説明

被牽引物の落下防止装置

【課題】被牽引物を牽引する牽引装置とともに用いられ、被牽引物の急激落下の際により高い応答性をもって停止させる、安全性を高めた被牽引物の落下防止装置を提供する。
【解決手段】ロープ把握機構の部材と、ロープ把握機構にロープを把握させるように付勢するロープ把握付勢部材と、第1の姿勢においてロープ把握付勢部材の付勢力を抑止する抑止力を及ぼしてロープを解放し、また第2の姿勢において抑止力を解除してロープ把握機構がロープを把握するようにする、抑止力印加/解除機構の部材9,18,19,20,21,22,7,と、プーリの回転速度の増大につれプーリの外方へと動く遠心力感知部材14と、その遠心力感知部材と係合することにより移動して抑止力印加/解除機構の第1の姿勢を第2の姿勢へと変更させるラチェット部材17とを備え、このラチェット部材が遠心力感知部材と係合する凸部をプーリの外に2以上備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被牽引物を牽引する牽引装置とともに用いられ、被牽引物の落下を防止する被牽引物の落下防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルの外装清掃に用いられるゴンドラは、屋上などの固定点からロープによって通常その両端において吊り下げられる。これらゴンドラの上下移動の駆動のためにウィンチが用いられる。ウィンチとロープとの間で生じるスリップ、ロープの切断などによってゴンドラが落下するという事故は未然に厳格に防止されなければならない。
【0003】
ゴンドラの急激な落下を防止するため、従来から各種の安全機構が設けられてきた。ゴンドラには上下移動の牽引のための吊り下げロープが必ず用いられるが、そのほかに上記安全確保のために補助ロープが使用されている。吊り下げロープがゴンドラの両端に用いられる場合、補助ロープもゴンドラの両端において端の中央を占める吊り下げロープ位置を外して、対角線をなすように配置される。
【0004】
上記の安全機構はつぎの部分から構成される(特許文献1参照)。
(1)補助ロープの両側に位置して広狭可能に位置を変えて補助ロープを挟んで把握し、また解放する爪部
(2)爪部に補助ロープを挟む向きに付勢する把握付勢手段
(3)上記の把握付勢手段の付勢力に抗して補助ロープを解放するように爪部を拘束し、その拘束する姿勢が外部からの力で容易に変更され上記拘束力が解除される解除可能拘束手段
(4)補助ロープが押し付けられるプーリに取り付けられ、プーリの回転速度が所定値を超えたとき、遠心力によって前記解除可能拘束手段に衝突して上記の姿勢を変更して爪部への拘束を解除し、爪部に補助ロープを挟ませる拘束解除手段
上記文献には上記の名称で各部分が示されているわけではないが、上記安全機構はその機能の役割上、上記部分に分けることができる。上記の「プーリに取り付けられ、プーリの回転速度が所定値を超えたとき遠心力によって解除可能拘束手段に衝突する」部品は、プーリに取り付けられ、ばねによって遠心力に抗する付勢力を付勢され、遠心力によって外方に重心を移す部片である。
【0005】
上記の安全機構により、ゴンドラが急激に落下した際、補助ロープは安全機構内を高速で相対的に上方に移動し、プーリが高速回転して補助ロープへの把握が達成される。すなわち急激な落下を停止させることができる。
【特許文献1】特開昭58−109374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の安全機構では、プーリが高速回転して部片の重心が外方に移動して解除可能拘束手段に衝突するまで時間がかかり、補助ロープへの把握が達成されるまでの時間がかかる。すなわち応答性が悪い。これは、上記プーリの周縁に複数の部片を取り付けた構成にしても、事情は大きくは改善されない。このため、より応答性に優れた被牽引物の落下防止装置が要望されてきた。
【0007】
また、上記の安全機構では、補助ロープは、ばねによる付勢力を伴う押えプーリ(補助ローラ)などによってプーリに押し付けられ、緊急の場合に確実に高速回転が実現するようにされている。このような押えプーリを押し付けるばねやブラケットは部品点数の増大を招きコスト増をもたらす。このため、補助ロープをプーリに押し付ける簡単な機構の開発が望まれていた。
【0008】
