説明

表面形状転写樹脂シートの製造方法

【課題】転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、効率よく表面形状転写樹脂シートを製造し得る方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、連続樹脂シートと送出しロールにより連続的に送出される転写型とを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む押圧工程とを含み、上記押圧工程は、転写型を、連続樹脂シートと、第一押圧ロールまたは第二押圧ロールとの間に挟み込む第1工程と、転写型と連続樹脂シートとを密着させて搬送させる第2工程と、転写型を連続樹脂シートの表面温度がビカット軟化点以下の状態で連続樹脂シートから剥離する第3工程とを含み、転写型は、有機材料で構成されていることを特徴とする表面形状転写樹脂シートの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置に関し、詳しくは転写型の表面形状が転写された樹脂シートの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に形状を有する樹脂シート(表面形状転写樹脂シート)を製造する方法として、押出機を用いて、樹脂を加熱溶融状態でダイから押し出して得られる連続した樹脂シート(連続樹脂シート)に転写型の表面形状を転写する方法が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1では、図6に示すように、ダイ3から連続的に押し出された連続樹脂シート1を第一押圧ロール4aと転写型11を備えた第二押圧ロール4bとの間に挟み込むことにより、この転写型11の表面形状を連続樹脂シート1に転写する方法が開示されている。該特許文献1には、転写型を構成する材料に関する記載はないが、転写型として通常は、回転ロールに嵌め込まれた金属製の円筒形状のものや、金属製の回転ロールの表面に彫刻などの方法により形成されたものが一般的である。
【0003】
しかしながら、かかる従来の金属製の転写型を用いた製造方法では、転写型の表面形状を精度よく連続樹脂シートに転写するために、転写速度を遅くする必要があり、必ずしも生産性のよい方法であるとは言えなかった。
【0004】
また、特許文献1において転写型をシリコーンゴムロールとすることが検討されているが、樹脂シートの裏面にシリコーンゴムロール面が転写され、商品価値のないものしか得られないという問題があった。
【特許文献1】特開平9−11328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、効率よく表面形状転写樹脂シートを製造し得る方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、且つ表面状態の不良が発生しない表面形状転写樹脂シートを製造し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、特定の転写型を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、連続樹脂シートと送出しロールにより連続的に送出される転写型とを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む押圧工程とを含み、上記押圧工程は、転写型を、連続樹脂シートと、第一押圧ロールまたは第二押圧ロールとの間に挟み込む第1工程と、転写型と連続樹脂シートとを密着させて搬送させる第2工程と、転写型を連続樹脂シートの表面温度がビカット軟化点以下の状態で連続樹脂シートから剥離する第3工程とを含み、転写型は、有機材料で構成されていることを特徴とする表面形状転写樹脂シートの製造方法に関する。
【0008】
上記第3工程の後に、剥離された転写型を連続的に巻き取る工程を含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するダイと、押圧ロールと、連続樹脂シートを該押圧ロールとの間に挟み込むことにより表面形状を連続樹脂シートに転写する転写型と、該転写型を連続的に送出する送出しロールと、転写型を連続樹脂シートから剥離しながら連続的に巻き取る巻取りロールとを含み、転写型が有機材料で構成されていることを特徴とする表面形状転写樹脂シートの製造装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法および製造装置によれば、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、生産性よく、表面状態の不良が発生しない状態で、目的の表面形状転写樹脂シートを製造することができる。また、連続樹脂シートの厚みによらず高い転写率を得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の製造方法および製造装置についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
【0012】
<表面形状転写樹脂シートの製造方法>
本発明の製造方法は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、連続樹脂シートと転写型とを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む押圧工程とを含む。この押圧工程は、転写型を、連続樹脂シートと、第一押圧ロールまたは第二押圧ロールとの間に挟み込む第1工程と、転写型と連続樹脂シートとを密着させて搬送させる第2工程と、転写型を連続樹脂シートの表面温度がビカット軟化点以下の状態で連続樹脂シートから剥離する第3工程とを含む。また、上記第3工程の後に、適宜剥離された転写型を連続的に巻き取る工程を含むことができる。
【0013】
上記本発明の製造方法について、当該方法を可能とする製造装置とともに以下に詳細に説明する。
【0014】
