説明

表面実装型圧電デバイス

【課題】 電極の剥離及び封止材の剥離を低減して、耐衝撃性を向上させた圧電デバイスを提供する。
【解決手段】 圧電デバイスは、一対の実装端子が形成される第1面と、その第1面の反対側の周囲の接合面が形成される第2面と、接合面に形成される一対の接続電極と、を有する長方形状のベース板と;一対の励振電極と一対の励振電極から引き出される引出電極とを有し、引出電極が接続電極に導電性接着剤によって固定される長方形状の圧電振動片と、圧電振動片を覆うリッド板と;接合面とリッド板との間に環状に配置され、ベース板とリッド板とを封止する環状の封止材と;を備える。そして、圧電デバイスは、接続電極は封止材と重なる領域において、接続電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型の圧電デバイスに関する。特に、封止材が形成される領域の電極とベース板との密着強度を高めた圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装用の圧電デバイスは、水晶振動片がガラス、セラミック等の絶縁性ベース板に収納される。その絶縁性ベース板はリッド板が封止材を介して封止される。例えば特許文献1は圧電デバイスの製造方法を開示する。圧電デバイスの製造方法は以下の通りである。低融点ガラス等の封止材が、ベース板の接合面に印刷され、ベース板とリッド板とが重ね合わされる。そして加熱して押圧することにより、ベース板とリッド板とが封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−297372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の小型化に伴い、水晶デバイスはより一層の小型化が要求されている。小型化に伴いベース板の接合面に形成される電極の面積も小さくなり、電極形成後の洗浄等により電極の一部が剥離する問題があった。また、強い外部衝撃が加わったときに接合面の一部で封止材が剥離する問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、電極の剥離及び封止材の剥離を低減して、耐衝撃性を向上させた圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の圧電デバイスは、一対の実装端子が形成される第1面と、その第1面の反対側の周囲の接合面が形成される第2面と、接合面に形成される一対の接続電極と、を有する長方形状のベース板と;一対の励振電極と一対の励振電極から引き出される引出電極とを有し、引出電極が接続電極に導電性接着剤によって固定される長方形状の圧電振動片と、圧電振動片を覆うリッド板と;接合面とリッド板との間に環状に配置され、ベース板とリッド板とを封止する環状の封止材と;を備える。そして、圧電デバイスは、接続電極は封止材と重なる領域において、接続電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている。
【0007】
第2観点の圧電デバイスは、一対の実装端子が形成される第1面と、その第1面の反対側の第2面と、第2面の端部に形成される一対の接続電極と、を有する長方形状のベース板と;一対の励振電極が形成される振動部と振動部を囲む枠部と振動部と枠部とを連結する連結部と、一対の励振電極から引き出される引出電極とを有し、引出電極が接続電極に接続される圧電振動片と;枠部と接合するリッド板と;接合面と枠部との間に環状に配置され、ベース板と圧電振動片とを封止する環状の封止材と;を備える。そして、圧電デバイスは、接続電極は封止材と重なる領域において、接続電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている。
【0008】
第3観点の圧電デバイスの引出電極は、封止材と重なる領域において、引出電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている。
第4観点の圧電デバイスは、ベース板はガラス材料又は圧電材料を含む。そして、接続電極はガラス材料又は圧電材料に直接形成されるクロム層とクロム層上に形成される表面層とを含み、下地層の側面は酸化されている。
