説明

表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板及びその製造方法

量産性に優れ、精度の高い表面微細構造を備えたメタクリル系樹脂キャスト板(30)の製造方法を開示する。所望の表面微細構造に対応するネガパターン(14b)の形成された金型(14)を第1の平板(20)に固定する。第1の平板(20)と第2の平板(22)とを対向させて、セル(27)を形成する。セルのキャビティ(26)の一面は金型によって区画される。そのキャビティ内にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する。単量体混合物をキャビティ内で重合反応させて硬化させる。硬化した樹脂成形体をセルから取り出して所望の寸法に切り出すことによって、キャスト板が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止や偏光分離等の様々な光学特性を実現するための表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のディスプレイには反射防止(AR)機能を有する光学素子が用いられ、光ディスクへの情報記録または光ディスクからの情報再生を行う光ピックアップには偏光分離機能を有する光学素子が用いられる。これらの光学素子は基体上に積層された複数の膜からなる多層膜構造を備えている。(特許文献1、2参照)
【0003】
一般に多層膜構造の多層膜は互いに異なる屈折率を有し、多層膜の総合的な光学特性により、AR機能や偏光分離機能のような所望の光学機能が得られる。
【0004】
なお、AR機能とは、入射光の反射や散乱を抑えて光学素子の透過率を高める機能である。例えば携帯電話やコンピュータのディスプレイの表面で外光(入射光)が反射あるいは散乱すると、視認性を低下させるいわゆる映り込みが発生する。そこで、ディスプレイにあっては一般に、ディスプレイ表面における反射率を低下させて、入射光の反射や拡散を回避している。
【0005】
また、偏光分離機能とは、互いに直交する偏光面を有するP偏光とS偏光のうち、一方の偏光のみが光学素子を透過するのを許容させ、他方を反射させて、P偏光とS偏光とを分離する機能である。
【0006】
光学フィルタや位相差板等の多層膜構造の光学素子にあっても、多層膜の総合的な光学特性を利用して、所望の光学特性が実現される。
【特許文献1】特開平11−312330号公報
【特許文献2】特開2000−76685号公報
【特許文献3】特開2001−201746号公報
【発明の開示】
【0007】
ところで、多層膜構造を備えた光学素子にあっては、多層膜を構成する各膜の厚みを調節することで所望の光学特性が得られる。しかし、各膜の厚みの調節は難しく、また成膜条件によっては屈折率にもばらつきが生じ、所望の光学特性が得られるとは限らない。また、多層膜を構成することのできる膜材の種類が限られており、光学素子の設計の自由度が低かった。
【0008】
一方、近年では、半導体加工技術や電子ビーム加工技術の進歩により、光の波長以下のいわゆるサブミクロンオーダーでの微細加工や微細成形が可能になってきている。微細加工により、素子(基板)の表面に、各種の光学特性を付与する各種の微細構造または微細パターンを形成することが可能になりつつある。そこで現在では、微細構造または微細パターンが形成された基板をマスタ(母型)として用いて、例えば電気鋳造法により金型を製作し、この金型を利用した射出成形やプレス成形などによって、透明プラスティック光学素子を低コストで量産することが検討されている。特許文献3は、微細構造が形成された金型をプレス機に装着し、その金型を透明なプラスティック平板に圧着させることによって、その平板に微細構造や微細パターンを転写する方法を提案している。
【0009】
所望の光学特性を得るためには、高アスペクト比の微細構造または微細パターンを形成すること、すなわち、微細構造や微細パターンをその繰り返しピッチに対してより深く形成することが必要である。ところが、射出成形やプレス成形では、高アスペクト比を有するサブミクロンオーダーの微細構造を形成することは技術的に困難である。例えば特許文献3に記載の方法においては、金型に設けられた山の高さは0.9μmであるのに対し、平板に転写された山の高さ(凹部の深さ)は0.8μmであり、その転写率(転写精度)は88.9%しかない。従来の方法にてサブミクロンオーダーでの微細加工を行えば、転写率はさらに低くなる。従来の成形方法でサブミクロンオーダーの微細構造を転写した場合、転写率は、射出成形でおよそ70〜80%、プレス成形でおよそ80〜90%であることが本願発明者らによって確認されている。
【0010】
本発明の目的は、量産性に優れ、精度の高い表面微細構造を備えたメタクリル系樹脂キャスト板及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は、有効屈折率を変化させることにより所望の光学特性を実現する表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を提供する。前記メタクリル系樹脂キャスト板が前記表面微細構造に対応するネガパターンを有する少なくとも1つの内面を備えたセル内に、メタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する鋳込み重合によって形成されたものである。
【0011】
一実施形態では、前記単量体混合物が、メタクリル酸メチルを主剤とする単量体混合物である。好ましくは、前記単量体混合物が、メタクリル酸メチルの単量体を50重量%以上と、該メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体とを含有する混合物である。好ましくは、前記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体が、メタアクリル酸もしくはそのエステルである。好ましくは、前記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体が多官能不飽和単量体である。一実施形態では、前記単量体混合物がラジカル重合開始剤を含有している。一実施形態では、前記単量体混合物が光重合開始剤を含有している。一実施形態では、前記ネガパターンは当該メタクリル系樹脂キャスト板の表面処理用の塗料組成物が塗布された表面を有し、前記メタクリル系樹脂キャスト板は、前記鋳込み重合時に、前記塗料組成物が転写された表層を備える。一実施形態では、前記表面微細構造のネガパターンに対する当該メタクリル系樹脂キャスト板の表面微細構造の転写率が94%以上である。一実施形態では、前記表面微細構造は、アスペクト比が1以上で且つ、ピッチが150〜300nmの錐形状の突起がマトリクス状に設けられた反射防止構造である。
【0012】
本発明の別の態様は、有効屈折率を変化させて所望の光学特性を実現する表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を製造する方法を提供する。その方法は、前記表面微細構造に対応するネガパターンを有する少なくとも一つの内面を備えたセルを用意する工程と、前記セル内にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する工程と、前記単量体混合物を前記セル内で重合反応させる工程と、前記重合反応によって固化した樹脂体を前記セルから取り出す工程と、前記樹脂体を所望の寸法に切り出す工程とを備える。
【0013】
本発明の更に別の態様は、有効屈折率を変化させて所望の光学特性を実現する表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を製造する方法を提供する。その方法は、各セルが前記表面微細構造に対応するネガパターンを有する少なくとも一つの内面を備えているベルトコンベア式の連続セルを含む鋳込み槽を用意する工程と、前記鋳込み槽内にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する工程と、前記単量体混合物を前記鋳込み槽内で重合反応させる工程と、前記重合反応によって固化した樹脂体を所望の寸法に切り出す工程とを備える。
【0014】
一実施形態では、前記単量体混合物はラジカル重合開始剤を含有しており、前記重合反応させる工程は、前記単量体混合物の重合反応を加速するための加熱処理工程を含む。
【0015】
