説明

表示素子及び該表示素子を備えた情報表示装置

【課題】表示素子における電力の消費を低減させ、外部の電源を不要とし、耐久性を高める。
【解決手段】フィルム状の圧電体を有する発電素子からなる発電部と、前記発電部の上に形成されるメモリ性を有する表示部とを備え、前記表示部は、前記発電素子に対して圧力を与えたときに生じる電力により提示情報を表示することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子及び該表示素子を備えた情報表示装置に係り、特に外部の電源が不要の表示素子及び該表示素子を備えた情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より日本は、その地理的位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、台風、豪雨、洪水、土砂災害、地震、津波等による災害が発生し易い国土となっている。また、近年の地球温暖化の影響によるとみられる異常気象が多くなりつつあり、更には大規模地震発生の切迫性が指摘される等、今後も甚大な非常災害が起こり得ると予測されている。
【0003】
こうした状況において、放送事業者は、非常災害の発生を予防し、またその被害を軽減するための放送を義務付けられており、非常災害時等には、被害状況やライフラインの情報等の適時適確な放送を提供している。そこで、近年では、非常災害時において放送局の発した電波(緊急警報放送)を受信すると自動的に情報端末を起動させるための受信装置の研究がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
こうした非常災害時等における情報は、一様な放送を通じて、例え停電状況下であっても、携帯ラジオや携帯テレビ、或いはワンセグ放送を受信できる携帯電話等の情報端末を通じて受信することができる。また、これらの情報端末の多くは、充電可能な二次電池(バッテリー)や乾電池等を搭載している。しかしながら、電池の容量や使用期限の制限により、いざというときに動作させることができない場合があり、信頼性の面において不足している部分がある。
【0005】
また、上述の内容に対応して、人間が手回し等の動作をすることにより発電する機能を有する発電装置を情報表示端末に外部接続或いは内蔵することにより、非常災害時でも情報を得るための技術も開示されている(例えば、特許文献2,3参照。)。
【0006】
しかしながら、ラジオやテレビのように音声や動画を常時出力するためには、相当の電力消費が必要であることから、一定時間の後に繰り返し充電する必要がある。更に、こうした充電動作は、実際に情報端末を聞く・見るといった行動とは無関係な動作であるため、決して使い易い物とはいえず、広く家庭に普及するには至っていない。
【0007】
また、近年では、電子ペーパーと呼ばれるタイプの表示素子が注目されている。電子ペーパーの特徴としては、例えば、「反射型表示素子であるため視認性が良い」、「低消費電力で書き換え可能である」、「書き込みを行った後に表示内容を保持するための電力が不要である」、「フレキシブルであり表示部等を曲げても表示することができる」といったものが挙げられる。
【0008】
なお、上述の電子ペーパーの駆動には、通常リチウム(Li)イオン電池やコイン電池の2次電池や1次電池が使用されるが、例えばIC(Integrated Circuit)カードに搭載された表示素子を電池無しで駆動する方法等も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開2007−251337号公報
【特許文献2】特開平1−44133号公報
【特許文献3】特開平3−36944号公報
【特許文献4】特開2003−263616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来技術に示すように、電子ペーパーの駆動に電池を使用する場合には、電池切れを起こしてしまうと電池を充電又は交換しなければ駆動できないという問題がある。
【0010】
また、上述した特許文献4に示されている技術のように、圧電素子が略中央部に配置され、表示部が端部側に配置された形態の場合、例えば同一面内に圧電素子と表示素子が形成されている際、表示素子等の発電素子以外の素子を実装する面積が狭くなってしまうという問題がある。
【0011】
また、同様の理由から圧電素子の面積を大きくできないため、例えば大面積の表示素子や大容量の記録素子を駆動するのに必要な電圧や電力が得られないという問題があり、駆動できる表示素子が低電圧で動作するものに限られてしまい、ICカードに搭載できるような極小さなサイズの表示素子、小さな記憶容量の記録素子を駆動する用途にしか使用することができない。更に、表示素子が中央部に配置されていないため、通常表示素子が基板の中央部に配置する必要がある電子書籍や広告媒体、携帯情報端末等の用途に使用することができないという問題があった。
【0012】
また、上述した特許文献4の実施例にあるように、0.76mmの厚みのICカードに0.6mmの厚みのPZTからなる圧電素子を組み込む場合、ICカードの基材中に圧電素子を埋め込む必要があり、製造工程が複雑になるという問題があった。更に、PZTのような無機セラミックス材料はICカード基材に比べて固くて脆く、ICカードを変形させた場合、発電素子が破壊される可能性が高く、耐久性に問題があった。
【0013】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、外部の電源が不要の表示素子及び該表示素子を備えた情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0015】
請求項1に記載された発明は、表示素子であって、フィルム状の圧電体を有する発電素子からなる発電部と、前記発電部の上に形成されるメモリ性を有する表示部とを備え、前記表示部は、前記発電素子に対して圧力を与えたときに生じる電力により提示情報を表示することを特徴とする。
【0016】
請求項1記載の発明によれば、表示素子における電力の消費を低減させ、外部の電源を不要とし、耐久性を高めることができる。
【0017】
請求項2に記載された発明は、前記発電素子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンと3フッ化エチレンの共重合体、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー共重合体、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体のうち少なくとも一つを含む高分子圧電体からなることを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、効率的に発電させると共に、耐久性の高い発電素子を形成することができる。
【0019】
