説明

表面計測方法及び装置

【課題】計測対象物の平面部と凹部とを正確に分離可能な表面計測装置を実現する。
【解決手段】計測点読取処理110が読み取った計測点データは範囲外点排除処理111で範囲外データが排除される。最頻点抽出処理112は抽出した計測点データから最小二乗法で直線を作成し計測点と直線との差を作成する。ヒストグラムを作成し第1の閾値と平均値を算出し閾値と平均値とが同一とみなせるかどうかを判定する。同一ではない場合、閾値以下の計測データを排除し、直線近似から再処理を行い、閾値と平均値とを再度算出する。算出した閾値と平均値とが同一とみなせるまで処理を繰り返し実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本説明は、対象物の表面を計測する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工後の対象物が加工指示値を満足するか否かを判断するために加工後の表面寸法を測定するために使用される表面計測方法及び装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、加工後の対象物の凹面計測結果に大きな加工誤差が生じている場合、成形面の誤差分布関数を用いて、この関数から所定値以上逸脱した測定点を除去して、誤差量を推測し、補正加工の工具軌跡を出力する技術が記載されている。
【0004】
このように、表面に凹部が形成される対象物の場合、凹部を除去し、その他の平面部の加工精度を確認する必要がある。
【0005】
従来、平面部と凹部とを分離する方法として、非特許文献1及び非特許文献2に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−136937号公報
【非特許文献1】Otsu, Nobuyuki:A Threshold Selection Method From Gray‐Level Histograms, IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics, Vol. SMC-9,No.1,pp.62‐66,1979
【非特許文献2】大津展之:判別および最小2乗規準に基づく自動しきい値選定法,電子通信学会論文誌D, Vol.63, No.4, pp.349‐356,1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献に記載の判別分析2値化法は、画像処理手法の一つで、カメラで撮影した画像から背景を分離するための閾値を自動的に定める方法として提案されている。
【0008】
判別分析2値化法を計測対象物の平面部と凹部とを分離する方法に適用する場合を考慮してみる。
【0009】
最初に、対象物から得られた複数の計測データから最小二乗法で近似直線を作成する。次に、近似直線と計測データとの差を作成する。その後、当該差の最小値と最大値を作成し、最小値と最大値の間を区間分割し、当該区間内に入る当該差の個数を定める。この区間番号を横軸とし、個数を縦軸としたヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムから判別分析2値化法におけるクラス間分散を作成する。
【0010】
次に、クラス間分散の最大値を閾値とする。この閾値は区間番号であるので、区間番号に対応する差の値を定め、近似直線と計測データとの差が閾値から定めた差以上かを判別し、計測データを分離する。このようにして、平面部と凹部とを分離することができる。
【0011】
しかしながら、上記方法を、平面部の近辺に小さな凹部(孔部分)が形成されている場合の対象物に適用すると、ヒストグラムに対するクラス間分散の最大値が閾値となるため、近似直線と上記凹部の計測データとの差は、閾値より小となり、孔部分を除去することができない。
【0012】
また、判別分析2値化法を、クラス間分散が大局的に正規分布となるような計測点に適用すると、正規分布の中央部分に閾値を設定してしまうため、平面部でありながら、半分以上の計測データが分離されてしまうという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、計測対象物の平面部と凹部とを正確に分離可能な表面計測方法及び装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0015】
計測対象物の表面の平面部と凹部とを分離する表面計測方法及び装置であり、計測対象物表面の位置データに従って、最小二乗法により近似線を算出し、算出した近似線と計測データとの距離に対応するクラス番号を有する複数のクラスに分割し、分割したクラスに入る上記算出した近似線と計測データとの距離値の個数を算出し、クラス間分散が最大のクラスのクラス番号を第1の閾値とし、クラス番号とそのクラスに入る個数とから全クラスの平均値を算出し、第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内となるまで、第1の閾値以下の計測データを除外して得られた計測データについて、再度、上記近似線、上記クラス、上記クラス間分散を算出して、第1の閾値と平均値とを算出し、平均値との差が一定値以内となった第1の閾値に対応する計測データを使用して計測対象物平面部のデータとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計測対象物の平面部と凹部とを正確に分離可能な表面計測方法及び装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1である表面計測装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した表面計測装置の計測点分離処理を実行する計算機の内部構成図である。
