説明

表面形状転写樹脂シートの製造方法

【課題】転写型の溝部の先端にまで樹脂を良好に入り込ませることができ、光学設計により最適化された転写型の形状を、樹脂シートとして良好に再現することが可能な表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂を加熱溶融状態でダイ58から押し出して樹脂シート53を作製し、当該樹脂シート53を上ロール63と中間ロール64とで挟み込み、次いで、樹脂シート53を中間ロール64に密着させたまま搬送し、搬送された樹脂シート53を中間ロール64と下ロール65とで挟み込む。この工程において、下ロール65に、曲率半径が100μm以下の底面を有する凹溝70を有する凹版転写型69を装着し、中間ロール64と下ロール65とで挟み込む際に、下ロール65の表面温度T(R3)を、樹脂のTgに対して、Tg−10℃≦T(R3)に保持しながら、凹版転写型69を樹脂シート53に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に用いられる光拡散板または導光板などとして利用することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面形状転写樹脂シートは、例えば、加熱されて軟化状態にある樹脂シートを成形し、当該樹脂シートの表面に転写型の凹凸形状を転写することによって製造されるシートである。
具体的には、溶融混練された樹脂をダイから連続的に押し出すことにより形成された連続樹脂シートを、第一押圧ロールと第二押圧ロールとの間に挟み込む工程と、第二押圧ロールの表面に密着させたまま搬送する工程と、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間に挟み込む工程とを含む、製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、第三ロールに転写型が装着されており、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間に樹脂シートを挟みこんだ際、樹脂シートの表面に凹凸形状が転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−220555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面形状転写樹脂シートの用途として、液晶表示装置のバックライト装置に組み込まれる光拡散板または導光板としての使用用途などが普及しつつある。その場合、樹脂シートを製造する際に凹凸形状が精度よく転写されていないと、光拡散板または導光板に設計どおりの光学特性を付与することが困難である。
一方、個々の押圧ロールは、樹脂シートを冷やし固めるための冷却ロールとしての役割を担っており、とくに転写型を備えるロール(転写型ロール)に関しては、転写型に充填された樹脂を、その形状を保持した状態で冷やし固める性能が求められている。そして、従来では、転写型ロールにより樹脂を急冷して固化させる手法が採用されている。
【0005】
しかしながら、転写型の溝部の先端が細い(例えば、溝部の底面の曲率半径が100μm以下)場合に樹脂を急冷すると、転写型との接触面から急速に固化し始める樹脂が、転写型の溝部の先端にまで入り込む前に完全に固化し、溝部の先端形状が樹脂に精度よく転写されずに、樹脂シートは先端部未充填形状となることが判明し、光学設計により最適化された転写型の形状を樹脂シート(光拡散板または導光板)として再現することが困難となることがわかった。
【0006】
本発明の目的は、転写型の溝部の先端にまで樹脂を良好に入り込ませることができ、光学設計により最適化された転写型の形状を、樹脂シートとして良好に再現することが可能な表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを作製する押出工程と、前記連続樹脂シートを第1押圧ロールと第2押圧ロールとで挟み込む第1押圧工程と、前記第1押圧工程後、前記連続樹脂シートを前記第2押圧ロールに密着させたまま搬送する第1搬送工程と、搬送された前記連続樹脂シートを前記第2押圧ロールと第3押圧ロールとで挟み込む第2押圧工程とを含み、前記第3押圧ロールは、その表面に転写型を備え、当該転写型は、曲率半径が100μm以下の底面を有する複数の溝部を有しており、前記第2押圧工程は、前記第3押圧ロールの表面温度T(R3)を、前記樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃≦T(R3)に保持しながら、前記第3押圧ロール表面に備えた前記転写型を前記連続樹脂シートに転写する工程を含むことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記第2押圧工程後、前記連続樹脂シートを前記第3押圧ロールに密着させたまま搬送する第2搬送工程と、前記第2搬送工程後、前記第3押圧ロールから剥離した前記連続樹脂シートにおける転写側の表面を冷却する冷却工程とをさらに含むことが好適である。
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記樹脂が、非晶性樹脂であることが好適である。
【0009】
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記非晶性樹脂が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル・スチレン系共重合体樹脂、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系を主成分として含むことが好適である。
さらに、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記溝部の長手方向に直交する方向における断面形状が、略半円形状または略半楕円形状であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法によれば、第2押圧ロールと第3押圧ロールとの間に樹脂を入り込ませる際に、第3押圧ロールの表面温度が樹脂のTgのマイナス10℃以上に保持される。そのため、第2押圧ロールと第3押圧ロールとによる押圧の際、転写型に接した樹脂を、転写型との接触面から徐々に固化させることができる。したがって、転写型に接した樹脂は、完全に固化する前に、徐々に固化しながら転写型の溝部の先端にまで入り込み、その後、完全に固化することとなる。