図1および図2は、上記表面形状転写樹脂シートの製造方法を可能とする製造装置を模式的に示したものである。図1および図2に示す製造装置は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シート1を製造するダイ3と、押圧ロール4と、連続樹脂シート1を該押圧ロール4との間に挟み込むことにより表面形状を連続樹脂シート1に転写する転写型9と、該転写型9を連続的に送出する送出しロール5と、転写型9を連続樹脂シートから剥離しながら連続的に巻き取る巻取りロール8とを備える。上記製造装置は、転写型を搬送する際に適宜搬送を補助するタッチロール6,7を備えてもよい。
【0015】
<シート製造工程>
上記シート製造工程は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造する工程である。
【0016】
本発明の製造方法に用いられる樹脂としては、通常は、加熱されることにより溶融状態となる熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、たとえばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などが挙げられる。なお、上記樹脂としては、本発明の製造方法に適用できる範囲で、加熱されることにより硬化する熱硬化性樹脂であってもよい。
【0017】
上記樹脂は、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0018】
上記光拡散剤は、無機系光拡散剤であってもよいし、有機系光拡散剤であってもよい。
無機系光拡散剤としては、たとえば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、無機ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などのような無機化合物の粒子が挙げられる。無機系光拡散剤は、脂肪酸などの表面処理剤により表面処理されていてもよい。
【0019】
また、有機系光拡散剤としては、たとえばスチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などのような有機化合物の粒子が挙げられる。
【0020】
光拡散剤を添加する場合、添加される光拡散剤の屈折率と樹脂の屈折率との差の絶対値は、光拡散の効果の点で、通常0.02以上であり、得られる表面形状転写樹脂シートの光透過性の点で、通常は0.13以下である。このように樹脂に光拡散剤を添加した場合、獲られる表面形状転写樹脂シートは、光拡散板として使用することができる。
【0021】
上記樹脂を加熱溶融状態で連続的に押し出すダイとしては、通常の押出成形法に用いられると同様の金属製のTダイなどが用いられる。ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出すには、通常の押出成形法と同様に、押出機が用いられる。押出機は一軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。樹脂は押出機内で加熱され、溶融された状態でダイに送られ、押し出される。ダイから押し出された樹脂は、連続的にシート状となって押し出され、連続樹脂シートとなる。
【0022】
連続樹脂シートの厚みは、得られたシートの用途に応じて適宜調整すればよく、たとえば、光拡散板として用いる場合は0.3mm〜3.0mmとすればよい。また、3.0mm以上の厚膜状であっても、本発明の製造方法によれば良好に転写を行なうことが可能である。
【0023】
上記連続樹脂シートは、単層でもよいし2以上の層からなる態様も含まれる。連続樹脂シートが単層の場合は、ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出す際に、ダイに1種の樹脂を供給し単層で押し出しをすればよく、2以上の層の場合は、2種以上の樹脂をダイに供給し、積層した状態で共押し出しをしてもよい。なお、2種以上の樹脂を積層した状態で共押し出しをするには、たとえば公知の2種3層分配型フィードブロックを用い、これを経由してダイに樹脂を供給すればよい。
【0024】
<押圧工程>
押圧工程では、上記シート製造工程で得られた連続樹脂シートと転写型とを、たとえば図1に示すように、押圧ロール4である、第一押圧ロール4aと第二押圧ロール4bとで挟み込む。この押圧工程は、詳細には、転写型を連続樹脂シートと、第一押圧ロールまたは第二押圧ロールとの間に挟み込む第1工程と、転写型と連続樹脂シートとを密着させて搬送させる第2工程と、転写型を連続樹脂シートの表面温度がビカット軟化点以下の状態で連続樹脂シートから剥離する第3工程とを含む。
【0025】
上記押圧ロールとして通常はステンレス鋼、鉄鋼などの金属で構成された金属製ロールが用いられ、その直径は通常100mm〜500mmである。押圧ロールとして金属性ロールを用いる場合、その表面は、たとえばクロームメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、Ni−Pメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。また、押圧ロールの表面は、鏡面であってもよいし、精度よく転写する必要がなければ、エンボスなどの凹凸が細子された転写面となっていてもよい。
【0026】
上記転写型は、連続樹脂シートの表面に押し当てられ、その表面形状を逆型として連続樹脂シートに転写するものである。
【0027】
本発明の製造方法においては、かかる転写型として、有機材料で構成されたものを用いる。有機材料としては、加熱溶融状態でダイから押し出された直後の連続樹脂シートに繰り返し押し当てても、転写型の形状を維持しうる耐熱性を有していればよく、たとえば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が用いられる。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、たとえばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、たとえばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アルリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、熱可塑性ポリイミド樹脂(PI樹脂)などが挙げられる。好ましくは、ビカット軟化点(JIS K7206−1999 A50)が、上記ダイから押し出される樹脂のビカット軟化点よりも40℃以上高い熱可塑性樹脂、架橋された熱可塑性樹脂などである。