請求項3に記載された発明は、前記発電部は、前記フィルム状の発電素子を湾曲又は屈曲させることにより発電を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、表示画面に対応させて予めフィルム状に形成しておくことで、外部から圧力を与えて発電素子の湾曲又は屈曲を容易に行うことができる。また、容易に発電部を発電させることができる。
【0021】
請求項4に記載された発明は、前記発電部は、前記フィルム状の発電素子を湾曲又は屈曲させることにより前記表示部の書き換えを行うことを特徴とする。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、表示画面に対応させて予めフィルム状に形成しておくことで、外部から圧力を与えて発電素子の湾曲又は屈曲を容易に行うことができる。また、容易に表示部の書き換えを行うことができる。
【0023】
請求項5に記載された発明は、前記発電素子の上に形成され、外部から与えられた圧力により発光する応力発光部を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、応力発光部を照明として使用することができる。また、エネルギーの種類を変換する際の損失を減らすことができ、一度の動作で照明光源を点灯する時間を飛躍的に延ばすことができる。
【0025】
請求項6に記載された発明は、前記応力発光部は、長残光性を有する材料を混合又は積層されて形成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、長時間表示を実現でき、表示における電力の消費を低減させることができる。
【0027】
請求項7に記載された発明は、前記請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示素子を備えた情報表示装置において、放送波を受信する放送波受信部と、前記放送波受信部により受信したデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された情報の中から閲覧する情報を選択操作させるための操作部と、前記操作部により選択された情報を表示するメモリ性を有する表示部と、前記発電部から得られる電力により前記放送波受信部、前記記憶部、前記操作部、及び前記表示部のうち、少なくとも1つを駆動させる駆動部とを備えることを特徴とする。
【0028】
請求項7記載の発明によれば、情報表示装置における電力の消費を低減させ、外部の電源が不要とし、耐久性を高めることができる。
【0029】
請求項8に記載された発明は、前記表示部は、前記フィルム状の発電素子を湾曲又は屈曲させることにより、メモリに記憶された情報を消去することを特徴とする。
【0030】
請求項8記載の発明によれば、メモリに残る見たくない又は見られたくないデータ(情報)を容易な方法で消去でき秘匿性を確保することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、表示素子や表示素子を備えた情報表示装置において、電力の消費を低減させ、外部の電源を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<本発明の概要>
本発明では、例えば地上デジタル放送やワンセグ等のデータ放送が受信可能な情報表示装置として、例えばワンセグのデータ放送部分のみを受信するチューナーと、受信したデータを保存するフラッシュメモリと、データを表示するための電子ペーパーと、応力発光体等の照明光源とを含む構成とし、提示情報を受信、記録、読み出し、書き換え等をする際にのみ電力を消費し、表示を保持する際には電力を消費しないため、全体の消費電力を極力抑えることができ、外部の電源を不要にすることができる。なお、提示情報としては、例えば放送波等を受信して得られるリアルタイム映像等の情報や、装置内に設けられたメモリに予め蓄積された情報、外部入力デバイス(例えば、キーボードやテンキー等)により設定される情報等を用いることができるが、本発明における提示情報の種類、形態等については特に限定されない。
【0033】
また、停電時や夜間の場合でも、情報表示装置において、例えば情報表示を行うための一般的な操作である「ページを引き出す」、「捲る」、「ボタンを押す」といった人間が情報を要求する動作を能動的に電力に変換して利用することにより、自然に使用し易く利便性を向上させることができる。
【0034】
以下に、上述したような特徴を有する本発明における表示素子及び該表示素子を備えた情報表示装置を好適に実施した形態について、図面等を用いて詳細に説明する。
【0035】
<表示素子:第1の実施形態>
まず、本発明における表示素子の第1の実施形態について図を用いて説明する。図1は、第1の実施形態における表示素子に用いられる発電素子の断面の一例を示す図である。図1に示す発電素子10は、プラスチック基板11と、電極12−1,12−2と、高分子圧電体としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム13と、保護フィルム14とを有するよう構成されている。
【0036】
つまり、図1に示す発電素子10は、両面に約80nmのアルミ電極12−1、12−2が両面に蒸着されたPVDFフィルム13が、透明又は半透明なプラスチック基板11と樹脂製等からなる保護フィルム14で挟み込まれた構造となっている。この構造は、上述したPVDFフィルム13と、接着剤等を付けたプラスチック基板11及び保護フィルム14とを加熱しながら貼り合せることによって形成されている。
【0037】
ここで、プラスチック基板11、PVDFフィルム13、及び、保護フィルム14の厚みは、それぞれ約10〜300μm、約0.1〜200μm、及び、約1〜100μm等を用いることができ、特に約100μm、約40μm、及び、約8μmが好ましい。また、大きさ(面積)は、全て約1mm×1mm〜500mm×500mm等を用いることができ、特に約148mm×約210mmが好ましい。
【0038】
また、図1に示す発電素子10は、高分子からなっているため、人手等で簡単に曲げることができ、曲げた後に元に戻しても特性は変化せず、実用上十分な耐久性を有している。
【0039】
なお、図1に示す発電素子10の表面からPVDFフィルムまでの距離dは約100μm程度であり、裏面(保護フィルム表面)からPVDFフィルム13までの距離dは約8um程度である。そのため、その絶対値|d−d|は、92μmであり、0より大きい。このことは、発電素子全体の厚みの中心からPVDFフィルム13が偏心していることを示しており、発電素子を曲げた時にPVDFフィルム13内に発生する引張り応力によって発生する電荷と、圧縮応力によって発生する逆方向の電荷とが打ち消し合うのを軽減することができ、より大きな電力を発電することが可能となる。
【0040】
次に、上述のようにして形成した発電素子及び表示素子を組み合わせた情報表示装置である表示端末の駆動内容について図を用いて説明する。図2は、発電素子及び表示素子を一体化した表示端末の概略の一例示す断面図である。
【0041】
