説明

表面保護フィルムの製造方法

【課題】 本発明は、少なくとも一つの面に高光沢でかつ欠陥の無い表面を有する表面保護フィルムを製造することができる方法を提供するという課題に基づく。
【解決手段】
本発明は、少なくとも一つの面に高光沢で欠陥箇所のない表面を有する表面保護フィルムの製造方法に関する。本発明においては、スロット付きノズルを用いて押出しされたプラスチック溶融物フィルムを、溶融状態で、冷却ロールと周回する金属製平滑化ベルトとの間の間隙に送り、冷却ロールに接触させることで冷却し、そして平滑化ベルトが冷却ロールに作用するところの巻き付き領域において、平滑化ベルトのベルトの張力によって生じた圧力によって平坦に圧迫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの面に高光沢表面を有する表面保護フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変形、例えば深絞りによって製造されそして優れた表面品質並びに高い光沢を有するプラスチックからなる多くの製品がある。これには、例えばプラスチックから作られたバスタブ、ヘルメットバイザー、並びに高価値の電子商品及びディスプレー用のプラスチック製ケーシングなどがある。変形時及び輸送時にプラスチック表面を保護するために、前もって表面保護フィルムが一時的な保護として施され、これは使用の前に再び除去される。フィルムの簡単で残渣のない剥離を保証するために、接着剤層を持つのではなく、光沢表面の故に付着性の、すなわち所謂ガラス板効果(Glasscheibeneffekt)によって保護すべき表面に付着する表面保護フィルムが使用される。この表面保護フィルムの背面は非常に平滑であり、それ自体も平滑な保護すべき表面にくっつく。表面保護フィルムのフィルム厚は150μm未満であり、この際、使用上の観点からは最大120μmのフィルム厚を有するより薄いフィルムが好ましい。
【0003】
表面保護フィルムを巻く際にロールへのフィルムのブロッキングを避けるために、フィルムの他の面は、粗面であるかまたはエンボス加工が施された面を含むか、またはアンチブロッキング添加剤が付与される。
【0004】
表面保護フィルムは、それらの平滑な面に、斑点(例えば部分的な汚れ、完全に溶融しなかった材料、過熱された材料による斑点)の形でまたは押出ノズルが平らでないことやノズルの汚れに帰し得るノズル筋の形で、ある程度の数の表面欠陥を常に有する。欠陥箇所は部分的に厚くなった箇所であり、これは、光沢面から突き出ており、付着性を損ねるばかりでなく、保護すべき物体の高光沢表面のマーキングまたは損傷も招く恐れがあるものである。
【0005】
欧州特許第0434180B1号明細書(特許文献1)からは、平滑な面と、艶消しにエンボス加工された面とを有する多層表面保護フィルムが知られている。このフィルムは、共押出フィルムとして製造され、次いでエンボス加工段階を経て、ここでフィルムの艶消し面が作られる。平滑な面には、0.25〜10Raの表面粗さが達成でき、この際、平方メータ当たりで10個までの斑点の形の表面欠陥を甘受しなければならない。
【0006】
米国特許第5693405号明細書(特許文献2)には、多層で接着剤不含の表面保護フィルムが記載されており、これは共押出フィルムとして製造される。この共押出フィルムは、押出後に、平滑な面を有する第一のロールと、エンボス加工された表面を有する第二のロールとを含むロール対を経る。この方法に従い製造された表面保護フィルムは、平滑な面と、艶消しのもしくはエンボス加工された面とを有する。押出ノズルが平坦でないことや汚れていることが原因であり得る斑点及びノズル筋の形の表面欠陥の発生は避けることができない。
【0007】
独国特許出願公開第19605951A1号明細書(特許文献3)から、熱可塑性プラスチックからなる両面が平滑化されたプレート及びフィルムの製造のためのカレンダーが知られており、この際、平滑化された材料は約0.5〜50mmの厚さを有することができる。このカレンダーは、艶出しロール及び金属ベルトから構成され、前記金属ベルトは、艶出しロールに隣接する二つの変向ロールの周りに案内されそしてこれは部分的に巻き付いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0434180B1号明細書