本発明の第1の目的は、急激落下の際により高い応答性をもって停止させることができる安全性を高めた被牽引物の落下防止装置を提供することを目的とする。また、他の目的は、部品点数を減らして安価な被牽引物の落下防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被牽引物の落下防止装置は、ロープが挿通され、被牽引物を牽引する牽引装置とともに用いられ、被牽引物の落下を防止する被牽引物の落下防止装置である。この落下防止装置は、ロープとの間の間隔を変更可能に位置して、ロープを把握しまた解放するロープ把握機構と、ロープ把握機構にロープを把握させるように付勢するロープ把握付勢部材とを有する。また、この落下防止装置は、第1の姿勢においてロープ把握付勢部材の付勢力を抑止する抑止力を及ぼしてロープ把握機構とロープとの間隔を広げてロープを解放し、また他の部材からの力により第1の姿勢から可逆的に移行する第2の姿勢において、抑止力を解除してロープ把握付勢部材の付勢力をロープ把握機構に及ぼさせロープ把握機構がロープを把握するようにする、抑止力印加/解除機構と、ロープが押し付けられたプーリに取り付けられ、プーリの回転速度の増大につれプーリの外方へと動く遠心力感知部材と、を有する。また、この落下防止装置は、遠心力感知部材が外方へと動いたときその遠心力感知部材と係合することにより移動して抑止力印加/解除機構の第1の姿勢を第2の姿勢へと変更させ、ロープ把握付勢部材の付勢力への抑止力を解除してロープ把握機構にロープを把握させるラチェット部材とを備える。そして、このラチェット部材が遠心力感知部材と係合する凸部をプーリの外に2以上備えている。
【0010】
この構成により、急激な落下が生じたとき、遠心力感知部材は上記の係合が実現するまでにプーリ上において大きな回転角を経過することなく、最寄のラチェット凸部に係合することができる。このため、急激な落下時間、また落下距離を短縮することができる。すなわち急激な落下に対する落下防止装置の応答性を向上させることができる。
【0011】
本発明の別の局面の被牽引物の落下防止装置は、ロープが挿通され、被牽引物を牽引する牽引装置とともに用いられ、被牽引物の落下を防止する被牽引物の落下防止装置である。この落下防止装置は、ロープとの間の間隔を変更可能に位置して、ロープを把握しまた解放するロープ把握機構と、ロープ把握機構にロープを把握させるように付勢するロープ把握付勢部材とを有する。また、この落下防止装置は、第1の姿勢においてロープ把握付勢部材の付勢力を抑止する抑止力を及ぼしてロープ把握機構とロープとの間隔を広げてロープを解放し、また他の部材からの力により第1の姿勢から可逆的に移行する第2の姿勢において、抑止力を解除してロープ把握付勢部材の付勢力をロープ把握機構に及ぼさせロープ把握機構がロープを把握するようにする、抑止力印加/解除機構と、ロープが押し付けられたプーリに取り付けられ、プーリの回転速度の増大につれプーリの外方へと動く遠心力感知部材と、を有する。また、この落下防止装置は、遠心力感知部材が外方へと動くことによって抑止力印加/解除機構の第1の姿勢を第2の姿勢に変更させ、ロープ把握付勢機構への抑止力を解除してロープ把握機構にロープを把握させる姿勢変更駆動部材とを備える。そして、ロープは、プーリの上方において鉛直状であり、そのプーリに当接する位置の下方において平面的に見てプーリに重なるように、曲げられている。
【0012】
この構成により、ロープはその自重も加わってプーリに押し付けられるので、急激に被牽引物が落下した場合において落下を確実にプーリの回転に変換させることができる。このため、押えプーリに付勢してロープをプーリに押し付けるばね、そのブラケットなどの省略が可能となり、コスト削減を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態における落下防止装置60が取り付けられたゴンドラ50を示す側面図であり、また図2は正面図である。ゴンドラ50は、両端に配置され、吊り下げ用ロープ57が巻き掛けられたウィンチ53によって上下に駆動される。また、落下防止装置60もゴンドラ50の両端に配置されるが、一方端の落下防止装置と、他方端の落下防止装置とは端部において中央から逆方向にずれ、両者を結ぶ線が中心を通るように位置させる。落下防止装置60には補助ロープ55が挿通され、地表または地表近くまで垂下される。
