説明

表面形状測定装置および表面形状測定方法

【課題】2点法または3点法による表面形状測定装置において、2軸または3軸の変位センサーとしてレーザ測長器を用いることで精度を向上させる。
【解決手段】3点法のレーザ測長器である干渉計1、2、3を搭載する第一の移動ステージ4は、第二の移動ステージ6によってガイド7に沿ってZ方向に移動可能であり、第一、第二の移動ステージ4、6は、参照ミラー5とともに第三の移動ステージ11によって、ガイド12上を移動し、測定対象W1 に対してX方向に走査され、各計測軸による測長データを取り込む。測定対象を入れ替えたときは、第一の移動ステージ4をX方向に駆動し、各干渉計1〜3を測定対象および参照ミラー5の同一位置に位置決めして、リセットまたは初期値入力処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決めステージ等に搭載する長尺のバーミラー等の平面形状や、非球面、球面、あるいは自由曲面からなる測定対象の表面形状を、2点法または3点法を利用して高精度に測定する表面形状測定装置および表面形状測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平面度測定方法として逐次2点法といわれる計測方法がある。これは図7に示すように、2本の変位センサーを用いるものである。変位センサーA103、変位センサーB104は、測定対象W0 の表面に対向させて、走査方向(X方向)に間隔dで変位センサー保持具105に取り付けられている。変位センサー保持具105が取り付けられた図示しない移動ステージをガイドに沿って移動させ、前記間隔d毎に間欠的に高さ位置の測定データを得ている。さらに同一点における測定対象W0 の表面の高さは同じになるという原理に基づき、変位センサーA103、変位センサーB104のデータ列を演算することにより、前記ガイドの真直度を分離して、測定対象W0 の表面形状が得られるという方法である。
【0003】
図7においては、変位センサーA103のX方向位置がXm点である地点での変位センサーA103と、同地点での変位センサーB104および変位センサー保持具105を実線で示し、前述のようにガイドに沿って変位センサー保持具105が間隔dだけ移動した後の、変位センサーA103のX方向位置をXn点とする地点での変位センサー保持具105および変位センサーA103、変位センサーB104を破線で表わす。
【0004】
Xm点での測定対象W0 の表面の形状データをF(Xm)、Xm点での変位センサーA103の測定値をMa(Xm)、Xm点での変位センサーB104の測定値をMb(Xm)、Xn点での変位センサーA103の測定値をMa(Xn)、Xn点での変位センサーB104の測定値をMb(Xn)、Xn点での移動ステージの移動誤差をE(Xn)とすると、以下の(101)〜(105)式が成立する。
【0005】
Ma(Xm)=F(Xm) ・・・(101)
Mb(Xm)=F(Xm+d) ・・・(102)
Ma(Xn)=F(Xm+d)+E(Xn) ・・・(103)
Mb(Xn)=F(Xm+2d)+E(Xn) ・・・(104)
E(Xn)=Mb(Xm)−Ma(Xn) ・・・・(105)
【0006】
ここで、Ma(Xn)とMb(Xm)は同一点のデータである。
(104)式に(105)式を代入すると
Mb(Xn)=F(Xm+2d)+Mb(Xm)−Ma(Xn)
よって、
F(Xm+2d)=Mb(Xn)+Ma(Xn)−Mb(Xm) ・・(106)
【0007】
このように、移動ステージの移動誤差E(Xn)を分離した形状データF(Xm+2d)を求めることができる。すなわち、変位センサーA、Bの間隔d毎に前記のような計算を繰り返すことで測定対象W0 の表面の凹凸を表わす形状データをステージ誤差を分離して求めることができる。
【0008】
この逐次2点法による表面形状測定方法を改良した方法は、特開2001−157951号公報(特許文献1)に開示されている。これは、逐次2点法を行う変位センサーとしてレーザ変位計を用い、2個のレーザ変位計の間のCCDセンサーの同じ位置に2個のレーザ変位計のスポットを得るように構成するものである。
【0009】
また、特開平9−210668号公報(特許文献2)には、複数個の変位センサーを用いる2点法のうちの、逐次2点法と一般2点法を組み合わせて前記変位センサーの間隔以下の横分解能を得るという方法が開示されている。