【0030】
転写型としては、目的とする形状の逆型が表面に形成された有機材料で構成されたフィルム(有機材料製フィルム)が挙げられる。有機材料製フィルムの厚みは通常0.05mm〜5mmであり、厚みが0.05mm未満の有機材料製フィルムを転写型として用いた場合、押圧ロールと連続樹脂シートとの間に差し込んだ際に、転写型の形状をかかる連続樹脂シートに転写させるための圧力が十分に伝わらず、転写不十分となりやすい。
【0031】
このような有機材料製フィルムからなる転写型は、図1および図2に示すように、連続的に連続樹脂シートと同時搬送することで使用することができる。この場合、転写型を転写するための押圧ロールは、図1に示すように第一押圧ロール4aおよび第二押圧ロール4bの2本であってもよいし、図2に示すように、さらに第三押圧ロール4cを含めた3本であってもよい。押圧ロールと連続樹脂シートとの間に転写型を挟み込む場合、転写型の型が施された面が連続樹脂シート面と接するのであれば、第一押圧ロールと連続樹脂シートとの間でもよいし、第二押圧ロールと連続樹脂シートとの間でもよい。
【0032】
本発明においては、搬送または連続樹脂シートと押圧ロールとの密着を補助する転写技術上無関係なロールであれば、連続樹脂シートおよび転写型に接するロール(タッチロール)を設けてもよい。このようなロールは、ダイと押圧ロールとの間に設置したとしてもよいし、連続樹脂シートが第二押圧ロールに接している際に接する位置に設置したとしてもよい。また、図1に示すように、第一押圧ロール4aに接する位置にタッチロール6を設置したり、押圧ロール4を経由した連続樹脂シートと転写型とを剥離するために転写型に接する所望の位置にタッチロール7設置してもよい。
【0033】
上記転写型は、連続樹脂シートと同時搬送された後、連続樹脂シートと共に製造装置の下流側に通常位置する裁断機によって裁断されてもよいし、その転写型と同時搬送される連続樹脂シートの形状転写面がビカット軟化点以下に冷却した後に、該転写型を剥離し連続的に巻取りロールで巻き取ってもよい。なお、同時搬送とは、転写型と連続樹脂シートとが密着した状態でずれをおこすことなく搬送することをいう。
【0034】
連続樹脂シートの巻取り速度は樹脂シートを成形する押出機と押圧ロールの規模、若しくは成形される樹脂シートの厚みにも因るが、一態様として、スクリュー径φ40mmの押出機、直径φ200mmの押圧ロールの装置を用いた場合、巻取り速度は、好ましくは0.3〜0.8rpm、より好ましくは0.45〜0.65rpmである。0.3rpm未満であると、生産量の確保が十分では無い場合があり、0.8rpmを超えると、連続樹脂シートと転写型の剥離までに連続樹脂シートの冷却が十分に追いつかず、連続樹脂シートに転写した形状の精度を保てなくなることがある。
【0035】
押圧ロールの表面温度としては、樹脂シートの吐出温度よりも低いことが望ましく、70℃〜120℃が好ましく、より好ましくは75℃〜100℃である。これらのロールの表面温度が70℃未満であると、転写型の表面温度が低いものとなるので、連続樹脂シート表面の樹脂の流動性が悪く、その結果、転写率が悪くなる場合がある。他方、120℃を超えると、樹脂シートと転写型の剥離までに連続樹脂シートの冷却が十分に追いつかず、連続樹脂シートに転写した形状の精度を保てなくなることがある。
【0036】
転写型の表面形状としては、たとえば多数のV溝が平行に設けられた形状が挙げられる。V溝の頂角は通常160°以下であり、作成が容易である点で通常は40°以上であることが好ましい。V溝の深さ(H)は、作成が容易である点で通常は10μm以上であり、通常は500μm以下である。V溝のピッチは、隣接するV溝の最深部間の距離をいい、転写型の作成が容易である点で、通常10μm以上、好ましくは50μm以上であり、本発明の製造方法は、V溝の深さが10μm以上、ピッチが500μm以下の場合に好適である。
【0037】
かくして転写型の表面形状を連続樹脂シートに連続的に転写することにより、目的の表面形状転写樹脂シートを製造することができる。得られた表面形状転写樹脂シートは通常、さらに冷却されたのち枚葉に切断されて、たとえば液晶表示装置を構成するプリズムシートなどとして用いられる。また、樹脂として光拡散剤が添加されたものを用いた場合には、表面に形状が転写された光拡散板として用いられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
<実施例で使用した樹脂材料>
連続樹脂シートとして、2種3層構造を有するシートを以下の中間層用樹脂と表層用樹脂を用いて作製した。
【0040】
中間層用樹脂:スチレン樹脂ペレット(東洋スチレン社製「HRM40」、屈折率1.59、ビカット軟化点106.8℃)
表層用樹脂:スチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(新日鐵化学社製「MS200NT」、スチレン単位80質量%、メタクリル酸メチル単位20質量%、屈折率1.57、ペレット状、ビカット軟化点102.1℃)
<表面形状転写シートの製造>
樹脂投入口2より樹脂を供給し、2種を別々に混練することができる混練機10でそれぞれ溶融混練した後、2種3層分配型フィードブロック(田辺プラスチック社製)に中間層用樹脂および表層用樹脂を供給し、中間層用樹脂が中間層となり、表層用樹脂が、中間層の両面に積層された構造となるようにダイ3(Tダイ)に送り、共押し出しをして、中間層の両面に表層が積層された3層構造の連続樹脂シート1を連続的に得た。
【0041】
