説明

表面処理水溶液の処理方法および処理装置

【課題】平版印刷版原版、特に平版印刷版用支持体製造時のアルミニウム合金板表面の表面処理において使用した表面処理水溶液(酸性水溶液またはアルカリ性水溶液)を処理する際に、水酸化アルミニウムの固形分の純度の低下および着色を防止する処理方法およびその処理装置の提供。
【解決手段】マンガンおよび/またはマグネシウムを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理方法であって、
前記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
前記表面処理水溶液を中和処理する中和処理工程と、
前記中和処理によって生成する中和生成物のうち、マンガンの水酸化物および/またはマグネシウムの水酸化物の少なくとも一部を除去する除去工程と、を具備する表面処理水溶液の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金板の表面処理水溶液の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミニウム合金板を支持体とする感光性平版印刷版原版(以下「PS版」ともいう。)はオフセット印刷に幅広く使用されている。
【0003】
このPS版の製造工程では、まず、アルミニウム合金板の表面に粗面化処理および陽極酸化処理を施し、必要に応じて親水化処理を施して平版印刷版用支持体を作製し、次いで、平版印刷版用支持体上に画像記録層が形成される。
【0004】
アルミニウム合金板の表面処理では、酸性の表面処理液(酸性水溶液)、アルカリ性の表面処理液(アルカリ性水溶液)および水洗水が適宜使用されている。
ここで、アルカリ性水溶液を使う工程では、アルミニウム合金が溶解することにより表面の凹凸形状を制御するが、その際、アルミニウム合金に含まれるアルミニウム(Al)はアルカリ液中に溶出し、銅(Cu)などのイオン化傾向の低い元素は再度アルミニウム合金板表面に析出することが知られている。
【0005】
一方、Cuほどイオン化傾向が低くない元素は、水酸化物または酸化物の形でアルカリ性水溶液中に混入し、また、Al中にもともと金属間化合物として存在する金属元素も、アルカリ性水溶液中に脱落して混入することが知られている。
【0006】
アルカリ性水溶液中に混入するこれらの固形分の一部は、表面処理における水洗水により洗い流されるが、水洗水で洗い流されない固形分は、次工程に持ち込まれる。
また、アルカリ性水溶液中に混入するこれらの固形分の大部分は、アルカリ性水溶液中に分散して徐々に蓄積され、アルカリ処理液そのものを汚染する原因となる。
【0007】
通常、アルミニウム合金板の表面処理に用いたアルカリ性水溶液は、アルカリ成分の濃度と、溶け出したアルミイオン濃度をモニターし、必要に応じてアルカリ溶液原液を添加したり、アルミイオン濃度が過度に濃くならないように水を添加したりして濃度制御が行われる。
このようにアルカリ溶液原液や水を添加することで余剰となったアルカリ性水溶液は、廃アルカリ液として系外に排出され、中和処理が施されることが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0008】
一方、酸性水溶液を使う工程としては、例えば、電気化学的粗面化処理(以下、単に「電解粗面化処理」ともいう。)、酸洗処理(デスマット処理)、陽極酸化処理等がある。
これらの処理においては、AlおよびAl中に含まれる金属元素は、酸性水溶液中に溶出する。
【0009】
そして、アルカリ性水溶液と同様、アルミニウム合金板の表面処理に用いた酸性水溶液は、酸の濃度と、溶け出したアルミイオン濃度をモニターし、必要に応じて酸性溶液原液を添加したり、アルミイオン濃度が過度に濃くならないように水を添加したりして濃度制御が行われる。
このように酸性溶液原液や水を追加することで、余剰となった酸性水溶液は、廃酸性液として系外に排出され、中和処理が施される(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0010】
通常、中和処理では、廃アルカリ性水溶液および廃酸性水溶液は一旦混合された後に施される。
また、中和処理は、廃アルカリ性水溶液および廃酸性水溶液の混合液のpHに応じて酸またはアルカリの溶液を添加することにより行われる。
【0011】
ここで、廃アルカリ性水溶液および廃酸性水溶液の混合液中のアルミニウムイオンは、固形分の水酸化アルミニウムとして析出し、分離された後に、水酸化アルミニウム原材料として利活用されることが多い(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平7−268659号公報
【特許文献2】特開平11−59009号公報
【特許文献3】特開平9−132411号公報
【特許文献4】特開平9−188514号公報
【特許文献5】特開平9−221319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、水酸化アルミニウムの固形分は、廃アルカリ性水溶液および廃酸性水溶液の混合液中に、マンガン(Mn)の水酸化物やマグネシウム(Mg)の水酸化物等の他の水酸化物が混在することにより、純度が低下するとともに、本来水酸化アルミニウムが白色であるのに対して、灰色、茶褐色などの着色が起こる不具合が明らかとなった。
