説明

表示パネル及び投射型表示装置

【課題】放熱性等に優れた表示パネルと、これを用いた投射型表示装置を実現する。
【解決手段】表示パネルは、実装基板10に熱伝導層12で覆われた複数のビアホール11が形成され、その実装基板10上に下地基板20が実装され、更に、無機材料からなる積層薄膜のLEDアレイ30が接合され、このLEDアレイ30を半導体プロセスで素子分離することによって得られた2次元マトリクス状に配置された複数のLED31を有している。複数のLED31は、下地基板20上に搭載されたアノードドライバIC及びカソードドライバICにより、選択的に駆動される。そのため、構造が簡単で、組み立て時に破損することが無く、小型化が可能で、且つ放熱性に優れた表示パネル3と、これを用いた投射型表示装置を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネル及びこれを用いた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両、航空機等においては、速度計、燃料計等の各種計器の表示情報、ナビゲーション装置の地図情報、撮影装置が取得した画像情報等の各種の情報を表示するために投射型表示装置の1つであるヘッドアップディスプレイ装置(Head-Up Display、以下「HUD」という。)が使用されている。
【0003】
例えば、車両に使用されるHUDは、光源、液晶表示パネル、ダイクロイックミラー、ホログラムミラー等を有し、車内のインストルメントパネルの裏側に組み込まれる。そして、液晶表示パネルに表示された各種の情報を光源からの光によって、ダイクロイックミラー及びホログラムミラーで反射させた後、車両のウィンドシールドガラス(合わせガラス)の一部又は運転者の前方の所定位置に配設された反射層に表示させるようになっている。これにより、各種の情報を運転者の前方に虚像として表示することができ、運転者は視線を前方からそらすことなく各種の情報を視認することができる。
【0004】
又、光源及び液晶表示パネルに代えて、有機電界発光素子である有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)をマトリクス配置した発光パネル(即ち、有機ELパネル)を使用したHUDも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−67448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の有機ELパネルのような表示パネルと、これを用いたHUDのような投射型表示装置では、次のような課題があった。
【0007】
従来の有機ELパネルでは、上下2枚のガラス板で挟まれて樹脂で封止された構造をしているので、HUDに取り付けるためには、有機ELパネルのガラス面をHUDの筐体に直接接着して固定するか、あるいは、ブラケットに接着して固定した後、そのブラケットをHUDの筐体に固定する必要がある。ところが、接着固定面は、有機ELパネルのガラス面であるため、衝撃に弱く、筐体へ固定する際に簡単に破損してしまう。しかも、有機ELパネルでは、ガラス基板を介してHUDに固定されるため、熱伝導性が悪くて放熱性が良くないので、輝度劣化が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示パネルは、複数の貫通孔を有し、前記貫通孔の内側面を含む表面が熱伝導層で覆われた第1の基板と、前記第1の基板の一方の面に設けられた第2の基板と、前記第2の基板の表面に形成された接合膜を介して接合された複数の薄膜半導体発光素子と、前記複数の薄膜半導体発光素子の各々を選択的に駆動することにより発光させて光学像を形成させる駆動回路とを備え、前記第2の基板の裏面は、前記第1の基板の一方の面に対し、熱伝導性部材により固着されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の投射型表示装置は、前記発明の表示パネルと、前記複数の薄膜半導体発光素子の発光により形成された前記光学像を投射する光学系と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の基板に熱伝導層で覆われた複数の貫通孔が形成され、その第1の基板上に、熱伝導性部材により第2の基板が固着され、更に、その第2の基板上に、複数の薄膜半導体発光素子が接合されているので、構造が簡単で、組み立て時に破損することが無く、小型化が可能で、且つ放熱性に優れた表示パネルと、これを用いた投射型表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施例1における図4の部分的な拡大図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における投射型表示装置の全体を示す概略の構成図である。
