説明

表面保護用粘着フィルム

【課題】例えば大面積の光学機能を有する偏光板等の光学デバイスの表面保護用として用いた際の剥離帯電が少ない表面保護用粘着フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設け、粘着剤層を形成する粘着剤として、親水性基を有するアクリル系ポリマー中に帯電防止剤およびノニオン系界面活性剤を配合したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離帯電防止性に優れた表面保護用粘着フィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、静電気が発生しやすいプラスチック素材を用いた偏光板の表面保護用として特に好適に用いることのできる表面保護用粘着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示板に用いられる偏光板等の光学機能を有する光学フィルムは、その表面を保護する目的で表面保護フィルムが貼り付けられて取り扱われる場合が多い。例えば、液晶表示板を製造する工程においては、液晶セルを組み立てるまでの間、偏光板の表面を保護する目的で、偏光板の表面には表面保護フィルムが貼り付けられている。従来、かかる表面保護フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)表面に、軽剥離性の粘着剤層を設けたものが用いられている。このような表面保護フィルムは、軽剥離性の粘着剤層により、剥離可能な状態で偏光板の表面に貼り付けることができる。
【0003】
これらの表面保護フィルムは、光学フィルムが実装された後に表面保護の役目を終えて剥がすとき、剥離帯電を生じやすいという問題がある。従来、剥離面積が小さい場合は、剥離時に静電気が生じても、その帯電圧は問題を生じるほど大きくならず、電子部品等への影響は小さかった。しかしながら、近年ディスプレイの大型化等に起因して剥離面積が増大し、剥離時の帯電圧が高くなり、静電気により電子部品等が破壊するという問題を生じやすくなった。この問題は、表面保護フィルムのいずれか一方の面に帯電防止層を設けるか、または、帯電防止剤をフィルム中に添加することにより、ある程度は抑制できるものの、その効果はいまだ不充分なものであった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−256115号公報
【特許文献2】特開2001−209039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記の問題を解決するため、既に、親水性基を有するアクリル系ポリマーと帯電防止剤とを含むアクリル系粘着剤から形成された粘着剤層を有する表面保護用粘着フィルムを提案している。しかしながら、剥離帯電に係る要求は、近年さらに高くなっており、剥離帯電防止性をさらに高めることが要求されている。例えば、近年、視野角拡大やコントラスト向上のためにIPS方式やVA方式の液晶表示板がよく用いられているが、これらは特に静電気による破壊が生じやすく、問題となっている。
【0006】
本発明の目的は、各種光学フィルム、特に大面積の光学フィルムの表面保護用(例えば大型ディスプレイ用の各種光学フィルムの表面保護用)として用いた際に、優れた剥離帯電防止効果を有する表面保護用粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設け、粘着剤層を形成する粘着剤として、親水性基を有するアクリル系ポリマー中に帯電防止剤およびノニオン系界面活性剤を配合したものを用いれば、優れた剥離帯電防止効果が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる表面保護用粘着フィルムであって、該粘着剤層が、親水性基を有するアクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、ノニオン系界面活性剤とを含むアクリル系粘着剤から形成されていることを特徴とする表面保護用粘着フィルムである。
【0009】
また、本発明は、帯電防止剤が常温で液体のイオン系帯電防止剤であること、帯電防止剤が、下記式(A)〜(C)で表されるカチオンの少なくとも1種を含むイオン系帯電防止剤であること、
【化1】

(式(A)中、Raは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の炭化水素基を表す。RbおよびRcは、同一または異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。但し、窒素原子が2重結合を含む場合にはRcはない。)
(式(B)中、Rdは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表す。Re、RfおよびRgは、同一又は異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。)
(式(C)中、Rhは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表す。Ri、RjおよびRkは、同一又は異なって、水素またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から16の炭化水素基を表す。)
親水性基を有するアクリル系ポリマーの親水性基が、−(OCHCHORであること(但し、Rは水素原子、炭化水素基またはアシル基を示し、nは1以上の整数を示す。)、ノニオン系界面活性剤がアルキルエーテルであること、ノニオン系界面活性剤がフッ素含有アルキルエーテルであること、アクリル系粘着剤がイソシアネート系架橋剤を含有することのうち、少なくとも1つの態様を具備することによって、さらに優れた表面保護用粘着フィルムが提供される。
【0010】