一方、平版印刷版用支持体の製造に用いるアルミニウム合金板は、Al≧99.7%の地金を溶解し、各種機能を発現するために、諸元素が添加され鋳造、圧延、熱処理などを行って板状に加工される。例えば、強度を高めるために、Mn、Mg、鉄(Fe)、ケイ素(Si)を多く添加する場合や、表面処理性を変えるためにCu、亜鉛(Zn)、Mg、Si、鉛(Pb)、クロム(Cr)等を添加する場合がある。
そして、このような添加元素を多く含むアルミニウム合金板に表面処理を施す場合は、表面処理で使用するアルカリ性水溶液、酸性水溶液中に添加元素が多く混入し、上述した中和処理における不具合を引き起こしやすいことが分かった。
特に、MnおよびMgの2元素は、それぞれ、中和処理の際に水酸化物を形成し、水酸化アルミニウムの固形分の純度の低下、着色等の原因になりやすいことが分かった。
【0014】
そこで、本発明は、平版印刷版原版、特に平版印刷版用支持体製造時のアルミニウム合金板表面の表面処理において使用した表面処理水溶液(酸性水溶液またはアルカリ性水溶液)を処理する際に、水酸化アルミニウムの固形分の純度の低下および着色を防止する処理方法およびその処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、表面処理水溶液を中和処理によって生成する中和生成物のうち、Mnの水酸化物やMgの水酸化物を除去することにより、水酸化アルミニウムの固形分の純度の低下および着色を防止できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
【0016】
(1)Mnおよび/またはMgを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理方法であって、
上記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
上記表面処理水溶液を中和処理する中和処理工程と、
上記中和処理によって生成する中和生成物のうち、Mnの水酸化物(以下、「Mn水酸化物」ともいう。)および/またはMgの水酸化物(以下、「Mg水酸化物」ともいう。)の少なくとも一部を除去する除去工程と、を具備する表面処理水溶液の処理方法。
【0017】
(2)上記アルミニウム合金板が、Mnを0.01〜1.0wt%含有し、Mgを0.03〜1.0wt%含有する上記(1)に記載の表面処理水溶液の処理方法。
【0018】
(3)上記中和処理工程が、上記表面処理水溶液のpHに応じて、中和用の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加する工程である上記(1)または(2)に記載の表面処理水溶液の処理方法。
【0019】
(4)上記除去工程が、上記中和処理によって生成する中和生成物を、pH4〜8の液で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離する工程である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理方法。
【0020】
(5)上記中和処理工程の前に、上記表面処理水溶液を撹拌する撹拌工程を具備する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理方法。
【0021】
(6)上記除去工程の前に、上記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離する分離工程を具備する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理方法。
【0022】
(7)Mnおよび/またはMgを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理装置であって、
上記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
上記表面処理水溶液を中和処理する中和処理手段と、
上記中和処理により生成する中和生成物のうち、Mn水酸化物および/またはMg水酸化物の少なくとも一部を除去する除去手段と、を具備する表面処理水溶液の処理装置。
【0023】
(8)上記中和処理手段が、上記表面処理水溶液のpHに応じて、中和用の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加する手段である上記(7)に記載の表面処理水溶液の処理装置。
【0024】
(9)上記除去手段が、上記中和処理によって生成する中和生成物を、pH4〜8の液で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離する手段である上記(7)または(8)に記載の表面処理水溶液の処理装置。
【0025】
(10)更に、上記表面処理水溶液を撹拌し、撹拌後の上記表面処理水溶液を上記中和処理手段に送液する撹拌手段を具備する上記(7)〜(9)のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理装置。
【0026】
(11)更に、上記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離し、上記除去手段に送る分離手段を具備する上記(7)〜(10)のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理装置。