【0010】
さらに2点法を拡張した平面形状測定方法として3点法といわれる計測方法がある。これは図8に示すように3本の変位センサーを用いるもので、変位センサーA202、変位センサーB203、変位センサーC204をそれぞれ測定対象W0 の表面に対向させて、3本の変位センサーA、B、Cの間をそれぞれ同じ間隔dで変位センサー保持具205に取り付け、変位センサー保持具205が取り付けられた移動ステージをガイドに沿って移動させ、前記間隔d毎に測定データを得て、さらに同一点における測定対象W0 の表面の高さは同じになるという原理と、同一地点での変位センサー間の傾きも同じになるという原理から、変位センサーA202、変位センサーB203および変位センサーC204のデータ列と、変位センサーA、B間の傾きおよび変位センサーB、C間の傾きを順次演算することによって、変位センサー202〜204の前記移動ステージによる走り精度として、並進成分とピッチング成分を分離して測定対象W0 の表面形状を得るという方法である。
【0011】
図8において、X方向位置がXm点である地点での変位センサーA202、変位センサーB203、変位センサーC204、変位センサー保持具205を実線で示し、図示しない移動ステージに沿って変位センサー保持具205が間隔dだけX方向に移動したときのX方向位置Xm点における変位センサーA202、変位センサーB203、変位センサーC204を破線で示す。
【0012】
Xm点での測定対象W0 の表面形状をF(Xm)、Xm点での変位センサーA202の測定値をMa(Xm)、Xm点での変位センサーB203の測定値をMb(Xm)、Xn点での変位センサーB203の測定値をMb(Xn)、Xn点での変位センサーC204の測定値をMc(Xn)、Xn点での移動ステージの移動誤差をE(Xn)、Xn点での移動ステージのピッチング誤差をS(Xn)とし、Xm点における変位センサーA202、変位センサーB203の測定値を基準とすると、以下の(111)式〜(117)式が成立する。
【0013】
Ma(Xm)=F(Xm)・・・・・・・(111)
Mb(Xm)=F(Xm−d)・・・・・(112)
Ma(Xn)=F(Xm+d)+E(Xn)+S(Xn)・・・・・(113)
Mb(Xn)=F(Xm)+E(Xn)・・・・・・(114)
Mc(Xn)=F(Xm−d)+E(Xn)−S(Xn)・・・・・(115)
E(Xn)=Ma(Xm)−Mb(Xn)・・・・・・(116)
【0014】
ここで、Ma(Xm)とMb(Xn)は同一点のデータである。
S(Xn)=2Mb(Xm)−Ma(Xm)−Mc(Xn)・・・・・(117)
(113)式に(116)および(117)式を代入すると
Ma(Xn)=F(Xm+d)+2Mb(Xm)−Mb(Xn)−Mc(Xn)
F(Xm+d)=Ma(Xn)−2Mb(Xm)+Mb(Xn)+Mc(Xn)
・・・・・(118)
となって移動ステージの移動誤差E(Xn)とピッチング誤差S(Xn)を分離した形状F(Xm+d)を求めることができる。
【0015】
以上の様に3点法では、3本の変位センサーの間隔毎に前記のような計算を繰り返すことで前記2点法では求められなかった移動ステージのピッチング誤差も含めて分離して、測定対象の表面形状を求めることができる。
【0016】
また、このような3点法による表面形状測定方法を改良した方法が、特開平6−186028号公報(特許文献3)、特開2003−232625号公報(特許文献4)に開示されている。特許文献4の方法は、2個の角度センサーと1個の変位センサーを組み合せたものである。
【特許文献1】特開2001−157951号公報
【特許文献2】特開平9−210668号公報
【特許文献3】特開平6−186028号公報
【特許文献4】特開2003−232625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上説明したように2点法あるいは3点法による表面形状測定方法は、測定対象走査時の移動ステージの移動誤差を含まない計測が可能であるが以下のような問題がある。
【0018】
2点法や3点法に用いる変位センサーは、一般に渦電流を利用したり静電容量の変化を利用したギャップセンサーや、レーザビームの反射位置を三角法で測定するレーザ変位センサーなどが用いられる。前者のギャップセンサーには1nmオーダーの分解能をもつ高精度なセンサーもあるが測定レンジが狭く、ワークディスタンスも短いので非常に使いづらい。また後者のレーザ変位センサーはワークディスタンスが広くとれても分解能が粗く、ナノメータレベルの測定には精度が不足するといった問題がある。