一実施形態では、前記単量体混合物は光重合開始剤を含有しており、前記重合反応させる工程は、前記単量体混合物の重合反応を加速するための紫外線照射処理工程を含む。
【0016】
一実施形態では、前記メタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する工程に先立ち、前記ネガパターンを有する少なくとも一つの内面に、前記メタクリル系樹脂キャスト板の表面処理用の塗料組成物を塗布する工程をさらに備える。
【0017】
一実施形態では、基板の表面に前記表面微細構造のパターンを有するマスクを形成する工程と、前記マスクを用いて前記基板をエッチングして、前記表面微細構造を有するマスタを製作する工程と、前記マスタを用い、前記ネガパターンを有する金型を電気鋳造によって製作する工程とをさらに備え、前記セルを用意する工程は、前記金型を用いて、前記セルの前記少なくとも1つの内面を提供することを含む。
【0018】
一実施形態では、基板の表面に前記表面微細構造のパターンを有するマスクを形成する工程と、前記マスクを用いて前記基板をエッチングして、前記表面微細構造を有するマスタを製作する工程と、前記マスタと透光性板材との間の隙間に紫外線硬化樹脂を注入する工程と、前記マスタと前記透光性板材とを当接させた状態で、前記透光性板材を通して紫外線を前記紫外線硬化性樹脂に照射して、前記紫外線硬化樹脂を硬化させて、前記ネガパターンを有する樹脂層を形成する工程とをさらに備え、前記セルを用意する工程は、前記樹脂層を用いて前記セルの前記少なくとも1つの内面を提供することを含む。
【0019】
前記セルを用意する工程は、前記マスタの複数個分に相当する面積を有する前記金型または前記樹脂層を用いて前記少なくとも1つの内面を提供することを含む。
【0020】
前記セルを用意する工程は、前記ネガパターンを有する少なくとも一つの内面を提供する部材を、前記セルに着脱可能に取り付けることを含む。
【0021】
前記マスタを製作する工程は、アスペクト比が1以上で且つ、ピッチが150〜300nmの錐形状の突起がマトリクス状に配列された表面を形成することを含む。
【0022】
本発明の別の態様は、光学特性を備えた光学樹脂板を提供する。その樹脂版は、前記光学特性を発揮する表面微細構造の形成された少なくとも一つの表面を有する、均一な組成を有する樹脂基板を備る。前記表面微細構造は、150〜300nmのピッチで形成された複数の錐形状突起を含み、各錐形状突起のアスペクト比が1以上である。
【0023】
前記光学樹脂板は、前記複数の錐形状突起を覆うように前記樹脂成形体の表面に付与された皮膜を備えることが好ましい。一実施形態では、前記皮膜は前記複数の錐形状突起を保護する耐擦傷性皮膜である。一実施形態では、前記皮膜は前記キャスト板の帯電を防止する導電性微粒子を含む請求項26または27に記載の光学樹脂板。一実施形態では、前記樹脂基板はメタクリル系樹脂からなる。一実施形態では、前記メタクリル系樹脂がメタクリル酸メチルを含む重合体である。一実施形態では、前記メタクリル系樹脂がメタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体を含む。一実施形態では、前記光学特性が反射防止特性である。
【0024】
本発明によれば、重合反応を経て固化されることで、極めて高い転写率をもって微細構造パターンが転写された表面をもつメタクリル系樹脂キャスト板が得られる。表面の微細構造により、そのキャスト板は所望の光学特性を備えた、光学素子として有用である。また、本発明では、鋳込み重合を採用したことで、その生産性も自ずと向上され、極めて精度の高い表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を大量、且つ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態にかかるメタクリル系樹脂キャスト板の製造に使用されるマスタの製造工程を示す概略断面図。
【図2】(a)〜(c)はマスタの製造工程を示す概略断面図。(d)はマスタの概略斜視図。
【図3】マスタを用いた金型の形成工程を示す模式図。
【図4】セルの形成工程を示す斜視図。
【図5】セルの形成工程を示す斜視図。
【図6】セルの形成工程を示す斜視図。
【図7】図6の平面図。
【図8】セルの形成工程を示す斜視図。
【図9】図8のA−A断面に対応するセルの断面図。
【図10】単量体混合物の注入工程を示す斜視図。
【図11】単量体混合物の重合工程を示す斜視図。
【図12】セルからメタクリル系樹脂キャスト板を取り出す工程を示す斜視図。
【図13】本発明の第1実施形態のメタクリル系樹脂キャスト板の模式的斜視図。
【図14】図13のキャスト板のB−B線に沿った断面図。
【図15】第1実施形態のメタクリル系樹脂キャスト板及び従来の多層反射防止膜を有する光学素子について、反射率と波長との関係を示すグラフ。
【図16】本発明の第2の実施形態にかかるメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法を示す模式図。
【図17】第2の実施形態のセルの断面図。
【図18】セルの変形例を示す断面図。
【図19】大型のセルの変形例を示す斜視図。
【図20】連続キャスト式の鋳込み重合を行う装置の模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施形態にかかるメタクリル系樹脂キャスト板及びその製造方法を説明する。
【0027】
第1の実施形態にかかるメタクリル系樹脂キャスト板は、極めて精度の高い微細構造を有する表面を備える。微細構造により、高いAR(反射防止、あるいは無反射)機能が実現される。
【0028】
以下、キャスト板の製造方法について説明する。第1の実施形態にかかるキャスト板の製造方法は、大きくは以下の工程A〜Dを含み、対向する2枚の平板、あるいは複数の平板により区画される少なくとも一つのセルで繰り返し鋳込みを行う、いわゆるバッチ式キャスト法を採用する。
【0029】
工程A:少なくとも一つのキャビティ面に所望の表面微細構造に対応するネガ(反転)パターンが設けられたセル27(図9)を形成する。
工程B:セル27にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する(図10)。
工程C:注入した単量体混合物をセル27内で重合反応させる(図11)。重合反応によって単量体混合物は固化する。
工程D:固化した樹脂体(キャスト板30)をセル27から取り出し、樹脂キャスト板30を所望の寸法に切り出す(図12及び図13)。
【0030】
まず、工程Aに先立って行われる、ネガパターンをもつ金型を製作するための前処理工程について、図1〜図3を参照して説明する。前処理工程は、以下の工程a1及びb1からなる。
【0031】
a1:基板の表面にレジストを塗布して微細構造のパターンを描画、現像した後、適宜のマスクを形成し、該マスクをもとにエッチングを行って前記微細構造を有するマスタ(母型)13を製作する(図1及び図2)。
b1:マスタ13を用い、電気鋳造によって、微細構造を付与するスタンパとして使用される金型14を製作する(図3)。
【0032】
工程a1ではまず、図1(a)に示されるように、例えばシリコン(Si)または石英等からなる基板10にレジスト11を塗布する。そして、レジスト11に、電子ビーム描画や二光束干渉露光等によって微細構造のパターンを描画し、現像することにより、図1(b)に示されるレジストパターンを形成する。
【0033】
次に、図1(c)に示されるように、レジストパターンの表面側からクロム(Cr)の蒸着を行う。リフトオフによってクロム(Cr)膜12のみを残す。引き続き、レジスト11を除去することによって、図1(d)に示されるように、基板10の上にクロム(Cr)マスク12aが形成される。マスク12aのパターンは、可視光の波長以下のサブミクロンオーダーの微細パターン、具体的には、250nm〜300nmの繰り返しピッチPを有する2次元のパターンである。第1の実施形態では、上面から見た場合、マスク12aはマトリクス状のパターンである。
【0034】
その後、クロム(Cr)マスク12aを用いて、基板10の表面10aをエッチングする。第1の実施形態では、基板10は、反応ガスを用いた反応性イオンエッチングによってエッチングされる。反応ガスとしては、CとCHを所定の割合で混合した混合ガス、あるいはCHFが使用できる。CとCHとの混合ガスを用いた場合のエッチング条件は次の通りである。
【0035】
ガス圧力 :0.5Pa
アンテナパワー :1500W