【図3】図3は図2中の表示パネルの概略を示す構成図である。
【図4】図4は図3の表示パネルの回路構成を示す模式図である。
【図5】図5は図4中のアノードドライバIC及びカソードドライバICの構成を示す概略の回路図である。
【図6】図6は図1の表示パネルにおける製造方法の一例を示す製造・組み立て工程の断面図である。
【図7】図7は本発明の実施例2の表示パネルにおける構成及び製造方法の一例を示す断面図である。
【図8】図8は本発明の実施例3における他の投射型表示装置の全体を示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0013】
(実施例1の投射型表示装置の全体構成)
図2は、本発明の実施例1における投射型表示装置の全体を示す概略の構成図である。
【0014】
この投射型表示装置1は、例えば、HUDであり、車両、航空機等において、速度計、燃料計等の各種計器の表示情報、ナビゲーション装置の地図情報、撮影装置が取得した画像情報等の各種の情報を表示するものであり、筐体2を有している。筐体2は、この上面に窓2aが生成されており、例えば、車両内のインストルメントパネルの裏側に組み込まれている。筐体2内の下部には、表示パネル3が配置されている。表示パネル3は、複数の薄膜半導体発光素子(例えば、発光ダイオード、以下「LED」という。)が2次元状に配列されたドットマトリクスLED構造をなし、各種情報の光学像を出射する自発光型の表示パネルである。
【0015】
表示パネル3の出射光面側の上部には、その表示パネル3から出射された光学像を投射する光学系(例えば、反射用平面鏡4及び拡大用凹面鏡5)が配置されている。平面鏡4は、表示パネル3から出射された光学像を所定方向(例えば、ほぼ水平方向)に反射するものであり、この平面鏡4の反射方向に凹面鏡5が配置されている。凹面鏡5は、平面鏡4からの反射光を拡大し、筐体2の窓2aを通して上方のウィンドシールドガラス(W/S)6へ結像するものである。
【0016】
この種の投射型表示装置1では、表示パネル3の表示面から出射された各種情報の光学像が、反射鏡4で反射されて凹面鏡5で拡大され、車両のウィンドシールドガラス6の一部に表示される。これにより、各種の情報を運転者7の前方に虚像8として表示することができ、運転者7は視線を前方からそらすことなく、各種の情報を視認することが可能な構成になっている。
【0017】
(実施例1の表示パネルの構成)
図3(a)、(b)は、図2中の表示パネル3の概略を示す構成図であり、同図(a)は表示パネルの全体を示す平面図、及び、同図(b)は同図(a)中の下地基板及びフレキシブルケーブルを削除した実装基板を示す平面図である。図4は、図3の表示パネルの回路構成を示す模式図である。更に、図1(a)、(b)は、本発明の実施例1における図4の部分的な拡大図であり、同図(a)は平面図、及び同図(b)は同図(a)中のI1−I2線断面図である。
【0018】
図3(a)に示すように、本実施例1の表示パネル3は、表示パネル構成部材を実装する第1の基板(例えば、平板状の実装基板)10を有し、この実装基板10上に、第2の基板(例えば、方形の下地基板)20が固着されている。下地基板20上には、複数のLEDが2次元マトリクス状に配列されたLEDアレイ30が接合され、更に、このLEDアレイ30に対して離間して、LEDアレイ30の第1配線(例えば、アノード配線)側を駆動する第1の駆動回路(例えば、アノードドライバ集積回路、以下「アノードドライバIC」という。)40と、LEDアレイ30の第2配線(例えば、カソード配線)側を駆動する第2の駆動回路(例えば、カソードドライバIC、以下「カソードドライバIC」という。)50とが、配設されている。実装基板10上には、アノードドライバIC40及びカソードドライバIC50に接続された図示しない配線が形成され、この配線が、フレキブルケーブル60を介して図示しない制御装置に接続されている。フレキシブルケーブル60は、例えば、ポリイミド材料等で形成された薄膜状の基板の上に複数本の導電線を形成したものである。
【0019】