図2に示す表示端末20は、発電素子10と、透明基板21と、表示素子用電極22−1,22−2と、プラスチック基板23と、配線としての導線24−1,24−2と、反射型表示素子(マイクロカプセル)25と、駆動回路26を有するよう構成されている。
【0042】
図2に示す表示端末20は、いわゆる電気泳動型の電子ペーパーのような構造となっている。ここで、反射型表示素子25の厚みは約1.0mmであり、表示部(表示素子用電極22−1,22−2による面)の大きさは約120mm×80mmであり、表示部27全体(透明基板21及びプラスチック基板23による面)の大きさは約135mm×108mmである。なお、表示素子の厚みについては、例えば0.1mm〜1.0mm等を用いることができ、大きさについても約1mm×1mm〜500mm×500mm等を用いることができる。なお、上述した発電素子及び表示素子の大きさは、使用者等の手で扱える程度のサイズであればよい。
【0043】
発電素子10及び表示部27は、接着フィルムによって一体化されている。なお、本実施例においては、発電素子10と反射型表示素子25とをそれぞれの基板上に形成した後に接着フィルムで接着しているが、本発明においてはこれに限定されず、例えば同一の基板の両面に発電素子10と表示部27とを形成してもよい。その場合には、例えば表示部27を形成した基板の裏面にピエゾフィルムを貼り付ける、または直接形成することによって、発電素子10と表示部27とが一体化された表示端末20を形成する方法が挙げられる。
【0044】
ここで、図2の表示端末20においても、上述したように表示素子の表面からPVDFフィルム13までの距離dと、裏面からPVDFフィルム13までの距離dとは、|d−d|>0の関係を満たす。また、互いに逆の極性に帯電した黒色顔料と白色顔料が入ったマイクロカプセルを表示素子用電極22−1,22−2で挟み込んだ構造となっている。なお、表示側の面の電極22−1は、例えば透明電極からなる。
【0045】
また、表示素子用電極22−1,22−2は、必要に応じてライン状にパターンニングし、直交させて配置することにより、マトリクス表示を行うことができる。また、所望の固定形状のみを表示させたいときは、その形状に合わせてパターンニングしてもよい。
【0046】
ここで、この表示素子用電極22−1,22−2間に例えば電圧5Vを印加すると、帯電した顔料が電気泳動によって図2における上下方向に移動し、図2に示す黒色顔料(−)と白色顔料(+)の外光の反射率の違いによって、提示情報の白黒2色表示(モノクロ表示)を行うことができる。なお、本実施形態では、他の顔料(赤、青、黄等)を用いてカラー表示させてもよい。
【0047】
また、図2において、発電素子10の2つの電極12−1,12−2を、駆動回路26を介してそれぞれ表示素子25の2つの電極22−1,22−2に導線24−1,24−2により配線することにより、発電素子10からの電力により表示素子25を駆動することができる。
【0048】
なお、図2では、電極12−1と電極22―2とが駆動回路26を介して導線24−1により配線され、電極12−2と電極22−1とが導線24−2により配線されている。駆動回路26は、外部からの入力信号に応じて表示素子用電極22−1,22−2に供給する電圧を制御することにより、テキストや図形等の提示情報を表示することが可能である。また、表示端末20は、例えば図2に示す方向への湾曲(又は屈曲)が可能となる。
【0049】
次に、図2の構成で駆動実験を行った結果について図を用いて説明する。図3は、本実施形態における表示端末の駆動状態を説明するための一例を示す図である。ここで、図3(a)の状態は、素子を湾曲又は屈曲させる前の表示端末30の状態を示し、図3(b)は、素子を湾曲又は屈曲させた後の表示端末30の状態を示す図である。また、図3(a),(b)には、発電部31と、表示部32と、配線33とが示されている。
【0050】
まず、使用者等は、図3(a)の状態から、図3(b)に示すように手で両端から中央に向かって圧力を加えて発電素子10を湾曲又は屈曲させる。そうすると、その応力により発電素子10の2つの電極間に電荷が発生し、その電荷によって発生した電圧により表示部32が駆動される。なお、図3では、表示部32の黒と白が反転しており、表示素子が駆動できたことがわかる。
【0051】
また、図4は、発電素子を湾曲又は屈曲させた時に発生する電圧の時間波形の一例を示す図である。なお、図4の横軸は時間[sec]を示し、縦軸は電圧[V]を示している。
【0052】
図4では、上述した図1に示す発電素子10の構成において、直径が約1cmになるように略円形に丸めた後、元の形状に復元させた場合に電極間に発生する電圧の時間波形をオシロスコープで計測したものである。このときのオシロスコープのプローブのインピーダンスは約10MΩであった。最大発生電圧として約160Vを得ることができ、約0.5秒の間にわたって約100V以上の電圧を発生させることに成功した。なお、プローブのインピーダンスが約10MΩであることから、発生した最大の瞬間電力は約2.56mWである。
【0053】
この結果から、この発電素子により電気泳動型の電子ペーパーだけではなく、例えば強誘電性液晶、電子粉流体、エレクトロクロミック材料等を使用したメモリ性のある表示素子や、mW程度の消費電力で動作するLSI(Large Scale Integration)や発光素子、半導体メモリ等の記録素子、無線通信のための送受信素子、テレビジョンの電波を受信できる受信機、ブザー、スピーカー、マイクロホン等、又はそれらを組み合わせたものを駆動することが可能である。
【0054】
なお、本実施例では、表示素子よりも発電素子の面積が大きいものを用いているが、発電素子は表示素子と同じがそれよりも小さくとも表示素子を駆動するには十分な発電力を持っており、表示素子を駆動できる以上の電力が出力される大きさがあればよい。
【0055】
つまり、上述した第1の実施形態は、発電素子からなる発電部と、表示部からなる表示素子において、表示部がメモリ性を有する。また、発電素子で発生した電力により表示部或いはメモリ(記録素子)、又はその両方を動作させる。また、発電素子がフィルム状の圧電体であることを特徴とし、発電素子がポリフッ化ビニリデン、ポリフヅ化ビニリデンと3フッ化エチレンの共重合体、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー共重合体、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体のうち少なくとも一つを含む高分子圧電体からなることが好ましい。
【0056】
また、フィルム状発電素子を湾曲又は屈曲させることによって発電を行う。また、フィルム状発電素子を湾曲又は屈曲させることによって表示部に表示される情報の書き換え等を行う。また、同一の基板上にフィルム状発電素子と表示部とが形成されており、表示部が形成された基板の裏面にフィルム状発電素子が形成されている。また、表示端末表面からフィルム状発電素子までの厚み方向の距離dと表示端末裏面からフィルム状発電素子までの厚み方向の距離dとが、|d−d|>0の関係を満たす。また、フィルム状発電素子と表示部が形成されている基板を湾曲又は屈曲させることによって、発電と表示部に表示される情報の書き換えを行う。