【0011】
その結果、曲率半径が100μm以下の底面を有する溝部が形成された転写型を樹脂に転写する場合でも、溝部の先端形状を、樹脂シートの表面に対して精度よく転写することができる。そのため、光学設計により最適化された転写型の形状を、樹脂シートとして良好に再現することができる。よって、この製造方法により得られる樹脂シートを液晶表示装置の光拡散板または導光板として用いれば、優れた光学特性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光拡散板(樹脂シート)が搭載された液晶表示装置(第1形態)の模式的な側面図である。
【図2】図2は、図1の液晶表示装置の模式的な斜視図である。
【図3】図3は、図1の光拡散板の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、光拡散板の取り付け状態を示すランプボックスの要部拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る導光板(樹脂シート)が搭載された液晶表示装置(第2形態)の模式的な側面図である。
【図6】図6は、図5のバックライトシステムの模式的な平面図である。
【図7】図7は、図5のバックライトシステムの模式的な背面図である。
【図8】図8は、導光板のドットパターンの変形例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。
【図10】図10は、下ロールに取り付けられた凹版転写型の模式断面図であって、(a)は全体図、(b)は要部拡大図をそれぞれ示す。
【図11】図11は、凹版転写型の変形例(略半円形状)を示す図である。
【図12】図12は、実施例1および比較例1の転写精度を説明するためのグラフであって、(a)は転写プロファイル、(b)は形状転写率をそれぞれ示す。
【図13】図13は、実施例2および比較例2の転写精度を説明するためのグラフであって、(a)は転写プロファイル、(b)は形状転写率をそれぞれ示す。
【図14】図14は、実施例3の転写精度を説明するためのグラフであって、(a)は転写プロファイル、(b)は形状転写率をそれぞれ示す。
【図15】図15は、実施例4の転写精度を説明するためのグラフであって、(a)は転写プロファイル、(b)は形状転写率をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<液晶表示装置(第1形態)>
(1)バックライトシステム
図1は、本発明の一実施形態に係る光拡散板(樹脂シート)が搭載された液晶表示装置(第1形態)の模式的な側面図である。図2は、図1の液晶表示装置の模式的な斜視図である。
【0014】
この液晶表示装置1(液晶テレビ)は、いわゆる直下型液晶表示装置であって、バックライトシステム2と、バックライトシステム2の前面に配置された液晶パネル3と、バックライトシステム2と液晶パネル3との間に配置された光学フィルム4とを備えている。なお、図1および図2では、液晶表示装置1を便宜的に、その前側を紙面上側に向けた姿勢で表している。また、以下の図で表される液晶表示装置1、バックライトシステム2、液晶パネル3などの各構成部材の縮尺は、説明の便宜上それぞれ設定されたものであり、全ての構成部材の縮尺が同じであるわけではない。
【0015】
バックライトシステム2は、四角板状の後壁5および後壁5の周縁から前方へ一体的に立設された四角枠状の側壁6を有し、前面側が開放された薄型箱状の樹脂製ランプボックス7と、ランプボックス7内に設けられた複数の線状光源8と、ランプボックス7の開放面9(前面)を塞ぐ光拡散板10とを備えている。
すなわち、箱状のランプボックス7は、その開放面9の輪郭が四角枠状の側壁6により区画され、側壁6および後壁5により囲まれる空間内に、線状光源8が設けられている。ランプボックス7の後壁5内面には、例えば、線状光源8から後壁5側へ入射する光を、ボックスの開放面9側へ反射させるための反射板(図示せず)が全体に取り付けられている。
【0016】
線状光源8は、例えば、直径が2mm〜4mmの円筒状ランプである。複数の線状光源8は、光拡散板10の背面18に対して一定間隔を空けた状態で、互いに平行に等しい間隔を空けて配置されている。
隣り合う線状光源8の中心同士の間隔Lは、省電力化の観点から、30mm〜60mmであることが好ましい。また、光拡散板10の背面18(例えば、背面18における中央部)と線状光源8の中心との距離Dは、薄型化の観点から、10mm〜20mmであることが好ましい。また、距離Dに対する間隔Lの比率(L/D)は、2.5〜4.0であることが好ましい。とりわけ、間隔Lは、40mm〜55mmであることが好ましく、距離Dは、13mm〜17mmであることが好ましい。また、線状光源8の数は、ランプボックス7のサイズ(液晶表示装置1の画面サイズ)および間隔Lにより必然的に決まるが、例えば、32型の液晶表示装置1では、6〜10本であることが好ましい。なお、図1および図2では、図解し易くするために、線状光源8を5本分だけ表している、
また、線状光源8としては、例えば、蛍光管(冷陰極管)、ハロゲンランプ、タングステンランプなど、公知の筒形ランプを用いることができる。また、バックライトシステム2の光源としては、線状光源8に代えて、発光ダイオード(LED)などの点状光源などを用いることもできる。
(2)液晶パネル
液晶パネル3は、液晶セル11と、液晶セル11を厚さ方向両側から挟む1対の偏光板12,13とを備えている。このような液晶パネル3は、背面側の偏光板12と光拡散板10とが対向するように、バックライトシステム2の前面に配置される。
【0017】
液晶セル11としては、例えば、TFT型液晶セル、STN型液晶セルなど、公知の液晶セルを用いることができる。
(3)光学フィルム
光学フィルム4としては、特に制限されず、例えば、マイクロレンズフィルム、略半円状のレンチキュラーレンズフィルム、拡散フィルム、プリズムフィルム、反射型偏光分離フィルムなどが挙げられる。
(4)光拡散板
図3は、図1の光拡散板の模式的な斜視図である。図4は、光拡散板の取り付け状態を示すランプボックスの要部拡大断面図である。
【0018】
図3に示すように、光拡散板10は、ランプボックス7の側壁6の枠形状とほぼ同じ四角の板状に形成されている。
