表面形状計測装置、計測装置、及び観察装置
観察装置が、第1光源分布をもつ光を計測対象物表面に照射する照明装置と、計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有する。計測点を通る第1平面上で考えたときに、第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)第1平面上で計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、設定されている。
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)第1平面上で計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物の表面の形状を計測する技術に関する。また本発明は、計測対象物の表面を計測し、又は、観察する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計測対象の法線形状を測定する技術として色情報を利用する技術と、輝度情報を利用する技術が知られている。
【0003】
色情報を利用して法線形状を測定する技術として、カラーハイライト方式が知られている。カラーハイライト方式は、図20A及び20Bに示すように、赤、青、緑のリング照明をドーム上に配置して、計測対象に各色を照射する。そして、計測対象からの反射光の色を解析することで、計測対象表面の法線(天頂角成分のみ)の方向を3通りに区別し、その表面形状を算出している。カラーハイライト方式の改良として、フード上に同心円状の照明を多数配置することで、計測対象表面の法線(天頂角成分のみ)をより細かく計測する技術(例えば特開平3−142303号公報参照)や、天頂角成分計測用パターンと方位角成分計測用パターンの2種類の照明パターンを利用して撮影を行いそれぞれの画像から法線の天頂角成分と方位角成分を算出する技術(例えば特許第3553652号公報参照)が知られている。
【0004】
また、輝度情報を利用して計測対象の法線形状を測定する技術として、照度差ステレオ法が知られている。照度差ステレオ法は、図21に示すように、物体の陰影情報を利用し3つ以上の異なる光源下でそれぞれ1枚ずつ撮影された複数の画像をもとに物体表面の各点における法線方向を獲得する手法である。より具体的には、形状が既知の物体を用いて、たとえば異なる光源下で撮影された3枚の画像から輝度情報を取得する。法線の向きは、輝度値の組によって一意に決まるのでこれをテーブルとして保存しておく。計測時には、3つの光源下で撮影を行い、作成したテーブルを参照して輝度情報の組から法線を求める。照度差ステレオ法によれば、完全鏡面ではない物体の法線を求めることができる。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。
【0006】
色特徴を用いるカラーハイライト法では、反射特性が不均一な物体は計測ができない。さらに、反射特性が均一であっても完全鏡面ではない場合(鏡面ローブを有する場合)は、反射光の色混じりによって測定精度が低下してしまう。
【0007】
輝度情報を用いる照度差ステレオ法では、完全鏡面以外に反射特性が均一な物体の計測を行うことができるが、反射特性が不均一な対象の場合には、反射特性によって輝度値が変動するので法線算出の精度が低下してしまう。また反射特性が均一な物体であってもテーブルを作成する際に用いた物体(リファレンス物体)と計測物体の反射特性が異なれば法線算出精度が低下してしまう。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明の目的とするところは、反射特性が不均一、あるいは反射特性は均一ではあるが反射特性自体がリファレンス物体と異なるような計測対象であっても、法線情報(単位ベクトルのXYZ成分あるいは天頂角成分および方位角成分)を精度良く算出可能な技術を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、反射特性の不均一(すなわち、鏡面ローブの広がり度合いの
ばらつき)に依存しない、反射光の観察を可能とする技術を提供することである。また本発明の他の目的は、反射率が未知の計測対象物であっても、計測対象物表面の光反射角度に関する情報を取得可能な技術を提供することである。
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、任意の反射特性の計測対象物に対して光を照射したときの反射光の放射輝度が完全鏡面の場合の放射輝度と同じになるような光源分布、すなわち、任意の反射特性の計測対象物において拡散反射を含む反射光が正反射光と一致するような光源分布を持つ照明装置を利用する。つまり、この照明下で計測対象物を撮影した場合、計測対象の反射特性に鏡面ローブが含まれる場合でも対象を完全鏡面と同様に扱えるような照明装置を用いる。
【0011】
より具体的には、本発明の第1態様は、計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、前記計測対象物に光を照射する照明装置と、前記計測対象物からの反射光を撮像する撮像装置と、撮像画像から、前記計測対象物の各位置における表面の法線方向を算出する法線算出手段と、を有し、この照明装置が以下のような特徴を有する。
【0012】
照明装置が上記のような特徴を有するためには、発光領域上の任意の点対称領域において、この点対称領域の光源分布の重心の放射輝度が、この点対称領域中心の放射輝度と一致するような光源分布を有していればよい。
【0013】
照明装置の発光領域における光源分布をLi(p,θ,φ)としたとき、放射輝度(カメラ輝度値)Lr(p,θr,φr)は、物体表面の反射特性をf(p,θi,φi,θr,φr)として一般に以下で表すことができる。
【数1】
ここで、Ωは半球面の立体角である。
【0014】
特に、物体表面が完全鏡面である場合には、放射輝度Lrは以下で表せる。
【数2】
ここで、(θis,φis)を内部に含む任意の領域(光源分布の範囲)Ω(θis,φis)において、(1)=(2)を満たすような光源分布Li(p,θ,φ)を用いれば、対象表面が完全鏡面でない物体に対しても、対象が完全鏡面であるかのような取り扱いが可能となる。
【0015】
ただし、(1)=(2)を厳密に満たす光源分布Li(p,θ,φ)を解析的に導出するのは困難である。そこで、(1)−(2)が十分小さい値になるような光源分布Li(p,θ,φ)を考える。近似解としては、位置p及びpの法線ベクトルに依存せず、p及びpの法線ベクトルによらず一定となる光源分布を採用することが好適である。
【0016】
上記の条件を満たす近似解の具体例として、計測対象物が中心で両極が計測対象物を含
む平面上にある球を考えたときに、光源分布が経度に対して線形に変化するような光源分布を挙げることができる。また、光源分布が緯度に対して線形に変化するような光源分布であっても良い。また、発光領域が平面形状で、その平面上で線形に変化する光源分布であっても良い。
【0017】
このような光源分布は(1)=(2)の近似解となっており、このような照明装置を利用することで、対象表面が完全鏡面でない物体に対しても、対象が完全な鏡面であるかのような取り扱いが可能となる。
【0018】
なお、上記条件を満たし、かつ互いに異なる複数の光源分布を重ね合わせた光源分布を用いることが好ましい。これにより、重ね合わせた光源分布の数と同じ自由度で反射特性の異なる対象の法線を一意に算出することが可能となる。
【0019】
本発明の第2態様に係る計測装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有する。前記計測装置において、前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっている。ここで、前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、ように設定されている。
【0020】
上記の(a)の条件を満たす光源分布を用いることにより、発光中心(θC)よりも角度の小さい領域(θC−σ≦θ<θC)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θC<θ≦θC+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができる。
【0021】
そして、2つの光源分布が(b)の条件を満たしていることにより、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比を表す特徴値を評価することで、その光を放射した光源(特定領域)の方向を第1平面内で一意に特定でき、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を求めることができる。反射光の強度は計測対象物表面の反射率に依存する。しかし、上記のように反射光の強度の比をとることで反射率を消去できるため、反射率が未知の計測対象物であっても光反射方向に関する情報を算出可能である。「反射率」は、光線で考えたときの入射光線の強度に対する反射光線の強度の比を意味する。
【0022】
第2態様に係る計測装置において、前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっているとよい。前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、ように設定されていることが好ましい。
【0023】
これにより、第2平面に関しても、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができ、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を2自由度について求めることができる。
【0024】
本発明の第3態様に係る計測装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有する。前記計測装置において、前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有する。前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、前記発光領域上の複数の点iに関して、
(1)放射輝度L11(θ)とL12(θ)のうちの少なくとも一方が角度θに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点iの角度θiを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θi−a)+L11(θi+a)=2×L11(θi)
L12(θi−a)+L12(θi+a)=2×L12(θi)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点iにおける放射輝度の比L11(θi)/L12(θi)が角度θiごとに異なる、ように設定されている。
【0025】
上記の(2)の条件を満たす光源分布を用いることにより、各点iを中心とする局所領域の中で、発光中心(θi)よりも角度の小さい領域(θi−σ≦θ<θi)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θi<θ≦θi+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができる。そして、(3)の条件により、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比を評価することで、その光を放射した光源(発光領域上の点i)
の方向を第1平面内で一意に特定でき、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を求めることができる。反射光の強度は計測対象物表面の反射特性(反射率)に依存する。しかし、上記のように反射光の強度の比をとることで反射率を消去できるため、反射特性が未知の計測対象物であっても光反射方向に関する情報を算出可能である。
【0026】
第3態様に係る計測装置において、前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記計測点を通り第1平面とは異なる第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、前記発光領域上の複数の点jに関して、
(1)放射輝度L23(φ)が角度φに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点jの角度φjを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φj−a)+L21(φj+a)=2×L21(φj)
L23(φj−a)+L23(φj+a)=2×L23(φj)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点jにおける放射輝度の比L21(φj)/L23(φj)が角度φjごとに異なる、
ように設定されているとよい。
【0027】
これにより、第2平面に関しても、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができ、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を2自由度について求めることができる。
【0028】
上記の(2)の条件を満たす光源分布として、例えば、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が角度θの一次関数である光源分布や、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が角度φの一次関数である光源分布を好ましく採用できる。このようにシンプルな光源分布を採用することで、照明装置の設計及び製造が容易になる。
【0029】
本発明の第4態様に係る観察装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有する。前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっている。前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の値L11(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている。
【0030】
上記の(a)の条件を満たす光源分布を用いることにより、発光中心(θC)よりも角度の小さい領域(θC−σ≦θ<θC)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θC<θ≦θC+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができる。そして、(b)の条件により、異なる勾配の表面を異なる輝度(反射光の強度)で観察することができる。なお、撮像部で得られた画像は、記憶部に記憶し、表示部に表示し、外部装置に出力し、あるいは、光反射方向に関する情報の計算に利用される。
【0031】
第4態様に係る観察装置において、前記照明装置は、さらに第2光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第2光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、ように設定されているとよい。
【0032】
これにより、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比をとることで、計測対象物表面の反射率に依存しない観察・評価が可能となる。
【0033】
第4態様に係る観察装置において、前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっているとよい。前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、ように設定されていることが好ましい。
【0034】
これにより、計測対象物表面の勾配を2自由度について観察・評価することができる。
【0035】
本発明の第5態様に係る観察装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有する。前記観察装置において、前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており
、前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第1の光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)前記第1平面上で前記計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、設定されている。
【0036】
上記の(2)の条件を満たす光源分布を用いることにより、発光中心(θC)よりも角度の小さい領域(θC−σ≦θ<θC)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θC<θ≦θC+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、角度θCにある点から放射された光の反射光を完全鏡面の場合と同じように観察することができる。なお、撮像部で得られた画像は、記憶部に記憶し、表示部に表示し、外部装置に出力し、あるいは、光反射方向に関する情報の計算に利用される。
【0037】
第5態様に係る観察装置において、前記照明装置は、さらに第1光源分布とは異なる第2光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第2の光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
前記局所領域において、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立つように、設定されているとよい。
【0038】
これにより、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比をとることで、計測対象物表面の反射率に依存しない観察・評価が可能となる。