【図3】本発明の実施例1における計測点分離方法の処理フローチャートである。
【図4】本発明が適用される計測データの、近似線、ヒストグラム、閾値を説明するための一例を示す図である。
【図5】本発明が適用される計測データの、近似線、ヒストグラム、閾値を説明するための他の例を示す図である。
【図6】本発明が適用される計測データの、近似線、ヒストグラム、閾値を説明するためのさらに他の例を示す図である。
【図7】本発明が適用される計測データの、近似線、ヒストグラム、閾値を説明するためのさらに他の例を示す図である。
【図8】本発明における計測点データ、頻度データ、直線データ、しきい値1データを示すデータ構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例である表面計測装置の概略構成図、図2は図1の計測点分類処理108を実施する計算機200の構成図、図3は図1の計測点分類処理108の処理を示すフローチャート、図4〜図7は計測点と近似曲線およびヒストグラムの関係を示す説明図、図8は計測点の分類処理で用いるデータ構造を示す説明図である。
【0020】
なお、本発明の実施例においては、計測対象物は、金属加工物等の光を反射する対象物である。そして、加工後の対象物が、加工指示値を満足するか否かを判断するために、加工後の表面位置寸法(位置データ(座標データ))を測定するために使用される表面計測装置の実施例につき説明する。
【0021】
図1において、101はセンサ、102はセンサから照射するライン光(計測光)、103は計測対象物、104はライン光102が計測対象物103に照射されたときにできる拡散反射光、105はセンサ101に内蔵されたカメラ(反射光撮像手段)の視野、106はセンサ101に内蔵されたカメラからの画像信号を計測点に変換するコントローラ(計測点変換手段)、107は計測点を格納する記憶装置、108は計算機で実行する計測点分類処理機能ブロックである。
【0022】
図1において、センサ101は計測対象物103の上方に配置され、計測対象物103の上面を撮影可能な状態になっている。計算機200は、図2に示すように、図1のコントローラ106や図示しない他の計算機にデータを送受信するための通信装置201、マウスやキーボードなどの入力装置202、グラフィックディスプレイなどの表示装置203、ハードディスクや外付けメモリなどの記憶装置204、命令データを蓄積するためのメモリ205、入力装置202からの入力データに従って通信装置201、記憶装置204、メモリ205へのデータ授受、表示装置203への表示データを送付するための命令を実行する中央処理装置206を備える。センサ101からスリット光102を計測対象物103に照射し、スリット光102の拡散反射光104をセンサ101が内蔵するカメラで読み取り、当該画像をコントローラ106が画像処理した後、3角測量方式などを用いて3次元空間の点に変換することで作成される。
【0023】
計算機200が実行する計測点分類処理108の動作を図1〜図8を用いて説明する。
【0024】
計算機200が入力装置202から処理実行命令を入力すると、計測点読取処理110により記憶装置107に格納された計測点データを読み取る(図3のステップ301)。計測点読取処理110から読み取った計測点データは、範囲外点排除処理111により、計測範囲外データが排除される(図3のステップ302)。
【0025】
ここで、計測範囲外データとは、非数値データ“NaN”、センサ101の仕様により定まり予め記憶装置107に格納しておいた計測範囲上限データ“1000.0”および計測範囲下限データ“−1000.0”である。
【0026】
排除処理は、図8に示す計測点データの識別子に排除と設定することである。
【0027】
より具体的には、識別子を論理データで構成し、採用を示す“True”、排除を示す“False”を設定する。なお、識別子は論理データに限定されるものではなく、整数、実数、文字列などで採用と排除が区別できる値であれば良い。
【0028】
次に、最頻点抽出処理(計測データ抽出処理手段)112により、読み取った計測点を必要な計測点に分離する(図3のステップ303〜ステップ308)。
【0029】
次に、精度向上処理(精度向上処理手段)113により、予め設定し記憶装置107に格納しておいた閾値2により計測点を分類する(図3のステップ310〜ステップ312)。
【0030】
なお、閾値2は、例えば、計測対象物の仕様、諸元等により定まる最大許容分散値である。このため、閾値2は計測対象物毎に予め定め記憶装置107に格納することとしている。
【0031】
最後に、計測点格納処理114により、分離した計測点を記憶装置107に格納する(図3のステップ313)。
【0032】
次に、本発明の特徴である最頻点抽出処理112および制度向上処理113の動作を図3のフローチャートに従い詳細に説明する。
【0033】
最初に、最頻点抽出処理112を図3のフローチャートのステップ303〜ステップ308を用いて説明する。
【0034】
最頻点抽出処理112は、範囲外点排除処理111によって、計測点の採用・排除を識別する識別子に、採用・排除を示す識別符号が設定された計測点データを入力とする。
【0035】
最初に、ステップ303で、計測点データから採用を示す識別符号が設定された計測点データを抽出し、抽出した計測点データから最小二乗法で曲線を作成する。
【0036】
本発明の一実施例では、説明を簡単にするため当該曲線を1次曲線(直線)とする。なお、当該曲線は、最小二乗法における正規方程式が決定できることが前提であるが、N次多項式曲線、三角関数による曲線、スプライン曲線等を使用してもかまわない。
【0037】
最小二乗曲線の定義式を(数式1)に示す。
【0038】
【数1】