第5観点の圧電デバイスは、クロム層と表面層との間にはニッケル・タングステンの合金層を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の圧電デバイスによれば、接続電極の側面の面積を増やして接続電極とベース板との密着性を高めて電極の剥離不良を少なくする。また、接続電極の側面の面積を増やしてリッド板とベース板との封止も向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の第1水晶振動子100の分解斜視図である。
【図2】(a)は、第1水晶振動子100のA−A’断面図である。(b)は、第1水晶振動子100の第1ベース板40の平面図である。
【図3】(a)は、図2の丸で囲ったEL部の拡大図である。(b)は、(a)のB−B’断面図の一例である。(c)は、(a)のB−B’断面図の別例である。
【図4】(a)は、接続電極408の変形例1を示す平面図である。(b)は、接続電極408の変形例2を示す平面図である。(c)は、接続電極408の変形例3を示す平面図である。
【図5】第1実施形態の第1水晶振動子100の製造工程を示したフローチャートである。
【図6】ベースウエハ40Wの平面図である。
【図7】第2実施形態の第2水晶振動子110の分解斜視図である。
【図8】(a)は、第2水晶振動子110のC−C’断面図である。 (b)は、第2水晶振動子110の第2第2ベース板41の平面図である。
【図9】第3実施形態の第3水晶振動子120の分解斜視図である。
【図10】(a)は、第3水晶振動子120のD−D’断面図である。 (b)は、第3水晶振動子120の第3ベース板42の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
<第1水晶振動子100の全体構成>
第1水晶振動子100の全体構成について図1及び図2を使って説明する。
図1は、第1水晶振動子100の分解斜視図である。図2(a)は、第1水晶振動子100のA−A’断面図であり、(b)は、第1水晶振動子100の第1ベース板40の平面図である。なお図2(b)は、理解を助けるため、リッド板10及び第1水晶振動片20が描かれていない。
【0012】
第1実施形態では、水晶振動片としてATカットの第1水晶振動片20が使われている。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。このため、第1実施形態ではATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をy’軸及びz’軸として用いる。すなわち、第1実施形態において第1水晶振動子100の長手方向をx軸方向、第1水晶振動子100の高さ方向をy’軸方向、x及びy’軸方向に垂直な方向をz’として説明する。以下、第2実施形態、第3実施形態において同様である。
【0013】
第1水晶振動子100は、図1に示されたように、リッド板凹部17を有する第1リッド板10と、ベース板凹部47を有する第1ベース板40と、第1ベース板40に載置される第1水晶振動片20とを備える。
【0014】
第1水晶振動片20は、ATカットされた水晶片201により構成され、その水晶片201の中央付近の両主面に一対の励振電極202a、202bが対向して配置される。また、励振電極202aには水晶片201の底面(−y’側)の−x側まで伸びた引出電極203aが接続され、励振電極202bには水晶片201の底面(−y’側)の+x側まで伸びた引出電極203bが接続される。また、励振電極及び引出電極は例えば下地としてのクロム層が用いられ、クロム層の上面に金層が用いられる。
【0015】
第1ベース板40は、水晶又はホウ酸塩ガラス等からなる。第1ベース板40は、+y’側の面にベース板凹部47を有し、その周囲に形成された第2面M2を有している。ベース板凹部47は、2つの角部に台座406a,406cを備える。台座406a、406cは第2面M2と同じ高さでベース板凹部47の中央側に突き出ている。一対の水晶振動片を載置する載置部404a,404bが台座406a、406cに形成されている。
【0016】
第1ベース板40の四隅には、貫通孔BH1(図6を参照)をダイシングした際のキャスタレーション402a、402b,402c、402dが形成されている。側面電極403a、403bが、ベース板キャスタレーション402a、402cにそれぞれ形成される。また、側面電極403aと電気的に接続された接続電極408aが第1ベース板40の第2面M2の−x側に形成されている。同様に、側面電極403bと電気的に接続された接続電極408bが、第1ベース板40の第2面M2の+x側に形成されている。接続電極408a、408bは、その側面長さを増大するようにy‘軸方向から見て、櫛歯形状に形成されている。さらに、第1ベース板40は、実装面M1に側面電極403a、403bにそれぞれ電気的に接続された一対の実装端子405a、405b(図2(b)を参照)を有している。
