説明

表示システム、表示装置、並びに中継装置

【課題】再生装置から出力される再生信号を、ユーザーの頭部に装着して用いられる優れた表示装置を含む2以上の表示装置へ、中継装置経由で出力する。
【解決手段】フロント・エンド・ボックス40内の接続監視回路は、HDMI入力部501にHDMI接続されるソース機器の+5V信号と、第2の出力部503にHDMI接続されるシンク機器のHPD信号の両方を監視する。そして、フロント・エンド・ボックス40内の接続監視回路は、HDIMソース機器が発する+5V信号とともに、HDMIシンク機器が発するHPD信号が検知できたときのみ、HDMIシンク機器へのリピーター機能を有効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生装置から出力される再生信号を2以上の表示装置に出力する表示システム、ユーザーの頭部に装着して用いられる表示装置、並びに、ユーザーの頭部に装着して用いられる表示装置を含む2以上の表示装置と再生装置との間を中継する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部に装着して映像を視聴する表示装置、すなわちヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)が広く知られている。ヘッド・マウント・ディスプレイは、左右の眼毎に表示部を持ち、また、ヘッドフォンと併用し、視覚及び聴覚を制御できるように構成されている。頭部に装着した際に外界を完全に遮るように構成すれば、視聴時の仮想現実感が増す。また、ヘッド・マウント・ディスプレイは、左右の眼に違う映像を映し出すことも可能であり、左右の眼に視差のある画像を表示すれば、3D画像を提示することができる。
【0003】
ヘッド・マウント・ディスプレイは、ユーザーに虚像を提供する(すなわち、虚像を眼の網膜上に結像させる)表示システムである。ここで、虚像は、物体が、焦点距離よりレンズに近い位置にある場合に、その物体側にできるものである。
【0004】
ユーザーに虚像を観賞させる場合、例えば、虚像が形成されるユーザーからの距離などは、映像によって変化させるのが好ましい。例えば、映像に適した形で虚像を提供する表示装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。この表示装置は、ユーザーの左眼と右眼とで観察される同一の虚像を、同一平面上に配置する拡大光学系を備え、映像のアスペクト比に応じて、虚像のユーザーからの距離及び虚像の大きさを制御するようになっている。例えば、ハイビジョン放送による、アスペクト比が16:9の映画やドラマなどの映像は、ユーザーから15メートル程度の遠い位置に大きな虚像を網膜に結像し、NTSC(National Television System Committee)方式の、アスペクト比が4:3のテレビジョン信号の映像は、ユーザーから3メートル程度の比較的近い位置に中間の大きさの虚像を網膜に結像し、ユーザーに臨場感を感じさせるとともに、虚像を鑑賞する際の疲労感を軽減する。
【0005】
ヘッド・マウント・ディスプレイの左右の眼の表示部に有機EL(Electro− Luminescence)などの高解像度の素子を用いるとともに光学系で適当な画角を設定し、さらにヘッドフォンで多チャンネルを再現すれば、さらに映画館で視聴するような臨場感を再現することができるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−133415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、再生装置から出力される再生信号を2以上の表示装置に出力する優れた表示システム、ユーザーの頭部に装着して用いられる優れた表示装置、並びに、ユーザーの頭部に装着して用いられる表示装置を含む2以上の表示装置と再生装置との間を中継する優れた中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
映像情報を供給する映像情報供給装置と、
ユーザーが装着して用いられる第1の表示装置と、
1以上の第2の表示装置と、
前記第1の表示装置及び前記第2の表示装置を接続し、前記映像情報供給装置から供給される映像情報を前記第1の表示装置へ優先して出力する出力切換装置と、
を具備する表示システムである。
【0009】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0010】
また、本願の請求項2に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する画像に重畳するGUI領域をオービット動作させるオービット処理部と、
を具備する表示装置である。
【0011】
本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の表示装置のオービット処理部は、GUI領域を出力操作する度、又は、一定期間毎にGUI領域を動作させるように構成されている。
【0012】
本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の表示装置のオービット処理部は、前記ユーザー操作部を介してユーザーがGUI操作している間はオービット動作を停止させるように構成されている。
【0013】
また、本願の請求項5に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部が有する画面とはアスペクト比の異なる画像を表示したときの、画像表示領域と黒画表示領域で異なる輝度補正パラメーターを設定して、前記信号処理部で映像信号の輝度補正処理を行なう、
表示装置である。
【0014】
また、本願の請求項6に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記表示制御部は、前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ出力する表示データ信号のタイミングを異ならせる、
表示装置である。
【0015】
本願の請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の表示装置の表示制御部は、前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ出力する表示データ信号の位相、周波数、又は極性のいずれかを左右で変えるように構成されている。
【0016】
また、本願の請求項8に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記信号処理部は、ユーザーが当該装置を使用開始してからの経過時間に応じて、鑑賞ピーク輝度を変化させる、
表示装置である。
【0017】
本願の請求項9に記載の発明によれば、請求項8の記載の表示装置の信号処理部は、平常時に設定された設定鑑賞ピーク輝度よりも高い暗順応対応鑑賞ピーク輝度から、前記設定鑑賞ピーク輝度まで、所定の所要時間をかけて徐々に低下させるように構成されている。
【0018】
本願の請求項10に記載の発明によれば、請求項9の記載の表示装置の信号処理部は、前記暗順応対応鑑賞ピーク輝度から前記設定鑑賞ピーク輝度に戻るまでの所要時間を、当該装置を装着したユーザーの暗順応対応特性に応じて調整するように構成されている。
【0019】
本願の請求項11に記載の発明によれば、請求項9の記載の表示装置は、輝度センサーをさらに備えている。そして、信号処理部は、前記輝度センサーで検出される外界の可視光量に応じて前記暗順応対応鑑賞ピーク輝度を調整するように構成されている。
【0020】
また、本願の請求項12に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
前記装着部がユーザーの頭部に装着されたことを検出する装着センサーと、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ装備された、設計上の虚像までの所定の視距離を有する光学系と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記装着センサーが装着を検出したことに応答して、前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に、前記視距離をユーザーに感じさせる手掛かりとなる視覚情報を含むスプラッシュ画面を表示する、
表示装置である。
【0021】
本願の請求項13に記載の発明によれば、請求項12に記載の表示装置において、スプラッシュ画面は、映画館で上演前に座席に座っている位置からスクリーンを見たときの様子の立体視画像、又は、コンサート・ホールの舞台の立体視画像であり、映画館のスクリーン若しくはコンサート・ホールの舞台の外側の画像が前記視距離をユーザーに感じさせる手掛かりとなる視覚情報である。
【0022】
また、本願の請求項14に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
映像視聴時に、本来の映像を画面サイズに対し縮小して表示し、その外側に視距離の手掛かりとなる視覚情報を表示する、
表示装置である。
【0023】
また、本願の請求項15に記載の発明は、