バイアスパワー :450W
/CH :16/14sccm
エッチング時間 :60sec
【0036】
アンテナパワーとは、プラズマ生成のためにエッチング装置内のアンテナに印加される高周波電力である。バイアスパワーとは、基板10の上にプラズマを引き込むために印加される高周波電力である。反応ガス中のCHの混合割合は、10〜50%の間で調整することができる。CHの割合が10%よりも低い場合には、エッチングで除去される凹部の角度が大きくなりすぎ、突部のアスペクト比が1.0以下になってしまう。逆に、CHの割合が50%よりも高い場合には、エッチングで除去される凹部が丸みを帯びたU字凹部となってしまう。
【0037】
図2(a)〜(c)は、基板10のエッチングを段階的に示す。エッチングが進むにつれて、クロム(Cr)マスク12aから露出した表面だけでなく、クロム(Cr)マスク12aも徐々にエッチングされてその径が縮小する。最終的には、図2(c)に示されるように、基板10の表面に、所定の先端角(テーパ角)を有する錐形状(円錐状)の突起10bを備えた、反射防止機能を有する表面微細構造が形成される。第1の実施形態においては、突起10bの高さT1が300〜500nmとなるように、エッチング条件(反応ガス中のCHの混合割合等)を定めている。突起10bのピッチP1は図1(d)のピッチPと対応している。
【0038】
以上の処理を経て、図2(d)に示すような表面微細構造を有するマスタ13が製作される。
【0039】
次に、図3に示すように、マスタ13を用いて金型14を製作する(工程b)。金型14は例えばニッケル(Ni)を用いた電気鋳造工程により製作される。
【0040】
第1の実施形態では、マスタ13に対し、スパッタリング法にてニッケル(Ni)の薄膜を数百Åの膜厚にて形成して、これを導電膜とする。次いで、ニッケル薄膜からなる導電膜に直接ニッケル電気鋳造を行って、該ニッケルからなる金属層を積層させる。積層させた金属層をマスタ13から剥離して、金型14が得られる。
【0041】
このような電気鋳造加工により、金型14には、マスタ13の微細構造(微細パターン)の反転構造(ネガパターン)がほぼ忠実に転写される。以下の説明では、ネガパターンを反転パターンと呼ぶことがある。
【0042】
このように、工程Aに先立ち、ネガパターンを有する金型14を製作しておくことで、工程A以降の工程を効率的に実行することができる。
【0043】
次に、工程Aについて、図4〜図9を参照して説明する。ちなみに、工程Aとは、前述したように、ネガパターンが設けられたセル27を形成する工程である。
【0044】
第1の実施形態では、2枚の平板20,22によってキャビティ26が区画される。そのため、平板20,22は、後述するメタクリル酸メチルを主剤とした単量体混合物に侵されないガラスや金属製であることが好ましい。第1の実施形態では、2枚の平板20,22の厚みは、メタクリル系樹脂キャスト板の厚さに応じて、2.0〜5.0cm程度である。
【0045】
図4は、セル27を構成する2枚の平板のうちの一方に金型14を取り付ける工程を示す分解斜視図である。
【0046】
図4に示されるように、金型14は第1の平板20に取り付けられる。第1の平板20の外形寸法は、金型14の外形寸法と略同等である。平板20の各角には金型14を固定するためのねじ穴20aが形成されている。金型14の各角にねじ穴20aに対応する開孔(貫通孔)14aが形成されている。ネガパターン(凹部14b)の形成されている面が露出するように、金型14を平板20の上面に載置し、金型14の開孔14a及び対応する平板20のねじ穴20aにねじ21を螺入することにより、金型14を平板20に固定する。これにより、ネガパターンを一体に備える平板20が得られる。
【0047】
その後、平板20の表面、正確には、金型14のネガパターン(凹部14b)が形成されている面に、メタクリル系樹脂キャスト板の表面処理用の塗料組成物を塗布する(図示略)。第1の実施形態では、この塗料組成物の主剤(主成分)は、表面微細構造の保護機能を有した硬化性化合物である。硬化性化合物は、紫外線または電子線のような放射線の照射、あるいは温風、温水、赤外線ヒータなどの熱源による加熱によって硬化し、耐擦傷性皮膜を形成する。帯電防止性を実現する導電性微粒子、塗料の粘度を調整する溶媒、あるいは硬化触媒などの添加物を硬化性化合物に混合することができる。
【0048】
硬化性化合物としては、アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、カルボキシル基変性エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、共重合系アクリレート、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。なかでも、皮膜に高い耐擦傷性を付与する硬化性化合物としては、多官能アクリレート系、多官能ウレタンアクリレート系、多官能エポキシアクリレート系などのラジカル重合系の硬化性化合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなどの熱重合系の硬化性化合物が挙げられる。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上述した硬化性化合物のなかでも好ましいものは、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物である。例えば:
【0050】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−、ヘキサ−またはヘプタ−(メタ)アクリレートのような、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;
【0051】
分子内にイソシアナート基を少なくとも2個有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、イソシアナート基に対して水酸基が等モル以上となる割合で反応させて得られ、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となったウレタン(メタ)アクリレート(例えば、ジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの反応により、3〜6官能のウレタン(メタ)アクリレートが得られる);
【0052】
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート。
【0053】
硬化性化合物としては、例示した単量体をそのままで用いてもよいし、その2量体、3量体などのオリゴマーを用いてもよいし、単量体とオリゴマーを併用してもよい。
【0054】
少なくとも3個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物は、塗料組成物の固形分100重量部あたり、50重量部以上、さらには60重量部以上の含有量で用いるのが好ましい。少なくとも3個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する硬化性化合物の含有量が50重量部未満であると、表面硬度が不十分となるおそれがある。
【0055】
なお、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクロイルオキシ基をいう。その他、本明細書において、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸の(メタ)についても同様である。
【0056】
皮膜に帯電防止性を付与する導電性無機粒子としては、例えば、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、酸化チタン、ITO(インジウム錫酸化物)などが挙げられる。導電性無機粒子の粒子径は、粒子の種類によって適宜選択することが可能であり、通常は0.5μm以下である。耐擦傷性皮膜の帯電防止性や透明性の観点からは、平均粒子径が0.001μm以上、0.1μm以下であることが好ましい。導電性無機粒子の平均粒子径が0.1μmを越える場合には、耐擦傷性皮膜のヘイズ(曇価)が大きくなり透明性の低下が懸念されることから、より好ましい平均粒子径は0.001μm以上、0.05μm以下である。導電性無機粒子の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常2〜50重量部程度、好ましくは3〜20重量部程度である。硬化性化合物100重量部に対して導電性無機粒子の使用量が2重量部未満の場合には、帯電防止性向上効果が乏しくなる。一方、使用量が50重量部を超える場合には、硬化膜の透明性が低下するおそれがある。