【発明の効果】
【0027】
以下に示すように、本発明によれば、平版印刷版原版、特に平版印刷版用支持体製造時のアルミニウム合金板表面の表面処理において使用した表面処理水溶液(酸性水溶液またはアルカリ性水溶液)を処理する際に、水酸化アルミニウムの固形分の純度の低下および着色を防止する処理方法およびその処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面処理水溶液の処理方法(以下、単に「本発明の処理方法」という。)は、Mnおよび/またはMgを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理方法であって、
上記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
上記表面処理水溶液を中和処理する中和処理工程と、
上記中和処理によって生成する中和生成物のうち、Mn水酸化物および/またはMg水酸化物の少なくとも一部を除去する除去工程と、を具備する表面処理水溶液の処理方法である。
【0029】
また、本発明においては、上記中和処理工程における中和処理の効率向上の観点から、上記中和処理工程の前に、上記表面処理水溶液を撹拌する撹拌工程を具備するのが好ましい。
更に、本発明においては、上記除去工程における除去効率の向上の観点から、上記除去工程の前に、上記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離する分離工程を具備するのが好ましい。
【0030】
次に、本発明の処理方法で処理する表面処理水溶液、ならびに、本発明の処理方法が具備する中和処理工程、除去工程、所望により具備する撹拌工程および分離工程について、本発明の処理方法の概略を示すブロック図である図1を用いて詳述する。
図1に示すように、ウエブ状のアルミニウムコイル1から連続的に供給されるアルミニウム合金板は、表面処理工程2において表面処理された後、画像記録層塗布工程3に供給される。
この表面処理工程2においては、後述するように、表面処理水溶液として酸性水溶液やアルカリ性水溶液が用いられる。
本発明の処理方法は、表面処理工程2で使用された後に系外に排出される酸性水溶液(以下、単に「系外排出酸性溶液」という。)4およびアルカリ性水溶液(以下、単に「系外排出アルカリ性溶液」という。)5の処理に関するものである。
【0031】
[表面処理水溶液]
本発明の処理方法で処理する表面処理水溶液は、平版印刷版用支持体の製造工程において、アルミニウム合金板表面に表面処理を施す際に使用する、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液である。
【0032】
本発明においては、アルミニウム合金板表面の表面処理の態様は特に限定されないが、アルミニウム合金板の表面処理に使用した後の表面処理水溶液(以下、単に「使用後の表面処理水溶液」ともいう。)に本発明の処理方法を施す必要性を考慮すれば、少なくとも粗面化処理(例えば、機械的粗面化処理、電解粗面化処理等)および陽極酸化処理を含む表面処理であるのが好ましく、アルカリ溶液に接触させることによりアルミニウム合金板の表層を溶解するアルカリエッチング処理、および、アルミニウム合金板の表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いするデスマット処理を含む表面処理であるのがより好ましい。
【0033】
ここで、電解粗面化処理、デスマット処理、陽極酸化処理等に使用される酸性水溶液に用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
中でも、Al、Mn、Mg等が溶解しやすい硫酸を用いた場合には、本発明の処理方法は非常に有用となる。
【0034】
また、アルカリエッチング処理等で使用されるアルカリ性水溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第一リン酸ソーダ、第一リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。
中でも、カセイソーダを用いた場合には、本発明の処理方法は非常に有用となる。
【0035】
また、本発明においては、アルミニウム合金板の合金組成は特に限定されないが、使用後の表面処理水溶液に本発明の処理方法を施す必要性を考慮すれば、AlならびにMnおよび/またはMgを含有するものである。
ここで、Mnは、比較的アルミニウム中に固溶しやすく、Alや、アルミニウム合金板中に任意に含有されるFe、Si等と金属間化合物を形成するものである。また、Mnは、新地金の中に極微量含有されるものであるが、本発明においては、不可避的不純物として含有するのではなく、Mnを0.01〜1.0質量%含有することが好ましい。
同様に、Mgは、アルミニウム中に固溶しやすい。また、Alや、アルミニウム合金板中に任意に含有されるSiと金属間化合物を形成する場合もある。本発明においては、不可避的不純物として含有するのではなく、Mgを0.03〜1.0質量%含有することが好ましい。
【0036】
このようにMnおよび/またはMgを含有するアルミニウム合金材料としては、JIS1000系のAl合金に、強度向上を目的にMgおよび/またはMnを0.01〜0.4質量%添加した材料;JIS3000系材料;JIS3000系材料に、更に強度向上を目的にMnおよび/またはMgを添加した材料;等が使用される。