【0039】
上記(数式1)において、Piはi番目の採用された計測点であり、計測点が2次元ならP=[X,Y]で表すベクトル、3次元ならP=[X,Y,Z]で表すベクトル、Q(t)は曲線上のパラメータtにおける点である。
【0040】
ここで、曲線Q(t)は、例えば、1次多項式なら(数式2)に示す式であり、(数式2)におけるQが1次多項式における2次元または3次元の係数ベクトルである。
【0041】
【数2】

【0042】
曲線は、数式(2)で作成した係数ベクトルとパラメータtにより(数式3)で表す。
【0043】
例えば、2次元の直線の場合なら(数式3)において、Lを2とし、tを変化させて直線上の点を定める。
【0044】
【数3】

【0045】
次に、ステップ304で計測点と当該曲線との差を作成する。この差は曲線に対してプラスマイナスの符号を持つ。距離がプラスとは、曲線の上方を表し、マイナスとは曲線の下方を表す。例えば、図4で言えば、最小二乗曲線502に対して上側の計測点501との距離がプラスであり、下側がマイナスである。
【0046】
長さ(計測点と当該曲線との差(距離L))の計算方法を(数式4)、(数式5)に示す。
【0047】
【数4】

【0048】
【数5】

【0049】
長さLは、最初に曲線と計測点の最短点の曲線パラメータtを(数式4)で求め、その曲線パラメータtを(数式5)に代入することで得る。ここで、(数式5)は曲線が2次元の平面上の場合であり、nは当該平面の法線である。
【0050】
なお、曲線が3次元空間にある場合は、(数式6)で距離Lを求める。
【0051】
【数6】