【0057】
このように、本実施形態によれば、電池無しで必要な時に駆動することができ、かつ実用的な回数の発電が可能な耐久性を有する表示端末を、ICカードのような比較的小型の端末はもちろんのこと、それに限らず電子書籍や広告媒体、携帯電話機、災害時の情報提供用の表示端末等の幅広い用途に使用できる端末を簡便な構造で低コストに実現することができる。
【0058】
<表示素子:第2の実施形態>
次に、本発明における表示素子の第2の実施形態について説明する。情報表示装置(表示端末)に搭載された各部品において、最も消費電力が大きいのは、フラッシュメモリであり、続いてチューナー、照明光源、表示素子の順である。ここで、照明光源を除く3つの部品については、それぞれ情報を受信・記録・読出・書き換えする比較的短い時間のみ電力を消費する。しかしながら、照明光源については、人間が情報を読むための比較的長い時間は点灯して続けておく必要がある。したがって、消費電力に消費時間をかけた消費電力量を比較した場合、消費電力量においては、照明光源が最も負荷の大きい要素となってしまう。すなわち、情報を読む際に必要な照明光を得るためには、新たな情報を受信しなくとも繰り返し発電する必要があり、これが使用し易い環境を阻害する一因となっていた。
【0059】
また、この問題のもう一つの原因としては、変換損失があることが挙げられる。この変換損失はこの構成においては、特に2種類が存在する。第1の変換損失は、エネルギーが形態を変える際の変換損失である。照明光源を点灯させるためには、例えばPVDF等の高分子圧電体を人間の運動により変形させて発電することにより、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する。次に、その発生した電気エネルギーを照明光源に供給することにより、光エネルギーに変えて照明光源を点灯させていた。多くの場合、エネルギーの種類が変換される際には損失の発生は避けられない。この場合は、機械→電気、電気→光の2回の変換を経ているため、この変換損失が更に大きくなってしまうという課題があった。
【0060】
また、第2の変換損失は、電気回路における変換損失である。発電体から得られる電気エネルギーは、必ずしも照明光源の点灯に適した状態で出力されるとは限らないため、変換する必要がある。
【0061】
例えば、発電体の出力インピーダンスと照明光源の入力インピーダンスのマッチングが取れていない場合や出力周波数が異なる場合、変換回路を用いて必要な形態に電力を変換する。また、発電体にPVDFを用いた場合、その出力は一般的に直流の数十〜数百ボルトの出力である。そのため、照明光源にLED(Light Emitting Diode)や有機EL(Electro Luminescence)材料を用いた場合には、DC−DCコンバータ等を用いて降圧しなければならず、また例えば照明光源に無機EL材料を用いた場合には、DC−ACインバータ等を用いて交流に変換をしなければならない。これらの変換回路においても、不可避的に変換損失が生じてしまう。
これらの変換損失が、照明光を得るために発電する回数が多くなったり、照明光源が暗くなってしまう原因となっていた。
【0062】
そこで、第2の実施形態では、以下の手法により、変換損失を抑え、情報を読むために十分に必要な時間以上に照明光を点灯させることが可能な表示素子が実現する。つまり、そのための手段として表示素子のバックライトやフロントライトに応力発光材料を用いる。
【0063】
機械的エネルギーをできるだけ効率よく光エネルギーに変換するためには、機械→電気→光という経路でエネルギーを変換せず、応力発光材料を用いて機械→光という経路で直接に変換すれば、エネルギーの種類を変換する際の損失を減らすことができる。
【0064】
また、応力発光材料により、電気回路においてその形態を変換させる際の変換損失も省くことができる。したがって、機械的エネルギーを直接光エネルギーに変換できる応力発光材料を照明光源に用いることにより、一度の動作で照明光源を点灯する時間を飛躍的に延ばすことが可能となる。
【0065】
なお、応力発光体材料は、材料に機械的な力を加えることにより発光する材料を指し、代表的には例えばSrAl:Eu等、アルカリ土類金属酸化物とアルミニウム酸化物から構成されるアルミン酸塩に希土類金属を付活した材料や、ウルツ鉱型構造とせん亜鉛鉱型構造が共存ずる構造をもつZnCuMnSや、ZnS:Mn等が挙げられる。
【0066】
更に、この応力発光材料を用いた表示部に、表示部の駆動回路やチューナー等を動作させるための発電材料等を組み合わせることにより、停電時でも長時問にわたって情報を読むことが可能な表示部を実現することができる。また、これらをチューナーやフラッシュメモリと組み合わせることにより、非常災害時でも情報を提供することが可能な情報端末を実現することができる。
【0067】
また、応力発光材料は、長残光性を併せ持つ材料を用いてもよい。例としては、SrAl:Eu,Dy等が挙げられる。この材料は、機械的エネルギーを与えて発光させると、その発光がしばらく保持される。このため1度動作を行えば、情報を読む時間中は発光が持続するため、発電動作を繰り返す必要がない。
【0068】
また、応力発光材料として、例えば長残光性材料の混合やその積層を用いてもよい。応力発光材料の一例としては、SrAl:Eu,La、長残光性材料としての一例としては、CaAl:Eu,Ndが挙げられる。
【0069】
これにより、応力発光材料が例え短時間で発光を終えたとしても、その発光により励起された長残光性材料により発光をしばらく保持することができる。このため、発光動作を1度行うことで、情報を読む時間中は発光が持続するため、発電動作を繰り返す必要がない。
【0070】
また、表示素子には、電子ペーパーや強誘電性液晶、電子粉流体、エレクトロクロミック材料等を使用したメモリ性のある表示部を用いることができる。また、例えば、反射型の一般的な電子ペーパーを用いた場合には、応力発光材料をフロントライトとして用いることにより、上記の課題を解決することができる。また、例えば透過型の一般的なメモリ性を有する強誘電性液晶を用いた表示部を用いた場合には、応力発光材料をバックライトとして用いることにより、上記の課題を解決できる。
【0071】
<第2の実施形態:実施例1>
次に、上述した第2の実施形態に対応した具体的な実施例について図を用いて説明する。まず、第2の実施形態における実施例1について説明する。図5は、第2の実施形態における表示素子の実施例1の概略構成の一例を示す断面図である。
【0072】
図5に示す表示部40−1は、ポリエチレンテレフタラート41−1〜41−4と、コレステリック液晶材料42と、応力発光材料43と、アルミニウム44−1,44−2と、PVDF45とを有するよう構成されている。
【0073】