また、本発明は、本発明の表面保護用粘着フィルムを偏光板の表面保護用として用いる態様、偏光板に、本発明の表面保護用粘着フィルムが貼付されてなる表面保護フィルム付偏光板、画像表示装置に、本発明の表面保護用粘着フィルムが貼付されてなる画像表示装置を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面保護用粘着フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に粘着剤層を有し、かかる粘着剤層が、親水性基を有するアクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、ノニオン系界面活性剤とを含むアクリル系粘着剤から形成されている。かかる構成により、本発明の表面保護用粘着フィルムは、粘着性を損なうことなく剥離帯電を抑制することができる。例えば、大面積の光学フィルムの保護フィルムとして用いた場合でも、該保護フィルムを剥離する際の剥離帯電が少ない。また、製品の欠点検査を精度よく行うことができる。したがって、本発明の表面保護用粘着フィルムは、偏光板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表面保護用として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面保護用粘着フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、親水性基を有するアクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、ノニオン系界面活性剤とを含むアクリル系粘着剤から形成された粘着剤層を有している。
【0013】
<粘着剤層>
(帯電防止剤)
本発明において粘着剤層に用いられる帯電防止剤は、その種類は特に限定されない。粘着剤層の粘着特性を損なうことがなく、しかも併用されるアクリル系ポリマー中の親水性基との相互作用により、優れた帯電防止効果が得られることから、カチオン系またはアニオン系のイオン系帯電防止剤が好ましい。かかるイオン系帯電防止剤としては、窒素、硫黄またはリンのオニウム塩であるカチオン系帯電防止剤が特に好ましい。なかでも下記式(A)〜(C)で表されるカチオンの少なくとも1種を含むカチオン系帯電防止剤が好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(式(A)中、Raは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の炭化水素基を表す。RbおよびRcは、同一または異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。但し、窒素原子が2重結合を含む場合にはRcはない。)
(式(B)中、Rdは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表す。Re、RfおよびRgは、同一又は異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。)
(式(C)中、Rhは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表す。Ri、RjおよびRkは、同一又は異なって、水素またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から16の炭化水素基を表す。)
【0016】
また、本発明における帯電防止剤としては、常温で液体のイオン系帯電防止剤が好ましい。かかる常温で液体のイオン系帯電防止剤としては、上記式(A)〜(C)で表されるカチオン系帯電防止剤が特に好ましい。帯電防止剤をこのような態様とすることによって、粘着剤層の粘着特性を損なうことなく、さらに優れた帯電防止効果が得られる。なお、本発明で用いられる帯電防止剤は2種以上を併用しても構わない。
【0017】
好ましく用いられるカチオン系帯電防止剤のうち、上記式(A)で表されるカチオンとしては、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン等が挙げられる。具体例としては、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオン等が挙げられる。
【0018】
上記式(B)で表されるカチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0019】
上記式(C)で表されるカチオンとしては、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン等が挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオン等が挙げられる。
【0020】
一方、好ましく用いられるカチオン系帯電防止剤において、そのアニオン成分は特に限定されない。例えば、かかるアニオン成分としては、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等が用いられる。なかでも、フッ素原子を含むアニオン成分は、常温で液体となる低融点のイオン系帯電防止剤が得られることから好ましく用いられる。
【0021】
本発明において特に好ましく用いられる、常温で液体のカチオン系帯電防止剤の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分とを適宜選択して組み合わせたものが挙げられる。例えば、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0022】
粘着剤層中の帯電防止剤の好ましい配合量は、後述する親水基を有するアクリル系ポリマーの種類によって異なる。一般的には、配合量が少なすぎる場合は、帯電防止効果が低くなる傾向にある。他方、多すぎる場合は、被着体となる光学フィルムにおける汚染が増加する傾向にある。そのため、上記式(A)〜(C)をカチオン成分とするカチオン系帯電防止剤の場合は、その配合量は、一般には親水性基を有するアクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上40質量部以下、さらに好ましくは0.03質量部以上20質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以上10質量部以下である。配合量を上記数値範囲とすることによって、帯電防止効果と、被着体の汚染とのバランスに優れたものとなる。