【0052】
(数式6)において、Cは、曲線の下方にある点(計測データ点)である。
【0053】
次に、ステップ305でヒストグラムを作成する。
【0054】
最初に、ステップ304で求めた計測点と曲線の距離の差の最大値と最小値とを取り出す。最大値と最小値は、例えば、(数式5)あるいは(数式6)で求めた距離を昇順に並べ替え、並べ替えた距離の最初と最後の値を取り出せば良い。
【0055】
他の方法としては、(数式5)あるいは(数式6)で求めた距離の最初の値を最大値と最小値の初期値として設定し、当該最小値より小さい距離が現れたときに最小値を入れ替え、当該最大値より大きい距離が現れたときに最大値を入れ替えるといった処理を最後まで繰り返してもよい。
【0056】
距離の最大値LMax、最小値LMinを(数式7)に示す。
【0057】
【数7】

【0058】
次に、区間毎の最小値と最大値を(数式8)で決定する。
【0059】
【数8】

【0060】
(数式8)において、Wは予め定められた区間数(ヒストグラムの横軸の区間数)であり記憶装置107に格納されている。kは0からW−1まで変化する係数である。
【0061】
(数式8)に示すように、距離の最大値LMax、と最小値LMinとの差を区間数Wで除することにより区間幅を作成し、当該区間幅に係数kを乗じて、最小値LMinを加えることにより、区間毎の最小値Lk,Minと最大値Lk,Maxを決定する。
【0062】
次に、区間毎の頻度を作成する。
【0063】
頻度はその区間に入る距離を有する計測データ点数であるから、最小値Lk,Min以上であり、最大値Lk,Max以下となる計測点を判別し、その個数を決定すればよい。
【0064】
図4の503、513はこのようにして作成したヒストグラムの例である。
【0065】
次に、ステップ306で第1の閾値(閾値1)を作成する。
【0066】
ステップ305で作成した区間Iにおける頻度をnとする。ここで、Iは1〜Wまで変化する。
【0067】
最初に、(数式9)を用いて頻度を正規化する。
【0068】
【数9】

【0069】
頻度nを正規化するのは、以下に示す(数式10)〜(数式13)を簡単にするためであり、(数式10)〜(数式13)の正規化した頻度Pを(数式9)の右辺で置き換えて記述すれば、頻度を正規化する必要はない。
【0070】
正規化した頻度における全平均レベルμを(数式10)とする。
【0071】
【数10】

