検知した自機の位置を含む自機周囲情報を読み出し、読み出した自機周囲情報と距離センサ18による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成し、飛行制御部32によって、自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突回避装置、ヘリコプタ、及び衝突回避プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタは、低高度の飛行を行う場合があるが、視界不良時に山岳等へ衝突する可能性が高くなる。
このような衝突を回避するために、特許文献1には、ヘリコプタの対地衝突防止装置として、GPS(Global Positioning System)受信機および高度計によって自機高度及び自機位置を検出し、自機位置に基づいて周囲の地形情報を生成し、自機高度、自機位置及びこれらの時間変化並びに地形情報に基づいて、自機の対地衝突危険度を判定し、現在の自機高度および自機位置から定点ホバーに至るまでの飛行パスを生成して、地形情報及び対地衝突危険度に基づいて対地衝突を回避できる飛行パスを選定し、自動操縦装置が自機を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−271442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘリコプタのパイロットは、例えば、遭難した要救助者の救出及び荷物の搬送等、視界が良好であるものの、障害物への接近を要する操縦を強いられる場合がある。このような場合、パイロットは、自機が障害物へ衝突しないように、自機と障害物との距離を把握しながらヘリコプタの操縦を行わなければならず、ヘリコプタの操縦が困難な場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ヘリコプタが障害物に近接した状態でも、ヘリコプタの障害物への衝突を回避する飛行を可能とする衝突回避装置、ヘリコプタ、及び衝突回避プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の衝突回避装置、ヘリコプタ、及び衝突回避プログラムは以下の手段を採用する。
【0007】
すなわち、本発明に係る衝突回避装置は、ヘリコプタに搭載されるヘリコプタと障害物との衝突を回避するための衝突回避装置であって、受信したGPS(Global Positioning System)信号に基づいて自機の位置を検知する検知手段と、自機と周囲の障害物との距離を測定する測定手段と、記憶手段に記憶されている地図情報から前記検知手段によって検知された自機の位置を含む所定領域の情報を読み出し、該読み出した情報と前記測定手段による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う制御手段と、を備える。
【0008】
本発明によれば、検知手段によって、受信したGPS信号に基づいて自機の位置が検知され、測定手段によって、ヘリコプタである自機と周囲の障害物との距離が測定される。
【0009】
そして、生成手段によって、記憶手段に記憶されている地図情報から検知手段で検知された自機の位置を含む所定領域の情報が読み出される。
地図情報は、一般的に、等高線による土地の高低差、海、湖、及び河川等の水域が記されているものの、ヘリコプタの飛行の障害になる崖及び木等の障害物の大きさや範囲の詳細については記されていない。そのため、ヘリコプタが例えばホバリングにより空中に留まる場合等に、パイロットは、自機が障害物へ衝突しないように、自機と障害物との距離を把握しながらヘリコプタの操縦を行わなければならず、ヘリコプタの操縦が困難な場合がある。
【0010】
そこで、生成手段が、上記読み出した情報と測定手段による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成する。ヘリコプタの周囲の形状とは、すなわち崖等の地形や木々を含む障害物の形状である。
そして、制御手段によって、生成手段で生成された自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御が行われる。
【0011】
従って、本発明は、ヘリコプタが障害物に近接した状態でも、ヘリコプタの障害物への衝突を回避する飛行を可能とする。
【0012】
また、本発明の衝突回避装置は、前記制御手段が、操縦桿の操舵による自機の障害物の方向への移動を抑制する。
【0013】
本発明によれば、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御として、操縦桿の操舵による自機の障害物の方向への移動の抑制が行われるので、より確実に障害物への衝突を回避することができる。
【0014】