なお、図5に示すように、基材には、大きさが約A5サイズ(148mm×210mm)、厚さが約20μmの高分子圧電体であるPVDF45を用いている。また、PVDF45には、分極処理を施している。この両面には、電極としてアルミニウム44−1,44−2を200nmの厚みで成膜している。また、この電極の端子部分を除き、厚さ10μmの絶縁性の透明高分子材料であるポリエチレンテレフタラート41をラミネート接着している。
【0074】
ポリエチレンテレフタラート41上には、応力発光材料43としてSrAl:Eu,Dyが塗布形成されている。ここでは、根本特殊化学製の「ウォーターベース ルミノーバペイント」(SrAl:Eu,Dyを含むペースト)を、スピンコーターを用いて塗布し、室温乾燥することにより、厚さが約50μmの応力発光材料層を形成し、これをバックライト部とした。
【0075】
また、バックライト部の上には、透過型のメモリ性を有する強誘電性液晶を用いた表示素子を用いて積層した。なお、強誘電性液晶を用いた表示端末は、偏光フィルター(図示していない)、基材となるポリエチレンテレフタラート41、それぞれの基材上に形成された透明電極(図示していない)、配向膜(図示していない)、コレステリック液晶材料42、及び駆動回路(図示していない)で構成されている。透明電極には、ITOを用いており、QVGA(320×240ピクセル)の画素構成を持つようにパターンニングする。
【0076】
駆動回路によって所定の電圧を表示したい信号の形式に沿って透明電極に印加することにより像を形成し、その後は電力を供給せずに像を保持することが可能である。
【0077】
<第2の実施形態:実施例2>
次に、第2の実施形態における実施例2について説明する。図6は、第2の実施形態における表示素子の実施例2の概略構成の一例を示す断面図である。
【0078】
図6に示す表示部40−2は、応力発光材料46が混合法により積層されている。なお、その他の構成は、図5の断面層と略同一であるため、ここでの説明は省略し、以降の実施例においても同一の内容に係る部分の説明は省略する。
【0079】
ここで、第2の実施形態における実施例2を上述した実施例1と比較すると、実施例1では応力発光材料43としてSrAl:Eu,Dyが塗布形成されているが、実施例2ではSrAl:Eu,Laと、長残光性材料であるCaAl:Eu,Ndを混合して塗布形成されている。
【0080】
ここで、基材には、大きさが約A5サイズ程度、厚さが約20μmの高分子圧電体であるPVDF45を用いている。PVDF45は、分極処理を施している。この両面には、電極としてアルミニウムを約200nmの厚みで成膜している。また、この電極の端子部分を除き、厚さ10μmの絶縁性の透明高分子材料であるポリエチレンテレフタラートをラミネート接着している。
【0081】
ポリエチレンテレフタラート41上には、SrAl:Eu,Laと、長残光性材料であるCaAl:Eu,Ndとを混合して塗布形成されているが、ここでは粉末の上記2つの材料を混合し、更にボリビニルアルコール粉末と水を加えて混練してペーストを作製し、スピンコーターを用いて塗布し、室温乾燥することにより、厚さ50μmの応力発光材料層を形成し、これをバックライト部とした。また、バックライト部の上には、上述した実施例1と同じ透過型のメモリ性を有する強誘電性液晶を用いた表示素子を用いて積層した。
【0082】
次に、上述の実施例2における表示部40−2を有する表示部を実施例1と同様に丸棒等に沿って丸めてケースに収納できるようにしたデバイスを製作した。このとき、使用者等が表示部をケースから取り出す動作を行うと、PVDF45が変形して約1mWが数秒間にわたって発生することができる。そこで、この電力を駆動回路等を通じて強誘電性液晶を用いた表示素子に供給することで、強誘電性液晶を用いた表示部に文字を表示させることができる。また、それと同時にバックライト部においても、基材の変形により発生する応力により青色と緑色の発光を生じさせることができ、暗所において強誘電性液晶を用いた表示素子に表示された文字を十分に読むことができる。なお、発光時間は、少なくとも数分程度は続くため表示された文字数を読み取るには十分である。
【0083】
<第2の実施形態:実施例3>
次に、第2の実施形態における実施例3について説明する。上述した実施例2では、粉末のSrAl:Eu,Laと、CaAl:Eu,Ndとを混合して用いたが、例えばスパッタ法等により薄膜として積層してもよい。この構成について図を用いて説明する。
【0084】
図7は、第2の実施形態における表示素子の実施例3の概略構成の一例を示す断面図である。図7に示す表示部40−3では、応力発光材料47,48がスパッタ法により積層されている。なお、図7の例では、応力発光材料47はCaAl:Eu,Ndであり、応力発光材料48はSrAl:Eu,Laであるが、順序については特に限定されず、逆に積層されていてもよい。また、厚み等についても特に制限されない。
【0085】
<第2の実施形態:実施例4>
次に、第2の実施形態における実施例4について説明する。図8は、第2の実施形態における表示素子の実施例4の概略構成の一例を示す断面図である。図8に示す表示部40−4では、上述した実施例1と同様に、基材には、大きさが約A5サイズ程度、厚さが約20μmの高分子圧電体であるPVDF45を用いた。この両面には、電極としてアルミニウム44−1,44−2を200nmの厚みで成膜している。また、この電極の端子部分を除き、厚さが約10μmの絶縁性の透明高分子材料であるポリエチレンテレフタラート41をラミネート接着している。その上に、反射型の電子ペーパーを積層している。
【0086】
電子ペーパーは、2枚のポリエチレンテレフタラート41、それぞれの基板上に形成された透明電極、マイクロカプセル42、及び駆動回路で構成されている。透明電極は、画素構成を持つようにパターンニングされており、例えば各基板上に形成した透明電極が直交するように配置されている。ここで、駆動回路によって所定の電圧を表示したい信号の形式に沿って透明電極に印加することにより像を形成し、その後は電力を供給せずに像を保持することが可能である。
【0087】
また、実施例4では、その上に、導光板49を貼り付けた。そして、その端部に光源として応力発光材料43であるSrAl:Eu,Dyを塗布形成した。具体例としては、まず塗布形成が不要な場所に日立化成工業(株)製の「ヒタレックス」を貼り付け、塗布形成が必要な端部のみを開口する。次に、根本特殊化学製の「ウォーターベース ルミノーバペイント」(SrAl:Eu,Dyを含むペースト)を、スクリーン印刷を用いて塗布し、室温乾燥し、ヒタレックスを剥がすことにより、端部に厚さ50μmの応力発光材料層を形成する。その後、表面に厚さが約10μmの絶縁製の透明高分子材料であるポリエチレンテレフタラートをラミネート接着し、これをフロントライト部とした。
【0088】
<表示部における動作例>
ここで、上述した表示部40等における動作例について、例えば丸棒等に沿って丸めてケースの内部に収納できるようにした携帯型のデバイス(表示端末)を例に図を用いて説明する。図9は、第2の実施形態における表示部の動作例を説明するための図である。
