説明

表示装置およびその駆動方法、ならびにバリア装置およびその製造方法

【課題】液晶バリアの応答特性を改善することができる表示装置を得る。
【解決手段】映像を表示する表示部と、光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリア(開閉部11,12)を有する液晶バリア部10とを備える。上記液晶バリア部は、液晶層300と、液晶層を挟むように構成された第1の基板(駆動基板310)および第2の基板(対向基板320)とを有し、第1の基板は、液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された駆動電極(透明電極110,120)を有し、第2の基板は、第1の共通電極(透明電極層322)と、第1の共通電極と液晶層との間に形成された第2の共通電極(透明電極層324)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体視表示が可能なパララックスバリア方式の表示装置およびその駆動方法、そのような表示装置に用いられるバリア装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体視表示を実現できる表示装置が注目を集めている。立体視表示は、互いに視差のある(視点の異なる)左眼映像と右眼映像を表示するものであり、観察者が左右の目でそれぞれを見ることにより奥行きのある立体的な映像として認識することができる。また、互いに視差がある3つ以上の映像を表示することにより、観察者に対してより自然な立体映像を提供することが可能な表示装置も開発されている。
【0003】
このような表示装置は、専用の眼鏡が必要なものと、不要なものとに大別されるが、観察者にとっては専用の眼鏡は煩わしく感じるものであり、専用の眼鏡が不要なものが望まれている。専用の眼鏡が不要な表示装置としては、例えば、レンチキュラーレンズ方式や、視差バリア(パララックスバリア)方式などがある。これらの方式では、互いに視差がある複数の映像(視点映像)を同時に表示し、表示装置と観察者の視点との相対的な位置関係(角度)によって見える映像が異なるようになっている。例えば、特許文献1には、バリアとして液晶素子を用いた、パララックスバリア方式の表示装置が開示されている。
【0004】
ところで、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)では、例えばVA(Vertical Alignment)モードの液晶がしばしば用いられている。このような液晶表示装置では、液晶分子は、電圧無印加時(オフ状態)にはその長軸方向が基板面に対して垂直な方向に沿った配向となるが、電圧印加時(オン状態)には、その電圧の大きさに応じて液晶分子が倒れた(傾いた)配向となる。よって、電圧無印加の状態において液晶層に電圧が印加され、基板面に垂直に配向していた液晶分子が倒れる際、その倒れる方向が任意であるため、液晶分子の配向が乱れるおそれがある。この場合、このような液晶表示装置では、電圧に対する応答が遅くなってしまう。
【0005】
そこで、電圧応答時における液晶分子の倒れる方向を規制するために、予め液晶分子を特定の方向に傾けて配列させておく(いわゆるプレチルトを付与する)手法が利用されている。例えば、特許文献2には、画素電極に複数のスリットを設け、対向電極をベタ形成(スリットなし)すると共に、ポリマーにより液晶分子をプレチルト状態に保持するPSA(Polymer Sustained Alignment)方式が提案されている。このようなプレチルトを用いた手法によれば、液晶分子の電圧に対する応答特性を改善できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−119889号公報
【特許文献2】特開2002−107730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パララックスバリア方式の表示装置において、液晶素子を用いてバリアを構成した場合でも、そのバリアの応答特性の改善が望まれている。しかしながら、その具体的な方法については、まだ提案されていない。
【0008】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、液晶バリアの応答特性を改善することができる、表示装置およびその駆動方法、ならびにバリア装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の表示装置は、表示部と、液晶バリア部とを備えている。表示部は、映像を表示するものである。液晶バリア部は、光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリアを有するものである。上記液晶バリア部は、液晶層と、液晶層を挟むように構成された第1の基板および第2の基板とを有し、第1の基板は、液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された駆動電極を有し、第2の基板は、第1の共通電極と、第1の共通電極と液晶層との間に形成された第2の共通電極とを有するものである。
【0010】
本開示の表示装置の駆動方法は、光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリアを駆動し、液晶バリアの駆動に同期して映像を表示し、液晶バリアを駆動する際、液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された複数の駆動電極に駆動信号を印加し、複数の駆動電極に対して液晶層を介して離間して形成された第1の共通電極および第1の共通電極と液晶層との間に形成された第2の共通電極のうちの、少なくとも第1の共通電極に第1の共通信号を印加するものである。
【0011】
本開示のバリア装置は、液晶層と、液晶層を挟むように構成された第1の基板および第2の基板とを備えている。第1の基板は複数の駆動電極を有し、第2の基板は、第1の共通電極と、第1の共通電極と液晶層との間に形成された第2の共通電極とを有するものである。
【0012】
本開示のバリア装置の製造方法は、第1の基板に複数の駆動電極を形成する工程と、第2の基板に、第1の共通電極を形成し、その上に第1の共通電極と離間して第2の共通電極を形成する工程と、第1の基板と、第2の基板の、第1の共通電極および第2の共通電極が形成された側との間に液晶層を封止する工程と、少なくとも第2の共通電極および複数の駆動電極を通じて、液晶層に電圧を印加しつつ、液晶層を露光することにより、液晶層にプレチルトを付与する工程とを含むものである。
【0013】
本開示の表示装置およびその駆動方法、ならびにバリア装置およびその製造方法では、液晶バリア部の液晶バリアが透過状態になることにより、表示部において表示された映像が観察者に視認される。その際、液晶層の液晶分子は、駆動電極、第1の共通電極、および第2の共通電極の電圧に基づいて制御される。
【発明の効果】
【0014】
本開示の表示装置およびその駆動方法、バリア装置およびその製造方法によれば、第2の基板に第1の共通電極および第2の共通電極を備えるようにしたので、液晶バリアの応答特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示の実施の形態に係る立体表示装置の一構成例を表すブロック図である。
【図2】図1に示した立体表示装置の一構成例を表す説明図である。
【図3】図1に示した表示駆動部および表示部の一構成例を表すブロック図である。
【図4】図1に示した表示部の一構成例を表す説明図である。
【図5】図1に示した液晶バリア部の一構成例を表す説明図である。
【図6】図1に示した液晶バリア部に係る透明電極層の一構成例を表す説明図である。
【図7】図1に示した液晶バリア部に係る液晶分子の配向を表す模式図である。
【図8】図1に示した液晶バリア部のグループ構成例を表す説明図である。
【図9】図1に示した表示部および液晶バリア部の一動作例を表す模式図である。
【図10】図1に示した表示部および液晶バリア部の一動作例を表す他の模式図である。
【図11】図1に示した立体表示装置の一動作例を表すタイミング図である。
【図12】図1に示した液晶バリア部に係る液晶層における等電位分布を表す特性図である。
【図13】図1に示した液晶バリア部に係る液晶層における液晶分子の配向を表す模式図である。
【図14】図1に示した液晶バリア部の透過率を表す特性図である。
【図15】図1に示した液晶バリア部の製造工程を表すフローチャートである。
【図16】図1に示した液晶バリア部のプレチルト付与工程を表す説明図である。
【図17】実施の形態の比較例に係る液晶バリア部の一構成例を表す断面図である。
【図18】実施の形態の比較例に係る液晶バリア部の液晶層における液晶分子の配向を表す模式図である。
【図19】実施の形態の変形例に係る液晶バリア部における透明電極層の一構成例を表す説明図である。
【図20】実施の形態の他の変形例に係る液晶バリア部における透明電極層の一構成例を表す説明図である。
【図21】実施の形態の他の変形例に係る液晶バリア部における透明電極層の一構成例を表す説明図である。
【図22】実施の形態の他の変形例に係る液晶バリア部における透明電極層の一構成例を表す断面図である。
【図23】変形例に係る立体表示装置の一構成例を表す説明図である。
【図24】変形例に係る立体表示装置の一動作例を表す模式図である。
【図25】他の変形例に係る液晶バリア部の一構成例を表す平面図である。
【図26】他の変形例に係る表示部および液晶バリア部の一動作例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[構成例]
(全体構成例)