【0014】
図3は、落下防止装置の断面図である。また、図4は図3におけるIV-IV矢視図であり、図5はV-V矢視図である。これら図3〜図5は、ロープを解放した状態を示す断面図である。図3および図4を参照して、この落下防止装置60は、筐体底板3、ロープ挿通室筐体12、筐体仕切板2および筐体カバー4を主要部材として構成される落下防止装置筐体1に設けられる。この落下防止装置筐体1は、筐体仕切板2によって、ロープが挿通されプーリなどが配置されるロープ挿通室R1と、抑止力印加/解除機構の部品やラチェット部材などが配置される抑止力制御室R2とに分けられる。ロープ挿通室筐体12で囲まれたロープ挿通室R1では、補助ロープ55が通り、その補助ロープを把握するロープ把握部などが配置される。また筐体カバー4で覆われた抑止力制御室R2では、落下速度に応じてロープ把握部にロープを把握させるかどうか制御する機構が配置される。
【0015】
補助ロープ55は筐体上部に位置するロープガイド26を通り、筐体内に導入される。補助ロープ55は、プーリ11の上方では鉛直状であり、プーリ11の溝に押し付けられた地点より下方では平面的に見てプーリ側に曲げられる。平面的に見てプーリ側に曲げているのはガイドローラ24のローラだけでなくガイド板等であってもよい。このプーリ側に曲げられる程度は、ガイドローラシャフト25に回転可能に取り付けられたガイドローラ24の位置によって決められる。このように補助ロープ55をプーリ11の出口側においてプーリ側に曲げることにより、補助ロープがプーリに押し付けられるためにプーリを確実に回転させることができる。この結果、押えプーリを押し付けるばねやそのブラケットを省略することができ、かつ構造も簡単になり、コスト低減を実現することができる。
【0016】
補助ロープ55を両側から挟むように位置するロープ把握機構の一対の部材(以下、ロープ把握部材または把握爪)6は、その一対の把握爪を挟むように配置された一対のリンク部材5(各一方とも2つの部材で構成される)と共に、その頂角を変化できる平行四辺形結合体を形成する。すなわち、上記のリンク部材5は、相対する一対の把握爪6を側部から挟むように、その一方の側方に2つのリンク部材が、また他方の側方に2つのリンク部材が、ともに回転可能に上記の相対する一対の把握爪の側部に係合するように配置される。そして、リンク部材の回転に応じて上記平行四辺形の頂角が変化し、平行四辺形の相対する2辺をなす一対の把握爪6の間隔を変え、相対する把握爪の間を通るロープへの把握力を変化させる。上記把握爪6は、補助ロープ55に面する面ではロープの外形に適合するように円筒状に凹部が設けられている。
【0017】
リンク部材5は、上記のように固定ピン7,8の周りに回動可能であり、また把握爪とも回動可能に、その把握爪から突き出る突起部(図示せず)と係合している。上記一対のリンク部材5(各一方とも2つの部材で構成される)には係合ピン9,10が設けられており、2つの固定ピン7,8にわたって配置されたばね27の端がその係合ピン9,10に係止されている。このため、抑止する力がなければ、上記ばね27の付勢力はリンク部材を時計周りに回転させ、リンク部材と平行四辺形結合した把握爪6を上方に移動させ、一対の把握爪6の間の間隔を小さくして、補助ロープ55を把握させる。しかし、図4の状態は、このあと説明するように、上記ばね27の上記の方向の付勢力を抑止する抑止力が付勢力に打ち勝ち、ロープを解放している状態に対応する。なお、ロープ把握機構は、把握爪6、リンク部材5、固定ピン7,8などを主要部材として構成され、またロープ把握付勢部材は、ばね27、係合ピン9,10などを主要部材として構成されている。
【0018】
図5を参照して、図4に示す係合ピン9が、ばね27の付勢力を抑止する抑止力を印加する解放レバー19の孔に係合している。すなわち抑止力は、係合ピン9を通してリンク部材5に印加され、さらにロープ把握部材6に伝達される。上記抑止力はばね22に起因する。上記解放レバー19には調整ボルト21が当接し、その調整ボルト21はロッドエンド20によって支持される。ばね22は連結ピン32に支持され、一方の端をロッドエンド20に、また他方の端を、ラチェットベース18にねじで結合されたラチェット17に引き掛けている。ロッドエンド20は位置決めボルト29に当接して一方の限界位置を決められている。