中間層用樹脂は、スクリュー径40mmのベント付き一軸押出機(田辺プラスチック社製)に供給し、加熱溶融し、250℃で上記2種3層分配型フィードブロックに供給した。表層用樹脂は、スクリュー径20mmのベント付き一軸押出機(田辺プラスチック社製)に供給し、加熱溶融し、250℃で上記2種3層分配型フィードブロックに供給した。
【0042】
Tダイとしては、幅250mm、リップ間隔2.5mmのものを用いた。得られた連続樹脂シートは、幅249mm、厚み2.0mmであった。
【0043】
図1に示すように、ダイ3(Tダイ)から共押出しされた連続樹脂シート1が、連続的に第一押圧ロール4aと第二押圧ロール4bの間に挟まれて搬送されている際に、巻出しロール5から巻出されタッチロール6と第一押圧ロール4aで挟み込まれ第一押圧ロール4aに密着して搬送された転写型9(有機材料製フィルム)を第一押圧ロール4aと連続樹脂シート1との間で挟み込んで押圧した後に、連続樹脂シート1と同時搬送した。同時搬送された連続樹脂シート1と転写型9は搬送による時間経過で冷却が進み、図1に示すタッチロール7の位置にて転写型9は連続樹脂シート1から剥離して巻取りロール8で巻取り、転写型9の表面形状を転写された表面形状転写樹脂シートAを得た。この時、連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置aにおける転写型9側の連続樹脂シート1の表面温度は255℃であり、図1のfで示す転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートAの形状面の表面温度は86℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートAの生産速度は0.55m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートAは、厚み1.60mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.70mmの多層構造のものであった。
【0044】
なお、転写型9(有機材料製フィルム)としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂製フィルムの片面にアクリル系樹脂層が積層されて厚さ230μmとなっており、このアクリル系樹脂層に、頂角90°、高さ24μmの二等辺三角形のV溝がピッチ48μmで設けられたものを用いた。この転写型9のV溝が連続樹脂シートの押出方向に対して直角となるように、連続樹脂シートと同時搬送するよう用いており、表面形状転写樹脂シートAの製造終了後、転写型9(有機材料製フィルム)のV溝は、製造開始前と同じ形状を維持していた。
【0045】
得られた表面形状転写樹脂シートAは、転写型に対応する形状が表面に転写されており、転写率は98%であり、その表面に転写型から剥離する際に付く縞状の外観不良(タックマーク)は見られなかった。
【0046】
第一押圧ロール4aとしては、直径200mmで表面が鏡面仕上げされた金属製ロールを95℃で用いた。第二押圧ロール4bとしては、直径200mmで表面が鏡面仕上げされた金属製ロールを97℃で用いた。第三押圧ロール4cとしては、直径200mmで表面が鏡面仕上げされた金属製ロールを110℃で用いた。
【0047】
<表面形状転写樹脂シートの評価(転写率)>
得られた表面形状転写樹脂シートAを切断し、断面を鏡面仕上げしたのち、超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製「VK−8500」)で観察して、表面に転写されたプリズムの深さ(N)を測定し、転写型9におけるプリズムの深さ(H)とから、式(1)
β=N/H×100(%)・・・(1)
にて転写率を算出する。
【0048】
(実施例2)
連続樹脂シートの巾を258mm、厚みを1.5mmとした以外は、実施例1と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートBを得た。
【0049】
この時、図1に示す連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置aにおける転写型9側の連続樹脂シート1の表面温度は260℃であり、図1中のfで示される転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートBの形状面の表面温度は78℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートBの生産速度は0.65m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートBは、厚み1.13mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.23mmの多層構造のものであった。
【0050】
押圧ロールそれぞれの温度条件は実施例1と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロールを97℃、第三押圧ロールを110℃として設定した。
【0051】
得られた表面形状転写樹脂シートBの転写率は91%であり、その表面にタックマークは見られなかった。
【0052】
(実施例3)
図2に示すように、転写型9(有機材料製フィルム)を第二押圧ロール4bと連続樹脂シート1との間で挟み込んで押圧した後に、連続樹脂シート1とを同時搬送した以外は、実施例1と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートCを得た。
【0053】
この時、連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置bにおける連続樹脂シート1の転写型9側の表面温度は249℃であり、図1中のgで示される転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートCの形状面の表面温度は81℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートCの生産速度は0.55m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートCは、厚み1.57mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.67mmの多層構造のものであった。