【0057】
導電性無機粒子は、例えば、気相分解法、プラズマ蒸発法、アルコキシド分解法、共沈法、水熱法などにより製造することができる。また、導電性無機粒子の表面は、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などで処理されていてもよい。
【0058】
塗料組成物の粘度を調整する溶媒としては、硬化性化合物を溶解することができ、かつ塗料組成物を塗布後に揮発するものが望ましい。溶媒としては、例えば、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチルのようなエステル類、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールのようなセルソルブ類、及び水などが挙げられる。塗料組成物中における溶媒の使用量に特別な限定はなく、硬化性化合物の性状に応じて調整される。
【0059】
塗料組成物に溶媒を混合することにより、導電性無機粒子の塗料組成物内での分散を促進させることができる。導電性無機粒子の混合に際しては、例えば、溶媒に導電性無機粒子を混合した後に硬化性化合物と混合してもよいし、硬化性化合物と溶媒の混合物に導電性無機粒子を加えて混合してもよい。
【0060】
塗料組成物を紫外線で硬化させる場合は、当該塗料組成物には光重合開始剤が添加されていることが望ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類などが挙げられる。光重合開始剤の添加量は、硬化性化合物100重量部に対し0.1〜5重量部の範囲であることが一般的である。硬化性塗料が溶媒を含有する場合には、塗料組成物を塗布し、溶媒を揮発させ、その後に硬化性皮膜を硬化させてもよいし、溶媒の揮発と硬化性皮膜の硬化とを同時にすなわち並行して行ってもよい。
【0061】
以下、第1の平板20と協働してキャビティ26を区画する第2の平板22について詳述する。
【0062】
図5に示されるように、第2の平板22の表面22aには、その外縁に沿うように、3本の板厚調整用の角材23が接着剤等の固定部材によって固定されている。各角材23の厚みLは、キャスト板30と略同等の厚みを有する。第1の実施形態では、キャスト板30の厚みは、およそ0.2〜10mmの範囲である。
【0063】
図6に示されるように、3本の角材23の内側には、シリコーン樹脂等の弾性材料からなるチューブ24が角材23に沿って配設されている。図7に示すように、チューブ24は、角材23の厚みL、すなわち所望とするキャスト板の厚みよりも若干大きい外径を有する。
【0064】
図8に示されるように、角材23及びチューブ24が、第1の平板20のネガパターンを囲むように、第1の平板20と第2の平板22とを対面させる。
【0065】
図9に示すように、第1の平板20と第2の平板22とを締結部材25によって締結する。これによって、チューブ24が弾性変形し、平板20及び22が角材23の厚みLだけ離間して対向し、チューブ24によってシールされたキャビティ26が区画される。このようにして、セル27が完成する。図9は、セル27が完成した状態での、図8のA−A線に沿った断面図に相当する。
【0066】
次に、工程Bとして、図10に示すように、完成したセル27内(キャビティ26)に、メタクリル酸メチルを主剤とする単量体混合物Mを注入する。図10には、締結部材25は示されていない。
【0067】
単量体混合物Mとしては、50重量%以上のメタクリル酸メチルの単量体と、該メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体とを含む混合物が用いられる。
【0068】
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸またはそのエステルがある。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば:
【0069】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル;
【0070】
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;
【0071】
(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどの(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル;
【0072】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどがある。
【0073】
(メタ)アクリル酸系単量体は、所望とする特性に応じて、単独、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。(メタ)アクリル酸系単量体は、分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能不飽和単量体であって、メタクリル酸系単量体と共重合することのできる化合物である。
【0074】
続いて、工程Cとして、セル27内(キャビティ26)において、単量体混合物Mを重合反応させる。第1の実施形態では、単量体混合物Mはラジカル重合開始剤を含有し、単量体混合物Mを加熱して重合反応を促進している。単量体混合物Mにラジカル重合開始剤を添加するタイミングは、重合反応の前であれば特に限定されない。
【0075】
図11は、単量体混合物Mが注入されたセル27を示す。実際には、1つあるいは複数のセル27を図示しない重合槽に収容して、温風、温水、あるいは赤外線ヒータなどの図示しない熱源による加熱処理が行われる。一般的に、加熱温度は50〜130℃であり、加熱時間は数10分〜数十時間である。加熱処理の条件は、ラジカル重合開始剤の種類や添加量に応じて変更することができる。加熱処理を通じて、単量体混合物Mの重合反応が加速され、最終的に単量体混合物Mは固化し、均一な組成を有する樹脂成形体(キャスト板30)が得られる。
【0076】
また、第1の平板20の表面(金型14のネガパターン面)に付着していた耐擦傷性皮膜は、この重合(鋳込み重合)過程において、樹脂成形体に吸着されて、樹脂成形体の表層となる。
【0077】
第1の実施形態で採用可能なラジカル重合開始剤としては、例えば:
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンテン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2−シアノ−2−プロピラゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシ−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ化合物;
【0078】
ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド系開始剤;
【0079】
t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどのパーオキシエステル系開始剤;
【0080】
t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーカーボネイト系開始剤;
【0081】
1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール系開始剤などがある。
【0082】
上記のラジカル重合開始剤は、単独、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。ラジカル重合開始剤の添加量は、メタクリル酸メチルを主剤とする不飽和単量体混合物の100重量部あたり0.01重量部〜1重量部以下であることが好ましい。この添加量が0.01重量部より少ない場合には、重合反応に長時間を要する。一方、1重量部を超えた場合には、重合反応の制御が困難となることがある。
【0083】
その後、工程Dとして、図12に示すように、第1及び第2の平板20、22の締結を解除してセル27を分解し、単量体混合物Mが固化されたキャスト板30を該セル27から取り出す。
