説明

表面保護フィルム

【課題】
基材の粘着層と反対側の他側面に、撥水性・汚れ防止性を持つ高分子層を設けた表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
表面保護フィルムAは、基材1と、この基材1の一側面に設けた粘着層2と、基材1の他側面に設けた高分子層3とを備え、高分子層3は、撥水性,汚れ防止性を持ち、該高分子層3面に施された印刷などのインクと付着するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、輝度向上フィルムや位相差板等の被保護部材に貼り付けて、該被保護部材の保護を行うことができる表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現今、偏光板等の光学用シートの加工や該光学用シートの他の部材への実装などの工程に際しては、この作業中において該光学用シートへの傷の付着防止や汚染防止などの対策として、この光学用シートへ表面保護フィルムをあらかじめ貼り付けてある。
従来、このフィルムは、裏面に粘着剤を塗布して乾燥させ、この面へ剥離フィルムを貼り合わせた後、目標とする偏光角度や位相角度に合わせて裁断し、所定枚数を積層させて保存することが一般的である。
【0003】
しかし、表面保護フィルムが貼り合わされたシートの裁断作業において、該裁断面からはみ出した粘着剤が他の保護フィルム表面に付着し、製品検査の妨げとなる上、べたつくので製品と出荷する際の支障となる。
そのため、前記欠点の対策として、保護フィルムの一側面に汚れ防止層を設けた表面保護フィルムがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−41014号公報
【特許文献2】特開2003−41205号公報
【0004】
一方、表面保護フィルムを貼着する光学用シート等は、使用する目的により多くの種類があり、これらをそれぞれに判別するためにシートごとの品名や軸方向を表示したり、更には、バーコード等の必要情報が与えられた状態で流通過程等に提供されている。
これらの必要情報は、光学用シートに貼着された表面保護フィルム上へインクジェットやスタンプ等により付与される。
【0005】
しかしながら、前記した汚れ防止層を設けた保護フィルムは、インクに対する印字適性を考慮して設計されていないために、このフィルム上に前記必要情報を印字すると、該印字のためのインクの塗れ性が悪いため印字不良を生じ、また、バーコード印刷の場合にはバーコードリーダーによる印字パターンの読み取りに誤りが出たり読み取り不良を起こす。
更に、保護フィルムへのインクの密着性が悪く、インクの脱落や転写による他部材への汚染を生じていた。そのため、当業界にあっては、撥水性や汚れ防止性を有しながら、インクジェットやスタンプ等によるフィルム面への情報の印字を確実に行うことができる、いわゆる印字適性を有する表面保護フィルムの出現が強く要望されていた。
次に、裁断された平版品は静電気がおびやすく、ゴミを引き寄せたり、各枚葉ごと付着したりしてしまう問題があった。また、表面保護フィルムを剥がす時、静電気が発生し光学フィルム表面にゴミが付着したり、光学フィルムを使用した液晶部材の液晶に異常をきたしたり、フラットパネルディスプレイのパネルに使用されている半導体を破損したりすることがあった。このため、発生した静電気を素早く放出する必要があった。
このために従来は、帯電防止または導電層を基材の上に形成し、さらに防汚層を2工程で形成する方法が採られていた。この2工程法では、下層の帯電防止または導電層の被膜強度や基材との密着性が弱く耐摩耗性に問題があり、耐摩耗性を上げる必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記した要望にかんがみなされたもので、基材の一側面に粘着層を設け、この基材の他側面に高分子層を設けて、高分子層は、撥水性,汚れ防止性を持ち、該高分子層面に施された印刷と密着するものであって、端部よりはみ出した粘着剤が保護フィルム表面への付着がしにくく、例え付着しても容易に除去することができると共に、フィルム面への情報の印字を確実に行うことができ、静電気を素早く減少させる事ができる表面保護フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するための本発明の表面保護フィルムは、基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、 前記高分子層は、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物と、シリコーン系やフッ素系などからなる一種若しくは二種以上の離型剤、ITO(すずをドープした酸化インジウム化合物)、ATO(アンチモンをドープした酸化錫)、AZO(アルミをドープした酸化亜鉛)、酸化錫などからなる一種若しくは二種以上の金属酸化物系導電剤とを主成分とする層である。