【0037】
[撹拌工程]
本発明の処理方法に所望により具備していてもよい撹拌工程は、使用後の表面処理水溶液を撹拌する工程である。図1においては、符号6が撹拌工程を示す。
この撹拌工程は、上記表面処理水溶液として酸性水溶液およびアルカリ性水溶液のいずれをも使用する場合において、後述する中和処理工程における中和処理の効率向上の観点から、必要に応じて中和処理工程の前に施す処理工程である。
本発明においては、使用後の表面処理水溶液を、例えば混合タンク等に送液し、貯留した後に、従来公知の撹拌方法(手段)により撹拌することにより混合するのが好ましい。
【0038】
[中和処理工程]
本発明の処理方法が具備する中和処理工程は、使用後の表面処理水溶液を中和処理する工程であるが、上記表面処理水溶液として酸性水溶液およびアルカリ性水溶液のいずれをも使用する場合において、上記撹拌工程により上記表面処理水溶液の中和が実質的に完了している場合は何らの処理を施さなくてもよい。図1においては、符号7が中和処理工程を示す。
【0039】
本発明においては、上記中和処理工程は、使用後の表面処理水溶液のpHを6〜9の中性から弱アルカリ性となるように調製するものである。
中性から弱アルカリ性にすることにより、系外排出酸性溶液(図1中、符号4)に溶出していたアルミニウム等を水酸化アルミニウムとして析出させることができ、系外排出アルカリ性溶液(図1中、符号5)中に混入していた水酸化物や金属間化合物等とともに、中和生成物として次工程に供給することができる。
【0040】
また、本発明においては、pHを6〜9の中性から弱アルカリ性となるように調製するために、使用後の表面処理水溶液のpHに応じて中和処理用の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加してもよく、例えば、複数の中和タンクを用いて多段的に調製するものであってもよい。
【0041】
[分離工程]
本発明の処理方法に所望により具備していてもよい分離工程は、上記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離する工程である。図1においては、符号8が分離工程を示す。
この分離工程は、後述する除去工程における除去効率の向上の観点から、必要に応じて除去工程の前に施す処理工程である。
本発明においては、中和生成物を沈降させるために、中和生成物が混入した上記中和処後の表面処理水溶液に、凝集剤等を添加してもよい。
また、中和生成物を沈降させた際の上澄み液は、中和水として容易に排水処理することができる。
【0042】
[除去工程]
本発明の処理方法が具備する除去工程は、上記中和処理によって生成する中和生成物のうち、Mn水酸化物および/またはMg水酸化物の少なくとも一部を除去する工程である。図1においては、符号9が除去工程を示す。
ここで、中和生成物は、水酸化アルミニウムが主成分となるが、上述したように、系外排出アルカリ性溶液(図1中、符号5)中に混入していた水酸化物(例えば、Mn水酸化物、Mg水酸化物等)や金属間化合物も含有するものである。
【0043】
本発明においては、上記除去工程が、上記中和処理によって生成する中和生成物を、pH4〜8の液で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離する工程であるのが好ましい。
ここで、pH4〜8の液は、中性〜弱酸性の液であれば特に限定されず、具体的には、系内で発生した硝酸、硫酸、塩酸などの水洗液を用いるのが好ましい。
【0044】
このようなpH4〜8の液で洗浄することにより、中和生成物中に混在するMn水酸化物、Mg水酸化物等の水酸化アルミニウムよりも溶解度積が大きい物質が溶出し、除去することができる。
一方、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離することにより、MnやMgのイオンを含む上澄み液は、これらの金属イオンを回収装置(図示せず)で回収した後に、排水される。また、沈降部分は、不純物が減少した水酸化アルミニウムとして回収した後に、利活用される。
【0045】
また、本発明においては、その他の除去方法としては、具体的には、例えば、本出願人により提案された上記特許文献3〜5に記載された方法(晶析法)を利用することもできる。
【0046】
本発明の処理方法では、上述した表面処理水溶液としてアルカリ性水溶液を使用した場合、系外排出アルカリ性溶液に混入している固形分については、予め除去し、上記中和処理工程に持ち込ませないことが望ましい。
これは、系外排出アルカリ性溶液に混入している固形分のうち、金属間化合物の粒子は、通常水や弱酸には溶けないため、上記除去工程では金属間化合物を除去することは困難であるためである。また、固形分のうち、アルカリエッチング処理により生じ、系外排出アルカリ性溶液に混入しているMg、Mn等の酸化物も水や弱酸には溶解しにくいため、同様に、上記中和処理工程に持ち込ませないことが望ましい。
【0047】
このような固形分を予め除去する方法としては、系外排出アルカリ性溶液を上記中和処理工程(上記撹拌工程を具備する場合は撹拌工程)に送液する前に、濾過工程を設けて固形分を除去することが望ましい。
濾過方法としては、具体的には、例えば、固形分の比重差を利用して沈降させる方法;遠心分離器で分離する方法;ペーパフィルタ、クロスフィルタなどのフィルタを用いる方法;等が挙げられる。
