説明

被検者の情報取り違い防止システム

【課題】撮像装置に記憶された患者に関する情報を、後で得られたその患者の個人情報に、患者に識別装置を装着することなく並びに他の患者情報と取り違えることなく更新できる被検者取り違い防止システムを実現する。
【解決手段】撮像装置14はRISサーバ13から検査情報を受け取り、生体情報が含まれていれば、記憶装置14mのデータベースに保存してある患者情報の中で生体情報を持っているものを検索する。生体情報を持つ患者情報が存在している場合、RIS13から伝送された生体情報と記憶装置14mに記憶された情報とを比較する。同一の生体情報である場合、RIS13の検査情報により記憶装置14mに記憶されている患者の情報を更新する。これにより、患者に識別装置を装着することなく並びに他の患者情報と取り違えることなく更新できる被検者取り違い防止システムを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院における被検者の情報の取り違いを防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院内の、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、X線画像診断装置等の撮像装置において、事故等で緊急に患者(被検者)を撮像する必要がある際、患者の意識が無く、更に患者の身元を表すものが、その患者の近辺に無い場合等がある。
【0003】
この場合、病院では患者の撮像をする前に、患者の個人情報を調査している時間が無いために、患者の個人情報を入力せずに撮像を行なうことがある。
【0004】
この場合、病院側では撮像装置で撮った情報を管理するために、患者が回復した後、または患者の親族や知り合い等から患者の個人情報を聞いて、病院関係者がHIS(病院情報システム)に登録を行なう。
【0005】
HISに登録された情報は、MRI等による検査情報としてRIS(放射線情報システム)へ送られる。そして、その情報により、撮像装置で撮った情報が更新される。
【0006】
この時、HISからRISに送信された患者の個人情報と医療撮像装置内の患者情報とは、互いに対応させるものが無いために、撮像装置の使用者(エンドユーザ)が、一件ずつ、撮像装置に登録されている情報とRISに登録されている情報とを比較する。そして、撮像装置に登録されている情報を、RISに登録した情報を更新させなくてはならない。
【0007】
ここで、個々の患者を識別するために、患者毎の識別信号を発生する識別装置、例えば、リストバンドのような形状の装置として、患者者に装着させる技術が特許文献1に記載されている。
【0008】
この特許文献1記載の技術に寄れば、この患者に装着されている識別装置からの識別信号を無線検査ユニットが検出し、その識別信号が示す患者に関する情報がディスプレイに表示される。
【0009】
【特許文献1】特開2004−178599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、HISに登録された患者の個人情報により撮像装置に保存されている患者情報を更新する場合、HISに患者の個人情報を登録する者と、撮像装置の情報を更新する使用者は異なることが多い。
【0011】
そのため、緊急に来院した患者の撮像装置による撮像後、その患者の個人情報が、HISに登録されたならば、その旨を、逐次撮像装置のエンドユーザに連絡する必要がある。そして、連絡を受けたエンドユーザは、その連絡に基づいて、撮像装置内の緊急来院した緊急患者の個人情報を1件ずつ更新させなければならない。
【0012】
これらの作業により、HIS側と撮像装置側との連絡ミスや、撮像装置で情報の更新を行なっているエンドユーザによって、撮像した情報を誤った情報に更新されてしまうこと等が発生することが考えられる。
【0013】
また、上記更新作業は、エンドユーザ等の人手により行なわれており、自動で行うことはなされていない。
【0014】
また、検査においても同姓同名の患者が同じ日に検査を行う場合は検査前に姓名を判別し、さらに患者の生年月目を用いて患者の判別を行なう必要があるが、同姓同名、同一誕生目の患者が存在しないわけでは無いので患者を誤認する可能性がある。
【0015】
そこで、特許文献1記載の技術に基づき、緊急患者にリストバンド形状の識別装置を装着しておき、この識別装置が発生する識別信号と共に、後日判別した緊急患者の個人情報をHIS及びRISを介して撮像装置に送信することが考えられる。