【0039】
本発明において、2種類の光源分布を用いる場合、前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光とを互いに異なる波長の光を用いて同時に照射し、前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出することが好ましい。また、3種類の光源分布を用いる場合は、前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光とを互いに異なる波長の光を用いて同時に照射し、前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出することが好ましい。
【0040】
これにより、1回の光照射及び1回の撮像だけで、2種類ないし3種類の光源分布での反射光の強度を同時に取得できるので、処理時間の短縮を図ることができる。
本発明において、「第1平面」及び「第2平面」は、計測したい角度の方向に応じて任意に設定できるものであり、「第1平面」及び「第2平面」は計測対象物が配置されるステージに対して垂直な面でも、平行な面でもよい。
【0041】
「放射輝度」とは、特定の方向にある微小領域に単位時間あたりに到達する光子の数を意味する。したがって、発光要素から放射される光が広がりをもつ場合、「発光要素から
計測点へ向かう方向の放射輝度」は、発光要素から放射される光の一部(計測点上の微小領域に到達したもののみ)をさす。発光要素から放射される光が広がりをもつ場合は、その放射輝度が第1平面上において当該発光要素と計測点とを通る直線に関して線対称に分布していることが好ましい。
【0042】
「複数の第1特定領域」の配置及び数は任意であり、隣接する2つの第1特定領域が離れていてもよいし、接していてもよいし、オーバーラップしていてもよい。「複数の第2特定領域」の配置も同様である。なお、照明装置は、特定領域以外の領域に発光する部分(光源)を有してもよい。特定領域の大きさ、つまり、σの値は、想定される鏡面ローブの広がりの最大値と同じかそれよりも大きい値に設定することが好ましい。鏡面ローブの広がりは、計測対象物の種類によって変わる。
【0043】
1つの特定領域に含まれている複数の発光領域の放射輝度は、上記の(a)の条件を満たす限り、当該特定領域の中でどのように分布していてもよい。例えば、1つの特定領域の中で放射輝度が連続的に変化してもよいし、階段状に変化してもよいし、あるいは一定であってもよい。
【0044】
上記の(a)の条件における「実質的に成り立ち」とは、鏡面ローブの影響が完全に相殺されなくてもよいことを意味する。例えば、鏡面ローブの広がりが最小の場合と最大の場合とで観察される反射光の強度に差があったとしても、その差が、光源(特定領域)の違いによる反射光の強度の差に比べて十分小さければ、光源(特定領域)の方向を特定することは可能である。
【0045】
「前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報」は、例えば、撮像部で観察された光を放射した光源(特定領域)の方向、計測対象物表面の計測点における勾配、あるいは、計測対象物表面の計測点における法線の方向などである。
【0046】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する表面形状計測装置、計測装置、観察装置、又は撮像システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む表面形状計測方法、計測方法、観察方法、若しくは撮像方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0047】
本発明によれば、反射特性が不均一、あるいは反射特性は均一ではあるが反射特性自体がリファレンス物体と異なるような計測対象であっても、法線情報(単位ベクトルのXYZ成分あるいは天頂角成分および方位角成分)を精度良く算出することが可能となる。
【0048】
また本発明によれば、反射特性の不均一(すなわち、鏡面ローブの広がり度合いのばらつき)に依存しない、反射光の観察が可能である。また、反射特性が未知の計測対象物であっても、計測対象物表面の光反射角度に関する情報を取得可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は第1の実施形態における3次元計測装置の概要を示す図である。
【図2】図2は第1の実施形態における3次元計測装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】図3は表面形状計測装置の別の例を示す図である。
【図4】図4は照明装置の発光領域におけるカラーパターンをRGBごとに示す図である。
【図5】図5A及び5Bは照明装置の発光領域におけるRGB各色の変化を説明する図であり、図5Aは斜視図、図5Bは側面図である。
【図6】図6は反射特性を説明する図である。
【図7】図7A及び7Bは、図7Aの鏡面物体と、反射特性が不均一な図7Bの物体のそれぞれに対してストライプ状のカラーパターンの照明を当てた場合の撮影画像を示しており、図7Bではカラーパターンが崩れている。
【図8】図8は放射輝度の算出を説明するための図である。
【図9】図9は第1の実施形態における照明装置のカラーパターンによる効果を説明する図である。
【図10】図10A及び10Bは、図10Aの鏡面物体と、反射特性が不均一な図10Bの物体のそれぞれに対して本実施形態における照明をあてる場合の撮影画像を示しており、図10Bにおいてもカラーパターンが維持されている。
【図11】図11は測定対象物表面の法線の向きと発光領域の対応を説明する図である。
【図12】図12は表面形状算出部の機能ブロックを示す図である。
【図13】図13は第1の実施形態における照明装置のカラーパターンによる効果を説明する図である。
【図14】図14A及び14Bは照明装置のカラーパターンの別の例を示す図である。
【図15】図15A及び15Bは第2の実施形態における照明装置のカラーパターンを示す図である。
【図16】図16は第2の実施形態の係る3次元計測装置の概要を示す図である。
【図17】図17は第2の実施形態におけるカラーパターンをRGBごとに示す図である。
【図18】図18は3次元測量の原理を示す図である。
【図19】図19は鏡面物体に対する3次元測量を行う場合を説明する図である。
【図20】図20A及び20Bはカラーハイライト方式による表面形状測定を説明する図であり、図20Aは装置の概要図、図20Bは測定原理を示す図である。
【図21】図21は照度差ハイライト方式による表面形状測定を説明する図である。
【図22】図22は鏡面ローブの影響をキャンセルする光源分布の例を示す図である。
【図23】図23は計測装置の構成例を示す図である。
【図24】図24は計測装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
〈概要〉
第1の実施形態に係る表面形状計測装置(法線計測装置)は、鏡面物体の3次元計測を行う3次元計測装置の一部として用いられる。3次元計測(3角測量)は、図18に示すように、異なる撮像角度の複数のカメラで撮影した画像から、画素の対応関係を調べ、視差を算出することで距離を計測する技術である。通常は、対応する画素を調べる際に輝度値を特徴量として類似度を算出することで対応する画素を調べている。
【0052】
ここで、計測対象物が鏡面物体である場合、画像に撮影される輝度値は、物体表面そのものの特徴量を表すものではなく、周囲の物体の映り込みによって決定される。したがって、図19に示すように、鏡面物体を2つのカメラで撮影したとき、光源L1からの発光が反射する物体表面の位置は異なる場所となる。これらの点を対応する画素として3次元測量すると、実際には図中の点L2の箇所を計測していることになり、誤差が生じてしまう。カメラの撮像角度の差が大きくなるほど、誤差が大きくなる。
【0053】
このような誤差が生じる原因は、鏡面物体の表面に映り込む輝度情報が、鏡面物体の表面そのものの特徴ではないからである。つまり、正しい3次元計測を行うためには、鏡面物体表面の特徴に着目して、撮像画像間での画素の対応を調べる必要がある。このような鏡面物体の表面の特徴としては、法線の向きが利用可能である。そこで、本実施形態に係る3次元計測装置では、物体表面の法線の向きに着目して3次元計測を行う。
【0054】
図1は本実施形態に係る3次元計測装置の概要を示す図である。図2は、本実施形態に係る3次元計測装置の機能ブロックを示す図である。図1に示すように、ステージ5に配置された計測対象物4を、2つのカメラ1,2によって撮影する。ここでは、カメラ1は鉛直方向から撮影を行い、カメラ2は鉛直方向から約40度ずれた方向から撮影を行う。計測対象物4には、ドーム状の照明装置3からの光が照射されており、カメラ1,2はこの照明装置3からの光の反射光を撮影する。撮影された画像はコンピュータ6に取り込まれ、画像処理されて3次元計測が行われる。
【0055】
コンピュータ6は、CPUがプログラムを実行することで、図2に示すように、表面形状算出部7、座標変換部8、対応点算出部9および三角測量部10として機能する。なお、これらの各機能部の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されても構わない。
【0056】
カメラ1,2によって撮影された画像は、それぞれ表面形状算出部7に入力される。表面形状算出部7は、撮影された計測対象物4の各位置における法線の方向を算出する。法線方向の算出処理の詳細については、後ほど詳しく説明する。
【0057】
座標変換部8は、カメラ2によって撮影された画像から算出された法線の向きを、カメラ1の座標系に合わせる座標変換処理を行う。カメラ1,2の位置関係は、計測に先立って行われるキャリブレーションにおいて調整される。そして、このキャリブレーションの際に取得されるパラメータから、カメラ2の座標系からカメラ1への座標系へ変換するための変換行列が得られる。
【0058】
対応点算出部9は、座標系が統一された2つの法線画像から、対応する画素を算出する。この処理は、カメラ1の法線画像内の着目画素における法線と同じ向きの法線を、カメラ2の法線画像中から求めることで行われる。この際、対応する画素はエピポーラライン上に存在するので、このライン上のみを探索すればよい。同じ向きの法線を有する画素を探索する際に、注目画素1点のみの情報を使うのではなく、その周囲の画素の情報も利用して最も類似度の高い画素を探索する。類似度は、例えば、注目画素を中心とした7画素×7画素のウインドウを利用し、法線の向きが最も一致する位置を対応画素として求めることができる。
【0059】
以上のようにして、2つの画像における対応点が求められたら、三角測量部10によって計測対象物4の各位置について、奥行き情報(距離)を算出する。この処理は公知の技術であるので詳しい説明は省略する。
【0060】
〈表面形状計測〉
計測対象物4の表面形状(法線)を算出する処理について、詳しく説明する。
【0061】
[照明装置]
まず、表面形状を計測するための装置の構成について説明する。表面形状計測のために、図1に示すように、ドーム形状の照明装置3から照射される光で計測対象物4を照らし、その反射光をカメラ1,2で撮影する。この撮影画像をコンピュータ6が画像処理することで、表面形状を計測する。照明装置3には、カメラ1,2が撮影できるように、2つ
の穴部3a,3bが設けられている。
【0062】
なお、本実施形態では3次元計測のために表面形状を計測するので2つのカメラを用いる構成を採用しているが、3次元計測を行わず単に表面形状を計測する目的であれば、図3に示すようにカメラが1つだけでも構わない。この場合,例えばカメラ1あるいはカメラ2の法線画像に積分処理を施すことで表面形状の計測をおこなうことができる。
【0063】
照明装置3は、図に示すようにドーム形状をしており、このドーム形状の全てが発光領域である。このような照明装置3は、例えば、ドーム形状のカラーフィルタと、その外部から白色光を照射する光源とから構成することができる。また、複数のLEDチップをドームの内側に配列させて拡散板を通して光を照射する構成にしても良い。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどをドーム形状にして、照明装置3を構成することもできる。
【0064】
照明装置3の発光領域の形状は、計測対象物の全方位から光を照射できるように半球状のドーム形状であることが好ましい。こうすることにより、あらゆる方向の法線を計測可能となる。しかしながら、計測の対象とする法線方向に対応した位置から光が照射されるような形状であれば、発光領域の形状はどのようなものであっても良い。例えば、表面の法線の向きがほぼ鉛直方向に限られるのであれば、水平方向(角度の浅い方向から)は光を照射する必要がない。
【0065】
照明装置3の発光領域の各位置における発光は、全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発するように設定される。例えば、発光が赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の3色の光成分の合成で実現される場合に、図4に示すようにRGBの各成分の発光強度をドーム上で異なる方向に対して変化させる。ここでは、変化方向が互いに120度となるようにしている。このようなRGB成分の組み合わせにより、発光領域の各位置での発光はRGB各成分の組み合わせが全て異なることとなる。したがって、全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発し、計測対象物への入射方向が異なれば入射する光のスペクトル分布(RGBの強度比)が異なるように設定できる。
【0066】
図5A及び5Bに、図4における一つの成分光の強度変化を示した。図5Aは一つの成分光の等色線(等発光強度)を示す斜視図である。図5Bは図5Aに対応する側面図である。このように、ドーム(半球)の直径を通る平面とドームとの交線が等色線となる。図4,5ではRGB各成分の発光強度が段階的に変化(図では8段階で変化)するように示しているが、これは図面の見やすさのためであり、実際には各成分光の発光強度は連続的に変化している。この発光強度の変化は角度に対して線形に変化するように設定する。より具体的には、発光強度の最小値をLmin、発光強度の最大値をLmax、等色線を含む平面と水平面とのなす角度をθとしたとき、この等色線上での発光強度L(θ)はL(θ)=Lmin+(Lmax−Lmin)×(θ/π)の関係を満たすように発光強度を設定する。図5Aに示すように「極」を定義すると、このθは経度であり、本実施形態における光源分布は経度に対して線形に変化すると表現することができる。
【0067】
このような光源分布を有する照明装置3を利用することで、反射特性が不均一な計測対象物4であっても表面形状(法線)を計測できる。計測対象物4の表面が完全鏡面ではない場合は鏡面ローブが生じる。したがって、物体表面に入射した光の反射光は、図6に示すように、正反射方向の鋭く狭い光(鏡面スパイク)と正反射方向からずれた方向へのぼんやりと広がった光(鏡面ローブ)を含む。鏡面ローブとは、計測対象表面上の微小凹凸面(マイクロファセット)によって引き起こされる鏡面反射光の広がりのことを指す。マイクロファセットの向きがばらつくほど、すなわち表面が粗くなるほど鏡面ローブは広がり、逆にマイクロファセットの向きのばらつきが小さくなるほど完全鏡面の状態に近づく
。ここで、正反射方向からのずれ(角度)とスパイクに対するローブの光強度の比が反射特性を表す。反射特性が均一ではない物体では、各表面位置における表面粗さに応じて鏡面ローブの形状が異なる。鏡面ローブと鏡面スパイクの比は1に近くなり、両者の区別がつきにくくなる。
【0068】
このような鏡面ローブの広がりがあることで、撮影画像における輝度値は、物体の正反射方向に対応する発光領域からの光だけでなく、その周囲からの光の影響も受ける。たとえば、図7Aに示すような縞状の照明を投光していた場合、表面が粗い物体では図7Bの左側に示すように反射光が周囲の光と混じり合ってしまう。
【0069】
このとき、そのような周囲からの光がちょうどキャンセルして完全鏡面の場合と同様の色特徴(R/(R+G)など)が保たれれば、あたかも完全鏡面の物体を対象に測定しているのと同様に扱うことができる。以下、本実施形態における照明パターンを用いることで、周囲からの光の影響をキャンセルし、完全鏡面の場合と同様の色特徴の画像を撮影可能なことを説明する。
【0070】
図8に示すように、(θi,φi)方向から点pに入射し、(θr,φr)方向へ反射する光を考える。点pにおける(θi,φi)方向の微小立体角をdωiとする。この微小立体角からの放射輝度をLi(p,θi,φi)とすると、これは半径1の球面上の(θi,φi)における放射輝度、すなわち光源分布と考えて良い。点pを含む微小領域dAsを(θi,φi)方向から見たとき、この領域の相当する立体角はdAscosθiである。
【0071】
したがって、微小立体角dωiから入射する光による点pへの放射照度dEi(p,Ω)は、以下のように表される。
【0072】
【数3】
したがって、点pから(θr,φr)への放射輝度Lr(p,θr,φr)は物体表面の反射特性fを用いて次のように表される。
【0073】
【数4】
ただし、積分範囲のΩは半球面上の立体角すなわち光源分布の範囲を表す。
【0074】
一方、物体表面が完全鏡面である場合には、放射輝度は以下で表される。
【0075】
【数5】
ここで、(θis,φis)は位置pから(θr,φr)方向への正反射方向を表す。
【0076】
このとき、(θis,φis)を内部に含む任意の領域(光源分布の範囲)Ω(θis,φis)において、(1)=(2)を満たす光源分布Li(p,θi,φi)を考えれば、対象表面が鏡面でない場合でも、対象が鏡面であるかのような取り扱いが可能となる。すなわち、計測対象の反射特性が変わっても常に正反射方向のスペクトル特徴を検出可能となる。(1)=(2)を満たす光源分布は、前記発光領域上の任意の点対称領域において、当該点対称領域の光源分布の重心の放射輝度が当該点対称領域中心の放射輝度と一致する光源分布であると表現することもできる。
【0077】