図1は、第1の実施の形態に係る立体表示装置1の一構成例を表すものである。立体表示装置1は、液晶バリアを用いた、パララックスバリア方式の表示装置である。なお、本開示の実施の形態に係る表示装置の駆動方法、バリア装置、およびバリア装置の製造方法は、本実施の形態により具現化されるので、併せて説明する。立体表示装置1は、制御部40と、表示駆動部50と、表示部20と、バックライト駆動部42と、バックライト30と、バリア駆動部41と、液晶バリア部10とを備えている。
【0018】
制御部40は、外部より供給される映像信号Sdispに基づいて、表示駆動部50、バックライト駆動部42、およびバリア駆動部41に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する回路である。具体的には、制御部40は、表示駆動部50に対して映像信号Sdispに基づく映像信号Sを供給し、バックライト駆動部42に対してバックライト制御信号CBLを供給し、バリア駆動部41に対してバリア制御信号CBRを供給するようになっている。ここで、映像信号Sは、立体表示装置1が立体視表示を行う場合に、後述するように、それぞれが複数(この例では6つ)の視点映像を含む映像信号SA,SBから構成されるものである。
【0019】
表示駆動部50は、制御部40から供給される映像信号Sに基づいて表示部20を駆動するものである。表示部20は、この例では液晶表示部であり、液晶表示素子を駆動して、バックライト30から射出した光を変調することにより表示を行うようになっている。
【0020】
バックライト駆動部42は、制御部40から供給されるバックライト制御信号CBLに基づいてバックライト30を駆動するものである。バックライト30は、表示部20に対して面発光した光を射出する機能を有している。バックライト30は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)などを用いて構成されるものである。
【0021】
バリア駆動部41は、制御部40から供給されるバリア制御信号CBRに基づいてバリア駆動信号DRVを生成し、液晶バリア部10に供給するものである。液晶バリア部10は、バックライト30から射出し表示部20を透過した光を透過(開動作)または遮断(閉動作)するものであり、液晶を用いて構成された複数の開閉部11,12(後述)を有している。
【0022】
図2は、立体表示装置1の要部の一構成例を表すものであり、(A)は立体表示装置1の分解斜視構成を示し、(B)は立体表示装置1の側面図を示す。図2に示したように、立体表示装置1では、これらの各部品は、バックライト30、表示部20、および液晶バリア部10の順に配置されている。つまり、バックライト30から射出した光は、表示部20および液晶バリア部10を介して、観察者に届くようになっている。
【0023】
(表示駆動部50および表示部20)
図3は、表示駆動部50および表示部20のブロック図の一例を表すものである。表示駆動部50は、タイミング制御部51と、ゲートドライバ52と、データドライバ53とを備えている。タイミング制御部51は、ゲートドライバ52およびデータドライバ53の駆動タイミングを制御するとともに、制御部40から供給された映像信号Sを映像信号S1としてデータドライバ53へ供給するものである。ゲートドライバ52は、タイミング制御部51によるタイミング制御に従って、表示部20内の画素Pixを行ごとに順次選択して、線順次走査するものである。データドライバ53は、表示部20の各画素Pixへ、映像信号S1に基づく画素信号を供給するものである。具体的には、データドライバ53は、映像信号S1に基づいてD/A(デジタル/アナログ)変換を行うことにより、アナログ信号である画素信号を生成し、各画素Pixへ供給するようになっている。
【0024】
図4は、表示部20の一構成例を表すものであり、(A)は画素Pixの回路図の一例を示し、(B)は表示部20の断面構成を示す。
【0025】
画素Pixは、図4(A)に示したように、TFT(Thin Film Transistor)素子Trと、液晶素子LCと、保持容量素子Cとを備えている。TFT素子Trは、例えばMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)により構成されるものであり、ゲートがゲート線Gに接続され、ソースがデータ線Dに接続され、ドレインが液晶素子LCの一端と保持容量素子Cの一端に接続されている。液晶素子LCは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端は接地されている。保持容量素子Cは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端は保持容量線Csに接続されている。ゲート線Gはゲートドライバ52に接続され、データ線Dはデータドライバ53に接続されている。
【0026】
表示部20は、図4(B)に示したように、駆動基板207と対向基板208との間に、液晶層203を封止したものである。駆動基板207は、透明基板201と、画素電極202と、偏光板206aとを有している。透明基板201は、上記TFT素子Trを含む画素駆動回路(図示せず)が形成されたものであり、この透明基板201上には、画素Pix毎に画素電極202が配設されている。そして、透明基板201の、画素電極202が配設された面とは反対の面には、偏光板206aが貼り付けられている。対向基板208は、透明基板205と、対向電極204と、偏光板206bとを有している。透明基板205には、図示しないカラーフィルタやブラックマトリクスが形成されており、更に液晶層203側の面には、対向電極204が各画素Pixに共通の電極として配設されている。透明基板205の、対向電極204が配設された面とは反対の面には、偏光板206bが貼り付けられている。偏光板206aおよび偏光板206bは、互いにクロスニコルまたはパラレルニコルとなるように貼り合わせられている。
【0027】
(液晶バリア部10およびバリア駆動部41)
図5は、液晶バリア部10の一構成例を表すものであり、(A)は液晶バリア部10における開閉部の配置構成を示し、(B)は(A)の液晶バリア部10のV−V矢視方向の断面構成を示す。なお、この例では、液晶バリア部10はノーマリーブラック動作を行うものとする。つまり、液晶バリア部10は、駆動されていない状態では光を遮断するものとする。
【0028】
液晶バリア部10は、いわゆるパララックスバリアであり、図5(A)に示したように、光を透過または遮断する複数の開閉部(液晶バリア)11,12を有している。これらの開閉部11,12は、立体表示装置1が通常表示(2次元表示)および立体視表示のどちらを行うかにより、異なる動作を行う。具体的には、開閉部11は、後述するように、通常表示の際には開状態(透過状態)になり、立体視表示を行う際には、閉状態(遮断状態)となるものである。開閉部12は、後述するように、通常表示の際には開状態(透過状態)、立体視表示の際には、時分割的に開閉動作を行うものである。
【0029】
これらの開閉部11および開閉部12は、この例ではY方向に延在して設けられている。この例では、開閉部11の幅E1と、開閉部12の幅E2とは、互いに異なっており、ここでは例えばE1>E2となっている。但し、開閉部11,12の幅の大小関係はこれに限定されず、E1<E2であってもよく、また、E1=E2であってもよい。このような開閉部11,12は、液晶層(後述する液晶層300)を含んで構成されており、この液晶層300への駆動電圧によって、開閉が切り替わるようになっている。
【0030】
液晶バリア部10は、図5(B)に示したように、駆動基板310と、対向基板320との間に液晶層300を備えたものである。
【0031】
駆動基板310は、透明基板311と、透明電極層312と、配向膜315と、偏光板316とを備えている。透明基板311は、例えばガラス等から構成されるものであり、その表面には、図示しないTFTが形成されている。そしてその上には、図示しない平坦化膜を介して透明電極層312が形成されている。透明電極層312は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により構成されている。この透明電極層312の上には、配向膜315が形成されている。配向膜315としては、例えばポリイミドやポリシロキサン等の垂直配向剤が使用可能である。駆動基板310の、透明電極層312などが形成された面とは反対の面には、偏光板316が貼り付けられている。
【0032】
対向基板320は、透明基板321と、透明電極層322と、絶縁層323と、透明電極層324と、配向膜325と、偏光板326とを備えている。透明基板321は、透明基板311と同様に、例えばガラス等から構成されるものである。この透明基板321の上には、透明電極層322が形成されている。透明電極層322は、全面にわたって一様に形成された電極である。そして、透明電極層322の上には、絶縁層323が形成されている。絶縁層323は、例えば、SiNにより構成される。その絶縁層323の上には、透明電極層324が形成されている。透明電極層322,324は、透明電極層312と同様に、例えばITO等の透明導電膜により構成されている。透明電極層324は、後述するように、全面にわたって一様に形成された電極に、複数のスリットが設けられたものである。そして、透明電極層324の上には、配向膜325が形成されている。配向膜325としては、配向膜315と同様に、例えばポリイミドやポリシロキサン等の垂直配向剤が使用可能である。対向基板320の、透明電極層322,324などが形成された面とは反対の面には、偏光板326が貼り付けられている。偏光板316および偏光板326は、互いにクロスニコルになるように貼り合わせられている。具体的には、例えば、偏光板316の透過軸は水平方向Xに配置され、偏光板326の透過軸は垂直方向Yに配置されている。
