説明

表示装置

【課題】 良好なコントラストで書き込み、消去が可能で、実用性の高い可逆性感熱記録材料を表示装置に用い、更にパソコンなどの外部からの情報を可逆性感熱記録シートに入出力可能であるばかりか、手書きによる追記も可能な電子掲示板などの表示装置を提供する。
【解決手段】 支持体上にポリマー/液晶複合膜を積層した可逆性感熱記録材料を用いた表示シートと、該表示シートに情報を書き込むための情報書込装置と、該表示シートに書き込まれた情報を消去するための情報消去装置と、外部から情報を入力し、かつ、外部へ情報を出力する外部情報入出力装置と、前記表示シートに表示された情報を読み取る表示情報読込装置と、原稿読取装置と、前記表示シートに表示された情報を印刷出力する印刷装置と、読み取った情報を記憶する記憶装置と、これら装置間の信号を制御する制御装置とを有する表示装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示装置に関する。更に詳細には、本発明は文字、記号及び図形等の書き込む画像情報を可逆性感熱記録の表示シート上に出力し、また、書き込んだ情報に更に手書きによる追記を可能とし、書き込んだ情報と追記した情報の双方を出力可能にする電子掲示板などの表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】感熱記録材料は一般的に、電子供与性の染料前駆体と電子受容性の顕色剤を主成分とする。このような感熱記録材料は例えば、特公昭43−4160号公報などに記載されている。しかし、このような感熱記録材料は可逆性が無く、記録及び表示に書き込みの制限があった。
【0003】また、特開平2−188293号公報などには、ロイコ染料と顕色剤とからなる可逆性感熱記録材料が記載されている。しかし、この可逆性感熱記録材料は、熱制御のみで発色と消色を行うが、十分な発色濃度と完全な消色が得られず、十分なコントラストを得ることができない。また、繰り返しの書き込み時には、材料の劣化も表示画質の低下を招き、実用的であるとは言えない。
【0004】また、特開平3−200935号公報には、スチレンブタジエン共重合体などの樹脂母体中に、ステアリン酸などの飽和カルボン酸を分散させた可逆性感熱材料が記載されている。この可逆性感熱材料では、温度制御により樹脂と樹脂中に分散した飽和カルボン酸などの間に空気層を形成させ、その屈折率差による白濁及び透明状態を固定化する。しかし、書き込み時と消去時の温度制御が難しく、微細なパターン表示が困難であるとか、十分な表示コントラストが得られないなどの欠点があった。
【0005】一方、特開昭61−233597号公報には感熱転写装置を用いた電子黒板装置が記載されている。この装置では、外部より入力した情報を表示シート上に熱転写し、インクペン等により追記した情報と共に光電変換素子により読みとり、感熱紙に情報を出力する。しかし、大型の表示物にインクリボンを用いて出力するとランニングコストが大きくなり、装置のメンテナンスの観点から、実用的であるとは言い難い。
【0006】また、特開平6−32095号公報には、スチレンブタジエン共重合体/飽和カルボン酸系の可逆性感熱記録材料を用いた電子黒板システムが記載されている。しかし、このシステムも、上記と同様に、十分な表示コントラストが得られず、大型表示装置として実用的ではない。
【0007】前記のように、従来の可逆性感熱記録材料では、書き込み時のコントラスト不足、消去時の書き込み残りに伴うコントラストの低下及び繰り返し書き込み時の耐久性の低さにより、従来の感熱材料を表示装置に用いることができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、前記従来技術の問題を解決し、良好なコントラストで書き込み、消去が可能で、実用性の高い可逆性感熱記録材料を表示装置に用い、更にパソコンなどの外部からの情報を可逆性感熱記録シートに入出力可能であるばかりか、手書きによる追記も可能な電子掲示板などの表示装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題は、ポリマー/液晶複合膜よりなる可逆性感熱記録材料を用い、書き込みにはサーマルヘッド等による加熱と、加熱後に急冷を行い透明状態を固定化する急冷機能を備えた書き込み装置と、消去には加熱ヘッド等を用いて表示シート全体を加熱し、一定時間の間、自然放冷させることにより徐冷を行う消去装置とを基本構成とする表示装置により解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の表示装置の記録原理は、可逆性感熱記録材料の温度による透明度変化を利用したものであり、図1はポリマー/液晶複合膜であるメモリ型ポリマー分散液晶表示シートの温度特性に対する透過率変化である。
【0011】室温の初期状態では、ポリマーと液晶は相分離し、ポリマー中に微小な液晶小滴を形成し、ポリマー/液晶界面の屈折率差に基づく白濁(不透明)状態(A)である。前記表示シートは温度Tから温度Tに昇温するに従い、ポリマーと液晶が相溶した透明状態(B)となり、T以上の加熱状態から急冷すると、ポリマー中に分散する液晶小滴が非常に微小に分散するため、ポリマー/液晶界面において光散乱が激減することで透明状態(C)を固定化でき、また透明保持状態(C)から温度T以上に加熱し、透明状態(B)を経て、温度T以上の加熱状態から徐冷すると、初期の白濁状態(A)に初期化することができる。このような特性を有するメモリ型ポリマー分散液晶表示シートは例えば、本願出願人の出願に係る、特願平11−301892号明細書、特願平11−364840号明細書及び特願2000−303033号明細書に記載されている。言うまでもなく、これら以外のメモリ型ポリマー分散液晶表示シートを使用することもできる。