このような光源分布Li(p,θi,φi)を解析的に導出するのは困難であるため、近似解を用いることが実際的である。本実施形態において用いる、上記で説明したような経度方向に対して輝度が線形に変化するパターン(図5A)はそのような近似解の一つである。また、そのようなパターンを組み合わせた照明パターン(図4)も、近似解である。さらに、Liは球面調和関数展開により表すことができる。
【0078】
図5Aに示すような経度方向に対して輝度が線形に変化する照明パターンによって、鏡面ローブの影響を相殺できることを、図9を参照して別の観点から参照する。図9は、このような照明パターンによる効果を説明するために、理想に近い効果が得られる赤道方向の1次元方向を示した図である。ここでは、角度a(正反射方向)、角度a+α、角度a−αの3点からの光についてのみ考える。角度a+α、a−αの位置からの光のローブ係数は、互いに等しくσであるとする。照明装置3の発光強度は、角度(経度)に比例するものとして、角度a−α、a、a+αのそれぞれの位置において、(a−α)L、aL、(a+α)Lであるとする。この3点からの反射光の合成は、σ(a−α)L+aL+σ(a+α)L=(1+2σ)aLとなり、周囲からの光の拡散光による影響が相殺されることが分かる。ここではa±αの2点のみを考えているが、周囲からの光の拡散光の影響は全て相殺されることは容易に分かる。したがって、RGBの各色の発光強度の比によって表される特徴量は、完全鏡面反射の場合と同一の値となる。
【0079】
上記の赤道方向が最も理想的な効果が得られる方向である。その他の方向については上記のような線形性が崩れてしまい厳密には鏡面ローブの影響を相殺することはできないが、実用上問題ない範囲で拡散反射の影響を除去することが可能である。
【0080】
図10Aに示すように本実施形態の照明を鏡面物体に照射した場合と、図10Bに示すように不均一な反射特性を有する物体に照射した場合とで、照明領域の周辺はぼやけてしまうが、内部では色特徴が保存される。よって、不均一な反射特性を有する物体を対象とする場合であっても、完全鏡面反射の場合と同様に表面形状を取得することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る照明装置3を用いることで、計測対象物の反射特性にかかわらず完全鏡面物体と同じに扱うことができる。照明装置3の照明パターンは図4に示すように、RGBが異なる方向に徐々に変化するパターンを組み合わせているので、全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発する。このように発光領域の全ての位置
で異なるスペクトル分布の光を発する照明装置3を利用することで、1枚の画像のみから計測対象物4の表面形状(法線)を計測することができる。このことを図11を参照して説明する。計測対象物4の表面のある位置における法線の向きが矢印Nの向きであり、天頂角がθ、方位角がφであるとする。このとき、鏡面反射では光源色が保存されることから、カメラ1によって撮影されるその位置の色は、照明装置3の領域Rで発光し計測対象物4へ入射する光の反射光となる。このように、表面の法線の向き(θ、φ)と、入射光の方向(照明装置3の発光領域における位置)は1対1に対応する。照明装置3は、異なる方向から入射される光は異なるスペクトル分布である(発光領域の全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発している)ことから、撮影画像の色(スペクトル分布)を調べることで、その位置における法線の向きを天頂角および方位角の両方について、算出することができる。
【0082】
[法線算出部]
次に、コンピュータ6における表面形状算出部7について説明しつつ、表面形状算出処理の詳細について説明する。図12は、表面形状算出部7のより詳細な機能ブロックを示す図である。図に示すように、表面形状算出部7は、画像入力部71、特徴量算出部72、法線−特徴量テーブル73、および法線算出部74を含む。
【0083】
画像入力部71は、カメラ1,2が撮影した画像の入力を受け付ける機能部である。画像入力部71は、カメラ1,2からアナログデータを受信する場合にはアナログデータをデジタルデータに変換する。また、画像入力部71は、USB端子やIEEE1394端子などによってデジタルデータの画像を受信しても良い。この他にも、LANケーブルを介してポータブルな記憶媒体から画像を読み込むような構成を採用しても構わない。
【0084】
特徴量算出部72は、入力された撮影画像から、計測対象物4が映っている画素のそれぞれについて、反射光のスペクトル成分に関する特徴量を算出する。本実施形態では、照明装置3が、赤色光(R)、緑色光(G)および青色光(B)の3つの成分光を組み合わせた光を投光しているため、ここでは特徴量としてRGB各成分の比を利用する。例えば、RGBの各成分について、最大輝度を1で正規化した上で、(R,G,B)の組み合わせを特徴量とすることができる。また、ある色(ここではG)に対する他の色の比、例えば、R/(R+G),B/(B+G)とGの値との組み合わせを特徴としても良い。
【0085】
上述したように、計測対象物4の色、すなわち、特徴量算出部72が算出した特徴量と、法線の向きとは1対1に対応する。法線−特徴量テーブル73は、この対応関係を格納した記憶部である。この法線−特徴量テーブル73は、真球などの形状が既知の物体に対して、照明装置3およびカメラ1,2を使った撮影を行って、法線と特徴量との対応関係をあらかじめ調べることで作成可能である。例えば、真球の物体を利用した場合、注目する画素の中心からの位置を調べることで、その法線の向きを計算によって求めることができる。そして、この位置における特徴量を算出することで、法線の向きと特徴量の対応関係を調べることが可能である。
【0086】
法線算出部74は、入力画像から算出した特徴量と法線−特徴量テーブル73とから、計測対象物の各位置における法線の向きを算出する。
【0087】
〈実施形態の効果〉
1.反射特性が不均一の物体の表面形状が計測可能
上述のように、本実施形態における表面形状計測装置は、反射特性が不均一な対象であっても、完全鏡面と同様のスペクトル特徴を有する画像を撮影可能である。したがって、反射特性が不均一な対象あるいは反射特性が均一であってもリファレンス物体の反射特性と異なる場合であっても、精度良くその表面形状(法線の向き)を算出可能である。
【0088】
また、本実施形態における照明装置3を利用することで、以下のような付随的な効果を得ることができる。
【0089】
2.1枚の画像のみから法線を算出可能
本実施形態における表面形状計測装置は、全ての入射角方向について異なるスペクトル分布の光が入射するような照明装置を利用していることから、1枚の画像だけから計測対象物体の法線の向きを、天頂角成分および方位角成分の両方について求めることができる。画像の撮影が1回だけであること、および、法線の向きの算出が法線と特徴量の対応関係を格納したテーブルを調べるだけで分かることから簡単に(高速に)計測対象物の表面形状を計測することが可能である。
【0090】
3.拡散物体については自然な観察が可能
拡散物体(均等拡散物体)を撮影する場合、その画像は様々な方向からの入射光が混じり合ったものとなる。本実施形態では、照明装置3の発光領域を、RGBの3つの成分の光を図4に示すように均等な方向(互いに120度の向き)に変化させ、かつ、その変化の度合いを同じにしている。したがって、図13に示すように、任意の天頂角についてその天頂角における全方位角方向からの1色あたりの光強度の総和は各色で同一となる。全天頂角について積分しても各色の光強度の総和は同一である。そのため、拡散物体から鉛直方向に位置するカメラ1に入射する光のRGBの成分光は全て同じ強度となり、その撮影画像は拡散物体に関しては白色の反射光が撮影されることになる。つまり、撮影対象が、鏡面物体(計測対象物体)と拡散物体の両方から構成される場合に、鏡面物体の表面形状を計測可能であるとともに、拡散物体についてはあたかも白色光が照射されたかのような撮影が可能である。これは、例えば、ハンダの接合検査を行う際に、ハンダ以外の対象については色無し画像で自然な検査が実施可能となる。
【0091】
4.輝度ダイナミックレンジ問題の軽減
本実施形態における照明装置を用いると、完全鏡面や鏡面ローブを含む物体が混在する場合であっても、点光源下(平行光)で両者を観測する場合と比べて正反射光と鏡面ローブ光の輝度の差が小さくなる。したがって、あえてカメラのダイナミックレンジを広げる必要がなくなる。
【0092】
〈変形例〉
上記の実施形態の説明では、RGBの3色の発光強度が120度ずつ異なる方向に対して角度とともに変化するパターンを重ね合わせた照明装置を利用しているが、発光パターンはこれに限られるものではない。たとえば、図14Aに示すように3色がそれぞれ下方向、右方向、左方向に変化するパターンのように、それぞれが異なる方向に対して変化するパターンを組み合わせたものを利用しても良い。また、3色全てを角度ともに変化させる必要はなく、図14Bに示すように1色については全面で均一の輝度で発光し、その他の2色については異なる方向に角度とともに変化するようなパターンを採用しても良い。
【0093】
また、本実施形態における照明装置3の発光は、上述のような付随的な効果もあわせて発揮できるように構成されたものである。反射特性が不均一な対象物を完全鏡面と同じように撮影できるという効果を得るだけであれば、RGB3色の照明パターンを重ね合わせなくても良い。たとえば、それぞれが角度とともに線形に変化するRGBの照明を順次点灯して3枚の画像を撮影し、この3枚の画像を解析して計測対象物の表面形状を算出しても構わない。
【0094】
上記の説明では形状が既知な物体を用いてあらかじめ画像の撮影を行い、その画像に基づいてスペクトル分布の特徴量と法線の向きの関係を求めて、法線−特徴量テーブルを作
成していた。この法線−特徴量テーブルを参照して計測対象物のスペクトル分布の特徴量から法線の向きを求めていた。しかしながら、法線の向きとカメラで撮影されるスペクトル分布の関係が、幾何配置等から定式化できるのであれば、この算出式を用いて法線を算出しても良い。
【0095】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、反射特性が変化しても撮影画像においては常に正反射方向のスペクトル特徴を検出可能な照明パターンの近似解として、図5Aに示すような経度方向の角度に対して発光強度が線形に変化するパターンを採用した。本実施形態では、図15に示すように緯度方向に対して発光強度が線形に変化するパターンを採用する。このような照明パターンも近似解の1つであり、拡散光の影響をほぼ相殺して正反射光を検出することが可能となる。
【0096】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る表面形状計測装置では、第1,2の実施形態とは異なる形状の照明装置を利用する。図16に示すように、本実施形態では平板形状の照明装置11を用いる。本実施形態においても、発光領域での各位置における発光のスペクトル分布が全ての位置で異なるようにする。具体的には、第1の実施形態と同様に、赤色光(R)、緑色光(G)および青色光(B)の3色の光成分の合成で発光を決める場合に、図17に示すように各色を異なる方向に対して変化させる。ここでは、Rの発光強度が右方向に行くほど大きくなり、Gの発光強度が左方向に行くほど大きくなり、Bの発光強度が上方向に行くほど大きくなる。発光強度の変化の割合は、位置(距離)に対して線形とする。
【0097】
このような平面上で位置に対して発光強度が線形に変化する照明パターンは、拡散光の影響を相殺する照明パターンの近似解の1つである。したがって、このような照明パターンを用いることで、計測対象物の反射特性にかかわらず完全鏡面と同様に表面形状の算出を行うことができる。
【0098】
RGBの各成分光を組み合わせた光は、全ての位置でスペクトル分布が異なるようになる。したがって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、1枚の撮影画像のみから、計測対象物の表面形状を求めることができる。
【0099】
<本発明のさらなる実施形態>
以下、本発明の基本アイデアを別の観点から補足的に説明するとともに、本発明のさらなる実施形態について説明する。
【0100】
図6に示すように、計測対象物表面の法線ベクトルn、カメラの視線ベクトルv、光源からの光線ベクトルIが、計測点Pを通る同一平面上に存在する場合を考える。視線ベクトルvと法線ベクトルnのなす角をθr、正反射角をθsとする。θr=θsである。
【0101】
計測対象物表面での鏡面ローブの広がりをθsを基準にθσ(s)で規定する。鏡面ローブは正反射角方向の軸まわりに対称に分布する。θσ(s)は「カメラで観測可能な、θsから最も離れた(角度が開いた)光源の配置角」ということもできる。すなわち、正反射角方向θsを中心とする±θσ(s)の局所領域内に配置された光源の放射輝度が、カメラで観測される反射光の強度に影響を与え得るのである。θσ(s)の大きさは計測対象物表面の反射特性に依存する。θσ(s)の値が小さい面ほど鏡のような反射特性を示すようになる。このθσ(s)の添字σは物質の違いを表すパラメータである。
【0102】
カメラで観測される輝度値は以下の値に比例する。
【数6】
ここで、L(θ)は光源分布であり、角度θの光源から計測点Pの方向へ放射される放射輝度を表す。Rσ(θ)は計測対象物の反射特性分布であり、正反射角方向から角度θだけ離れた光源から放射された光のうち、鏡面ローブとして視線ベクトルvの方向に反射される輝度の割合を表す。Aは、θs−θσmax(s)≦θ≦θs+θσmax(s)の領域であり、σmaxは、想定される計測対象物のうち、最も鏡面ローブの広がりが大きいものに対応するパラメータである。
【0103】
このとき、少なくとも領域Aの範囲内における光源分布L(θ)が、0ではなく、かつ、光源分布L(θ)が、0<a≦θσmax(s)である任意のaについて、下記式を満たすように設定する(図22参照)。
L(θs−a)+L(θs+a)=2×L(θs) ・・・(4)
この条件は、光源分布L(θ)が点(θs,L(θs))に関して奇関数である、ということもできる。このような条件を満たすことにより、光源分布L(θ)は、領域Aの範囲で所定のオフセット値L(θs)をもち、正反射角θsよりも角度の小さい領域(θs−θσmax(s)≦θ<θs)から放射されるエネルギーと、正反射角θsよりも角度の大きい領域(θs<θ≦θs+θσmax(s))から放射されるエネルギーとが、L(θs)を基準として相殺される。換言すれば、正反射角θsよりも角度の小さい領域(θs−θσmax(s)≦θ<θs)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、正反射角θsよりも角度の大きい領域(θs<θ≦θs+θσmax(s))から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される(これをローブキャンセル効果とよぶ)。よって、鏡面ローブの影響を無視することができ、計測対象物表面の反射光を完全鏡面の場合と同じように観察することができる。すなわち、以下の関係式が成り立つ。
【数7】
ここで、kσは計測対象物の反射特性に依存する係数(反射率)である。
【0104】
(kσ及びnが既知の場合)
係数kσと法線ベクトルの向きnが既知の場合、式(5)より、カメラで観測された反射光の輝度から、計測対象物表面の法線ベクトルがnであるか否かを「鏡面ローブの広がり度合いに依存せずに」判定できる。
【0105】
図23に計測装置(観察装置)の構成例を示す。計測点Pに計測対象物表面が配置され、この計測対象物表面の法線ベクトルがnと一致しているか否かを計測するものとする。カメラ1の配置を適当に決める(カメラ1の視線方向をθrとする)。このカメラ配置から一意に定まる正反射角θs(=θr)の方向に照明装置3を配置する。照明装置3の発光領域の大きさは、想定される計測対象物の鏡面ローブの広がりの最大値2θσmax(s)よりも大きい値に設定する。照明装置3の断面形状は円弧に限らず、照明装置3の断面形状は直線や、円弧以外の曲線でもよい。照明装置3の光源分布L(θ)は式(4)の条件を満たすように設定される。図23において、照明装置3から計測点Pに向かう矢印は、発光領域内の各発光要素から計測点Pの方向へ向かう放射輝度L(θ)を模式的に示している。
【0106】
このような照明装置3を得るには、例えば、複数のLEDを照明装置3の断面に沿って並べ、各LEDの明るさをLEDの配置角θに対応するL(θ)の値に基づき調整する。LEDの前面に拡散板を置き、点Pにあらゆる角度から光源放射輝度が入射できるようにする。このようにすることで、完全鏡面物体であっても必ずカメラ1から点Pにおける反射光が観測できるようになる。またこのような構成により、各発光要素から放射される光の放射輝度が、当該発光要素と計測点Pとを通る直線に関して線対称に分布する。
【0107】
事前に、係数kσが既知の物体を、法線ベクトルの向きがnと一致するように点Pに配置し、反射光の輝度をカメラ1で計測し、その値を情報処理装置に記憶しておく(この処理をティーチングとよぶ)。計測対象物を検査する場合は、当該物体を計測点Pに置き、カメラ1で反射光の輝度を計測する。その計測値が事前に記憶していた値と比較することで、計測対象物の法線ベクトルの向きがnか否かを簡易に判定できる。この装置は、例えば、物体表面のキズ検査などに利用できる。
【0108】
(kσが未知の場合)
kσが未知の場合には、2種類の光源分布を用いるとよい。例えば2種類の光源分布L1(θ)、L2(θ)を用意し、これらの光源から放射される光で計測対象物を照射し、カメラで撮像することで、以下のベクトルIσが算出できる。
【数8】
【0109】
Iσに対応する光源方向と計測対象物の法線ベクトルのなす角がθsに等しい、すなわち、ベクトルIσとベクトル(L1(θs),L2(θs))の向きが同じである場合、計測対象物の法線ベクトルがnであるかが判定できる。「ベクトルIσとベクトル(L1(θs),L2(θs))の向きが同じである」という条件は、以下の関係式で表せる。
【数9】
【0110】
具体的には、2種類の光源分布で観測された反射光の強度の比をとることで、係数kσを消去した特徴値を求め、その特徴値を用いて計測対象物の法線ベクトルの向きを判定することができる。2種類以上の光源分布を用いる場合には、例えばR、Gなど波長の異なる光を同時に照射し、反射光をカメラ側で分離する。これにより、1回の撮像で済むという利点がある。
【0111】