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
当該装置に作用する加速度を検出する加速度センサーと、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記加速度センサーの計測結果に基づいてユーザーの頭部の動き量をトラッキングし、動き量に応じて前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の画像表示領域を移動させる、
表示装置である。
【0024】
本願の請求項16に記載の発明によれば、請求項15に記載の表示装置は、左眼用表示部及び右眼用表示部にそれぞれ装備された、設計上の虚像までの所定の視距離を有する光学系をさらに備えている。そして、虚像までの視距離に基づいて、動き量に応じた画像表示領域の移動量を決定するように構成されている。
【0025】
また、本願の請求項17に記載の発明は、
再生装置を接続し、前記再生装置から再生信号を入力する入力部と、
第1の表示装置を接続して前記再生信号を出力するための第1の出力部と、
第2の表示装置を接続して前記再生信号を出力するための第2の出力部と、
前記第1の出力部又は前記第2の出力部へ排他的に前記再生信号を出力し、且つ、前記第1の出力部から前記第1の表示装置への出力を優先的に行なう出力切換部と、
を具備し、前記再生装置と前記第1の表示装置及び前記第2の表示装置間を中継する中継装置である。
【0026】
本願の請求項18に記載の発明によれば、請求項17に記載の中継装置の出力切換部は、前記第2の出力部を介して前記第1の表示装置の電源状態を監視し、前記第1の表示装置の電源がオンされたことに応じて前記第1の出力部から前記第1の表示装置へ前記再生信号を出力し、前記第1の表示装置の電源がオフされたことに応じて前記第2の出力部から前記第2の表示装置へ前記再生信号を出力するように構成されている。
【0027】
本願の請求項19に記載の発明によれば、前記再生装置と前記入力部間、及び、前記第2の表示装置と前記第2の出力部間は、それぞれHDMIインターフェースで接続されている。そして、請求項17に記載の中継装置の出力切換部は、前記入力部で+5V信号を検知したことに応じて、前記入力部から前記第2の出力部へのリピーター機能を有効にするように構成されている。
【0028】
本願の請求項20に記載の発明によれば、前記再生装置と前記入力部間、及び、前記第2の表示装置と前記第2の出力部間は、それぞれHDMIインターフェースで接続されている。そして、請求項17に記載の中継装置の出力切換部は、前記入力部で+5V信号を検知するとともに前記第2の出力部でHPD信号を検知したことに応じて、前記入力部から前記第2の出力部へのリピーター機能を有効にするように構成されている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、再生装置から出力される再生信号を2以上の表示装置に出力する優れた表示システム、ユーザーの頭部に装着して用いられる優れた表示装置、並びに、ユーザーの頭部に装着して用いられる表示装置を含む2以上の表示装置と再生装置との間を中継する優れた中継装置を提供することができる。
【0030】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、ヘッド・マウント・ディスプレイを含む画像表示システムの構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の内部構成を模式的に示した図である。
【図3A】図3Aは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を左斜め前方から俯瞰した斜視図である。
【図3B】図3Bは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を分解した様子を示した図である。
【図4】図4は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の本体部の上面を俯瞰した様子を示した図である。
【図5】図5は、フロント・エンド・ボックス40の内部構成を模式的に示した図である。
【図6】図6は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10が虚像を映し出す仕組みを説明するための図である。
【図7】図7は、映画館の館内の構成例を示した図である。
【図8】図8は、ユーザーの瞳から20メートル先に約750インチの虚像を網膜に結像するための、光学系402L(402R)及び表示パネル401R(401L)の配置例を示した図である。
【図9】図9は、GUIを表示した画面の一例を示した図である。
【図10】図10は、GUI領域に対してオービット処理を適用している様子を模式的に示した図である。
【図11A】図11Aは、アスペクト比が異なる映像信号を表示する際に黒画表示領域が生じる様子を示した図である。
【図11B】図11Bは、アスペクト比が異なる映像信号を表示する際に黒画表示領域が生じる様子を示した図である。
【図12A】図12Aは、左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の位相を左右で180度だけシフトさせた例を示した図である。
【図12B】図12Bは、左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の周波数を左右でシフトさせた例を示した図である。
【図12C】図12Cは、左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の極性を左右でシフトさせた例を示した図である。
【図13A】図13Aは、ヒトの暗順応に対応して、ヘッド・マウント・ディスプレイ10から出力する鑑賞ピーク輝度を変化させる特性例を示した図である。
【図13B】図13Bは、暗順応の個人差に対応して、ヘッド・マウント・ディスプレイ10から出力する鑑賞ピーク輝度を変化させる複数通りの特性例を示した図である。
【図13C】図13Cは、外界の可視光量に応じて、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着した直後の鑑賞ピーク輝度の高低を調整させた特性例を示した図である。
【図14】図14は、装着センサー221の構成例を示した図である。
【図15A】図15Aは、視距離の手掛かりとなるスプラッシュ画面の表示例を示した図である。
【図15B】図15Bは、視距離の手掛かりとなるスプラッシュ画面の表示例を示した図である。
【図16】図16は、映像視聴時に、本来の映像を画面サイズに対し縮小して表示し、その外側に視距離の手掛かりとなる画像(立体視静止画)を表示する、画像表示領域の構成例を示した図である。
【図17】図17は、ユーザーの頭部の移動をトラッキングした結果に基づいて、表示パネル401L、401Rの表示画像を移動させる様子を示した図である。
【図18A】図18Aは、同じ画角であっても、想定する視距離に応じて、虚像のサイズが相違する例を示した図である。
【図18B】図18Bは、視距離に応じて目視上のズレが相違する例を示した図である。
【図19A】図19Aは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源状態と出力切換部504による出力切換を連動させる仕組みを説明するための図である。
【図19B】図19Bは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源状態と出力切換部504による出力切換を連動させる仕組みを説明するための図である。
【図20】図20は、フロント・エンド・ボックス40がHDMIソース機器から発される+5V信号を検知して、HDMIリピーター機能を有効にする様子を示した図である。
【図21】図21は、フロント・エンド・ボックス40が、HDMIソース機器から発される+5V信号及びHDMIシンク機器から発されるHPD信号の両方を検知して、HDMIリピーター機能を有効にする様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
A.システム構成
図1には、ヘッド・マウント・ディスプレイを含む画像表示システムの構成を模式的に示している。図示のシステムは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10本体と、視聴コンテンツのソースとなるブルーレイ・ディスク再生装置20と、ブルーレイ・ディスク再生装置20の再生コンテンツの他の出力先となるハイビジョン・ディスプレイ(例えば、HDMI対応テレビ)30と、ブルーレイ・ディスク再生装置20から出力されるAV信号の処理を行なうフロント・エンド・ボックス40で構成される。
【0034】
フロント・エンド・ボックス40は、ブルーレイ・ディスク再生装置20から出力されるAV信号をHDMI入力すると、例えば信号処理して、HDMI出力するHDMIリピーターに相当する。また、フロント・エンド・ボックス40は、ブルーレイ・ディスク再生装置20の出力先をヘッド・マウント・ディスプレイ10又はハイビジョン・ディスプレイ30のいずれかに切り替える2出力スイッチャーでもある。
【0035】