【0048】
また、アルカリ性水溶液を用いた表面処理装置の中に濾過機構を設けることでも固形分を減少することができる。この場合、表面処理液全体から固形分を除去できるので、製造工程を安定化できる利点もある。
以下に、アルカリ性水溶液を用いた表面処理装置の中に設けた濾過機構の概略図である図2を用いて詳述する。
【0049】
図2に示すように、例えば、アルカリエッチング処理に用いられるアルカリ性水溶液は、貯留タンク11に蓄えられ、第1ポンプ12によって送液され、アルカリ処理槽13内において、連続的に搬送されるアルミウエブ14表面にスプレイで供給される。
その後、表面処理に用いられたアルカリ性水溶液は、通常、アルカリ処理槽13の底部から貯留タンク11に直接戻るが、本発明においては、貯留タンク11に戻る前に固形分分離機構16を経て、固形分の一部を捕集して系外に排出した後に貯留タンク11に戻されるのが好ましい。なお、図2においては、バイパス回路15を設け、表面処理に用いられたアルカリ性水溶液が貯留タンク11に直接戻る流路も確保した態様を示している。
固形分分離機構16としては、例えば、固形分を沈殿捕集する方法や、遠心分離を利用して分離する方法を用いることができ、多段式に用いてもよい。なお、図2では、2段式の例を示している。
【0050】
また、本発明においては、図2に示すように、第2ポンプ17を用い、貯留タンク11の底部から固形分を含むアルカリ性水溶液を抜き出し、ろ過機構18を通すことで固形分の一部を捕集して系外に排出する別の固形分分散機構を有する態様が好ましい。
ろ過機構としては、サイクロン式などの遠心分離や、ペーパフィルタ、クロスフィルタなどのフィルタを用いることができる。
【0051】
本発明の表面処理水溶液の処理装置(以下、単に「本発明の処理装置」という。)Mnおよび/またはMgを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理装置であって、
上記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
上記表面処理水溶液を中和処理する中和処理手段と、
上記中和処理により生成する中和生成物のうち、Mn水酸化物および/またはMg水酸化物の少なくとも一部を除去する除去手段と、を具備する表面処理水溶液の処理装置である。
【0052】
また、本発明においては、上記中和処理工程における中和処理の効率向上の観点から、使用後の表面処理水溶液を撹拌した後に上記中和処理手段に送液する撹拌手段を具備するのが好ましい。
更に、本発明においては、上記除去工程における除去効率の向上の観点から、上記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離し、上記除去手段に送る分離手段を具備するのが好ましい。
【0053】
次に、本発明の処理装置で処理する表面処理水溶液、ならびに、本発明の処理装置が具備する中和処理手段、除去手段、所望により具備する撹拌手段および分離手段について説明する。
【0054】
[表面処理水溶液]
本発明の処理装置で処理する表面処理水溶液は、本発明の処理方法と同様、平版印刷版用支持体の製造工程において、アルミニウム合金板表面に表面処理を施す際に使用する、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液である。
【0055】
[撹拌手段]
本発明の処理装置に所望により具備していてもよい撹拌手段は、使用後の表面処理水溶液を撹拌した後に後述する中和処理手段に送液する手段である。
具体的には、使用後の表面処理水溶液を、混合タンク等において本発明の処理方法において詳述した撹拌工程における処理を施した後に、配管等を通じて後述する中和処理手段に送液する手段である。
【0056】
[中和処理手段]
本発明の処理装置が具備する中和処理手段は、使用後の表面処理水溶液を中和処理する手段である。なお、上記表面処理水溶液として酸性水溶液およびアルカリ性水溶液のいずれをも使用する場合において、上記混合手段により上記表面処理水溶液の中和が実質的に完了している場合は、本発明の処理装置は中和処理手段を具備していなくてもよい。
具体的には、例えば、中和タンク内に、使用後の表面処理水溶液のpHに応じて中和処理用の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加する手段など、本発明の処理方法において詳述した中和処理工程における処理を施す手段である。
【0057】
[分離手段]
本発明の処理装置に所望により具備していてもよい分離手段は、上記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離し、後述する除去手段に送る手段である。
具体的には、本発明の処理方法において詳述した分離工程における処理(例えば、中和生成物が混入した中和処後の表面処理水溶液への凝集剤の添加)を施した後に、配管等を通じて後述する除去手段に送る手段である。
また、中和生成物を沈降させた際の上澄み液は、中和水として容易に排水処理することができるため、上記分離手段は、このような排水処理ができる手段を有していてもよい。
【0058】
[除去手段]
本発明の処理装置が具備する除去手段は、上記中和処理によって生成する中和生成物のうち、Mn水酸化物および/またはMg水酸化物の少なくとも一部を除去する手段である。