【0008】
また、請求項2記載の表面保護フィルムは、請求項1記載の表面保護フィルムにおいて、高分子層は、平均粒子50nm以下の金属酸化物系導電剤を一種若しくは二種以上含むものである。
【0009】
また、請求項3記載の表面保護フィルムは、請求項1又は2記載の表面保護フィルムにおいて、被保護部材の表面は、帯電防止性を有し、表面抵抗値が1012Ω/□以下であるものである。
【0010】
また、請求項4記載の表面保護フィルムは、請求項1又は2記載の表面保護フィルムにおいて、基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、これらの全光線透過率85%以上、ヘイズ10%以下となる光学特性を備えているものである。
【0011】
また、請求項5記載の表面保護フィルムは、請求項1又は2記載の表面保護フィルムにおいて、高分子層は、その層厚が1μm以下、水の接触角80°以上、インクジェットインキでの印字がセロテープ(登録商標)剥離によって脱落しないものである。
【0012】
また、請求項6記載の表面保護フィルムは、基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、前記高分子層は、シリコーン・アクリレート系櫛形グラフトポリマー単独(マクロモノマー)、若しくは、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物との混合物からなるものである。
【0013】
また、請求項7記載の表面保護フィルムは、請求項1又は2記載の表面保護フィルムにおいて、高分子層は、高分子化合物、離型剤と金属酸化物系導電剤の比率は、離型剤/高分子化合物/金属酸化物系導電剤=1〜20/0〜20/1〜10であるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の表面保護フィルムによれば、高分子層は、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物と、シリコーン系やフッ素系などからなる一種若しくは二種以上の離型剤、ITO(すずをドープした酸化インジウム化合物)、ATO(アンチモンをドープした酸化錫)、AZO(アルミをドープした酸化亜鉛)、酸化錫などからなる一種若しくは二種以上の金属酸化物系導電剤とを主成分とする層であるため、高分子層は、端部よりはみ出した粘着剤が保護フィルム表面への付着がしにくく、例え付着しても容易に除去することができる撥水性,汚れ防止性を持ち、該高分子層面に施されたインクジェットやスタンプ等によるフィルム面への情報の印刷と密着するものであって、静電気を素早く減少させる事ができる表面保護フィルムを提供することができる。また従来は、帯電防止または導電層を基材の上に形成し、さらに防汚層を2工程で形成する方法が採られていたが、この2工程法では、加工コストが高くなり価格を安くすることができなかったが、1工程化によってより安価に生産することに効果がある。
【0015】
平均粒子50nm以上であると表面抵抗値が低く帯電防止効果が得られるが、全光線透過率が低下し、ヘイズが上昇し透視性が著しく損なわれるが、請求項2記載の表面保護フィルムによれば、前述した請求項1記載の発明の効果に加え、高分子層は、平均粒子50nm以下の金属酸化物系導電剤を一種若しくは二種以上含むため、透視性を確保することができ、例えば、全光線透過率が85%以上、ヘイズ10%以下となる光学特性を得ることができる。
【0016】
また、請求項3記載の表面保護フィルムによれば、前述した請求項1又は2記載の発明の効果に加え、被保護部材の表面は、帯電防止性を有し、表面抵抗値が1012Ω/□以下であるため、表面保護フィルムを剥がす時、静電気が発生し光学フィルム表面にゴミが付着したり、光学フィルムを使用した液晶部材の液晶に異常をきたしたり、フラットパネルディスプレイのパネルに使用されている半導体を破損したりしないための、発生した静電気を素早く放出することができる。
【0017】
傷等の防止のため通常は表面保護フィルムを貼ったままの外観検査が行われており、この時透視性が悪いと微細な欠点の目視確認が出来にくくなるが、請求項4記載の表面保護フィルムによれば、前述した請求項1又は2記載の発明の効果に加え、基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、これらの全光線透過率85%以上、ヘイズ10%以下となる光学特性を備えているため、貼ったままで十分欠点確認が可能となる。