図3(b)に示すように、実装基板10には、放熱性を向上するために、厚み方向である垂直方向に貫通した複数の貫通孔(例えば、ビアホール)11が形成され、このビアホール11内と実装基板10の表面及び裏面とが、熱伝導層12で覆われている。実装基板10の表面及び裏面とビアホール11内とに形成された熱伝導層12は、相互に接続されている。表面及び裏面に形成された熱伝導層12は、LEDから発熱する熱を横方向に均等に伝え、ビアホール11内に形成された熱伝導層12へその熱を伝える機能を有し、更に、ビアホール11内に形成された熱伝導層12が、垂直方向に熱を伝える機能を有している。
【0020】
ここで、熱伝導層12の下地に形成された実装基板10は、熱伝導率の小さな基板(例えば、ガラスエポキシ基板等)により形成され、熱伝導層12の熱を断熱している。熱伝導層12は、例えば、銅めっき、あるいは、銅及びニッケル合金、金(Au)、パラジウム等のめっきにより形成されている。下地基板20は、例えば、高抵抗シリコン基板、熱酸化膜が形成されたシリコン基板(即ち、熱酸化膜onシリコン基板)、あるいは、窒化シリコンが形成されたシリコン基板(即ち、窒化シリコンonシリコン基板)等により形成されている。
【0021】
図1(b)に示すように、実装基板10は、粘着性の放熱性シート又はビス等のねじ部材によって、放熱板70、又はHUDの筐体2あるいは図示しないインストルメントパネルに固定される。放熱板70は、アルミニウム又は銅等で形成されたヒートシンクにより構成されている。
【0022】
実装基板10上の下地基板20の表面には、反射膜21が形成され、更に、この反射膜21上に、接合層(例えば、平坦化膜)22を介してLEDアレイ30が接合されている。反射膜21は、例えば、厚みが20nm〜lμmのチタン、銀等からなる金属簿膜であり、下地基板20上に蒸着法等によりパターン形成されている。平坦化膜22は、例えば、厚みが20〜1000nmであり、ポリイミド樹脂等の有機絶縁膜等で形成されている。この平坦化膜22の表面は、表面粗さが20〜100nm以下となるように、平坦化されている。
【0023】
図4及び図1(a)に示すように、LEDアレイ30は、LED薄膜としてのLED31を複数有し、これらのLED31が行及び列を成すように2次元のマトリクス状に配列されている。LEDアレイ30は、例えば、インジュウムアルミガリムリン、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム、窒化インジュウムガリウム、インジュウムアルミガリウムリン、ガリウムリン等の材料から成る積層薄膜であって、LEDの発光構造であるヘテロ構造、ダブルヘテロ構造を備えるpn接合デバイスであり、このLEDアレイ30が、複数のLED31に素子分離されてマトリクス状に配置されている。
【0024】
各LED31の第1の電極(例えば、アノード電極)には、アノード配線32が接続されると共に、各LED31の第2の電極(例えば、カソード電極)には、カソードコンタクト層33を介してカソード配線34が接続されている。アノード配線32及びカソード配線34の下には、ポリイミド材料、窒化シリコン等からなる絶縁膜35が形成されており、アノード配線32及びカソード配線34がマトリクス結線構造になっていても、電気的に短絡しない構成になっている。そして、各LED31は、アノード配線32及びカソード配線34を介して、LEDアレイ30を駆動するアノードドライバIC40及びカソードドライバIC50に接続されている。
【0025】
図5は、図4中のアノードドライバIC40及びカソードドライバIC50の構成を示す概略の回路図である。
【0026】
アノードドライバIC40は、図示しない制御装置から供給される表示データ(例えば、発光する又は発光しないを意味する発光データ)DAに応じて、LEDアレイ30の各アノード配線32に結線されているLED31の列に電流を供給する機能を有している。アノードドライバIC40は、例えば、図示しない制御装置からシリアル伝送により供給されるシリアル発光データSDAを入力して、直並列変換したパラレル発光データPDAを出力するシフトレジスタ41を有し、この出力側に、ラッチ回路42が接続されている。ラッチ回路42は、シフトレジスタ41から出力されたパラレル発光データPDAをラッチする回路であり、この出力側に、駆動回路43が接続されている。駆動回路43は、ラッチ回路42の出力信号を増幅する回路であり、この出力側に、複数のアノード配線32が接続されている。
【0027】