【0054】
押圧ロールそれぞれの温度条件は、実施例1と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロール4bを97℃、第三押圧ロール4cを110℃として設定した。
【0055】
得られた表面形状転写樹脂シートCの転写率は86%であり、その表面にタックマークは見られなかった。
【0056】
(実施例4)
連続樹脂シートの巾を258mm、板厚を1.5mmとした以外は、実施例3と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートDを得た。
【0057】
この時、連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置bにおける連続樹脂シート1の転写型9側の表面温度は258℃であり、図1中のgで示される転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートDの形状面の表面温度は77℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートDの生産速度は0.65m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートDは、厚み1.11mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.21mmの多層構造のものであった。
【0058】
押圧ロールそれぞれの温度条件は、実施例3と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロール4bを97℃、第三押圧ロール4cを110℃として設定した。
【0059】
得られた表面形状転写樹脂シートDの転写率は98%であり、その表面にタックマークは見られなかった。
【0060】
(比較例1)
図3に示すように、転写型9(有機材料製フィルム)を第一押圧ロール4aと連続樹脂シート1との間で挟み込んで押圧した直後に、連続樹脂シート1と転写型9とを剥離した以外は、実施例1と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートEを得た。
【0061】
この時、連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置aにおける連続樹脂シート1の転写型9側の表面温度は261℃であり、図3中のcで示される転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートEの形状面の表面温度は141℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートEの生産速度は0.55m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートEは、厚み1.56mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.66mmの多層構造のものであった。
【0062】
押圧ロールそれぞれの温度条件は、実施例1と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロール4bを97℃、第三押圧ロール4cを110℃として設定した。
【0063】
得られた表面形状転写樹脂シートDの転写率は53%であり、その表面にはタックマークが数多く見られた。
【0064】
(比較例2)
図4に示すように、転写型9(有機材料製フィルム)を第二押圧ロール4bと連続樹脂シート1との間で挟み込んで押圧した直後に、連続樹脂シート1と転写型9とを剥離した以外には、実施例3と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートFを得た。
【0065】
この時、連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置bにおける連続樹脂シート1の転写型9側の表面温度は259℃であり、図4中のdで示される転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートFの形状面の表面温度は119℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートFの生産速度は0.55m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートFは、厚み1.57mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.67mmの多層構造のものであった。
【0066】
押圧ロールそれぞれの温度条件は、実施例3と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロール4bを97℃、第三押圧ロール4cを110℃として設定した。
【0067】
得られた表面形状転写樹脂シートFの転写率は73%であり、その表面にはタックマークが数多く見られた。
【0068】
(比較例3)
図5に示すように、転写型9(有機材料製フィルム)を第三押圧ロール4cと連続樹脂シート1との間で挟み込んで押圧した後に、連続樹脂シート1と同時搬送した以外には、実施例1と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートGを得た。
【0069】
この時、連続樹脂シート1と転写型9とが接する直前の位置eにおける連続樹脂シート1の転写型9側の表面温度は122℃であり、図5中のfで示される転写型9を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートGの形状面の表面温度は112℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートGの生産速度は0.55m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートGは、厚み1.71mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.81mmの多層構造のものであった。