また、本発明の衝突回避装置は、前記制御手段が、前記自機の大きさとして、前記測定手段によって測定された前記距離を用い、該距離が予め定められた距離未満となった場合に、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う。
【0015】
本発明によれば、測定手段によって自機と障害物との距離を測定しながら、飛行を行うことになるので、より確実に障害物への衝突を回避することができる。
【0016】
また、本発明の衝突回避装置は、吊具を昇降させる巻き上げ手段と、前記吊具及び前記吊具を降下させる目標を、該吊具及び該目標の上方から撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された前記吊具の位置と前記目標の位置とが、所定範囲内となるように自機を制御する制御手段と、を備える。
【0017】
本発明によれば、撮像手段によって、巻き上げ手段で昇降される吊具及び吊具を降下させる目標が上方から撮像され、制御手段によって、撮像された吊具の位置と目標の位置とが、所定範囲内となるように自機が制御されるので、より確実に吊具を目標へ降下させることができる。
【0018】
また、本発明の衝突回避装置は、前記測定手段を、自機の正面、下面、上面、両側面、及び背面に備える。
【0019】
本発明によれば、より正確に自機と障害物との距離を測定できる。
【0020】
また、本発明の衝突回避装置は、前記測定手段を回転翼の先端に備える。
【0021】
本発明によれば、回転翼はヘリコプタの移動方向に応じて上下動するため、回転翼の先端に測定手段が備えられることによって、回転翼が上下動した場合における回転翼から障害物までの距離が測定可能となり、より正確に自機と障害物との距離を測定できる。
【0022】
一方、本発明に係るヘリコプタは、上記記載の衝突回避装置を備える。
【0023】
さらに、本発明に係る衝突回避プログラムは、ヘリコプタに搭載されるヘリコプタと障害物との衝突を回避するための衝突回避プログラムであって、受信したGPS信号に基づいて自機の位置を検知する第1工程と、自機と周囲の障害物との距離を測定する第2工程と、記憶手段に記憶されている地図情報から前記第1工程によって検知された自機の位置を含む所定領域の情報を読み出し、該読み出した情報と前記第2工程による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成する第3工程と、前記第3工程によって生成した前記自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う第4工程と、を含む。
【0024】
また、本発明に係る衝突回避プログラムは、ヘリコプタに搭載されるヘリコプタと障害物との衝突を回避するための衝突回避プログラムであって、受信したGPS信号に基づいてヘリコプタの位置を検知し、該ヘリコプタと周囲の障害物との距離を測定し、予め定められた地図情報から前記検知したヘリコプタの位置を含む所定領域の情報を読み出し、該読み出した情報と前記測定による測定結果とから生成された、ヘリコプタの周囲の形状を示す自機周囲詳細情報が予め記憶された記憶手段から、受信したGPS信号に基づいた自機の位置に応じた自機周囲詳細情報を読み出す第1工程と、前記第1工程によって読み出した前記自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う第2工程と、を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ヘリコプタが障害物に近接した状態でも、ヘリコプタの障害物への衝突を回避する飛行を可能とする、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るヘリコプタの外観図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヘリコプタが障害物の周囲をホバリングする場合の模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る主制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るヘリコプタの撮像装置による撮像の状態を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るヘリコプタが目的地へ到着し、ホイストを降下させるまでの流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る障害物接近処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係るヘリコプタの接近可能距離及び移動可能距離を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係るホイスト降下処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る衝突回避装置、ヘリコプタ、及び衝突回避プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係るヘリコプタ10の外観図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。