【特許文献2】米国特許第5693405号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19605951A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの背景技術に対して、本発明は、少なくとも一つの面に高光沢でかつ欠陥箇所の無い表面を有する表面保護フィルムを製造することができる方法を提供するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象及び上記課題の解決策は請求項1に記載の方法である。本発明では、スロット付きノズルを用いて押出しされたプラスチック溶融物フィルムを、溶融物の状態で、冷却ロールと周回する金属製平滑化ベルトとの間の間隙に送り、冷却ロール上に接触させて冷却し、そして平滑化ベルトが冷却ロールに対して作用するところの巻き付き領域において、平滑化ベルトのベルトの張力によって生ずる圧力を用いて平坦に圧迫する。平滑化ベルトは、例えば周回するエンドレススチール製ベルトである。平滑化ベルト、所謂スリーブベルトを使用することによって、製造されるフィルムに最適な光学的及び機械的性質が達成される。間隙中に入るプラスチック溶融物フィルムを平坦に押し付けし、それと同時に冷却を始めることによって、表面欠陥、例えば部分的な汚れ、完全に溶融していない材料、過熱された材料、押出ノズルが平たくないことやノズルの汚れまたはこれらに類するものによる表面欠陥が効果的に取り除かれる。更に、有利なことに、本発明の方法で生ずる高速な冷却速度によって、結晶の形成を抑えることができ、そして収縮及び消滅の無い無定型の構造のフィルムが生ずる。
【0011】
光沢面の表面品質には、冷却ロール及び/または平滑化ベルトの表面状態によって影響を及ぼすことができる。本発明の好ましい実施形態の一つでは、プラスチック溶融物フィルムに作用する冷却ロール及び/または平滑化ベルトの接着面は、10μm未満の表面粗さRt、好ましくは1μm未満の表面粗さを有する。この際、表面粗さRtとは表面の突端と表面の基面との間隔を表すものである。冷却ロールまたは平滑化ベルトの接触面は、仕上げ加工処理、例えばホーニング、精密研削、微細もしくは精密ラップ仕上げで改善された表面を有することができるか、または上記の表面品質を備えた被膜を供することができる。被膜としては、例えばクロム被覆または他の電気メッキ被覆などが挙げられる。
【0012】
本発明方法を用いることより、両面に欠陥のない高光沢の表面を有する表面保護フィルムを製造することができる。両面光沢の表面は、保護フィルムが非常に透明性の高いものであるべき時に、多くの場合に望ましい。このようなフィルムを巻き取る際にロール上へのフィルムのブロッキングを避けるために、フィルムの巻き取りの再に、剥離層を間に挟むことができる。
【0013】
しかし、本発明方法を用いることによって、冷却ロール及び平滑化ベルトの表面を適切に選択することによって、高光沢の面と艶消し面とを有する表面保護フィルムを製造することもできる。それ故、本発明方法の一つの形態は、冷却ロールだけがまたは平滑化ベルトだけが、高光沢のフィルム表面を作るためにプラスチック溶融物フィルム上に作用する平滑な接触面を有すること、及び平滑な面上には付着しない艶消しフィルム表面を作るために、プラスチック溶融物フィルムに作用する反対側の面が粗面として形成されることも企図する。粗面という用語には、エンボス加工された面も含まれる。
【0014】
平滑化ベルトが冷却ロールに作用するところの巻き付き領域、並びに押し付け圧を発生させるための適当なベルトの張力は、僅かな方向付け的な試験に基づき、決定することができる。平滑化ベルトが冷却ロールに作用するところの巻き付き領域は、通常、プラスチック溶融物フィルムが冷却ロールに接するところの冷却領域よりも短く、例えば15°〜90°の巻き付き角に相当する。
【0015】