カソードドライバIC50は、図示しない制御装置から供給されるクロックCLK及びフレーム信号FSに基づき、LEDアレイ30の各カソード配線34に接続されているLED31の行を走査する機能を有し、セレクト回路51等で構成されている。
【0028】
(実施例1の表示パネルの製造方法)
図6(a)〜(c)は、図1の表示パネル3における製造方法の一例を示す製造・組み立て工程の断面図である。
【0029】
先ず、図6(a)の製造工程において、熱伝導率の小さなガラスエポキシ基板等の実装基板10を用意する。この実装基板10には、複数のビアホール11が形成されており、このビアホール11内と実装基板10の表面及び裏面とが、熱伝導層12により覆われている。熱伝導層12は、例えば、銅、あるいは、銅及びニッケル合金、金、パラジウム等により形成されている。このような実装基板10上には、熱伝導性部材である接着剤13が塗布される。接着剤13としては、熱伝導性樹脂又は各種ペースト状の熱伝導性接着剤(例えば、放熱性に優れた銀(Ag)ペースト又は金属粒子を含んだ樹脂)が使用される。
【0030】
次に、図6(b)の製造工程において、予めLEDアレイ30と下地基板20とを生成しておく。LEDアレイ30は、例えば、インジュウムアルミガリウム等の材料からなる結晶化された積層薄膜であって、LED31の発光構造であるヘテロ構造、ダブルヘテロ構造を備えるpn接合デバイスであり、図示しない別の単結晶基板(例えば、ガリウム砒素ウエハ、窒素ガリウムウエハ、サファイアウエハ、シリコンウエハ)上にてエピタキシャル成長させて積層した結晶化された薄膜を剥離したものである。このLEDアレイ30は複数のLED31に素子分離され、これらのLED31が二次元のマトリクス状に配置されている。
【0031】
下地基板20としては、高抵抗シリコン基板、あるいは、厚み20nm〜2μmの熱酸化膜又は窒化アルミニュウムを形成したシリコン基板等を使用する。この下地基板20上には、反射膜21が形成されている。反射膜21は、厚みが20nm〜lμmのチタン、銀等からなる金属簿膜であり、下地基板20上に蒸着法等によりパターン形成されている。
【0032】
このような反射膜21の上に、平坦化膜22を形成し、この平坦化膜22上に、別の単結晶基板から剥離したLEDアレイ30を接合する。この際、LEDアレイ30は、水素結合等の分子間力により、平坦化膜22上に接合される。
【0033】
なお、LEDアレイ30は、図示しない別の単結晶基板上で積層した薄膜を複数のLED素子(発光素子)が形成可能な大きな面積で(例えば、短冊状に)剥離し、平坦化膜22上に接合した後、フォトリソエッチング法によって複数のLED31に素子分離してもよい。あるいは、別の単結晶基板上で積層した薄膜をLED31の行又は列に相当する面積で剥離し、平坦化膜22上に接合した後、フォトリソエッチング法によって複数のLED31に素子分離してもよい。あるいは、別の単結晶基板上で積層した薄膜を個々のLED31に相当する面積で剥離し、平坦化膜22上に接合してもよい。
【0034】
このようにして接合されたLEDアレイ30の全面に、ポリイミド材料、窒化シリコン等からなる絶縁膜35を形成し、フォトリソエッチング法により、LED31のカソードコンタクト層33箇所及びカソード電極箇所の前記絶縁膜35を除去する。全面に、金もしくはアルミニュウム、又は、金もしくはアルミニュウムとニッケル、チタン等の金属薄膜を形成し、フォトリソエッチング法により、その金属薄膜を選択的にエッチングしてカソード配線34を形成し、カソードコンタクト層33と接合する。同様に、LED31のアノード端子箇所を除いて、前記と同様の絶縁膜35を選択的に形成した後、前記と同様の金属薄膜を選択的に形成してアノード配線32を形成する。これにより、カソード配線34及びアノード配線32は、LED31のカソード端子及びアノード端子にそれぞれ接続され、マトリクス結線構造が形成される。
【0035】
そして、LEDアレイ30が接合された下地基板20を、実装基板10上の接着剤13に押圧すれば、この接着剤13により、下地基板20が実装基板10に接着され、表示パネル3の製造が終了する。
【0036】
その後、図6(c)の組み立て工程において、実装基板10の裏面を、粘着性の放熱性シート又はビス等のねじ部材によって、アルミニウム又は銅等で形成されたヒートシンク用の放熱板70に固定し、図2中の筐体2内に装着すれば、投射型表示装置1であるHUDの組み立てが終了する。
【0037】
(実施例1の投射型表示装置の動作)