【0023】
(ノニオン系界面活性剤)
本発明は、粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤が、ノニオン系界面活性剤を含有することに特徴を有し、それによって優れた剥離帯電防止効果を奏するものである。
一般的に、イオン系界面活性剤が帯電防止効果を奏することは知られている。これに対して本発明者は、親水性基を有するアクリル系ポリマーと帯電防止剤とから形成されるアクリル系粘着剤に、さらにノニオン系界面活性剤を添加すると、それから形成された粘着剤層は、より優れた剥離帯電防止効果を奏することを見出した。このメカニズムは定かではないが、粘着剤層に含まれるノニオン系界面活性剤が、わずかに被着体に移行し、それにより粘着剤層と被着体との帯電列が近くなるためと推測される。
【0024】
本発明において粘着剤層に用いられるノニオン系界面活性剤は、その種類は特に限定されない。粘着剤層からのブリードアウトが多いと、粘着剤層の粘着特性を損なう場合があり、また、偏光板を汚染する場合があり、それらを抑制するために親水性基を有するアクリル系ポリマーと相溶性の高いものが好ましい。
【0025】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン型、多価アルコール脂肪酸エステル型、多価アルコールアルキルエーテル型、含窒素型等の界面活性剤、およびノニオン系のシリコーン系界面活性剤、ノニオン系のフッ素系界面活性剤等を例示することができる。
【0026】
ポリオキシアルキレン型界面活性剤としては、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシアルキレン)アルキルフェニルエーテル、ポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステル、ポリ(オキシアルキレン)ソルビタン脂肪酸エステル等を例示することができる。かかるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましく、オキシエチレン基がさらに好ましい。また、これらの共重合体や混合物でもよい。本発明においては、なかでも、アルキルエーテルの構造を有するノニオン系界面活性剤が好ましく、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテルが好ましい。かかるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましく、オキシエチレン基が特に好ましい。かかるアルキル基としては、炭素数12以上のアルキル基が好ましく、炭素数12以上18以下のアルキル基が特に好ましい。このような構造を有するノニオン系界面活性剤を用いることにより、剥離帯電防止性をより高くすることができる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等を特に好ましく例示することができる。なお、アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0027】
多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。
【0028】
多価アルコールアルキルエーテル型界面活性剤としては、アルキルポリグリコキシド等を例示することができる。本発明においては、アルキルエーテルの構造を有するノニオン系界面活性剤が好ましく、かかる多価アルコールアルキルエーテル型界面活性剤は、本発明における好ましいノニオン系界面活性剤の1つであり、剥離帯電防止性をより高くすることができる。
【0029】
含窒素型界面活性剤としては、アルキルジエタノールアミド、アルキルアミンオキシド等を例示することができる。
【0030】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等を例示することができる。また、かかる変性シリコーンの構造としては、側鎖変形型、両末端変性型(ABA型)、片末端変性型(AB型)、両末端側鎖変性型、直鎖ブロック型(ABn型)、分岐型等に分類されるが、いずれの構造のものであってもよい。
【0031】
フッ素系界面活性剤としては、上記のようなノニオン系界面活性剤におけるアルキル基の水素原子の一部もしくは全部をフッ素原子で置換して、フルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルキル基とした、ノニオン系のフッ素含有界面活性剤を例示することができる。本発明においては、なかでも、アルキルエーテルの構造を有するものが好ましく、フッ素含有アルキルエーテルが好ましい。さらに、パーフルオロアルキル基の形態で、フッ素を含有しているものが好ましい。このようなノニオン系のフッ素含有界面活性剤を用いることにより、剥離帯電防止性をより高くすることができる。このメカニズムは定かではないが、偏光板等の被着体の表面が、防汚等を目的としてフッ素化合物を用いて処理されている場合に、粘着剤層がフッ素を含有することによって、粘着剤層と被着体との帯電列が近くなるためだと推測される。
【0032】
このようなノニオン系のフッ素含有界面活性剤は、市販品をそのまま用いることができる。かかる市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のメガファックシリーズ(例えば、MCF350−5、F445、F455、F178、F470、F475、F479、F477、TF1025、F478、F178K等)、東芝シリコーン社製のTSFシリーズ等、信越化学社製のX22シリーズ、KFシリーズ等、チッソ社製のサイラプレーンシリーズ等が挙げられる。