具体的には、例えば、上記中和処理によって生成する中和生成物をpH4〜8の液で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離する手段等など、本発明の処理方法において詳述した除去工程における処理を施す手段である。
【0059】
本発明の処理装置では、本発明の処理方法と同様、上述した表面処理水溶液としてアルカリ性水溶液を使用した場合、系外排出アルカリ性溶液に混入している固形分については、予め除去し、上記中和処理手段に持ち込ませないことが望ましい。
このような固形分を予め除去する方法としては、例えば、本発明の処理方法において詳述した濾過工程における処理を施す手段が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0061】
1.アルミニウム材料
以下の3種のAl材料を用意した。
ここで、Al材料1および2は、本発明が対象とする、機械的強度および電気化学的粗面化を向上させるためにMnとMgを含有させたアルミニウム合金材料である。一方、Al材料3は、従来の1050材組成の平版印刷版用アルミ材であり、極微量のMnを不可避不純物として含有するアルミニウム合金材料である。
【0062】
<Al材料1>
Mnを0.3質量%、Mgを0.3質量%含み、その他の微量金属元素として、Feを0.25質量%、Siを0.1質量%、Znを0.03質量%およびCuを0.06質量%を含有し、不可避不純物として、Crを0.006質量%およびPbを0.002質量%含むAl材
【0063】
<Al材料2>
Mnを0.06質量%、Mgを0.05質量%含み、その他の微量金属元素として、Feを0.3質量%、Siを0.08質量%、Znを0.01質量%およびCuを0.03質量%含有し、不可避不純物として、Crを0.001質量%およびPbを0.001質量%含むAl材
【0064】
<Al材料3>
不可避不純物としてのMnを0.002質量%、Mgを0.003質量%含み、その他の微量金属元素として、Feを0.3質量%、Siを0.08質量%、Znを0.003質量%およびCuを0.03質量%含み、不可避不純物として、Crを0.0005質量%およびPbを0.0005%含むAl材
【0065】
2.アルミニウム合金板の作製
Al材料1〜3のそれぞれに、DC鋳造、均熱処理、熱間圧延、中間焼鈍および冷間圧延を施し、厚さ0.24mm、幅1060mm、長さ約6000mのアルミニウム合金板を作製し、コイル状に仕上げ、試験に使用した。
【0066】
3.表面処理
作製した各アルミニウム合金板の表面に、平版印刷版用支持体を製造するための以下に示す表面処理を施した。
【0067】
(1)機械的粗面化処理
研磨剤(パミストン、メジアン径40μm)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム合金板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行い、表面平均粗さRaを0.48μmとした。
ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は35mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した(ブラシの毛密度は450本/cm2であった。)。回転ブラシは3本使用した。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム合金板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム合金板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0068】
(2)アルカリエッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度24質量%、アルミニウムイオン濃度10質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行った。
アルミニウム溶解量は、機械的粗面化処理を行った面(表面)において7g/m2であり、裏面において2.5g/m2であった。
なお、図2に示す濾過装置を設けて、アルカリエッチング処理中に、液中からの固形分の除去を断続的に行った。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0069】
(3)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0070】
(4)硝酸水溶液中での交流を用いた電解粗面化処理
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で150C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
【0071】
(5)アルカリエッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度24質量%、アルミニウムイオン濃度10質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行った。
アルミニウム溶解量は、機械的粗面化処理を行った面(表面)において5g/m2であり、裏面において1.5g/m2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0072】