本実施形態に係るヘリコプタ10は、フック12(吊具)を目標へ昇降させるホイスト14を備え、例えば、山岳等で遭難した要救助者の救助、荷物の昇降を行うヘリコプタである。
【0029】
本実施形態では、目標を要救助者とし、ヘリコプタ10を、要救助者を救助するためのヘリコプタとして説明する。このため、本実施形態に係るヘリコプタ10は、例えば、図2に示すようにホイスト14を降下させて要救助者を救出する。しかし、要救助者は、崖や木等の障害物の近辺に位置している場合が多い。そのため、ヘリコプタ10による要救助者の救助には、ヘリコプタ10本体やホイスト14が障害物に接触する危険性が伴う場合がある。特に、突風が吹いた場合は、ホイスト14を降下させる等するために、ホバリングしているヘリコプタ10は、挙動を乱しやすく、ヘリコプタ10は、破線で示すように障害物に接触する危険性がより高まる。
【0030】
そこで、本実施形態に係るヘリコプタ10は、図1に示すように、自機の正面、下面、上面、両側面、及び背面、並びにブレード(回転翼)16の先端に、自機と周囲の障害物との距離を測定する距離センサ18A〜18K(11個)を備え、距離センサ18A〜18Kによる測定結果に基づいて飛行が制御される。より具体的には、例えば、自機の正面の先端に距離センサ18Aが、自機の下面に距離センサ18Bが、自機の上面としてメインロータ20に距離センサ18Cが、自機の両側面に距離センサ18D,18Eが、自機の背面としてテールロータ22の中心に距離センサ18Fが、テールロータ22が備えられている部分の略真下に距離センサ18Gが、メインロータ20が有する各ブレード16(本実施形態のブレード16は4枚)の先端に距離センサ18H〜18Kが備えられる。なお、ブレード16はヘリコプタ10の移動方向に応じて上下動するため、ブレード16の先端に距離センサ18H〜18Kが備えられることによって、ブレード16が上下動した場合におけるブレード16から障害物までの距離が測定可能となる。
【0031】
距離センサ18A〜18Kは、レーザ又はミリ波レーダを周囲に発信し、その反射波を検出する。そして、該検出した信号に基づいて、ヘリコプタ10の周囲との距離が測定される。なお、以下の説明において、各距離センサ18を区別する場合は、符号の末尾にA〜Kの何れかを付し、各距離センサ18を区別しない場合は、A〜Kを省略する。また、上記距離センサ18の取り付け位置は、一例であり、上記取り付け位置に限られず、より多くの距離センサ18がヘリコプタ10に取り付けられてもよいし、より少ない距離センサ18がヘリコプタ10に取り付けられてもよい。
【0032】
図3は、本実施形態に係る主制御装置30の機能を示す機能ブロック図である。
ヘリコプタ10は、主制御装置30を備える。主制御装置30は、飛行制御部32、GPS受信部34、距離センサ信号受信部36、自機情報生成部38、詳細情報生成部40、及び画像処理部42を備える。
【0033】
飛行制御部32は、種々の情報が入力され、該情報に基づいてヘリコプタ10の飛行に係る制御を司る。
【0034】
GPS受信部34は、GPSアンテナ44を介してGPS衛星からGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて、自機の位置を検知し、検知した自機の位置情報(緯度及び経度)を詳細情報生成部40へ出力する。
【0035】
距離センサ信号受信部36は、各距離センサ18からの信号に基づいて、自機と周囲の障害物との距離を測定し、該距離を障害物情報として詳細情報生成部40へ出力する。
【0036】
また、ヘリコプタ10は、メインロータ20が有するブレード16の位相、すなわち各ブレード16の位置(方位)を検知するブレード位置検出装置46(ブレードトラッカともいう。)を備える。
ブレード位置検出装置46は、検知した各ブレード16が向いている方位を障害物情報として詳細情報生成部40へ出力する。
ブレード16は、メインロータ20と共に回転しているため、ブレード16に備えられた距離センサ18H〜18Kによって障害物までの距離を測定しても、該障害物がどの方位に存在するかが距離センサ18H〜18Kだけでは分からない。そのため、本実施形態にかかるヘリコプタ10では、ブレード位置検出装置46によって各ブレード16の方位を検出することによって、距離センサ18H〜18Kで測定した障害物の方位を明確にする。
【0037】