【0019】
また、高精度な変位計としてレーザ光を干渉させて波長の位相を計測するレーザ測長器が知られている。このレーザ測長器は原理的にワークディスタンスは広くとれ、さらに測長のダイナミックレンジも10mオーダーのものが容易に手に入れることができる。さらに分解能もナノメータオーダーのものもあり、変位センサーとして充分高精度な測長データを得ることが可能である。
【0020】
しかし、このようなレーザ測長器は、原理的に連続的な変位が得られないと測定ができないという問題がある。換言すれば、一度、変位信号出力がとぎれると測長データのその前後の関係が失われて、あらためて、予め決められた復帰手順を実行する必要がある。
【0021】
すなわち、2点法および3点法のように変位センサーを複数用意する計測を行う場合、複数のセンサーの相対位置関係を予め知る必要があるが、前述のギャップセンサーや三角法を利用したレーザ変位計のようにターゲットに対する間隔を絶対位置で出力するセンサーの場合は、1度複数のセンサーの相対位置関係をなんらかの方法で計測しておけばよい。それに対してレーザの干渉を利用して波形の位相を計測するレーザ測長器においては、ターゲットとなる測定対象(ワーク)を取り替える度毎に、レーザ測長の変位信号がとぎれることになり複数のレーザ測長器の位置関係が失われてしまうという問題がある。
【0022】
最近の高精度化・大型化した位置決めステージ等に用いる参照用のバーミラーはステージの大型化に伴って長尺なものが増え、これまで面形状を測定していた干渉計測装置では大きさが足らないことが多くなってきた。そのために、2点法あるいは3点法による面形状測定装置の変位センサーとしてレーザ測長器を用いることは非常に有効であるが、これまでは前記のような問題があり、実現していなかった。また、従来の逐次2点法を改良した特許文献1、特許文献2等に開示された方法においても、さらに3点法を発展させた特許文献3、特許文献4に開示された方法でも上記の問題点は何ら解決していない。
【0023】
また、ステージの位置決めにレーザ測長器を2軸用い、位置決め用基準ミラーの形状誤差を補正する方法が特許文献5に開示されているが、最初に2軸のレーザをリセットすれば測長データの連続性が失われることがないので、上記の問題点を解決することはできない。
【0024】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、2点法や3点法における複数の変位センサーとしてレーザ測長器を用いた場合の、測定対象を交換した時に発生する測長データの連続性の喪失の問題を解決し、測定対象の表面形状をレーザ測長によって高精度に測定することのできる表面形状測定装置および表面形状測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するため、本発明の表面形状測定装置は、所定の走査方向に走査する複数の計測軸を用いた2点法または3点法によって被測定面の形状測定を行う表面形状測定装置において、前記複数の計測軸をそれぞれ構成する複数のレーザ測長器を有する測長ユニットと、各レーザ測長器に共通の参照ミラーと、前記被測定面および前記参照ミラーに対して相対的に前記測長ユニットを移動させる移動ステージと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
2軸または3軸以上の変位センサーとしてレーザ測長器を用いると、測定対象を入れ替えた場合に連続性が喪失して測定の継続が不可能となり、複数の計測軸間の相互関係も失われてしまう。そこで、被測定面および参照ミラーに対する同一位置に各レーザ測長器を逐次位置決めするための移動ステージを設けて、各レーザ測長軸の関係を復活させ測定を継続させるための準備処理を可能とする。
【0027】
変位センサーとしてレーザ測長器を使用することで、渦電流センサーや静電容量センサーを利用した変位センサーに比べて測定範囲が広がり、装置構成の自由度も広がる。
【0028】
また、三角測量の原理を利用したレーザ変位計に比べて測定データの分解能が細かくなり、かつ精度の高い計測が可能となる。
【0029】