該表面保護フィルムは、好ましくは、多層のプラスチック溶融物フィルムから製造され、これは、高光沢表面の形成に適したポリマーからなる第一の外側層、コア層及び第二の外側層を有する。第二の外側層は、アンチブロッキング添加剤を含むことができるか、及び/または平滑な面には付着しない艶消しフィルム表面を有することができる。これらの層は共押出される。コア層の厚さは、艶消しフィルム面を作るための第二の外側層のエンボス加工が、第一の外側層の表面に対して妨げにならないように決められる。アンチブロッキング添加剤としては、例えば二酸化ケイ素類、炭酸カルシウム類、ワックス、ケイ酸塩、ポリブテン及び類似物などが挙げられる。
【0016】
本発明の方法では、LDポリエチレンからなる第一の外側層、MDポリエチレンからなるコア層、及びPE−MD及びポリブテン(PB)の混合物からなる第二の外側層を有する表面保護フィルムを製造することができる。第一の外側層は、高光沢で欠陥箇所のない表面を有する。第二の外側層は、エンボス艶消しされた表面を有するか、またはポリマーの組成によってアンチブロック性を有する。
【0017】
本発明の方法では、少なくとも80μmのフィルム厚を有する表面保護フィルムを製造することができる。好ましくは、80μm〜120μmのフィルム厚で表面保護フィルムが製造される。より薄い表面保護フィルムの製造においては、記載の方法は、フィルムの厚さが薄くなるほどに問題が増大する。というのも、ロール間隙中に圧力を均一に分布させる十分な緩和(Daempfung)を有するポリマー層が冷却ロールと平滑化ベルトとの間にもはや存在しなくなるからである。それによって、フィルム表面が平らでなくなる恐れがある。更に、冷却ロール及び平滑化ベルトの表面が損傷を受けやすくなるリスクもある。80μm未満のフィルム厚を有する表面保護フィルムを製造すべきである場合には、本発明方法の以下の形態が考えられる。
【0018】
第一の変法では、表面保護フィルムを、これから剥離することが可能な剥離フィルム(Releasefolie)と一緒に共押出によって製造する。表面保護フィルム及び剥離フィルムからなるこの共押出複合体は、少なくとも80μmのフィルム総厚を有し、好ましくは80μm〜120μmのフィルム厚で作製される。表面保護フィルムの使用の前に、この剥離フィルムは除去されそして廃棄物として処理される。上記方法を用いて、20μm〜60μmのフィルム厚を有する表面保護フィルムを製造することができる。好ましくは、この表面保護フィルムは二層に構成され、この際、冷却ロールまたは平滑化ベルトと接触する外側の層は、高光沢表面を有する光沢層を形成する。光沢層は、表面保護フィルムの付着面を形成し、これは、保護すべき物体の表面に貼用される。第二の層は、表面保護フィルムの外側面を形成する。この表面保護フィルムが、使用の直前になって初めて剥離フィルムから剥がされる場合には、この第二の層の粗面は必要でもないし、また第二の層にアンチブロッキング添加剤が施されている必要もない。しかし、本発明の枠内には、表面保護フィルムを使用の前にロールに巻回することも含まれる。この場合には、該表面保護フィルムの第二の層は、フィルムを巻いたものがブロッキングを起こすことを阻止するためにアンチブロッキング添加剤を含むことが有利である。本発明の好ましい実施形態の一つでは、剥離フィルムは、表面保護フィルムに隣接しかつ極性ポリマーからなる剥離層(Trennschicht)、ポリオレフィン製支持層、及び前記剥離層を前記支持層と結合させる付着促進層を有する。剥離層と表面保護フィルムの隣接するポリオレフィン製層との間の付着力は、共押出複合体の他の層間の付着力よりもかなり弱くなっており、そうして剥離フィルムを、残渣を残すことなくかつ弱い力で表面保護フィルムから剥がすことができる。剥離層と隣接する表面保護フィルムとの間の付着は、剥離フィルム及び表面保護フィルムからなる共押出複合体の後での使用及び輸送が確実に可能である程度に大きいものであることが好ましい。
【0019】