【0017】
第1リッド板10は、水晶又はホウ酸塩ガラス等からなる。第1リッド板10は、−y’側の面にベース板凹部47を有し、その周囲に形成された第2面M3を有している。リッド板凹部17とベース板凹部47とは、第1水晶振動片10を収納するキャビティCTを形成する。キャビティCTは、不活性ガスで満たされたり又は真空状態に密封されたりする。
【0018】
第1ベース板40の第2面M2と第1リッド板10の第3面M3との間に、低融点ガラスの封止材LGが配置される。この封止材LGは、第1ベース板40と第1リッド板10とを接合する。
【0019】
低融点ガラスの封止材LGは、350℃〜400℃で溶融する鉛フリーのバナジウム系ガラスを含む。バナジウム系ガラスはバインダーと溶剤とが加えられペースト状であり、溶融された後固化されることで他の部材と接着する。バナジウム系ガラスの融点は水晶材又はガラスなどで形成された第1リッド板10及び第1ベース板40の融点より低く、また、このバナジウム系ガラスは接着時の気密性と耐水性・耐湿性などの信頼性が高い。バナジウム系ガラスは、非導電性接着剤で、空気中の水分がキャビティCT内に進入したりキャビティCT内の真空度を低下させたりすることを防止する。低融点ガラスの封止材LGは、図1及び図2に示されるように、幅は300μm程度で第1ベース板40の第2面M2の外側に印刷される。
【0020】
図2(a)に示されたように、第1水晶振動片20のx軸方向の長さは、ベース板凹部47のx軸方向の長さより短い。第1水晶振動片20が導電性接着剤60で第1ベース板40の台座406a、406cに載置されると、第1水晶振動片20の引出電極203a、203bが第1ベース板40の載置部404a,404bにそれぞれ電気的に接続される。これにより、実装端子405a、405bが側面電極403a、403b、接続電極408a、408b、載置部404a,404b、導電性接着剤60及び引出電極203a、203bを介して励振電極202a、202bにそれぞれ電気的に接続される。つまり、実装端子405a、405bに交番電圧(正負を交番する電位)を印加したときに、第1水晶振動片20は厚みすべり振動する。
【0021】
さらに、図2(b)に示されたように、接続電極408a、408bは、その側面長さを増大するようにy‘軸方向から見て、櫛歯形状に形成されている。また点線で示される4つの実装端子405が、第1ベース板40の実装面M1の四隅にそれぞれ形成されている。そのうち、実装端子405a、405bは、側面電極403a、403bにそれぞれ電気的に接続され、残り2つの実装端子405はアース用に使われる。
【0022】
<接続電極の構成>
図3(a)は、図2の丸で囲ったEL部の拡大図である。(b)は、(a)のB−B’断面図の一例であり、(c)は、(a)のB−B’断面図の別例である。
【0023】
図3(a)は、接続電極408aの一部を示しているが、説明のため、接続電極の仮想領域STが重ねて描かれている。この仮想領域STは、側面電極403a、403bから載置部404a,404bまで、仮に櫛歯形状が形成されなかった場合の領域を示している。仮想領域STの側面は一直線である。
【0024】
接続電極408aと仮想領域STとの差が、櫛部CMになる。1つの櫛部CMは、2つの電極側面ASと1つの電極側面BSとを有している。複数の櫛部CMが形成されることで、接続電極408aは、その片側に側面長さSSを有する。1つの櫛部CMがあることで、仮想領域Sの側面長さと比べ、接続電極408aはその側面長さSSは、2つの電極側面AS分の長くなる。
【0025】
図3(b)に示されるように、接続電極408aは2層からなる。下地金属膜としてクロム(Cr)層が、水晶又はホウ酸塩ガラス等の第1ベース板40の上面に形成される。金(Au)層が、クロム層の上面に形成される。接続電極408aの形状は、フォトリソグラフィ及びエッチングにより形成される。エッチング後、クロム(Cr)層の側面は大気に曝される。このため、酸化しやすいクロム層の側面には、酸化クロム(Cr)膜が形成される。酸化クロム(Cr)膜は、水晶又はホウ酸塩ガラス等の第1ベース板40との接合力を強める。したがって、接続電極408a、408bは、櫛歯形状に形成され側面長さSSを長くしている。さらに、図2(b)に示されたように、低融点ガラスの封止材LGが、接続電極408a、408bの上に印刷される。接続電極408a、408bが櫛歯形状に形成されることで、低融点ガラスの封止材LGの接合面積も増え、第1リッド板10と第1ベース板40とを強固に結合することができる。