さらに、走査方向に直交する方向に移動可能な送りステージである第二の移動ステージを、走査ステージである第三の移動ステージ上に具備することで、被測定面の1次元的な形状データだけでなく、2次元的な表面形状を測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は一実施の形態による表面形状測定装置を示すもので、これは、第一のレーザ測長軸Aの干渉計1と、第二のレーザ測長軸Bの干渉計2と、第三のレーザ測長軸Cの干渉計3を有する測長ユニットを備えた3点法による表面形状測定装置である。干渉計1、2、3には、それぞれ、レーザ測長器として機能する公知の光学部品が搭載されている。また、干渉計1、2、3には、それぞれ、測定データを受ける受光部が搭載されている。レーザ測長軸Aの干渉計1とレーザ測長軸Bの干渉計2はX方向に間隔dだけ離れており、レーザ測長軸Bの干渉計2とレーザ測長軸Cの干渉計3もX方向に間隔dだけ離れている。第一の移動ステージ4は、レーザ測長軸Aの干渉計1と、レーザ測長軸Bの干渉計2と、レーザ測長軸Cの干渉計3を搭載してX方向に移動可能である。
【0031】
参照ミラー5は、レーザ測長軸Aとレーザ測長軸Bとレーザ測長軸Cの測長基準となる、干渉計1〜3に共通の参照ミラーである。
【0032】
第一の移動ステージ4は、第二の移動ステージ6上に搭載される。第二の移動ステージ6は、ガイド7に沿って、第一の移動ステージ4の移動方向であるX方向とは直交するZ方向に移動する送りステージである。第三の移動ステージ11は、第一、第二の移動ステージ4、6、ガイド7および参照ミラー5を搭載し、ガイド12に沿って、第一の移動ステージ4と同じく走査方向であるX方向に移動する走査ステージである。
【0033】
図示しないレーザ光源から照射されたレーザビームPは、第三のレーザ測長軸Cの干渉計3に入り、第三のレーザ測長軸Cの光路と第二のレーザ測長軸Bの干渉計2へ向かう光路とに分かれ、さらに第二のレーザ測長軸Bの干渉計2に入ったレーザビームは第三のレーザ測長軸Cの光路と第一のレーザ測長軸Aの干渉計1へ向かう光路とに分かれる。干渉計2、3は、それぞれ干渉計としての役割と、レーザビームPを分割するビームスプリッタの役割とを併せて持っている。
【0034】
第一の移動ステージ4、第二の移動ステージ6、第三の移動ステージ11には図示しないスケールや原点の位置センサーが具備されており、各移動ステージ4、6、11の位置を読みとることが可能となっている。
【0035】
レーザ測長軸Aの干渉計1とレーザ測長軸Bの干渉計2およびレーザ測長軸Cの干渉計3は、それぞれ参照ミラー5と測定対象W1 の間の距離、すなわちY方向の位置変化を測長している。すなわち、干渉計1と参照ミラー5と測定対象W1 で第一のレーザ測長軸Aを、干渉計2と参照ミラー5と測定対象W1
で第二のレーザ測長軸Bを、干渉計3と参照ミラー5と測定対象W1 で第三のレーザ測長軸Cをそれぞれ形成している。Y方向の測長変化は、干渉計1、2、3にそれぞれ搭載されている図示しない受光部によって読みとられる。
【0036】
このように3軸のレーザ測長器の参照ミラーを共通とし、3軸のレーザ測長器の干渉計をユニットとして、測定対象および前記共通の参照ミラーに対して相対的に移動可能な第一の移動ステージに搭載しており、測定対象を入れ替えたときに、参照ミラーと測定対象の任意の同一位置に前記3軸のレーザ測長器をそれぞれ第一の移動ステージによって位置決めし、各レーザ測長器をリセットあるいは同一の初期値を入力する手段とアルゴリズムを具備する。
【実施例1】
【0037】
図2は、図1の3点法による表面形状測定装置を用いて被測定面である測定対象W1 の表面の形状を計測する工程を説明する図であり、図2の(b)は、(a)に対して第三の移動ステージ11の駆動により、X方向に干渉計1、2、3を間隔dだけ移動した状態を示す図である。
【0038】
図2の(a)におけるガイド12上の第三の移動ステージ11の位置をXm点、ガイド12上で第三の移動ステージ11をX方向に間隔dだけ移動させた図2の(b)に示す位置をXn点とする。
【0039】
Xm点での測定対象W1 の表面形状をF(Xm)、Xm点でのレーザ測長軸Aの干渉計1の測定値をMa(Xm)、Xm点でのレーザ測長軸Bの干渉計2の測定値をMb(Xm)、Xn点でのレーザ測長軸Bの干渉計2の測定値をMb(Xn)、Xn点でのレーザ測長軸Cの干渉計3の測定値をMc(Xn)、Xn点での第三の移動ステージ11の移動誤差をE(Xn)、Xn点での第三の移動ステージ11のピッチング誤差をS(Xn)とし、Xm点におけるレーザ測長軸Aの干渉計1、レーザ測長軸Bの干渉計2の測定値を基準とすると、以下の(1)式〜(7)式が成立する。