本発明方法に従い薄いフィルム厚を有する表面保護フィルムを製造するための更に別の可能性は、二つの表面保護フィルムを、これらの表面保護フィルムの間に配置された剥離層と一緒に共押出によって製造し、次いでこれらの表面保護フィルムを剥離層から剥がすことにある。剥離層、及び両表面保護フィルムの隣接する各層は、これらの層を簡単に互いから引き離すことができるように、原料が互いに対して調整される。好ましくは、表面保護フィルムはポリオレフィンからなり、剥離層は極性ポリマー、好ましくはポリアミドまたはTPUからなる。二つの表面保護フィルムと剥離層とからなるこの共押出複合体は、少なくとも80μmのフィルム総厚で、好ましくは80μm〜120μmのフィルム厚で作られる。上記の方法に従い、20μm〜50μmのフィルム厚を有する表面保護フィルムを製造することができる。使用の前に剥離層から剥がされた表面保護フィルムは好ましくは二層であり、この際、二つの層のうちの一つが、高光沢面を有する光沢層を形成する。この光沢層は、保護すべき物体の表面と接触する。第二の層は、表面保護フィルムの使用時には外側層を形成し、そしてアンチブロッキング添加剤を含むことができる。
【0020】
二つの表面保護フィルムと剥離層とからなる共押出複合体の製造のためには、冷却ロールばかりではなく、平滑化ベルトも、高光沢フィルム表面を作るために、プラスチック溶融物フィルムに作用する平滑な接触面を持たなければならない。第一の表面保護フィルムは、剥離層と結合した状態で、平滑化ベルトまたは冷却ロールと接触するそれの外側の面に高光沢面を有する。好ましくは、剥離層に付着した第二の表面保護フィルムの層構造は逆になっている。ここで、第二の表面保護フィルムの剥離層に隣接した内部に存在する層は、剥離層を剥がした後は、高光沢面を有する光沢層を形成し、他方、この複合体中の第二の表面保護フィルムの外側の層は、アンチブロッキング添加剤を含むことが有利である。第二の表面保護フィルムは、共押出の後に剥離層から剥がされ、別に巻回され、そして別個のフィルムロールとして消費者に出荷することができる。第一の表面保護フィルムは、有利には、剥離層と一緒にロールに巻回する。この際、剥離層が、フィルムを巻いたものがロールにブロッキングすることを阻止する。この表面保護フィルムを後で使う時になって初めて、剥離層を第一の表面保護フィルムから剥がす。
【0021】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】少なくとも一つの面に高光沢で欠陥箇所の無い表面を有する表面保護フィルムの製造のための装置図を示す。
【図2】図1に示した方法で製造可能な共押出フィルムの層構造を示す。
【図3】図1に示した方法で製造可能な共押出フィルムの層構造を示す。
【図4】図1に示した方法で製造可能な共押出フィルムの層構造を示す。
【図5】図1に示した方法で製造可能な共押出フィルムの層構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示した方法では、押出機1が、スロット付きノズル3を介してプラスチック溶融物フィルム2を絞り出す。プラスチック溶融物フィルム2は、溶融状態で、冷却ロール4と周回する金属製平滑化ベルト5との間の間隙に送られ、冷却ロール4に接することで冷却され、そして平滑化ベルト5が冷却ロール4に作用するところの巻き付き領域aにおいて、平滑化ベルト5のベルトの張力によって生ずる圧力で平坦に圧迫される。平滑化ベルト5は、ロール6、7間に貼り渡されたエンドレスベルトである。平滑化ベルト5としては、例えばスチール製ベルトを使用することができる。平滑化ベルト5の張り具合は調節することができる。ベルトの張り具合、並びにプラスチック溶融物フィルム2と平滑化ベルト5との接触長は、製造の要求に合わせて変えることができる。
【0024】
平滑化ベルト5が冷却ロール4に作用するところの巻き付き領域aは、プラスチックフィルム2が冷却ロール4に接するところの冷却領域bよりも短く、15°〜90°の巻き付き角αに相当する。
【0025】
冷却ロール4及び/または平滑化ベルト5は、高光沢フィルム表面を作るための、プラスチック溶融物フィルム2に作用する平滑な接触面を有し、この接触面は、好ましくは10μm未満の表面粗さを有する。表面粗さは、接触面の仕上げ加工処理によってまたは表面品質を向上させる被覆によって達成することができる。特に好ましくは、表面粗さは1μm未満である。