(nが複数又は未知の場合)
法線ベクトルの向きnが複数又は未知の場合は、照明装置3に、式(5)又は(7)を満たす領域(これを特定領域とよぶ)を複数設けるとよい。図24は、3つの特定領域31〜33を設けた例を示している。各特定領域31〜33の大きさは、θ方向の広がりが互いに等しくなるように(つまり、点Pを中心とする単位半径の円に特定領域31〜33を投影したときに、弧の長さが互いに等しくなるように)設定される。また、各特定領域31〜33の発光中心θc1〜θc3の放射輝度L(θc1)〜L(θc3)は、互いに
異なるように設定される。2種類以上の光源分布を用いる場合は、発光中心θc1〜θc3の放射輝度の比が特定領域ごとに異なるように設定すればよい。この構成によれば、カメラ1で観測された反射光の強度に基づいて、計測対象物表面の法線ベクトルの向きが、n1か、n2か、n3か、それ以外かを判別することができる。
【0112】
特定領域の数及び配置は任意である。特定領域の数が多いほど、また特定領域の発光中心間の距離(角度)が狭いほど、角度計測の分解能が高くなる。図24では、特定領域同士が離間している例を示している。その他にも、特定領域同士が接していてもよいし、特定領域同士がオーバーラップしていてもよい。例えば、図5に示した光源分布では、多数の特定領域がオーバーラップして設けられ、かつ、特定領域の発光中心の放射輝度が角度θに応じて連続的に若しくは段階的に変化している。図5のような半円弧の範囲(−π≦θ≦π)をもつ光源分布を用いることで、任意の角度(法線方向n)を計測することが可能となる。
【0113】
任意の法線方向nの計測を可能とするには、光源分布L(θ)が任意のθについて式(5)又は(7)を満たさなければならない。L(θ)がθに関する一次式であることは、式(5)又は(7)を満たす一例である。任意の法線方向nに対し式(5)又は(7)を満たすL(θ)を算出するには、大きく3つの方法が考えられる。
【0114】
(A)理論的に算出
式(5)又は(7)のように反射特性等をモデル化し、これらを満たすL(θ)を解析的に求める。式(4)や、L(θ)がθの一次式であることは、具体的な解の例である。
【0115】
(B)シミュレーションによる導出
計測対象物の法線の自由度を2にすると、(A)による方法は解析が困難である。この場合は、シミュレーションにより光源のあらゆる組み合わせの中から式(5)や(7)における左辺と右辺の残差(例えば二乗誤差など)が最小となるL(θ)を算出する。計算効率化のため、L(θ)をモデル化して(例えば、θに関する二次や三次の多項式、あるいは球面調和関数)、それらのモデルパラメータを最小二乗法などにより算出してもよい。
【0116】
(C)実験から経験的に算出
実際に光源(LEDなど)を複数配置することで、照明装置を構築する。図24のようにカメラ1を固定し、計測対象物の向き(法線ベクトルn)を変えながら、反射光の輝度を観測する。そして、完全鏡面物体を観測した場合の輝度値との差が最小となるように、各光源の明るさを調整する。
【0117】
上述のように、一つの平面内において、式(5)又は(7)を満たす1つ又は2つの光源分布を用いた照明を行うことで、当該平面内における法線方向を計測することができる。
【0118】
法線方向を2自由度で計測したい場合には、互いに異なる2つの平面のそれぞれにおいて、式(5)又は(7)を満たすような光源分布を用いて照明を行い、その反射光をカメラで観測すればよい。組み合わせるべき光源分布の数は、算出したい法線方向の自由度や、計測対象物の反射特性が既知であるかどうかなどによって決まる。例えば、法線方向が2自由度であり且つ反射特性が未知の場合は、少なくとも3つの異なる光源分布を用いる必要がある。反射特性が既知である場合や、たとえ反射特性が未知でも法線方向の自由度が1でよい場合は、2つの異なる光源分布を用いればよい。また上述したように反射特性が既知で且つ法線方向も既知の場合は、1つの光源分布を用いればよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物の表面の形状を計測する技術に関する。また本発明は、計測対象物の表面を計測し、又は、観察する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計測対象の法線形状を測定する技術として色情報を利用する技術と、輝度情報を利用する技術が知られている。
【0003】
色情報を利用して法線形状を測定する技術として、カラーハイライト方式が知られている。カラーハイライト方式は、図20A及び20Bに示すように、赤、青、緑のリング照明をドーム上に配置して、計測対象に各色を照射する。そして、計測対象からの反射光の色を解析することで、計測対象表面の法線(天頂角成分のみ)の方向を3通りに区別し、その表面形状を算出している。カラーハイライト方式の改良として、フード上に同心円状の照明を多数配置することで、計測対象表面の法線(天頂角成分のみ)をより細かく計測する技術(例えば特開平3−142303号公報参照)や、天頂角成分計測用パターンと方位角成分計測用パターンの2種類の照明パターンを利用して撮影を行いそれぞれの画像から法線の天頂角成分と方位角成分を算出する技術(例えば特許第3553652号公報参照)が知られている。
【0004】
また、輝度情報を利用して計測対象の法線形状を測定する技術として、照度差ステレオ法が知られている。照度差ステレオ法は、図21に示すように、物体の陰影情報を利用し3つ以上の異なる光源下でそれぞれ1枚ずつ撮影された複数の画像をもとに物体表面の各点における法線方向を獲得する手法である。より具体的には、形状が既知の物体を用いて、たとえば異なる光源下で撮影された3枚の画像から輝度情報を取得する。法線の向きは、輝度値の組によって一意に決まるのでこれをテーブルとして保存しておく。計測時には、3つの光源下で撮影を行い、作成したテーブルを参照して輝度情報の組から法線を求める。照度差ステレオ法によれば、完全鏡面ではない物体の法線を求めることができる。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。
【0006】
色特徴を用いるカラーハイライト法では、反射特性が不均一な物体は計測ができない。さらに、反射特性が均一であっても完全鏡面ではない場合(鏡面ローブを有する場合)は、反射光の色混じりによって測定精度が低下してしまう。
【0007】
輝度情報を用いる照度差ステレオ法では、完全鏡面以外に反射特性が均一な物体の計測を行うことができるが、反射特性が不均一な対象の場合には、反射特性によって輝度値が変動するので法線算出の精度が低下してしまう。また反射特性が均一な物体であってもテーブルを作成する際に用いた物体(リファレンス物体)と計測物体の反射特性が異なれば法線算出精度が低下してしまう。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明の目的とするところは、反射特性が不均一、あるいは反射特性は均一ではあるが反射特性自体がリファレンス物体と異なるような計測対象であっても、法線情報(単位ベクトルのXYZ成分あるいは天頂角成分および方位角成分)を精度良く算出可能な技術を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、反射特性の不均一(すなわち、鏡面ローブの広がり度合いの
ばらつき)に依存しない、反射光の観察を可能とする技術を提供することである。また本発明の他の目的は、反射率が未知の計測対象物であっても、計測対象物表面の光反射角度に関する情報を取得可能な技術を提供することである。
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、任意の反射特性の計測対象物に対して光を照射したときの反射光の放射輝度が完全鏡面の場合の放射輝度と同じになるような光源分布、すなわち、任意の反射特性の計測対象物において拡散反射を含む反射光が正反射光と一致するような光源分布を持つ照明装置を利用する。つまり、この照明下で計測対象物を撮影した場合、計測対象の反射特性に鏡面ローブが含まれる場合でも対象を完全鏡面と同様に扱えるような照明装置を用いる。
【0011】
より具体的には、本発明の第1態様は、計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、前記計測対象物に光を照射する照明装置と、前記計測対象物からの反射光を撮像する撮像装置と、撮像画像から、前記計測対象物の各位置における表面の法線方向を算出する法線算出手段と、を有し、この照明装置が以下のような特徴を有する。
【0012】
照明装置が上記のような特徴を有するためには、発光領域上の任意の点対称領域において、この点対称領域の光源分布の重心の放射輝度が、この点対称領域中心の放射輝度と一致するような光源分布を有していればよい。
【0013】
照明装置の発光領域における光源分布をLi(p,θ,φ)としたとき、放射輝度(カメラ輝度値)Lr(p,θr,φr)は、物体表面の反射特性をf(p,θi,φi,θr,φr)として一般に以下で表すことができる。
【数1】
ここで、Ωは半球面の立体角である。
【0014】
特に、物体表面が完全鏡面である場合には、放射輝度Lrは以下で表せる。
【数2】
ここで、(θis,φis)を内部に含む任意の領域(光源分布の範囲)Ω(θis,φis)において、(1)=(2)を満たすような光源分布Li(p,θ,φ)を用いれば、対象表面が完全鏡面でない物体に対しても、対象が完全鏡面であるかのような取り扱いが可能となる。
【0015】
ただし、(1)=(2)を厳密に満たす光源分布Li(p,θ,φ)を解析的に導出するのは困難である。そこで、(1)−(2)が十分小さい値になるような光源分布Li(p,θ,φ)を考える。近似解としては、位置p及びpの法線ベクトルに依存せず、p及びpの法線ベクトルによらず一定となる光源分布を採用することが好適である。
【0016】
上記の条件を満たす近似解の具体例として、計測対象物が中心で両極が計測対象物を含
む平面上にある球を考えたときに、光源分布が経度に対して線形に変化するような光源分布を挙げることができる。また、光源分布が緯度に対して線形に変化するような光源分布であっても良い。また、発光領域が平面形状で、その平面上で線形に変化する光源分布であっても良い。
【0017】
このような光源分布は(1)=(2)の近似解となっており、このような照明装置を利用することで、対象表面が完全鏡面でない物体に対しても、対象が完全な鏡面であるかのような取り扱いが可能となる。
【0018】
なお、上記条件を満たし、かつ互いに異なる複数の光源分布を重ね合わせた光源分布を用いることが好ましい。これにより、重ね合わせた光源分布の数と同じ自由度で反射特性の異なる対象の法線を一意に算出することが可能となる。
【0019】
本発明の第2態様に係る計測装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有する。前記計測装置において、前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっている。ここで、前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、ように設定されている。
【0020】
上記の(a)の条件を満たす光源分布を用いることにより、発光中心(θC)よりも角度の小さい領域(θC−σ≦θ<θC)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θC<θ≦θC+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができる。
【0021】
そして、2つの光源分布が(b)の条件を満たしていることにより、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比を表す特徴値を評価することで、その光を放射した光源(特定領域)の方向を第1平面内で一意に特定でき、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を求めることができる。反射光の強度は計測対象物表面の反射率に依存する。しかし、上記のように反射光の強度の比をとることで反射率を消去できるため、反射率が未知の計測対象物であっても光反射方向に関する情報を算出可能である。「反射率」は、光線で考えたときの入射光線の強度に対する反射光線の強度の比を意味する。
【0022】
第2態様に係る計測装置において、前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっているとよい。前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、ように設定されていることが好ましい。
【0023】
これにより、第2平面に関しても、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができ、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を2自由度について求めることができる。
【0024】
本発明の第3態様に係る計測装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有する。前記計測装置において、前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有する。前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、前記発光領域上の複数の点iに関して、
(1)放射輝度L11(θ)とL12(θ)のうちの少なくとも一方が角度θに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点iの角度θiを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θi−a)+L11(θi+a)=2×L11(θi)
L12(θi−a)+L12(θi+a)=2×L12(θi)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点iにおける放射輝度の比L11(θi)/L12(θi)が角度θiごとに異なる、ように設定されている。
【0025】
上記の(2)の条件を満たす光源分布を用いることにより、各点iを中心とする局所領域の中で、発光中心(θi)よりも角度の小さい領域(θi−σ≦θ<θi)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θi<θ≦θi+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができる。そして、(3)の条件により、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比を評価することで、その光を放射した光源(発光領域上の点i)
の方向を第1平面内で一意に特定でき、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を求めることができる。反射光の強度は計測対象物表面の反射特性(反射率)に依存する。しかし、上記のように反射光の強度の比をとることで反射率を消去できるため、反射特性が未知の計測対象物であっても光反射方向に関する情報を算出可能である。
【0026】
第3態様に係る計測装置において、前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記計測点を通り第1平面とは異なる第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、前記発光領域上の複数の点jに関して、
(1)放射輝度L23(φ)が角度φに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点jの角度φjを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φj−a)+L21(φj+a)=2×L21(φj)
L23(φj−a)+L23(φj+a)=2×L23(φj)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点jにおける放射輝度の比L21(φj)/L23(φj)が角度φjごとに異なる、
ように設定されているとよい。
【0027】
これにより、第2平面に関しても、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができ、その結果、計測対象物表面の光反射方向に関する情報を2自由度について求めることができる。
【0028】
上記の(2)の条件を満たす光源分布として、例えば、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が角度θの一次関数である光源分布や、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が角度φの一次関数である光源分布を好ましく採用できる。このようにシンプルな光源分布を採用することで、照明装置の設計及び製造が容易になる。
【0029】
本発明の第4態様に係る観察装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有する。前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっている。前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の値L11(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている。
【0030】
上記の(a)の条件を満たす光源分布を用いることにより、発光中心(θC)よりも角度の小さい領域(θC−σ≦θ<θC)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θC<θ≦θC+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、完全鏡面の場合と同じように反射光を観察することができる。そして、(b)の条件により、異なる勾配の表面を異なる輝度(反射光の強度)で観察することができる。なお、撮像部で得られた画像は、記憶部に記憶し、表示部に表示し、外部装置に出力し、あるいは、光反射方向に関する情報の計算に利用される。