【0033】
液晶層300は、例えば、垂直配向型の液晶分子を含むものである。この液晶分子は、例えば長軸および短軸をそれぞれ中心軸として回転対称な形状をなし、負の誘電率異方性(長軸方向における誘電率が短軸方向よりも小さい性質)を示すものである。
【0034】
透明電極層312は、複数の透明電極110,120を有している。また、透明電極層322,324は、複数の透明電極110,120に対応する部分にわたって、いわゆる共通電極として設けられている。これらの透明電極層322,324には、後述するように、液晶バリア部10を動作させる場合には、互いに等しい共通電圧Vcom(例えば0Vの直流電圧)が印加され、液晶バリア部10の製造時には、互いに異なる電圧が印加されるようになっている。透明電極層312の透明電極110、透明電極層322におけるその透明電極110に対応する部分、および透明電極層324におけるその透明電極110に対応する部分は、開閉部11を構成している。同様に、透明電極層312の透明電極120、透明電極層322におけるその透明電極120に対応する部分、および透明電極層324におけるその透明電極120に対応する部分は、開閉部12を構成している。このような構成により、液晶バリア部10では、透明電極層322,324に電圧を印加するとともに、透明電極110または透明電極120に電圧を選択的に印加することにより、液晶層300がその電圧に応じた液晶配向になり、開閉部11,12毎の開閉動作を行うことができるようになっている。
【0035】
図6は、液晶バリア部10における透明電極層312,324の一構成例を表すものであり、(A)は、透明電極層312における透明電極110,120および透明電極層324の一構成例を示し、(B)は(A)に示したVI−VI矢視方向における液晶バリア部10の断面構成を示す。
【0036】
透明電極110,120は、開閉部11,12の延伸方向と同じ方向(垂直方向Y)に延伸して形成されている。そして、透明電極層324には、透明電極110,120に対応する部分において、透明電極110,120の延伸方向に沿って複数のスリット領域70が並設されている。各スリット領域70は、幹スリット61,62と、枝スリット63とを有している。幹スリット61は、透明電極110,120の延伸方向と同じ方向(垂直方向Y)に延伸するように形成され、幹スリット62は、この幹スリット61と交差する方向(この例では水平方向X)に延伸するように形成されている。各スリット領域70には、幹スリット61および幹スリット62により区切られた4つのサブスリット領域(ドメイン)71〜74が設けられている。
【0037】
枝スリット63は、各サブスリット領域71〜74において、幹スリット61,62から延びるように形成されている。枝スリット63のスリット幅は、サブスリット領域71〜74において互いに等しくなっており、同様に、枝スリット63の間隔も、これらのサブスリット領域71〜74において互いに等しくなっている。サブスリット領域71〜74の枝スリット63は、各領域内において同じ方向に延伸している。サブスリット領域71の枝スリット63の延伸方向と、サブスリット領域73の枝スリット63の延伸方向とは、垂直方向Yを軸として対称になっており、同様に、サブスリット領域72の枝スリット63の延伸方向と、サブスリット領域74の枝スリット63の延伸方向とは、垂直方向Yを軸として対称になっている。また、サブスリット領域71の枝スリット63の延伸方向と、サブスリット領域72の枝スリット63の延伸方向とは、水平方向Xを軸として対称になっており、同様に、サブスリット領域73の枝スリット63の延伸方向と、サブスリット領域74の枝スリット63の延伸方向とは、水平方向Xを軸として対称になっている。この例では、具体的には、サブスリット領域71,74の枝スリット63は、水平方向Xから反時計まわりに所定の角度(例えば45度)だけ回転させた方向に延伸しており、サブスリット領域72,73の枝スリット63は、水平方向Xから時計まわりに所定の角度(例えば45度)だけ回転させた方向に延伸している。このように構成することにより、観察者が立体表示装置1の表示画面を観察する際、左方向および右方向から観察したときの視野角特性を対称にすることができるとともに、上方向および下方向から観察したときの視野角特性を対称にすることができる。
【0038】
透明電極層322は、複数の透明電極110,120に対応する部分にわたって一様に形成されている。すなわち、透明電極層322は、透明電極層324に形成された透明電極に対応する部分だけでなく、幹スリット61,62および枝スリット63に対応する部分にも形成されている。
【0039】
図7は、液晶層300における、電圧無印加時の液晶分子Mの配向を表すものである。液晶層300では、配向膜315,325との界面近傍の液晶分子Mの長軸方向が、配向膜315,325からの規制により基板面に略垂直となるように配向しつつ、その垂直方向から僅かに傾いた状態で保持されている。即ち、液晶層300の配向膜315,325との界面近傍では、いわゆるプレチルトが付与されている。その垂直方向からの傾き角(プレチルト角)θは、例えば3°程度である。このようなプレチルトは、液晶層300の配向膜315,325との界面近傍においてポリマーによって保持されており、この界面近傍の液晶分子の配向に倣って他の液晶分子(例えば液晶層300の厚み方向における中央付近の液晶分子)も同等の方向に配向している。
【0040】
この構成により、透明電極層312(透明電極110,120)、透明電極層322および透明電極層324に電圧を印加して、液晶層300の両側の電圧の電位差が大きくなると、液晶層300における光の透過率が増大し、開閉部11,12は遮断状態(閉状態)から透過状態(開状態)へ変化する。その際、上述したプレチルトにより、電圧の印加に対して液晶分子Mが素早く応答して倒れることにより、すばやく透過状態(開状態)へ変化する。一方、その電位差が小さくなると、液晶層300における光の透過率が減少し、開閉部11,12は遮断状態(閉状態)となる。
【0041】
なお、この例では、液晶バリア部10はノーマリーブラック動作を行うものとしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えばノーマリーホワイト動作を行うものであってもよい。この場合には、液晶層300に印加される電圧の電位差が大きくなると、開閉部11,12は遮断状態となり、その電位差が小さくなると、開閉部11,12は透過状態となる。なお、ノーマリーブラック動作とノーマリーホワイト動作の選択は、例えば、偏光板の偏光軸の調整により設定することができる。
【0042】
バリア駆動部41は、制御部40から供給されるバリア制御信号CBRに基づいて、バリア駆動信号DRVを生成し、液晶バリア部10の透明電極110(開閉部11)、および透明電極120(開閉部12)を駆動するものである。具体的には、後述するように、バリア駆動部41は、開閉部11を駆動する際には、透明電極110に対してバリア駆動信号DRVを印加し、開閉部12を駆動する際には、透明電極120に対してバリア駆動信号DRVを印加する。バリア駆動信号DRVは、開閉部11,12を閉動作(遮断状態)させる際には、共通電圧Vcom(例えば0V)を有する直流信号となり、開閉部11,12を開動作(透過状態)させる際には、交流信号となる。
【0043】
液晶バリア部10では、複数の開閉部12はグループを構成し、同じグループに属する複数の開閉部12は、立体視表示を行う際、同じタイミングで開動作および閉動作を行うようになっている。以下に、開閉部12のグループについて説明する。
【0044】
図8は、開閉部12のグループ構成例を表すものである。開閉部12は、この例では2つのグループを構成している。具体的には、並設された複数の開閉部12が、交互にグループAおよびグループBを構成するようになっている。なお、以下では、グループAに属する開閉部12の総称として開閉部12Aを適宜用い、同様に、グループBに属する開閉部12の総称として開閉部12Bを適宜用いるものとする。
【0045】
バリア駆動部41は、立体視表示を行う際、同じグループに属する複数の開閉部12が同じタイミングで開閉動作を行うように駆動する。具体的には、バリア駆動部41は、後述するように、グループAに属する複数の開閉部12Aに対してバリア駆動信号DRVAを供給し、グループBに属する複数の開閉部12Bに対してバリア駆動信号DRVBを供給し、時分割的に交互に開閉動作するように駆動する。
【0046】
図9は、立体視表示および通常表示(2次元表示)を行う場合の液晶バリア部10の状態を、断面構造を用いて模式的に表すものであり、(A)は立体視表示を行う一状態を示し、(B)は立体視表示を行う他の状態を示し、(C)は通常表示を行う状態を示す。液晶バリア部10には、開閉部11および開閉部12(開閉部12A,12B)が交互に配置されている。この例では、開閉部12Aは、表示部20の6つの画素Pixに1つの割合で設けられている。同様に、開閉部12Bは、表示部20の6つの画素Pixに1つの割合で設けられている。以下の説明では、画素Pixは、3つのサブピクセル(RGB)から構成されたピクセルとするが、これに限定されるものではなく、例えば、画素Pixがサブピクセルであってもよい。また、液晶バリア部10において、光が遮断される部分は斜線で示している。
【0047】
