説明

表示デバイス用樹脂組成物及びこれを用いた積層体

【課題】 表示デバイス用樹脂膜として要求される透明性、耐熱性、耐熱透明性、耐溶剤性等の各特性に優れており、これを用いて電圧保持率に優れ、フリッカー、ディスプレイの焼きつき等の問題を引き起こすことがなく、耐熱透明性に優れた表示デバイスを得ることができる、表示デバイス用樹脂組成物及びこの表示デバイス用樹脂組成物からなる樹脂膜を有する積層体を提供する。
【解決手段】 (A)樹脂、(B)シリカ微粒子及び(C)溶媒を含有してなり、ナトリウム含有量が30ppm以下であることを特徴とする表示デバイス用樹脂組成物。当該表示デバイス用樹脂組成物からなる樹脂膜を基板上に積層してなる積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイス用樹脂組成物及びこれを用いてなる積層体に関する。更に詳しくは、ナトリウム含有量が少なく、優れた電圧保持率を示し、表示品質と耐熱透明性に優れた表示デバイスを得ることができる表示デバイス用樹脂組成物及びこれを用いてなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、ディスプレイ用カラーフィルタなどには、その劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜や層間絶縁膜等の機能性の樹脂膜が設けられている。
このような機能性の樹脂膜を与える樹脂組成物として、無機微粒子を含有させることにより酸素プラズマ耐性、耐熱性及び耐ドライエッチング性を向上させた樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
ところで、表示素子では、電圧保持率の変化が、ディスプレイの焼付きやフリッカーの原因となるため、部材を不純物溶出処理することが提案されている(特許文献2)。しかしながら、部材を不純物溶出処理するには、そのための工程を増やす必要があり、また、部材の処理状態にムラがあれば歩留まりを低下させる原因ともなる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−327125号公報
【特許文献2】特開2001−305333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情の下になされたものであって、表示デバイス用樹脂膜として要求される透明性、耐熱性、耐熱透明性、耐溶剤性等の各特性に優れており、これを用いて電圧保持率に優れ、フリッカー、ディスプレイの焼きつき等の問題を引き起こすことがなく、耐熱透明性に優れた表示デバイスを得ることができる、表示デバイス用樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、この表示デバイス用樹脂組成物からなる樹脂膜を有する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、表示デバイス用樹脂組成物の各構成成分について鋭意研究を進めた結果、シリカ微粒子を含有する組成物中のナトリウム量を特定値以下にすることにより電圧保持率の低下を抑制し、かつ加熱によっても透明性を維持できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして本発明によれば、(A)樹脂、(B)シリカ微粒子及び(C)溶媒を含有してなり、ナトリウム含有量が30ppm以下であることを特徴とする表示デバイス用樹脂組成物が提供される。
上記表示デバイス用樹脂組成物において、(A)樹脂が脂環式オレフィン樹脂であることが好ましい。
上記表示デバイス用樹脂組成物において、(A)樹脂が極性基を含有することが好ましい。極性基としては、カルボキシル基又はイミド基が好ましい。
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、(D)硬化剤を更に含有することが好ましい。
また、(D)硬化剤は、2官能以上の架橋性化合物であることが好ましい。2官能以上の架橋性化合物としては、エポキシ化合物が好ましい。
また、本発明によれば、上記表示デバイス用樹脂組成物からなる樹脂膜を基板上に積層してなる積層体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示デバイス用樹脂膜として要求される透明性、耐熱性、耐熱透明性、耐溶剤性等の各特性に優れた表示デバイス用樹脂組成物を得ることができる。この表示デバイス用樹脂組成物を用いて電圧保持率に優れ、フリッカー、ディスプレイの焼きつき等の問題を引き起こすことがなく、耐熱透明性に優れた表示デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、(A)樹脂、(B)シリカ微粒子及び(C)溶媒を含有してなる。
ここで、表示デバイスとは、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマ表示素子、フィールドエミッション表示素子、光ディスク、タッチパネル、光学素子、光導波路のほか、太陽電池をも含む。
表示デバイス用樹脂は、これらの表示デバイスにおいて、絶縁膜、保護膜、カラーフィルタ、スペーサー、TFT、平坦化膜、封止膜、画素分離膜等の膜状部材;光拡散板、導光板等の各種透明板;光学レンズ;光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルタ用基板、有機EL表示素子用基板、太陽電池基板等の各種基板;基板フィルム、偏光フィルム、表面保護フィルム、位相差フィルム、透明導電性フィルム、光拡散フィルム等の各種フィルム;として用いられる。
【0009】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、そのナトリウム含有量が30ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。また、ナトリウム以外のアルカリ金属(カリウムなど)の含有量が10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることが特に好ましい。
このようなアルカリ金属含有量の低い表示デバイス用樹脂組成物を得る方法としては、樹脂組成物の必須構成成分としての(A)樹脂、(B)シリカ微粒子及び(C)溶媒並びに必要に応じて用いる所望構成成分として、金属含有量の少ないものを使用する方法、又は樹脂組成物の調製後に、アルカリ金属の除去処理を行う方法、を挙げることができる。これらの何れの方法によってもよい。勿論、これらの方法を組み合わせることも可能である。
【0010】
本発明において、(A)成分の樹脂は、表示デバイス用に従来使用されている透明性を有する樹脂であれば、特に限定されない。透明性を有する樹脂としては、複屈折の小ささから、脂環式オレフィン樹脂とアクリル樹脂が好ましい例として挙げられ、特に耐熱性や耐溶剤性の観点から、脂環式オレフィン樹脂が好ましい。