【0040】
Ma(Xm)=F(Xm)・・・・・・・(1)
Mb(Xm)=F(Xm−d)・・・・・(2)
Ma(Xn)=F(Xm+d)+E(Xn)+S(Xn)・・・・・(3)
Mb(Xn)=F(Xm)+E(Xn)・・・・・・(4)
Mc(Xn)=F(Xm−d)+E(Xn)−S(Xn)・・・・・(5)
E(Xn)=Ma(Xm)−Mb(Xn)・・・・・(6)
【0041】
ここで、Ma(Xm)とMb(Xn)は同一点のデータである。
S(Xn)=2Mb(Xm)−Ma(Xm)−Mc(Xn)・・・・(7)
(3)式に(6)および(7)式を代入すると
Ma(Xn)=F(Xm+d)+2Mb(Xm)−Mb(Xn)−Mc(Xn)
F(Xm+d)=Ma(Xn)−2Mb(Xm)+Mb(Xn)+Mc(Xn)
・・・・(8)
となって第三の移動ステージ11の移動誤差E(Xn)とピッチング誤差S(Xn)を分離した形状F(Xm+d)を求めることができる。
【0042】
以上の様に3点法ではレーザ測長軸A、B、Cの干渉計の間隔d毎に前記のような計算を繰り返すことで移動ステージの移動誤差とピッチング誤差も含めて分離し、測定対象の表面形状を求めることができる。
【0043】
図3は、表面形状測定装置の制御系およびデータ処理系を示すもので、図1の表面形状測定装置の本体21には、各移動軸を駆動するためのNCコントローラ22およびドライバーアンプが接続され、NCコントローラ22を通して表面形状測定装置を操作するための操作盤23、表面形状測定装置に搭載されている変位センサーやレーザ測長器ならびに各移動ステージに搭載のスケールや原点センサーの電源およびデータ取り込み用のアンプ24等が設けられる。アンプ24は、レーザ測長軸Aの干渉計1の受光部およびレーザ測長軸Bの干渉計2の受光部およびレーザ測長軸Cの干渉計3の受光部からのレーザ測長データを処理するレーザ測長アンプ、ならびに第一の移動ステージ4のスケール位置と原点センサー信号および第二の移動ステージ6のスケール位置と原点センサーの信号および第三の移動ステージ11のスケール位置と原点センサー信号を取り込むアンプである。計測コンピュータ25は、NCコントローラ22に駆動プログラムをダウンロードし、また表面形状測定装置の本体21に搭載されているセンサーやレーザ測長器からのデータを、データ取り込み用のアンプ24を介して取得し、測定対象W1 の表面形状を演算する。演算解析コンピュータ26は、NCコントローラ22に測定のための駆動条件等を送り、また計測コンピュータ25から測定対象W1 の測定結果である表面形状データを取得し、形状評価、画面表示、各種演算を行う。
【0044】
図4は、例えば測定対象交換時に、表面形状測定装置のレーザ測長軸Aの干渉計1、レーザ測長軸Bの干渉計2、レーザ測長軸Cの干渉計3のそれぞれについて測長データをリセットまたは初期値を入力する準備処理工程である原点出しのシーケンスを示すフロー図である。このフローは図3の計測コンピュータ25からNCコントローラ22に送られて、NCコントローラ22にて実行される。
【0045】
図5は、図4に示したレーザ測長器の原点出しであるレーザ測長軸データリセットシーケンスにおける表面形状測定装置の動作を示す図である。
【0046】
図4において、ステップS1では、第一の移動ステージ4および第二の移動ステージ6および第三の移動ステージ11が原点位置にいるかどうか判断する判断処理を行う。ステップS2では、ステップS1の判断処理で第一の移動ステージ4または第二の移動ステージ6または第三の移動ステージ11を原点に移動させる移動処理を行う。ステップS3は、レーザ測長軸Aの干渉計1からの測長データをリセットまたは初期値(オフセット)をセットするデータリセット処理である。ステップS4は、第一の移動ステージ4をX方向に、参照ミラー5および測定対象W1 に対して相対的にレーザ測長軸Aの干渉計1とレーザ測長軸Bの干渉計2の間隔dだけ移動させる移動処理である。ステップS5は、レーザ測長軸Bの干渉計2からの測長データをリセットまたは初期値をセットするデータリセット処理である。ステップS6は、第一の移動ステージ4をステップS4の移動処理で移動した位置から参照ミラー5および測定対象W1 に対して相対的にレーザ測長軸Bの干渉計2とレーザ測長軸Cの干渉計3の間隔dだけX方向に移動させる移動処理である。ステップS7は、のレーザ測長軸Cの干渉計3からの測長データをリセットまたは初期値をセットするデータリセット処理である。ステップS8は、第一の移動ステージ4を再び原点位置に移動させる移動処理である。