【0026】
プラスチック溶融物フィルムに作用する反対側の面は、平滑な面に付着しない艶消しフィルム表面を作るために、エンボス加工面または粗面として形成されていることができる。
【0027】
図2は、記載の方法に従い製造された表面保護フィルム8の層構造を示す。この表面保護フィルム8は三層であり、高光沢面を有するPE−LDからなる20μm厚の光沢層G、PE−MDからなる60μm厚のコア層K、及びPE−MDからなる20μm厚の外側層Aを有する。外側層Aは、平滑な面に付着しない艶消しフィルム面を有する。
【0028】
図3に示した表面保護フィルム8も同様に、三層のプラスチック溶融物フィルムから製造したものであり、これは、高光沢表面の形成に適したポリマーからなる光沢層G、コア層K及び外側層Aを有する。図3の表面保護フィルム8は、PE−LDからなる15μm厚の光沢層G、PE−MDからなる50μm厚のコア層K、及び外側層Aを有する。外側層Aも同様に平滑な表面を有し、アンチブロッキング添加剤を含む。この実施例では、外側層Aは、例えば、PE−MD及びポリブテンの混合物からなる。図3に示した表面保護フィルム8を製造するためには、冷却ロールばかりでなく、平滑化ベルトも、高光沢フィルム表面を作るために、プラスチック溶融物フィルム2に作用する平滑な接触面を有する。
【0029】
上記の方法を用いて、総厚が少なくとも80μmの三層表面保護フィルム8を製造することができる。より薄い表面保護フィルム8の製造の際には、圧力を均一に分散させる十分な緩和機能(Daemmfunktion)を有するポリマー層が冷却ロール4と平滑化ベルト5との間にもはや存在しないという問題がある。それによって、フィルムの表面が平らでなくなる恐れがある。また、冷却ロール4及び平滑化ベルト5の痛みやすい表面が損傷を受けやすくなるリスクもある。
【0030】
それ故、80μm未満のフィルム厚を有する表面保護フィルム8を製造するためには、表面保護フィルム8’は、剥離フィルム9と一緒に共押出によって製造することができる。この剥離フィルムは、表面保護フィルム8’の使用の前に、残渣を残すことなく剥離可能である。図4は、表面保護フィルム8’と剥離フィルム9とからなる共押出複合体の層構造を示す。この共押出複合体は五層のプラスチック溶融物フィルムから製造され、この際、層G’、A’は、二層の表面保護フィルムを形成し、そして剥離フィルムは層T、H及びSからなる。この五層のプラスチック溶融物フィルム2の外側の層は、冷却ロール4または平滑化ベルト5と接触して、光沢層G’と外側層A’とからなる表面保護フィルム8’の光沢層G’を形成する。表面保護フィルム8’と一緒に共押出により製造された剥離フィルム9は、表面保護フィルム8’に隣接しかつ極性ポリマーからなる剥離層T、ポリオレフィン製支持層S、及び剥離層Tと支持層Sとを結合させる付着促進層Hを有する。剥離層Tと、表面保護フィルム8’の隣接するポリオレフィン製外側層A’との間の付着力は、該共押出複合体の他の層間の付着力よりも弱く、そうして剥離フィルム9は、その全体を、残渣を残すことなく表面保護フィルム8’から剥がすことができる。剥離層Tは、特に、ポリアミドまたはTPUから作ることができる。
【0031】
図4に示した層複合体は、PE−LDからなる10μm厚の光沢層G’を有する表面保護フィルム8’; 及びPE−MDからなる20μm厚の外側層A’; 及びポリアミドからなる5μm厚の剥離層T、MAH−PE−LLD(無水マレイン酸で変性したPE−LLD)からなる5μm厚の付着促進層H及びPE−MDからなる50μm厚の支持層Sを有する三層剥離フィルム9からなる。
【0032】