【0072】
クラスIにおける分散であるクラス間分散σ(I)は(数式11)となる。
【0073】
【数11】

【0074】
(数式11)において、ω(I)、μ(I)は(数式12)、(数式13)で表す関数である。
【0075】
【数12】

【0076】
【数13】

【0077】
第1の閾値1は(数式11)の区間の間の分散が最大となる区間Iで定める。
【0078】
(数式11)において、分母が0となる場合は、区間の間の分散も0となる。これは、計算機に処理を実装する際の0割りを回避するために考慮する必要がある。
【0079】
上記(数式9)から(数式13)で記述した処理を実行することで閾値1を算出する。
【0080】
次に、ステップ307で、ステップ306で求めた閾値1と平均値とが、同一とみなせるかどうかを判定する。閾値1と後述する平均値とが同一とみなせる範囲は、全体の区間数や計測点の分布度合いに依存する量であり、予め設定して記憶装置107に格納しておく。
【0081】
なお、本実施例1で上記同一とみなせる範囲は、本発明による処理を実行可能な表面計測装置で多数の計測点サンプルを実行した結果、全体区間数の5%に入る場合と設定する。
【0082】
ステップ307で、閾値と平均値とが同一とみなせると判定された場合、精度向上処理113を実行する。
【0083】
ステップ307を設けたことにより、後述する図5に示すような頻度が正規分布に近い状態の計測点601が入力された場合に、閾値の区間Iと平均値とが同一と判定されるので、計測点の排除が実行されない。このため、半分以上の計測点が分離されてしまう問題を防ぐことができる。
【0084】
なお、正規分布状の頻度が入力された場合に、しきい値の区間Iと平均値とが同一となることは、本発明による処理を実行可能な表面計測装置で多数の計測点サンプルを実行した結果から得た事柄である。
【0085】
ステップ307で、閾値1と平均値とが異なると判定された場合、ステップ308の処理を実施する。
【0086】
ステップ308では、閾値1以下の計測データを排除し、閾値1を越える計測データから分離する。そして、ステップ303に戻り、ステップ303〜308が実行される。
【0087】
ステップ306においては、閾値1は、(数式11)で示すように区間番号Iで与えられる。よって、(数式8)の係数kに閾値1である区間番号Iを設定し、区間の最小値LI,Minと最大値LI,Maxとを作成する。
【0088】
そして、(LI,Min+LI,Max)/2で平均値を求め、閾値1を距離閾値とする。
【0089】
次に、ステップ307で閾値1と平均値とが同一(両者の差が所定範囲内)か否かが判断され、同一でなければ、ステップ308において、計測点の距離と距離閾値1とを比較し、距離閾値1以下の距離を持つ計測点に対して、図8に示す計測点データの識別子に排除と設定する。設定後、上述と同様にして、ステップ303〜308の処理を繰り返す。
【0090】
このように、ステップ303からステップ308の処理を行うことにより、図4に示す計測点501や計測点511のヒストグラム503や513を閾値1により分離し、最終的に図5のヒストグラム603のような正規分布に近いヒストグラムを作成することが可能になる。このため、図4に示した計測点501や計測点511から孔部分を排除することができる。
【0091】
また、ステップ307において、閾値1と平均値とが一致するかどうかの関係は、クラス分離度のように計測点の分布状態により変化する量ではないため、ステップ303からステップ308の繰り返し処理を確実に終了させることが可能になる。このため、自動的な分離処理が実現可能になる。
【0092】
図6は、計測点701、近似直線702に対してステップ303からステップ309の処理を実行した結果を示す図である。図6のヒストグラム703からクラス間分散704を作成し、その最大値705を閾値1として、平均値706を用いて、計測点701を分離する。これにより、正規分布状のヒストグラムを持つ計測点に分離することが可能になり、計測点701に生じていたV字状の孔データ(図6の右側部分の計測データ701)を排除することが可能になる。
【0093】
次に、図1に示した精度向上処理113を、図3のフローチャートに示すステップ310からステップ312を用いて説明する。
【0094】
ステップ310において、最頻点抽出処理112(ステップ303〜ステップ308)で抽出した計測データに対し、図5に示す平均値605からヒストグラム603の両端までの長さを算出する。
【0095】
平均値605は、(LI,Min+LI,Max)/2であり、距離の最大、最小はLMin、LMaxであることから、(数式14)のように、平均値605からヒストグラム603の両端までの長さLLeft、LRightを作成する。
【0096】
【数14】

【0097】
次に、ステップ311で、長さLLeft、LRightが、予め設定し記憶装置107に設定しておいた第2の閾値2より小さいか否かを判定する。
【0098】
長さLLeft、LRightが閾値値2より小さい場合は、ステップ313で計測点を記憶装置107に格納し、処理を終了する。
【0099】
ステップ311で、長さLLeft、LRightが閾値2より大きい場合は、ステップ312を実行し、閾値2以下の計測点を排除する。
【0100】
つまり、最初に、距離LLeft,LLightの内、小さい方をLthredとしておき、次に、Lthredと閾値2とを比較し、小さい方をLthredと定義し直す。
【0101】
続いて、(数式15)に示すように平均値にLthredをプラスしたものとマイナスした閾値を作成する。
【0102】
【数15】