本発明で(A)成分として使用される樹脂は、極性基を有していることが好ましい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシカルボニルオキシ基、イミド基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基等が挙げられる。これらの極性基のなかでも、カルボキシル基、オキシカルボニルオキシ基、エステル基、イミド基、ヒドロキシル基等の酸性基又は酸誘導体型残基が好ましく、特にカルボキシル基とイミド基が好ましい。
【0011】
本発明で好適に使用しうる脂環式オレフィン樹脂は、脂環構造と炭素−炭素二重結合とを有する脂環式オレフィンに由来する、繰り返し単位を含有する重合体である。脂環構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造等が挙げられるが、機械的強度、耐熱性等の観点から、シクロアルカン構造、殊にノルボルナン構造が好ましい。
また、脂環構造としては、単環及び多環(縮合多環、橋架け環、これらの組み合わせ多環等)が挙げられる。脂環構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。炭素原子数が上記範囲内にあると、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされるので好ましい。また、本発明で使用される脂環式オレフィン樹脂は、通常、熱可塑性のものである。
脂環式オレフィン樹脂中、脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性に劣り好ましくない。
【0012】
脂環式オレフィン樹脂としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物が好ましい。前記の脂環式オレフィン樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂環式オレフィン樹脂は、極性基を有するものが好ましく、極性基としてカルボキシル基やイミド基を有するものが特に好ましく、とりわけ、カルボキシル基を有する脂環式オレフィンとイミド基を有する脂環式オレフィンとを必須成分とする脂環式オレフィンの開環重合体及びその水素添加物が好ましい。
【0013】
脂環式オレフィン樹脂は、通常脂環式オレフィンを付加重合又は開環重合し、必要に応じて不飽和結合部分を水素化することによって得られる。また、脂環式オレフィン樹脂は、芳香族オレフィンを付加重合し、該重合体の芳香環部分を水素化することによっても得られる。
【0014】
脂環式オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0015】
5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネート、
【0016】
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0017】
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12,11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン)、
【0018】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
【0019】
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、
【0020】
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[6.5.0.12,5.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[6.6.0.12,5.18,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)のごときノルボルネン系単量体;
【0021】
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテンのごとき単環のシクロアルケン;ビニルシクロヘキセンやビニルシクロヘキサンのごときビニル系脂環式炭化水素系単量体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンのごとき脂環式共役ジエン系単量体;等が挙げられる。
芳香族オレフィンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0022】
脂環式オレフィン及び/又は芳香族オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。脂環式オレフィン樹脂は、前記脂環式オレフィン及び/又は芳香族オレフィンと、これらと共重合可能な単量体とを共重合して得られるものであってもよい。
脂環式オレフィン又は芳香族オレフィンと共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。
これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、α−オレフィンには、脂環式オレフィンの開環共重合に使用されると分子量調整剤として機能するものもある。
【0023】
脂環式オレフィン又は/及び芳香族オレフィンの重合方法と、必要に応じて行われる水素添加の方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0024】
極性基を有する脂環式オレフィン樹脂は、極性基を有する脂環式オレフィンを重合することによって、又は、極性基を有し又は有しない脂環式オレフィンを重合して得られた樹脂に極性基含有不飽和化合物を付加させるグラフト反応等の変性反応によって行うことができる。
【0025】
極性基含有不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸化合物及びこれらのエステル又はアミド;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0026】
脂環式オレフィン樹脂と極性基含有不飽和化合物との変性反応は、公知の方法によって行うことができる。変性反応は、通常ラジカル開始剤の存在下に脂環式オレフィン樹脂と極性基含有不飽和化合物とを共存させることにより行う。
ラジカル開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーフェニルアセテート、t−ブチルパーイソブチレ−ト、t−ブチルパーsec−オクトエート、t−ブチルパーピバレート、クミルパーピバレート、t−ブチルパージエチルアセテート等を挙げることができる。また、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等のアゾ化合物を挙げることができる。