立体視表示を行う場合には、表示駆動部50に映像信号SA,SBが交互に供給され、表示部20はそれらに基づいて表示を行う。そして、液晶バリア部10では、開閉部12(開閉部12A,12B)が時分割的に開閉動作を行い、開閉部11が閉状態(遮断状態)を維持する。具体的には、映像信号SAが供給された場合には、図9(A)に示したように、開閉部12Aが開状態になるとともに、開閉部12Bが閉状態になる。表示部20では、後述するように、この開閉部12Aに対応した位置に配置された互いに隣接する6つの画素Pixが、映像信号SAに含まれる6つの視点映像に対応する表示を行う。これにより、観察者は、後述するように、例えば左眼と右眼とで異なる視点映像を見ることにより、表示された映像を立体的な映像として感じるようになっている。同様に、映像信号SBが供給された場合には、図9(B)に示したように、開閉部12Bが開状態になるとともに、開閉部12Aが閉状態になる。表示部20では、後述するように、この開閉部12Bに対応した位置に配置された互いに隣接する6つの画素Pixが、映像信号SBに含まれる6つの視点映像に対応する表示を行う。これにより、観察者は、後述するように、例えば左眼と右眼とで異なる視点映像を見ることにより、表示された映像を立体的な映像として感じるようになっている。立体表示装置1では、このように、開閉部12Aと開閉部12Bを交互に開放して映像を表示することにより、後述するように、表示装置の解像度を高めることができるようになっている。
【0048】
通常表示(2次元表示)を行う場合には、液晶バリア部10では、図9(C)に示したように、開閉部11および開閉部12(開閉部12A,12B)はともに開状態(透過状態)を維持するようになっている。これにより、観察者は、映像信号Sに基づいて表示部20に表示された通常の2次元映像をそのまま見ることができる。
【0049】
ここで、開閉部11,12は、本開示における「液晶バリア」の一具体例に対応する。駆動基板310は、本開示における「第1の基板」の一具体例に対応する。対向基板320は、本開示における「第2の基板」の一具体例に対応する。透明電極110,120は、本開示における「駆動電極」の一具体例に対応する。透明電極層322は、本開示における「第1の共通電極」の一具体例に対応し、透明電極層324は、本開示における「第2の共通電極」の一具体例に対応する。開閉部12(開閉部12A,12B)は、本発明における「第1の液晶バリア」の一具体例に対応し、開閉部11は、本発明における「第2の液晶バリア」の一具体例に対応する。
【0050】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の立体表示装置1の動作および作用について説明する。
【0051】
(全体動作概要)
まず、図1を参照して、立体表示装置1の全体動作概要を説明する。制御部40は、外部より供給される映像信号Sdispに基づいて、表示駆動部50、バックライト駆動部42、およびバリア駆動部41に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する。バックライト駆動部42は、制御部40から供給されるバックライト制御信号CBLに基づいてバックライト30を駆動する。バックライト30は、面発光した光を表示部20に対して射出する。表示駆動部50は、制御部40から供給される映像信号Sに基づいて表示部20を駆動する。表示部20は、バックライト30から射出した光を変調することにより表示を行う。バリア駆動部41は、制御部40から供給されるバリア制御命令CBRに基づいてバリア駆動信号DRVを生成し、液晶バリア部10に供給する。液晶バリア部10の開閉部11,12(12A,12B)は、バリア制御命令CBRに基づいて開閉動作を行い、バックライト30から射出し表示部20を透過した光を透過または遮断する。
【0052】
(立体視表示の詳細動作)
次に、いくつかの図を参照して、立体視表示を行う場合の詳細動作を説明する。
【0053】
図10は、表示部20および液晶バリア部10の動作例を表すものであり、(A)は、映像信号SAが供給された場合を示し、(B)は映像信号SBが供給された場合を示す。
【0054】
映像信号SAが供給された場合には、図10(A)に示したように、表示部20の画素Pixのそれぞれは、映像信号SAに含まれる6つの視点映像のそれぞれに対応する画素情報P1〜P6を表示する。このとき、画素情報P1〜P6は、開閉部12A付近に配置された画素Pixにそれぞれ表示される。映像信号SAが供給された場合には、液晶バリア部10では、開放部12Aが開状態(透過状態)になるとともに、開放部12Bが閉状態になるように制御されている。表示部20の各画素Pixから出た光は、開閉部12Aによりそれぞれ角度が制限されて出力される。観察者は、例えば左眼で画素情報P3を、右眼で画素情報P4を見ることにより、立体的な映像を見ることができる。
【0055】
映像信号SBが供給された場合には、図10(B)に示したように、表示部20の画素Pixのそれぞれは、映像信号SBに含まれる6つの視点映像のそれぞれに対応する画素情報P1〜P6を表示する。このとき、画素情報P1〜P6は、開閉部12B付近に配置された画素Pixにそれぞれ表示される。映像信号SBが供給された場合には、液晶バリア部10では、開放部12Bが開状態(透過状態)になるとともに、開放部12Aが閉状態になるように制御されている。表示部20の各画素Pixから出た光は、開閉部12Bによりそれぞれ角度が制限されて出力される。観察者は、例えば左眼で画素情報P3を、右眼で画素情報P4を見ることにより、立体的な映像を見ることができる。
【0056】
このように、観察者は、左眼と右眼とで、画素情報P1〜P6のうちの異なる画素情報を見ることとなり、観察者は立体的な映像として感じることができる。また、開閉部12Aと開閉部12Bを時分割的に交互に開放して映像を表示することにより、観察者は、互いにずれた位置に表示される映像を平均化して見ることとなる。よって、立体表示装置1は、開閉部12Aのみをもつ場合に比べ、2倍の解像度を実現することが可能となる。言い換えれば、立体表示装置1の解像度は、2次元表示の場合に比べ1/3(=1/6×2)で済むこととなる。
【0057】
図11は、立体表示装置1における表示動作のタイミング図を表すものであり、(A)は表示部20の動作を示し、(B)はバックライト30の動作を示し、(C)はバリア駆動信号DRVAの波形を示し、(D)は開閉部12Aにおける光の透過率Tを示し、(E)はバリア駆動信号DRVBの波形を示し、(F)は開閉部12Bにおける光の透過率Tを示す。
【0058】
図11(A)の縦軸は、表示部20の線順次走査方向(Y方向)の位置を示している。つまり、図11(A)は、ある時刻の、Y方向におけるある位置での表示部20の動作状態を示している。図11(A)において、“SA”は表示部20が映像信号SAに基づく表示を行っている状態を示し、“SB”は表示部20が映像信号SBに基づく表示を行っている状態を示している。
【0059】
立体表示装置1では、走査周期T1で行われる線順次走査により、開閉部12Aにおける表示(映像信号SAに基づく表示)と開閉部12Bにおける表示(映像信号SBに基づく表示)とを時分割的に行う。そして、表示周期T0ごとにこれらの表示を繰り返す。ここで、表示周期T0は、例えば、16.7[msec](60[Hz]の一周期分)にすることが可能である。この場合、走査周期T1は、4.2[msec](表示周期T0の4分の1)である。
【0060】
立体表示装置1は、タイミングt2〜t3の期間において、映像信号SAに基づく表示を行い、タイミングt4〜t5の期間において、映像信号SBに基づく表示を行う。以下に、その詳細を説明する。
【0061】
まず、タイミングt1〜t2の期間において、表示部20では、表示駆動部50から供給される駆動信号に基づき、最上部から最下部に向かって線順次走査が行われ、映像信号SAに基づく表示が行われる(図11(A))。バリア駆動部41は、バリア駆動信号DRVAとして、交流信号を開閉部12Aに係る透明電極120に印加する(図11(C))。これにより、液晶バリア部10では、開閉部12Aの光の透過率Tが上昇する(図11(D))。このタイミングt1〜t2の期間において、バックライト30は、消灯する(図11(B))。これにより、観察者は、表示部20における、映像信号SBに基づく表示から映像信号SAに基づく表示への過渡的な変化、および開閉部12における光の透過率Tの過渡的な変化を見ることがないので、画質劣化を低減することができる。
【0062】
そして、タイミングt2〜t3の期間において、表示部20では、表示駆動部50から供給される駆動信号に基づき、最上部から最下部に向かって線順次走査が行われ、映像信号SAに基づく表示が再度行われる(図11(A))。バリア駆動部41は、タイミングt2において、バリア駆動信号DRVAの電圧を反転させて開閉部12Aに係る透明電極120に印加する。液晶バリア部10では、開閉部12Aは、その光の透過率Tが十分に高くなって開状態となる(図11(D))。そして、バックライト30は、このタイミングt2〜t3の期間において点灯する(図11(B))。これにより、観察者は、タイミングt2〜t3の期間において、表示部20の映像信号SAに基づく表示を見ることができる。
【0063】
次に、タイミングt3〜t4の期間において、表示部20では、表示駆動部50から供給される駆動信号に基づき、最上部から最下部に向かって線順次走査が行われ、映像信号SBに基づく表示が行われる(図11(A))。バリア駆動部41は、バリア駆動信号DRVAとして、0Vの直流電圧を開閉部12Aに係る透明電極120に印加するとともに、バリア駆動信号DRVBとして、交流信号を開閉部12Bに係る透明電極120に印加する(図11(E))。これにより、液晶バリア部10では、開閉部12Aの光の透過率Tが低下するとともに(図11(D))、開閉部12Bの光の透過率Tが上昇する(図11(F))。このタイミングt3〜t4の期間において、バックライト30は消灯する(図11(B))。これにより、観察者は、表示部20における、映像信号SAに基づく表示から映像信号SBに基づく表示への過渡的な変化、および開閉部12における光の透過率Tの過渡的な変化を見ることがないので、画質劣化を低減することができる。