【0026】
図3(c)は、接続電極408aの別例であり、接続電極408aは3層から成る。下地金属膜としてのクロム(Cr)層と金(Au)層の中間にニッケル−タングステン(Ni+W)合金層が形成される。接続電極408aが、フォトリソグラフィ及びエッチングにより形成された後、クロム(Cr)層の側面は大気に曝される。このため、酸化しやすいクロム層の側面には、酸化クロム(Cr)膜が形成される。櫛歯形状の接続電極408a、408bは、第1ベース板40への接合力を高め、低融点ガラスの封止材LGによる接合力を高める。
【0027】
<接続電極の変形例>
図4(a)は、接続電極408の変形例1を示す平面図であり、(b)は、接続電極408の変形例2を示す平面図であり、(c)は、接続電極408の変形例3を示す平面図である。また側面電極403から載置部404まで一直線で結ぶ仮想領域STが重ねて図示されている。
【0028】
図4(a)は、接続電極408は、鋸歯状4081に形成されている。歯部CSは三角形の形状をしている。このため三角形の側面長さが長くなっている。図4(a)に示された歯部CSは両側面とも三角形の高さh1は同じである。
【0029】
図4(b)は、接続電極408は、波型状4082に形成されている。波部DSはサイン(sin)波形の形状をしている。このためサイン波形の側面長さが長くなっている。また、図4(b)に示された波部DSは一方がh1の高さであり、他方がh1より高いh2の高さである。このように接続電極408は、両側が同じ高さである必要はない。
【0030】
図4(c)は、接続電極408は、輪状ひだ4083に形成されている。輪状ひだESは多数の凹凸の形状をしている。多数の凹凸によって側面長さが長くなっている。特に図示しないが、三角形状の多数の凹凸でもよい。
【0031】
図3及び図4では、y’方向から見て接続電極408の両側に櫛歯形状を示したが、片側のみに櫛部CMが形成されてもよい。図4に示された形状以外にもいろいろな形状が考えられる。本件では、側面電極403から載置部404まで一直線で結ぶ際(仮想領域ST)の側面長さよりも、接続電極408が2倍以上の側面長さを有する形状を櫛歯形状と定義する。また本件では、鋸歯状、サイン波形、及び輪状ひだも含めて、櫛歯形状と定義する。
【0032】
<第1水晶振動子100の製造方法>
図5は、第1水晶振動子100の製造を示したフローチャートである。また、図6は図1又は図2で示されたベース板40を複数有するベースウエハ40Wの平面図である。
【0033】
ステップS10では、第1水晶振動片20が製造される。ステップS10はステップS101〜S104を含んでいる。
ステップS101において、水晶ウエハ(不図示)に、複数の第1水晶振動片20の外形がエッチングにより形成される。すなわち、水晶片201が水晶ウエハに複数形成される。
【0034】
ステップS102において、スパッタリングまたは真空蒸着によって水晶ウエハの両面にクロム層及び金層が順に形成される。ここで、下地としてのクロム層の厚さは例えば0.05μm〜0.1μmであり、金層の厚さは例えば0.2μm〜2μmである。
【0035】
ステップS103において、金属層の全面にフォトレジストが均一に塗布される。そして露光装置(不図示)を用いて、フォトマスクに描かれた励振電極202a、202b、引出出極203a、203bのパターンが水晶ウエハに露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図1及び図2に示されたように水晶ウエハ両面に励振電極202a、202b及び引出出極203a、203bが形成される。
【0036】
ステップS104において、水晶ウエハから切り離され個々の第1水晶振動片20が形成される。
【0037】
ステップS11では、第1ベース板40が製造される。ステップS11はステップS111〜S114を含んでいる。
ステップS111において、水晶ウエハ40Wが用意される。そして、エッチングによりベースウエハ40Wの四辺にはベースウエハ40Wを貫通するように貫通孔BH1(図6を参照)が形成される。貫通孔BH1が4分割されると1つのキャスタレーション402a,402b、402c、402d(図2(b)を参照)になる。
【0038】