これらラジカル開始剤のうち有機パーオキシド、有機パーエステル等が好適に使用される。これらのラジカル開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ラジカル開始剤の使用割合は、脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、通常0.001〜50重量部、好ましくは0.01〜40重量部、より好ましくは0.1〜30重量部の範囲である。
変性反応の条件は、特に限定されず、例えば、反応温度は、通常0〜400℃、好ましくは60〜300℃、より好ましくは80〜200℃で、反応時間は、通常1分〜24時間、好ましくは30分〜10時間の範囲である。
【0027】
本発明に使用される脂環式オレフィン樹脂が、酸無水物基を有する化合物又はエステル基を有する化合物を脂環式オレフィン樹脂に変性させたものである場合には、変性反応で導入された酸無水物基又はエステル基を加水分解又はアミド化することが好ましい。加水分解又はアミド化するために使用する化合物として、水;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン;ジメチルアミン、ジプロピルアミンのごときアミン;等が挙げられる。これらのうち、第一級アミン、殊に不飽和炭素−炭素結合を有する第一級アミンが好ましい。また、加水分解又はアミド化を促進させるために使用する化合物として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン;トリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらのうち、金属水酸化物が好ましい。
【0028】
極性基を含有する脂環式オレフィン樹脂の極性基含有率(以下、単に「極性基含有率」ということがある。)は、使用目的に応じて適宜決定すればよいが、極性基の量が、脂環式オレフィン樹脂中の総単量体単位モル数を基準として、通常10〜200モル%、好ましくは30〜150モル%、より好ましくは50〜100モル%、特に好ましくは60〜80モル%の範囲であれば、脂環式オレフィン樹脂がアルカリ可溶性を呈する。従って、本発明の表示デバイス用樹脂組成物に光酸発生剤(特にキノンジアジド化合物)を添加した場合、当該組成物を感光性の樹脂材料として用いることができる。そして極性基含有率がこの範囲にあるときに、得られる樹脂の、低誘電性、透明性、耐熱性、耐溶剤性、現像性及び表面硬度等の特性が高度にバランスされ好適である。
【0029】
極性基を含有する脂環式オレフィン樹脂が極性基を有する脂環式オレフィンの重合によって得られたものである場合、極性基含有率は、極性基を含有する脂環式オレフィンの全単量体に対する使用比率から計算することができる。
脂環式オレフィン樹脂の極性基含有率は、極性基含有率=X×100(モル%)で表される値であり、H−NMR測定に基づき算出することができる。すなわち、H−NMR測定データから極性基含有不飽和化合物由来の水素のピーク面積の総和Aと、脂環式オレフィン樹脂グラフト変性物中の脂環式オレフィン樹脂由来の水素のピーク面積の総和Bをそれぞれ求める。重合体変性反応で反応した極性基含有不飽和化合物1分子が有する水素原子数をC、脂環式オレフィン樹脂の単量体1単位が有する水素原子をDとすると、(D−X)/(C×X)=B/Aの関係がある。この式から変性率X(モル%)を知ることができる。例えば、極性基含有不飽和化合物が無水マレイン酸の場合は、Cは3であり、脂環式オレフィン樹脂がエチルテトラドデセン開環重合体水素化物の場合は、Dは22である。
【0030】
本発明で好適に使用される脂環式オレフィン樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム又はジメチルアセトアミドを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常3,000〜500,000、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは7,000〜50,000の範囲である。
脂環式オレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあるときに、現像性、平坦性、耐溶剤性、耐熱性及び強度特性に特に優れ好適である。
本発明に使用される脂環式オレフィン樹脂のガラス転移温度は、格別限定されないが、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であるときに耐熱性に優れ好適である。
【0031】
本発明で使用しうるアクリル樹脂は、従来から樹脂膜材料として使用されているものを用いることができる。このようなアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするものを挙げることができる。アクリル樹脂は、これらの主成分に、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の酸基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物単量体;等を共重合したもの、及び特開2002−040225号公報に記載された樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を総称する語として使用する。同様に、「(メタ)アクリート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」を総称する語として使用する。
【0032】
アクリル樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム又はジメチルアセトアミド等を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常3,000〜500,000、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは7,000〜50,000の範囲である。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあるときに、現像性、平坦性、耐溶剤性、耐熱性及び強度特性に特に優れ好適である。
本発明に使用されるアクリル樹脂のガラス転移温度は、格別限定されないが、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であるときに耐熱性に優れ好適である。