光拡散板10の一方の主面(出射面16)には、光拡散板10の1組の対向周縁間に延びる凸条部17が多数筋状に形成されている。すなわち、光拡散板10の出射面16には、凸条部17と、隣り合う凸条部17との間の凹溝19とが交互に形成されている。
【0019】
凸条部17は、その長手方向に直交する切断面が略半楕円形状の輪郭を有している。凸条部17の形状は、半楕円形状のほか、プリズム形状、半円形状であってもよい。また、1つの凸条部17(形状単位)の中で連続的に変化する形状が好ましく、例えば、プリズム形状よりも半円形状または半楕円形状が好ましい。
多数の凸条部17は、互いに平行に等しい間隔E(例えば、1μm〜15μm)を空けて配置されている。隣り合う凸条部17の中心同士の距離(ピッチP´)は、例えば、200μm〜500μmである。また、凸条部17の高さ(凹溝19の深さ)H´は、例えば、100μm〜500μmである。また、凸条部17のピッチP´に対する高さH´の比率(H´/P´)で表されるアスペクト比は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5〜0.7である。
【0020】
一方、光拡散板10の他方の主面(背面18)は、凹凸のない平坦面とされている。
また、図4に示すように、背面18から出射面16における凸条部17の頂部までの光拡散板10の厚さTは、例えば、1mm〜4mmである。
光拡散板10の原料としては、特に制限されず、例えば、非晶性の透光性樹脂を用いることができる。
【0021】
用いられる非晶性透光性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)などが挙げられる。
【0022】
上記非晶性透光性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、スチレン系樹脂またはアクリル系樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、スチレン系樹脂の単独使用またはアクリル系樹脂の単独使用が挙げられる。
また、光拡散板10には、必要により光拡散剤(光拡散粒子)を含有することができる。
【0023】
光拡散剤としては、光拡散板10を構成する透光性樹脂と屈折率が異なり、透過光を拡散できる粒子であれば特に制限されず、例えば、無機系の光拡散剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが挙げられる。これらは、脂肪酸などで表面処理が施されたものであってもよい。
【0024】
また、例えば、有機系の光拡散剤として、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などが挙げられ、好ましくは、重量平均分子量が50万〜500万の高分子量重合体粒子や、アセトンに溶解させたときのゲル分率が10質量%以上である架橋重合体粒子が挙げられる。
上記光拡散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0025】
光拡散板10が光拡散剤を含有する場合、光拡散剤の配合割合は、透光性樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部、好ましくは、0.001〜0.01重量部である。また、光拡散剤は、上記透光性樹脂とのマスターバッチとして用いることができる。また、透光性樹脂の屈折率と光拡散剤の屈折率との差の絶対値は、光拡散性の観点から、通常、0.01〜0.20であり、好ましくは、0.02〜0.15である。
【0026】
また、光拡散板10には、必要により、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤などの各種添加剤を添加することもできる。
紫外線吸収剤としては、特に制限されず、例えば、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤を添加する場合には、透光性樹脂100重量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜3重量部添加することが好ましい。上記した範囲であれば、紫外線吸収剤の表面へのブリードを抑制でき、光拡散板の外観を良好に維持することができる。
【0027】
熱安定剤としては、特に制限されず、例えば、マンガン化合物、銅化合物などが挙げられる。熱安定剤を添加する場合には、紫外線吸収剤とともに添加し、透光性樹脂中の紫外線吸収剤1重量部に対して、熱安定剤を2重量部以下の割合で添加することが好ましく、透光性樹脂中の紫外線吸収剤1重量部に対して、熱安定剤を0.01〜1重量部添加することがさらに好ましい。
【0028】
また、酸化防止剤としては、特に制限されず、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。酸化防止剤を添加する場合には、透光性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤を0.1〜3重量部添加することが好ましい。
そして、光拡散板10は、図4に示すように、ランプボックス7内の線状光源8に対して凸条部17が平行となる位置において、ランプボックス7の側壁6に対して光拡散板10の背面18を当接させて、ランプボックス7に固定されている。これにより、ランプボックス7の開放面9が光拡散板10により塞がれている。
<液晶表示装置(第2形態)>
(1)バックライトシステム
図5は、本発明の一実施形態に係る導光板(樹脂シート)が搭載された液晶表示装置(第2形態)の模式的な側面図である。図6は、図5のバックライトシステムの模式的な平面図である。図7は、図5のバックライトシステムの模式的な背面図である。図8は、導光板のドットパターンの変形例を示す図である。
【0029】
液晶表示装置21(液晶テレビ)は、いわゆるエッジ型液晶表示装置であって、バックライトシステム22と、バックライトシステム22の前面に配置された液晶パネル23と、バックライトシステム22と液晶パネル23との間に配置された光学フィルム24とを備えている。
なお、図5では、液晶表示装置21を便宜的に、その前側を紙面上側に向けた姿勢で表している。また、以下の図で表される液晶表示装置21、バックライトシステム22、液晶パネル23などの各構成部材の縮尺は、説明の便宜上それぞれ設定されたものであり、全ての構成部材の縮尺が同じであるわけではない。また、以下の説明では、図5〜図8に示すように、バックライトシステム22と液晶パネル23の配列方向をz方向(板厚方向)と称し、z方向に直交する2方向であって互いに直交する2方向をx方向およびy方向と称す。