【0084】
キャスト板30の領域Zには、金型14のネガパターンが転写された突起30aが形成されている。
【0085】
キャスト板30を所望の寸法に切り出すことにより、図13に示すように、一表面の全面を占めるように形成された複数の突起30aを含む表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板30が完成する。
【0086】
次に、キャスト板30の構造について説明する。図14に示されるように、メタクリル系樹脂キャスト板30の表面には、ネガパターンが転写された突起30aが形成されている。突起30aのピッチP2は250nm〜300nmであり、高さT2は300nm〜500nmである。図2(c)に示したマスタ13から図3に示した金型14を製作するときに、多少の精度的な劣化は伴うものの、金型14からキャスト板30への転写率は、ほぼ94%以上であることが発明者らによって確認されている。ピッチP2と高さT2が転写率の高さを裏付けている。
【0087】
また、図14に示されるように、メタクリル系樹脂キャスト板30は、金型14の表面から転写された耐擦傷性皮膜30bからなる表層を一体に有する。
【0088】
図15は、第1の実施形態のキャスト板30と、従来の多層膜を採用したAR光学素子について、反射率と波長依存性との関係を示すグラフである。
【0089】
図15において、TMは、蒸着法を用いて形成された多層膜を採用したAR光学素子(従来技術)の特性を示している。MCは、突起30aのピッチとアスペクト比がそれぞれ300nmと1である微細構造パターンを有するキャスト板(本発明)の特性を示している。図15には、微細構造パターンの反射率と波長の関係とをより正確に調べるために、耐擦傷性皮膜30bの形成されていないキャスト板30について測定した特性を示した。
【0090】
図15から明らかなように、多層膜を採用したAR光学素子(TM)では、およそ400nm〜580nmの波長領域において反射率が1%以下であるが、その他の波長領域では反射率を低く抑えることができない。これに対し、キャスト板30(MC)では、可視光のほぼ全ての波長領域において反射率が低く、本発明のキャスト板30は高い反射防止機能を備えていることがわかる。すなわち、上記した微細構造パターンをもつキャスト板30は、より広い波長領域において好適な無反射機能を実現することができることがわかる。
【0091】
第1の実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
(1)AR機能を実現する表面微細構造のネガパターンが配設されたセル27内にメタクリル系樹脂の単量体混合物Mを注入し、これをセル27内で重合反応させる、いわゆる鋳込み重合によって表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板30が製造される。微細なネガパターンの細部まで単量体混合物Mが行きわたり、重合反応を経て固化されたときに、メタクリル系樹脂キャスト板30には、AR機能を実現する表面微細構造パターンが極めて高い転写率で転写される。また、鋳込み重合を採用したことで、メタクリル系樹脂キャスト板30の生産性は向上する。このため、極めて精度の高い表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板30を大量、且つ安価に提供することができる。
【0092】
(2)メタクリル酸メチルの単量体を50重量%以上と、該メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体とを含有する単量体混合物Mが用いられる。これにより、透明性、耐候性及び硬性の高いメタクリル系樹脂キャスト板30が得られる。
【0093】
(3)ラジカル重合開始剤の添加された単量体混合物Mがセル27内で加熱処理される。これにより、単量体混合物Mの重合反応が好適に促進される。
【0094】
(4)セル27に単量体混合物Mを注入するに先立って、硬化性化合物や導電性微粒子を含む塗料組成物を金型14のネガパターン表面に塗布した。鋳込み重合に伴って該塗布した塗料組成物が表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の表層に吸着されて、耐擦傷性皮膜30bがキャスト板に付与される。耐擦傷性皮膜30bは、表面微細構造を保護する機能(ハードコート)、あるいは帯電防止機能を有し、当該表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の信頼性及び実用性を向上させる。ちなみに、メタクリル系樹脂の成形体は本来、表面処理されにくいが、このように、メタクリル系樹脂の単量体混合物Mの重合反応に併せて塗料組成物の付着が行われることで、該メタクリル系樹脂の表層に、塗料組成物による的確な表面処理を行うことが可能である。第1の実施形態では、セル27から取り出す際には、既にキャスト板30の表面は耐擦傷性皮膜30bで覆われている。そのため、メタクリル酸メチルを主剤として使用する場合であっても、該キャスト板30と耐擦傷性皮膜30bとの間に異物が混入するなどの不具合は抑制される。
【0095】
(5)表面微細構造が極めて高い転写率、具体的には94%以上の転写率で転写されたキャスト板30が得られることから、金型14の製作精度にもよるものの、アスペクト比が1以上で且つ、ピッチが250nm〜300nm程度の表面微細構造(反射防止構造)をもつメタクリル系樹脂キャスト板30を比較的容易に製造することができる。250nm〜300nmといったピッチは、全ての可視光の波長よりも短いため、キャスト板30の反射防止作用は高い。例えば、メタクリル系樹脂キャスト板30を各種電子機器のディスプレイに採用すれば、映り込み込みが抑制されて、ディスプレイの視認性は大幅に向上する。
【0096】
(6)工程A〜Dを備えるキャスト板30の製造方法により、極めて高い転写率をもって表面微細構造のパターンが転写されたメタクリル系樹脂キャスト板を容易に、しかも高能率に製造(生産)することができる。
【0097】
(7)また、工程Aに先立ち、精密な微細構造を有するマスタ13をもとにそのスタンパとなる金型14を電気鋳造により製作することで、ネガパターン自体を高い精度にて製作することができる。このため、所望の光学特性を備えたキャスト板30を確実に製造することができる。
【0098】
(8)第1の実施形態では、セル27内で重合反応を実施するため、メタクリル系樹脂の単量体混合物Mがそのままの分子量で硬化される。これにより、プレス成形や射出成形などに比べて、表面硬度、剛性、耐熱性、強度、耐溶剤性などの熱的、化学的、機械的特性も高く維持される。
【0099】
本発明の第2の実施形態にかかる表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板及びその製造方法について、第1の実施形態と異なる点を中心に図16及び図17を参照して詳細に説明する。図16及び図17において、図1〜図15に示した第1の実施形態の要素と同一若しくは対応する要素についてはそれぞれ同一若しくは対応する符号を付しており、それら要素についての重複する説明を省略する。
【0100】
第2の実施形態にかかる表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板は、その表面に転写された極めて精度の高い微細構造パターンによって、光学的にも精度の高いAR(反射防止、あるいは無反射)機能を実現する。以下に、その製造方法について説明する。
【0101】
第2の実施形態においても、キャビティ26を区画する2枚の平板を含むセル27aを1つあるいは複数を繰り返し用いる、いわゆるバッチ式キャスト法を採用し、第1の実施形態の工程A〜Dを経て、表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板が製造される。
【0102】
ただし、第2の実施形態では、金型に代えてマスクパターンが用いられる。そのため、所望の微細構造に対応するネガパターンを製作する前処理工程において、マスタを製作する工程a1の後に、透光性を有するマスクパターンを形成する工程b2が行われる。
【0103】