ステップS112において、スパッタリングまたは真空蒸着によってクロム層及び金層がベースウエハ40Wの実装面M1及び貫通孔BH1に順に形成される。ここで、下地としてのクロム層の厚さは例えば0.05μm〜0.15μmであり、金層の厚さは例えば0.2μm〜2μmである。
【0039】
ステップS113において、金属層にフォトレジストが均一に塗布される。そして露光装置(不図示)を用いて、フォトマスクに描かれた実装端子405、405a、405b、側面電極403a、403b、載置部404a,404b及び接続電極408a、408bのパターンがベースウエハ40Wに露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図1及び図2に示されたようにベースウエハ40Wの実装面M1に実装端子405、405a、405bが形成され、貫通孔BH1に側面電極403a、403bが形成され、第2面M2に接続電極408a、408b及び載置部404a,404bが形成される。
【0040】
エッチング後に、接続電極408a、408bのクロム層は、その側面が大気に曝される。そして大気に曝されたクロムには酸化クロム膜(図3(b)、(c)参照)が形成される。酸化クロム(Cr)膜は、ガラス又は水晶との接合力が高く、ベースウエハ40Wから剥がれにくい。
【0041】
ステップS114において、ベースウエハ40Wの載置部404a,404bに導電性接着剤60が塗布され仮焼成される。仮焼成によって導電性接着剤66から発生するガスは取り除かれる。
【0042】
ステップS12では、第1リッド板10が製造される。ステップS12はステップS121〜S122を含んでいる。
ステップS121において、リッドウエハを用意する。そして、エッチングによりリッドウエハにリッド板凹部17が形成される。
【0043】
ステップS122において、リッドウエハの第3面M3(図1を参照)に封止材LGが均一に形成される。例えば低融点ガラスである封止材LGは、スクリーン印刷で第1ベース板40の第2面M2に対応するリッドウエハの第3面M3に形成され仮焼成される。なお、リッドウエハに封止材LGが印刷される代わりに、封止材LGは接続電極408が形成されたベースウエハ40Wにスクリーン印刷されてもよい。
【0044】
図5において、第1水晶振動片20の製造ステップS10と、第1ベース板40の製造ステップS11と第1リッド板10との製造ステップS12とは別々に並行して行うことができる。
【0045】
ステップS131では、ステップS10で製造された第1水晶振動片20が第1ベース板40の載置部404a,404b(図1を参照)の導電性接着剤60上に載置される。このとき、第1水晶振動片20の引出電極203a、203bと第1ベース板40の第2面M2に形成された載置部404a,404bとの位置が合うように第1水晶振動片20が載置される。所定温度に導電性接着剤60が加熱され、第1水晶振動片20が押圧されて、第1水晶振動片20が第1ベース板40に固定される。そして、1つ1つの第1水晶振動片20の振動周波数が測定される。
【0046】
ステップS132では、第1水晶振動片20の励振電極202aの厚みを調整する。励振電極202aに金属をスパッタリングして質量を増加させて周波数を下げたり、逆スパッタリングして励振電極202aから金属を昇華させて質量を低減させて周波数を上げたりする。振動周波数の測定結果が所定範囲内であれば必ずしも振動周波数を調整する必要はない。
【0047】
ステップS141では、オリエンテーションフラットOFを基準として、リッドウエハとベースウエハ40Wとが精密に重ね合わせされる。重ね合わされたウエハは、不活性ガスで満たされたチャンバー(不図示)又は真空のチャンバー(不図示)に配置される。そして封止材LGが350℃から400℃程度に加熱されリッドウエハとベースウエハ40Wとが押圧される。これによりリッドウエハとベースウエハ40Wとが低融点ガラスの封止材LGにより接合される。重ね合わされたウエハは、キャビティCT内も不活性ガスで満たされ又は真空状態となる。櫛歯形状の接続電極408a、408bは、低融点ガラスの封止材LGによるリッドウエハとベースウエハ40Wとの接合力を高める。
【0048】
ステップS142では、接合されたリッドウエハとベースウエハ40Wとが個々の第1水晶振動子100に切断される。切断工程では、レーザーを用いたダイシング装置、または切断用ブレードを用いたダイシング装置などを用いて図6に示された一点鎖線のスクライブラインSLに沿って第1水晶振動子100を単位として個片化する。これにより、数百から数千の第1水晶振動子100が製造される。