【0018】
また、請求項5記載の表面保護フィルムによれば、前述した請求項1又は2記載の発明の効果に加え、総厚が1μm以下であれば透視性を低下させることに影響がでにくいと同時に、価格的にも安価ですみ経済的であり、また、水の接触角が80°以上であると指紋等の汚れやはみ出した粘着剤がつきにくく汚れ防止の効果がある。さらに、インクジェットインキでの印字がセロテープ(登録商標)剥離により脱落しないことは、識別表示のための印字が流通段階でも取れずに維持できる。
【0019】
また、請求項6記載の表面保護フィルムによれば、基材と導電剤を密着させるためのバインダー効果と耐摩耗性をアップさせるのに効果がある。また、シリコーンが含まれることにより、汚れが付きにくく防汚効果を有する。
【0020】
また、請求項7記載の表面保護フィルムによれば、前述した請求項1又は2記載の発明の効果に加え、撥水性,汚れ防止性を持ち、該高分子層面に施された印刷と密着するものであって、端部よりはみ出した粘着剤が保護フィルム表面への付着がしにくく、例え付着しても容易に除去することができると共に、フィルム面への情報の印字を確実に行うことができ、静電気を素早く減少させる事ができる表面保護フィルムを提供することに効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の一実施例である表面保護フィルムについて図面を参照して説明する。
図1〜図2において、Aは偏光板、輝度向上フィルムや位相差板等の被保護部材(図示せず)の表面を保護する表面保護フィルムであって、被保護部材(図示せず)の製造工程や搬送工程において、該被保護部材の表面へ剥離自在に貼着して、この表面の保護を図るもので、該表面保護フィルムAに、汚れ防止性とインク等による印字適性とを兼ね備えさせたものであり、第一の実施例に示す表面保護フィルムAは、図1に示すように、基材1と、この基材1の一方の面に位置する粘着層2と、基材1の他方の面に位置する高分子層3とにより基本的に構成される。
【0022】
基材1は、ポリエチレンやポリプロピレン,ポリエステル,ポリイミド,ポリカーボネート等を原料とする合成樹脂およびこれらの積層体を用いることができるが、なかでも、透明性や使用時の耐熱性を考慮し、二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、これらの基材1の表面にコロナ処理等の易接着処理を施すこともできる。
この基材1のフィルム厚さは、16μm乃至50μm程度で、好ましくは、25μm乃至38μmが適当である。これは、基材1のフィルム厚さが16μm未満であると薄すぎて、外部からの突起物等による打痕などにより前記被保護部材を保護することに難があるほか、被保護部材に対してシワを付けることなく貼り付けることや、表面保護フィルムAの剥離作業も困難となる。
また、フィルム厚さが50μmを越えると基材1の剛性が大きすぎて、被保護部材に対して浮き無く均一に貼着することが難しい上、表面保護フィルムAの価格構成上、その大半を占める原反フィルムに掛かる費用が大となり過ぎ、当該表面保護フィルムAに求められる経済性が低下する。
【0023】
また、粘着層2は、基材1の一側面、すなわち、被保護部材(図示せず)への対応面側に設けてあって、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤,シリコーン系粘着剤、また、必要に応じて、UV硬化タイプなど一般的に知られている粘着剤を用いることができるが、耐熱性や経済性の点からアクリル系粘着剤が特に好ましい。
また、該粘着層2の基材1への形成にあっては、前記物質を有機溶剤等へ溶解させて塗工液とし、公知の任意の塗布方法、例えば、グラビアコート法やリバースコート法,ロールコート、コンマコート法等を用いることにより形成することができる。更には、溶融押し出し法によっても形成することができる。
【0024】
また、高分子層3は、基材1の他側面、すなわち、被保護部材(図示せず)とは反対側面に設けてあって、撥水性や汚れ防止性を持ち、なおかつ、印字適性やインク接着性を有するものであり、シリコーン系やフッ素系等の離型剤をアクリル樹脂やポリエステル樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,ウレタン樹脂,エポキシ樹脂,スチレン樹脂,セルロース樹脂,スチレンマレイン酸樹脂,塩ビ・酢ビ樹脂,フェノール樹脂などの一種若しくは二種以上の高分子化合物に添加されて得られる。
特に、該高分子層3は、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物と、シリコーン系やフッ素系などからなる一種若しくは二種以上の離型剤とを主成分とする層である。