【0033】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物を構成する(A)成分の樹脂のナトリウム含有量は、好ましくは10ppm以下である。また、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量は、好ましくは1ppm以下である。
樹脂のナトリウム含有量及びナトリウム以外のアルカリ金属量を上記範囲とするには、樹脂の合成に使用する単量体、重合開始剤、乳化剤、溶媒等の主副原料としてアルカリ金属、特にナトリウム含有量の少ないものを使用する方法、樹脂を水洗してアルカリ金属を除去する方法、樹脂の溶液をイオン交換樹脂で処理してアルカリ金属イオンを除去する方法、樹脂の溶液を活性炭で処理してアルカリ金属を活性炭に吸着させて除去する方法等を示すことができる。これらの方法を組み合わせて採用してもよい。
【0034】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、(B)成分として、シリカ微粒子を含有する。樹脂組成物にシリカ微粒子を配合したものを用いることにより、線膨張率が低く、耐熱透明性(加熱によっても透明性を維持する能力)に優れた積層体を得ることができる。
本発明で使用するシリカ微粒子は、珪素酸化物であり、その平均一次粒径が、通常1〜100nm、好ましくは1〜50nm、より好ましくは5〜50nmのものである。平均粒径がこの範囲内にあると、樹脂組成物の耐熱透明性と流動性とのバランスに優れる。
また、一次粒径が200nm以上の微粒子の割合が5重量%以下であることが好ましい。これにより、波長が400〜500nmの光線の透過率が低下するのを防ぐことができる。
また、シリカ微粒子は、有機化合物で表面を疎水化処理したものであることが好ましい。
【0035】
シリカ微粒子としては、乾燥された粉末状のシリカ微粒子を使用してもよいが、分散性の観点から、溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を使用することが好ましく、コロイダルシリカを有機溶媒に分散させたオルガノシリカゾルが好ましい。
有機溶媒としては、(A)成分として使用する樹脂との親和性の良好なものが好ましい。その具体例としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素溶媒;芳香族炭化水素溶媒及びこれらのハロゲン化物溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の一価アルコール溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;エーテル溶媒;エステル溶媒;アミン化合物溶媒;カルボン酸化合物溶媒;単糖類;等を挙げることができる。
【0036】
本発明で使用するシリカ微粒子は、そのアルカリ金属、特にナトリウム含有量が10ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。また、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量は、好ましくは1ppm以下である。このシリカ微粒子のアルカリ金属含有量を上記範囲内に制御することにより、これを用いて得られる表示デバイス用樹脂組成物のアルカリ金属含有量を所望の低レベルに抑えることができる。
【0037】
本発明で使用する、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)は、好適には、以下の(1)〜(4)の工程により得ることができる。これは、特開2004−091220号公報記載のシリカゾルの製造方法である。この方法で得られるシリカゾルは、ナトリウムをはじめとするアルカリ金属含有量が、1ppm以下の低いレベルにあるので好ましい。
(1)まず、アルコキシシラン類を出発原料とするゾルゲル法による反応でシリカゾル溶液を作製する。
(2)次に、このゾルを濃縮し、シランカップリング剤添加による部分的な疎水化処理、pH調整によって未反応物の削減を行う。
(3)その後、親水性有機溶媒による分散媒の置換を行う。
(4)必要に応じて、シリカゾルの目的使用形態に合わせて、更に溶媒置換を行う。
【0038】
第(1)工程では、アンモニアアルカリ性の水性アルコール溶液中でアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合させてシリカゾル溶液を得る。
アルコキシシラン化合物としては、特に限定されないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を例示することができる。これらは一種類単独で用いてもよく、また、二種以上を混合して使用することもできる。
アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等を用いることができる。これらのアルコールは、一種類を単独で用いてもよく、また、二種以上を混合して使用することもできる。
このとき、アルコキシシラン化合物の加水分解で副生するものと同一のアルコールを使用すると、アルコール溶媒を回収、再利用する上で工業的に有利である。
【0039】
加水分解の条件は、特に限定されないが、反応液全量に対する水の濃度が3〜12モル/リットル、アンモニアの濃度が0.1〜2.5モル/リットル、アルコキシシラン化合物の濃度が0.3〜1.5モル/リットルとなるようにし、反応温度は0℃以上で溶媒の沸点以下の温度とするのが好ましい。
アルコキシシラン化合物の加水分解は、反応制御の観点から、アルコキシシラン化合物をアルコール水溶液に適切な速度で滴下して行うのが好ましい。
【0040】
第(2)工程では、第(1)工程で得られたシリカゾル溶液を常圧下又は減圧下に加熱濃縮する。得られた濃縮液に、シランカップリング剤を添加することによって疎水化処理を行い、pH調整をする。
シランカップリング剤は、特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等の、分子中に一種又は二種以上の置換アルキル基、フェニル基、ビニル基等を有するアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等のクロロシラン;等が挙げることができる。これらのうち、メチルメトキシシラン及びメチルエトキシシランが好ましい。
【0041】
シランカップリング剤の添加量は、ゾル中のシリカ重量に対して0.1〜20%、好ましくは1〜2.5%である。添加量をこの範囲内にすると、凝集沈降物が発生することがなく、経済的にも有利である。
【0042】
シランカップリング剤を加えた後、ゾル溶液のpHを中性になるように調整する。pH調整方法としては、特に限定されないが、例えば、常圧下で加熱蒸留を行い、留出液をイオン交換塔に通してアンモニアを除去した後、ゾル溶液中に戻す操作を、ゾル溶液のpHが中性付近、例えばpH6〜8になるまで行うような処理方法が挙げられる。