図示の例では、フロント・エンド・ボックス40は2出力であるが、3以上の出力を有していてもよい。但し、フロント・エンド・ボックス40は、AV信号の出力先を排他的とし、且つ、ヘッド・マウント・ディスプレイ10への出力を最優先とする。ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源がオンのとき、又は、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を使用中のときには、ヘッド・マウント・ディスプレイ10にのみAV信号を出力する。逆に言えば、優先順位の低いハイビジョン・テレビ30(若しくは、フロント・エンド・ボックス40に接続された、図示しないその他のディスプレイ)へAV信号が出力されるのは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源がオフのときや、ヘッド・マウント・ディスプレイ10が接続されていないときなど、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を使用していないときだけである。
【0036】
なお、HDMI(High−Definition Mutlimedia Interface)は、DVI(Digital Visual Interface)を基にし、物理層にTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)を用いた、主に音声と映像の伝送を用途としたディジタル家電向けのインターフェース規格である。本システムは、例えばHDMI1.4に準拠する。
【0037】
ブルーレイ・ディスク再生装置20とフロント・エンド・ボックス40間、並びに、フロント・エンド・ボックス40とハイビジョン・ディスプレイ30間は、それぞれHDMIケーブルで接続されている。フロント・エンド・ボックス40とヘッド・マウント・ディスプレイ10間も、HDMIケーブルで接続するように構成することも可能であるが、本実施形態では独自仕様のケーブルで接続され、AV信号がシリアル転送されるものとする。但し、フロント・エンド・ボックス40とヘッド・マウント・ディスプレイ10間を接続するケーブル1本で、AV信号と電力を供給するものとし、ヘッド・マウント・ディスプレイ10はこのケーブルを介して駆動電力も得ることができる。
【0038】
ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、左眼用及び右眼用の独立した表示部を備えている。各表示部は、例えば有機EL素子を用いている。また、各表示部は、低歪み、高解像度の広視野角光学系を装備している。
【0039】
図2には、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の内部構成を模式的に示している。
【0040】
信号送受信部201は、フロント・エンド・ボックス40と接続するケーブルを介して、AV信号を受信したり、CPUで処理された情報信号を送信したりする。本実施形態では、AV信号はケーブルを介してシリアル転送されるので、信号送受信部201では受信信号のシリアル・パラレル変換が行なわれる。
【0041】
信号処理プロセッサー202は、信号送受信部201で受信したAV信号を映像信号と音声信号に分離して、それぞれに対して映像信号処理並びに音声信号処理を行なう。
【0042】
信号処理プロセッサー202で音声信号処理した後の音声信号は、音声DAC(ディジタル・アナログ変換器)211によってアナログ信号に変換され、左右のスピーカー212L、212Rから音声出力される。
【0043】
信号処理プロセッサー202では、映像信号処理として、輝度レベル調整やコントラスト調整、その他の画質改善が行なわれる。また、信号処理プロセッサー202は、CPU206からの指示により、本来の映像信号に対して各種の処理を適用する。例えば、文字や図形などからなるOSD(OnSCreen Display)情報を生成して、本来の映像信号に重畳する。ROM205には、OSD情報の生成に必要な信号パターンが格納されており、信号処理プロセッサー202はROM15に格納されている情報を読み出す。本来の映像情報に重畳されるOSD情報の一例は、画面や音声の出力調整などのためのGUI(Graphical Uer Interface)である。そして、映像信号処理を経て生成された画面情報は、VRAM(フレーム・メモリー)203に一時的に格納される。フロント・エンド・ボックス40から供給された映像信号が立体視映像信号等左右で映像信号が異なるときには、信号処理プロセッサー202は左右の映像信号に分離して、画面情報を生成する。
【0044】
左右の表示部208L及び208Rはそれぞれ、有機EL素子からなる表示パネルと、表示パネルを駆動するゲート・ドライバー及びデータ・ドライバーからなる。また、左右の表示部208L及び208Rにはそれぞれ広視野角を持つ光学系が装備される。但し、図2では光学系を省略している。
【0045】
パネル・コントローラー204は、所定の表示周期毎にVRAM203から画面情報を読み出して、各表示部208L及び208Rへ入力するための信号に変換するとともに、ゲート・ドライバー及びデータ・ドライバーの動作に用いられる、水平同期信号、垂直同期信号などのパルス信号を生成する。
【0046】
CPU206は、ROM209からRAM210にロードされたプログラムを実行して、ヘッド・マウント・ディスプレイ10全体の動作を統括的に制御する。また、CPU206は、信号送受信部201を介して、フロント・エンド・ボックス40との情報信号の送受信を制御する。
【0047】
ヘッド・マウント・ディスプレイ10本体には、ユーザーが指などで操作可能な1以上の操作子を備えたユーザー操作部220が装備されている。操作子は、図示しないが、例えば上下左右のカーソルキーと、中央の決定キーの組み合わせからなる。CPU206は、ユーザー操作部220から入力されたユーザーの指示に従って、表示部208R、208Lからの映像出力やヘッドフォン212L、212Rからの音声出力などに関する処理を行なう。
【0048】
また、本実施形態では、ヘッド・マウント・ディスプレイ20は、装着センサー221、加速度センサー222、輝度センサー223などの複数のセンサーを装備している。これらのセンサー出力は、CPU206に入力される。
【0049】
装着センサー221は、例えば機械スイッチなどからなる(後述)。CPU206は、このセンサー出力によってヘッド・マウント・ディスプレイ20がユーザーに装着されているかどうか、すなわち、ヘッド・マウント・ディスプレイ20が現在使用中であるかどうかを判定することができる。
【0050】
加速度センサー222は、例えば3軸で構成され、ヘッド・マウント・ディスプレイ20に加わる加速度の大きさ及び方向を検出する。CPU206は、取得した加速度情報に基づいて、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着したユーザーの頭部の移動をトラッキングすることができる。また、CPU206は、ユーザーの頭部の移動量に応じて、表示部208L、208Rで表示する画面を制御するようにしてもよい(後述)。
【0051】
輝度センサー223は、ヘッド・マウント・ディスプレイ20が現在置かれている環境における輝度を検出する。CPU206は、輝度センサー223は、取得した輝度情報に基づいて、映像信号に対して適用する輝度レベル調整を制御するようにしてもよい(後述)。
【0052】
また、CPU206は、必要に応じて、各センサー221から取得したセンサー情報を、信号送受信部211からフロント・エンド・ボックス40に送信する。
【0053】
電源部230は、フロント・エンド・ボックス40から供給される駆動電力を、図2中の破線で囲まれた各回路部品へ供給する。また、ヘッド・マウント・ディスプレイ10本体には、ユーザーが指などで操作可能な電源スイッチ231が装備されている。電源部230は、電源スイッチ231が操作されたことに応じて、回路部品への給電のオン/オフを切り替えるようになっている。
【0054】
なお、電源スイッチ231で電源オフにした状態は、電源部230は給電状態で待機している、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の「スタンバイ」状態とする。また、フロント・エンド・ボックス40側では、電源部230と接続される信号線の電圧レベルの変化に基づいて、各回路部品が給電され動作している状態すなわち使用状態か、非使用状態かを判別することができる。
【0055】
図3には、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の外観の構成例を示している。但し、図3Aは左斜め前方から俯瞰した斜視図であり、図3Bは、大まかに分解した様子を示した図である。図3Bに示すように、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、図2に示した主要部品のうち、表示系統を含む大部分の部品を含んだディスプレイ・ユニット部301と、ディスプレイ・ユニット部を覆う外筐302と、外筐302の上面から突設した額当て部304と、上バンド305A及び305Bからなるヘッド・バンド305と、左右のヘッドフォン212L、212Rを収容するヘッドフォン部303L、303Rからなる。ディスプレイ・ユニット部301内には、表示部208L、208Rや、回路基板が収容される。