【0012】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図2はメモリ型ポリマー分散液晶表示シートを用いた電子掲示板の概略図である。筐体1の中にはメモリ型ポリマー分散液晶表示シート2と表示シートを巻き取るための巻き取りロール(図示せず)と情報を書き込むためのサーマルヘッドと急冷手段を備えた書き込み装置(図示せす)と書き込んだ情報を読み取るための光電変換手段を備えた読み込み装置8と、書き込んだ情報を消去するための徐冷用ヒーターとインク消去手段を備えた消去装置(図示せず)と、表示する情報をパソコンから入力あるいは表示した情報をパソコンに出力する外部入出力装置3と、表示した情報を感熱紙あるいは感熱記録材料に出力する感熱プリンター4と、表示する原稿を読み取るための原稿読み取り装置5を付加したものである。感熱プリンター以外の印刷手段も使用できる。また、原稿読み取り装置5は例えば、光学式スキャナなどの公知慣用の手段を使用できる。
【0013】メモリ型ポリマー分散液晶表示シート2は、書き込んだ部分以外は、白濁状態であり、表示シート2にインクペン6を用いて追記した場合、コントラストよく追記可能である。インクペン6による追記の訂正、消去は、インク消し7により手動で行うことが可能である。
【0014】図3は図2のIII−III線に沿った方向の断面図である。筐体1中にはエンドレス状のメモリ型ポリマー分散液晶表示シート2、左右の巻き取りロ一ル9、補助ロール14を有し、巻き取りロール9によって表示シートを移動する。
【0015】図4は、情報を書き込むためのサ一マルヘッドl0と急冷手段11を備えたシート書き込み装置12の部分概要斜視図である。パソコンより入力した情報あるいは、原稿読み敢り装置5より読み取った情報を80℃から130℃に加熱したサーマルヘッド10により、表示シート2上に書き込み、サーマルヘッド直後に設置した急冷手段9により、加熱により書き込んだ表示シート2を急冷させ、透明状態を固定化する。冷却速度は、例えば、液晶がポリマーに相溶した状態から5℃/秒以上の速度であることが好ましい。この際、ポリマー中に分散した液晶の平均粒径は1μm未満であることが好ましい。但し、サーマルヘッドによる熱書き込み後に、表示シートが速やかに放熱する構造であれば、透明状態を固定化することができるので、急冷手段は必ずしも必要とは限らない。急冷手段としては、ペルチェ素子のような半導体ヒートポンプを用いて、表示シート2を急冷することができるが、その他ヒートシンクと冷却ファンを用いることも出来る。
【0016】表示情報を書き込まれた表示シート2は、巻き取りロール9によって、背景材13の前方の表示面に送られ、表示情報を表示する。用いるメモリ型ポリマー分散液晶表示シート2は、初期状態が白濁であり、表示情報は透明であるため、高いコントラスト表示を行うために、背景色には低反射率の黒が好ましく、艶消しの黒を塗布した背景材、あるいは黒のピロード地などを用いることができ、このような黒色の背景材を用いた場合、白地に黒字の表示情報を表示する。ただし、背景色は艶消しの黒に限らず、高いコントラスト表示を行うことができる背景色であれば何でもよい。
【0017】サーマルヘッド10によって書き込まれた情報は、表示シートの透明化と黒色背景色により黒字で表示され、白地の部分にはインクペン6により手書きによる追記が可能であり、サーマルヘッド10によって書き込まれた情報と迫記した情報の双方を、読み取り装置15により取り込み、感熱プリンター4に出力する、あるいは外部入出力装置3より外部のパソコンに情報を出力することができる。
【0018】感熱プリンター4に出力する場合、印刷媒体として感熱紙、メモリ型ポリマー分散液晶シートを用いることができる。印刷媒体にメモリ型ポリマー分散液晶シートを用いれば、加熱、徐冷により初期化することができ、再度、感熟プリンター4で表示情報を出力することができる。
【0019】図5は徐冷用加熱部16とインク消去部17より構成されるシート消去装置の部分概要斜視図である。読み取り装置15で読み取った後、徐冷用加熱部16において、表示シート2の幅方向全体を温度Tから温度Tの温度範囲で自然放冷(徐冷)を行うことにより、書き込み装置12で書き込んだ情報を初期化、即ち消去することができる。また、インクペン6により追記された情報は、読み取り装置15で読み取った後、インク消去部17によりインクを拭き取る。
【0020】図6は、本実施例の電子掲示抜システムに関するブッロク図である。外部からデータを入力し、表示シート2に表示するには、外部入出力装置3を経て、表示装置全体を制御する制御部19において、シート書き込み装置12を制御し、表示シート2上に外部からのデータを書き込む。原稿に書かれた情報を表示シート2に表示するには、原稿読み取り装置5により情報を読み取り、読み取った情報をメモり部20に一時的に保存し、制御部19において、シート書き込み装置12を制御し、表示シ一ト2上に原稿に書かれた情報を書き込む。
【0021】書き込み装置12で書き込んだ情報と手書きにより追記した情報は、同時に表示情報読み取り部15により読み取り、読み取った情報をメモり部20に一時的に保存し、制御部19において、感熱プリンター4に出力するか、あるいは外部入出力装置3を経てパソコン等の外部に表示情報を出力する。
【0022】表示情報読み取り部15で表示情報を読み取った後、制御部19において、シート消去装置18を制御し、表示情報の初期化、すなわち消去を行う