【0019】
抑止力印加/解除機構は、解放レバー19、調整ボルト21、ロッドエンド20、ばね22などを主要部材として構成され、図5に示す抑止力印加/解除機構の配置が、ロープを把握しようとする付勢力を抑止する抑止力を発揮してロープを解放している「第1の姿勢」に対応する。すなわち、連結ピン32を頂点としてロッドエンド20-調整ボルト21と、ラチェットベース右上端とは、緩やかな屈曲をなす「くの字」形状を形成し、解放レバー19によりその孔に係合する係合ピン9を下方に押し下げ、したがって時計周り回転をしようとするリンク部材5の動きを抑止している。上記解放レバー19は、後に説明する図7の解放レバーの配置と比較して分かるように、固定ピン7の周りに回動する。なお、ロープの径などに応じて調整ボルト21はロッドエンド20との螺合長さを変化させ、ロープ解放状態を維持する位置を調整することができる。
【0020】
図6は、図4におけるロープ解放状態のロープ把握機構の配置(第1の姿勢)からロープ把握へ移行したあとのロープ把握機構の配置(第2の姿勢)を示す図である。一対のリンク部材5(各一方とも2つの部材で構成される)は時計周りに回転しながら上方に移動し、リンク部材5と平行四辺形結合をする一対の把握爪6も上方に移動しながら間隔を狭める。このため一対の把握爪6が補助ロープ55を把握して、補助ロープ55と落下防止装置60との相対的な移動は停止され、この結果ゴンドラは停止する。
【0021】
つぎに上記ロープ把握機構が第1の姿勢から第2の姿勢へと変化する機構について説明する。たとえばゴンドラが急激に落下して補助ロープ55と落下防止装置60との相対速度が増すと、補助ロープが押し当てられているプーリ11の回転速度も増大する。図7の場合、落下の際にはプーリ11は時計周りに回転する。図6および図7を参照して、プーリ11にはその縁周に沿って4つのクラッチ爪14が爪ピン15の周りに回動可能に配置されている。爪ピン15はクラッチベース13に固定され、クラッチベース13はプーリ11に結合されている。4つのクラッチ爪14は、対角的に相手のクラッチ爪とばね16で結合されており、相手との間隔を小さくする力を及ぼしている。プーリ11の回転速度が大きくなるにつれクラッチ爪14は爪ピン15周りに回転しながらその重心をプーリの外径方向に移動させる。すなわち、クラッチ爪14は、ラチェットベース13から外にはみ出す部分を大きくする。そのクラッチ爪の外にはみ出す部分が所定値に達すると、クラッチ爪はラチェット17に設けられた複数の凹凸の凸部に係合し、ラチェットを時計周りの回転に引き込もうとする。
【0022】
ラチェット17はラチェットベース18に固定されているので、ラチェットベース18は時計周りに回転し、連結ピン32も時計周りに右方向への移動を強制される。このため、連結ピン32を頂点に緩やかなくの字形状をなしていたロッドエンド20-調節ボルト21の調整ボルト先端はその高さを減じ、解放レバー19は固定ピン7の周りに時計周り回転する。その結果、リンク部材5に設けられた係合ピン9は、もともとばね27によって付勢されていた時計回りの上方への移動を許容される。この結果、図6に示すように一対のリンク部材5(各一方とも2つの部材で構成される)および一対のロープ把握部材の時計周りの上方への移動が生じ、補助ロープ55が把握される。
【0023】
上述の姿勢変更駆動部材は、たとえば上記のラチェット17、ラチェットベース18などを主要部材として構成される。
【0024】
図7において、クラッチベース13の外周に沿って、ラチェット17の複数の凸部を設けたことが重要である。ゴンドラの落下速度すなわちプーリの回転速度が所定値に達したとき、時間をおかずにクラッチ爪とラチェットとが係合することができ、落下防止装置の応答性を高めることができる。
【0025】
図8は、上記のメカニズムで補助ロープ55が把握され、停止した後、再起動する際に手動でロープを解放するための解放ハンドル31を示す図である(図3を併せて参照)。解放ハンドル31は、図3に示すように解放レバー19に連結している。解放ハンドル31をロープ把握位置からロープ解放位置へと手動で回転させることにより、図7に示す解放レバー19の配置から図5に示す配置へと移行させることができる。この結果、ロープ把握機構への付勢力を抑止する抑止力を印加できる。