マスクパターンを形成する工程b2について説明する。図16に示すように、錐形状(円錐状)の突起10bからなる微細構造の形成された表面(微細構造面)10aを有する基板10をマスタとして用いる。基板10の表面10aと、ガラスや石英のような透光性の高い材料からなる平板120との間に紫外線硬化樹脂を注入する。基板10の表面10aと平板120とを当接させる。平板120の裏面120a側から紫外線UVを照射して、平板120上において紫外線硬化樹脂を硬化させ、樹脂層114を形成する。
【0104】
このように平板120に紫外線を照射することにより、平板120と一体に設けられる樹脂層114には、基板10の微細構造パターンがほぼ忠実に反転して転写される。すなわち、樹脂層114には、基板10の突起10bに対応する凹部114bを含むネガパターンが形成される。
【0105】
その後、第1の実施形態と同様に、平板120の表面、正確には、ネガパターンが形成された樹脂層114の上面に、塗料組成物を塗布し硬化させることで耐擦傷性皮膜を形成する(図示略)。後の工程で耐擦傷性皮膜はメタクリル系樹脂キャスト板30の表面に転写される。なお、塗料組成物としては、第1の実施形態のものと同様のものを使用することができる。
【0106】
次に、第1の実施形態の工程Aと同様にして、セル27aを製作する。すなわち、平板20の代わりに平板120を用いて、第2の平板22、角材23、及びシリコーン樹脂等の弾性材料からなるチューブ24を前述した態様で組み立て、2枚の平板120及び22を締結部材25で締結する。これにより、2枚の平板120及び22間に区画されたキャビティ26がチューブ24によってシールされてセル27aが完成する。
【0107】
図17に示されるように、セル27aは、基本的には第1の実施形態のセル27と同様であり、平板120及び22は角材23の厚みに相当する距離だけ離間して対向している。セル27aのキャビティ26を区画する一内面には、前述したように、ネガパターン(凹部114b)を有する樹脂層114が設けられている。
【0108】
次に、工程Bとして、セル27a(キャビティ26)内に、メタクリル酸メチルを主剤とするメタクリル系樹脂の単量体混合物Mを注入する。
【0109】
その後、工程Cとして、この注入された単量体混合物Mを重合反応させる。第2の実施形態では、工程Cとして、重合反応を加速するために紫外線照射処理を行うこととし、この紫外線照射処理に先立って、予め単量体混合物Mに光重合開始剤を添加しておく。ちなみに、第2の実施形態においても、実際には、1つあるいは複数のセル27aを図示しない重合槽に収容して、図示しない光源による紫外線照射処理が行われる。紫外線照射処理を通じて、セル27aに充填された単量体混合物Mの重合反応が加速され、単量体混合物Mは最終的に固化される。
【0110】
平板120の表面に形成されている耐擦傷性皮膜(樹脂層114)は、この光重合過程において、単量体混合物Mが固化されたキャスト板30の表層に吸着される。
【0111】
第2の実施形態で採用可能な光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類などが挙げられる。
【0112】
その後、第1の実施形態と同様に工程Dにより、図14に示すものとほぼ同様の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板30が完成する。
【0113】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(8)の効果に準じた効果を得ることができる。さらに、第2の実施形態では、平板120上にネガパターンとして機能する樹脂層114を直接形成することができるため、ネガパターンを別途配設する工程を省略することができ、作業効率がさらに向上する。
【0114】
なお、本発明にかかる表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板、及びその製造方法は、各実施形態に限られるものではなく、例えば次のように変更することもできる。
【0115】
第1の実施形態では、金型14は、ねじ21によって平板20に固定されるが、金型14の固定態様は適宜に変更することができる。例えば平板20に予め金型14の外形に合わせた外枠を形成し、この外枠に金型を嵌入してもよい。また、適宜の接着剤等を用いて金型14と平板20とを直接固定してもよい。ただし、表面の微細構造により有効屈折率を変化させて所望の光学特性を実現する光学素子としては通常、反射防止機能を有する光学素子や偏光分離機能を有する光学素子のような多くの光学素子がある。したがって、各種光学素子の表面微細構造に対応した複数種のネガパターンを製作することが可能である。そこで、金型14(ネガパターン)を平板20に着脱可能すなわち交換可能に装着する機構を採用することが好ましい。この場合、ネガパターンの交換が容易であり、様々な異なる光学特性をもつ複数種の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の生産にも容易に対応することができる。
【0116】
各実施形態では、キャビティ26を区画する平板のうちの一方に表面微細構造をもつネガパターンを設けることとしたが、ネガパターンの配設態様は、所望とする光学特性に応じて適宜変更することができる。例えば図18に示すように、対向する2枚の平板20のそれぞれにネガパターンをもつ金型14を装着したセル27bを用いてキャスト板の製造を行ってもよい。この場合、両面に表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板が生成される。またこのことは、図16及び図17に例示した紫外線硬化樹脂層114からなるネガパターンを用いる第2の実施形態においても同様である。
【0117】
各実施形態では、錐形状(円錐状)の突起10bがマトリクス状に設けられたマスタ13(図2(c)参照)を使用した。突起10bの配列は任意であり、例えば円錐突起10bの列が斜めに配列された構造を有するマスタを使用することができる。この配列により、基板10の表面10aの露出面積がさらに少なくなることから、さらに良好な反射防止効果を備えたメタクリル系樹脂キャスト板を製造できると期待される。
【0118】
各実施形態では、メタクリル系樹脂キャスト板に形成される表面微細構造として、そのピッチが250nm〜300nmで深さが300nm〜500nmの円錐状の突起30aを有する構造とした。ちなみに、光の波長(λ)が400nm〜800nmの場合、要求されるピッチは、上記の波長範囲のうち最も短い波長である400nmの光に対し、屈折率(n)≒1.5として、(400/1.5)=266.…nmとなる。すなわち、基本的に250nm程度のピッチが確保できることで十分である。ただし、加工精度のさらなる向上が見込まれる場合には、ピッチは150nm〜300nmの範囲であることが望ましい。
【0119】
各実施形態では、セル27,27a(キャビティ26)への単量体混合物Mの注入に先立って、キャビティ26のネガパターン面に予め耐擦傷性や帯電防止性を実現する塗料組成物を塗布することとした。しかし、こうした塗料組成物の材料、添加量等は、所望する特性に応じて適宜変更することができる。例えば、塗料組成物として、メタクリル系樹脂よりも屈折率の高い材料が用いられる場合には、屈折率の違いによって、メタクリル系樹脂キャスト板30の表面微細構造のアスペクト比が擬似的に高められる。
【0120】
メタクリル系樹脂キャスト板30自体で耐擦傷性や帯電防止性等が確保可能である場合には、表面処理工程を省略することもできる。
【0121】
ネガパターンとしては、マスタとなる基板10の複数個分に相当する面積を有するパターンを用いてもよい。すなわち一般に、マスタ自体は量産性に乏しく、またその基板としても、シリコンや石英等が用いられることから、面積も自ずと限られたものとなる。ただし、最低1個のマスタがあれば、これを順次位置替え等することによって、金型14としてもより大面積のものを製作することは可能である。例えば図19に示すように、1個のマスタをもとに製作した金型14を平板(ガラス板)220上で複数連結してより大面積のネガパターンを製作することも可能である。このようなネガパターンを用いることによって、より大面積の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を製造することが可能となる。またこのことは、第2の実施形態についても同様であり、平板120上でマスタを順次位置替え等して紫外線硬化樹脂層114を硬化させることによっても、あるいは1個のマスタをもとに製作した紫外線硬化樹脂層114の硬化された透光性の板材(平板)を複数連結することによっても、大面積のネガパターンを製作することは可能である。
【0122】