【0023】別の実施形態の例として、リサイクル可能なメモリ型ポリマー分散液晶表示シート2を用いた感熱記録装置の断面図を図7に示す。リサイクル可能な表示シートを用いることで、一度書き込んだ情報が不用になった場合に、表示シートを初期化し、再度情報を書き込むことができ、紙資源を浪費しない。
【0024】サーマルヘッド22とシート送りローラー23で挟まれた表示シート2は、サーマルヘッド22により外部から入力された情報を書き込み、サーマルヘッド22直後のヒートシンクによる急冷手段により、書き込まれた表示シート2は急冷され、入力された情報を透明状態に固定化する。ただし、サーマルヘッドによる熱書き込み後に、表示シートが速やかに放熱する構造であれば、透明状態を固定化することができるので、急冷手段は必ずしも必要とは限らない。再度、別の情報を書き込む場合は、サーマルヘッド22で書き込む前に徐冷用加熱部25において温度T以上に加熱し、その後、自然放冷(徐冷)を行い初期化し、再度サーマルヘッド22による書き込みを行う。
【0025】また、別の実施形態の例として、前記実施例の冷却手段24およぴ徐冷加熱ヘッド25をベルチェ素子26で置き換えた感熱記録装置の断面図を図8に示す。
【0026】前記実施例と同様にサーマルヘッド22を用いて、外部から入力された情報を書き込みむが、急冷手段としでペルチェ素子26を用い、書き込み時はペルチェ素子26の表示シート2面側を冷却し、また消去時はペルチェ素子26に流す電流の方向を書き込み時と反転させることで、表示シート2面側を温度T以上に加熱し、表示シート2を自然放冷(徐冷)することで初期化できる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ポリマー/液晶複合膜より成る可逆性感熱記録材料を表示シートに用い、サーマルヘッドと急冷機能を備える書き込み装置と、徐冷用加熱ヘッドを備える消去装置を用いることにより、高いコントラストの表示と鮮明な画像の出力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示装置に用いる可逆性感熱記録材料、例えば、ポリマー分散型液晶表示材料の温度に対する光学的特性を示す特性図である。
【図2】本発明の表示装置の一実施例である電子掲示板の概要斜視図である。
【図3】図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図2におけるシート書き込み装置の部分概要斜視図である。
【図5】図2におけるシート消去装置の部分概要斜視図である。
【図6】本発明の表示装置の一実施例である電子掲示板の制御系を示すブロック図である。
【図7】本発明の表示装置における感熱記録装置の一例の断面図である。
【図8】本発明の表示装置における感熱記録装置の別の例の断面図である。
【符号の説明】
1 電子掲示板の筐体 14 補助ロール
2 表示シート 15 表示情報読み取り部
3 外部入出力端子 16 徐冷用加熱部
4 感熱プリンター 17 インク消去部
5 原稿読み取り部 18 シート消去装置
6 インクペン 19 制御部
7 巻き取りロール 20 メモリ部
8 表示情報読み取り部 21 筐体
9 冷却手段 22 サーマルヘッド
10 サーマルヘッド 23 シート送りローラー
11 インク消し 24 ヒートシンク
12 シート書き込み装置 25 徐冷用加熱部
13 背景材 26 ペルチェ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上にポリマー/液晶複合膜を積層した可逆性感熱記録材料を用いた表示シートと、該表示シートに情報を書き込むための情報書込装置と、該表示シートに書き込まれた情報を消去するための情報消去装置とからなることを特徴とする表示装置。
【請求項2】 前記情報書込装置は前記表示シートに情報を熱書き込みするとともに急冷機能を有し、前記情報消去装置は前記表示シートに書き込まれた情報を熱消去するとともに徐冷機能を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】 前記支持体とポリマー/液晶複合膜との間に黒色の背景材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】 前記情報書込装置は前記表示シートを5℃/秒以上の冷却速度で冷却する急冷手段を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】 前記表示装置は、外部から情報を入力し、かつ、外部へ情報を出力する外部情報入出力装置と、前記表示シートに表示された情報を読み取る表示情報読込装置と、原稿読取装置と、前記表示シートに表示された情報を印刷出力する印刷装置と、読み取った情報を記憶する記憶装置と、これら装置間の信号を制御する制御装置とを更に有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】 前記表示装置は、前記表示シートの表示外面にインクペンを用いて情報を手書き入力することができ、前記情報書込装置により該表示シートに書き込まれた情報と手書き入力された情報の両方を出力することができることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−211016(P2002−211016A)
【公開日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−11436(P2001−11436)
【出願日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】