【0031】
第4態様に係る観察装置において、前記照明装置は、さらに第2光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第2光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、ように設定されているとよい。
【0032】
これにより、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比をとることで、計測対象物表面の反射率に依存しない観察・評価が可能となる。
【0033】
第4態様に係る観察装置において、前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっているとよい。前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、ように設定されていることが好ましい。
【0034】
これにより、計測対象物表面の勾配を2自由度について観察・評価することができる。
【0035】
本発明の第5態様に係る観察装置は、所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有する。前記観察装置において、前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており
、前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第1の光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)前記第1平面上で前記計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、設定されている。
【0036】
上記の(2)の条件を満たす光源分布を用いることにより、発光中心(θC)よりも角度の小さい領域(θC−σ≦θ<θC)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、発光中心よりも角度の大きい領域(θC<θ≦θC+σ)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される。よって、計測対象物表面における鏡面ローブの広がり度合いに依らず、角度θCにある点から放射された光の反射光を完全鏡面の場合と同じように観察することができる。なお、撮像部で得られた画像は、記憶部に記憶し、表示部に表示し、外部装置に出力し、あるいは、光反射方向に関する情報の計算に利用される。
【0037】
第5態様に係る観察装置において、前記照明装置は、さらに第1光源分布とは異なる第2光源分布をもつ光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第2の光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
前記局所領域において、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立つように、設定されているとよい。
【0038】
これにより、2つの光源分布において観察された反射光の強度の比をとることで、計測対象物表面の反射率に依存しない観察・評価が可能となる。
【0039】
本発明において、2種類の光源分布を用いる場合、前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光とを互いに異なる波長の光を用いて同時に照射し、前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出することが好ましい。また、3種類の光源分布を用いる場合は、前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光とを互いに異なる波長の光を用いて同時に照射し、前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出することが好ましい。
【0040】
これにより、1回の光照射及び1回の撮像だけで、2種類ないし3種類の光源分布での反射光の強度を同時に取得できるので、処理時間の短縮を図ることができる。
本発明において、「第1平面」及び「第2平面」は、計測したい角度の方向に応じて任意に設定できるものであり、「第1平面」及び「第2平面」は計測対象物が配置されるステージに対して垂直な面でも、平行な面でもよい。
【0041】
「放射輝度」とは、特定の方向にある微小領域に単位時間あたりに到達する光子の数を意味する。したがって、発光要素から放射される光が広がりをもつ場合、「発光要素から
計測点へ向かう方向の放射輝度」は、発光要素から放射される光の一部(計測点上の微小領域に到達したもののみ)をさす。発光要素から放射される光が広がりをもつ場合は、その放射輝度が第1平面上において当該発光要素と計測点とを通る直線に関して線対称に分布していることが好ましい。
【0042】
「複数の第1特定領域」の配置及び数は任意であり、隣接する2つの第1特定領域が離れていてもよいし、接していてもよいし、オーバーラップしていてもよい。「複数の第2特定領域」の配置も同様である。なお、照明装置は、特定領域以外の領域に発光する部分(光源)を有してもよい。特定領域の大きさ、つまり、σの値は、想定される鏡面ローブの広がりの最大値と同じかそれよりも大きい値に設定することが好ましい。鏡面ローブの広がりは、計測対象物の種類によって変わる。
【0043】
1つの特定領域に含まれている複数の発光領域の放射輝度は、上記の(a)の条件を満たす限り、当該特定領域の中でどのように分布していてもよい。例えば、1つの特定領域の中で放射輝度が連続的に変化してもよいし、階段状に変化してもよいし、あるいは一定であってもよい。
【0044】
上記の(a)の条件における「実質的に成り立ち」とは、鏡面ローブの影響が完全に相殺されなくてもよいことを意味する。例えば、鏡面ローブの広がりが最小の場合と最大の場合とで観察される反射光の強度に差があったとしても、その差が、光源(特定領域)の違いによる反射光の強度の差に比べて十分小さければ、光源(特定領域)の方向を特定することは可能である。
【0045】
「前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報」は、例えば、撮像部で観察された光を放射した光源(特定領域)の方向、計測対象物表面の計測点における勾配、あるいは、計測対象物表面の計測点における法線の方向などである。
【0046】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する表面形状計測装置、計測装置、観察装置、又は撮像システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む表面形状計測方法、計測方法、観察方法、若しくは撮像方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0047】
本発明によれば、反射特性が不均一、あるいは反射特性は均一ではあるが反射特性自体がリファレンス物体と異なるような計測対象であっても、法線情報(単位ベクトルのXYZ成分あるいは天頂角成分および方位角成分)を精度良く算出することが可能となる。
【0048】
また本発明によれば、反射特性の不均一(すなわち、鏡面ローブの広がり度合いのばらつき)に依存しない、反射光の観察が可能である。また、反射特性が未知の計測対象物であっても、計測対象物表面の光反射角度に関する情報を取得可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は第1の実施形態における3次元計測装置の概要を示す図である。
【図2】図2は第1の実施形態における3次元計測装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】図3は表面形状計測装置の別の例を示す図である。
【図4】図4は照明装置の発光領域におけるカラーパターンをRGBごとに示す図である。
【図5】図5A及び5Bは照明装置の発光領域におけるRGB各色の変化を説明する図であり、図5Aは斜視図、図5Bは側面図である。
【図6】図6は反射特性を説明する図である。
【図7】図7A及び7Bは、図7Aの鏡面物体と、反射特性が不均一な図7Bの物体のそれぞれに対してストライプ状のカラーパターンの照明を当てた場合の撮影画像を示しており、図7Bではカラーパターンが崩れている。
【図8】図8は放射輝度の算出を説明するための図である。
【図9】図9は第1の実施形態における照明装置のカラーパターンによる効果を説明する図である。
【図10】図10A及び10Bは、図10Aの鏡面物体と、反射特性が不均一な図10Bの物体のそれぞれに対して本実施形態における照明をあてる場合の撮影画像を示しており、図10Bにおいてもカラーパターンが維持されている。
【図11】図11は測定対象物表面の法線の向きと発光領域の対応を説明する図である。
【図12】図12は表面形状算出部の機能ブロックを示す図である。
【図13】図13は第1の実施形態における照明装置のカラーパターンによる効果を説明する図である。
【図14】図14A及び14Bは照明装置のカラーパターンの別の例を示す図である。
【図15】図15A及び15Bは第2の実施形態における照明装置のカラーパターンを示す図である。
【図16】図16は第2の実施形態の係る3次元計測装置の概要を示す図である。
【図17】図17は第2の実施形態におけるカラーパターンをRGBごとに示す図である。
【図18】図18は3次元測量の原理を示す図である。
【図19】図19は鏡面物体に対する3次元測量を行う場合を説明する図である。
【図20】図20A及び20Bはカラーハイライト方式による表面形状測定を説明する図であり、図20Aは装置の概要図、図20Bは測定原理を示す図である。
【図21】図21は照度差ハイライト方式による表面形状測定を説明する図である。
【図22】図22は鏡面ローブの影響をキャンセルする光源分布の例を示す図である。
【図23】図23は計測装置の構成例を示す図である。
【図24】図24は計測装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
〈概要〉
第1の実施形態に係る表面形状計測装置(法線計測装置)は、鏡面物体の3次元計測を行う3次元計測装置の一部として用いられる。3次元計測(3角測量)は、図18に示すように、異なる撮像角度の複数のカメラで撮影した画像から、画素の対応関係を調べ、視差を算出することで距離を計測する技術である。通常は、対応する画素を調べる際に輝度値を特徴量として類似度を算出することで対応する画素を調べている。
【0052】
ここで、計測対象物が鏡面物体である場合、画像に撮影される輝度値は、物体表面そのものの特徴量を表すものではなく、周囲の物体の映り込みによって決定される。したがって、図19に示すように、鏡面物体を2つのカメラで撮影したとき、光源L1からの発光が反射する物体表面の位置は異なる場所となる。これらの点を対応する画素として3次元測量すると、実際には図中の点L2の箇所を計測していることになり、誤差が生じてしまう。カメラの撮像角度の差が大きくなるほど、誤差が大きくなる。
【0053】
このような誤差が生じる原因は、鏡面物体の表面に映り込む輝度情報が、鏡面物体の表面そのものの特徴ではないからである。つまり、正しい3次元計測を行うためには、鏡面物体表面の特徴に着目して、撮像画像間での画素の対応を調べる必要がある。このような鏡面物体の表面の特徴としては、法線の向きが利用可能である。そこで、本実施形態に係る3次元計測装置では、物体表面の法線の向きに着目して3次元計測を行う。
【0054】
図1は本実施形態に係る3次元計測装置の概要を示す図である。図2は、本実施形態に係る3次元計測装置の機能ブロックを示す図である。図1に示すように、ステージ5に配置された計測対象物4を、2つのカメラ1,2によって撮影する。ここでは、カメラ1は鉛直方向から撮影を行い、カメラ2は鉛直方向から約40度ずれた方向から撮影を行う。計測対象物4には、ドーム状の照明装置3からの光が照射されており、カメラ1,2はこの照明装置3からの光の反射光を撮影する。撮影された画像はコンピュータ6に取り込まれ、画像処理されて3次元計測が行われる。
【0055】
コンピュータ6は、CPUがプログラムを実行することで、図2に示すように、表面形状算出部7、座標変換部8、対応点算出部9および三角測量部10として機能する。なお、これらの各機能部の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されても構わない。
【0056】
カメラ1,2によって撮影された画像は、それぞれ表面形状算出部7に入力される。表面形状算出部7は、撮影された計測対象物4の各位置における法線の方向を算出する。法線方向の算出処理の詳細については、後ほど詳しく説明する。
【0057】
座標変換部8は、カメラ2によって撮影された画像から算出された法線の向きを、カメラ1の座標系に合わせる座標変換処理を行う。カメラ1,2の位置関係は、計測に先立って行われるキャリブレーションにおいて調整される。そして、このキャリブレーションの際に取得されるパラメータから、カメラ2の座標系からカメラ1への座標系へ変換するための変換行列が得られる。
【0058】
対応点算出部9は、座標系が統一された2つの法線画像から、対応する画素を算出する。この処理は、カメラ1の法線画像内の着目画素における法線と同じ向きの法線を、カメラ2の法線画像中から求めることで行われる。この際、対応する画素はエピポーラライン上に存在するので、このライン上のみを探索すればよい。同じ向きの法線を有する画素を探索する際に、注目画素1点のみの情報を使うのではなく、その周囲の画素の情報も利用して最も類似度の高い画素を探索する。類似度は、例えば、注目画素を中心とした7画素×7画素のウインドウを利用し、法線の向きが最も一致する位置を対応画素として求めることができる。
【0059】
以上のようにして、2つの画像における対応点が求められたら、三角測量部10によって計測対象物4の各位置について、奥行き情報(距離)を算出する。この処理は公知の技術であるので詳しい説明は省略する。
【0060】
〈表面形状計測〉
計測対象物4の表面形状(法線)を算出する処理について、詳しく説明する。
【0061】
[照明装置]
まず、表面形状を計測するための装置の構成について説明する。表面形状計測のために、図1に示すように、ドーム形状の照明装置3から照射される光で計測対象物4を照らし、その反射光をカメラ1,2で撮影する。この撮影画像をコンピュータ6が画像処理することで、表面形状を計測する。照明装置3には、カメラ1,2が撮影できるように、2つ
の穴部3a,3bが設けられている。
【0062】
なお、本実施形態では3次元計測のために表面形状を計測するので2つのカメラを用いる構成を採用しているが、3次元計測を行わず単に表面形状を計測する目的であれば、図3に示すようにカメラが1つだけでも構わない。この場合,例えばカメラ1あるいはカメラ2の法線画像に積分処理を施すことで表面形状の計測をおこなうことができる。
【0063】
照明装置3は、図に示すようにドーム形状をしており、このドーム形状の全てが発光領域である。このような照明装置3は、例えば、ドーム形状のカラーフィルタと、その外部から白色光を照射する光源とから構成することができる。また、複数のLEDチップをドームの内側に配列させて拡散板を通して光を照射する構成にしても良い。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどをドーム形状にして、照明装置3を構成することもできる。
【0064】
照明装置3の発光領域の形状は、計測対象物の全方位から光を照射できるように半球状のドーム形状であることが好ましい。こうすることにより、あらゆる方向の法線を計測可能となる。しかしながら、計測の対象とする法線方向に対応した位置から光が照射されるような形状であれば、発光領域の形状はどのようなものであっても良い。例えば、表面の法線の向きがほぼ鉛直方向に限られるのであれば、水平方向(角度の浅い方向から)は光を照射する必要がない。
【0065】
照明装置3の発光領域の各位置における発光は、全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発するように設定される。例えば、発光が赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の3色の光成分の合成で実現される場合に、図4に示すようにRGBの各成分の発光強度をドーム上で異なる方向に対して変化させる。ここでは、変化方向が互いに120度となるようにしている。このようなRGB成分の組み合わせにより、発光領域の各位置での発光はRGB各成分の組み合わせが全て異なることとなる。したがって、全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発し、計測対象物への入射方向が異なれば入射する光のスペクトル分布(RGBの強度比)が異なるように設定できる。
【0066】
図5A及び5Bに、図4における一つの成分光の強度変化を示した。図5Aは一つの成分光の等色線(等発光強度)を示す斜視図である。図5Bは図5Aに対応する側面図である。このように、ドーム(半球)の直径を通る平面とドームとの交線が等色線となる。図4,5ではRGB各成分の発光強度が段階的に変化(図では8段階で変化)するように示しているが、これは図面の見やすさのためであり、実際には各成分光の発光強度は連続的に変化している。この発光強度の変化は角度に対して線形に変化するように設定する。より具体的には、発光強度の最小値をLmin、発光強度の最大値をLmax、等色線を含む平面と水平面とのなす角度をθとしたとき、この等色線上での発光強度L(θ)はL(θ)=Lmin+(Lmax−Lmin)×(θ/π)の関係を満たすように発光強度を設定する。図5Aに示すように「極」を定義すると、このθは経度であり、本実施形態における光源分布は経度に対して線形に変化すると表現することができる。
【0067】