自機情報生成部38は、コンパス48及び高度計50からの信号が入力され、自機が向いている方位及び高度を自機情報として詳細情報生成部40及び飛行制御部32へ出力する。
【0038】
詳細情報生成部40は、地図情報(デジタルデータとされた地形情報)を記憶した地図情報記憶装置52と自機周囲詳細情報生成部54とを備える。
【0039】
詳細情報生成部40は、GPS受信部34から入力された位置情報に基づいて、自機の位置を含む所定領域の地図情報(以下、「自機周囲情報」という。)を読み出す。自機周囲情報の具体例は、自機の位置を中心とした数十m四方の矩形領域又は円形領域の地図情報である。
本実施形態に係るヘリコプタ10は、上記読み出した自機周囲情報を用いて飛行が制御される。しかし、自機周囲情報である地図情報は、一般的に、等高線による土地の高低差、海、湖、及び河川等の水域が記されているものの、ヘリコプタ10の飛行の障害になる崖及び木等の障害物の大きさや範囲の詳細については記されていない。
【0040】
そのため、ヘリコプタ10が例えばホバリングにより空中に留まる場合等に、パイロットは、自機が障害物へ衝突しないように、自機と障害物との距離を把握しながらヘリコプタ10の操縦を行わなければならず、ヘリコプタ10の操縦が困難な場合がある。
そこで、詳細情報生成部40が、上記読み出した自機周囲情報と距離センサ18による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成する。ヘリコプタ10の周囲の形状とは、すなわち崖等の地形や木々を含む障害物の形状である。
【0041】
より詳しくは、距離センサ18Aが、自機から自機の前方の障害物までの距離を測定し、距離センサ18Bが、自機から自機の下方の障害物(地面)までの距離を測定し、距離センサ18Cが自機から自機の上方の障害物までの距離を測定し、距離センサ18D,18Eが、自機から自機の両側方の障害物までの距離を測定し、距離センサ18F,18Gが自機から自機の後方の障害物までの距離を測定し、距離センサ18H〜18Kが各ブレード16の先端から障害物までの距離を測定する。そして、自機周囲詳細情報生成部54は、自機の高度及び方位、各ブレード16の方位、並びに読み出した自機周囲情報により示される地形情報を組み合わせ、自機周囲詳細情報として生成する。なお、生成した自機周囲詳細情報は、記憶装置56に記憶される。
【0042】
また、画像処理部42は、図4に示すようにホイスト14及び目標(要救助者)を上方から撮像するための撮像装置58から出力された撮像信号が入力される。そして、画像処理部42は、入力された撮像信号に基づいてホイスト14の平面位置(X,Y)と目標の平面位置(Xp,Yp)とを画像認識により算出する。なお、撮像装置58は、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ等の固体撮像素子によって撮像を行う。
【0043】
さらに、ヘリコプタ10は、ホイスト昇降装置60を備える。
ホイスト昇降装置60は、飛行制御部32から入力されるホイスト位置制御コマンドに基づいて、ホイスト14を昇降させると共に、ホイスト14の位置を示すホイスト位置情報を飛行制御部32へ出力する。なお、ホイスト位置情報とは、具体的には、自機の下面からフック12の先端までの距離(長さ)である。
【0044】
そして、飛行制御部32は、入力された各種情報及び操縦桿70の操舵量に基づいて、各種情報処理を行うと共にヘリコプタ10を操作するための操舵制御コマンドを生成し、該操舵制御コマンドをアクチュエータ72へ出力する。アクチュエータ72は、操舵制御コマンドに基づいて動作し、メインロータ20及びテールロータ22を駆動させる。
【0045】
図5は、ヘリコプタ10が目的地へ到着し、ホイスト14を目標である要救助者へ降下させるまでの流れを示すフローチャートである。なお、ホイスト降下処理中にも障害物接近処理は実行されるため、ステップ106のホイスト降下処理が終了するまで、障害物接近処理は常に繰り返される。
【0046】
要救助者が位置する領域近辺にヘリコプタ10が到着すると、ステップ100では、障害物接近処理を実行する。
【0047】
次のステップ102では、目的地、すなわち要救助者の上空へヘリコプタ10が到達したか否かをパイロットが判断し、パイロットが到着したと判断した場合は、ステップ104へ移行し、到着していないと判断した場合は、再びステップ100へ戻り、障害物接近処理を行うか、要救助者の救助を中断する。
【0048】
ステップ104では、要救助者の上空でホバリング(定点ホバー)により留まるように、パイロットがヘリコプタ10を制御する。
【0049】
次のステップ106では、ホイスト降下処理を実行する。そして、ヘリコプタ10によって要救助者が救助されると、本フローは、終了することとなる。
【0050】