20μm〜50μmのフィルム厚を有する薄い表面保護フィルムを製造するためには、二つの表面保護フィルム8’、8’’を、これらの表面保護フィルム8’、8’’の間に配置された剥離層T’と一緒に共押出して製造し、次いで剥離層T’から剥がすことができる。図5は、このような共押出複合体の層構造を示す。層G’、A’及びG’’、A’’は、それぞれポリオレフィンからなる二層表面保護フィルム8’、8’’を形成し、これらの間に極性ポリマー、例えばポリアミドまたはTPUからなる剥離層T’が配置されている。層G’、A’を有する第一の表面保護フィルム8’は、剥離層T’と結合された状態で、平滑化ベルト5または冷却ロール4と接触するそれの外側の面に高光沢表面を有する。層G’’、A’’を有する第二の表面保護フィルム8’’の層構造は逆である。第二の表面保護フィルム8’’の剥離層T’に隣接して内部にある層は、剥離層T’を剥がした後に、高光沢表面を有する光沢層G’’を形成し、他方、第二の表面保護フィルム8’’の外側層A’’はアンチブロッキング添加剤を含む。図5に示した層構造は、PE−LDからなる10μm厚の光沢層G’を有する第一の表面保護フィルム8’、PE−LDからなる20μm厚の外側層A’、PE−LDからなる10μm厚の光沢層G’’を有する第二の表面保護フィルム8’’、及び30μm厚の外側層A’’(この外側層A’’はアンチブロッキング層としてPE−LD及びポリブテンから形成される)、並びに両表面保護フィルム8’、8’’の間に配置されたポリアミドからなる20μm厚の剥離層T’からなる。図5に示した層複合体の製造後、第一の表面保護フィルム8’は、剥離層T’と一緒にロールに巻回され、その際、剥離層T’は、フィルムを巻いたものがブロッキングすることを阻止する。使用者が後で使用する時になって初めて、剥離層T’が第一の表面保護フィルム8’から剥がされる。第二の表面保護フィルム8’’は別個に巻回され、そうして第二の表面保護フィルム8’’も同様にロール巻き製品として扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの面に欠陥箇所の無い高光沢表面を有する表面保護フィルム(8、8’、8’’)を製造する方法であって、スロット付きノズル(3)を用いて押出しされたプラスチック溶融物フィルム(2)を、溶融状態で、冷却ロール(4)と周回する金属製平滑化ベルト(5)との間の空隙に送り、冷却ロール(4)に接触させて冷却し、そして平滑化ベルト(5)が冷却ロール(4)に作用するところの巻き付き領域(a)において、平滑化ベルト(5)のベルトの張力によって生じた圧力で平坦に圧迫する、前記方法。
【請求項2】
プラスチック溶融物フィルム(2)に作用する冷却ロール(4)及び/または平滑化ベルト(5)の接触面が、10μm未満の表面粗さ、好ましくは1μm未満の表面粗さを有することを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
冷却ロール(4)または平滑化ベルト(5)の接触面が、仕上げ処理によって改善された表面を有するか、または表面品質を高める被膜が施されていることを特徴とする、請求項2の方法。
【請求項4】
冷却ロール(4)だけがまたは平滑化ベルト(5)だけが、高光沢フィルム表面を作るためのプラスチック溶融物フィルム(2)に作用する平滑な接触面を有すること、及び平滑な面に付着しない艶消しのフィルム表面を作るために、プラスチック溶融物フィルム(2)に作用する反対側の面が粗面として形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの方法。
【請求項5】
平滑化ベルト(5)が冷却ロール(4)に作用するところの巻き付き領域(a)が、プラスチック溶融物フィルム(2)が冷却ロール(4)に接触するところの冷却領域(b)よりも短いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの方法。
【請求項6】
平滑化ベルト(5)が冷却ロール(4)に作用するところの巻き付き領域(a)が、15°〜90°の巻き付き角(α)に相当することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの方法。
【請求項7】
表面保護フィルム(8)が、高光沢表面の製造に適したポリマーからなる外側にある光沢層(G)、コア層(K)、及び前記光沢層(G)とは反対側にある外側層(A)を有する三層プラスチック溶融物フィルム(2)から製造されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの方法。