【0089】
図9に示す表示端末50は、表示部40を湾曲させて内部に収納可能なケース51に表示部40における駆動回路(電極端子部分)及び丸棒52が接続された構成を有している。
【0090】
図9の例では、使用者等が丸棒52により巻き取られて収納されている表示素子50をケース51から引き出す動作を行うと、PVDF45が変形して発電し、約1mW程度が数秒間にわたって発生する。この電力を、駆動回路を通じて強誘電性液晶を用いた表示素子(実施例4では、電子ペーパー)に供給すると、強誘電性液晶を用いた表示部(実施例4では、電子ペーパー部)に文字(図9では、文字“あいうえお かきくけこ さしすせそ”)(文字数は発光時間で読める範囲において、更に多く表示することもできる)が表示される。また、それと同時にバックライト部においても、基材の変形により発生する応力により緑色の発光を生じさせることができる。これにより、例えば暗所において強誘電性液晶を用いた表示素子に表示された文字を十分に読むことができる。なお、発光時間は、少なくとも数分程度は続くため表示された文字数を読み取るには十分である。
【0091】
ここで、本実施形態においては、長残光性材料であるCaAl:Eu,Ndの代わりに、SrMgSiO:Eu,Nd、MgSnO:CrやZnS:Cuを用いてもよい。SrMgSiO:Eu,Ndの場合には、発光が青色となり、MgSnO:Crの場合は青色と黄白色、ZnS:Cuの場合には、青色と緑色となる。
【0092】
上述したように第2の実施形態により、例えば台風や地震等の非常災害による停電時でも安定して情報を受けるための無電源の発光体を、バックライトやフロントライト等の照明光源に用いた強誘電性液晶や電子ペーパー等の表示素子、及びそれを用いた地上デジタル放送や文字放送受信用等の情報表示装置を提供することができる。
【0093】
<情報表示装置(表示端末)例>
次に、上述した表示素子を備えた情報表示装置について説明する。ここで、情報表示装置の一例としては、例えば地上デジタル放送やワンセグ等のデータ放送を受信して、その内容を表示する端末に関するものである。データ放送は、上記に上げた放送以外に加えて、FMデータ放送、デジタルラジオ放送、BSデジタル放送、CSデジタル放送等のでも受信可能である。これらは、例えば携帯電話のように契約者に使用を限定されることなく、放送のタイミングを待つ必要や輻輳等の心配がなく、必要とする時に、何人の受信者に対しても一斉に(同報性)、比較的小さな電力で広い範囲にインフラを新たに整備することなく情報を配信できる有効な方法である。
【0094】
また、本実施形態における表示端末の発電手法としては、これまでに説明したような表示部に高分子圧電体を組み合わせた方法で、主に「巻物状の表示部を広げる又は巻き取る」、「ページを捲る」、「閉じて開く」、「折りたたむ」動作で発電する方法以外の方法であってもよい。その場合には、表示部以外の部分に別途材料や部品を組み合わせることができる。例えば、「ボタンを押す」動作により電力を発生させる場合には、例えば圧電セラミックス等を用いたボタンを表示部上に組み合わせることで発電させることができる。
【0095】
また、「押さえ付ける」、「踏み付ける」、「手で挟む、又は手で擦る」動作により電力を発生させる場合には、例えば人工筋肉用電歪ポリマー、PZT(PbZrTiO:ジルコニウムチタン酸鉛)等の焦電性材料やBiTe(テルル化ビスマス)等を用いた熱電素子等の発電素子を例えば表示素子の収納部に用いることで発電させることができる。
【0096】
また、「吹く(息を吹きかける)」、「声を発する」動作により電力を発生させる場合には、例えば圧電セラミックスやSi等を微細加工して作成されたマイクロタービンや風車とモーターを組み合わせた風力発電素子等を例えばマイク部に用いることで発電させることができる。
【0097】
また、「傾ける(揺する、僅かに振る)」、「物体(例えば、磁石)を近付ける(置く)」、「レバーを引く(押す)」動作により電力を発生させる場合には、例えば圧電材料や磁性材料、磁歪材料等を用いた部品を内部に組み込むことで発電させることができる。なお、上述の発電手法は、1つでもよく、また複数を組み合わせてもよい。
【0098】
また、本発明における情報表示装置は、発電動作により発電される電力が十分でない場合に備えて、太陽電池パネルを搭載してもよい。これにより、夜間や照明が不十分な場所以外では、発電動作により供給される電力が十分でない場合に起こりうる利用者の疲労や面倒を解消することができる。
【0099】
また、本発明における情報表示装置は、これまでに説明した様な応力発光体を用いた照明光源だけではなく、LED等を組み合わせてもかまわない。これにより、表示部に表示された情報を読むための照明光源としてだけではなく、物体を明るく照らすために必要な外部照明としても用いることができる。
【0100】
また、本発明においては、情報表示装置のメニュー画面において、操作が必要な項目のみ、表示部とは別の操作結果を表示部に表示させるといった表示手法を行うこともできる。これにより、電力をより節約し、書き換え時間を速くさせることができる。
【0101】
<情報表示装置(表示端末):実施形態>
次に、上述の情報表示装置の具体的な実施形態について、図を用いて説明する。図10は、本発明における情報表示装置の一構成例を示す図である。図10に示す情報表示装置60は、ケース61と、表示部62と、操作結果表示部63と、操作部64と、発電部65と、取手部66とを有するよう構成されている。
【0102】
また、図11は、ケース内部の機能構成の一例を示す図である。図11に示す情報表示装置61は、アンテナ部(放送波受信部)71と、チューナー部72と、記憶部73と、駆動部74と、巻き取り部75とを有するよう構成されている。また、図12は、本実施形態における表示例を示す図である。
【0103】
なお、表示部62、操作結果表示部63、及び操作部64には、上述した本実施形態における表示素子が適用されている。また、チューナー部72は、例えばワンセグ放送受信用チューナーである。また、記憶部73は、データの書き込み及び読み出しが可能なフラッシュメモリ等である。
【0104】
図10〜図12において、まず初期状態では、通常、発電部65と一体になった表示部62、操作結果表示部63及び操作部64、発電部65(以下、シート)は、巻き取り部75により巻き取られた状態で保管されている。なお、直前にある表示を閲覧した後では、シートが引き出された状態で置かれている場合もある。
【0105】
次に、初期状態としてケース61にシートが巻き取り部75に巻き取られて収納されている場合、使用者が取手部66をケース61から離すように引っ張ることで、シートを引き出す。これが、発電動作となり、端末全体への電力供給が開始され、同時に自動的に受信開始指令が発せられる。
【0106】
なお、シートが引き出されたままOFFになっている場合にも、一度巻き取った後に引き出す等の発電動作を行うことで、駆動部74により情報表示装置60全体(チューナー部72、記憶部73、表示部62等)への電力供給が開始され、同時に自動的に受信開始指令が発せられる。