第2の実施形態では、キャビティ26を区画する平板120の上面に直接、ネガパターンとしての紫外線硬化樹脂層114を形成したが、この紫外線硬化樹脂層114を透光性を有する他の板材等に別途形成し、この板材を平板120に装着してもよい。この場合、平板120に板材を装着する工程が追加されるものの、ここでも、それぞれ異なる光学特性を実現する複数種のネガパターンを着脱且つ交換自在な機構を通じてその装着を行うようにすることで、様々な光学特性に対応する複数種の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の生産に容易に対応することができる。
【0123】
各実施形態では、金型14から紫外線硬化樹脂層114を含む表面微細構造が転写される。しかし、半導体加工技術や電子ビーム加工技術により、平板20及び22にネガパターンを直接形成してもよい。この場合、セルの量産性は劣るものの、鋳込み重合としての極めて高い転写率とも相まって、より精度の高い表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の生成が可能ともなる。本発明にとって要は、ネガパターンの形成手法自体は任意である。
【0124】
十分な転写率が得られる範囲内であれば、単量体混合物Mとして、必ずしも完全な単量体に限らず、予備重合されたいわば多少の粘性を有する混合物を適宜用いることができる。
【0125】
第1の実施形態では、加熱処理を行うことで、セル27内に充填された単量体混合物Mの重合反応を加速させることとした。しかし、金型14と対向する平板22がガラスや石英等の透光性を有する材料からなる場合には、加熱処理に代えて、第2の実施形態にて採用した紫外線照射処理を行うことも可能である。
【0126】
第2の実施形態では、紫外線照射処理を行うことで、セル27a内に充填された単量体混合物Mの重合反応を加速させることとした。しかし、その条件にもよるが、第2の実施形態においても、第1の実施形態にて採用した加熱処理を適用してもよい。
【0127】
各実施形態では、重合反応させる工程として、加熱処理あるいは紫外線照射処理を採用してその重合反応を加速させることとした。生産性を考慮した場合、確かにこうした加速は有効であるが、本発明にとって、これらの加速処理及び開始剤の添加等は必須ではなく、適宜変更あるいは省略することもできる。
【0128】
各実施形態では、バッチ式キャスト法による鋳込み重合を採用した。しかし、本発明は、バッチ式に限られず、ベルトコンベア式の連続(エンドレス)キャビティ内でメタクリル系樹脂の単量体混合物を重合反応させて固化する、いわゆる連続セルキャスト式による鋳込み重合を採用することができる。ここで、この連続キャスト式の鋳込み重合を用いてメタクリル系樹脂キャスト板を製造する方法について説明する。この連続キャスト式の鋳込み重合は以下の工程A2〜D2を備える。
【0129】
A2:対向する2つの面の内少なくとも一方の面に、所望の表面微細構造に対応するネガパターンを配設したベルトコンベア式の連続セルを形成する。
B2:連続セルのキャビティ内にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する。
C2:単量体混合物を連続セル(鋳込み槽)内で重合反応させる。
D2:重合反応によって固化した樹脂を所望の寸法に切り出す。
【0130】
図20は連続キャスト式の鋳込み重合に使用される装置の一例を模式的に示す。この装置は、連続的に駆動される1対のエンドレスベルトELB1及びELB2を備え、エンドレスベルトELB1及びELB2は互いに所定の間隔L2を隔てて配置されている。エンドレスベルトELB1及びELB2は、例えばステンレス合金によって形成されている。エンドレスベルトELB1及びELB2の間に、図20に白抜きの矢印で示すようにメタクリル系樹脂の単量体混合物Mを連続的に注入する。ベルトELB1,ELB2の駆動に伴い、単量体混合物Mは重合ゾーン、熱処理ゾーン、冷却ゾーンへと順に移動する。図20に示されるように、エンドレスベルトELB2の全面には、所望とする表面微細構造に対応するネガパターンを有する薄い金属状箔状の金型214が連続して(エンドレスにて)配設されている。金型214には、基本的には金型14と同様に、例えばピッチが250nm〜300nm、高さが300nm〜500nmの突起を含むネガパターンが形成されている。また、エンドレスベルトELB1及びELB2の間の空間の両側は図示しない仕切りによって目張りされており、これにより鋳込み槽が形成されている。工程B2〜D2は、第1実施形態の工程B〜Dと同等である。連続セルキャスト式の鋳込み重合によれば、重合反応によって固化したメタクリル系樹脂のキャスト板30を取り出すべく、セル27,27aを分解する手間がないことから、精度の高い表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板をより大量に、且つより安価に製造することが可能となる。
【0131】
各実施形態では、共重合可能な他の単量体としてメタアクリル酸もしくはそのエステルを用いたが、多官能不飽和単量体を用いることもできる。多官能不飽和単量体は、分子内にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する化合物である。分子内にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する化合物としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどがある。これらの化合物は、それぞれ単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。かかる多官能不飽和単量体も、メチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効屈折率を変化させることにより所望の光学特性を実現する表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板であって、
前記表面微細構造に対応するネガパターンを有する少なくとも1つの内面を備えたセル内に、メタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する鋳込み重合によって形成されたメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項2】
前記単量体混合物が、メタクリル酸メチルを主剤とする単量体混合物である請求項1に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項3】
前記単量体混合物が、メタクリル酸メチルの単量体を50重量%以上と、該メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体とを含有する混合物である請求項2に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項4】
前記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体が、メタアクリル酸もしくはそのエステルである請求項3に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項5】
前記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体が、多官能不飽和単量体である請求項3に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項6】
前記単量体混合物がラジカル重合開始剤を含有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項7】
前記単量体混合物が光重合開始剤を含有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項8】
前記ネガパターンは当該メタクリル系樹脂キャスト板の表面処理用の塗料組成物が塗布された表面を有し、前記メタクリル系樹脂キャスト板は、前記鋳込み重合時に、前記塗料組成物が転写された表層を備える請求項1〜7のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項9】