図6は、障害物接近処理を行う場合に、主制御装置30によって実行される障害物接近プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、障害物接近プログラムは主制御装置30が備える例えば記憶装置56の所定領域に予め記憶されている。
【0051】
まず、ステップ200は、詳細情報生成部40の機能に相当する処理であり、GPS信号から得られた自機の位置情報に基づいて、地図情報に含まれる自機周囲情報を読み出す。
【0052】
次のステップ202は、距離センサ信号受信部36の機能に相当する処理であり、距離センサ18を用いて自機と周囲の障害物との距離を測定する。
【0053】
次のステップ204は、詳細情報生成部40の機能に相当する処理であり、読み出した自機周囲情報及び距離センサ18の測定結果とから自機周囲詳細情報を算出する。
【0054】
次のステップ206からステップ218は、飛行制御部32の機能に相当する処理であり、ステップ206では、突風による機体の移動距離(以下、「機体移動距離」という。)を算出する。なお、機体移動距離は、例えば、ヘリコプタ10の位置情報により示される位置(領域)において、過去に観測された風の最大風速に応じて求められる。具体的には、機体移動距離は、図7に示すようにヘリコプタ10の機体中心を中心とした円を規定するための径(半径)であり、該径は機体の大きさ及び最大風速に応じたデータベースとして例えば記憶装置56に予め記憶されている。
【0055】
次のステップ208では、接近可能距離M(nは距離センサ18を区別するための符号)を算出する。接近可能距離Mとは、図7に示すように、ヘリコプタ10を中心とした機体移動距離よりも広い範囲である。そして、接近可能距離Mは、例えば、ステップ206で算出した機体移動距離に距離センサ18の取り付け位置に応じた所定距離を加算することによって算出される。
【0056】
次のステップ210では、距離センサ信号受信部36の機能に相当する処理であり、距離センサ18を用いて自機と周囲の障害物との距離L(nは距離センサ18を区別するための符号)を測定する。なお、本ステップ210で行われる距離センサ18による距離の測定は、ステップ202における距離の測定とは異なり、後述するようにヘリコプタ10が障害物へ接近することを防止するための距離の測定である。
【0057】
次のステップ212では、パイロットによる操縦桿70の操舵方向を検知する。
【0058】
次のステップ214では、ステップ212で検知した操舵方向における距離Lが接近可能距離M以下であるか否かを判定する接近可能判定を行い、肯定判定の場合は、ステップ216へ移行し、否定判定の場合は、ステップ218へ移行する。
【0059】
ステップ216では、操縦桿70による操舵方向へ向かうように自機を制御しても、障害物へ自機が衝突することはないため、操縦桿70による操舵量に応じて操舵方向へ自機移動させる。
【0060】
一方、ステップ218では、操縦桿70による操舵方向へ向かうように自機を制御すると、障害物へ自機が衝突する可能性が生じるため、操縦桿70の操舵による障害物の方向への移動を抑制する操舵抑制制御を行う。
本実施形態では操舵抑制制御として、操縦桿70の反力を増加させる反力制御信号を飛行制御部32から操縦桿70へ出力し、パイロットが上記操舵方向へ操縦桿70を操作しようとしても、操縦桿70が該操舵方向へ傾くことを抑制する制御を行う。しかし、操舵抑制制御としては、これに限らず、例えば、操縦桿70に対する上記操舵方向への操作量の感度を低下させる制御や、操縦桿70に対する上記操舵方向への操作を受け付けない制御等、他の制御が行われてもよい。
【0061】
そして、ヘリコプタ10は、目的地へ到着するまで障害物接近処理を繰り返す。
【0062】
図8は、ホイスト降下処理を行う場合に、主制御装置30によって実行されるホイスト降下プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、ホイスト降下プログラムは主制御装置30が備える例えば記憶装置56の所定領域に予め記憶されている。
【0063】
まず、ステップ300は、自機情報生成部38の機能に相当する処理であり、自機の高度を測定する。
【0064】
次のステップ302からステップ306は、飛行制御部32の機能に相当する処理であり、ステップ302では、自機周囲詳細情報を記憶装置56から読み出す。なお、該自機周囲詳細情報は、障害物接近処理において作成された情報を用いる。
【0065】
次のステップ304では、自機周囲詳細情報に基づいた標高と自機の高度から、自機からホイスト14を降下させる距離(以下、「ホイスト降下距離Zp」という。)を算出する。
【0066】
次のステップ306では、算出したホイスト降下距離を、ホイスト昇降装置60へホイスト位置制御コマンドとして出力する。ホイスト昇降装置60は、ホイスト位置制御コマンドに応じてホイスト14を降下させる。
【0067】