更に、シリコーン・アクリレート系櫛形グラフトポリマー単独、および、前記した高分子化合物を混合したものは当該高分子層3として有効である。
この櫛形グラフトポリマーは、ガラス転移点が60℃乃至180℃と高いと共に、該櫛形グラフトポリマーの枝部分がシリコーンで構成されているために撥水性を有し、傾斜型摩擦測定器による静摩擦係数は0.2乃至0.4と程良いすべり性があり、かつ、十分な被膜強度を有するので、積み重ね時揃えやすい。
また、櫛形グラフトポリマーは、イソシアネート系反応剤を添加し、硬化させたものであっても、また、反応を為す硬化剤が無添加のものであってもよい。
更に、前記した高分子層3は、その層厚が1μm以下、すなわち、0.003μm〜1μmであって、好ましくは、0.02μm〜0.2μmである。 該高分子層3の層厚が低すぎると、十分な被膜強度が得られず、摩擦および水等での洗浄に耐えず、また帯電防止に必要な表面抵抗値が得られない。
該高分子層3の表面抵抗値が1012Ω/□より大きいと、保護フィルムを剥離によって除去するときに生じる静電気の発生を防止することができず、ゴミ等の付着を誘発する。また、液晶ディスプレイに保護フィルムを適用したときには、保護フィルムを剥離した際に生ずる剥離帯電により、該液晶ディスプレイの素子を破壊する問題も生ずる。 また、この高分子層3の層厚が厚すぎても、透視性の低下および経済的効果が得られにくい。
シリコン・アクリレート系櫛形グラフトポリマーの割合が大きすぎると、粘着テープによる剥離力が軽くなりすぎて、セロハン粘着フィルムによる表面保護フィルムの剥離作業に支障を生じ、また、割合が小さすぎると、撥水性や汚れ防止性能が不足する。
このことは、離型剤を高分子化合物に添加した場合にも当てはまり、高分子化合物への離型剤の添加量はコントロールされなければならない。
すなわち、該高分子層3は、水の接触角80°以上、好ましくは90°以上、セロハン粘着テープによる180°剥離強度が100g〜500g/24mm、好ましくは250g〜420g/24mmである。
また、該高分子層3の基材1への形成にあっては、前記物質を有機溶剤または水等へ溶解させて塗工液とし、公知の任意の塗布方法、例えば、グラビアコート法やリバースコート法,ロールコート法等を用いることにより形成することができる。
更には、溶融押し出し法によっても形成することができる。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、本発明の他の実施例を説明する。
図2においては、本発明に係る実施例の表面保護フィルムAを示すもので、図3はさらにその高分子層3の状態を示す。すなわち、高分子層3中には高分子化合物と離型剤おとび金属酸化物系導電剤が分散し混合している。金属系酸化物導電剤は有る程度接触しており帯電防止効果を発現する。また、高分子化合物はインキおよび基材1両者の密着に寄与し離型剤と金属酸化物系帯電防止剤を固定させる役目ももつ。さらに分散している離型剤はアクリル系粘着剤に対する離型性があり、表面の防汚効果を得ることが出来る。
【0026】
この高分子化合物は、フィルムに塗工して用いられるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂,ウレタン樹脂,ナイロン樹脂などの一種若しくは二種以上の高分子化合物、更には、これら高分子化合物の代わりにUV硬化樹脂および熱硬化樹脂が用いることができる。
【0027】
離型剤はシリコーン・アクリレート系櫛形グラフトポリマーまたはフッソ・アクリレート系櫛形グラフトポリマーで高分子化合物との相溶性が良いものであり、密着性を阻害しない。 金属酸化物系導電剤は、ITO(すずをドープした酸化インジウム化合物)、ATO(アンチモンをドープした酸化錫)、AZO(アルミをドープした酸化亜鉛)、酸化錫などからなり一種若しくは二種以上を混合して用いられる。さらに、この金属酸化物系導電剤の粒子径は平均粒子50nm(ナノメーター)以下でないと透視性が損なわれる。これによって形成された帯電防止層は、表面抵抗値が1012Ω/□以下である。
高分子層3の表面抵抗値が1012Ω/□より大きいと、保護フィルムを剥離によって除去するときに生じる静電気の発生を防止することができず、ゴミ等の付着を誘発する。また、液晶ディスプレイに保護フィルムを適用したときには、保護フィルムを剥離した際に生ずる剥離帯電により、該液晶ディスプレイの素子を破壊する問題も生ずる。
【0028】
これらの基材1への形成にあっては、前記物質を有機溶剤または水等へ溶解させて塗工液とし、公知の任意の塗布方法、例えば、グラビアコート法やリバースコート法,ロールコート法等を用いることにより形成することができる。