【0047】
図5の(a)は、第一の移動ステージ4および第二の移動ステージ6および第三の移動ステージ11が全て原点の位置にあるときを示す。このときレーザ測長軸Aの干渉計1の位置をS点としている。図5の(b)は、第一の移動ステージ4が同図の(a)に示す原点の位置からレーザ測長軸Aの干渉計1とレーザ測長軸Bの干渉計2の間隔dに相当する距離だけX方向に移動したときを示す。このときS点にはレーザ測長軸Bの干渉計2が移動してきている。図5の(c)は、第一の移動ステージ4が同図の(b)に示す位置からさらに前記間隔dに相当する距離だけX方向に移動したときを示す。このときS点にはレーザ測長軸Cの干渉計3が移動してきている。
【0048】
次に第4および図5を用いて3点法におけるレーザ測長器のデータリセット処理を説明する。本実施例は特に3点法の場合について説明するが2点法の場合はレーザ測長軸が3軸から2軸になるだけでシーケンスは同じである。
【0049】
まず、図3の操作盤23よりレーザ測長軸データリセットシーケンス開始信号がNCコントローラ22および計測コンピュータ25を介して演算解析コンピュータ26に送られレーザ測長軸データリセットシーケンスが開始する。シーケンスが開始されると、まずステップS1の判断処理にて第一の移動ステージ4および第二の移動ステージ6および第三の移動ステージ11が原点位置にいるかどうか調べる。ステップS1で第一の移動ステージ4または第二の移動ステージ6または第三の移動ステージ11のいずれかが原点にいないときは、ステップS2の移動処理にシーケンスが移り、原点位置にいない第一の移動ステージ4または第二の移動ステージ6または第三の移動ステージ11を原点に移動させる。
【0050】
ステップS1の判断処理で第一の移動ステージ4および第二の移動ステージ6および第三の移動ステージ11が原点位置にいると判断されると、ステップS3のデータリセット処理にシーケンスが移る。図5の(a)はこのときのステージ位置を示す。ステップS3のデータリセット処理では図5の(a)に示すようにレーザ測長軸Aの干渉計1がX方向におけるS点に位置決めされており、ここでレーザ測長軸Aの干渉計1からのデータを0にリセット、または予め決められている初期値にプリセットする。リセットまたは予め決められている初期値にプリセットするためのデータおよび信号は、予め組まれているプログラムに従って計測コンピュータ25を介してNCコントローラ22より実行される。このデータリセット処理は、実際はアンプ24のレーザ測長アンプに対して実行される。
【0051】
次にシーケンスはステップS4の移動処理に移り、第一の移動ステージ4を図5の(a)に示す原点位置より参照ミラー5および測定対象W1 に対して相対的にレーザ測長軸Aの干渉計1とレーザ測長軸Bの干渉計2の間隔dに相当する距離だけX方向に移動させる。ステップS4の移動処理が完了すると、ステップS5のデータリセット処理にシーケンスが移る。図5の(b)はこのときのステージ位置を示す。ステップS5のデータリセット処理では図5の(b)に示すようにレーザ測長軸Bの干渉計2がX方向におけるS点に位置決めされており、ここでレーザ測長軸Bの干渉計2からのデータを0にリセット、または予め決められている初期値にプリセットする。リセットおよび予め決められている初期値にプリセットするためのデータおよび信号は予め組まれているプログラムに従って計測コンピュータ25を介してNCコントローラ22より実行される。このデータリセット処理は、実際はアンプ24のレーザ測長アンプに対して実行される。
【0052】
次にシーケンスはステップS6の移動処理に移り、第一の移動ステージ4を図5の(b)に示す位置より参照ミラー5および測定対象W1 に対して相対的に間隔dに相当する距離だけX方向に移動させる。ステップS6の移動処理が完了すると、ステップS7のデータリセット処理にシーケンスが移る。図5の(c)はこのときのステージ位置を示す。ステップS7のデータリセット処理では図5の(c)に示すようにレーザ測長軸Cの干渉計3がX方向におけるS点に位置決めされており、ここでレーザ測長軸Cの干渉計3からのデータを0にリセット、または予め決められている初期値にプリセットする。リセットおよび予め決められている初期値にプリセットするためのデータおよび信号は予め組まれているプログラムに従って計測コンピュータ25を介してNCコントローラ22より実行される。このデータリセット処理は、実際はアンプ24のレーザ測長アンプに対して実行される。