【0056】
ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を頭部に装着したとき、額当て部304がユーザーの額に当接するとともに、ヘッド・バンド305が頭部の後方に当接する。図3A、図3Bでは詳細な図解は省略するが、ヘッド・バンド305は、長さの調整が可能であるとともに、伸縮可能な素材からなり、ヘッド・バンド305が頭部に巻き付く格好となって、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を頭部に固定する。
【0057】
図4には、ヘッド・マウント・ディスプレイ10のディスプレイ・ユニット部301の上面を俯瞰した様子を示している。左右の表示部208L、208Rはそれぞれ、有機EL素子からなる表示パネル401L、401Rと、表示パネルを駆動するゲート・ドライバー及びデータ・ドライバーを備えている(前述)。また、各表示部208L、208Rの後方(眼球側)には、それぞれ広視野角を持つ光学系402L、402Rが配設されている。なお、眼の高さや眼幅にはユーザー毎に個人差があり、広視野角光学系と装着したユーザーの眼とを位置合わせする必要がある。このため、右眼用の表示部と左眼用の表示部の間には、眼幅を調整するための眼幅調整機構が装備されている。
【0058】
図5には、フロント・エンド・ボックス40の内部構成を模式的に示している。
【0059】
HDMI入力部501は、HDMIインターフェースに準拠し、HDMIケーブルで接続されるブルーレイ・ディスク再生装置20から再生出力されるAV信号を、HDMIケーブル経由で入力して等化処理などの信号処理を行なう。
【0060】
また、第1の出力部502にはヘッド・マウント・ディスプレイ10が接続され、第2の出力部503にはハイビジョン・ディスプレイ30が接続される。
【0061】
第2の出力部503は、HDMIインターフェースに準拠し、HDMIケーブルで接続されるハイビジョン・ディスプレイ30へ、AV信号を出力する。なお、フロント・エンド・ボックス40が複数の第2の出力部503を装備し、2以上のHDMI対応テレビへAV信号を出力するように構成することもできる。
【0062】
一方、第1の出力部502は、独自のインターフェース仕様に準拠するものとする。勿論、HDMIインターフェースに準拠するよう、第1の出力部502を構成することもできる。第1の出力部502は、この独自のインターフェース仕様に準拠したケーブル1本で、ヘッド・マウント・ディスプレイ10と接続され、このケーブル越しにAV信号の送信や、各種情報信号の送信、駆動電力の供給を行なうようになっている。
【0063】
制御部506は、フロント・エンド・ボックス40内の各部の動作を統括的にコントロールする。
【0064】
出力切換部504は、HDMI入力部501に入力されるAV信号の出力先を、第1の出力部502又は第2の出力部503のいずれか、すなわち、ヘッド・マウント・ディスプレイ10又はハイビジョン・ディスプレイ30のいずれかに択一的に切り換える。本実施形態では、出力切換部504は、AV信号の出力先を排他的とし、且つ、ヘッド・マウント・ディスプレイ10への出力を最優先する。ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源がオンのとき、又は、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を使用中のときには、ヘッド・マウント・ディスプレイ10にのみAV信号を出力する。逆に言えば、優先順位の低いハイビジョン・テレビ30へAV信号を出力するのは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源がオフのときや、ヘッド・マウント・ディスプレイ10が接続されていないときなど、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を使用していないときだけである。出力切換部504の動作の詳細については後述に譲る。
【0065】
制御部506は、第1の出力部502でヘッド・マウント・ディスプレイ10から受け取った情報信号や、ヘッド・マウント・ディスプレイ10へ駆動電力を供給する信号線の電圧レベルなどに応じて、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の使用状態を判別して、出力切換部504に対してAV信号の出力先を指示する。
【0066】
また、フロント・エンド・ボックス40本体には、ユーザーが指などで操作可能な1以上の操作子を備えたユーザー操作部509が装備されている。ユーザーは、ユーザー操作部509からAV信号の出力先の切り換えを指示することもできる。
【0067】
音声DAC505は、HDMI入力部501で分離された音声信号をアナログ変換し、ヘッドフォン(HP)・コネクター507から出力する。
【0068】
ここで、ヘッド・マウント・ディスプレイ10が虚像を映し出す仕組みについて、図6を参照しながら説明しておく。立体画像のソースである左眼用及び右眼用の各画像情報は、あらかじめ決められた輻輳角(目の寄り角)を想定してそれぞれ作成される。そして、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、これら左眼用及び右眼用の画像を、それぞれ別個の画面に映し出し、人間の眼により両画面を合成して、立体映像を観視することができるようにするものである。左右の表示パネル401L、401Rからそれぞれ映し出される画像は、光学系402L、402Rを通して拡大された虚像となる。この虚像は、左眼及び右眼の網膜で結像されると、別々の情報として脳に入り、脳の中で重ね合わされて1つの立体像となる。このとき、左右の表示パネル401L、401R及び光学系402L、402Rとの間に、視点位置に応じた一定の輻輳角θを与えるようにしている。そして、左眼用画像と右眼用画像とは、この設定された輻輳角θに合わせて作成されるものとする。
【0069】
続いて、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を用いて、映画館で視聴するような映像を再現する仕組みについて説明する。
【0070】
図7には、映画館の館内の構成例を示している。図示の館内には、B〜E、F〜S、並びにT(最後列)の合計19列のシートが配置されている。このうち、K列及びJ列がプレミアシートである。同図において、スクリーン幅は16.5メートルであり、これを16:9のアスペクト比に補正すると、幅16.5メートル、高さ9.3メートル、画サイズ745.3インチとなる。また、各シートからスクリーンまでの距離は、以下の表1の通りである。
【0071】
【表1】

【0072】
ここで、J、K、L、M、N、O、P、Tの各列のシート位置での画角を計算すると、以下の表2の通りとなる。但し、画角はスクリーン中央位置で計算した。
【0073】
【表2】

【0074】
プレミアシートである、J列、K列では、画角は50〜55度となるが、これは画角が広過ぎる。例えばスクリーンの端縁付近に表示された字幕を読むときには顔を動かす格好となり、首が疲れ、映像を鑑賞し易いとは言えない。プレミアシートは、単に映像の鑑賞というよりも、むしろ館内の音響環境も考慮したためで、スクリーンを眺める画角そのものは最良ではない。また、首が疲れることなく、映像を鑑賞し易い画角は、55度よりも狭く、45度程度である、と本発明者らは思料する。45度の画角を図7に示した映画館に当てはめると、N列付近であることが上記の表2から分かる。N列のシート位置からスクリーン中央までの距離を考慮すると、映画館内での画角45度をヘッド・マウント・ディスプレイ10で再現することは、下表3に示すように、ユーザーの瞳から20メートル先に約750インチの虚像を網膜に結像することに相当する。
【0075】
【表3】

【0076】
画角だけ考慮すると、数メートル先に300インチ程度の虚像を網膜に結像しても、ほぼ45度程度の同じ画角になる。しかしながら、左右の画像で視差を設けた3D映像を表示する場合には、同じ画角で距離を長くとると、遠い方の奥行き感があり、より自然な立体感のある映像となる。左右の表示部208L、208Rにそれぞれ広視野角の光学系を用いることで、同じ画角で距離を長くとることが可能である。図8には、映画館内での画角45度を再現する、すなわち、ユーザーの瞳から20メートル先に約750インチの虚像を網膜に結像するための、光学系402L(402R)及び表示パネル401R(401L)の配置例を示している。
【0077】
B.表示パネルの劣化対策
高解像度の映像を提供するため、左右の表示部208L、208Rに有機EL素子を用いていることは既に述べた。有機EL素子は、長時間にわたって表示されると焼き付きが生じ易いことが知られている。焼き付きが生じた有機EL素子は輝度が劣化する。したがって、有機EL素子からなる表示パネルに画像を表示した際、劣化が生じた領域が他の領域よりも低輝度すなわち暗くなり、視聴者には焼き付きが生じた領域の輪郭が観察されることになる。
【0078】
例えば、表示パネルに表示される画像全体を、視聴者にわからない程度のゆっくりした速度で、上下左右に周期的に偏位させるオービット(ORBIT)処理が知られている。オービット処理によれば、焼き付きの輪郭がぼやけ、目立たなくすることができる。