図2の投射型表示装置1であるHUDにおいて、表示すべき情報が図示しない制御装置に入力されると、この制御装置が、その表示すべき情報に応じて、シリアル発光データSDAを図5のアノードドライバIC40に供給する。
【0038】
すると、LEDアレイ30の第1行目に含まれるLED31の各々について、シリアル発光データSDAが、アノードドライバIC40内のシフトレジスタ41に順次格納される。シフトレジスタ41に格納されたシリアル発光データSDAは、このシフトレジスタ41によりパラレル発光データPDAに変換された後、ラッチ回路42に格納される。ラッチ回路42の出力信号は駆動回路43で増幅され、この駆動回路43から定電流が出力され、アノード配線32を経由して各LED31のアノード端子に供給される。
【0039】
この時、図示しない制御装置から出力されたクロックCLK及びフレーム信号FSが、カソードドライバIC50に入力されると、このカソードドライバIC50内のセレクト回路51により、LEDアレイ30の第1行目のカソード配線34が選択される。そのため、LEDアレイ30の第1行目のアノード配線32から第1行目に含まれるLED31に駆動電流が供給され、第1行目に含まれるLED31の各々がシリアル発光データSDAに応じて発光動作する。
【0040】
このような発光動作がカソード配線34の数(即ち、LEDアレイ30の行数分)だけ複数回繰り返され、1画面分の光学像である画像が表示される。つまり、表示パネル3は、表示すべき情報を含む1画面分の画像を発光する。
【0041】
表示パネル3の発光によって出射された光は、図2中の平面鏡4で反射されて凹面鏡5によって拡大された後、ウィンドシールドガラス6に照射される。すると、運転者7の視線におけるウィンドシールドガラス6の前方に、表示パネル3が発光した画像の虚像8が表示される。これにより、運転者7は、視線を前方からそらすことなく、表示パネル3が発光した画像に含まれる情報を視認することができる。
【0042】
(実施例1の効果)
本実施例1の表示パネル3によれば、実装基板10に熱伝導層12で覆われた複数のビアホール11が形成され、その実装基板10上に下地基板20が実装され、更に、無機材料からなる積層薄膜のLEDアレイ30が接合され、このLEDアレイ30を半導体製造工程(プロセス)で素子分離することによって得られた2次元マトリクス状に配置された複数のLED31を有している。そのため、構造が簡単で、組み立て時に破損することが無く、小型化が可能で、且つ放熱性に優れた表示パネル3と、これを用いた投射型表示装置1であるHUDを提供することができる。
【実施例2】
【0043】
(実施例2の構成・製造方法)
図7(a)〜(c)は、本発明の実施例2の表示パネル3Aにおける構成及び製造方法の一例を示す断面図であり、実施例1を示す図6中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0044】
本実施例2の表示パネル3Aでは、実施例1の表示パネル3における接着剤13に代えて、熱伝導層12で覆われた複数のビアホール11を有する実装基板10の表面の一部に、金属(例えば、金(Au)又は銅(Cu)等)のマイクロバンプ14が複数形成され、更に、各ビアホール11内に、熱伝導材である金属ピン(例えば、銅又はアルミニュウム等で形成された熱伝導ピン)15がそれぞれ埋め込まれて、放熱特性を更に向上させた構成になっている。実装基板10内のマイクロバンプ14の領域上には、実施例1と同様の下地基板20が形成され、この下地基板20上に、実施例1と同様のLEDアレイ30とアノードドライバIC40及びカソードドライバIC50が固着されている。
【0045】
更に、本実施例2では、実施例1とは異なり、下地基板20の裏面全体に金属(例えば、Au)の金属膜24が形成され、この金属膜24と、実装基板10上のマイクロバンプ14とが、Au−Au接合、Au−Cu接合等により接続される構成になっている。実装基板10は、実施例1と同様に、例えば、ガラスエポキシ基板等により形成され、この上に、アノードドライバIC40及びカソードドライバIC50と接続するための配線が形成されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0046】