【0107】
これにより、使用者等が情報を得るという意思表示をしたときのみ電力を消費するようにし、それ以外のときには電力を消費しないようにするという動作の明確な切り分けによって電力消費を必要最小限にすることが可能となる。また、使用者等が情報を得るためにわざわざ電力を確保しているという意識を持たずに情報表示装置60を使用することができるため、使い易さを向上させることができる。
【0108】
また、例えば発電動作により得られた電力で駆動部74により駆動された操作部64に設けられた受信開始指令ボタンを押下すると、アンテナ部71から必要なパケット分のデータを受信し、データを表示部62等に表示するためのチューナーとしての動作を行う。なお、上述したように「電源の発電動作」の例として「発電シートの巻き取りから引き出し」を挙げたが、その他にも別途材料や部品等を組み込むことにより、「ボタンを押す」、「ページを捲る(捲った後、元に戻す)」、「折りたたむ(閉じて開く)」、「押さえ付ける(掌で挟んで押し潰すような動作)」、「踏みつける」、「手で挟む、又は手で擦る(体温や摩擦熱による熱電効果を利用した発電)」、「吹く(息を吹きかける)」、「声を発する」、「傾ける(揺する、僅かに振る)」、「物体(例えば、磁石等)を近付ける(置く)」、「レバーを引く(押す)」等の動作を利用することも可能である。
【0109】
ここで、受信開始指令を受けると、受信を開始する。また、受信動作では、例えば必要なパケット分の情報等を記憶部73に蓄える。なお、記憶部73は、表示部62、操作結果表示部63、及び操作部64における各表示内容を記憶しておき、電力供給時に記憶されたそれまでの情報を表示させることができる。
【0110】
ここで、受信した放送におけるチャンネルの選択が必要な場合には、操作部64等でチャンネルを選択できるようにすることも可能であるが、選択動作を表示部62等に表示させると無駄な電力を消費してしまうため、チャンネル選択については情報表示装置60に例えばディップスイッチ等のチャンネル選択機能を設けて、その機能を用いてチャンネルを選択することもできる。また、情報表示装置60における表示番組を特定局番専用とすることもできる。これにより、回路規模及び消費電力等を抑えることができる。
【0111】
次に、情報表示装置60は、受信開始指令を受けた後の最初の画面表示で蓄積されたデータの中からメニュー画面を表示する。その際、利用者からの指示によって画面表示が変わる部分(カーソル等)だけは別扱いとして、操作結果表示部63に表示するよう制御を行う。また、操作結果表示部63と表示部62とを別画面とせずに、表示部62の中の限られた領域のみを操作に応じて書き換えることで消費電力の節減、書き換え時間の削減を図ることもできる。
【0112】
なお、本実施形態における表示部62等は、メモリ性を有するため、次の書き換え動作を行うまでは最後に見た画面が保持されている。また、情報表示装置60は、表示されている画面のデータ(情報)を見たくない又は見られたくない場合には、保持されているメモリの内容を消去することもできる。その際には、シートを巻き取り部75に巻き取る動作を行えば、発生した電力により消去が行われるようにすればよい。これにより、データの秘匿性を確保することができる。
【0113】
また、操作部64は、必要なデータを選択するための最低限の機能を有していればよく、例えば図12(a)に示すように、操作部64に示されたカーソルを上又は下に移動させるための上下矢印キーだけを有する(なお、その他には受信開始指令ボタンを有する)。
【0114】
例えば、図12(a)に示すように、上下矢印キーを使って操作結果表示部63に表示される情報名(タイトル、番組名、チャンネル名)の反転表示されている項目を次々と変えて、所望の項目まで移動させる機能を持たせることができる。なお、実際に反転表示された情報が表示部62に表示される。
【0115】
また、情報表示装置60は、図12(b)に示すように、表示部62に表示された記号や数字等により箇条書きされた情報リストから、見たい情報を選択ボタンにより選択させるように表示部に表示させる機能を持たせることもできる。したがって、それぞれのボタンを押すことで選択操作をすることができ、これにより、カーソル等を使って選択することで生じる書き換えの必要性を減らし、同時に消費電力を減らすことができる。また、情報表示装置60は、所望の項目を反転表示させた後に、決定操作(選択した項目を実行させる操作)を行う。
【0116】
<発電動作の具体的説明>
ここで、上述した発電動作について具体的に説明する。本実施形態では、高分子圧電体を有する発電部を一体化した表示素子(以下、シート)における操作が、電源の発電動作そのものに相当する。そのため、例えば、上述のように、上下矢印キーを使って操作結果表示部63に表示される項目を選択したのち、シートを巻き取り部75に巻き取る動作(具体的には、例えばシートが巻き取り部75の中心軸に結合されたバネ等の巻き取り部材で巻き取られている場合、画面を閲覧する際に巻き取られないように抑えていたロックを外す動作等)を行うと、シートが巻き取られる場合に受ける歪みにより電力が発生する。
【0117】
また、完全に巻き取られたシートを巻き取り部75から引き出すことにより供給される電力を受けて、画面を閲覧できるようになるときには、選択された画面が表示されているが、そのときにもシートが引き出されるときに受ける(解放される)歪みにより電力が発生する(ロールスクリーンの巻き取り・引き出しと同じ原理)。また、本実施形態では、コンデンサ、二重電気層キャパシタ等を利用し、発電した電力を一時的に蓄えておく機能を備えていてもよい。
【0118】
また、情報が画面内に一度に表示しきれない場合が起こり得るが、このような場合には、通常、複数のページとして提示され、データをページ送りによって見ることになる。本実施形態では、ページ送り(次画面表示)指令が電源の発電動作そのものに相当するため、上述の巻き取り・引き出し動作によりページ送りを行う際に電力が供給され、動作の終了時には、次のページ(次画面)が表示されている。
【0119】
更に、複数のページが存在する場合には、上述の動作を繰り返せばよい。ここで、最終ページの次のページは、初めのメ二ュー画面になっており、ここに戻れることで、所望の情報を選択する操作を行うことができ、別の情報を見ることができる。また、データの更新が必要なとき(長期間、不使用状態が続いた後の再開も含む)には、操作部64の受信開始指令ボタンを押下することで前の動作に戻り、最新データの受信から操作を続行することができる。
【0120】
また、最終ページに行かずともメニュー画面に戻れるように、例えば操作結果表示部63に「メニューへ」という選択肢を付加しておくこともできる。なお、この機能は、利便性と消費電力とのトレードオフの一つの例である。
【0121】