更には、溶融押し出し法によっても形成することができる。
【実施例1】
【0029】
厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、2―エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/アクリル酸の各モノマーを重量で85/15/3比で配合し、2.2´-azobis-isobutylonitrileを触媒とし、窒素気流下、酢酸エチル中で重合して得た重合度Mw=70−80万、固形分30%の再剥離型アクリル系粘着剤を、コロネートLと重量比で100:3に配合し、固形分で25g/m2塗工、100℃、3分間乾燥して粘着層を形成した。
他面に、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーとポリエステル樹脂、粒子径が30nm(ナノメーター)の酸化錫系金属酸化物導電剤を固形分比1/3/1で混合し、固形分として0.1g/m2塗工、更に、100℃、30秒間乾燥して汚れ防止層を形成した。
次に、シリコーン系離型剤を塗工してなる25μm厚の二軸延伸ポリエステルをベースとする剥離フィルムを粘着層と貼り合わせ、巻き取り状の表面保護フィルムを得た。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同様に、厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に粘着層を形成し、他面に幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーのエマルジョンとエマルジョン系ポリエステル樹脂、粒子径が30nm(ナノメーター)で水に分散したITO系金属酸化物導電剤を固形分比4/8/1で混合し、固形分として0.1g/m2塗工、更に、100℃、1分間乾燥して帯電防止性を有する汚れ防止層を形成した。
また、実施例1と同様に25μmの二軸延伸ポリエステルベースの剥離フィルムと貼り合わせ、巻き取り状の表面保護フィルムを得た。
【実施例3】
【0031】
実施例1と同様に、厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に粘着層を形成し、他面に、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーのエマルジョンとエマルジョン系ポリエステル樹脂、粒子径が30nm(ナノメーター)で水に分散したATO系金属酸化物導電剤を4/4/1で混合し、固形分として0.5g/m2塗工、更に80℃、1分間乾燥後、35℃、5日間乾燥させて帯電防止層を有する汚れ汚れ防止層を形成した。
次にシリコーン離型剤を塗工してなる25μm厚の二軸延伸ポリエステルをベースとする剥離フィルムを粘着層と貼り合わせ、巻き取り状の表面保護フィルムを得た。
【実施例4】
【0032】
実施例1と同様に、厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に粘着層を形成し、他面に、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の5%及至10%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーのエマルジョンと粒子径が30nm(ナノメーター)で水に分散したAZO系金属酸化物導電剤を3/1で混合し、固形分として0.5g/m2塗工、更に90℃、1分間乾燥させて帯電防止層を有する汚れ防止層を形成した。
(比較例1)
【0033】
汚れ防止層として、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーとポリエステル樹脂、第4級アンモニウム塩系帯電防止剤(いわゆる界面活性剤)を固形分比1/3/1で混合し、固形分として更に100℃、30秒間乾燥して帯電防止層を有する汚れ防止層を形成した。他面は、実施例1と同様の処理を施した表面保護フィルムを作成した。
(比較例2)
【0034】
汚れ防止層として、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーと分子量10000以上でガラス転移点50℃以上のポリエステル樹脂、ポリチオフェン系導電性高分子剤を固形分比1/5/1で混合し、固形分を0.5g/m2塗工、更に80℃、1分間乾燥して帯電防止層を有する汚れ防止層を形成した。
他面は、実施例1と同様の処理を施した表面保護フィルムを作成した。
(比較例3)
【0035】