このような光源分布を有する照明装置3を利用することで、反射特性が不均一な計測対象物4であっても表面形状(法線)を計測できる。計測対象物4の表面が完全鏡面ではない場合は鏡面ローブが生じる。したがって、物体表面に入射した光の反射光は、図6に示すように、正反射方向の鋭く狭い光(鏡面スパイク)と正反射方向からずれた方向へのぼんやりと広がった光(鏡面ローブ)を含む。鏡面ローブとは、計測対象表面上の微小凹凸面(マイクロファセット)によって引き起こされる鏡面反射光の広がりのことを指す。マイクロファセットの向きがばらつくほど、すなわち表面が粗くなるほど鏡面ローブは広がり、逆にマイクロファセットの向きのばらつきが小さくなるほど完全鏡面の状態に近づく
。ここで、正反射方向からのずれ(角度)とスパイクに対するローブの光強度の比が反射特性を表す。反射特性が均一ではない物体では、各表面位置における表面粗さに応じて鏡面ローブの形状が異なる。鏡面ローブと鏡面スパイクの比は1に近くなり、両者の区別がつきにくくなる。
【0068】
このような鏡面ローブの広がりがあることで、撮影画像における輝度値は、物体の正反射方向に対応する発光領域からの光だけでなく、その周囲からの光の影響も受ける。たとえば、図7Aに示すような縞状の照明を投光していた場合、表面が粗い物体では図7Bの左側に示すように反射光が周囲の光と混じり合ってしまう。
【0069】
このとき、そのような周囲からの光がちょうどキャンセルして完全鏡面の場合と同様の色特徴(R/(R+G)など)が保たれれば、あたかも完全鏡面の物体を対象に測定しているのと同様に扱うことができる。以下、本実施形態における照明パターンを用いることで、周囲からの光の影響をキャンセルし、完全鏡面の場合と同様の色特徴の画像を撮影可能なことを説明する。
【0070】
図8に示すように、(θi,φi)方向から点pに入射し、(θr,φr)方向へ反射する光を考える。点pにおける(θi,φi)方向の微小立体角をdωiとする。この微小立体角からの放射輝度をLi(p,θi,φi)とすると、これは半径1の球面上の(θi,φi)における放射輝度、すなわち光源分布と考えて良い。点pを含む微小領域dAsを(θi,φi)方向から見たとき、この領域の相当する立体角はdAscosθiである。
【0071】
したがって、微小立体角dωiから入射する光による点pへの放射照度dEi(p,Ω)は、以下のように表される。
【0072】
【数3】
したがって、点pから(θr,φr)への放射輝度Lr(p,θr,φr)は物体表面の反射特性fを用いて次のように表される。
【0073】
【数4】
ただし、積分範囲のΩは半球面上の立体角すなわち光源分布の範囲を表す。
【0074】
一方、物体表面が完全鏡面である場合には、放射輝度は以下で表される。
【0075】
【数5】
ここで、(θis,φis)は位置pから(θr,φr)方向への正反射方向を表す。
【0076】
このとき、(θis,φis)を内部に含む任意の領域(光源分布の範囲)Ω(θis,φis)において、(1)=(2)を満たす光源分布Li(p,θi,φi)を考えれば、対象表面が鏡面でない場合でも、対象が鏡面であるかのような取り扱いが可能となる。すなわち、計測対象の反射特性が変わっても常に正反射方向のスペクトル特徴を検出可能となる。(1)=(2)を満たす光源分布は、前記発光領域上の任意の点対称領域において、当該点対称領域の光源分布の重心の放射輝度が当該点対称領域中心の放射輝度と一致する光源分布であると表現することもできる。
【0077】
このような光源分布Li(p,θi,φi)を解析的に導出するのは困難であるため、近似解を用いることが実際的である。本実施形態において用いる、上記で説明したような経度方向に対して輝度が線形に変化するパターン(図5A)はそのような近似解の一つである。また、そのようなパターンを組み合わせた照明パターン(図4)も、近似解である。さらに、Liは球面調和関数展開により表すことができる。
【0078】
図5Aに示すような経度方向に対して輝度が線形に変化する照明パターンによって、鏡面ローブの影響を相殺できることを、図9を参照して別の観点から参照する。図9は、このような照明パターンによる効果を説明するために、理想に近い効果が得られる赤道方向の1次元方向を示した図である。ここでは、角度a(正反射方向)、角度a+α、角度a−αの3点からの光についてのみ考える。角度a+α、a−αの位置からの光のローブ係数は、互いに等しくσであるとする。照明装置3の発光強度は、角度(経度)に比例するものとして、角度a−α、a、a+αのそれぞれの位置において、(a−α)L、aL、(a+α)Lであるとする。この3点からの反射光の合成は、σ(a−α)L+aL+σ(a+α)L=(1+2σ)aLとなり、周囲からの光の拡散光による影響が相殺されることが分かる。ここではa±αの2点のみを考えているが、周囲からの光の拡散光の影響は全て相殺されることは容易に分かる。したがって、RGBの各色の発光強度の比によって表される特徴量は、完全鏡面反射の場合と同一の値となる。
【0079】
上記の赤道方向が最も理想的な効果が得られる方向である。その他の方向については上記のような線形性が崩れてしまい厳密には鏡面ローブの影響を相殺することはできないが、実用上問題ない範囲で拡散反射の影響を除去することが可能である。
【0080】
図10Aに示すように本実施形態の照明を鏡面物体に照射した場合と、図10Bに示すように不均一な反射特性を有する物体に照射した場合とで、照明領域の周辺はぼやけてしまうが、内部では色特徴が保存される。よって、不均一な反射特性を有する物体を対象とする場合であっても、完全鏡面反射の場合と同様に表面形状を取得することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る照明装置3を用いることで、計測対象物の反射特性にかかわらず完全鏡面物体と同じに扱うことができる。照明装置3の照明パターンは図4に示すように、RGBが異なる方向に徐々に変化するパターンを組み合わせているので、全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発する。このように発光領域の全ての位置
で異なるスペクトル分布の光を発する照明装置3を利用することで、1枚の画像のみから計測対象物4の表面形状(法線)を計測することができる。このことを図11を参照して説明する。計測対象物4の表面のある位置における法線の向きが矢印Nの向きであり、天頂角がθ、方位角がφであるとする。このとき、鏡面反射では光源色が保存されることから、カメラ1によって撮影されるその位置の色は、照明装置3の領域Rで発光し計測対象物4へ入射する光の反射光となる。このように、表面の法線の向き(θ、φ)と、入射光の方向(照明装置3の発光領域における位置)は1対1に対応する。照明装置3は、異なる方向から入射される光は異なるスペクトル分布である(発光領域の全ての位置で異なるスペクトル分布の光を発している)ことから、撮影画像の色(スペクトル分布)を調べることで、その位置における法線の向きを天頂角および方位角の両方について、算出することができる。
【0082】
[法線算出部]
次に、コンピュータ6における表面形状算出部7について説明しつつ、表面形状算出処理の詳細について説明する。図12は、表面形状算出部7のより詳細な機能ブロックを示す図である。図に示すように、表面形状算出部7は、画像入力部71、特徴量算出部72、法線−特徴量テーブル73、および法線算出部74を含む。
【0083】
画像入力部71は、カメラ1,2が撮影した画像の入力を受け付ける機能部である。画像入力部71は、カメラ1,2からアナログデータを受信する場合にはアナログデータをデジタルデータに変換する。また、画像入力部71は、USB端子やIEEE1394端子などによってデジタルデータの画像を受信しても良い。この他にも、LANケーブルを介してポータブルな記憶媒体から画像を読み込むような構成を採用しても構わない。
【0084】
特徴量算出部72は、入力された撮影画像から、計測対象物4が映っている画素のそれぞれについて、反射光のスペクトル成分に関する特徴量を算出する。本実施形態では、照明装置3が、赤色光(R)、緑色光(G)および青色光(B)の3つの成分光を組み合わせた光を投光しているため、ここでは特徴量としてRGB各成分の比を利用する。例えば、RGBの各成分について、最大輝度を1で正規化した上で、(R,G,B)の組み合わせを特徴量とすることができる。また、ある色(ここではG)に対する他の色の比、例えば、R/(R+G),B/(B+G)とGの値との組み合わせを特徴としても良い。
【0085】
上述したように、計測対象物4の色、すなわち、特徴量算出部72が算出した特徴量と、法線の向きとは1対1に対応する。法線−特徴量テーブル73は、この対応関係を格納した記憶部である。この法線−特徴量テーブル73は、真球などの形状が既知の物体に対して、照明装置3およびカメラ1,2を使った撮影を行って、法線と特徴量との対応関係をあらかじめ調べることで作成可能である。例えば、真球の物体を利用した場合、注目する画素の中心からの位置を調べることで、その法線の向きを計算によって求めることができる。そして、この位置における特徴量を算出することで、法線の向きと特徴量の対応関係を調べることが可能である。
【0086】
法線算出部74は、入力画像から算出した特徴量と法線−特徴量テーブル73とから、計測対象物の各位置における法線の向きを算出する。
【0087】
〈実施形態の効果〉
1.反射特性が不均一の物体の表面形状が計測可能
上述のように、本実施形態における表面形状計測装置は、反射特性が不均一な対象であっても、完全鏡面と同様のスペクトル特徴を有する画像を撮影可能である。したがって、反射特性が不均一な対象あるいは反射特性が均一であってもリファレンス物体の反射特性と異なる場合であっても、精度良くその表面形状(法線の向き)を算出可能である。
【0088】
また、本実施形態における照明装置3を利用することで、以下のような付随的な効果を得ることができる。
【0089】
2.1枚の画像のみから法線を算出可能
本実施形態における表面形状計測装置は、全ての入射角方向について異なるスペクトル分布の光が入射するような照明装置を利用していることから、1枚の画像だけから計測対象物体の法線の向きを、天頂角成分および方位角成分の両方について求めることができる。画像の撮影が1回だけであること、および、法線の向きの算出が法線と特徴量の対応関係を格納したテーブルを調べるだけで分かることから簡単に(高速に)計測対象物の表面形状を計測することが可能である。
【0090】
3.拡散物体については自然な観察が可能
拡散物体(均等拡散物体)を撮影する場合、その画像は様々な方向からの入射光が混じり合ったものとなる。本実施形態では、照明装置3の発光領域を、RGBの3つの成分の光を図4に示すように均等な方向(互いに120度の向き)に変化させ、かつ、その変化の度合いを同じにしている。したがって、図13に示すように、任意の天頂角についてその天頂角における全方位角方向からの1色あたりの光強度の総和は各色で同一となる。全天頂角について積分しても各色の光強度の総和は同一である。そのため、拡散物体から鉛直方向に位置するカメラ1に入射する光のRGBの成分光は全て同じ強度となり、その撮影画像は拡散物体に関しては白色の反射光が撮影されることになる。つまり、撮影対象が、鏡面物体(計測対象物体)と拡散物体の両方から構成される場合に、鏡面物体の表面形状を計測可能であるとともに、拡散物体についてはあたかも白色光が照射されたかのような撮影が可能である。これは、例えば、ハンダの接合検査を行う際に、ハンダ以外の対象については色無し画像で自然な検査が実施可能となる。
【0091】
4.輝度ダイナミックレンジ問題の軽減
本実施形態における照明装置を用いると、完全鏡面や鏡面ローブを含む物体が混在する場合であっても、点光源下(平行光)で両者を観測する場合と比べて正反射光と鏡面ローブ光の輝度の差が小さくなる。したがって、あえてカメラのダイナミックレンジを広げる必要がなくなる。
【0092】
〈変形例〉
上記の実施形態の説明では、RGBの3色の発光強度が120度ずつ異なる方向に対して角度とともに変化するパターンを重ね合わせた照明装置を利用しているが、発光パターンはこれに限られるものではない。たとえば、図14Aに示すように3色がそれぞれ下方向、右方向、左方向に変化するパターンのように、それぞれが異なる方向に対して変化するパターンを組み合わせたものを利用しても良い。また、3色全てを角度ともに変化させる必要はなく、図14Bに示すように1色については全面で均一の輝度で発光し、その他の2色については異なる方向に角度とともに変化するようなパターンを採用しても良い。
【0093】
また、本実施形態における照明装置3の発光は、上述のような付随的な効果もあわせて発揮できるように構成されたものである。反射特性が不均一な対象物を完全鏡面と同じように撮影できるという効果を得るだけであれば、RGB3色の照明パターンを重ね合わせなくても良い。たとえば、それぞれが角度とともに線形に変化するRGBの照明を順次点灯して3枚の画像を撮影し、この3枚の画像を解析して計測対象物の表面形状を算出しても構わない。
【0094】
上記の説明では形状が既知な物体を用いてあらかじめ画像の撮影を行い、その画像に基づいてスペクトル分布の特徴量と法線の向きの関係を求めて、法線−特徴量テーブルを作
成していた。この法線−特徴量テーブルを参照して計測対象物のスペクトル分布の特徴量から法線の向きを求めていた。しかしながら、法線の向きとカメラで撮影されるスペクトル分布の関係が、幾何配置等から定式化できるのであれば、この算出式を用いて法線を算出しても良い。
【0095】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、反射特性が変化しても撮影画像においては常に正反射方向のスペクトル特徴を検出可能な照明パターンの近似解として、図5Aに示すような経度方向の角度に対して発光強度が線形に変化するパターンを採用した。本実施形態では、図15に示すように緯度方向に対して発光強度が線形に変化するパターンを採用する。このような照明パターンも近似解の1つであり、拡散光の影響をほぼ相殺して正反射光を検出することが可能となる。
【0096】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る表面形状計測装置では、第1,2の実施形態とは異なる形状の照明装置を利用する。図16に示すように、本実施形態では平板形状の照明装置11を用いる。本実施形態においても、発光領域での各位置における発光のスペクトル分布が全ての位置で異なるようにする。具体的には、第1の実施形態と同様に、赤色光(R)、緑色光(G)および青色光(B)の3色の光成分の合成で発光を決める場合に、図17に示すように各色を異なる方向に対して変化させる。ここでは、Rの発光強度が右方向に行くほど大きくなり、Gの発光強度が左方向に行くほど大きくなり、Bの発光強度が上方向に行くほど大きくなる。発光強度の変化の割合は、位置(距離)に対して線形とする。
【0097】
このような平面上で位置に対して発光強度が線形に変化する照明パターンは、拡散光の影響を相殺する照明パターンの近似解の1つである。したがって、このような照明パターンを用いることで、計測対象物の反射特性にかかわらず完全鏡面と同様に表面形状の算出を行うことができる。
【0098】
RGBの各成分光を組み合わせた光は、全ての位置でスペクトル分布が異なるようになる。したがって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、1枚の撮影画像のみから、計測対象物の表面形状を求めることができる。
【0099】
<本発明のさらなる実施形態>
以下、本発明の基本アイデアを別の観点から補足的に説明するとともに、本発明のさらなる実施形態について説明する。
【0100】
図6に示すように、計測対象物表面の法線ベクトルn、カメラの視線ベクトルv、光源からの光線ベクトルIが、計測点Pを通る同一平面上に存在する場合を考える。視線ベクトルvと法線ベクトルnのなす角をθr、正反射角をθsとする。θr=θsである。
【0101】
計測対象物表面での鏡面ローブの広がりをθsを基準にθσ(s)で規定する。鏡面ローブは正反射角方向の軸まわりに対称に分布する。θσ(s)は「カメラで観測可能な、θsから最も離れた(角度が開いた)光源の配置角」ということもできる。すなわち、正反射角方向θsを中心とする±θσ(s)の局所領域内に配置された光源の放射輝度が、カメラで観測される反射光の強度に影響を与え得るのである。θσ(s)の大きさは計測対象物表面の反射特性に依存する。θσ(s)の値が小さい面ほど鏡のような反射特性を示すようになる。このθσ(s)の添字σは物質の違いを表すパラメータである。
【0102】
カメラで観測される輝度値は以下の値に比例する。
【数6】
ここで、L(θ)は光源分布であり、角度θの光源から計測点Pの方向へ放射される放射輝度を表す。Rσ(θ)は計測対象物の反射特性分布であり、正反射角方向から角度θだけ離れた光源から放射された光のうち、鏡面ローブとして視線ベクトルvの方向に反射される輝度の割合を表す。Aは、θs−θσmax(s)≦θ≦θs+θσmax(s)の領域であり、σmaxは、想定される計測対象物のうち、最も鏡面ローブの広がりが大きいものに対応するパラメータである。
【0103】
このとき、少なくとも領域Aの範囲内における光源分布L(θ)が、0ではなく、かつ、光源分布L(θ)が、0<a≦θσmax(s)である任意のaについて、下記式を満たすように設定する(図22参照)。
L(θs−a)+L(θs+a)=2×L(θs) ・・・(4)
この条件は、光源分布L(θ)が点(θs,L(θs))に関して奇関数である、ということもできる。このような条件を満たすことにより、光源分布L(θ)は、領域Aの範囲で所定のオフセット値L(θs)をもち、正反射角θsよりも角度の小さい領域(θs−θσmax(s)≦θ<θs)から放射されるエネルギーと、正反射角θsよりも角度の大きい領域(θs<θ≦θs+θσmax(s))から放射されるエネルギーとが、L(θs)を基準として相殺される。換言すれば、正反射角θsよりも角度の小さい領域(θs−θσmax(s)≦θ<θs)から放射された光に由来する鏡面ローブの影響と、正反射角θsよりも角度の大きい領域(θs<θ≦θs+θσmax(s))から放射された光に由来する鏡面ローブの影響とが相殺される(これをローブキャンセル効果とよぶ)。よって、鏡面ローブの影響を無視することができ、計測対象物表面の反射光を完全鏡面の場合と同じように観察することができる。すなわち、以下の関係式が成り立つ。
【数7】
ここで、kσは計測対象物の反射特性に依存する係数(反射率)である。
【0104】
(kσ及びnが既知の場合)
係数kσと法線ベクトルの向きnが既知の場合、式(5)より、カメラで観測された反射光の輝度から、計測対象物表面の法線ベクトルがnであるか否かを「鏡面ローブの広がり度合いに依存せずに」判定できる。