【0049】
(第2実施形態)
<第2水晶振動子110の全体構成>
第2水晶振動子110の全体構成について、図7、図8を参照しながら説明する。
図7は、第2水晶デバイス110の第2リッド板11側から見た分割した状態の斜視図である。図8(a)は水晶フレーム30と第2ベース板41と第2リッド板11とが接合された後の図7のC−C’断面図であり、(b)は第2ベース板41の平面図である。なお図8(b)は、理解を助けるため、導電性接着剤60、第2リッド板11及び水晶フレーム30が描かれていない。
【0050】
第2水晶振動子110と第1水晶振動子100との違いは、水晶振動片20の代わりに、第2水晶振動子110は水晶フレーム30を装着している点である。また水晶フレーム30の引出電極303が櫛歯形状に形成されている点である。第1実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付し説明を省略し相違点について説明する。
【0051】
図7に示されたように、第2水晶振動子110は、リッド板凹部17を有する第2リッド板11と、ベース板凹部47を有する第2ベース板41と、ATカットの水晶フレーム30とを備える。第2ベース板41及び第2リッド板11も、水晶材料から成る。
【0052】
水晶フレーム30は、ATカットされた矩形の水晶片301により構成され、その水晶片301と水晶片301を囲む外枠302とで構成されている。また、水晶片301と外枠302との間には、上下を貫通する間隙部308aと間隙部308bとが形成され、間隙部308aと間隙部308bとが形成されていない部分が水晶片301と外枠302との連結部309となっている。
【0053】
水晶フレーム30は、水晶片301の中央付近の両主面に一対の励振電極304a、304bを備える。また、励振電極304aには水晶片301の底面(−y’側)の−x側の一端まで伸びた引出電極303aが形成される。励振電極304bには水晶片301の底面(−y’側)の+x側の他端まで伸びた引出電極303bが形成される。引出電極303a、303bの端部は、引出電極の側面長さを増大するように櫛歯形状に形成されている。この引出電極303a、303bの端部は、封止材LGと重なる領域である。水晶フレーム30は、ベース板11と封止材LGで接合する際に、引出電極303a、303bと導電性接着剤60を介して接続電極418a、418bに電気的に接合される。引出電極303a、303bは、引出電極の側面長さを増大するように櫛歯形状に形成されている。なお、水晶フレーム30とベース板11との間に形成される封止材LGは、導電接着剤60の領域に対応して、一部切り欠いている。
【0054】
図7に示されるように、第2ベース板41は、第2面M2に接続電極418a、418bを有する。接続電極418aは実装端子415aと側面電極417aとに電気的に接続している。接続電極418bは実装端子415bと側面電極417bとに電気的に接続している。また接続電極418a、418bに導電性接着剤60が形成されている。接続電極418a、418bは、接続電極の側面長さを増大するように櫛歯形状に形成されている。
【0055】
第2ベース板41と水晶フレーム30とが窒素ガス中又は真空中で300〜400°Cに加熱され押圧される。そして、図7及び図8(a)に示されるように、第2リッド板11と水晶フレーム30と第2ベース板41とが、封止材LGで接合される。またその際に、水晶フレーム30の引出電極303aa、303bと接続電極418a、418bとが導電接着剤60で電気的に接続する。
【0056】
さらに、水晶フレーム30の四隅には、水晶キャスタレーション306a、306bが形成されている。また、水晶キャスタレーション306aには水晶側面電極307aが形成される。水晶側面電極307aは引出電極303aに接続される。同様に、水晶キャスタレーション306bには水晶側面電極307bが形成される。水晶側面電極307bは引出電極303bに接続されている。水晶キャスタレーション306a、306bは貫通孔BH1(不図示)をダイシングされた際に形成される。
【0057】
第2ベース板41は、実装面M1及び第2面M2を有している。また、第2ベース板41の実装面M1には一対の実装端子415a、415bが形成され、第2ベース板41の四隅には側面キャスタレーション416a、416bが形成されている。また、側面キャスタレーション416aには実装端子415aと接続された側面電極417aが形成される。また側面キャスタレーション416bには実装端子415bと接続された側面電極417bが形成されている。第2面M2には側面電極417aと接続された接続電極418aが形成され、側面電極417bには接続電極418bが形成されている。