【0079】
表示パネルの焼き付きは、静止画を長時間にわたって表示したときに生じることが知られている。本発明者らは、人工画像も焼き付きの原因になり易いと考えている。何故ならば、白い文字を表示するときなど、自然画像ではない高輝度レベルの映像信号を出力することになるからである。人工画像の代表例は、信号処理プロセッサー202で本来の映像信号に重畳される、GUIなどのOSD情報である。図9には、自然画像にGUIを重畳した表示画面の一例を示している。
【0080】
そこで、本実施形態では、GUI領域に対してオービット動作を加えることで、GUI表示による焼き付きを抑制するようにしている。図10には、GUI領域に対してオービット処理を適用している様子を模式的に示している。勿論、上述した画面全体のオービット動作と併せてGUI領域のオービット動作を行なうようにしてもよい。
【0081】
1回のオービット動作では、例えばGUI領域を上下左右にランダムに1画素だけ移動させる。また、観察するユーザーにオービット動作を目立たなくするため、上下左右の移動量を±15画素程度までとする。
【0082】
GUI領域を出力操作する度に、オービット動作を起動してもよいし、一定期間毎にオービット動作させるようにしてもよい。また、GUI操作中(ユーザー操作部220の操作子が操作されている間)は、ユーザーがGUI領域を注視ており、オービット動作に気付き易くなるので、オービット動作しないようにする。
【0083】
上記のオービット処理は、例えばCPU206が、ユーザー操作部220を介したユーザー操作に応じて信号処理プロセッサー202にGUIのOSD表示を指示した際に、併せてオービット処理を指示することによって実現する。
【0084】
また、アスペクト比が異なる映像信号が供給された際、黒画表示領域が発生することに起因して、焼き付きの問題が生じる。上述したように、本実施形態では、表示パネルのアスペクト比はHDTVの標準画面サイズに相当する16:9であるが、NTSC(National Television System Committee)方式に対応したアスペクト比4:3の映像信号を表示する際には、図11Aに示すように表示パネルの左右に黒画表示領域が生じる。他方、シネマスコープ(登録商標)のようにアスペクト比が2:1以上の横長の映像信号を表示する際には、図11Bに示すように表示パネルの上下に黒画表示領域が生じる。このようにアスペクト比が異なる映像信号を長時間にわたって表示すると、黒画表示領域では有機EL素子の輝度劣化は進行しないが、映像の表示領域では有機EL素子の輝度劣化が進行する。その後、アスペクト比が同じ映像信号を表示する際には、図11A又は図11Bに示した映像表示時にできた黒画表示領域との境界が目立ってしまう。
【0085】
そこで、本実施形態では、表示出力する映像のアスペクト比に応じて、表示パネルの領域毎の焼き付き補正のパラメーターを決定して、アスペクト比が同じ映像信号を表示する際に、焼き付きの輪郭をぼやけさせ、目立たなくするようにしている。
【0086】
アスペクト比は、例えばブルーレイ・ディスク再生装置20で再生するコンテンツのタイトル情報に基づいて、取得することができる。但し、ヘッド・マウント・ディスプレイ10側でコンテンツのタイトル情報を取得する手段は特に限定されず、また、タイトル情報以外に情報に基づいてアスペクト比を決定するようにしてもよい。
【0087】
アスペクト比を決定すると、映像信号を表示出力する時間に基づいて、表示パネルの領域毎、若しくは画素単位で、黒画表示時間を計測する。黒画表示時間が短いほど、有機EL素子の輝度劣化は進行する。したがって、黒画表示時間の計測結果に基づいて、表示パネルの領域毎、若しくは画素毎の輝度補正パラメーターを決定することができる。
【0088】
例えば、CPU206は、フロント・エンド・ボックス40経由で供給される映像信号のコンテンツのタイトル情報などに基づいてアスペクト比を決定すると、表示パネルの領域毎若しくは画素毎の黒画表示時間を計測し、その計測結果に基づいて表示パネルの領域毎若しくは画素毎の輝度劣化補正パラメーターを決定して、信号処理プロセッサー202に通知する。そして、信号処理プロセッサー202は、入力された輝度劣化補正パラメーターに基づいて、表示パネルの領域毎若しくは画素毎の輝度レベル補正などの画質改善処理を行なう。
【0089】
C.表示パネルの放射ノイズ軽減
図2では図解を簡素化したが、パネル・コントローラー204から左右の表示部208L、208Rへは、高周波数で動作する複数の表示データ信号線の束からなる。このようにパラレル出力される信号が同期して動作すると、不要輻射が増大するとともに、電源の同時スイッチング・ノイズも増大する。
【0090】
そこで、本実施形態では、パネル・コントローラー204から左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の位相、周波数、又は極性を、左右で変えるようにしている。
【0091】
図12Aには、左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の位相を左右で180度だけシフトさせた例を示している。また、図12Bには、左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の周波数を左右でシフトさせた例を示している。また、図12Cには、左右の表示部208L、208Rへパラレル出力される表示データ信号の極性を左右でシフトさせた例を示している。各図においてそれぞれ1点鎖線で囲んだ箇所を参照すれば分かるように、左右で同時にスイッチングする数又は極性が変わるので、放射ノイズが低減される。また、電源の同時スイッチング・ノイズが低減されることによって、電源への負荷も低減される。
【0092】
ヘッド・マウント・ディスプレイ10の場合、左右の映像信号に相関があることから、上記のように、位相、周波数、又は極性をシフトさせることによる効果は高いと考えられる。
【0093】
D.暗順応に対する対応
ヒトの目は、可視光量の多い環境から少ない環境に急激に変化したときに、時間の経過とともに徐々に視力が確保される「暗順応」機能があることが知られている。ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、視聴時の仮想現実感を増すなどの意図で、頭部に装着すると外界を完全に遮るような構造にデザインされている。ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着する直前は可視光量の多い環境であり、瞳径はその環境に適応している。ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着すると、遮光され可視光量の極めて少ない環境に変化し、10〜30分をかけて、装着に適した瞳径に徐々に変化する。
【0094】
例えば、表示パネル401L、401Rから出力する映像の輝度レベル(鑑賞ピーク輝度)を常に一定とした場合、ユーザーの瞳は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着した直後は、遮光された環境には対応できず暗過ぎると感じるが、その後、徐々に暗順応して十分に明るいと感じるようになる。言い換えれば、装着直後は映像が暗すぎると感じさせてしまう不具合が生じる。
【0095】
そこで、本実施形態では、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着してからの経過時間に応じて、鑑賞ピーク輝度を変化させることで、ユーザーに表示画像の明るさが一定であるように感じさせ、上記の不具合を解消するようにしている。
【0096】
本実施形態では、ヘッド・マウント・ディスプレイ10により映画館で視聴するような映像を再現することを意図している。Digital Cinema Initiative,LLCでは、鑑賞ピーク輝度48nitを規定している(但し、「nit」は、1平方メートルの平面光源の光度がその平面と垂直な方向において1カンデラであるとき、その方向における輝度である)。ヘッド・マウント・ディスプレイ10が外界を遮光する仮想環境との相違から、本発明者らは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の表示パネル401L、401Rのピーク輝度60nitが、映画館における48nitに相当するものとして扱う。そして、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着した直後は、平常時よりも高い暗順応対応用の鑑賞ピーク輝度100nitに設定し、その後、10〜30分をかけて、平常時の鑑賞ピーク輝度60nitに戻していく。図13Aには、ヒトの暗順応に対応して、ヘッド・マウント・ディスプレイ10から出力する鑑賞ピーク輝度を変化させる特性例を示している。
【0097】
また、暗順応する速度には個人差がある。速く暗順応するユーザーにとっては、鑑賞ピーク輝度をゆっくりと60nitに戻していくと、途中で映像が明るすぎると感じてしまう。逆に、遅い速度で暗順応するユーザーにとっては、鑑賞ピーク輝度を速いペースで60nitに戻してしまうと、途中で映像が暗くなったと感じてしまう。
【0098】