【0033】
ノニオン系界面活性剤の配合量は、親水性基を有するアクリル系ポリマー100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下が好ましい。配合量が上記数値範囲にあると、剥離帯電防止性により優れ、また、粘着剤層の強度に優れる。配合量が少なすぎる場合は、剥離帯電防止性に劣る傾向にある。他方、配合量が多すぎる場合は、粘着剤層の強度が低くなる傾向にある。また、被着体への移行成分が増加する傾向にある。このような観点から、配合量は、さらに好ましくは1質量部以上10質量部以下、特に好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0034】
(親水性基を有するアクリル系ポリマー)
本発明における粘着剤層を形成するアクリル系ポリマーは、親水性基を有している。アクリル系ポリマーが親水性基を有していない場合は、前述の帯電防止剤、およびノニオン系界面活性剤を併用しても剥離帯電防止効果が十分に発現しないばかりか、帯電防止剤が、被着体である偏光板等の光学フィルムに転写して、その表面を汚染してしまう場合がある。
【0035】
好ましく用いられる親水性基を有するアクリル系ポリマーとしては、アルキル基の炭素数が1以上14以下であるアルキルアクリレートおよび/またはメタアクリレート(以下、(メタ)アクリレートと略称することがある。)と、親水性基を有する(メタ)アクリレートとの共重合体を挙げることができる。かかる共重合体においては、親水性基を有する(メタ)アクリレートの共重合割合は20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。共重合割合が上記数値範囲にあると、帯電防止剤を添加することによって奏される効果がより向上する。また、剥離帯電防止性をより高くすることができる。また、共重合体の分子量は、重量平均分子量で10万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、粘着剤層の粘着特性をより優れたものとすることができる。また、剥離帯電防止性をより高くすることができる。
【0036】
上記水酸基を有するアクリル系ポリマーにおいて好ましく用いられる、アルキル基の炭素数が1以上14以下であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらを用いることによって、粘着剤層の粘着特性をより優れたものとすることができる。
【0037】
また、親水性基を有する(メタ)アクリレートとしては、親水性基として水酸基、エーテル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、カルボキシル基等を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも、水酸基、エーテル基、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。特に、−(OCHCHORで表される水酸基やエーテル結合を有する親水性基(但し、Rは水素原子、炭化水素基またはアシル基を示し、nは1以上の整数を示す。)が好ましい。具体的には、エチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、テトラエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、およびこれらの化合物中に存在する水酸基がエチルエーテル基で置換されたもの等を挙げることができる。なかでも、−(OCHCHORで表される(但し、n=1以上5以下)親水性基を有する、低重合度ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。これらの親水性基を有する(メタ)アクリレートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このような親水性基を有する(メタ)アクリレートを用いることによって、帯電防止剤を添加することによって奏される効果がより向上する。また、剥離帯電防止性をより高くすることができる。
【0038】
かかる親水性基を有するアクリル系ポリマーは、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類を挙げることができる。
【0039】
(架橋剤)
本発明におけるアクリル系粘着剤は、架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤を併用することによって、粘着剤層の凝集力が高くなり、耐熱性が向上する。また、剥離帯電防止性をより高くすることができる。架橋剤としては、特に限定されないが、適度な凝集力が得られることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、なかでもイソシアネート系架橋剤が好ましい。好ましく用いられるイソシアネート系架橋剤としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX)(いずれも日本ポリウレタン工業(株)製)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよいし、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
架橋剤の配合量は、用いられる架橋剤と親水性基を有するアクリル系ポリマーの種類、さらには、被着体となる光学フィルムの種類等によって適宜選択すればよい。一般的には、アクリル系粘着剤の凝集力を向上させて充分な耐熱性を得るためには、上記親水性基を有するアクリル系ポリマー100質量部に対して0.01質量部以上配合するのが好ましい。配合量が多すぎる場合は、粘着剤層の柔軟性や接着性が低下する傾向にある。そのため、配合量は、親水性基を有するアクリル系ポリマー100質量部に対して15質量部以下の範囲とするのがより好ましく、1質量以上5質量部以下の範囲とするのが特に好ましい。