前記表面微細構造のネガパターンに対する当該メタクリル系樹脂キャスト板の表面微細構造の転写率が94%以上である請求項1〜8のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項10】
前記表面微細構造は、アスペクト比が1以上で且つ、ピッチが150〜300nmの錐形状の突起がマトリクス状に設けられた反射防止構造である請求項1〜9のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板。
【請求項11】
有効屈折率を変化させて所望の光学特性を実現する表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を製造する方法であって、
前記表面微細構造に対応するネガパターンを有する少なくとも一つの内面を備えたセルを用意する工程と、
前記セル内にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する工程と、
前記単量体混合物を前記セル内で重合反応させる工程と、
前記重合反応によって固化した樹脂体を前記セルから取り出す工程と、
前記樹脂体を所望の寸法に切り出す工程とを備えることを特徴とする表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項12】
有効屈折率を変化させて所望の光学特性を実現する表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板を製造する方法であって、
各セルが前記表面微細構造に対応するネガパターンを有する少なくとも一つの内面を備えているベルトコンベア式の連続セルを含む鋳込み槽を用意する工程と、
前記鋳込み槽内にメタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する工程と、
前記単量体混合物を前記鋳込み槽内で重合反応させる工程と、
前記重合反応によって固化した樹脂体を所望の寸法に切り出す工程とを備えることを特徴とする表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項13】
前記単量体混合物はメタクリル酸メチルを主剤とする単量体混合物である請求項11または12に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項14】
前記単量体混合物は、メタクリル酸メチルの単量体が50重量%以上と、該メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体とが含まれる混合物である請求項13に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項15】
前記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体は、メタアクリル酸もしくはそのエステルである請求項14に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項16】
前記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体は、多官能不飽和単量体である請求項14に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項17】
前記単量体混合物はラジカル重合開始剤を含有しており、前記重合反応させる工程は、前記単量体混合物の重合反応を加速するための加熱処理工程を含む請求項11〜16のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項18】
前記単量体混合物は光重合開始剤を含有しており、前記重合反応させる工程は、前記単量体混合物の重合反応を加速するための紫外線照射処理工程を含む請求項11〜16のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項19】
前記メタクリル系樹脂の単量体混合物を注入する工程に先立ち、前記ネガパターンを有する少なくとも一つの内面に、前記メタクリル系樹脂キャスト板の表面処理用の塗料組成物を塗布する工程をさらに備える請求項11〜18のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項20】
基板の表面に前記表面微細構造のパターンを有するマスクを形成する工程と、
前記マスクを用いて前記基板をエッチングして、前記表面微細構造を有するマスタを製作する工程と、
前記マスタを用い、前記ネガパターンを有する金型を電気鋳造によって製作する工程とをさらに備え、前記セルを用意する工程は、前記金型を用いて、前記セルの前記少なくとも1つの内面を提供することを含む請求項11〜19のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項21】
基板の表面に前記表面微細構造のパターンを有するマスクを形成する工程と、
前記マスクを用いて前記基板をエッチングして、前記表面微細構造を有するマスタを製作する工程と、
前記マスタと透光性板材との間の隙間に紫外線硬化樹脂を注入する工程と、
前記マスタと前記透光性板材とを当接させた状態で、前記透光性板材を通して紫外線を前記紫外線硬化性樹脂に照射して、前記紫外線硬化樹脂を硬化させて、前記ネガパターンを有する樹脂層を形成する工程とをさらに備え、
前記セルを用意する工程は、前記樹脂層を用いて前記セルの前記少なくとも1つの内面を提供することを含む請求項11〜19のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項22】
前記セルを用意する工程は、前記マスタの複数個分に相当する面積を有する前記金型または前記樹脂層を用いて前記少なくとも1つの内面を提供することを含む請求項20または21に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項23】
前記セルを用意する工程は、前記ネガパターンを有する少なくとも一つの内面を提供する部材を、前記セルに着脱可能に取り付けることを含む請求項20または22に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項24】
前記マスタを製作する工程は、アスペクト比が1以上で且つ、ピッチが150〜300nmの錐形状の突起がマトリクス状に配列された表面を形成することを含む請求項20〜23のいずれか一項に記載の表面微細構造をもつメタクリル系樹脂キャスト板の製造方法。
【請求項25】
光学特性を備えた光学樹脂板であって、
前記光学特性を発揮する表面微細構造の形成された少なくとも一つの表面を有する、均一な組成を有する樹脂基板を備え、前記表面微細構造は、150〜300nmのピッチで形成された複数の錐形状突起を含み、各錐形状突起のアスペクト比が1以上である光学樹脂板。
【請求項26】
更に、前記複数の錐形状突起を覆うように前記樹脂成形体の表面に付与された皮膜を備える請求項25に記載の光学樹脂板。
【請求項27】
前記皮膜が前記複数の錐形状突起を保護する耐擦傷性皮膜である請求項26に記載の光学樹脂板。
【請求項28】
前記皮膜が前記キャスト板の帯電を防止する導電性微粒子を含む請求項26または27に記載の光学樹脂板。
【請求項29】
前記樹脂基板はメタクリル系樹脂からなる請求項25に記載の光学樹脂板。
【請求項30】
前記メタクリル系樹脂がメタクリル酸メチルを含む重合体である請求項29に記載の光学樹脂板。
【請求項31】
前記メタクリル系樹脂がメタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体を含む請求項29に記載の光学樹脂板。
【請求項32】
前記光学特性が反射防止特性である請求項25に記載の光学樹脂板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【国際公開番号】WO2005/022208
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513425(P2005−513425)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011921
【国際出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(597051757)名阪真空工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】