本実施例2における表示パネル3Aの製造方法では、先ず、図7(a)の製造工程において、実施例1と同様に、熱伝導率の小さなガラスエポキシ基板等の実装基板10を用意する。この実装基板10には、実施例1と同様に、複数のビアホール11が形成されており、このビアホール11内と実装基板10の表面及び裏面とが、熱伝導層12により覆われている。実施例1とは異なり、複数のビアホール11内には、銅、アルミニュウム等で形成された熱伝導ピン15がそれぞれ埋め込まれ、更に、実装基板10上の一部には、複数のAu、Cu等のマイクロバンプ14が形成されている。
【0047】
複数のAu、Cu等のマイクロバンプ14の形成では、例えば、リフトオフプロセスにより、Au、Cu等を蒸着又はスパッタして直径2〜10μm、高さ1〜5μm、バンプ周期10μmのバンプを形成する。
【0048】
次に、図7(b)の製造工程において、実施例1と同様に、予めLEDアレイ30と下地基板20とを生成しておく。下地基板20の表面には、実施例1と同様に、反射膜21を形成するが、本実施例2では、下地基板20の裏面全面に、例えば、厚さ0.2〜5μmのAuを蒸着又はスパッタして金属膜24を形成する。反射膜21上には、実施例1と同様に、平坦化膜22を形成し、この平坦化膜22上に、別の基板から剥離したLEDアレイ30を、水素結合等の分子間力によって接合する。
【0049】
このようにして接合されたLEDアレイ30上には、実施例1と同様に、カソードコンタクト層33及びカソード配線34と、アノード配線32とを形成し、これらのカソード配線34及びアノード配線32が、LED31のカソード端子及びアノード端子にそれぞれ接続されたマトリクス結線構造を形成する。
【0050】
そして、アルゴン、窒素、酸素等のプラズマ処理により、複数のAu、Cu等のマイクロバンプ14と下地基板20の裏面のAuの金属膜24とを活性化した後、両者を接触させ、150〜300℃でアニール処理を実施することにより、複数のマイクロバンプ14と金属膜24とを、Au−Au接合、Au−Cu接合等で接続すれば、表示パネル3Aの製造が終了する。
【0051】
その後、図7(c)の組み立て工程において、実施例1と同様に、実装基板10の裏面をヒートシンク用の放熱板70に固定し、図2中の筐体2内に装着すれば、投射型表示装置1であるHUDの組み立てが終了する。
【0052】
(実施例2の投射型表示装置の動作)
本実施例2の投射型表示装置1であるHUDでは、実施例1と同様に動作する。
【0053】
(実施例2の効果)
本実施例2の表示パネル3Aによれば、実装基板10に熱伝導層12で覆われた複数のビアホール11が形成され、その各ビアホール11内に熱伝導ピン15が埋め込まれると共に、その実装基板10上に複数のマイクロバンプ14が形成され、その実装基板10上に、金属膜24を介して下地基板20が実装され、更に、無機材料からなる積層薄膜のLEDアレイ30が接合され、このLEDアレイ30を半導体プロセスで素子分離することによって得られた次元マトリクス状に配置された複数のLED31を有している。
【0054】
そのため、構造が簡単で、組み立て時に破損することが無く、小型化が可能で、且つ放熱性に優れた表示パネル3Aと、これを用いた投射型表示装置1であるHUDを提供することができる。更に、実装基板10と下地基板20とがAu−Au接合、Au−Cu接合等で接続され、LEDアレイ30からの発熱を実装基板裏面に逃がすことができるので、より放熱性に優れ、輝度ばらつきが無く、輝度低下が小さい表示パネル3A及び投射型表示装置1であるHUDを実現できる。
【実施例3】
【0055】
図8(a)、(b)は、本発明の実施例3における他の投射型表示装置の全体を示す概略の構成図であり、同図(a)は前面投射型表示装置の構成図、及び、同図(b)は背面投射型表示装置の構成図である。
【0056】
図8(a)の前面投射型表示装置70は、前面投射型プロジェクタであり、実施例1又は実施例2の表示パネル3又は3Aを備え、この表示パネル3又は3Aから出射された光学像が、光学系(例えば、投影レンズ)71により拡大されて前面のスクリーン72上に表示される構成になっている。
【0057】
又、図8(b)の背面投射型表示装置80は、背面投射型プロジェクタであり、実施例1又は実施例2の表示パネル3又は3Aを備え、この表示パネル3又は3Aから出射された光学像が、光学系(例えば、投影レンズ81及び反射鏡82)により、拡大されて反射され、背面からスクリーン83上に表示される構成になっている。
【0058】
このような投射型表示装置70,80によれば、実施例1又は実施例2の表示パネル3又は3Aを用いているので、実施例1の投射型表示装置1とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0059】