汚れ防止層として、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーとポリエステル樹脂、粒子径が平均粒子70nm以上の酸化錫系金属酸化物導電剤を1/3/1で混合し、固形分として0.1g/m2塗工、更に100℃、30秒間乾燥して帯電防止層を有する汚れ防止層を形成した。
他面は、実施例1と同様の処理を施した表面保護フィルムを作成した。
(比較例4)
【0036】
汚れ防止層として、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分が全体の30%及至40%占めるシリコーンマクロモノマーで構成された、分子量20及至30万の櫛形グラフトポリマーと酸化錫系金属酸化物導電剤を固形分比5/1で混合し、 固形分として0.5g/m2塗工、更に、80℃、30秒間乾燥して汚れ防止層を形成した。
次に、シリコーン系離型剤を塗工してなる25μm厚の二軸延伸ポリエステルをベースとする剥離フィルムを粘着層と貼り合わせ、巻き取り状の表面保護フィルムを得た。

【表1】


なお、前記表1におけるA〜Eの項目及び結果については、以下に表示される。

A : 表面抵抗値 (Ω/□)
B : インク密着性
印字部分にセロテープ(登録商標)をつけた後に剥離
○ : 印字部分の脱落がない
△ : 印字部分の脱落が部分的に認められる
× : 印字部分がほとんど脱落する
C : 全光線透過率(%)
D : ヘイズ (%)
E : 蒸留水による接触角(度)
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の一実施例である表面保護フィルムの概略的構成図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例である表面保護フィルムの概略的構成図である。
【図3】図3は、図2の高分子層の概略的構成図である。
【符号の説明】
【0038】
A 表面保護フィルム
1 基材
2 粘着層
3 高分子層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、
前記高分子層は、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物と、シリコーン系やフッ素系などからなる一種若しくは二種以上の離型剤、ITO(すずをドープした酸化インジウム化合物)、ATO(アンチモンをドープした酸化錫)、AZO(アルミをドープした酸化亜鉛)、酸化錫などからなる一種若しくは二種以上の金属酸化物系導電剤とを主成分とする層である
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
高分子層は、平均粒子50nm以下の金属酸化物系導電剤を一種若しくは二種以上含む
ことを特徴とする請求項1記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
被保護部材の表面は、帯電防止性を有し、表面抵抗値が1012Ω/□以下である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、これらの全光線透過率85%以上、ヘイズ10%以下となる光学特性を備えている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
高分子層は、その層厚が1μm以下、水の接触角80°以上、インクジェットインキでの印字がセロテープ(登録商標)剥離によって脱落しない
ことを特徴とする請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、
前記高分子層は、シリコーン・アクリレート系櫛形グラフトポリマー単独(マクロモノマー)、若しくは、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物との混合物からなる
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項7】
高分子層は、高分子化合物、離型剤と金属酸化物系導電剤の比率は、離型剤/高分子化合物/金属酸化物系導電剤=1〜20/0〜20/1〜10である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の表面保護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−326961(P2006−326961A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152200(P2005−152200)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000106151)株式会社サンエー化研 (13)
【Fターム(参考)】