【0030】
バックライトシステム22は、導光板(光学シート)25と、導光板25の側面26と対向して配置された点状光源(LED光源)27とを備えている。
点状光源27は、バックライトシステム22の点状光源として機能するものであり、図6および図7に示すように、導光板25のy軸方向に延在する側面26,26と対向して複数配置されている。複数の点状光源27は、側面26の長手方向(y軸方向)に沿って、離散的に配置されている。点状光源27の配置間隔は、通常5mm〜20mmである。点状光源27は、導光板25の4辺と対向するように配置されていてもよく、x軸方向に対向する2辺(図6および図7参照)、y軸方向に対向する2辺に配置されていてもよく、1辺のみに配置(図8参照)されていてもよい。
【0031】
また、点状光源27は、LED光源に限らずその他の点状光源でもよい。さらに、点状光源27に代えて、線状光源(冷陰極管等)を配置してもよい。
また、点状光源27は、白色LEDでもよく、一つの箇所に複数のLEDを配置して一つの光源単位を構成してもよい。例えば、一つの光源単位として、赤色、緑色、青色の異なる三色のLEDが、近接され並べられて配置されていてもよい。そして、複数のLEDを有する光源単位が、上述した配置方向に従い離散的に配置される。このような場合には、異なるLED同士は可能な限り近づけられて配置されていることが好ましい。
【0032】
点状光源27として用いられるLED光源としては、様々な出光分布を有するものが使用可能であるが、LED光源の法線方向(z軸方向)の光度が最大であり、光度分布の半値幅が40度以上80以下である出光分布を有するものが、好適である。また、LED光源のタイプとしては、具体的に、ランバーシアン型、砲弾型、サイドエミッション型などが挙げられる。
(2)液晶パネル
液晶パネル23は、液晶セル28と、液晶セル28を厚さ方向両側から挟む1対の偏光板29,30とを備えている。このような液晶パネル23は、背面側の偏光板29と導光板25とが対向するように、バックライトシステム22の前面に配置される。
【0033】
液晶セル28としては、例えば、TFT型液晶セル、STN型液晶セルなど、公知の液晶セルを用いることができる。
(3)光学フィルム
光学フィルム24としては、特に制限されず、例えば、マイクロレンズフィルム、略半円状のレンチキュラーレンズフィルム、拡散フィルム、プリズムフィルム、反射型偏光分離フィルムなどが挙げられる。
(4)導光板
導光板25は、図6および図7に示すように、長方形を成し、平面視形状のサイズは目的とする液晶パネル23の画面サイズに適合するように選択される。導光板25の画面サイズは、例えば、直交する2辺の長さ(L1×L2)は、通常250mm×440mm以上、好ましくは500mm×800mm以上の大型サイズであることが好ましい。導光板25の平面視形状は、長方形に限らず、正方形としてもよいが、以下では、特に断らない限り、長方形として説明する。
【0034】
導光板25は、光を透過させる透光性樹脂から形成され板状を成している。なお、導光板25は、シート状でもよく、フィルム状でもよい。導光板25の厚みTは、1.0mm以上4.5mm以下であることが好ましい。
導光板25は、z軸方向(厚み方向)に対向する一対の主面(31,32)、X軸方向に対向する一対の側面26,26、およびY軸方向に対向する一対の側面33,33を備えている。主面(31,32)は、側面(26,33)と交差する方向に形成されている。
【0035】
z軸方向に対向する一対の主面のうち一方の主面(31)は、面状の光を出射可能な出射面31として機能する。出射面31は、液晶パネル23側に配置され、他方の主面(背面32)は、液晶パネル23とは反対側に配置される。また、背面32と対面する位置には、導光板25内の光を出射面31側へ反射させる反射シート34が施工されている。
図6を参照して、導光板25の出射面31には、z軸方向の外側へ凸である複数の凸条部35が形成されている。凸条部35は、x軸方向(一方向)に延在し、y軸方向に複数並列配置されている。
【0036】
また、凸条部35の形状としては、プリズム形状、半円形状、半楕円形状などが挙げられ、1つの凸条部35(形状単位)の中で連続的に変化する形状が好ましく、例えば、プリズム形状よりも半円形状または半楕円形状が好ましい。なお、凸条部35の延在する方向は、光源からの光の出射方向と平行であることが好ましい。また、凸条部35が隣接する方向(y軸方向)において、隣接する凸条部35,35間に平面部が形成されていてもよい。
【0037】
隣り合う凸条部35の中心同士の距離(ピッチP´)は、前述の光拡散板10と同様に、例えば、200μm〜500μmである。また、凸条部35の高さH´は、例えば、100μm〜500μmである。また、凸条部35のピッチP´に対する高さH´の比率(H´/P´)で表されるアスペクト比は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5〜0.7である。
【0038】
一方、図7を参照して、導光板25の背面32には、光を乱反射させる反射加工(例えばシルク印刷)が施されている。反射加工として行う印刷の方法としては、シルク印刷のほかに、インクジェット印刷を行っても良い。あるいは、反射加工の方法としては、印刷ではなく、レーザー照射によりドット形状の凹凸を付与してもよい。本実施形態の導光板25では、反射加工として、複数のドット36が集まって形成されたドットパターンが印刷されている。ドットパターンの印刷には、光を拡散させる拡散粒子を有するインクが使用されている。
【0039】
また、ドットパターンを構成する各ドット36(印刷ドット)の径は、点状光源27側から離間するにつれて大きくなるように、諧調変化がつけられている。例えば、点状光源27から近い領域である側部近傍の領域のドット36aの径は、516μm程度とされ、点状光源27から最も遠い領域であるパネル中央付近の領域のドット36bの径は、904μm程度とされ、両者の中間の領域のドット36cの径は、729μm程度とされている。
【0040】
各ドット36の径は、例えば、図8に示すように、点状光源27が導光板25の側面26の1辺のみに配置されている場合には、例えば、点状光源27から近い領域であるパネルの一側部近傍の領域のドット36aの径は、516μm程度とされ、点状光源27から最も遠い領域であるパネルの反対側側部近傍の領域のドット36bの径は、904μm程度とされ、両者の中間の領域のドット36cの径は、729μm程度とされている。