【0016】
しかしながら、その場合、患者は、リストバンド形状となってはいるものの、識別装置を装着しておかねばならず、患者にとって煩わしい識別システムとなってしまう。
【0017】
本発明の目的は、撮像装置に記憶された患者に関する情報を、後に得られたその患者の個人情報に、患者に識別装置を装着することなく、並びに他の患者情報と取り違えることなく、更新することが可能な被検者取り違い防止システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0019】
(1)被検者の情報取り違い防止システムにおいて、被検者から生体情報を取得する第1の生体情報取得手段と、被検者の個人情報及び検査情報と、第1の生体情報取得手段からの生体情報を記憶する第1の記憶手段を有する第1の情報管理手段と、被検者を撮像するとともに、被検者の撮像情報、生体情報を管理する撮像手段と、被検者から生体情報を取得する第2の生体情報取得手段と、上記撮像手段からの被検者の個人情報及び検査情報と、第2の生体情報取得手段からの生体情報を記憶する第2の記憶手段を有する第2の情報管理手段とを備え、上記撮像手段は、上記第1の情報管理手段から、被検者の個人情報及び生体情報が伝送されたとき、第2の記憶手段に記憶された生体情報の中に、伝送された生体情報と一致するものがあるか否かを判断し、一致するものがある場合には、その一致した生体情報に対応する個人情報として、上記伝送された個人情報を格納する。
【0020】
(2)好ましくは、上記(1)において、上記撮像手段は、上記第1の情報管理手段から、被検者の個人情報及び生体情報が伝送されたとき、第2の記憶手段に記憶された生体情報の中に、伝送された生体情報と一致するものがあるか否かを判断し、一致するものがない場合には、その被検者は、撮像情報が第2の記憶手段の記憶されていないことを警告表示する。
【0021】
(3)また、好ましくは、上記(1)、(2)において、上記生体情報は、被検者の指紋であり、上記第1及び第2の生体情報取得手段は、指紋を読み取る。
【0022】
(4)また、好ましくは、上記(1)、(2)において、上記生体情報は、被検者の虻彩であり、上記第1及び第2の生体情報取得手段は、虹彩を読み取る。
【0023】
(5)また、好ましくは、上記(1)、(2)において、上記生体情報は、被検者の静脈形状であり、上記第1及び第2の生体情報取得手段は、静脈形状を読み取る。
【0024】
緊急で来院した患者(被検者)の場合、個人情報が無いことが多い。この場合、緊急患者の撮像情報と、生体情報とを撮像手段の記憶手段に記憶しておく。そして、その後、その緊急患者の個人情報が判明した場合、その緊急患者の生体情報を取得する。取得した生体情報と、既に記憶された生体情報とを比較し、一致する生体情報に対応する記憶エリアに判明した個人情報を格納する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、撮像装置に記憶された患者に関する情報を、後に得られたその患者の個人情報に、患者に識別装置を装着することなく、並びに他の患者情報と取り違えることなく、更新することが可能な被検者取り違い防止システムを実現することができる。
【0026】
また、生体情報を用いて、患者の判定を行なうため、個人情報の更新手続きを自動化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明が適用される、病院内における患者情報の全体管理システムの概略構成図である。
【0029】
図1において、一般の患者Aが病院に来院すると、受付端末10により、その患者の個人情報がHISサーバ11に送られ、HIS記憶装置11mに格納される。
【0030】
次に、診察端末12により、患者AがMRI装置14により撮像される場合は、その旨をMRI装置14に伝送する。MRI装置14は、患者Aの撮像情報を患者Aの個人情報と共にMRI記憶装置14mに格納すると共に、その患者Aに関する情報をRISサーバ13に伝送する。RISサーバ13は、MRI装置14から伝送された患者Aに関する情報をRIS記憶装置13mに格納すると共に、その情報をHISサーバ11に伝送する。
【0031】
診察端末12は、MRI装置14、HISサーバ11からの情報に基づいて、患者Aに関する診察情報を会計端末15に伝送する。