【0103】
最後に、(数式15)で作成した閾値の間(図8の閾値808、809の間)に入らない距離を持つ計測点を判別し、図8に示す計測点データの識別子に排除と設定し、ステップ313の計測点格納を実行する。
【0104】
以上のように、ステップ310からステップ312の処理を実行することによって、図7の計測点803に示す幅を持った計測点から、閾値2に従った幅を持つ計測点に分離することができるので、カメラや計測対象物に依存して大きくなる振動幅を小さくすることができる。
【0105】
なお、上記区間、つまり、クラスは、算出した距離の最大値と最小値との間を予め定めた分割数で、上記距離に対応するクラス番号を有する複数のクラスと定義することができる。
【0106】
また、平均値とは、クラス番号とそのクラスに入る個数とを乗算し、全クラス分を加算した数を全個数で除算した値と定義することができる。
【0107】
次に、図4〜図7を参照して、本発明を適用しない場合の例について説明する。
【0108】
図4の左下は判別分析2値化法を図4の左上の計測点501に適用した例である。図4に示した例では、最初に、計測点501から最小二乗法で近似直線502を作成する。次に、直線502と計測点501との差を作成する。
【0109】
その後、直線502と計測点501との差の最小値と最大値を作成し、最小値と最大値の間を複数の区間に分割し、各区間内に入る上記差の個数を定める。分割した区間に番号を付けて、それを横軸とし、上記差の個数を縦軸としたヒストグラム503を作成し、ヒストグラム503から判別分析2値化法におけるクラス間分散504を作成する。
【0110】
次に、クラス間分散504の最大値505を取り出して閾値とする。この閾値は区間番号であるので、区間番号に対応する差の値を定め、計測点501と近似直線502との差が閾値から定めた差以上か否かを判別し、直線502より上方の上記差未満である計測点501を分離する。このようにして、上部の計測点のみを分離することができる。
【0111】
ここで、図4の右上に示すような孔部分517を有する計測データ511に判別分析2値化法を単に適用すると、ヒストグラム513に対するクラス間分散514の最大値515が閾値となる。この場合、計測データ517は、閾値から定めた差未満であるため、計測点511に計測点517に示す孔部分が残ってしまう。
【0112】
つまり、計測対象物の平面部分を特定し、その加工精度を確認しようとする場合、平面部分の近辺に設計範囲内の微小な孔部分が存在するときには、この孔部分も、計測データ511の一部と判断してしまう。このため、平面部の計測値の精度が低下する可能性がある。
【0113】
また、判別分析2値化法を、図5に示すような大局的に正規分布となるような計測点に適用すると、クラス間分散604の中央部分に閾値605を設定してしまうため、近似直線602より下方の半分以上の計測点が除去されてしまい、平面部の計測値の精度が低下する可能性がある。
【0114】
クラス分離度は絶対的な量ではなく、計測点の分布度合いにより変化する。例えば、図4に示す分布の場合、クラス分離度は、最初が0.978であり、このクラス分離度により決定した閾値で分離した後がクラス分離度0.764となり、次に決定した閾値で分離した後が0.547となり、このときに孔部517が除去された計測点が得られる場合がある。
【0115】
一方、図6に示す計測データの分布の場合、クラス分離度は、最初が0.633、次が0.621となり、このときに決定した閾値で分離した後で、V字型の孔部が除去された計測データが得られる場合がある。
【0116】
このように、クラス分離度は計測点の分布状態により変動し、一般に、計測点がどのような分布状態で与えられるかは予想できない。このため、孔部を除去するための繰り返しを終了する明確な、指標が定まらず、自動的な分離処理が困難である。
【0117】
これに対して、本発明においては、図3のステップ303〜308に示すように、判別2値化法により、閾値と平均値とを算出し、閾値と平均値とが一定差以内となるまで、閾値以下の計測データを除去し、除去した計測データを使用して、閾値と平均値とを算出し、閾値と平均値とが一定差以内となるまで処理を繰り返す。
【0118】
これにより、処理の繰り返し終了を明確に判断でき、自動的な分離処理が可能となる。
【0119】
さらに、本発明においては、図3のステップ310〜312に示すように、ステップ303〜308により抽出された計測データに対して、許容最大分散値により決定される閾値2を用いて、計測データを選別しているので、表面計測精度をさらに向上することができる。
【0120】
なお、図4〜図7に示したグラフは、表示装置203に表示される。また、図3に示した処理を実行した結果のデータを表示装置203に表示することができる。
【符号の説明】
【0121】