【0105】
図23に計測装置(観察装置)の構成例を示す。計測点Pに計測対象物表面が配置され、この計測対象物表面の法線ベクトルがnと一致しているか否かを計測するものとする。カメラ1の配置を適当に決める(カメラ1の視線方向をθrとする)。このカメラ配置から一意に定まる正反射角θs(=θr)の方向に照明装置3を配置する。照明装置3の発光領域の大きさは、想定される計測対象物の鏡面ローブの広がりの最大値2θσmax(s)よりも大きい値に設定する。照明装置3の断面形状は円弧に限らず、照明装置3の断面形状は直線や、円弧以外の曲線でもよい。照明装置3の光源分布L(θ)は式(4)の条件を満たすように設定される。図23において、照明装置3から計測点Pに向かう矢印は、発光領域内の各発光要素から計測点Pの方向へ向かう放射輝度L(θ)を模式的に示している。
【0106】
このような照明装置3を得るには、例えば、複数のLEDを照明装置3の断面に沿って並べ、各LEDの明るさをLEDの配置角θに対応するL(θ)の値に基づき調整する。LEDの前面に拡散板を置き、点Pにあらゆる角度から光源放射輝度が入射できるようにする。このようにすることで、完全鏡面物体であっても必ずカメラ1から点Pにおける反射光が観測できるようになる。またこのような構成により、各発光要素から放射される光の放射輝度が、当該発光要素と計測点Pとを通る直線に関して線対称に分布する。
【0107】
事前に、係数kσが既知の物体を、法線ベクトルの向きがnと一致するように点Pに配置し、反射光の輝度をカメラ1で計測し、その値を情報処理装置に記憶しておく(この処理をティーチングとよぶ)。計測対象物を検査する場合は、当該物体を計測点Pに置き、カメラ1で反射光の輝度を計測する。その計測値が事前に記憶していた値と比較することで、計測対象物の法線ベクトルの向きがnか否かを簡易に判定できる。この装置は、例えば、物体表面のキズ検査などに利用できる。
【0108】
(kσが未知の場合)
kσが未知の場合には、2種類の光源分布を用いるとよい。例えば2種類の光源分布L1(θ)、L2(θ)を用意し、これらの光源から放射される光で計測対象物を照射し、カメラで撮像することで、以下のベクトルIσが算出できる。
【数8】
【0109】
Iσに対応する光源方向と計測対象物の法線ベクトルのなす角がθsに等しい、すなわち、ベクトルIσとベクトル(L1(θs),L2(θs))の向きが同じである場合、計測対象物の法線ベクトルがnであるかが判定できる。「ベクトルIσとベクトル(L1(θs),L2(θs))の向きが同じである」という条件は、以下の関係式で表せる。
【数9】
【0110】
具体的には、2種類の光源分布で観測された反射光の強度の比をとることで、係数kσを消去した特徴値を求め、その特徴値を用いて計測対象物の法線ベクトルの向きを判定することができる。2種類以上の光源分布を用いる場合には、例えばR、Gなど波長の異なる光を同時に照射し、反射光をカメラ側で分離する。これにより、1回の撮像で済むという利点がある。
【0111】
(nが複数又は未知の場合)
法線ベクトルの向きnが複数又は未知の場合は、照明装置3に、式(5)又は(7)を満たす領域(これを特定領域とよぶ)を複数設けるとよい。図24は、3つの特定領域31〜33を設けた例を示している。各特定領域31〜33の大きさは、θ方向の広がりが互いに等しくなるように(つまり、点Pを中心とする単位半径の円に特定領域31〜33を投影したときに、弧の長さが互いに等しくなるように)設定される。また、各特定領域31〜33の発光中心θc1〜θc3の放射輝度L(θc1)〜L(θc3)は、互いに
異なるように設定される。2種類以上の光源分布を用いる場合は、発光中心θc1〜θc3の放射輝度の比が特定領域ごとに異なるように設定すればよい。この構成によれば、カメラ1で観測された反射光の強度に基づいて、計測対象物表面の法線ベクトルの向きが、n1か、n2か、n3か、それ以外かを判別することができる。
【0112】
特定領域の数及び配置は任意である。特定領域の数が多いほど、また特定領域の発光中心間の距離(角度)が狭いほど、角度計測の分解能が高くなる。図24では、特定領域同士が離間している例を示している。その他にも、特定領域同士が接していてもよいし、特定領域同士がオーバーラップしていてもよい。例えば、図5に示した光源分布では、多数の特定領域がオーバーラップして設けられ、かつ、特定領域の発光中心の放射輝度が角度θに応じて連続的に若しくは段階的に変化している。図5のような半円弧の範囲(−π≦θ≦π)をもつ光源分布を用いることで、任意の角度(法線方向n)を計測することが可能となる。
【0113】
任意の法線方向nの計測を可能とするには、光源分布L(θ)が任意のθについて式(5)又は(7)を満たさなければならない。L(θ)がθに関する一次式であることは、式(5)又は(7)を満たす一例である。任意の法線方向nに対し式(5)又は(7)を満たすL(θ)を算出するには、大きく3つの方法が考えられる。
【0114】
(A)理論的に算出
式(5)又は(7)のように反射特性等をモデル化し、これらを満たすL(θ)を解析的に求める。式(4)や、L(θ)がθの一次式であることは、具体的な解の例である。
【0115】
(B)シミュレーションによる導出
計測対象物の法線の自由度を2にすると、(A)による方法は解析が困難である。この場合は、シミュレーションにより光源のあらゆる組み合わせの中から式(5)や(7)における左辺と右辺の残差(例えば二乗誤差など)が最小となるL(θ)を算出する。計算効率化のため、L(θ)をモデル化して(例えば、θに関する二次や三次の多項式、あるいは球面調和関数)、それらのモデルパラメータを最小二乗法などにより算出してもよい。
【0116】
(C)実験から経験的に算出
実際に光源(LEDなど)を複数配置することで、照明装置を構築する。図24のようにカメラ1を固定し、計測対象物の向き(法線ベクトルn)を変えながら、反射光の輝度を観測する。そして、完全鏡面物体を観測した場合の輝度値との差が最小となるように、各光源の明るさを調整する。
【0117】
上述のように、一つの平面内において、式(5)又は(7)を満たす1つ又は2つの光源分布を用いた照明を行うことで、当該平面内における法線方向を計測することができる。
【0118】
法線方向を2自由度で計測したい場合には、互いに異なる2つの平面のそれぞれにおいて、式(5)又は(7)を満たすような光源分布を用いて照明を行い、その反射光をカメラで観測すればよい。組み合わせるべき光源分布の数は、算出したい法線方向の自由度や、計測対象物の反射特性が既知であるかどうかなどによって決まる。例えば、法線方向が2自由度であり且つ反射特性が未知の場合は、少なくとも3つの異なる光源分布を用いる必要がある。反射特性が既知である場合や、たとえ反射特性が未知でも法線方向の自由度が1でよい場合は、2つの異なる光源分布を用いればよい。また上述したように反射特性が既知で且つ法線方向も既知の場合は、1つの光源分布を用いればよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、
前記計測対象物に光を照射する照明装置と、
前記計測対象物からの反射光を撮像する撮像装置と、
撮像画像から、前記計測対象物の各位置における表面の法線方向を算出する法線算出部と、
を有し、
前記照明装置は所定の広さの発光領域を有しており、前記発光領域上の任意の点対称領域において、当該点対称領域の光源分布重心の放射輝度が当該点対称領域中心の放射輝度と一致する
表面形状計測装置。
【請求項2】
前記照明装置は、入射角(θ,φ)の方向から計測点pに入射する光源分布をLi(p,θ,φ)としたときに、前記撮像画像の放射輝度がLi(p,θis,φis±π)と等しく、かつ以下の条件がp上の任意の法線ベクトルおよび任意の領域Ωについて成立する
請求項1に記載の表面形状計測装置。
【数1】
ここで、
p:計測点
θi:入射角(天頂角成分)
φi:入射角(方位角成分)
θr:反射角(天頂角成分)
φr:反射角(方位角成分)
θis:θrに対する正反射入射角(天頂角成分)
φis:φrに対する正反射入射角(方位角成分)
f:反射特性
Ω:(θis,φis)を中心とする点対称領域
【請求項3】
前記光源分布Li(p,θ,φ)を、位置pおよびp上の法線ベクトルに依存せずpおよびp上の法線ベクトルに対して一定となるように近似した光源分布を用いる
請求項2に記載の表面形状計測装置。
【請求項4】
中心が前記計測対象物であり両極が計測対象物を含む平面上にある球を考えたときに、
前記光源分布が当該球の経度に対して線形に変化するものである
請求項3に記載の表面形状計測装置。
【請求項5】
中心が前記計測対象物であり両極が計測対象物を含む平面上にある球を考えたときに、
前記光源分布が当該球の緯度に対して線形に変化するものである
請求項3に記載の表面形状計測装置。
【請求項6】
発光領域が平面形状を有し、前記光源分布が平面上で線形に変化している請求項3に記載の表面形状計測装置。
【請求項7】
前記照明の光源分布は、複数の光源分布を重畳したものであり、当該複数の光源分布のそれぞれは請求項1〜6のいずれかに記載の光源分布であり、かつ互いに異なる
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項8】
所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、
第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有し、
前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、
前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている計測装置。
【請求項9】
各発光要素から放射される光の放射輝度は、前記第1平面上において、当該発光要素と前記計測点とを通る直線に関して線対称に分布している
請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、
前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、
ように設定されている請求項8に記載の計測装置。
【請求項11】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項8に記載の計測装置。
【請求項12】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光の波長を互いに異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項10に記載の計測装置。
【請求項13】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第2光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第1平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項8に記載の計測装置。
【請求項14】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第3光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第2平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項10に記載の計測装置。
【請求項15】
所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、
第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有し、
前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており、
前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、前記発光領域上の複数の点iに関して、
(1)放射輝度L11(θ)とL12(θ)のうちの少なくとも一方が角度θに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点iの角度θiを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θi−a)+L11(θi+a)=2×L11(θi)
L12(θi−a)+L12(θi+a)=2×L12(θi)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点iにおける放射輝度の比L11(θi)/L12(θi)が角度θiごとに異なる、
ように設定されている計測装置。
【請求項16】
放射輝度L11(θ)、L12(θ)は、角度θの一次関数である
請求項15に記載の計測装置。
【請求項17】
前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記計測点を通り第1平面とは異なる第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、前記発光領域上の複数の点jに関して、
(1)放射輝度L23(φ)が角度φに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点jの角度φjを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φj−a)+L21(φj+a)=2×L21(φj)
L23(φj−a)+L23(φj+a)=2×L23(φj)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点jにおける放射輝度の比L21(φj)/L23(φj)が角度φjごとに異なる、
ように設定されている
請求項15に記載の計測装置。
【請求項18】
放射輝度L21(φ)、L23(φ)は、角度φの一次関数である
請求項17に記載の計測装置。
【請求項19】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項15に記載の計測装置。
【請求項20】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光の波長を互いに異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項17に記載の計測装置。
【請求項21】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第2光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第1平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項15に記載の計測装置。
【請求項22】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第3光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第2平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項17に記載の計測装置。
【請求項23】
所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、
第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有し、
前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、
前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の値L11(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている観察装置。
【請求項24】
前記照明装置は、さらに第2光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第2光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている
請求項23に記載の観察装置。
【請求項25】
各発光要素から放射される光の放射輝度は、前記第1平面上において、当該発光要素と前記計測点とを通る直線に関して線対称に分布している
請求項23に記載の観察装置。
【請求項26】
前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、
前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)
が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、
ように設定されている
請求項24に記載の観察装置。
【請求項27】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項24に記載の観察装置。
【請求項28】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光の波長を互いに異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項26に記載の観察装置。
【請求項29】
所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、
第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有し、
前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており、
前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第1の光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)前記第1平面上で前記計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、
設定されている観察装置。
【請求項30】