次のステップ308は、自機情報生成部38及び飛行制御部32の機能に相当する処理であり、撮像した画像からホイスト14の平面位置(X,Y)及び目標である要救助者の平面位置(Xp,Yp)を画像認識により検出する(図4も参照)。また、本ステップ308は、ホイスト昇降装置60から入力されるホイスト位置情報をホイスト14の移動量(高さ方向の位置、Z)として検出する。
【0068】
次のステップ310では、ホイスト14の平面位置(X,Y)と目標の平面位置(Xp,Yp)とが略一致するように操舵制御(自動制御)を実行する。
【0069】
次のステップ312では、ホイスト14の平面位置Xと目標の平面位置Xpとの差の絶対値が予め定められた差分ΔX(例えば、50cm)未満となったか否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ314へ移行し、否定判定の場合は、図5のステップ100へ戻る。
【0070】
ステップ314では、ホイスト14の平面位置Yと目標の平面位置Ypとの差の絶対値が予め定められた差分ΔY(例えば、50cm)未満となったか否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ316へ移行し、否定判定の場合は、図5のステップ100へ戻る。
【0071】
ステップ316では、ホイスト降下距離Zpとホイスト14の距離Zとが略一致するようにホイスト昇降装置60を制御する。
【0072】
次のステップ318では、ホイスト降下距離Zpとホイスト14の距離Zとの差の絶対値が予め定められた差分ΔZ(例えば、10cm)未満となったか否かを判定し、肯定判定の場合は、本プログラムを終了し、否定判定の場合は、図5のステップ100へ戻る。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るヘリコプタ10は、GPS受信部34によって、受信したGPS信号に基づいて自機の位置を検知し、距離センサ18によって、自機と周囲の障害物との距離を測定する。そして、ヘリコプタ10は、詳細情報生成部40によって、地図情報記憶装置52に記憶されている地図情報から距離センサ18で検知した自機の位置を含む自機周囲情報を読み出し、読み出した自機周囲情報と距離センサ18による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成し、飛行制御部32によって、自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う。
従って、本実施形態に係るヘリコプタ10は、障害物に近接した状態でも障害物への衝突を回避する飛行を可能とする。
【0074】
また、本実施形態に係るヘリコプタ10は、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御として、操縦桿70の操舵による自機の障害物の方向への移動の抑制を行うので、より確実に障害物への衝突を回避することができる。
【0075】
また、本実施形態に係るヘリコプタ10は、自機の大きさとして、距離センサ18によって測定された距離を用い、該距離が接近可能距離未満となった場合に、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う。
本発明によれば、測定手段によって自機と障害物との距離を測定しながら、飛行を行うことになるので、より確実に障害物への衝突を回避することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るヘリコプタ10は、ホイスト昇降装置60で昇降させるホイスト14及びホイスト14を降下させる目標を上方から撮像し、撮像したホイスト14の位置と目標の位置とが、所定範囲内となるように自機を制御するので、より確実にフック12(ホイスト14)を目標へ降下させることができる。
【0077】
また、本実施形態に係るヘリコプタ10は、距離センサ18を、自機の正面、上面、下面、両側面、及び背面、並びにブレード16の先端に備えるので、より正確に自機と障害物との距離を測定できる。
【0078】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記実施形態では、距離センサ18を用いて測定された自機と周囲の障害物との距離Lが接近可能距離M未満となった場合に操舵抑制制御を実行する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、GPS信号によって検知された自機の位置と自機周囲詳細情報から検出された自機の周囲の障害物との距離が接近可能距離M未満となった場合に操舵抑制制御を実行する形態としてもよい。
【0080】