【0041】
(その他の添加剤)
さらに本発明における粘着剤層には、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料等の粉体、粒子状、箔状物等の従来公知の各種添加剤を、使用する用途に応じて適宜添加しても構わない。
【0042】
<ポリエステルフィルム>
本発明で用いられるポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるフィルムが挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。また、ポリエステルフィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、10μm以上200μm以下の範囲が好ましく、20μm以上50μm以下の範囲が特に好ましい。
【0043】
<製造方法>
粘着剤層の形成方法は、特に限定されず、粘着テープ等の製造に用いられる公知の方法を採用することができる。具体的には、上記の粘着剤層を形成する各成分を適当な溶媒に溶解・分散させた粘着剤塗液を、ポリエステルフィルムに塗布し、乾燥・硬化することによって形成される。塗布方法は、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコート等の方法から、適宜選択することができる。
【0044】
本発明の表面保護用粘着フィルムを、例えば偏光板等の光学フィルムの表面保護に用いる場合は、粘着剤層中および粘着剤層表面の異物個数が、径が150μm以上の異物で0個/mであり、かつ、70μm以上150μm未満の異物で5個/m以下であることが好ましい。異物個数がこれを超える場合は、被着体である偏光板等の光学フィルムと表面保護用粘着フィルムの粘着剤層との間に気泡が入ってしみになったり、搬送時に表面保護用粘着フィルムが剥離しやすくなったりする傾向にある。また、表面保護用粘着フィルムを貼付したままで光学フィルム等を検査する場合の検査精度が低下する傾向にある。
【0045】
このような異物個数の少ない表面保護用粘着フィルムは、上記の粘着剤塗液を塗布する際に、平均目開きが1μm以上20μm以下のフィルターでろ過した粘着剤塗液を使用することにより得ることができる。フィルターは、粘着剤塗液中のゲル成分および異物を効率的に捕集できるものであれば、特に制限されない。好ましく用いられるフィルターとしては、例えば不織布タイプ、糸巻きタイプ等を挙げることができる。また、ろ過は、1段ではなく、はじめに目の粗いフィルターを用い、次いで目の細かいフィルターを用いる2段以上のろ過を行ってもよい。なお、ろ過処理によって、粘着剤塗液を調製する際の攪拌処理等により生じたエアーを粘着剤塗液から分離できるので好ましい。
【0046】
また、粘着剤塗液を塗布する工程のクリーン度をクラス1000以下にすることが好ましい。上記ろ過処理によって粘着剤塗液中の異物をなくしても、塗工中、または塗工後の製品の搬送工程で異物が粘着剤層表面に付着してしまう可能性があるので、クリーン度のクラスはできるだけ低い数値の方が好ましい。クリーン度をクラス1000以下に保つためには、工程内に持ち込むエアーをHEPAフィルターでろ過することが好ましい。また、コーター周辺から粘着剤塗液中へ混入する塵芥等の異物による汚染を抑制する目的で、コーターの塗工ヘッドの周囲は別室として覆うことが好ましい。
【0047】
さらに、塗工後のフィルムをスリットする際に、ベースフィルムの切粉が発生し、該切粉がフィルムに付着することにより異物となることもある。これを防止するために、スリット刃を丸刃にして一定箇所に切粉がたまらないようにしたり、スリット刃周辺を吸引して、発生した切粉がフィルムに付着しないようにすることが好ましい。
【0048】
以上の成分より形成される粘着剤層の厚みは、通常3μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上30μm以下の範囲とすればよい。厚みが上記数値範囲にあると、粘着剤層の粘着特性がより優れたものとなる。また、剥離帯電防止性をより高くすることができる。
【0049】
以上に説明した本発明の表面保護用粘着フィルムは、例えば偏光板や画像表面装置の表面に貼付することにより、これらを検査する際や搬送する際に、表面にキズがつくことを防止することができる。また、表面保護を必要としなくなった後に、光学フィルムから表面保護用粘着フィルムを剥離する際の剥離帯電が少ないので、静電気放電に起因するデバイスの破壊等のトラブル発生を抑制することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0051】
(1)剥離帯電特性
AGLR偏光板(株式会社サンリッツ製のクリスタルクリア偏光板。防眩処理した偏光板に、さらに低反射処理および防汚処理を施したもの。)を、幅70mm、長さ100mmのサイズに切り出した。次いで、該AGLR偏光板を、あらかじめ除電しておいた厚み1mm、幅70mm、長さ100mmのガラス板に、粘着剤を介してハンドローラーにて貼り合わせてしっかりと固定し、被着体を作製した。該被着体を十分に除電した後、該被着体におけるAGLR偏光板の表面に、幅70mm、長さ130mmのサイズにカットした表面保護用粘着フィルムを、粘着剤層がAGLR偏光板側となるように、かつ長さ方向における片側の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着し、サンプルを作成した。次いで、得られたサンプルを、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に一日放置した。その後、自動巻取り機を有する台座を用意し、台座にはサンプルのガラス板側の表面を両面テープによりしっかりと貼り付け固定した。また、自動巻取り機にはサンプルの30mmはみ出した端部を固定した。次いで、自動巻取り機を作動させて、剥離角度150°、剥離速度10m/minの条件で表面保護用粘着フィルムを剥離した。かかる剥離の際に、剥離部分の上方高さ100mmの位置に固定した電位測定機(春日電機(株)社製、商品名:KSD−0103)にて剥離時のAGLR偏光板表面の電位を測定し、剥離帯電量(単位:kV)とした。測定は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で行った。