【0064】
そして、タイミングt4〜t5の期間において、表示部20では、表示駆動部50から供給される駆動信号に基づき、最上部から最下部に向かって線順次走査が行われ、映像信号SBに基づく表示が再度行われる(図11(A))。バリア駆動部41は、タイミングt4において、バリア駆動信号DRVBの電圧を反転させて開閉部12Bに係る透明電極120に印加する。液晶バリア部10では、開閉部12Bは、その光の透過率Tが十分に高くなって開状態となる(図11(F))。そして、バックライト30は、このタイミングt4〜t5の期間において点灯する(図11(B))。これにより、観察者は、タイミングt4〜t5の期間において、表示部20の映像信号SBに基づく表示を見ることができる。
【0065】
以上の動作を繰り返すことにより、立体表示装置1は、映像信号SAに基づく表示(開閉部12Aにおける表示)と、映像信号SBに基づく表示(開閉部12Bにおける表示)とを交互に繰り返して行う。
【0066】
(液晶バリア部10の液晶層300の動作)
次に、開閉部12に係る透明電極120(透明電極層312)、および透明電極層322,324に電圧を印加したときの、液晶層300の動作について説明する。なお、以下では、開閉部12を例に説明するが、開閉部11(透明電極120および透明電極層322,324)の場合も同様である。
【0067】
図12は、透明電極層324,322に電圧Va,Vbをそれぞれ印加した場合の、液晶層300における、図6のVI−VI矢視方向の等電位分布を表すものである。なお、図12では、説明の便宜上、透明電極層312(透明電極120)および透明電極層322,324も併せて示している。この例では、透明電極層324に印加する電圧Vaは10Vであり、透明電極層322に印加する電圧Vbは、それぞれ、12V(図12(A))、10V(図12(B))、7.5V(図12(C))、5V(図12(D))、0V(図12(A))である。なお、この例では、透明電極層312(透明電極120)には0Vが印加されている。
【0068】
図12に示したように、透明電極層322に印加する電圧Vbにより、液晶層300内の等電位分布は変化する。具体的には、例えば、電圧Vbが0Vである場合には、液晶層300内には、図12(E)に示したように、透明電極層324において電極が形成されている部分に対応する領域において等電位面Lが孤を描くように、等電位分布が形成される。そして、この電圧Vbを高くするに従い、図12(B)〜(D)に示したように、液晶層300内の等電位分布が平坦になっていく。一方、例えば、電圧Vbが電圧Vaよりも十分高い場合には(例えばVb=12V)、図12(A)に示したように、液晶層300内には、透明電極層324において電極が形成されていない部分に対応する領域において等電位面Lが孤を描くように、等電位分布が形成される。
【0069】
図13は、液晶バリア部10の開動作時(透過動作時)における、液晶層300の液晶分子Mの配向を表すものである。この例では、電圧Va,Vbは共に10Vであり、透明電極層312には0Vが印加されている。なお、この条件は、電圧Va,Vbが共に0Vであり、透明電極層312(透明電極120)には−10Vが印加されている場合と同等である。図13に示したように、液晶分子Mは、その長軸が等電位面Lと平行になるように配向する。この条件では、等電位分布が液晶層300内においてほぼ平坦になることから、液晶層内19の液晶分子Mは、その長軸が基板面に平行な方向になるように、ほぼ一様に配向する。
【0070】
図14は、様々な電圧Vbを透明電極層322に印加したときの、液晶層300の透過率Tを表すものである。なお、図12,13と同様に、電圧Vaは10Vであり、透明電極層312には0Vが印加されている。
【0071】
電圧Vbを8Vから高くしていくと、図14に示したように、液晶層300の透過率Tは上昇していく。そして、この例では、電圧Vbが10.5V程度になったときに、最も透過率Tが高くなる。そして、電圧Vbをさらに高くすると、透過率Tが減少する。
【0072】
液晶層300の透過率Tは、液晶分子Mが基板面に平行な方向に配向することにより高くなる。よって、この例は、透明電極層322に対して10.5V程度の電圧Vbを印加したときに、等電位分布が最も平坦になることを意味している。このように、等電位分布を平坦にするために透明電極層322に対して印加する電圧Vb(10.5V)が、透明電極層324に印加する電圧Va(10V)よりも若干高いのは、絶縁層323に起因している。すなわち、透明電極層322に10.5Vを印加すると、透明電極層324のスリット部分を介して、駆動基板310の透明電極層312との間の液晶層300および絶縁層313において電界が生じ、そのスリット部分における電圧が約10Vになる。これにより、透明電極層324において、電極が配置されている部分と、配置されていない部分(スリット部分)とで電圧がほぼ同じになり、液晶層300に印加される電圧が均一になる。このように、透明電極層322に印加する電圧を、透明電極層324に印加する電圧に比べて、絶縁層323の分だけ高くすることにより、等電位分布を平坦にすることができる。
【0073】
このように、液晶バリア部10では、透明電極層322を設け、開閉部11,12を開状態(透過状態)にする際、この透明電極層322に電圧を印加するようにしたので、液晶層300における等電位分布を平坦にすることができ、透過率Tを高くすることができる。
【0074】
以上に説明したように、液晶バリア部10を動作させるときは、液晶層300の透過率Tを高めるために、液晶層300内における等電位分布が平坦になるように(例えば図12(B))、透明電極層322,324を駆動する。具体的には、バリア駆動部41は、上述したように、開閉部11,12を開状態(透過状態)にする際に、例えば、透明電極層322,324に0Vを印加するとともに、透明電極層312に対して、低レベルが−10Vであり、高レベルが10Vである交流信号を印加する(図11(C),(E))。一方、液晶バリア部10を製造する際には、プレチルトを付加するために、電界歪み(横電界)を有する等電位分布になるように(例えば図12(C))、透明電極層322,324を駆動する。以下に、液晶バリア部10の製造工程について説明する。
【0075】
(液晶バリア部10の製造工程)
図15は、液晶バリア部10の製造工程を表すものである。液晶バリア部10の製造工程は、バリア製造工程P10と、プレチルト付与工程P20とを含んでいる。バリア製造工程P10では、駆動基板310および対向基板320を製造し、その後、これらの駆動基板310および対向基板320の間に液晶層300を形成し、封止する。プレチルト付与工程では、駆動基板310および対向基板320の各電極に電圧を印加しつつUVを照射することによりプレチルトを付与し、最後に偏光板316,326を貼り合わせる。以下にその詳細を説明する。
【0076】
まず、バリア製造工程P10において、駆動基板310を製造する(ステップS11)。具体的には、まず、透明基板311の表面に、透明電極層312を例えば蒸着法やスパッタ法により成膜した後、フォトリソグラフィ法により矩形状にパターニングし、透明電極110,120を形成する。尚、平坦化膜にはコンタクトホールを設け、このコンタクトホールを介して透明電極層312を透明基板311上に形成されたメタル等からなる外周配線に電気的に接続する。そして、透明電極層312の表面、および透明電極層312における透明電極110,120の隙間(スリット)により露出した平坦化膜の表面を覆うように、例えばスピンコート法により垂直配向剤を塗布し、ベークすることにより、配向膜315を形成する。
【0077】
次に、対向基板320を製造する(ステップS12)。具体的には、まず、透明基板321の表面に、透明電極層322を例えば蒸着法やスパッタ法により成膜する。続いて、この透明電極層322上に、絶縁層323を例えばプラズマCVD法により、所望の厚みとなるように成膜する。次いで、絶縁層323上に、透明電極層324を、例えば蒸着法やスパッタ法により成膜した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングして、幹スリット61,62や枝スリット63を形成する。そして、透明電極層324の表面、および透明電極層324における幹スリット61,62や枝スリット63により露出した絶縁層323の表面を覆うように、例えばスピンコート法により垂直配向剤を塗布し、ベークすることにより、配向膜325を形成する。
【0078】
次に、液晶層形成および封止を行う(ステップS13)。具体的には、まず、ステップS11において製造した駆動基板310の周縁領域に、例えばUV硬化性や熱硬化性のシール部を印刷する。そして、このシール部に囲まれた領域内に、例えばUV硬化性のモノマーを混入させた液晶を滴下注入することにより液晶層300を形成する。この後、駆動基板310の上に、対向基板320を、例えば感光性のアクリル樹脂よりなるスペーサを介して重ね合わせ、シール部を硬化させる。このようにして、駆動基板310および対向基板320の間に液晶層300が封止される。
【0079】
次に、プレチルト付与工程P20において、電圧を印加する(ステップS21)。具体的には、対向基板320において、透明電極層324に電圧Va(例えば10V)を印加するとともに、透明電極層322に、電圧Vaよりも低い電圧Vb(例えば7.5V)を印加する。また、駆動基板310において、透明電極層312の全ての透明電極110,120に対して0Vを印加する。これにより、液晶層300には、例えば図12(C)に示したように電界歪み(横電界)が発生し、液晶分子Mは、透明電極層324のサブスリット領域71〜74のパターンに応じて傾倒する。