そこで、図13Bに示すように、鑑賞ピーク輝度を暗順応対応の鑑賞ピーク輝度100nitから平常時の鑑賞ピーク輝度60nitに落とすまでの所要時間の異なる複数通りの特性を用意しておき、ユーザー毎に暗順応対応特性に切り換えて輝度調整するようにしてもよい。切り換えは、ユーザーが自らユーザー操作部220を介して指示するようにしてもよい。CPU206は、ユーザー操作部220を通じて指示を受け取ると、信号処理プロセッサー202に対して、該当する輝度補正処理を指示するようにすればよい。
【0099】
また、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着した直後のユーザーが、表示画像が暗いと感じる度合いは一定ではなく、装着する前までに外界でさらされていた光量に応じて相違する。外界の可視光量が多いほど、瞳径は小さくなっているので、装着した直後には表示画像がより暗いと感じる。逆に、外界の可視光量がそもそも少なければ、暗い分だけ瞳径は大きくなっており、あまり暗いとは感じないであろう。言い換えれば、外界の可視光量に拘わらず、装着した直後の鑑賞ピーク輝度を一定に設定すると、可視光量の多い環境で装着したユーザーにとっては、装着直後の表示画像の明るさはちょうど良くても、可視光量の少ない環境で装着したユーザーにとっては、装着直後の表示画像は明る過ぎてしまう。
【0100】
そこで、図13Cに示すように、外界の可視光量に応じて、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着した直後に設定する暗順応対応の鑑賞ピーク輝度の高低を調整するようにしてもよい。外界の可視光量が大きければ、高い鑑賞ピーク輝度を設定し、外界の可視光量が小さければ、より低い鑑賞ピーク輝度を設定するようにすればよい。図2に示したように、本実施形態では、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、輝度センサー223を備えている。CPU206は、輝度センサー223で検出される外界の可視光量に基づいて、暗順応に対応して鑑賞ピーク輝度を落としていく際の暗順応対応の鑑賞ピーク輝度を、信号処理プロセッサー202に通知するようにすればよい。
【0101】
なお、上記の暗順応に対応した鑑賞ピーク輝度調整を行なうには、その開始時点、すなわち、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着したことを信号処理プロセッサー202に通知する必要がある。例えば、ユーザーが自ら、装着時にユーザー操作部220を通じて、鑑賞ピーク輝度調整の開始を指示するようにしてもよい。図2に示したように、本実施形態では、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、装着センサー221を装備しているので、CPU206は、装着センサー221で装着が検出されたときに、信号処理プロセッサー202に鑑賞ピーク輝度調整を指示するようにすればよい。
【0102】
図14には、装着センサー221の構成例を図解している。図示の例では、額当て部102は、回転軸142によって、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の外筐に回動可能に支持されている。額当て部102は、非装着時には、スプリング144の復元力によって、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の後方、すなわち装着するユーザーの額側へ向かった非装着位置へ押し出されている。そして、装着時には、ユーザーの額が当接することによって、前方の装着位置へ押し戻される。また、回転軸142には、前方に突設したアーム143が取り付けられている。そして、ユーザーが装着して額当て部102が前方へ押し戻されると、アーム143が連動して、その先端部で(装着センサーに相当する)タクト・スイッチ141を操作する。CPU206は、タクト・スイッチ141の操作から、ヘッド・マウント・ディスプレイ10がユーザーに装着されたことを検出することができる。
【0103】
E.虚像距離の認識サポート
「A.システム構成」の欄でも既に述べたように、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、表示部208L、208Rの光学系402L、402Rを、表示パネル401L、401Rの画面の見掛け上の距離と大きさを映画館程度(例えば、20メートル先に約750インチ)となるように設計している。これによって、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着したユーザーが、映画館で見るのと同等の感覚で映像を視聴できることを図っている。
【0104】
しかしながら、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、ユーザーが頭部に装着する装置であり、いわゆる機械近視に類似した作用が生じることが懸念される。また、ヘッド・マウント・ディスプレイ10自体の現実の大きさや、表示パネル401L、402Rがヘッド・マウント・ディスプレイ10の内部にあるという先入観があること、装着時に画面以外の部分が黒色一色であり、映像までの距離感を与える視覚情報がない。視距離の感じ方には個人差があるが、ユーザーは、設計上の虚像までの距離よりも短く感じてしまい、映画館のような大画面を見ているようには感じられない場合がある。
【0105】
そこで、本実施形態では、視距離の手掛かりとなる視覚情報を含む画像を表示パネル401L、402Rに表示するようにしている。視距離の手掛かりとなる視覚情報を含む画像とは、例えば、映画館で上演前に座席に座っている位置からスクリーンを見たときの様子の立体視画像や(図15Aを参照のこと)、コンサート・ホールの舞台の立体視画像(静止画、勿論、動画像でもよい)などである(図15Bを参照のこと)。表示パネル401L、402Rの画像表示領域の、映画館のスクリーン若しくはコンサート・ホールの舞台の外側の画像は、視聴するユーザーにとって視距離を把握する手掛かりになる視覚情報に相当する。
【0106】
図15Aや図15Bに示したような、実際のスクリーン若しくは舞台の位置で実サイズ相当に見える立体視画像を、例えば、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源オン時や、ユーザーが装着したときに、いわゆるスプラッシュ画面として表示すれば、その後はスクリーン若しくは舞台を表示パネル401L、402Rの全画面に拡張しても、ユーザーは映し出されるスクリーン若しくは舞台までどの程度の距離があるかの感覚(すなわち、設計意図した視距離の印象)を持ち続けるであろう。なお、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着したことは、装着センサー220で検出することができる(前述)。
【0107】
あるいは、映像視聴時において、図16に示すように、映画やコンサートなどの本来の映像を、表示パネル401L、402Rの画面サイズに対し縮小して表示し(図中の中央の白抜きの領域に本来の映像を表示し)、その周囲の領域に実サイズ相当に見える画像(立体視静止画)を表示するようにしてもよい。表示パネル401L、402Rの画像表示領域の外側に表示される、実サイズ相当に見える立体視静止画は、視距離を把握する手掛かりとなる視覚情報であり、本来の映像を視聴するユーザーは、スクリーン若しくは舞台のサイズと距離を認識できるようになる。
【0108】
F.ユーザーの首の動きに追従した画面表示
ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、ユーザーが頭部に装着して映像を視聴するので、通常のモニター・ディスプレイを視聴する場合と相違し、ユーザーが首を振って画面から目を逸らそうとしても、常に映像が視界に入ってくる。このため、ユーザーは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を用いた視聴時に、違和感を覚えたり、あるいは体調を悪くしたりする場合がある。
【0109】
本実施形態では、ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、加速度センサー22を装備しており、そのセンサー出力に基づいて、ヘッド・マウント・ディスプレイ10を装着したユーザーの頭部の移動をトラッキングすることができる。
【0110】
そこで、図17に示すように、ユーザーの頭部の移動をトラッキングした結果に基づいて、表示パネル401L、401Rの画像表示画像を移動させるようにしてもよい。このとき、表示画像のうち頭部の移動と反対側の端縁領域(図17中の車線で示した領域)は、表示パネル401L、401Rの画像表示領域から振り切れて見えなくなる。したがって、ユーザーは首を振ることによって、体調が悪くなるような映像から逃れることができる。また、表示パネル401L、401Rの画像表示領域のうち、頭部の移動方向の端縁領域は、画枠をはみ出し映像情報がないので、画枠をはみ出した部分には黒画を表示する。このようにすれば、ユーザーが首を振った際に、通常のモニター・ディスプレイで映像を視聴するときと同じような見え方となるので、違和感を解消することができる。
【0111】