【0053】
最後にシーケンスはステップS8の移動処理に移り、第一の移動ステージ4を原点位置に移動させる。ステップS8の移動処理が完了すると第一の移動ステージ4が原点に戻って、図5の(a)に示す状態になり、レーザ測長軸データリセットシーケンスが完了する。
【0054】
図5の(a)、(b)、(c)におけるS点は、参照ミラー5と測定対象W1 における同一点であるので参照ミラー5と測定対象W1 のS点におけるY方向の間隔は同一である。したがって、前記S点にてレーザ測長軸Aの干渉計1からのデータおよびレーザ測長軸Bの干渉計2からのデータおよびレーザ測長軸Cの干渉計3からのデータを、それぞれ0にリセットまたは同一の初期値にプリセットすることで、レーザ測長軸A、レーザ測長軸B、レーザ測長軸Cの相互差をキャンセルすることができる。
【0055】
以上説明したように第一の移動ステージを用いてレーザ測長軸リセットシーケンスを実行することで、3点法による形状測定装置に変位センサーとしてレーザ測長器を用いた場合に、測定対象を入れ替えたときに各レーザ測長軸の干渉計からのデータの連続性が失われても、複数のレーザ測長軸の測長データの関係を回復して測定を継続することが可能となる。
【実施例2】
【0056】
図6は、図1の装置を用いて2次元形状を測定する場合を示す。ここで、図2の(a)における第三の移動ステージ11の位置をXm点、ガイド12上で第三の移動ステージ11をX方向に間隔dだけ移動した図2の(b)の位置をXn点とする。
【0057】
まず、図6の(a)に示すように、Xm点に第三の移動ステージ11の位置決めが完了したら、第二の移動ステージ6をガイド7に沿ってZ方向に移動させる。このときレーザ測長軸Aの干渉計1、レーザ測長軸Bの干渉計2、レーザ測長軸Cの干渉計3からの測長データを参照ミラー5からの偏差として計測コンピュータ25に読みとる。このときのデータ列を視覚的に表示したものが図6の(a)である。
【0058】
次にガイド12上の第三の移動ステージ11を間隔dに相当する距離だけX方向に移動する。Xm点から間隔dに相当する距離だけ移動したXn点に第三の移動ステージ11を位置決めすることが完了したら、第二の移動ステージ6をガイド7に沿ってZ方向に移動させる。このときレーザ測長軸Aの干渉計1、レーザ測長軸Bの干渉計2、レーザ測長軸Cの干渉計3からの測長データを参照ミラー5からの偏差として計測コンピュータ25に読みとる。
【0059】
Xm点で第二の移動ステージ6を駆動してデータを測定した後、Xm点にて第二の移動ステージ6をXm点に最初に位置決めした時と同じ位置に戻してもよいし、Xm点で第二の移動ステージ6を駆動してデータを測定したままで、Xn点に移動させてもよい。Xm点で第二の移動ステージ6を元に戻さない場合は、Xn点で第二の移動ステージ6を駆動する方向は逆になるので測定データ列をXm点で読み込んだデータ列と合わせるために並べ替える必要がある。Xn点でのデータ列を視覚的に表示したものが図6の(b)である。
【0060】
Xm点での第二の移動ステージ6のZ方向の測定対象W1 の表面形状をFl(Xm)、Xm点でのレーザ測長軸Aの干渉計1が第二の移動ステージ6をZ方向に駆動しながら読み込んだ参照ミラー5に対する測定対象W1 の偏差測定データ列をLa(Xm)、Xm点でのレーザ測長軸Bの干渉計2が第二の移動ステージ6をZ方向に駆動しながら読み込んだ参照ミラー5に対する測定対象W1 の偏差測定データ列をLb(Xm)、Xn点でのレーザ測長軸Bの干渉計2が第二の移動ステージ6をZ方向に駆動しながら読み込んだ参照ミラー5に対する測定対象W1 の偏差測定データ列をLb(Xn)、Xn点でのレーザ測長軸Cの干渉計3が第二の移動ステージ6をZ方向に駆動しながら読み込んだ参照ミラー5に対する測定対象W1 の偏差測定データ列をLc(Xn)、Xn点での第三の移動ステージ11の移動誤差をEl(Xn)、Xn点での第三の移動ステージ11のピッチング誤差をSl(Xn)とし、Xm点におけるレーザ測長軸Aの干渉計1、レーザ測長軸Bの干渉計2の偏差測定データ列を基準とすると、以下の(11)式〜(17)式が成立する。
【0061】