【0080】
次に、UVを照射する(ステップS22)。具体的には、ステップS21で示したように電圧を印加しつつ、UV照射を行う。
【0081】
図16は、プレチルトを付与するときの液晶層300における液晶分子Mの状態を表すものであり、(A)はUV照射時の状態を示し、(B)はUV照射後の状態を示す。図16(A)に示したように、透明電極層322,324、および透明電極層312の全ての透明電極110,120に対してそれぞれ電圧を印加し、液晶分子Mが傾いた状態で、UV照射を行うことにより、液晶層300に混入したモノマーが、配向膜315,325との界面近傍において硬化する。その後、これらの全ての電極に0Vを印加すると、図16(B)示したように、その界面近傍に形成されたポリマーが、液晶分子Mを垂直方向から僅かに傾けた状態で保持する。このようにして、液晶分子Mにはプレチルト角θが付与される。
【0082】
次に、偏光板を貼り合わせる(ステップS23)。具体的には、透明基板311のうち液晶層300を封止している面とは反対の面に偏光板316を貼り合わせ、透明基板321のうち液晶層300を封止している面とは反対の面に偏光板326を貼り合わせる。その際、偏光板316、326は、ノーマリーブラック動作を行う液晶バリアを製造する場合において、互いにクロスニコル配置となるように貼り合わせる。
【0083】
以上により、液晶バリア部10が完成する。
【0084】
このように、液晶バリア部10では、透明電極層324を設け、液晶バリア部10の製造時に、この透明電極層324に電圧を印加するようにしたので、プレチルトを付与することができる。
【0085】
(比較例)
次に、比較例に係る液晶バリア部10Rについて説明し、その比較例と対比して本実施の形態の作用を説明する。
【0086】
本比較例は、対向基板において、透明電極層322を含まない対向基板320Rを用いて、液晶バリア部10Rを構成したものである。その他の構成は、本実施の形態(図1など)と同様である。
【0087】
図17は、本比較例に係る液晶バリア部10Rの一構成例を表すものである。液晶バリア部10Rは、対向基板320Rを有している。対向基板320Rは、本実施の形態に係る対向基板320において、透明電極層322および絶縁層323を省いたものである。
【0088】
図18は、本比較例に係る液晶バリア部10Rの開動作時(透過動作時)における、液晶層300の液晶分子Mの配向を表すものである。本比較例に係る液晶バリア部10Rでは、本実施の形態に係る液晶バリア部10と異なり、対向基板に透明電極層322がないため、図18に示したように、液晶層300内において、等電位分布を一様とすることができず、透明電極層324の電極の各端部に対応する部分Zにおいて電界歪み(横電界)が発生する。液晶分子Mは、その長軸が等電位面と平行になるように配向するため、この部分Zにおいて、液晶分子Mは、基板面に対して平行な向きからずれ、液晶層300の透過率Tが低下してしまう。具体的には、図14に点線で示したように、本比較例に係る液晶バリア部10Rの透過率Tは低い値(例えば0.88程度)になってしまう。
【0089】
一方、本実施の形態に係る液晶バリア部10では、透明電極層322を設け、開閉部11,12を開状態(透過状態)にする際に、透明電極層322に電圧を印加するようにしたので、この部分Zにおいて電界歪み(横電界)の発生を抑えることができるため、液晶層300の透過率Tの低下を抑えることができる。
【0090】
[効果]
以上のように本実施の形態では、透明電極層322を設け、開閉部を開状態(透過状態)にする際に、この透明電極層322に電圧を印加するようにしたので、透明電極層324における電極部分だけでなく、スリット部分にも十分な電圧を印加することができるようになるため、液晶層における等電位分布を平坦にすることができ、透過率を高くすることができる。
【0091】
また、本実施の形態では、透明電極層324を設け、液晶バリア部の製造時に、この透明電極層324に任意の電圧を印加できるようにしたので、プレチルト付与時の液晶配向を安定させることができ、動作時において、このプレチルトによりバリアの応答特性を改善することができる。
【0092】
また、本実施の形態では、液晶バリア部の製造時に、透明電極層322にも任意の電圧を印加するようにしたので、印加電圧によりプレチルト角を調整することができる。
【0093】
[変形例1]
上記実施の形態では、透明電極層324は、4つのサブスリット領域(ドメイン)71〜74を有するようにしたが、これに限定されるものではない。以下に、この透明電極層が2つのサブスリット領域を有する場合を例に説明する。
【0094】
図19は、本変形例に係る液晶バリア部における透明電極層312,424の一構成例を表すものである。透明電極層424の、透明電極110,120に対応する部分には、それぞれ、幹スリット61により区切られた2つのサブスリット領域81,82が設けられている。
【0095】
枝スリット63は、各サブスリット領域81,82において、幹スリット61から延びるように形成されている。サブスリット領域81,82の枝スリット63は、各領域内において同じ方向に延伸するとともに、サブスリット領域ごとに異なる方向に延伸している。サブスリット領域81の枝スリット63の延伸方向と、サブスリット領域82の枝スリット63の延伸方向とは、垂直方向Yを軸として対して対称になっている。この例では、具体的には、サブスリット領域81の枝スリット63は、水平方向Xから反時計まわりに所定の角度(例えば45度)だけ回転させた方向に延伸しており、サブスリット領域82の枝スリット63は、水平方向Xから時計まわりに所定の角度(例えば45度)だけ回転させた方向に延伸している。
【0096】
この場合でも、開閉部を開状態(透過状態)にする際に、透明電極層322に電圧を印加することにより、液晶層300における等電位分布を平坦にすることができ、透過率Tを高くすることができるとともに、液晶バリア部の製造時に、透明電極層424に電圧を印加することにより、プレチルトを付与することができる。
【0097】
[変形例2]
上記実施の形態では、透明電極層324は枝スリット63を有するようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、複数の枝状の電極を並設してもよい。以下に、その詳細を説明する。
【0098】
図20は、本変形例に係る液晶バリア部における透明電極層312,324Bの一構成例を表すものである。透明電極層324Bは、透明電極110,120に対応する部分において、透明電極110,120の延伸方向に延伸する幹部分61Bを有している。また、透明電極層324Bには、その幹部分61Bの延伸方向に沿って複数のサブ電極領域70Bが並設されている。各サブ電極領域70Bは、幹部分62Bと、枝部分63Bとを有している。幹部分62Bは、幹部分61Bと交差する方向に延伸するように形成されており、この例では、水平方向Xの方向に延伸している。各サブ電極領域70Bには、幹部分61Bおよび幹部分62Bにより区切られた4つの枝領域(ドメイン)71B〜74Bが設けられている。枝領域71B〜74Bの枝部分63Bは、各領域内において同じ方向に延伸している。これらの枝部分63Bの間の領域が、上記実施の形態における枝スリット63に対応する。なお、図20では、水平方向Xに隣接するサブ電極領域70は、互いに接続されていないが、これに限定されるものではなく、例えば、幹部分62Bを延ばすことにより互いに接続してもよい。
【0099】
図21は、上記変形例1に係る液晶バリア部に、本変形例を適用した場合の、透明電極層312,424Bの一構成例を表すものである。透明電極層424Bの、透明電極110,120に対応する部分には、それぞれ、幹部分61Bにより区切られた2つの枝領域81B,82Bが設けられている。枝領域81B,82Bの枝部分63Bは、各領域内において同じ方向に延伸している。これらの枝部分63Bの間の領域が、上記実施の形態における枝スリット63に対応する。
【0100】
[変形例3]
上記実施の形態では、バリア駆動部41は、液晶バリア部10を動作させる際、透明電極層322および透明電極層324の両方を駆動したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、透明電極層322のみを駆動してもよい。この場合、例えば、透明電極層324はフローティング状態にすることが可能である。
【0101】
[変形例4]
上記実施の形態では、開閉部11,12が開閉動作を行う際、透明電極層322,324にともに0Vを印加したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、0V以外の電圧を印加してもよいし、透明電極層322および透明電極層324に、互いに異なる電圧を印加してもよい。
【0102】
[変形例5]
上記実施の形態では、液晶バリア部10の製造時に、透明電極層322に対して電圧Vaよりも低い電圧Vbを印加したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、電圧Vaと等しい電圧Vb(例えば10V)を印加してもよい。この場合でも、例えば図12(B)に示したように電界歪(横電界)が発生するため、プレチルトを付与することができる。
【0103】
[変形例6]
上記実施の形態では、液晶バリア部10の製造時に、透明電極層322および透明電極層324の両方に電圧を印加したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、透明電極層324のみを駆動してもよい。この場合、例えば、透明電極層322はフローティング状態にすることが可能である。