CPU206は、加速度センサー222からセンサー情報を取得して、ユーザーの頭部の移動量(首の回転量)を算出することができる。したがって、CPU206が、算出した動き量に連動して表示する画像を移動させるよう、信号処理プロセッサー202に指示することで、図17に示したような画像表示を実現することができる。
【0112】
また、上述したように、表示パネル401L、402Rがヘッド・マウント・ディスプレイ10の内部にあるという先入観などから、ユーザーは、設計上の虚像までの距離よりも視距離を短く感じてしまうことがある。そこで、ユーザーの頭部の動き量に連動して表示する画像を移動させる際に、画像の動き量を、設計上の虚像までの距離に基づいて決定すれば、ユーザーに設計意図した視距離の印象を与えることができる。
【0113】
図18Aに示すように、同じ画角であっても、想定する視距離に応じて、虚像のサイズは相違する。画面に対して、頭の位置を移動させた際の目視上のズレは、視距離に反比例して小さくなる。図18Aに示すように視距離が2倍になると、目視上でのズレは、図18Bに示すように半分になる。すなわち、図17に示したように表示画像を移動させる際には、移動させる画素数は半分になる。
【0114】
上述したようにユーザーの頭部の動き量に連動して表示する画像を移動させる際、CPU206は、加速度センサー222から取得した加速度情報を基に頭部の位置ずれを検出した際、設計上の視距離に基づいて表示位置の移動量を決定することで、ユーザーに虚像位置との視距離を錯覚させることができる。
【0115】
G.フロント・エンド・ボックスによる出力切換(1)
フロント・エンド・ボックス40は、ブルーレイ・ディスク再生装置20から出力されるAV信号を入出力するHDMIリピーターに相当する。また、フロント・エンド・ボックス40は、出力先をヘッド・マウント・ディスプレイ10又はハイビジョン・ディスプレイ30のいずれかに排他的に出力する2出力スイッチャーでもある。
【0116】
フロント・エンド・ボックス40が、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の「フロント・エンド」に存在する本体機器であるとするならば、ヘッド・マウント・ディスプレイ10への出力を最優先とするべきである。
【0117】
ここで、フロント・エンド・ボックス40の出力切換をユーザー操作で行なう場合について考察してみる。例えば、ヘッド・マウント・ディスプレイ10での視聴を中断して、ハイビジョン・ディスプレイ30で視聴しようとすると、少なくとも以下の2つのユーザー操作を行なう必要があり、面倒である。
【0118】
(1)電源スイッチ231を操作して、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源をオフする。
(2)ユーザー操作部509を操作して、フロント・エンド・ボックス40の出力先をハイビジョン・ディスプレイ30へ切り換える。
【0119】
本実施形態では、出力切換部504からのAV信号の出力先が排他的であることを利用して、より少ないユーザー操作で、ヘッド・マウント・ディスプレイ10からハイビジョン・ディスプレイ30へ、視聴動作の切り換えを行なうようにしている。具体的には、電源スイッチ231を操作して、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源がオフになると、制御部506は、第1の出力部502を介して検知し、出力切換部504に対して、AV信号の出力先を配備順・ディスプレイ30へ切り換えるように指示する。すなわち、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源状態と出力切換部504による出力切換を連動させることによって、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源オフという1回のユーザー操作で、ハイビジョン・テレビ30での視聴に自動的に切り換えることができる。
【0120】
図19Aに示すように、電源スイッチ231を操作してヘッド・マウント・ディスプレイ10の電源をオンにすると、フロント・エンド・ボックス40は、ブルーレイ・ディスク再生装置20から再生出力されるAV信号を、ヘッド・マウント・ディスプレイ10へ排他的に出力する。
【0121】
ここで、フロント・エンド・ボックス40は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10へAV信号を出力している間は、出力切換部504において擬似的に、ハイビジョン・ディスプレイ30側のHDMIケーブルが抜かれたのと同じ状態にする。この結果、ブルーレイ・ディスク再生装置20側からは、HDMIインターフェース上は、ハイビジョン・ディスプレイ30が見えなくなる。
【0122】
続いて、図19Bに示すように、電源スイッチ231を操作してヘッド・マウント・ディスプレイ10を電源オフ(スタンバイ状態)にすると、フロント・エンド・ボックス40は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10へのAV信号の出力を停止し、代わって、ハイビジョン・ディスプレイ30へのAV信号の出力に切り換える。
【0123】
また、フロント・エンド・ボックス40は、ハイビジョン・ディスプレイ30へAV信号を出力している間は、出力切換部504において擬似的に、ヘッド・マウント・ディスプレイ10側のケーブルが抜かれたのと同じ状態にする。この結果、ブルーレイ・ディスク再生装置20側からは、HDMIインターフェース上は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10が見えなくなり、代わってハイビジョン・ディスプレイ30が見える状態になる。
【0124】
H.フロント・エンド・ボックスによる出力切換(2)
図1に示したシステム構成例では、HDMIソース機器であるブルーレイ・ディスク再生装置20から出力されるAV信号を、HDMIリピーターに相当するフロント・エンド・ボックス40が、HDMIシンク機器に相当するハイビジョン・ディスプレイ30へ転送するようになっている。
【0125】
他方、上述したように、フロント・エンド・ボックス40は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10への出力を最優先する2出力スイッチャーでもある。ヘッド・マウント・ディスプレイ10へ排他的にAV信号を出力している間、ハイビジョン・ディスプレイ30は、スタンバイ状態にある場合もあれば、ハイビジョン・ディスプレイ30の電源がオフになっている場合や、そもそもハイビジョン・ディスプレイ30が接続されていない場合もある。
【0126】
ここで、フロント・エンド・ボックス40が、ハイビジョン・ディスプレイ30に対するHDMIリピーター機能を実現しようとすると、HDMI信号をリピートする回路部分への電源を常時入れておく必要があり、HDMIソース機器としてのハイビジョン・ディスプレイ30への出力待機している期間の消費電力を高める原因になる。
【0127】
そこで、本実施形態では、フロント・エンド・ボックス40は、HDMIソース機器としてのハイビジョン・ディスプレイ30への出力待機している期間は、HDMIソース機器及びHDMIシンク機器の接続状態を監視する回路部分のみ電源を投入するようにしている。したがって、HDMIリピーターとしてのフロント・エンド・ボックス40に、HDMI機器が接続されたときのみ、HDMIリピーター機能回路に電源が入るので、待機時の消費電力を抑えることができる。
【0128】
例えば、フロント・エンド・ボックス40内の接続監視回路は、HDMI入力部501にHDMI接続されるソース機器の+5V信号を監視する。そして、HDMI入力部501にHDMIソース機器であるブルーレイ・ディスク再生装置20がHDMIケーブルで接続されると、フロント・エンド・ボックス40内の接続監視回路は、HDIMソース機器が発する+5V信号を同ケーブルに含まれる信号線から検知して、HDMIシンク機器へのリピーター機能を有効にする(図20を参照のこと)。また、+5V信号を検知できないときには、HDMIシンク機器へのリピーター機能を無効にして、待機時消費電力を抑える。
【0129】
あるいは、フロント・エンド・ボックス40内の接続監視回路は、HDMI入力部501にHDMI接続されるソース機器の+5V信号と、第2の出力部503にHDMI接続されるシンク機器のHPD(Hot Plug Detect)信号の両方を監視する。そして、フロント・エンド・ボックス40内の接続監視回路は、HDIMソース機器が発する+5V信号とともに、HDMIシンク機器が発するHPD信号が検知できたときのみ、HDMIシンク機器へのリピーター機能を有効にする(図21を参照のこと)。いずれか片方の信号でも検知できなければ、リピーター機能を無効にして、待機時消費電力を抑える。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0131】
本明細書では、本発明をヘッド・マウント・ディスプレイに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨は特定のヘッド・マウント・ディスプレイの構成に限定されるものではない。虚像をユーザーの眼の網膜上に結像させるさまざまなタイプの表示システムに対して、本発明を同様に適用することができる。