pH調整によって、ゾル溶液を中性として、未反応物を減少でき、親水性有機溶媒に長期間安定に分散させることが可能になる。
【0043】
第(3)工程では、親水性有機溶媒で水分を置換し、高純度親水性有機溶媒分散シリカゾルを得る。
親水性有機溶媒で置換を行うことにより、シリカゾル溶液が安定に分散し、且つアルカリ金属の少ない高純度親水性有機溶媒分散シリカゾルを得ることができる。
使用する親水性有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられ、好ましくはアルコキシシランの加水分解で副生するものと同一のアルコールを使用する。これは溶媒を回収、再利用する上で工業的に優位なことになる。
親水性有機溶媒による置換は、常圧下で行う。置換は、好ましくはゾル溶液の水分が5%以下となる程度まで行う。置換をこの程度まで行うことにより、樹脂への馴染み及び分散性が良好になる。
【0044】
次いで、必要ならば、第(4)工程で、更に親水性溶媒を他の溶媒で置換する。使用する他の溶媒は、シリカゾルの使用目的に応じて選定すればよい。
置換の方法は、シリカゾル溶液に、他の溶媒を添加し、加温することによって、親水性溶媒を除去すればよい。置換の程度は、得られるシリカゾルの水分量が5重量%以下、好ましくは0.1〜1重量%となる程度である。水分量をこの程度に低減すると、樹脂との親和性がよくなり、分散性が向上する。
【0045】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分としての溶媒を含有してなる。
(C)成分の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル溶媒;ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル等の非環状エーテル溶媒;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、フェニルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル溶媒;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、アセトニルアセトン、イソホロン等のケトン溶媒;
【0046】
2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のエステル溶媒;
【0047】
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;カプロン酸、カプリル酸等のカルボン酸溶媒;等を用いることもできる。
これらの溶媒のうち、溶解性及び塗膜の形成のしやすさから、ケトン溶媒、グリコールエーテル溶媒又はアミド溶媒が好ましく用いられる。
これらの溶媒のナトリウム含有量は、20ppm以下であることが好ましい。より好ましくは10ppm以下、特に好ましくは2ppm以下である。また、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量は、1ppm以下であることが好ましい。溶媒中のナトリウムをはじめとするアルカリ金属含有量は、蒸留又はイオン交換樹脂や活性炭等による処理等により容易に低減することができる。
【0048】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、(D)硬化剤を含有してもよい。硬化剤としては、2官能以上の架橋性化合物を挙げることができる。
本発明で使用することができる2官能以上の架橋性化合物は、分子内に2以上の架橋性基を有する化合物である。架橋性基は、重合性の不飽和結合であるか又は(A)成分の樹脂が有する極性基と反応し得る基であればよい。重合性の不飽和結合の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を挙げることができる。極性基と反応し得る基の具体例としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、カルボキシル基、オキシカルボニルオキシ基、エステル基、水酸基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基等を挙げることができる。
このような架橋性化合物として、2以上のエポキシ基を有する化合物(2官能以上のエポキシ化合物)が特に好ましい。
【0049】
重合性の不飽和結合を2以上有する化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2個の重合可能な不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート樹脂等の3個以上の重合可能な不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等のアクリル酸エステル以外の、重合可能な不飽和結合を有する化合物;等が挙げられる。
【0050】
これらの重合性の不飽和結合を2以上有する化合物の使用量は、(A)成分の樹脂100重量部に対して、通常1〜200重量部、好ましくは30〜150重量部、更に好ましくは50〜120重量部である。使用量をこの範囲内とすることにより、例えば、この表示デバイス用樹脂組成物を感光性樹脂組成物として用いた場合に、解像度を向上させることができる。
【0051】
2官能以上のエポキシ化合物は、分子内に2以上のエポキシ基を持つものであれば、特に限定されない。
2官能以上のエポキシ化合物の具体例としては、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式多価カルボン酸のグリシジルエステル又は環状オレフィンのエポキシ化物等であって、エポキシ基を2つ以上有する化合物を挙げることができる。
【0052】
2官能以上のエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型二官能エポキシ化合物(商品名「エピコート828」、ジャパンエポキシレジン社製)、ビスフェノールF型型二官能エポキシ化合物(商品名「エピコート506」、ジャパンエポキシレジン社製)、2,3−エポキシシクロヘキシル基を2個有するエポキシ化合物(商品名「セロキサイド2021」、ダイセル化学工業社製)、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「EXA7015」、大日本インキ化学社製)等を挙げることができる。
脂環構造を有し且つエポキシ基が3個以上の多官能化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエンを骨格とする3官能のエポキシ化合物(商品名「XD−1000」、日本化薬社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格及び末端エポキシ基を有する多官能の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状3官能のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)を挙げることができる。