【0104】
[変形例7]
上記実施の形態では、透明電極層322は、例えば図6(B)に示したように、全面にわたって一様に形成されたものとしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図22に示したように、透明電極層324において枝スリット63が形成されている部分に対応する位置に電極(透明電極層322B)を形成してもよい。その際、透明電極層322Bの電極と、透明電極層324の電極とは、図22において部分Powで示したように、互いにオーバーラップするように構成されるのが望ましい。
【0105】
以上、実施の形態およびいくつかの変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0106】
例えば、上記実施の形態等では、立体表示装置1のバックライト30、表示部20、液晶バリア部10は、この順に配置したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、図23に示したように、バックライト30、液晶バリア部10、表示部20の順に配置してもよい。
【0107】
図24は、本変形例に係る表示部20および液晶バリア部10の動作例を表すものであり、(A)は、映像信号SAが供給された場合を示し、(B)は映像信号SBが供給された場合を示す。本変形例では、バックライト30から射出した光は、まず液晶バリア部10に入射する。そして、その光のうち、開閉部12A,12Bを透過した光が表示部20において変調されるとともに、6つの視点映像を出力するようになっている。
【0108】
また、例えば、上記実施の形態等では、液晶バリアの開閉部はY軸方向に延伸するものとしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図25(A)に示したステップバリア形式や、図25(B)に示した斜めバリア形式であってもよい。ステップバリア形式については、例えば、特開2004−264762に記載がある。また、斜めバリア形式については、例えば、特開2005−86506に記載がある。
【0109】
また、例えば、上記実施の形態等では、開閉部12は2つのグループを構成したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば3つ以上のグループを構成するようにしてもよい。これにより、表示の分解能をさらに改善することができる。以下に、その詳細を説明する。
【0110】
図26は、開閉部12が3つのグループA,B,Cを構成する場合の例を表すものである。上記実施の形態と同様に、開閉部12AはグループAに属する開閉部12を示し、開閉部12BはグループBに属する開閉部12を示し、開閉部12CはグループCに属する開閉部12を示す。
【0111】
このように、開閉部12A,12B,12Cを時分割的に交互に開放して映像を表示することにより、この変形例に係る立体表示装置は、開口部12Aのみをもつ場合に比べ、3倍の解像度を実現することが可能となる。言い換えれば、この立体表示装置の解像度は、2次元表示の場合に比べ1/2(=1/6×3)で済むこととなる。
【0112】
また、例えば、上記実施の形態等では、映像信号SA,SBが6つの視点映像を含むようにしたが、これに限定されるものではなく、5つ以下の視点映像や、7つ以上の視点映像を含むようにしてもよい。この場合、図9に示した液晶バリア部10の開閉部12A,12Bと、画素Pixとの関係も変化する。すなわち、例えば、映像信号SA,SBが5つの視点映像を含む場合には、開閉部12Aは、表示部20の5つの画素Pixに1つの割合で設けることが望ましく、同様に、開閉部12Bは、表示部20の5つの画素Pixに1つの割合で設けることが望ましい。
【0113】
また、例えば、上記実施の形態等では、表示部20は液晶表示部としたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば有機EL(Electro Luminescence)などを用いたEL表示部であってもよい。この場合、図1に示したバックライト駆動部42およびバックライト30は不要となる。
【0114】
なお、本技術は以下のような構成とすることができる。
【0115】
(1)映像を表示する表示部と、
光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリアを有する液晶バリア部と
を備え、
前記液晶バリア部は、
液晶層と、
前記液晶層を挟むように構成された第1の基板および第2の基板と
を有し、
前記第1の基板は、前記液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された駆動電極を有し、
前記第2の基板は、
第1の共通電極と、
前記第1の共通電極と前記液晶層との間に形成された第2の共通電極と
を有する
表示装置。
【0116】
(2)前記液晶バリア部の各液晶バリアを駆動する駆動部を備え、
前記駆動部は、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極のうちの、少なくとも第1の共通電極を駆動する
前記(1)に記載の表示装置。
【0117】
(3)前記駆動部は、前記第2の共通電極をも駆動する
前記(2)に記載の表示装置。
【0118】
(4)前記第2の共通電極は、前記液晶バリアに対応する位置に複数のスリットを有する
前記(1)から(3)のいずれかに記載の表示装置。
【0119】
(5)前記液晶バリアは所定の方向に延伸するように形成され、
前記第2の共通電極は、
前記液晶バリアに対応する位置に形成された、前記所定の方向に延伸する幹スリット部分と、
前記幹部分の両側に形成された複数の枝スリット部分と
を有する
前記(4)に記載の表示装置。
【0120】
(6)前記液晶バリアは所定の方向に延伸するように形成され、
前記第2の共通電極は、
前記液晶バリアに対応する位置に形成された、前記所定の方向に延伸する幹部分と、
前記幹部分の両側に形成された複数の枝部分と
を有し、
前記複数の枝部分が前記複数のスリットを構成する
前記(4)に記載の表示装置。
【0121】
(7)前記第1の共通電極および前記第2の共通電極の間に配置された絶縁層を
さらに備えた
前記(1)から(6)のいずれかに記載の表示装置。
【0122】
(8)3次元映像表示モードおよび2次元映像表示モードを含む複数の表示モードを有し、
前記複数の液晶バリアは、複数の第1の液晶バリアおよび複数の第2の液晶バリアを有し、
前記3次元映像表示モードでは、前記表示部が複数の異なる視点映像を表示し、前記複数の第1の液晶バリアが透過状態になるとともに、前記複数の第2の液晶バリアが遮断状態になることにより、3次元映像を表示し、
前記2次元映像表示モードでは、前記表示部が1つの視点映像を表示し、前記複数の第1の液晶バリアおよび前記複数の第2の液晶バリアが透過状態になることにより、2次元映像を表示する
前記(1)から(7)のいずれかに記載の表示装置。
【0123】
(9)前記複数の第1の液晶バリアは、複数のバリアグループにグループ分けされ、
前記3次元映像表示モードでは、前記複数の第1の液晶バリアは、バリアグループごとに、時分割的に透過状態および遮断状態との間で切り換わる
前記(8)に記載の表示装置。
【0124】
(10)前記表示部は液晶表示部であり、
バックライトをさらに備え、
前記液晶表示部は、前記バックライトと前記液晶バリア部との間に配置されている
前記(1)から(9)のいずれかに記載の表示装置。
【0125】
(11)前記表示部は液晶表示部であり、
バックライトをさらに備え、
前記液晶バリア部は、前記バックライトと前記液晶表示部との間に配置されている
前記(1)から(9)のいずれかに記載の表示装置。
【0126】
(12)光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリアを駆動し、
前記液晶バリアの駆動に同期して映像を表示し、
前記液晶バリアを駆動する際、
前記液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された複数の駆動電極に駆動信号を印加し、
前記複数の駆動電極に対して液晶層を介して離間して形成された第1の共通電極および前記第1の共通電極と前記液晶層との間に形成された第2の共通電極のうちの、少なくとも前記第1の共通電極に第1の共通信号を印加する
表示装置の駆動方法。
【0127】
(13)さらに、前記第2の共通電極に第2の共通信号を印加する
前記(12)に記載の表示装置の駆動方法。
【0128】
(14)前記第1の共通信号および前記第2の共通信号は、互いに等しい直流電圧を有する直流信号であり、
前記駆動信号は、前記直流電圧を中心電圧とした交流駆動信号である
前記(13)に記載の表示装置の駆動方法。
【0129】
(15)前記第1の共通信号は直流信号であり、
前記駆動信号は、前記共通信号の直流電圧を中心電圧とした交流駆動信号である
前記(12)に記載の表示装置の駆動方法。
【0130】
(16)液晶層と、
前記液晶層を挟むように構成された第1の基板および第2の基板と
を備え、
前記第1の基板は複数の駆動電極を有し、
前記第2の基板は、
第1の共通電極と、
前記第1の共通電極と前記液晶層との間に形成された第2の共通電極と
を有する
バリア装置。
【0131】
(17)第1の基板に複数の駆動電極を形成する工程と、
第2の基板に、第1の共通電極を形成し、その上に前記第1の共通電極と離間して第2の共通電極を形成する工程と、
前記第1の基板と、前記第2の基板の、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極が形成された側との間に液晶層を封止する工程と、