(6)デスマット処理
温度50℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0073】
(7)塩酸水溶液中での交流を用いた電解粗面化処理
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸0.7質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で60C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
【0074】
(8)アルカリエッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度1質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行った。
アルミニウム溶解量は、機械的粗面化処理を行った面(表面)において0.2g/m2であり、裏面において0.05g/m2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0075】
(9)デスマット処理
温度50℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0076】
(10)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸濃度15質量%(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度35℃の水溶液を用いた。陽極酸化処理は、直流電源を用い、アルミニウム板がアノード反応する間の平均電流密度が15A/dm2で平均電圧が30Vとなるように行った。陽極酸化皮膜量は3g/m2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0077】
(11)親水化処理
陽極酸化処理を施したアルミニウム合金板を、ケイ酸ソーダ2.5質量%水溶液(液温20℃)に10秒間浸せきさせた。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム板表面のSi量は、3.5mg/m2であった。
【0078】
以上の処理工程で排出されるアルカリ性溶液、アルカリエッチング処理後の水洗水を系外排出アルカリ性溶液として中和処理設備の混合タンクに送った。
同じく、以上の処理工程で排出される酸性溶液、酸性溶液中での表面処理後の水洗水を系外排出酸性溶液として中和処理設備の混合タンクに送った。
【0079】
(実施例1〜3)
Al材料1〜3から製造した各アルミニウム合金板をそれぞれ20コイルずつ用いて上述した表面処理を施し、混合タンクに回収された使用後の表面処理水溶液に、以下の処理を施した。
【0080】
(a)撹拌工程
混合タンクに送液された系外排出アルカリ性溶液および系外排出酸性溶液を撹拌し、混合液を調製した。
【0081】
(b)中和処理工程
撹拌後の混合液のpHに応じて、pHが6〜9の範囲となるように酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加し、中和生成物を生成させた。
【0082】
(c)分離工程
上記中和処理工程により生成した中和生成物を沈降させ、分離した。
【0083】
(d)除去工程
分離した中和生成物を、pH4の硫酸陽極酸化処理後の水洗水で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離し、沈降部分を洗浄後の中和生成物として回収した。
【0084】
(比較例1〜3)
上記除去工程を施さなかった以外は、実施例1〜3と同様の方法で中和生成物を分離し、回収した。
【0085】
回収した中和生成物中の色を目視により確認した後、水酸化アルミニウムの純度を算出し、MnおよびMgの正確な含有量を測定した。これらの結果を下記第1表に示す。
具体的には、回収した中和生成物をろ紙を用いて濾過し、濾別された中和生成物について、乾燥後、電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)(機種:JSM8800、製造元:日本電子社製)を用いて、定量分析を行った。
その結果、Al、Mn、Mg、酸素、水素、その他の不純物(Fe、Si等)が検出された。
そこで、まず、その他の不純物を除いた、Al、Mn、Mg、酸素および水素の占める元素%から、中和生成物の大部分を占める水酸化物の量を求めた。
次いで、Al、MnおよびMgの元素%の比から、Alの水酸化物の割合を水酸化アルミニウム量として求めた。
そして、Al、Mn、Mg、酸素、水素、その他の不純物(Fe、Si等)を含む中和生成物全体の質量に対する水酸化アルミニウム量を水酸化アルミニウムの純度(質量%)として算出した。
また、MnおよびMgの正確な含有量は、回収した中和生成物を硫酸に溶解して、ICP質量分析で含有量を測定した結果に基づき、中和生成物の単位重量あたりの含有量を計算で求めた。なお、MnおよびMgの正確な含有量は、第1表中では、それぞれ「Mn量」および「Mn量」と表記した。
なお、各中和生成物は、脱水処理をおこない、水分を10%以内にしてから測定した。
【0086】
【表1】

【0087】
(実施例4〜6、比較例4〜6)