【0053】
このほかに、脂環構造を有しないエポキシ基が3個以上の多官能化合物の具体例として、芳香族アミン型多官能エポキシ化合物(商品名「H−434」、東都化成工業社製)、クレゾールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「EOCN」、日本化薬社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「エピコート152」、ジャパンエポキシレジン社製)、ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(商品名「EXA4700」、大日本インキ化学社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR−TMP」、坂本薬品工業社製)、多官能エポキシ化ポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業社製)等を挙げることができる。
これらの中でも3官能以上の化合物が好ましく、3官能以上で脂環構造を有する化合物がより好ましい。
【0054】
2官能以上のエポキシ基を有する化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、(A)成分の樹脂100重量部に対し、通常1〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは30〜100重量部である。使用量がこの範囲にあるときに、耐熱性が高度に改善され好適である。
本発明において、2官能化合物と3官能以上の多官能化合物を併用する場合、両者の比率(2官能化合物/3官能以上の多官能化合物)は、重量比で、通常5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは30/70〜70/30の範囲である。
【0055】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、硬化促進剤、界面活性剤、接着助剤、増感剤、帯電防止剤、保存安定剤、消泡剤等を含有していてもよい。
【0056】
本発明の表示デバイス用樹脂組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、通常5〜40重量%である。
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、必須成分である(A)樹脂、(B)シリカ微粒子及び(C)溶媒並びに所望に応じて使用する(D)硬化剤及びその他の成分を均一に混合することによって得ることができる。
混合の方法は特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分を、それぞれ、溶液として混合すると均一性が向上する。
本発明の表示デバイス用樹脂組成物は、通常適切な溶媒の溶液の状態で使用する。また、表示デバイス用樹脂組成物は、0.2〜1μm程度のフィルタ等を用いて異物等を除去した後、使用に供することが好ましい。
【0057】
本発明の積層体は、本発明の表示デバイス用樹脂組成物からなる樹脂膜を基板上に積層して得ることができる。
用いうる基板は、フィルム状、板状その他いかなる形状のものであってもよく、また、その材質にも制限はない。その具体例としては、プリント配線基板、シリコンウエハー基板、ガラス基板、プラスチック基板等を挙げることができる。また、ディスプレイ分野において使用される、ガラス基板やプラスチック基板等に薄型トランジスタ型液晶表示素子、カラーフィルタ、ブラックマトリックス等が形成されたものも好適に用いられる。
【0058】
積層体を得るには、本発明の表示デバイス用樹脂組成物の溶液を、基板表面に塗布し、加熱し、溶媒を除去すればよい。基板表面への表示デバイス用樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。通常溶媒を除去した後、基板を加熱して、基板上に形成された樹脂膜中に残留する微量の溶媒を揮発させ、流動性のない樹脂膜を得る。この樹脂膜が表示デバイス用樹脂膜として機能する。加熱条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常60〜120℃で10〜600秒間程度である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中、「部」は、特に断りのない限り「重量部」のことである。
<試験及び評価方法>
(1)数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)
ジメチルアセトアミドを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
【0060】
(2)ナトリウムとカリウムの含有量
原子吸光測定装置(商品名「SPS−5000」、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定した。
重合体溶液、シリカゾル溶液、表示デバイス用樹脂組成物等の、溶液状態のもののアルカリ金属量は、全て固形分換算表示である。
【0061】
(3)電圧保持率
透明基板(商品名「1737ガラス」、コーニング社製)を中性洗剤で洗浄し、次いで純水で洗浄した後、これに表示デバイス用樹脂組成物をスピンコート法により回転数1,000〜1,500rpmで塗布し、90℃で120秒間乾燥させ、1.5μmの樹脂塗膜を得る。この樹脂塗膜を、オーブン中230℃で30分間加熱し、1.3μmの透明な樹脂硬化膜を得る。この樹脂硬化膜上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極層を形成し、ガラス/樹脂硬化膜/透明電極層からなる基板を得る。一方、ガラス基板上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極を形成した基板(ITO基板)を作成する。得られた各基板を用いて、(ガラス/樹脂硬化膜/透明電極層からなる基板)/液晶/ITO基板からなる層構成の測定用セルを作成し、この測定用セルに液晶(商品名「DP−5002/LA」、チッソ社製)を注入し、下記の条件で電圧保持率を測定する。この電圧保持率の数値が高いほうがよい。
なお、使用する液晶は、ITO基板/液晶/ITO基板の層構成を有する測定用セルに注入して下記条件で測定した電圧保持率が98%以上になるものである。
電極間距離:5〜15μm
印加電圧パルス振幅:5V
印加電圧パルス周波数:60Hz
印加電圧パルス幅:16.67m秒
【0062】
(4)耐熱透明性(透過率)