【0058】
第2リッド板11は接合面M5を有している。第2リッド板11の四隅には、側面キャスタレーション116a、116bが形成されている。側面キャスタレーション116a、116bは貫通孔BH1(不図示)をダイシングされた際に形成される。
【0059】
(第3実施形態)
<第3水晶振動子120の全体構成>
第3水晶振動子120の全体構成について、図9、図10を参照しながら説明する。
図9は、第3水晶振動子120の分解斜視図である。図2(a)は、第3水晶振動子120のD−D’断面図で、(b)は第3水晶振動子120の第3ベース板42の平面図である。第3水晶振動子120と第1水晶振動子100との違いは、第1水晶振動片20に代えて、第3水晶振動子120は第2水晶振動片21を第3ベース板42に搭載している点である。またキャスタレーションの位置が異なる。第1実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付し説明を省略し相違点について説明する。
【0060】
図9に示されたように、第3水晶振動子120はリッド板凹部17を有する第3リッド板12と、ベース板凹部47を有する第3ベース板42と、第3ベース板42に載置される第2水晶振動片21とを備える。
【0061】
第2水晶振動片21は、その水晶片211の中央付近の両主面に一対の励振電極212a、212bが対向して配置されている。また、励振電極212aには水晶片211の底面(−y’側)の−x側まで伸びた引出電極213aが接続され、励振電極212bには水晶片211の底面(−y’側)の+x側まで伸びた引出電極213bが接続されている。引出電極213a、213bは、z軸方向に幅広く形成されている。
【0062】
第3ベース板42は、表面(+y’側の面)にベース板凹部47の周囲に形成された第2面M2を有している。また、第3ベース板42は、x軸方向の両側にz’軸方向に伸びたベース板キャスタレーション422a、422bが形成されている。側面電極423a、423b(図10(b)を参照)がベース板キャスタレーション422a、422bにそれぞれ形成されている。また、側面電極423aと電気的に接続された接続電極424aが、第3ベース板42の第2面M2の−x側に形成されている。同様に、側面電極423bと電気的に接続された接続電極424bが、第3ベース板42の第2面M2の+x側に形成されている。さらに、第3ベース板42は実装面M1に側面電極423a、423bとそれぞれ電気的に接続された一対の実装端子425、425a、425bを有している(図10(b)を参照)。接続電極424a,424bは、図4(b)で示された波型状4082に形成されている。
【0063】
図10(a)に示されたように、ベース板凹部47のx軸方向の長さは第2水晶振動片21のx軸方向の長さより短く形成されている。つまり、第3水晶振動子120において第2水晶振動片21の長さがベース板凹部47の長さより大きい。このため、第2水晶振動片21を導電性接着剤60で第3ベース板42に載置すると、第2水晶振動片21のx軸方向の両端が第3ベース板42の第2面M2に載置される。このとき、図10(a)に示されたように第2水晶振動片21の引出電極213a、213bが第3ベース板42の接続電極424a、424bにそれぞれ電気的に接続される。これにより、実装端子425a、425bが側面電極423a、423b、接続電極424a、424b、導電性接着剤60及び引出電極213a、213bを介して励振電極212a、212bにそれぞれ電気的に接続される。つまり、実装端子425a、425bに交番電圧(正負を交番する電位)を印加したときに、第2水晶振動片21は厚みすべり振動する。
【0064】
接続電極424a、424bの側面長さが増えるため、接続電極424a、424bと第3ベース板42との親和性が高まる。また第3ベース板42と第3リッド板12とは封止材で強固に接合される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0066】