【請求項8】
外側層(A)が、平滑な面に付着しない艶消しフィルム表面を有することを特徴とする、請求項7の方法。
【請求項9】
外側層(A)がアンチブロッキング添加剤を含むことを特徴とする、請求項7または8の方法。
【請求項10】
表面保護フィルム(8)が80μm〜120μmのフィルム厚を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つの方法。
【請求項11】
表面保護フィルム(8’)が、表面保護フィルム(8’)から剥離可能な剥離フィルム(9)と一緒に共押出によって製造されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの方法。
【請求項12】
表面保護フィルム(8’)が、80μm未満のフィルム厚、好ましくは20μm〜60μmのフィルム厚を有することを特徴とする、請求項11の方法。
【請求項13】
表面保護フィルム(8’)が二層に構成され、この際、冷却ロールまたは平滑化ベルトと接触する外側層が、高光沢表面を有する光沢層(G’)を形成することを特徴とする、請求項11または12の方法。
【請求項14】
剥離フィルム(9)が、表面保護フィルムに隣接しかつ極性ポリマーからなる剥離層(T)、ポリオレフィン製支持層(S)、及び剥離層(T)と支持層(S)とを結合させる付着促進層(H)を有し、この際、剥離層(T)と、表面保護フィルム(8’)の隣接するポリオレフィン製層(A’)との間の付着力が、該共押出複合体の他の層の間の付着力よりも弱いことを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一つの方法。
【請求項15】
二つの表面保護フィルム(8’、8’’)が、これらの表面保護フィルム(8’、8’’)の間に配置された剥離層(T’)と一緒に共押出によって製造され、次いで剥離層(T’)から引き剥がされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの方法。
【請求項16】
表面保護フィルム(8’、8’’)がポリオレフィンから、剥離層(T’)が極性ポリマーからなることを特徴とする、請求項15の方法。
【請求項17】
剥離層(T’)がポリアミドまたはTPUからなることを特徴とする、請求項16の方法。
【請求項18】
剥離層(T’)と結合した状態で作製された表面保護フィルム(8’、8’’)が、それぞれ、80μm未満のフィルム厚、好ましくは20μm〜50μmのフィルム厚を有することを特徴とする、請求項15〜17のいずれか一つの方法。
【請求項19】
剥離層(T’)と結合した状態で作製された表面保護フィルム(8’、8’’)がそれぞれ二つの層を有することを特徴とする、請求項15〜18のいずれか一つの方法。
【請求項20】
第一の表面保護フィルム(8’)が、剥離層(T’)と結合した状態で、平滑化ベルトまたは冷却ロールと接触するそれの外側に、高光沢表面を有する光沢層(G’)を有すること、第二の表面保護フィルム(8’’)の外側の外側層(A’’)がアンチブロッキング添加剤を含むこと、及び第二の表面保護フィルム(8’’)の剥離層(T’)に隣接する内部にある層が、剥離層(T’)を剥がした後に、高光沢表面を有する光沢層(G’’)を形成することを特徴とする、請求項19の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−260351(P2010−260351A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105086(P2010−105086)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(504376658)ノルデニア・ドイチュラント・グローナウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (19)
【Fターム(参考)】