【0026】
上記の構成によれば、クラッチ爪と係合するラチェットをプーリの外に設け、さらにその凸部を複数設けることにより急激落下の際の応答性を高めることができる。また、補助ロープをプーリに当たる位置から下方においてプーリ側に曲げることにより補助ロープがプーリに押し付けられるために、押えプーリを押し付けるばねやそのブラケットの省略が可能となり、また構造も簡単にした上で、ロープと落下防止装置との相対速度を確実にプーリの回転速度に反映させることができるようになる。
【実施例】
【0027】
つぎに本発明の実施例について説明する。本発明例ではラチェットの凸部数を11個とした落下防止装置を用い、また比較例ではラチェットの凸部数を1個としたものを用いた。試験は、図9(a)に示すようにゴンドラと搭乗者との重量にあわせた錘65を、落下防止装置60に垂下させ、停止状態から自由落下させた。その後、図9(b)に示すように上述の機構でロープが把握されるまでの落下停止距離hを測定した。繰り返し試験数は20回とした。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示す結果によれば、2例(2回目および15回目)を除いて残りの18例において、本発明例は比較例よりも短い落下停止距離で停止している。また、平均値、最低値および最高値のいずれにおいても本発明例は比較例よりも短い落下停止距離を示した。この結果より、本発明における複数の凸部を有するラチェットは落下防止装置の応答性を高めることが判明した。
【0030】
つぎに上記実施の形態に加えて、本発明のさらに別の実施の形態の変形例について以下に説明する。
【0031】
複数のラチェット凸部を複数有する落下防止装置において、ロープは、プーリの上方において鉛直状であり、そのプーリに当接する位置の下方において平面的に見てプーリに重なるように、曲げることができる。当然のことながら、ラチェット凸部の有無にかかわらず、プーリの上方において鉛直状であり、そのプーリに当接する位置の下方において平面的に見てプーリに重なるように、曲げることができる。
【0032】
ロープを上記のように曲げることにより、押えプーリを押し付けるばねや、そのブラケットを用いることなく、またその結果、構造を簡単にした上で、補助ロープのプーリへの確実な押し当てを確保することができる。
【0033】
また、遠心力感知部材が、プーリの周縁部に沿って回動可能に設けられた複数の爪部材であってもよい。
【0034】
この構成により、安価に遠心力感知部材を構成することができる。上記の複数の爪部材は、ばねで相手と連結され相手との距離を小さくする方策が設けられていなくてもよい。
【0035】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の被牽引物の落下防止装置を用いることにより、急激な落下が生じても短い落下距離で停止させることができるので搭乗者への衝撃を小さくすることができ、安全上好ましい。また、補助ロープをプーリに巻き付く方向に曲げて配置することにより押えプーリの押えばねや、そのブラケットなどの部品を用いることなく、その結果構造を簡単にした上で、確実に補助ロープをプーリに押し当てることができる。このため安価に信頼度の高い落下防止装置を提供することができる。上記の理由により、超高層ビル外装の清掃作業を中心に他の同種の用途に広範に使用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態における落下防止装置を取り付けたゴンドラを示す側面図である。
【図2】図1のゴンドラの正面図である。
【図3】図1に示す落下防止装置を側面から見た内部を示す図である。
【図4】図3のIV-IV矢視図である(ロープ解放状態)。
【図5】図3のV-V矢視図である(ロープ解放状態)。
【図6】図4に対応するロープ把握状態を示す図である。
【図7】図5に対応するロープ把握状態を示す図である。
【図8】解放ハンドルの操作を説明する図である。