【0041】
また、導光板25は、透光性樹脂から形成されている。透光性樹脂の屈折率は通常、1.49〜1.59である。導光板25に使用される透光性樹脂としては、メタクリル樹脂が主として用いられる。導光板25に使用される透光性樹脂として、その他の樹脂を用いてもよく、スチレン系の樹脂を用いても良い。透光性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、カーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、MS樹脂(アクリルとスチレンの共重合体)などが使用可能である。
【0042】
導光板25を液晶表示装置21に適用するにあたり、導光板25には、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光重合安定剤などの添加剤が添加されていてもよい。
<光拡散板または導光板(樹脂シート)の製造方法>
上記した光拡散板10または導光板25は、下記の方法により製造された樹脂シートを切断することにより作製することができる。
【0043】
図9は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。図10は、下ロールに取り付けられた凹版転写型の模式断面図であって、(a)は全体図、(b)は要部拡大図をそれぞれ示す。
シート製造装置51は、原料樹脂をシート状に押し出して成形するシート成形機52と、押し出された樹脂シート53を押圧により成形するための一組の押圧ロール群54と、樹脂シート53を引き取るための一対の引取ロール群55とを備えている。
【0044】
シート成形機52は、例えば、一軸押出機、二軸押出機など、公知の押出成形機で構成されている。シート成形機52は、樹脂材料を加熱溶融(軟化)させるためのシリンダ56と、シリンダ56内に樹脂材料を投入するためのホッパ57と、シリンダ56内で軟化した樹脂材料を押し出すためのダイ58とを含んでいる。
ダイ58としては、通常の押出成形法に用いられる金属製のTダイなどが用いられる。ダイ58のリップ(ダイリップ59)の幅は、目的とする樹脂シート53の幅に合わせて選択され、例えば、300mm〜3000mmである。
【0045】
押圧ロール群54は、樹脂シート53を押圧により成形しながら、樹脂シート53の表裏面75,76に転写型により凹凸を形成する機構として、3つの押圧ロール63〜65を備えている。
なお、樹脂シート53の表面76が、光拡散板10または導光板25の出射面16,31を形成する面であり、最終的に形状加工が施される形状転写面である。一方、樹脂シート53の裏面75が、光拡散板10または導光板25の背面18,32を形成する面であり、最終的に形状加工が施されない面(例えば、この実施形態では、平坦性が維持される平坦面)である。
【0046】
3つの押圧ロール63〜65は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、その周面の温度(表面温度)を調節する機能を有する冷却ロールである。3つの押圧ロール63〜65は、上から下へ向かって順に第1押圧ロールとしての上ロール63、第2押圧ロールとしての中間ロール64、および第3押圧ロールとしての下ロール65として、軸線が相互に平行となるように上下方向に配置されている。
【0047】
上ロール63の周面66および中間ロール64の周面67は、この実施形態では、例えば、鏡面加工が施されることにより平滑面(鏡面)とされている。
下ロール65の周面68には、樹脂シート53に凸条部17,35および凹溝19を形成するための凹版転写型69が設けられている。凹版転写型69は、円柱状の金属製ロールの上に銅メッキを施し、メッキされた金属製ロールを旋盤に設置し、ダイヤモンドバイトを用いて、銅メッキ層を狙いのレンズ形状に彫刻したり、ケミカルエッチングなどで溝を形成したりした後、銅上にクロムメッキ処理を施すことにより作製する。
【0048】
より精密な形状を再現よく形成するため、旋盤−ダイヤモンドバイトの組み合わせが好ましく、銅上に施すクロムメッキ厚は、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
この凹版転写型69には、図10(a)に示すように、凸条部17,35とは反対型の溝部としての凹溝70が、下ロール65の周方向に沿って多数筋状に形成されている。すなわち、凹版転写型69には、凹溝70と、隣り合う凹溝70との間の凸条71(この凸条71は凹溝19とは反対型であり、凹版転写型69の表面という場合には、この凸条71の表面のことをいう。)とが下ロール65の軸方向に沿って交互に配置されている。
【0049】
凹溝70は、その長手方向(周方向)に直交する切断面が略半楕円形状の輪郭を有していて、その底面73(凹溝70の最深部を含む微小区間での曲面)の曲率半径Rが、100μm以下、好ましくは、40μm〜100μmである。
凹溝70の深さHは、凸条部17,35の高さH´よりもやや大きく、例えば、100μm〜500μm、好ましくは、100μm〜300μm以下である。深さHが過剰に大きすぎると、凹溝70の先端にまで樹脂を入り込ませることが難しくなる。
【0050】
また、隣り合う凹溝70の中心同士の距離(ピッチP)は、凸条部17,35の形状に応じて適宜定められるが、例えば、200μm〜500μm、好ましくは、250μm〜450μm、さらに好ましくは、300μm〜400μmである。ピッチPが200μm未満の場合、樹脂が下ロール65に接触してすぐに固化するおそれがあり、その結果、樹脂が凹溝70の先端にまで入り込まず、目標とする転写形状を得ることができないおそれがある。一方、ピッチPが500μmを超えている場合、光拡散板10または導光板25の背面18,32に、ピッチの筋が肉眼でも観察されたり、液晶パネル3,23や光学フィルム4,24などとのモアレ模様が現れたりするおそれがある。
【0051】
また、凹溝70のピッチPに対する高さHの比率(H/P)で表されるアスペクト比は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5〜0.7である。