また、ヘリコプタは、自機が以前に生成した自機周囲詳細情報又は他のヘリコプタ10が生成した自機周囲詳細情報を予め記憶装置に記憶し、受信したGPS信号に基づいた自機の位置に応じた自機周囲詳細情報を読み出し、読み出した自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う形態とされてもよい。この形態の場合、記憶装置が自機周囲詳細情報を予め記憶しているので、ヘリコプタは、目標の位置に到着するたびに自機周囲詳細情報を生成する必要がない。
【0081】
また、上記各実施の形態で説明した障害物接近プログラム及びホイスト降下プログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
10 ヘリコプタ
16 ブレード
18 距離センサ
32 飛行制御部
34 GPS受信部
40 詳細情報生成部
52 地図情報記憶装置
70 操縦桿


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプタに搭載されるヘリコプタと障害物との衝突を回避するための衝突回避装置であって、
受信したGPS(Global Positioning System)信号に基づいて自機の位置を検知する検知手段と、
自機と周囲の障害物との距離を測定する測定手段と、
記憶手段に記憶されている地図情報から前記検知手段によって検知された自機の位置を含む所定領域の情報を読み出し、該読み出した情報と前記測定手段による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う制御手段と、
を備えた衝突回避装置。
【請求項2】
前記制御手段は、操縦桿の操舵による自機の障害物の方向への移動を抑制する請求項1記載の衝突回避装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記自機の大きさとして、前記測定手段によって測定された前記距離を用い、該距離が予め定められた距離未満となった場合に、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う請求項1又は請求項2記載の衝突回避装置。
【請求項4】
吊具を昇降させる巻き上げ手段と、
前記吊具及び前記吊具を降下させる目標を、該吊具及び該目標の上方から撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された前記吊具の位置と前記目標の位置とが、所定範囲内となるように自機を制御する制御手段と、
を備えた請求項1から請求項3の何れか1項記載の衝突回避装置。
【請求項5】
前記測定手段は、自機の正面、上面、下面、両側面、及び背面に備えられる請求項1から請求項4の何れか1項記載の衝突回避装置。
【請求項6】
前記測定手段は、回転翼の先端に備えられる請求項1から請求項5の何れか1項記載の衝突回避装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項記載の衝突回避装置を備えたヘリコプタ。
【請求項8】
ヘリコプタに搭載されるヘリコプタと障害物との衝突を回避するための衝突回避プログラムであって、
受信したGPS信号に基づいて自機の位置を検知する第1工程と、
自機と周囲の障害物との距離を測定する第2工程と、
記憶手段に記憶されている地図情報から前記第1工程によって検知された自機の位置を含む所定領域の情報を読み出し、該読み出した情報と前記第2工程による測定結果とから、自機の周囲の形状を示す自機周囲詳細情報を生成する第3工程と、
前記第3工程によって生成した前記自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う第4工程と、
を含む衝突回避プログラム。
【請求項9】
ヘリコプタに搭載されるヘリコプタと障害物との衝突を回避するための衝突回避プログラムであって、
受信したGPS信号に基づいてヘリコプタの位置を検知し、該ヘリコプタと周囲の障害物との距離を測定し、予め定められた地図情報から前記検知したヘリコプタの位置を含む所定領域の情報を読み出し、該読み出した情報と前記測定による測定結果とから生成された、ヘリコプタの周囲の形状を示す自機周囲詳細情報が予め記憶された記憶手段から、受信したGPS信号に基づいた自機の位置に応じた自機周囲詳細情報を読み出す第1工程と、
前記第1工程によって読み出した前記自機周囲詳細情報と自機の大きさとに基づいて、自機が障害物へ衝突することを抑制するための制御を行う第2工程と、
を含む衝突回避プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−201176(P2012−201176A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66408(P2011−66408)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】