透明基板(商品名「1737ガラス」、コーニング社製)を中性洗剤で洗浄し、次いで純水で洗浄した後、これに表示デバイス用樹脂組成物をスピンコート法により回転数1,000〜1,500rpmで塗布し、90℃で120秒間乾燥させ、1.5μmの樹脂塗膜を得る。90℃で120秒間乾燥させ、1.5μmの樹脂塗膜を得る。この樹脂塗膜を、オーブン中230℃で30分間加熱し、1.3μmの透明な樹脂硬化膜を得る。これを更に250℃で1時間加熱した後、紫外可視分光光度計(商品名「V−560」、日本分光社製)で透過率を測定する。この数値が高いほど、得られる樹脂膜の耐熱透明性がよい。
【0063】
[合成例1]
(脂環式オレフィン樹脂の製造)
8−ヒドロキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン62.5部、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)37.5部、1−ヘキセン1.3部、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部、及びテトラヒドロフラン400部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ70℃で2時間反応させて脂環式オレフィン樹脂溶液(固形分濃度:約20%)を得た。
この重合体溶液の一部を攪拌機付オートクレーブに移し、150℃で水素を圧力4MPaで溶存させて5時間反応させ、脂環式オレフィン樹脂を水素化して(水素化率100%)、水素化脂環式オレフィン樹脂溶液(固形分濃度:約20%)を得た。
【0064】
耐熱容器に、この水素化脂環式オレフィン樹脂溶液100部及び活性炭粉末1部を添加して、この耐熱容器をオートクレーブに入れ、攪拌しつつ150℃で水素を4MPaの圧力で3時間溶存させた。次いで、溶液を取り出して孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルタでろ過して活性炭を分離して重合体溶液を得た。ろ過は滞りなく行えた。重合体溶液をエチルアルコール中に注いで凝固させ、生成したクラムを乾燥して水素化脂環式オレフィン樹脂を得た。得られた水素化脂環式オレフィン樹脂のポリスチレン換算のMwは5,500であり、Mnは3,200であった。またヨウ素価は1であった。
得られた水素化脂環式オレフィン樹脂100部に対しジエチレングリコールエチルメチルエーテルを300部加え、室温で攪拌して溶解させ固形分25%の樹脂溶液(水素化脂環式オレフィン樹脂溶液)R1を得た。
この脂環式オレフィン樹脂溶液R1のアルカリ金属含有量を測定したところ、重合体換算で、ナトリウム含有量は1.2ppm、カリウム含有量は0.01ppm以下であった。
【0065】
[合成例2]
(アクリル樹脂の製造)
スチレン30部、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、メタクリル酸20部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部を窒素気流中で撹拌しながら80℃で5時間加熱した。溶液を室温に戻し、固形分25%の樹脂溶液(アクリル樹脂溶液)R2を得た。得られた樹脂のポリスチレン換算のMwは13,500であり、Mnは7,200であった。
このアクリル樹脂溶液のアルカリ金属含有量を測定したところ、ナトリウム含有量は2.0ppm、カリウム含有量は0.01ppm以下であった。
【0066】
[合成例3]
(高純度親水性有機溶媒分散シリカゾルの調製)
純水787.9部、26%アンモニア水786部、メタノール12924部の混合液にテトラメトキシシラン1522.2部、メタノール413部の混合液を、液温35℃に保ちながら55分かけて滴下し、シリカゾル溶液を得た。このシリカゾル溶液を常圧下で加熱濃縮を行った。この濃縮液に、シランカップリング剤としてメチルトリメトキシシラン6部を加え、常圧下にて加熱蒸留を行い、抽出液をイオン交換塔(商品名「アンバーライトIR120B(H)−AG」、オルガノ社製)に通してアンモニアを除去後、ゾル溶液に戻す操作を、ゾル溶液のpHが8以下になるまで行った。その後、水分が5%以下になるまでメタノールを滴下しつつ蒸留を続け、室温まで冷却後、3μmのメンブランフィルタを用いて精密ろ過を行い、メタノール分散シリカゾルを得た。さらに上記メタノール分散シリカゾル500部にシランカップリング剤としてメチルトリメトキシシランを15.4部添加し、室温にて1時間攪拌後、2時間全還流を行った。その後、常圧下、加熱蒸留をしつつ、プロピレングリコールモノメチルエーテルを、容量を一定に保ちつつ滴下し、塔頂温が79℃に達しかつ水分が1%以下になったのを確認した時点で終了とし、室温まで冷却後、3μmのメンブレンフィルタを用いて精密ろ過を行い、コロイダルシリカ分散液Z1を得た。コロイダルシリカ分散液Z1の固形分は25%であった。
コロイダルシリカの比表面積は、150m/g、平均粒子径は15nm、シリカ濃度は25重量%、水分量は4.5重量%であった。このシリカゾルのアルカリ金属含有量を測定したところ、ナトリウム含有量が0.4ppm、カリウム含有量が0.01ppm以下であった。
【0067】
[合成例4]
固形分換算で90部のコロイダルシリカ分散液Z1と、固形分換算で10部の市販のオルガノシリカゾル(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日産化学社製;ナトリウム含有量は358ppm、カリウム含有量は0.01ppm以下)(以後、「コロイダルシリカ分散液Z2」という。)とを、混合し、固形分濃度を25%に調整して、コロイダルシリカ分散液Z3を得た。コロイダルシリカ分散液Z3のナトリウム含有量は36ppmであり、カリウム含有量は0.01ppm以下であった。コロイダルシリカ分散液Z2及びZ3のシリカ粒子の平均粒子径は、いずれも15nmであった。
【0068】
[合成例5]
固形分換算で75部のコロイダルシリカ分散液Z1と、コロイダルシリカ分散液Z2とを、混合し、固形分濃度を25%に調整して、コロイダルシリカ分散液Z4を得た。コロイダルシリカ分散液Z4のナトリウム含有量は90ppmであり、カリウム含有量は0.01ppm以下であった。シリカ粒子の平均粒子径は、15nmであった。
【0069】
(実施例1)
[表示デバイス用樹脂組成物の調製]