101・・・計測センサ、102・・・ライン光、103・・・計測対象物、104・・・散乱光、105・・・カメラ視野、106・・・計測センサ用コントローラ、107・・・記憶装置、108・・・計測点分類処理部、110・・・計測点読取手段、111・・・範囲外点排除手段、112・・・最頻点抽出手段、113・・・精度向上処理手段、114・・・計測点格納処理手段、200・・・計算機、201・・・通信装置、202・・・入力装置、203・・・表示装置、204・・・記憶装置、205・・・メモリ、206・・・中央処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の表面の平面部と凹部とを分離する表面計測方法において、
計測対象物の表面部の位置を計測し、計測したデータに従って、最小二乗法により近似線を算出し、
算出した近似線と計測データとの距離を算出し、
算出した距離の最大値と最小値との間を予め定めた分割数で、上記距離に対応するクラス番号を有する複数のクラスに分割し、分割したクラスに入る上記算出した近似線と計測データとの距離値の個数を算出し、
上記複数のクラスのクラス間分散を算出して、クラス間分散が最大のクラスのクラス番号を第1の閾値とし、クラス番号とそのクラスに入る個数とから全クラスの平均値を算出し、
上記第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内か否かを判断し、
上記第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内ではない場合には、上記第1の閾値以下の計測データを除外して得られた計測データについて、再度、上記近似線、上記クラス、上記クラス間分散を算出して、第1の閾値と平均値とを算出して、第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内か否かを判断し、
上記第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内となるまで、第1の閾値と平均値とを算出し、
上記平均値との差が一定値以内となった第1の閾値に対応する計測データを使用して計測対象物平面部のデータとすることを特徴とする表面計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面計測方法において、
上記平均値との差が一定値以内となった第1の閾値に対応する計測データに対して、第2の閾値である予め定めた最大許容分散値外の計測データを除外し、第2の閾値内の計測データを使用して計測対象物平面部のデータとすることを特徴とする表面計測方法。
【請求項3】
計測対象物の表面の平面部と凹部とを分離する表面計測装置において、
計測対象物に計測光を照射し、計測対象物からの反射光を撮像するセンサと、
上記センサにより撮像された画像を計測点に変換する計測点変換手段と、
上記計測点変換手段により変換された計測データについて、最小二乗法により近似線を算出し、算出した近似線と計測データとの距離を算出し、算出した距離の最大値と最小値との間を予め定めた分割数で上記距離に対応するクラス番号を有する複数のクラスに分割し、分割したクラスに入る上記算出した近似線と計測データとの距離値の個数を算出し、上記複数のクラスのクラス間分散を算出して、クラス間分散が最大のクラスのクラス番号を第1の閾値とし、クラス番号とそのクラスに入る個数とから全クラスの平均値を算出し、上記第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内か否かを判断し、上記第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内ではない場合には、上記第1の閾値以下の計測データを除外して得られた計測データについて、再度、上記近似線、上記クラス、上記クラス間分散を算出して、第1の閾値と平均値とを算出して、第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内か否かを判断し、上記第1の閾値と上記平均値との差が一定値以内となるまで、第1の閾値と平均値とを算出し、上記平均値との差が一定値以内となった第1の閾値に対応するデータを計測データとする計測データ抽出処理手段と、
を備えることを特徴とする表面計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表面計測装置において、
上記平均値との差が一定値以内となった第1の閾値に対応する計測データに対して、第2の閾値である予め定めた最大許容分散値外の計測データを除外し、第2の閾値内の計測データを使用して計測対象物平面部のデータとする精度向上処理手段をさらに備えることを特徴とする表面計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169742(P2011−169742A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33747(P2010−33747)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】