上述した第1アルカリエッチング処理((2)アルカリエッチング処理)で使用した濾過装置を使用しなかった以外は、実施例1〜3、比較例1〜3と同様の方法により中和生成物を回収した。
回収した中和生成物中の色を目視により確認した後、実施例1等と同様の方法により、水酸化アルミニウムの純度を算出し、MnおよびMgの正確な含有量を測定した。これらの結果を下記第2表に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
第1表および第2表に示す結果から、本発明の処理方法を施した実施例1〜6においては、中和生成物中のMnおよびMgの含有量が減少しており、それに伴い、水酸化アルミニウムの固形分の純度の低下および着色を防止できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の処理方法の概略を示すブロック図である。
【図2】図2は、アルカリ性水溶液を用いた表面処理装置の中に設けた濾過機構の概略図である。
【符号の説明】
【0091】
1:アルミニウムコイル
2:表面処理工程
3:画像記録層塗布工程
4:系外排出酸性溶液
5:系外排出アルカリ性溶液
6:撹拌工程
7:中和処理工程
8:分離工程
9:除去工程
11:貯留タンク
12:第1ポンプ
13:アルカリ処理槽
14:アルミウエブ
15:バイパス回路
16:固形分分離機構
17:第2ポンプ
18:ろ過機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガンおよび/またはマグネシウムを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理方法であって、
前記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
前記表面処理水溶液を中和処理する中和処理工程と、
前記中和処理によって生成する中和生成物のうち、マンガンの水酸化物および/またはマグネシウムの水酸化物の少なくとも一部を除去する除去工程と、を具備する表面処理水溶液の処理方法。
【請求項2】
前記アルミニウム合金板が、マンガンを0.01〜1.0wt%含有し、マグネシウムを0.03〜1.0wt%含有する請求項1に記載の表面処理水溶液の処理方法。
【請求項3】
前記中和処理工程が、前記表面処理水溶液のpHに応じて、中和用の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加する工程である請求項1または2に記載の表面処理水溶液の処理方法。
【請求項4】
前記除去工程が、前記中和処理によって生成する中和生成物を、pH4〜8の液で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離する工程である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理方法。
【請求項5】
前記中和処理工程の前に、前記表面処理水溶液を撹拌する撹拌工程を具備する請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理方法。
【請求項6】
前記除去工程の前に、前記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離する分離工程を具備する請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理方法。
【請求項7】
マンガンおよび/またはマグネシウムを含有するアルミニウム合金板の表面処理に用いる表面処理水溶液の処理装置であって、
前記表面処理水溶液が、酸性水溶液および/またはアルカリ性水溶液であり、
前記表面処理水溶液を中和処理する中和処理手段と、
前記中和処理により生成する中和生成物のうち、マンガンの水酸化物および/またはマグネシウムの水酸化物の少なくとも一部を除去する除去手段と、を具備する表面処理水溶液の処理装置。
【請求項8】
前記中和処理手段が、前記表面処理水溶液のpHに応じて、中和用の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加する手段である請求項7に記載の表面処理水溶液の処理装置。
【請求項9】
前記除去手段が、前記中和処理によって生成する中和生成物を、pH4〜8の液で洗浄し、洗浄後に上澄み部分と沈降部分とを分離する手段である請求項7または8に記載の表面処理水溶液の処理装置。
【請求項10】
更に、前記表面処理水溶液を撹拌し、撹拌後の前記表面処理水溶液を前記中和処理手段に送液する撹拌手段を具備する請求項7〜9のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理装置。
【請求項11】
更に、前記中和処理により生成する中和生成物を沈降させて分離し、前記除去手段に送る分離手段を具備する請求項7〜10のいずれかに記載の表面処理水溶液の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−11897(P2009−11897A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174142(P2007−174142)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】