なお、凸条部17,35の高さH´と凹溝70の深さHとの差は、凹版転写型69が樹脂シート53に転写されて凸条部17,35が形成される際の転写率(H´/H)(%)に起因するものである。
【0052】
なお、押圧ロール63〜65の回転軸にはそれぞれモータ(図示せず)が接続されていて、上ロール63および下ロール65が反時計回りに回転可能であり、中間ロール64が時計回りに回転可能である。すなわち、押圧ロール63〜65は、上から順に「反時計回りに回転可能」、「時計回りに回転可能」、「反時計回りに回転可能」である。これにより、全てのロール63〜65が樹脂シート53を挟みこんだ状態で同期回転することができる。また、押圧ロール63〜65の回転速度を適宜調節することにより、樹脂シート53の搬送速度を調整することができる。
【0053】
各押圧ロール63〜65の直径は、例えば、100mm〜500mmである。また、押圧ロール63〜65として金属製ロールが用いられる場合、その表面に、例えば、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、Ni−Pメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。
また、図9に示すように、押圧ロール群54と引取ロール群55との間には、下ロール65から剥離した直後の樹脂シート53の表面76(凹版転写型69が転写される形状転写面)を冷却するための送風機72が設置されている。
【0054】
送風機72は、搬送される樹脂シート53に対して離間するように対向配置されている。これにより、樹脂シート53の表面76を、下ロール65に密着して搬送される際に下ロール65により冷却された後、引取ロール群55で引き取られる前に送風機72により冷却(空冷)することができる。なお、送風機72としては、例えば、扇風機、エアナイフなど、公知のものを用いることができる。
【0055】
一対の引取ロール群55は、樹脂シート53を厚さ方向両側から挟み込む一対の引取ロール85,86を含んでいる。
引取ロール85,86は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、下側の引取ロール85の上端が下ロール65の下端と同じ高さ位置となるように対向設置されている。これにより、下ロール65から送出される樹脂シート53を、送出直後の高さで支持したまま水平搬送できるので、搬送抵抗を小さくすることができる。
【0056】
次いで、上記した製造装置を用いた樹脂シート53の製造方法を説明する。
(1)押出工程
まず、シート成形機52のホッパ57に原料樹脂が投入され、シリンダ56で溶融混練された後、フィードブロック(図示せず)に供給される。シリンダ56温度は、例えば、190℃〜250℃に設定される。
【0057】
次いで、フィードブロック(図示せず)内の樹脂が、ダイ58から押し出されることにより、連続的に樹脂シート53として押し出される。
(2)第1押圧工程および搬送工程
ダイ58から押し出された樹脂シート53は、まず、上ロール63と中間ロール64との間(ギャップ)に送り込まれ(この際、必要に応じてメルトバンクが形成される。)、上ロール63と中間ロール64とで挟み込まれて押圧される。その後、中間ロール64の周面67に裏面75(背面18,32)が密着して搬送され、その際に冷却される。上ロール63および中間ロール64の表面温度としては、樹脂シート53の押出温度よりも低いことが好ましく、例えば、上ロール63の表面温度が40℃〜160℃であり、中間ロール64の表面温度が40℃〜170℃である。
(3)第2押圧工程
その後、搬送される樹脂シート53は、中間ロール64と下ロール65との間(ギャップ)に入り込み、中間ロール64と下ロール65とで挟み込まれて押圧される。そして、中間ロール64と下ロール65との押圧の際、樹脂シート53の表面76(出射面16,31)には、凹版転写型69の表面形状が転写されることによりシートの流れ方向(送出方向)に平行な筋状の凸条部17,35が多数本形成される。
【0058】
その後、樹脂シート53は、下ロール65の周面68に表面76が密着して搬送される。樹脂シート53の押圧および搬送の際、下ロール65の表面温度T(R3)は、原料樹脂のガラス転移温度をTgしたとき、Tg−10℃≦T(R3)<Tg+5℃の範囲に調節される。例えば、ガラス転移温度Tgが105℃のポリスチレン樹脂を使用する場合には、下ロール65の表面温度T(R3)の下限を95℃とし、上限を110℃となるように調節される。
【0059】
下ロール65の表面温度T(R3)が、T(R3)<Tg+5℃であれば、下ロール65への樹脂シート53の巻きつきなどのライントラブルや、樹脂シート53が下ロール65から剥離する際の剥離痕の発生を良好に防止することができる。
搬送後、樹脂シート53は、下ロール65の下端において下ロール65から剥離して、引取ロール群55へと水平方向に送出される。送出後、樹脂シート53は、送風機72により、表面(形状転写面)76側から冷却される。送風機72での空冷の際、例えば、樹脂シート53の表面76の最高到達温度(下ロール65の出口温度)T(S)は、T(S)<Tg+5℃に抑えることが好ましい。これにより、熱弾性変形を良好に抑制できる。
一方、最低到達温度は、樹脂のTgマイナス10℃以上にすることが好ましい。これにより、樹脂シート53の反りを抑制することができる。最高および最低到達温度は、例えば、送風機72の下流側に温度センサ(図示せず)などを設けることにより測定できる。
【0060】
その後、一対の引取ロール85,86により引き取られて樹脂シート53が製造される。そして、樹脂シート53がさらに冷却された後、適当な大きさで切断されることにより、上記光拡散板10または導光板25を得ることができる。
なお、樹脂シート53の搬送速度は、例えば、2.5m/min以上となるように調節される。搬送速度が2.5m/min未満であると、中間ロール64と下ロール65とによる押圧速度が遅くなるおそれがある。その結果、樹脂シート53に対する押圧力が低下して、良好に転写できないおそれがある。
(4)作用効果
以上のように、本実施形態によれば、中間ロール64と下ロール65との間(ギャップ)に樹脂シート53を入り込ませ、さらに下ロール65に密着させて搬送する際に、下ロール65の表面温度T(R3)がTg−10℃≦T(R3)に保持される。そのため、中間ロール64と下ロール65とによる押圧の際、凹版転写型69に接した樹脂を、凹版転写型69との接触面から急冷させることなく徐々に固化させることができる。したがって、凹版転写型69に接した樹脂は、完全に固化する前に、徐々に固化しながら凹溝70の最深部(先端)にまで入り込み、その後、完全に固化することとなる。