【0070】
押圧ロールそれぞれの温度条件は、実施例1と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロール4bを97℃、第三押圧ロール4cを110℃として設定した。
【0071】
得られた表面形状転写樹脂シートGの転写率は5%であり、その表面にタックマークは見られなかった。
【0072】
(比較例4)
図6に示すように、転写型11(実施例1と同じ有機材料製フィルム)を第二押圧ロール4aに予め巻きつけ固定しておき、連続搬送される連続樹脂シート1を第一押圧ロール4aと第二押圧ロール4bとで押圧し、第二押圧ロール4bと第三押圧ロール4cとで押圧する以外には、実施例1と同様に操作して、表面形状転写樹脂シートHを得た。
【0073】
この時、連続樹脂シート1と転写型11とが接する直前の位置bにおける連続樹脂シート1の転写型11側の表面温度は258℃であり、図6中にdで示される転写型11を剥離した直後の表面形状転写樹脂シートHの形状面の表面温度は123℃であった。また、この時の表面形状転写樹脂シートHの生産速度は0.55m/分であり、得られた表面形状転写樹脂シートHは、厚み1.83mmの中間層の両面に、厚み0.05mmの表面層が積層された総厚み1.93mmの多層構造のものであった。
【0074】
押圧ロールそれぞれの温度条件は、実施例1と同様、第一押圧ロール4aを95℃、第二押圧ロール4bを97℃、第三押圧ロール4cを110℃として設定した。
【0075】
得られた表面形状転写樹脂シートHの転写率は62%であり、その表面にタックマークが数多く見られた。
【0076】
実施例および比較例の条件および結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1から明らかなように、有機材料で構成されている転写型を用い、転写型を連続樹脂シートと前記第一押圧ロールまたは前記第二押圧ロールとの間に挟み込む第1工程と、転写型と前記連続樹脂シートとを密着させて搬送させる第2工程と、転写型を前記連続樹脂シートの表面温度がビカット軟化点以下の状態で前記連続樹脂シートから剥離する第3工程とを含む本発明の製造方法により製造された実施例1〜4の表面形状転写樹脂シートA〜Dは、比較例1〜4で得られる表面形状転写樹脂シートE〜Hに比べて、転写率が非常に高く、またタックマークが観測されない好ましい転写結果であることがわかる。また、実施例1〜4では、生産速度と得られる表面形状転写樹脂シートの転写率の良好性から、生産性に優れることがわかる。
【0079】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例1および2における表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置を示す模式図である。
【図2】実施例3および4における表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置を示す模式図である。
【図3】比較例1における表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置を示す模式図である。
【図4】比較例2における表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置を示す模式図である。
【図5】比較例3における表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置を示す模式図である。
【図6】従来の表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1 連続樹脂シート、2 樹脂投入口、3 ダイ、4 押圧ロール、4a 第一押圧ロール、4b 第二押圧ロール、4c 第三押圧ロール、5 巻出しロール、6,7 タッチロール、8 巻取りロール、9,11 転写型、10 混練機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、
前記連続樹脂シートと送出しロールにより連続的に送出される転写型とを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む押圧工程とを含み、
前記押圧工程は、前記転写型を、前記連続樹脂シートと、前記第一押圧ロールまたは前記第二押圧ロールとの間に挟み込む第1工程と、
前記転写型と前記連続樹脂シートとを密着させて搬送させる第2工程と、
前記転写型を前記連続樹脂シートの表面温度がビカット軟化点以下の状態で前記連続樹脂シートから剥離する第3工程とを含み、
前記転写型は、有機材料で構成されている表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記第3工程の後に、剥離された前記転写型を連続的に巻き取る工程を含む請求項1に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するダイと、押圧ロールと、前記連続樹脂シートを該押圧ロールとの間に挟み込むことにより表面形状を前記連続樹脂シートに転写する転写型と、該転写型を連続的に送出する送出しロールと、前記転写型を前記連続樹脂シートから剥離しながら連続的に巻き取る巻取りロールとを含み、
前記転写型が有機材料で構成されている表面形状転写樹脂シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−196206(P2009−196206A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40196(P2008−40196)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】