【図9】(a)は落下開始前の状態を示す図であり、(b)は落下停止した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 落下防止装置筐体、2 筐体仕切板、3 筐体底板、4 筐体カバー、5 リンク部材、6 ロープ把握部材、7,8 固定ピン、9,10 係合ピン、11 プーリ、12 ロープ挿通室筐体、13 クラッチベース、14 クラッチ爪、15 爪ピン、16 ばね、17 ラチェット、18 ラチェットベース、19 解放レバー、20 ロッドエンド、21 調整ボルト、22 ばね、24 ガイドローラ、25 ガイドローラシャフト、26 ロープガイド、27 ばね、28 ガイド板、29 位置決めボルト、31 解放ハンドル、32 連結ピン、55 補助ロープ、57 吊り下げロープ、60 落下防止装置、65 錘、R1 ロープ挿通室、R2 抑止力制御室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープが挿通され、被牽引物を牽引する牽引装置とともに用いられ、前記被牽引物の落下を防止する被牽引物の落下防止装置であって、
前記ロープとの間の間隔を変更可能に位置して前記ロープを把握し、また解放するロープ把握機構と、
前記ロープ把握機構に前記ロープを把握させるように付勢するロープ把握付勢部材と、
第1の姿勢において前記ロープ把握付勢部材の付勢力を抑止する抑止力を及ぼして前記ロープ把握機構とロープとの間隔を広げて前記ロープを解放し、また他の部材からの力によって前記第1の姿勢から可逆的に移行する第2の姿勢において、前記抑止力を解除して前記ロープ把握付勢部材の付勢力を前記ロープ把握機構に及ぼさせ前記ロープ把握機構が前記ロープを把握するようにする、抑止力印加/解除機構と、
前記ロープが押し付けられたプーリに取り付けられ、前記プーリの回転速度の増大につれ前記プーリの外方へと動く遠心力感知部材と、
前記遠心力感知部材が外方へと動いたときその遠心力感知部材と係合することにより移動して前記抑止力印加/解除機構の第1の姿勢を第2の姿勢へと変更させ、前記ロープ把握付勢部材の付勢力への抑止力を解除して前記ロープ把握機構に前記ロープを把握させるラチェット部材とを備え、
前記ラチェット部材が前記遠心力感知部材と係合する凸部を前記プーリの外に2以上備える、被牽引物の落下防止装置。
【請求項2】
前記ロープは、前記プーリの上方において鉛直状であり、そのプーリに当接する位置の下方において平面的に見て前記プーリに重なるように、曲げられている、請求項1に記載の被牽引物の落下防止装置。
【請求項3】
前記遠心力感知部材が、前記プーリの周縁部に沿って回動可能に設けられた複数の爪部材である、請求項1または2に記載の被牽引物の落下防止装置。
【請求項4】
ロープが挿通され、被牽引物を牽引する牽引装置とともに用いられ、前記被牽引物の落下を防止する被牽引物の落下防止装置であって、
前記ロープとの間の間隔を変更可能に位置するロープ把握機構と、
前記ロープ把握機構に前記ロープを把握させるように付勢するロープ把握付勢部材と、
第1の姿勢において前記ロープ把握付勢部材の付勢力を抑止する抑止力を及ぼして前記ロープ把握機構とロープとの間隔を広げて前記ロープを解放し、また他の部材からの力によって前記第1の姿勢から可逆的に移行する第2の姿勢において、前記抑止力を解除して前記ロープ把握付勢部材の付勢力を前記ロープ把握機構に及ぼさせ前記ロープ把握機構が前記ロープを把握するようにする、抑止力印加/解除機構と、
前記ロープが押し付けられたプーリに取り付けられ、前記プーリの回転速度の増大につれ前記プーリの外方へと動く遠心力感知部材と、
前記遠心力感知部材が外方へと動くことによって前記抑止力印加/解除機構の第1の姿勢を第2の姿勢に変更させ、前記ロープ把握付勢機構への抑止力を解除して前記ロープ把握機構に前記ロープを把握させる姿勢変更駆動部材とを備え、
前記ロープは、前記プーリの上方において鉛直状であり、そのプーリに当接する位置の下方において平面的に見て前記プーリに重なるように、曲げられている、被牽引物の落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−143341(P2006−143341A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331568(P2004−331568)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(591003655)株式会社チルコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】