第1実施形態から第3実施形態において、リッド板部とベース板部とは非導電性接着剤である低融点ガラスLGにより接合されているが、低融点ガラスLGの代わりにポリイミド樹脂を用いられてもよい。また、第1実施形態から第3実施形態においてさらに水晶振動片は水晶材料のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材料に基本的に適用できる。また圧電振動片を発振させるIC等の発振回路を有する圧電発振器であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10、11、12 … リッド板
17 … リッド板凹部
20、21 … 水晶振動片
30 … 水晶フレーム
40,41,42 … ベース板、 40W … ベース板ウエハ
47,47 … ベース板凹部
60 … 導電性接着剤
100、110、120 … 水晶振動子
116a、116b、306a,306b … キャスタレーション
402(a,b,c,d)、422a,422b … キャスタレーション
201,211、301 … 水晶片
202a、202b、212a,212b,304a、304b … 励振電極
203a、203b、213a,213b,303a、303b … 引出電極
302 … 外枠
307a、307b、403a、403b … 側面電極
417a,417b,423a,423b … 側面電極
408a、408b,418a,418b … 接続電極
308a,308b … 間隙部
309 … 連結部
405、405a、405b、415a、415b … 実装端子
406a、406c … 台座
425,425a,425b … 実装端子
BH1,BH2 … 貫通孔
CT … キャビティ
LG … 封止材(低融点ガラス)
M1 … 実装面、M2 … 第2面、M3 … 第3面
M4、M5 … 接合面
SL … スクライブライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の実装端子が形成される第1面と、その第1面の反対側の周囲の接合面が形成される第2面と、前記接合面に形成される一対の接続電極と、を有する長方形状のベース板と、
一対の励振電極と前記一対の励振電極から引き出される引出電極とを有し、前記引出電極が前記接続電極に導電性接着剤によって固定される長方形状の圧電振動片と、
前記圧電振動片を覆うリッド板と、
前記接合面と前記リッド板との間に環状に配置され、前記ベース板と前記リッド板とを封止する環状の封止材と、を備え、
前記接続電極は前記封止材と重なる領域において、前記接続電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている圧電デバイス。
【請求項2】
一対の実装端子が形成される第1面と、その第1面の反対側の第2面と、前記第2面の端部に形成される一対の接続電極と、を有する長方形状のベース板と、
一対の励振電極が形成される振動部と前記振動部を囲む枠部と前記振動部と前記枠部とを連結する連結部と、前記一対の励振電極から引き出される引出電極とを有し、前記引出電極が前記接続電極に接続される圧電振動片と、
前記枠部と接合するリッド板と、
前記接合面と前記枠部との間に環状に配置され、前記ベース板と前記圧電振動片とを封止する環状の封止材と、を備え、
前記接続電極は前記封止材と重なる領域において、前記接続電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている圧電デバイス。
【請求項3】
前記引出電極は前記封止材と重なる領域において、前記引出電極の側面長さを増大するように、第2面の法線方向から見て櫛歯形状に形成されている請求項2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記ベース板はガラス材料又は圧電材料を含み、
前記接続電極は前記ガラス材料又は圧電材料に直接形成されるクロム層と前記クロム層上に形成される表面層とを含み、前記クロム層の側面は酸化されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記クロム層と前記表面層との間にはニッケル・タングステンの合金層を含む請求項4に記載の圧電デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−46120(P2013−46120A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181059(P2011−181059)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】