【0061】
その結果、本実施形態のように、曲率半径Rが100μm以下の底面73を有する凹溝70が形成された凹版転写型69を樹脂に転写する場合でも、樹脂シート53の表面76(形状転写面)の形状を、凹溝70の輪郭とほぼ同一形状にすることができる。そのため、光学設計により最適化された凹版転写型69の形状を、樹脂シート53の凸条部17,35として良好に再現することができる。よって、この樹脂シート53からなる光拡散板10または導光板25は、優れた光学特性を発現することができる。
【0062】
すなわち、この実施形態で開示された製造手法を用いることにより、従来の製造手法では転写困難であった難易度の高いプリズム形状や、高H/P比(0.5以上)、狭ピッチ形状(300μm以下)についても、転写率を精度よく向上させることができる。
一方、表面形状転写樹脂シートの製造にあたっての典型的な課題として、転写型ロールから剥離した直後の樹脂シートが完全にTg以下に冷却されていないと、樹脂の熱弾性変形(Tg以下に冷却されておらず、流動性のある樹脂の残留応力による収縮)により、樹脂シートへの形状転写率(本実施形態では、凸条部17,35の高さ(凹溝19の深さ)H´/凹溝70の深さH×100(%))が低下することがある。
【0063】
しかしながら、本実施形態によれば、下ロール65から剥離した直後の樹脂シート53の表面76(形状転写面)を送風機72で空冷することにより、樹脂シート53の表面76の温度を樹脂のTg付近にまで下げることができるので、樹脂シート53の熱弾性変形を抑制することができる。また、そのような冷却が空冷であるので、冷却に際しての樹脂シート53の反りを抑制することもできる。
【0064】
さらに、樹脂シート53の空冷後もしくは空冷をしないことにより熱弾性変形が多少生じても、当該熱弾性変形では、樹脂シート53(光拡散板10または導光板25)の個々の凸条部17,35の中央部から両端部に至る全部が一様な割合で収縮する。そのため、凹溝70の輪郭とほぼ同一形状に形成された凸条部17,35が収縮しても、光学設計により最適化された凹版転写型69の形状を維持することができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。
例えば、転写型の溝部の底面の曲率半径が100μm以下であれば、略半楕円形状の凹溝70を有する凹版転写型69に代えて、図11に示す、略半円形状(シリンドリカルレンズ形状)の半円凹溝78を有する凹版転写型77を使用することもできる。
【0066】
また、前述の実施形態では、光拡散板10または導光板25の背面18,32は、凹凸のない平坦面であるとしたが、例えば、エンボス加工などが施されて微細な凹凸を有するマット面であってもよい。その場合、樹脂シート53の裏面75をエンボス加工などすればよい。樹脂シート53の裏面75をエンボス加工するには、例えば、樹脂シート53の製造装置51において、中間ロール64の周面67にエンボス形状の転写型を巻き付けておき、当該転写型を転写すればよい。
【0067】
また、押圧ロール群54は、前述の実施形態では、上ロール63、中間ロール64および下ロール65が鉛直方向に並べて配置される形態であったが、例えば、3つの押圧ロールが水平方向や斜め方向に並べて配置される形態であってもよい。
また、例えば、搬送または樹脂シート53と押圧ロール63〜65との密着を補助する転写技術上無関係なロールであれば、樹脂シート53および凹版転写型69に接するロール(タッチロール)が設けられていてもよい。
【0068】
また、例えば、光拡散板または導光板(樹脂シート)は、光拡散板10または導光板25のような単層樹脂板に限定されるものではなく、例えば、2層樹脂板、3層樹脂板、4層以上の層からなる複数層の樹脂板であってもよい。
また、光拡散板10は、バックライト用の光拡散板として、導光板25は、バックライト用の導光板として、好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【0069】
また、バックライトシステム2,22は、液晶表示装置用の面光源装置として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<樹脂シートの原料>
樹脂シートの原料として、以下の(1)および(2)の材料を準備した。
(1)非晶性樹脂A:スチレン樹脂(東洋スチレン株式会社製「HRM40」 Tg105℃)
(2)非晶性樹脂B:アクリル樹脂(住友化学株式会社製「EXN」 Tg102℃)
<樹脂シートの製造装置の構成>
図9に示す樹脂シート製造装置と同様の構成を有する装置を用いた。
【0071】
なお、押圧ロールとして、表面にクロムメッキが施された鏡面冷却ロールを準備した。
また、押圧ロールに装着する転写型として、表1に示す転写型を準備した。各転写型には、半楕円形状の溝部が、押圧ロールの周方向に沿うように平行に等間隔で形成されている。また、表1において、「ピッチP」、「深さH」、「アスペクト比」および「曲率半径」は、それぞれ前述の実施形態で定義した値である。
【0072】
【表1】

【0073】
<実施例および比較例>
(1)実施例1〜4および比較例1〜2
まず、非晶性樹脂Aを、スクリュー径120mmの押出機に供給し、シリンダ温度210℃〜250℃で溶融混練した後、フィードブロックに供給した。
次いで、フィードブロック内の樹脂を、幅1500mmのTダイを経由させて、Tダイ温度260℃〜280℃でシート状に押し出した。
【0074】
その後、押し出された樹脂シートを、上ロール(鏡面冷却ロール)と中間ロール(鏡面冷却ロール)で挟み込み、中間ロールの表面に巻きつけた状態で搬送し、中間ロールと下ロール(転写型装着ロール)とで挟み込み、下ロールの表面に巻きつけた状態で搬送し、下ロールから剥離した樹脂シートを引き取りロールで引き取った。これにより、表面(上面)に凹形状が転写された表面形状転写樹脂シートを得た。なお、各実施例および各比較例での条件については、表2に示すとおりである。
【0075】
【表2】

【0076】
そして、得られた樹脂シートの転写精度を次に示す手順により確認した。