前記照明装置は、さらに第1光源分布とは異なる第2光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第2の光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
前記局所領域において、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立つように、
設定されている
請求項29に記載の観察装置。
【請求項31】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項30に記載の計測装置。
【請求項32】
所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する方法であって、
照明装置から第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射するステップと、
光を照射された前記計測対象物表面を撮像部で撮像するステップと、を有し、
前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており、
前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第1の光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)前記第1平面上で前記計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、
設定されている方法。
【請求項1】
計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、
前記計測対象物に光を照射する照明装置と、
前記計測対象物からの反射光を撮像する撮像装置と、
撮像画像から、前記計測対象物の各位置における表面の法線方向を算出する法線算出部と、
を有し、
前記照明装置は所定の広さの発光領域を有しており、前記発光領域上の任意の点対称領域において、当該点対称領域の光源分布重心の放射輝度が当該点対称領域中心の放射輝度と一致する
表面形状計測装置。
【請求項2】
前記照明装置は、入射角(θ,φ)の方向から計測点pに入射する光源分布をLi(p,θ,φ)としたときに、前記撮像画像の放射輝度がLi(p,θis,φis±π)と等しく、かつ以下の条件がp上の任意の法線ベクトルおよび任意の領域Ωについて成立する
請求項1に記載の表面形状計測装置。
【数1】
ここで、
p:計測点
θi:入射角(天頂角成分)
φi:入射角(方位角成分)
θr:反射角(天頂角成分)
φr:反射角(方位角成分)
θis:θrに対する正反射入射角(天頂角成分)
φis:φrに対する正反射入射角(方位角成分)
f:反射特性
Ω:(θis,φis)を中心とする点対称領域
【請求項3】
前記光源分布Li(p,θ,φ)を、位置pおよびp上の法線ベクトルに依存せずpおよびp上の法線ベクトルに対して一定となるように近似した光源分布を用いる
請求項2に記載の表面形状計測装置。
【請求項4】
中心が前記計測対象物であり両極が計測対象物を含む平面上にある球を考えたときに、
前記光源分布が当該球の経度に対して線形に変化するものである
請求項3に記載の表面形状計測装置。
【請求項5】
中心が前記計測対象物であり両極が計測対象物を含む平面上にある球を考えたときに、
前記光源分布が当該球の緯度に対して線形に変化するものである
請求項3に記載の表面形状計測装置。
【請求項6】
発光領域が平面形状を有し、前記光源分布が平面上で線形に変化している請求項3に記載の表面形状計測装置。
【請求項7】
前記照明の光源分布は、複数の光源分布を重畳したものであり、当該複数の光源分布のそれぞれは請求項1〜6のいずれかに記載の光源分布であり、かつ互いに異なる
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項8】
所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、
第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有し、
前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、
前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている計測装置。
【請求項9】
各発光要素から放射される光の放射輝度は、前記第1平面上において、当該発光要素と前記計測点とを通る直線に関して線対称に分布している
請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、
前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、
ように設定されている請求項8に記載の計測装置。
【請求項11】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項8に記載の計測装置。
【請求項12】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光の波長を互いに異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項10に記載の計測装置。
【請求項13】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第2光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第1平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項8に記載の計測装置。
【請求項14】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第3光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第2平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項10に記載の計測装置。
【請求項15】
所定の計測点に配置された計測対象物表面を計測する計測装置であって、
第1光源分布をもつ光と第2光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像を用いて、前記計測対象物表面の前記計測点における光反射角度に関する情報を求める計測処理部と、を有し、
前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており、
前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第2光源分布での放射輝度をそれぞれL11(θ)、L12(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第2光源分布は、前記発光領域上の複数の点iに関して、
(1)放射輝度L11(θ)とL12(θ)のうちの少なくとも一方が角度θに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点iの角度θiを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)、L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θi−a)+L11(θi+a)=2×L11(θi)
L12(θi−a)+L12(θi+a)=2×L12(θi)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点iにおける放射輝度の比L11(θi)/L12(θi)が角度θiごとに異なる、
ように設定されている計測装置。
【請求項16】
放射輝度L11(θ)、L12(θ)は、角度θの一次関数である
請求項15に記載の計測装置。
【請求項17】
前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記計測点を通り第1平面とは異なる第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、前記発光領域上の複数の点jに関して、
(1)放射輝度L23(φ)が角度φに応じて連続的若しくは段階的に増加又は減少し、
(2)点jの角度φjを中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L21(φ)、L23(φ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φj−a)+L21(φj+a)=2×L21(φj)
L23(φj−a)+L23(φj+a)=2×L23(φj)
が実質的に成り立ち、かつ、
(3)点jにおける放射輝度の比L21(φj)/L23(φj)が角度φjごとに異なる、
ように設定されている
請求項15に記載の計測装置。
【請求項18】
放射輝度L21(φ)、L23(φ)は、角度φの一次関数である
請求項17に記載の計測装置。
【請求項19】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項15に記載の計測装置。
【請求項20】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光の波長を互いに異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項17に記載の計測装置。
【請求項21】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第2光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第1平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項15に記載の計測装置。
【請求項22】
前記計測処理部は、前記撮像部で得られた画像から、前記第1光源分布の光の反射光の強度と前記第3光源分布の光の反射光の強度の比を表す特徴値を求め、該特徴値に基づいて前記計測対象物表面の前記第2平面内での光反射角度に関する情報を求める
請求項17に記載の計測装置。
【請求項23】
所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、
第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有し、
前記計測点を通る第1平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第1特定領域を有しており、
前記複数の第1特定領域は、前記第1平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第1特定領域上の点を当該第1特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第1特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の値L11(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている観察装置。
【請求項24】
前記照明装置は、さらに第2光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第2光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
(a)第1特定領域が前記第1平面上で発光中心の角度θCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第1特定領域においても、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L11(θC)/L12(θC)が第1特定領域ごとに異なる、
ように設定されている
請求項23に記載の観察装置。
【請求項25】
各発光要素から放射される光の放射輝度は、前記第1平面上において、当該発光要素と前記計測点とを通る直線に関して線対称に分布している
請求項23に記載の観察装置。
【請求項26】
前記照明装置は、さらに第3光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記計測点を通り前記第1平面とは異なる第2平面での断面において、前記照明装置は、各々が複数の発光要素を含む複数の第2特定領域を有しており、
前記複数の第2特定領域は、前記第2平面上で、前記計測点を中心とする単位半径の円上に投影したときの弧の長さが互いに等しく、
前記弧の中心に投影される第2特定領域上の点を当該第2特定領域の発光中心と定義したときに、前記複数の第2特定領域の発光中心の位置は互いに異なっており、
前記第2平面上で、前記計測点から見て角度φにある発光要素から前記計測点へ向かう方向の前記第1光源分布及び第3光源分布での放射輝度をそれぞれL21(φ)、L23(φ)と表記する場合に、
前記第1光源分布及び第3光源分布は、
(a)第2特定領域が前記第2平面上で発光中心の角度φCを中心として±σの広がりをもつときに、いずれの第2特定領域においても、放射輝度L21(φ)、L23(φ)
が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L21(φC−a)+L21(φC+a)=2×L21(φC)
L23(φC−a)+L23(φC+a)=2×L23(φC)
が実質的に成り立ち、かつ、
(b)発光中心の放射輝度の比L21(φC)/L23(φC)が第2特定領域ごとに異なる、
ように設定されている
請求項24に記載の観察装置。
【請求項27】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項24に記載の観察装置。
【請求項28】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光の波長を互いに異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光と前記第3光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項26に記載の観察装置。
【請求項29】
所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する観察装置であって、
第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射する照明装置と、
前記照明装置で光を照射された前記計測対象物表面を撮像する撮像部と、を有し、
前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており、
前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第1の光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)前記第1平面上で前記計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、
設定されている観察装置。
【請求項30】
前記照明装置は、さらに第1光源分布とは異なる第2光源分布をもつ光を照射可能であり、
前記第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第2の光源分布での放射輝度をL12(θ)と表記する場合に、
前記第2光源分布は、
前記局所領域において、放射輝度L12(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L12(θC−a)+L12(θC+a)=2×L12(θC)
が実質的に成り立つように、
設定されている
請求項29に記載の観察装置。
【請求項31】
前記照明装置は、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光の波長を異ならせて、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光で同時に前記計測対象物表面を照射し、
前記撮像部は、受光した反射光を波長ごとの光に分離することにより、前記第1光源分布の光と前記第2光源分布の光のそれぞれの反射光の強度を検出する
請求項30に記載の計測装置。
【請求項32】
所定の計測点に配置された計測対象物表面での反射光を観察する方法であって、
照明装置から第1光源分布をもつ光を前記計測対象物表面に照射するステップと、
光を照射された前記計測対象物表面を撮像部で撮像するステップと、を有し、
前記照明装置は、所定の広さの発光領域を有しており、
前記計測点を通る第1平面上で、前記計測点から見て角度θにある前記発光領域上の点から前記計測点へ向かう方向の第1の光源分布での放射輝度をL11(θ)と表記する場合に、
前記第1光源分布は、
(1)放射輝度L11(θ)が角度θに応じて連続的若しくは段階的に変化し、かつ、
(2)前記第1平面上で前記計測点から見て所定の角度θCにある点を中心とする所定の±σの範囲の局所領域において、放射輝度L11(θ)が0ではなく、0<a≦σである任意のaについて、
L11(θC−a)+L11(θC+a)=2×L11(θC)
が実質的に成り立つように、
設定されている方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−522997(P2012−522997A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503785(P2012−503785)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030469
【国際公開番号】WO2010/118281
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030469
【国際公開番号】WO2010/118281
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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