【0132】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0133】
10…ヘッド・マウント・ディスプレイ
20…ブルーレイ・ディスク再生装置
30…ハイビジョン・ディスプレイ
40…フロント・エンド・ボックス
102…額当て部
141…タクト・スイッチ
142…回転軸
143…アーム
144…スプリング
201…信号送受信部
202…信号処理プロセッサー
203…VRAM
204…パネル・コントローラー
205…ROM
206…CPU
208L、208R…表示部
209…ROM
210…RAM
211…音声DAC
212L、212R…ヘッドフォン
220…ユーザー操作部
221…装着センサー
222…加速度センサー
223…輝度センサー
230…電源部
231…電源スイッチ
301…ディスプレイ・ユニット部
302…外筐
303L、303R…ヘッドフォン部
304…額当て部
305…ヘッド・バンド、305A…上バンド、305B…下バンド
401L、401R…表示パネル
402L、402R…光学系
501…HDMI入力部
502…第1の出力部
503…第2の出力部
504…出力切換部
505…音声DAC
506…制御部
507…HPコネクター
509…ユーザー操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像情報を供給する映像情報供給装置と、
ユーザーが装着して用いられる第1の表示装置と、
1以上の第2の表示装置と、
前記第1の表示装置及び前記第2の表示装置を接続し、前記映像情報供給装置から供給される映像情報を前記第1の表示装置へ優先して出力する出力切換装置と、
を具備する表示システム。
【請求項2】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する画像に重畳するGUI領域をオービット動作させるオービット処理部と、
を具備する表示装置。
【請求項3】
前記オービット処理部は、GUI領域を出力操作する度、又は、一定期間毎にGUI領域を動作させる、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記オービット処理部は、前記ユーザー操作部を介してユーザーがGUI操作している間はオービット動作を停止させる、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部が有する画面とはアスペクト比の異なる画像を表示したときの、画像表示領域と黒画表示領域で異なる輝度補正パラメーターを設定して、前記信号処理部で映像信号の輝度補正処理を行なう、
表示装置。
【請求項6】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記表示制御部は、前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ出力する表示データ信号のタイミングを異ならせる、
表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ出力する表示データ信号の位相、周波数、又は極性のいずれかを左右で変える、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記信号処理部は、ユーザーが当該装置を使用開始してからの経過時間に応じて、鑑賞ピーク輝度を変化させる、
表示装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、平常時に設定された設定鑑賞ピーク輝度よりも高い暗順応対応鑑賞ピーク輝度から、前記設定鑑賞ピーク輝度まで、所定の所要時間をかけて徐々に低下させる、
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記暗順応対応鑑賞ピーク輝度から前記設定鑑賞ピーク輝度に戻るまでの所要時間を、当該装置を装着したユーザーの暗順応対応特性に応じて調整する、
請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
輝度センサーをさらに備え、
前記信号処理部は、前記輝度センサーで検出される外界の可視光量に応じて前記暗順応対応鑑賞ピーク輝度を調整する、
請求項9に記載の表示装置。
【請求項12】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
前記装着部がユーザーの頭部に装着されたことを検出する装着センサーと、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ装備された、設計上の虚像までの所定の視距離を有する光学系と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記装着センサーが装着を検出したことに応答して、前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に、前記視距離をユーザーに感じさせる手掛かりとなる視覚情報を含むスプラッシュ画面を表示する、
表示装置。
【請求項13】
前記スプラッシュ画面は、映画館で上演前に座席に座っている位置からスクリーンを見たときの様子の立体視画像、又は、コンサート・ホールの舞台の立体視画像であり、映画館のスクリーン若しくはコンサート・ホールの舞台の外側の画像が前記視距離をユーザーに感じさせる手掛かりとなる視覚情報である、
請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
映像視聴時に、本来の映像を画面サイズに対し縮小して表示し、その外側に視距離の手掛かりとなる視覚情報を表示する、
表示装置。
【請求項15】
ユーザーの頭部に固定するための装着部と、
当該装置に作用する加速度を検出する加速度センサーと、
ユーザーが操作入力するためのユーザー操作部と、
左眼用画像を表示する左眼用表示部と、
右眼用画像を表示する右眼用表示部と、
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部に表示する映像信号を処理する信号処理部と
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の表示駆動を制御する表示制御部と、
を具備し、
前記加速度センサーの計測結果に基づいてユーザーの頭部の動き量をトラッキングし、動き量に応じて前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部の画像表示領域を移動させる、
表示装置。
【請求項16】
前記左眼用表示部及び前記右眼用表示部にそれぞれ装備された、設計上の虚像までの所定の視距離を有する光学系をさらに備え、
前記虚像までの視距離に基づいて、動き量に応じた画像表示領域の移動量を決定する、
請求項15に記載の表示装置。
【請求項17】
再生装置を接続し、前記再生装置から再生信号を入力する入力部と、
第1の表示装置を接続して前記再生信号を出力するための第1の出力部と、
第2の表示装置を接続して前記再生信号を出力するための第2の出力部と、
前記第1の出力部又は前記第2の出力部へ排他的に前記再生信号を出力し、且つ、前記第1の出力部から前記第1の表示装置への出力を優先的に行なう出力切換部と、
を具備し、前記再生装置と前記第1の表示装置及び前記第2の表示装置間を中継する中継装置。
【請求項18】
前記出力切換部は、前記第2の出力部を介して前記第1の表示装置の電源状態を監視し、前記第1の表示装置の電源がオンされたことに応じて前記第1の出力部から前記第1の表示装置へ前記再生信号を出力し、前記第1の表示装置の電源がオフされたことに応じて前記第2の出力部から前記第2の表示装置へ前記再生信号を出力する、
請求項17に記載の中継装置。
【請求項19】
前記再生装置と前記入力部間、及び、前記第2の表示装置と前記第2の出力部間は、それぞれHDMIインターフェースで接続され、
前記出力切換部は、前記入力部で+5V信号を検知したことに応じて、前記入力部から前記第2の出力部へのリピーター機能を有効にする、
請求項17に記載の中継装置。
【請求項20】
前記再生装置と前記入力部間、及び、前記第2の表示装置と前記第2の出力部間は、それぞれHDMIインターフェースで接続され、
前記出力切換部は、前記入力部で+5V信号を検知するとともに前記第2の出力部でHPD信号を検知したことに応じて、前記入力部から前記第2の出力部へのリピーター機能を有効にする、
請求項17に記載の中継装置。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図3A】
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【図3B】
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【図9】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−186659(P2012−186659A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48423(P2011−48423)
【出願日】平成23年3月6日(2011.3.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】