少なくとも前記第2の共通電極および前記複数の駆動電極を通じて、前記液晶層に電圧を印加しつつ、前記液晶層を露光することにより、前記液晶層にプレチルトを付与する工程と
を含むバリア装置の製造方法。
【0132】
(18)前記液晶層にプレチルトを付与する工程では、前記第1の共通電極にも、電圧を印加する
前記(17)に記載のバリア装置の製造方法。
【0133】
(19)前記第1の共通電極と前記駆動電極との間の電位差が、前記第2の共通電極と前記駆動電極との間の電位差よりも小さくなるように、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極に電圧を印加する
前記(18)に記載のバリア装置の製造方法。
【0134】
(20)前記第1の共通電極の電圧と前記第2の共通電極の電圧が等しい
前記(18)に記載のバリア装置の製造方法。
【符号の説明】
【0135】
1,1B…立体表示装置、10,10A,10B…液晶バリア部、11,12,12A,12B…開閉部、20…表示部、30…バックライト、40…制御部、41…バリア駆動部、42…バックライト駆動部、50…表示駆動部、51…タイミング制御部、52…ゲートドライバ、53…データドライバ、61,62…幹スリット、61B…幹部分、63…枝スリット、63B…枝部分、70…スリット領域、70B…サブ電極領域、71〜74,81,82…サブスリット領域、71B〜74B,81B,82B…枝領域、110,120…透明電極、201,205…透明基板、202…画素電極、203…液晶層、204…対向電極、206a,206b…偏光板、207…駆動基板、208…対向基板、310…駆動基板、311,321…透明基板、312,322,324,424,424B…透明電極層、315,325…配向膜、316,326…偏光板、320…対向基板、323…絶縁層、A,B…グループ、C…保持容量素子、CBL…バックライト制御信号、CBR…バリア制御信号、D…データ線、DRV…バリア駆動信号、E1,E2…幅、G…ゲート線、LC…液晶素子、L…等電位面、M…液晶分子、Pix…画素、P1〜P6…画素情報、P10…バリア製造工程、P20…プレチルト付与工程、S,S1,SA,SB,Sdisp…映像信号、Tr…TFT素子、T0…表示周期、T1…走査周期、Va,Vb…電圧、θ…プレチルト角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示部と、
光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリアを有する液晶バリア部と
を備え、
前記液晶バリア部は、
液晶層と、
前記液晶層を挟むように構成された第1の基板および第2の基板と
を有し、
前記第1の基板は、前記液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された駆動電極を有し、
前記第2の基板は、
第1の共通電極と、
前記第1の共通電極と前記液晶層との間に形成された第2の共通電極と
を有する
表示装置。
【請求項2】
前記液晶バリア部の各液晶バリアを駆動する駆動部を備え、
前記駆動部は、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極のうちの、少なくとも第1の共通電極を駆動する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記第2の共通電極をも駆動する
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の共通電極は、前記液晶バリアに対応する位置に複数のスリットを有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記液晶バリアは所定の方向に延伸するように形成され、
前記第2の共通電極は、
前記液晶バリアに対応する位置に形成された、前記所定の方向に延伸する幹スリット部分と、
前記幹部分の両側に形成された複数の枝スリット部分と
を有する
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記液晶バリアは所定の方向に延伸するように形成され、
前記第2の共通電極は、
前記液晶バリアに対応する位置に形成された、前記所定の方向に延伸する幹部分と、
前記幹部分の両側に形成された複数の枝部分と
を有し、
前記複数の枝部分が前記複数のスリットを構成する
請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1の共通電極および前記第2の共通電極の間に配置された絶縁層を
さらに備えた
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
3次元映像表示モードおよび2次元映像表示モードを含む複数の表示モードを有し、
前記複数の液晶バリアは、複数の第1の液晶バリアおよび複数の第2の液晶バリアを有し、
前記3次元映像表示モードでは、前記表示部が複数の異なる視点映像を表示し、前記複数の第1の液晶バリアが透過状態になるとともに、前記複数の第2の液晶バリアが遮断状態になることにより、3次元映像を表示し、
前記2次元映像表示モードでは、前記表示部が1つの視点映像を表示し、前記複数の第1の液晶バリアおよび前記複数の第2の液晶バリアが透過状態になることにより、2次元映像を表示する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記複数の第1の液晶バリアは、複数のバリアグループにグループ分けされ、
前記3次元映像表示モードでは、前記複数の第1の液晶バリアは、バリアグループごとに、時分割的に透過状態および遮断状態との間で切り換わる
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示部は液晶表示部であり、
バックライトをさらに備え、
前記液晶表示部は、前記バックライトと前記液晶バリア部との間に配置されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示部は液晶表示部であり、
バックライトをさらに備え、
前記液晶バリア部は、前記バックライトと前記液晶表示部との間に配置されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
光の透過と遮断とを切り換え可能な複数の液晶バリアを駆動し、
前記液晶バリアの駆動に同期して映像を表示し、
前記液晶バリアを駆動する際、
前記液晶バリアに対応する位置にそれぞれ形成された複数の駆動電極に駆動信号を印加し、
前記複数の駆動電極に対して液晶層を介して離間して形成された第1の共通電極および前記第1の共通電極と前記液晶層との間に形成された第2の共通電極のうちの、少なくとも前記第1の共通電極に第1の共通信号を印加する
表示装置の駆動方法。
【請求項13】
さらに、前記第2の共通電極に第2の共通信号を印加する
請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項14】
前記第1の共通信号および前記第2の共通信号は、互いに等しい直流電圧を有する直流信号であり、
前記駆動信号は、前記直流電圧を中心電圧とした交流駆動信号である
請求項13に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項15】
前記第1の共通信号は直流信号であり、
前記駆動信号は、前記共通信号の直流電圧を中心電圧とした交流駆動信号である
請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項16】
液晶層と、
前記液晶層を挟むように構成された第1の基板および第2の基板と
を備え、
前記第1の基板は複数の駆動電極を有し、
前記第2の基板は、
第1の共通電極と、
前記第1の共通電極と前記液晶層との間に形成された第2の共通電極と
を有する
バリア装置。
【請求項17】
第1の基板に複数の駆動電極を形成する工程と、
第2の基板に、第1の共通電極を形成し、その上に前記第1の共通電極と離間して第2の共通電極を形成する工程と、
前記第1の基板と、前記第2の基板の、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極が形成された側との間に液晶層を封止する工程と、
少なくとも前記第2の共通電極および前記複数の駆動電極を通じて、前記液晶層に電圧を印加しつつ、前記液晶層を露光することにより、前記液晶層にプレチルトを付与する工程と
を含むバリア装置の製造方法。
【請求項18】
前記液晶層にプレチルトを付与する工程では、前記第1の共通電極にも、電圧を印加する
請求項17に記載のバリア装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1の共通電極と前記駆動電極との間の電位差が、前記第2の共通電極と前記駆動電極との間の電位差よりも小さくなるように、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極に電圧を印加する
請求項18に記載のバリア装置の製造方法。
【請求項20】
前記第1の共通電極の電圧と前記第2の共通電極の電圧が等しい
請求項18に記載のバリア装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−185396(P2012−185396A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49525(P2011−49525)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】