なお、上述した本実施形態における情報表示端末60において、駆動部74は、発電部65から得られる電力によりチューナー部(放送波受信部)72、記憶部73、操作部64、及び表示部62を動作させていたが、本発明においてはこの限りではなく、少なくとも1つを動作させてもよい。これにより、例えば駆動部74によりチューナー部72と表示部62を動作させて、緊急放送等のある特定の情報のみを使用者に選択させずに表示だけさせるようにしてもよく、また駆動部74によりチューナー部72と記憶部73を動作させて、チューナー部72に入力された情報を一時的に記憶部73に蓄えておき、後で駆動部74により表示部62を動作させて記憶部73に記憶した情報を閲覧するようにしてもよい。
【0122】
上述したように本発明によれば、電力の消費を低減させ、耐久性を高くするための表示素子及び該表示素子を備えた情報表示装置を提供することができる。また、本発明では、情報を見ようという操作が発電動作となる構成であるため、利用者は自然に発電動作を行い、簡単かつ確実に情報を得ることができる。
【0123】
なお、本発明を適用した情報表示装置を、例えば災害対策として一世帯に1台、できれば、個人に1台、緊急避難グッズとして配備しておく。これにより、非常時には、この装置を持ち出すことにより避難先で電力供給がない状態でも、放送を通して配信される最低限の災害・避難情報を得ることが可能となる。
【0124】
また、災害時の避難場所になる場所に、個人用端末を何台か常備しておくことで、緊急避難グッズとしで持ち出せなかった人でも、貸し出しを受けて情報を得ることが可能となる。
【0125】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】第1の実施形態における表示素子に用いられる発電素子の断面の一例を示す図である。
【図2】発電素子と表示素子とを一体化した表示端末の概略の一例示す断面図である。
【図3】本実施形態における表示端末の駆動状態を説明するための一例を示す図である。
【図4】発電素子を湾曲又は屈曲させた時に発生する電圧の時間波形の一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態における表示素子の実施例1の概略構成の一例を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態における表示素子の実施例2の概略構成の一例を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態における表示素子の実施例3の概略構成の一例を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態における表示素子の実施例4の概略構成の一例を示す断面図である。
【図9】第2の実施形態における表示部の動作例を説明するための図である。
【図10】本発明における情報表示装置の一構成例を示す図である。
【図11】ケース内部の機能構成の一例を示す図である。
【図12】本実施形態における表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
10 発電素子
11 プラスチック基板
12 電極
13 PVDFフィルム
14 保護フィルム
20,30,50 表示端末
21 透明基板
22 表示素子用電極
23 プラスチック基板
24 導線
25 反射型表示素子(マイクロカプセル)
26,32,40,62 表示部
31,65 発電部
41 ポリエチレンテレフタラート
42 コレステリック液晶材料
43 応力発光材料
44 アルミニウム
45 PVDF
51 ケース
52 丸棒
60 情報表示装置
61 ケース
63 操作結果表示部
64 操作部
66 取手部
71 アンテナ部
72 チューナー部
73 記憶部
74 駆動部
75 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の圧電体を有する発電素子からなる発電部と、
前記発電部の上に形成されるメモリ性を有する表示部とを備え、
前記表示部は、前記発電素子に対して圧力を与えたときに生じる電力により提示情報を表示することを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記発電素子は、
ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンと3フッ化エチレンの共重合体、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー共重合体、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体のうち少なくとも一つを含む高分子圧電体からなることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記発電部は、
前記フィルム状の発電素子を湾曲又は屈曲させることにより発電を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記発電部は、
前記フィルム状の発電素子を湾曲又は屈曲させることにより前記表示部の書き換えを行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記発電素子の上に形成され、外部から与えられた圧力により発光する応力発光部を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示素子。
【請求項6】
前記応力発光部は、
長残光性を有する材料を混合又は積層されて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の表示素子。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示素子を備えた情報表示装置において、
放送波を受信する放送波受信部と、
前記放送波受信部により受信したデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報の中から閲覧する情報を選択操作させるための操作部と、
前記操作部により選択された情報を表示するメモリ性を有する表示部と、
前記発電部から得られる電力により前記放送波受信部、前記記憶部、前記操作部、及び前記表示部のうち、少なくとも1つを駆動させる駆動部とを備えることを特徴とする情報表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、
前記フィルム状の発電素子を湾曲又は屈曲させることにより、メモリに記憶された情報を消去することを特徴とする請求項7に記載の情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−85528(P2010−85528A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252374(P2008−252374)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】