La(Xm)=Fl(Xm) ・・・(11)
Lb(Xm)=Fl(Xm−d) ・・・(12)
La(Xn)=Fl(Xm+d)+El(Xn)+Sl(Xn) ・・・(13)
Lb(Xn)=Fl(Xm)+El(Xn) ・・・(14)
Lc(Xn)=Fl(Xm−d)+El(Xn)−Sl(Xn) ・・・(15)
El(Xn)=La(Xm)−Lb(Xn) ・・・(16)
【0062】
ここで、La(Xm)とLb(Xn)は同一点でのデータ列である。
Sl(Xn)=2Lb(Xm)−La(Xm)−Lc(Xn) ・・・(17)
(13)式に(16)および(17)式を代入すると
La(Xn)=Fl(Xm+d)+2Lb(Xm)−Lb(Xn)−Lc(Xn)
Fl(Xm+d)=La(Xn)−2Lb(Xm)+Lb(Xn)+Lc(Xn)
・・・(18)
となって第三の移動ステージ11のX方向移動時の移動誤差El(Xn)とピッチング誤差Sl(Xn)を分離した形状Fl(Xm+d)を求めることができる。
【0063】
以上の様にレーザ測長軸A、B、Cの3つの干渉計1〜3のX方向の間隔d毎に上記の計算を繰り返すことで第三の移動ステージ11のX方向移動時の移動誤差とピッチング誤差も含めて分離し、測定対象W1 の2次元的な表面形状を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】一実施の形態による表面形状測定装置を示す斜視図である。
【図2】実施例1による表面形状測定方法を説明する図である。
【図3】表面形状測定装置の制御系を示す図である。
【図4】実施例1によるレーザ測長軸データリセットシーケンスを示すフローチャートである。
【図5】図4のレーザ測長軸データリセットシーケンスによる表面形状測定装置の動作を説明する図である。
【図6】実施例2による2次元形状測定方法を説明する図である。
【図7】従来の2点法を用いた測定方法を説明する図である。
【図8】従来の3点法を用いた測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3 干渉計
4 第一の移動ステージ
5 参照ミラー
6 第二の移動ステージ
7、12 ガイド
11 第三の移動ステージ
21 本体
22 NCコントローラ
23 操作盤
24 アンプ
25 計測コンピュータ
26 演算解析コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走査方向に走査する複数の計測軸を用いた2点法または3点法によって被測定面の形状測定を行う表面形状測定装置において、前記複数の計測軸をそれぞれ構成する複数のレーザ測長器を有する測長ユニットと、各レーザ測長器に共通の参照ミラーと、前記被測定面および前記参照ミラーに対して相対的に前記測長ユニットを移動させる移動ステージと、を備えたことを特徴とする表面形状測定装置。
【請求項2】
前記移動ステージにより、前記参照ミラーと前記被測定面に対する任意の同一位置に各レーザ測長器を逐次位置決めし、各レーザ測長器のリセットまたは初期値入力処理を行うことを特徴とする請求項1記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記参照ミラーと前記被測定面に対して、前記走査方向に直交する方向に前記測長ユニットを移動させる第二の移動ステージと、前記被測定面に対して前記走査方向に前記測長ユニットと前記参照ミラーを移動させる第三の移動ステージと、を有することを特徴とする請求項1または2記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
複数のレーザ測長器および参照ミラーを用いて2点法または3点法によって被測定面の形状測定を行う表面形状測定方法において、前記複数のレーザ測長器のそれぞれを、前記被測定面および前記参照ミラーに対する同一位置に位置決めし、各レーザ測長器のリセットまたは初期値入力処理を行う準備処理工程を有することを特徴とする表面形状測定方法。
【請求項5】
前記複数のレーザ測長器を走査方向および前記走査方向と直交する方向に移動させることで、前記被測定面の2次元形状を検出することを特徴とする請求項4記載の表面形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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