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0060】
(a) 実施例1の実装基板10におけるビアホール11内に熱伝導ピン15を埋め込んでもよい。これにより、実施例1の放熱性をより向上できる。
【0061】
(b) 実施例1、2の表示パネル3,3Aは、図示以外の構成や製造方法に変更してもよい。例えば、LEDアレイ30に代えて、複数のEL素子を有するELアレイを用いて表示パネルを構成しても、実施例1〜3とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
(c) 本発明の表示パネルは、実施例1〜3に示した投射型表示装置の形態に限られず、例えば、投影光学系を用いない直視型表示装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 投射型表示装置
3,3A 表示パネル
4 平面鏡
5 凹面鏡
6 ウィンドシールドガラス
10 実装基板
11 ビアホール
12 熱伝導層
14 マイクロバンプ
15 熱伝導ピン
20 下地基板
21 反射膜
22 平坦化膜
30 LEDアレイ
31 LED
40 アノードドライバIC
50 カソードドライバIC
70 前面投射型表示装置
80 背面投射型表示装置
71,81 投影レンズ
82 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有し、前記貫通孔の内側面を含む表面が熱伝導層で覆われた第1の基板と、
前記第1の基板の一方の面に設けられた第2の基板と、
前記第2の基板の表面に形成された接合膜を介して接合された複数の薄膜半導体発光素子と、
前記複数の薄膜半導体発光素子の各々を選択的に駆動することにより発光させて光学像を形成させる駆動回路とを備え、
前記第2の基板の裏面は、前記第1の基板の一方の面に対し、熱伝導性部材により固着されたことを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記接合膜は、分子間力により前記複数の薄膜半導体発光素子を接合する平坦化膜であることを特徴とする請求項1記載の表示パネル。
【請求項3】
前記第2の基板の表面には、反射膜を介して前記平坦化膜が形成されていることを特徴とする請求項2記載の表示パネル。
【請求項4】
前記熱伝導性部材は、熱伝導性樹脂又は熱伝導性接着剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記熱伝導性部材は、金属のマイクロバンプであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記貫通孔内には、熱伝導材が充填されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項7】
前記第1の基板の他方の面側に接触させて設けられたヒートシンクを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項8】
前記第1の基板は、ガラスエポキシ基板であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項9】
前記熱伝導層は、銅、銅・ニッケル合金、金、又はパラジウムのいずれか1つの金属膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項10】
前記第2の基板は、高抵抗シリコン、熱酸化膜構造を含むシリコン、又は窒化アルミニュウム構造を含むシリコンのいずれか1つの基板であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項11】
前記熱伝導材は、銅又はアルミニュウムの金属ピンであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示パネルと、
前記複数の薄膜半導体発光素子の発光により形成された前記光学像を投射する光学系と、
を備えたことを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−113989(P2011−113989A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265900(P2009−265900)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】