【0032】
会計端末15は、診察端末12から伝送された情報に基づいて会計情報を作成する。
【0033】
一般の患者ではなく、緊急の患者Aiが緊急来院し、断層画像を撮影する必要がある場合は、まず、MRI装置14により断層画像が撮像される。この場合、上述したように、緊急患者のAiの個人情報が不明の場合は、緊急患者Aiの生態情報を生体情報入力装置により読み取り、その生体情報と共に、撮像画像をMRI装置14の記憶装置14mに格納しておく。
【0034】
その後、緊急患者Aiの個人情報が入手されたときには、その個人情報と生体情報とが、HISサーバ11、RISサーバ13を介してMRI装置14に伝送される。
【0035】
図2は、MRI装置14の記憶装置14mに記憶された緊急患者Aiの個人情報を、更新する場合の情報伝送の概念図である。また、図3は、緊急患者Aiの個人情報を、更新する場合の動作フローチャートである。
【0036】
図2、図3において、MRI装置14は、RISサーバ13から検査情報を受け取る(ステップ1)。次に、MRI装置14は、受け取った検査情報に生体情報が含まれているか否かを判断する(ステップ2)。
【0037】
ここで、検査情報には、検査を行う上で必要となる項目、「患者ID」、「患者名」、「検査日」、「検査時間」、「予約済実行医名」、「モダリティ(MRI、CT、超音波等の区別)」、「依頼造影剤」等の情報がある。そして、これら情報に加えて患者を生体情報に基づいて見分けるための情報である「生体情報」を予め、生体情報入力装置11biにより患者から取得し、記憶装置11mに登録しておく。
【0038】
ステップ2で生体情報が含まれていなければ、MRI装置14は、通常の検査予約情報と判断し、その検査予約情報を取り込むのみとする。
【0039】
ステップ2において、検査情報の中に生体情報が含まれている場合は、MRI装置14の記憶装置14mに保存されている緊急来院した患者の個人情報を更新する事が考えられるため、記憶装置14mのデータベースに保存してある患者情報の中で生体情報を持っているものを検索する(ステップ3)。
【0040】
ここで、MRI装置14は、緊急患者を撮像した場合は、その生体情報を生体情報入力装置14biにより取得し、画像情報と共に記憶装置14mに記憶している。
【0041】
ステップ4において、生体情報を持つ患者情報が存在している場合、RIS13から伝送された検査情報に含まれている生体情報と、記憶装置14mに記憶された情報とが同一か否かを比較する。
【0042】
同一の生体情報であると判断した場合(ステップ5)、RIS13の検査情報により、記憶装置14mに記憶されている既に撮像された患者の撮像情報を更新する(ステップ6)。
【0043】
これにより、RIS13に登録してある患者情報と撮像装置14に保存してある情報とが同一の情報になることによって、病院内での情報が一致し、情報管理によるその後の患者の診断等を、迅速で適切なものとすることができる。
【0044】
なお、生体情報入力装置11bi、14biについては、例えば、特開平10−127609号公報に記載された生体識別装置等のような構成の装置を応用することができる。
【0045】
この公報記載の生体識別情報は、静脈の血管パターンであるが、指紋、虹彩、音声等の、その他の生体情報であっても使用することができる。
【0046】
次に、MRI装置14の記憶装置14mに記憶された生体情報を用いて、再度、検査を行なおうとする患者が、以前検査した患者であるか否かを判断し、患者(被検者)の取り違い防止する動作について、図4を参照して説明する。
【0047】
図4において、MRI装置14は、RIS13から、生体情報を含む検査情報を受け取り、記憶する(ステップ21)。
【0048】
次に、患者が検査を受けるために、来院し、その患者は、生体情報取得装置(入力装置)に生体情報を入力する(ステップ22、23)。
【0049】
MRI装置14は、これから検査を行う患者の生体情報と、記憶装置14mに記憶された患者の生体情報とを比較する。(ステップ24)。
【0050】
生体情報の比較の結果、同一な情報であると判断した場合は(ステップ25)、RIS13から送られてきた検査情報とこれから検査を行う患者が同一であるので直に検査を開始することができる(ステップ26)。
【0051】