まず、図12(a)〜図15(a)に示すように、レプリカの半楕円凸条の輪郭(プロファイル)をXY平面にグラフ化した。XY平面は、X軸が半楕円凸条の幅方向であり、Y軸が半楕円凸条の高さ方向である。そして、基準値として、その頂部の座標を(X,Y)=(0,1)と設定し、その両端部の座標をそれぞれ(X,Y)=(−100,0)および(X,Y)=(100,0)と設定した。なお、レプリカとは、各転写型が100%の転写率で転写された樹脂シートのことをいう。
【0077】
次いで、レプリカのグラフ化と同様の方法により、実際に得られた各樹脂シートの半楕円凸条の輪郭を、レプリカと同一のXY平面上にグラフ化した。
次いで、複数のX座標をピックアップし、各X座標における実際の半楕円凸条のプロファイルの高さ(Y座標)を、レプリカのプロファイルの高さ(Y座標)の相対値として数値化することにより、図12(b)〜図15(b)に示すように、実際のプロファイルの複数点における形状転写率(%)を得た。
【0078】
図12(a)(b)を参照して実施例1と比較例1とを比較する。実施例1では、半楕円凸条の中央部(X=0)から両端部付近(X=−80,+80)に至るまで形状転写率がほぼ一定(約92%)であり、これにより、レプリカ(設計形状)に対して一様な割合で収縮していることが確認された。一方、比較例1では、半楕円凸条の中央部(先端部)での形状転写率が約88%であり、他の部分の形状転写率に比べて最も低く、転写型の溝部の先端部にまで樹脂が充填されていなかったことが確認された。
【0079】
次いで、図13(a)(b)を参照して実施例2と比較例2とを比較する。比較例2では、半楕円凸条の中央部(先端部)での形状転写率が約98%であるが、他の部分の形状転写率に比べて最も低い。すなわち、比較例2では、転写型の溝部の先端部にまで樹脂が充填されていなかったことが確認された。一方、実施例2では、全体としての形状転写率は比較例2よりも劣るが、半楕円凸条の中央部(X=0)から両端部付近(X=−70,+70)に至るまで形状転写率がほぼ一定(約95%)であり、これにより、レプリカ(設計形状)に対して一様な割合で収縮していることが確認された。
【0080】
また、図14(a)(b)および図15(a)(b)を参照して実施例3および実施例4について評価する。実施例3および実施例4はいずれも、実施例1〜2と同様に、半楕円凸条の中央部(X=0)から両端部付近(X=−70,+70)に至るまで形状転写率がほぼ一定であり、これにより、レプリカ(設計形状)に対して一様な割合で収縮していることが確認された。とくに実施例4については、下ロールから剥離直後のシートの形状転写面を空冷したことから、中央部から両端部付近まで全ての点において、優れた形状転写率(約98%)を達成することができた。
(2)実施例5
非晶性樹脂Bを、スクリュー径120mmの押出機に供給し、シリンダ温度210℃〜250℃で溶融混練した後、フィードブロックに供給する。
【0081】
次いで、フィードブロック内の樹脂を、幅1500mmのTダイを経由させて、Tダイ温度260℃〜280℃でシート状に押し出す。なお、Tダイからの吐出量は700kg/hrとする。
その後、押し出された樹脂シートを、上ロール(鏡面冷却ロール)と中間ロール(鏡面冷却ロール)で挟み込み、中間ロールの表面に巻きつけた状態で搬送し、中間ロールと下ロール(転写型装着ロール)とで挟み込み、下ロールの表面に巻きつけた状態で搬送し、下ロールから剥離した樹脂シートを引き取りロールで引き取る。これにより、表面(上面)に凹形状が転写された表面形状転写樹脂シートを得る。なお、上ロール温度は85℃、中間ロール温度は90℃、下ロール温度は98℃とする。
【0082】
このようにして得られた表面形状転写樹脂シートは、半楕円凸条の中央部から両端部付近に至るまで形状転写率がほぼ一定である。
【符号の説明】
【0083】
53 樹脂シート
58 ダイ
63 上ロール
64 中間ロール
65 下ロール
68 (下ロールの)周面
69 凹版転写型
70 凹溝
77 凹版転写型
78 半円凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを作製する押出工程と、
前記連続樹脂シートを第1押圧ロールと第2押圧ロールとで挟み込む第1押圧工程と、
前記第1押圧工程後、前記連続樹脂シートを前記第2押圧ロールに密着させたまま搬送する第1搬送工程と、
搬送された前記連続樹脂シートを前記第2押圧ロールと第3押圧ロールとで挟み込む第2押圧工程とを含み、
前記第3押圧ロールは、その表面に転写型を備え、当該転写型は、曲率半径が100μm以下の底面を有する複数の溝部を有しており、
前記第2押圧工程は、前記第3押圧ロールの表面温度T(R3)を、前記樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃≦T(R3)に保持しながら、前記第3押圧ロール表面に備えた前記転写型を前記連続樹脂シートに転写する工程を含む、表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記第2押圧工程後、前記連続樹脂シートを前記第3押圧ロールに密着させたまま搬送する第2搬送工程と、
前記第2搬送工程後、前記第3押圧ロールから剥離した前記連続樹脂シートにおける転写側の表面を冷却する冷却工程とをさらに含む、請求項1に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂が、非晶性樹脂である、請求項1または2に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記非晶性樹脂が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル・スチレン系共重合体樹脂、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系を主成分として含む、請求項3に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記溝部の長手方向に直交する方向における断面形状が、略半円形状または略半楕円形状である、請求項1〜4のいずれかに記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−30591(P2012−30591A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144481(P2011−144481)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】