なお、本発明においては、剥離帯電量は、0.18kV未満が好ましく、0.15kV未満がさらに好ましく、0.1kV未満が特に好ましい。
【0052】
(2)異物個数の測定
表面保護用粘着フィルムをA4サイズの偏光板に貼り付けた。次いで、貼り付けた表面保護用粘着フィルム全範囲を、クロスニコル法にて目視検査して、表面保護用粘着フィルムにおける粘着剤層中の異物、および粘着剤層表面の異物の個数をカウントした。検査は、A4サイズのサンプル30枚について行い、その結果を1平方メートル当たりの異物個数(単位:個/m)に換算した。なお、異物の長径を異物の径とした。
【0053】
(3)重量平均分子量
サンプル1mgをヘキサフルオロイソプロパノール0.5mlに溶解後、クロロホルムを加えて10mlとし(濃度0.01w/v%)、メンブレンフィルター0.45μmで濾過したものを測定用溶液とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定における測定装置、および測定条件は以下のとおりとした。
[測定装置]
本体:TOSOH HLC−8020
検出器:本体内蔵(示差屈折計)、TOSOH UV−8011(紫外吸収検出器)
カラム:TOSOH TSK−gel GMHHR−H、TOSOH TSK−gel GMHHR−N、TOSOH TSK−gel G2000H
データ処理装置:TOSOH SC−8020
[測定条件]
移動相:クロロホルム
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
注入量:200μl
標準試料:ポリスチレン(Polymer Laboratories製、商品名:EasiCal”PS−1”)
【0054】
[実施例1]
厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、以下のようにして粘着剤層を設けた。すなわち、親水性基を有するアクリル系ポリマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸ジエチレングリコールエステルとを、表1に示す共重合割合となるように共重合したアクリルポリマー(重量平均分子量40万)を、固形分濃度が40質量%となるようにトルエンで希釈した。次いで、かかるアクリルポリマー100質量部に対して、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートを2質量部、帯電防止剤として、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオンとカウンターイオンとしての6フッ化リンとからなるカチオン系帯電防止剤を2質量部、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲン106)を2質量部添加して粘着剤塗液を得た。なお、ここで用いたカチオン系帯電防止剤は、常温で液体であった。得られた粘着剤塗液を、加圧脱泡した後、平均目開き20μmの糸巻きフィルターおよび平均目開き10μmの糸巻きフィルターを用いて2段でろ過した後、塗工ヘッド周りが別室に隔離されたグラビアコーターを用いて塗布した。次いで、100℃で2分間塗膜を乾燥・硬化させ、厚み15μmの粘着剤層を形成し、表面保護用粘着フィルムを作成した。さらに、得られた表面保護用粘着フィルムを規定サイズにスリットした。この時、切粉防止としてスリット刃周辺を吸引して、切粉が表面保護用粘着フィルムに付着しないようにした。さらに、上記操作をする際には、工程内は、HEPAフィルターで集塵されたエアーが供給されており、クリーン度は、塗工ヘッド周辺はクラス100であり、それ以外の工程はクラス1000であった。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
帯電防止剤として、実施例1で用いたカチオン系帯電防止剤に換えて、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンとカウンターイオンとしての6フッ化リンとからなるカチオン系帯電防止剤を用いる以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。なお、ここで用いたカチオン系帯電防止剤は、常温で液体であった。
【0056】
[実施例3]
親水性基を有するアクリル系ポリマーとして、実施例1で用いたアクリルポリマーに換えて、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸エチレングリコールエステルとを、表1に示す共重合割合となるように共重合したアクリルポリマー(重量平均分子量40万)を用いる以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
親水性基を有するアクリル系ポリマーとして、実施例1で用いたアクリルポリマーに換えて、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸グリシジルとを、表1に示す共重合割合となるように共重合したアクリルポリマー(重量平均分子量40万)を用い、界面活性剤として、実施例1で用いたポリオキシエチレンラウリルエーテルに換えて、ノニオン系のパーフルオロアルキル基含有界面活性剤(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:メガファックF−477)を用いる以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0058】
[実施例5、6]