しかし、ステップ25において、生体情報が互いに同一で無かった場合、氏名が同じであっても、同姓同名な別な患者であると考えることができるので、撮像装置であるMRI装置14は、エンドユーザに対して警告を出す(ステップ27)。この警告は、その被検者の撮像情報が記憶装置14mに記憶されていない旨を画面表示してもよいし、音声で警告を行なってもよい。
【0052】
このように、その患者の生体情報を画像情報と共に記憶させておき、ライン来院した患者の生体情報とを、記憶された生体情報と比較することにより、患者(被検者)情報の取り違いを防止することができる。
【0053】
なお、上述した例は、MRI装置に本発明を適用した場合の例であるが、MRI装置のみならず、CT装置、超音波診断装置等の他の撮像装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明が適用される、病院内における患者情報の全体管理システムの概略構成図である。
【図2】MRI装置の記憶装置に記憶された緊急患者の個人情報を、更新する場合の情報伝送の概念図である。
【図3】緊急患者の個人情報を、更新する場合の動作フローチャートである。
【図4】MRI装置に記憶された生体情報を用いて、患者(被検者)の取り違い防止するための動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
11 HISサーバ
11m HIS記憶装置
13 RISサーバ
13m RIS記憶装置
14 MRI装置
14m MRI記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者から生体情報を取得する第1の生体情報取得手段と、
被検者の個人情報及び検査情報と、第1の生体情報取得手段からの生体情報を記憶する第1の記憶手段を有する第1の情報管理手段と、
被検者を撮像するとともに、被検者の撮像情報、生体情報を管理する撮像手段と、
被検者から生体情報を取得する第2の生体情報取得手段と、
上記撮像手段からの被検者の個人情報及び検査情報と、第2の生体情報取得手段からの生体情報を記憶する第2の記憶手段を有する第2の情報管理手段と、
を備え、上記撮像手段は、上記第1の情報管理手段から、被検者の個人情報及び生体情報が伝送されたとき、第2の記憶手段に記憶された生体情報の中に、伝送された生体情報と一致するものがあるか否かを判断し、一致するものがある場合には、その一致した生体情報に対応する個人情報として、上記伝送された個人情報を格納することを特徴とする被検者の情報取り違い防止システム。
【請求項2】
請求項1記載の被検者の情報取り違い防止システムにおいて、上記撮像手段は、上記第1の情報管理手段から、被検者の個人情報及び生体情報が伝送されたとき、第2の記憶手段に記憶された生体情報の中に、伝送された生体情報と一致するものがあるか否かを判断し、一致するものがない場合には、その被検者は、撮像情報が第2の記憶手段の記憶されていないことを警告表示することを特徴とする被検者の情報取り違い防止システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の被検者の情報取り違い防止システムにおいて、上記生体情報は、被検者の指紋であり、上記第1及び第2の生体情報取得手段は、指紋を読み取ることを特徴とする被検者の情報取り違い防止システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の被検者の情報取り違い防止システムにおいて、上記生体情報は、被検者の虻彩であり、上記第1及び第2の生体情報取得手段は、虹彩を読み取ることを特徴とする被検者の情報取り違い防止システム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の被検者の情報取り違い防止システムにおいて、上記生体情報は、被検者の静脈形状であり、上記第1及び第2の生体情報取得手段は、静脈形状を読み取ることを特徴とする被検者の情報取り違い防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−158818(P2006−158818A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357675(P2004−357675)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】