合成例1で得た水素化脂環式オレフィン樹脂溶液R1の400部に、硬化剤として、[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(商品名「EHPE3150」、ダイセル化学社製)を40部、接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを4部、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を5部、界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤(商品名「KP341」、信越化学工業社製)0.2部を混合し溶解させた後、孔径0.45μmのメンブランフィルタ(ミリポア社製)でろ過して硬化剤含有樹脂溶液C1を作成した。この溶液C1を、合成例3で得たコロイダルシリカ分散液Z1の400部に対し、室温で攪拌しながら滴下して加え、孔径3.0μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)でろ過して、表示デバイス用樹脂組成物D1を得た。この組成物について、ナトリウムとカリウムの量を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
[積層体の作製及び電圧保持率の測定]
ガラス基板(商品名「1737ガラス」、コーニング社製)を中性洗剤で洗浄し、次いで純水で洗浄した後、表示デバイス用樹脂組成物D1を、スピンコート法により回転数1,000〜1,500rpmで塗布し、90℃で120秒間乾燥させ、1.5μmの樹脂塗膜を得た。この樹脂塗膜を、オーブン中230℃で30分間加熱し、1.3μmの透明な樹脂硬化膜を得た。この樹脂硬化膜上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極層を形成し、ガラス/樹脂硬化膜/透明電極層からなる3層基板を得た。一方、ガラス基板上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極層を形成したガラス/透明電極層からなる2層の基板(ITO基板)を作成した。得られた二つの基板の透明電極層を対向させて液晶を挟み、(ガラス/樹脂硬化膜/透明電極層/液晶/透明電極層/ガラス)の順で積層された6層の積層体を作製した。
この積層体について、電圧保持率及び透過率を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
(実施例2)
水素化脂環式オレフィン樹脂溶液R1に代えて合成例2で得たアクリル樹脂溶液R2を使用するほかは、実施例1と同様にして、表示デバイス用樹脂組成物D2を調製した。この溶液について、ナトリウムとカリウムの量を測定した。結果を表1に示す。
また、この表示デバイス用樹脂組成物D2を用いて、実施例1と同様にして、積層体を作製し、電圧保持率及び透過率を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例3)
シリカゾル溶液Z1に代えて、コロイダルシリカ分散液Z3を使用するほかは、実施例1と同様にして、表示デバイス用樹脂組成物D3を調製した。この溶液について、ナトリウムとカリウムの量を測定した。結果を表1に示す。
また、この表示デバイス用樹脂組成物D3を用いて、実施例1と同様にして、積層体を作製し、電圧保持率及び透過率を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
シリカゾル溶液Z1に代えて、コロイダルシリカ分散液Z4を使用するほかは、実施例1と同様にして、表示デバイス用樹脂組成物D4を調製した。この溶液について、ナトリウムとカリウムの量を測定した。結果を表1に示す。
また、この表示デバイス用樹脂組成物D4を用いて、実施例1と同様にして、積層体を作製し、電圧保持率及び透過率を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
コロイダルシリカ分散液Z1に代えて、コロイダルシリカ分散液Z2を使用するほかは、実施例2と同様にして、表示デバイス用樹脂組成物D5を調製した。この溶液について、ナトリウムとカリウムの量を測定した。結果を表1に示す。
また、この表示デバイス用樹脂組成物D5を用いて、実施例1と同様にして、積層体を作製し、電圧保持率及び透過率を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例3)
コロイダルシリカ分散液Z1を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、表示デバイス用樹脂組成物D6を調製した。この溶液について、ナトリウムとカリウムの量を測定した。結果を表1に示す。
また、この表示デバイス用樹脂組成物D6を用いて、実施例1と同様にして、積層体を作製し、電圧保持率及び透過率を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
表1の結果から、アルカリ金属、特にナトリウム含有量の多い表示デバイス用樹脂組成物を用いて得た積層体は、電圧保持率が劣ることが分かる。これに対して、ナトリウム含有量の低い本発明の表示デバイス用樹脂組成物を用いて得た積層体は、優れた電圧保持率を有することが分かる。また、シリカ微粒子を含有する組成物を用いて得られた樹脂膜は、耐熱透明性に優れることが分かる。更に表示デバイス用樹脂組成物の樹脂として、環状オレフィン樹脂を用いると、積層体のアクリル樹脂を用いた場合よりも、耐熱透明性が優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂、(B)シリカ微粒子及び(C)溶媒を含有してなり、ナトリウム含有量が30ppm以下であることを特徴とする表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)樹脂が、脂環式オレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)樹脂が、極性基を含有する樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項4】
極性基が、カルボキシル基又はイミド基である請求項3記載の表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項5】
(D)硬化剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項6】
(D)硬化剤が、2官能以上の架橋性化合物であることを特徴とする請求項5記載の表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項7】
2官能以上の架橋性化合物が、エポキシ化合物である請求項6記載の表示デバイス用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の表示デバイス用樹脂組成物からなる樹脂膜を基板上に積層してなる積層体。

【公開番号】特開2006−206798(P2006−206798A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22793(P2005−22793)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】