親水性基を有するアクリル系ポリマーとして、実施例1で用いたアクリルポリマーに換えて、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸ジエチレングリコールエステルとを、表1に示す共重合割合となるように共重合したアクリルポリマー(重量平均分子量40万)を用いる以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
粘着剤層に帯電防止剤および界面活性剤を添加しない以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
実施例1で用いたアクリルポリマーに換えて換えて、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)を用いる以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0061】
[実施例7]
粘着剤塗液をフィルターでろ過しないで塗布する以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0062】
[実施例8]
空調を、HEPAフィルターを使用せずに実施した以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0063】
[実施例9]
帯電防止剤として、実施例1で用いたカチオン系帯電防止剤に換えて、カチオン系のジアルキルアンモニウムクロライド(ライオン株式会社製、商品名:アーカード20−75I)を用いる以外は、実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0064】
[比較例3]
帯電防止剤を添加しない以外は、実施例9と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。得られた表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
以上に説明した本発明の表面保護用粘着フィルムは、粘着剤層として、親水性基を有するアクリル系ポリマー中に帯電防止剤、およびノニオン系界面活性剤を含有させたものから形成されているので、粘着特性を損なうことなく剥離帯電が抑制されている。したがって、例えば偏光板を初め、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表面保護用として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる表面保護用粘着フィルムであって、該粘着剤層が、親水性基を有するアクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、ノニオン系界面活性剤とを含むアクリル系粘着剤から形成されていることを特徴とする表面保護用粘着フィルム。
【請求項2】
帯電防止剤が常温で液体のイオン系帯電防止剤である請求項1に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項3】
帯電防止剤が、下記式(A)〜(C)で表されるカチオンの少なくとも1種を含むイオン系帯電防止剤である請求項1または2に記載の表面保護用粘着フィルム。
【化1】

(式(A)中、Raは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の炭化水素基を表す。RbおよびRcは、同一または異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。但し、窒素原子が2重結合を含む場合にはRcはない。)
(式(B)中、Rdは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表す。Re、RfおよびRgは、同一又は異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。)
(式(C)中、Rhは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表す。Ri、RjおよびRkは、同一又は異なって、水素またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から16の炭化水素基を表す。)
【請求項4】
親水性基を有するアクリル系ポリマーの親水性基が、−(OCHCHORである請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
(但し、Rは水素原子、炭化水素基またはアシル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【請求項5】
ノニオン系界面活性剤がアルキルエーテルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項6】
ノニオン系界面活性剤がフッ素含有アルキルエーテルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項7】
アクリル系粘着剤がイソシアネート系架橋剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項8】
偏光板の表面保護用として用いられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項9】
偏光板に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルムが貼付されてなる表面保護フィルム付偏光板。
【請求項10】
画像表示装置に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルムが貼付されてなる画像表示装置。

【公開番号】特開2010−1360(P2010−1360A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160511(P2008−160511)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】