裸眼立体表示装置
【課題】スクリーンからの光線の指向性を向上し、スクリーンから飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示し、多人数で観察するのに十分に広い視域を実現する。
【解決手段】投射レンズ20a〜20eはY方向に等間隔に配置されている。投射レンズ20a〜20eに対して、各々の空間光変調素子10a〜10eが水平方向及び垂直方向に偏心した位置に配置されている。空間光変調素子10a〜10eから発散する光線は垂直拡散スクリーン50で収束して結像し、垂直拡散スクリーン50上に画素50A〜50Eを形成する。画素50A〜50Eは、方向によって異なる輝度と色度をもつ主光線を発する。これにより、投射レンズ20a〜20eから射出される光線の角度範囲を最大限に利用できる。これにより、フレネルレンズを使用しない構成にでき、垂直拡散スクリーン50からの光線の指向性の向上と、大きい入射角同士の光線の平行化を実現できる。
【解決手段】投射レンズ20a〜20eはY方向に等間隔に配置されている。投射レンズ20a〜20eに対して、各々の空間光変調素子10a〜10eが水平方向及び垂直方向に偏心した位置に配置されている。空間光変調素子10a〜10eから発散する光線は垂直拡散スクリーン50で収束して結像し、垂直拡散スクリーン50上に画素50A〜50Eを形成する。画素50A〜50Eは、方向によって異なる輝度と色度をもつ主光線を発する。これにより、投射レンズ20a〜20eから射出される光線の角度範囲を最大限に利用できる。これにより、フレネルレンズを使用しない構成にでき、垂直拡散スクリーン50からの光線の指向性の向上と、大きい入射角同士の光線の平行化を実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は裸眼立体表示装置に係り、特にメガネを使用しないで自然な立体像を表示する裸眼立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハイビジョン市場の成熟に伴い、特殊なメガネを使用しないで立体像を視覚可能な裸眼立体表示装置の開発が活発に行われている。裸眼立体表示装置の実用化に向けた最大の課題は立体像の解像度と視域(立体像を回り込んで観察することのできる範囲。一般の二次元ディスプレイの場合は視野角と呼ばれる)の両立である。しかし、現行の表示デバイスを用いたのでは、実用的な解像度と視域を得ることは極めて困難である。
【0003】
これを解決するために、複数の表示デバイスを用いることにより解像度と視域を向上させた三次元画像表示技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。図27は、この特許文献1記載の三次元画像表示装置の一例の構成図を示す。同図に示すように、この特許文献1記載の三次元画像表示装置は、水平方向の間隔が等間隔になるように二次元配置した多数のプロジェクタ内の空間光変調素子10a〜10eから投射レンズ20a〜20eを通して射出された光線をレンズシフトにより偏向させ、スクリーン上に重畳させて投射した後に、当該スクリーンからの光線を垂直方向には拡散するとともに水平方向には平行光として(テレセントリックに)異なる方向に投射することにより、水平方向の立体視に特化した高画質な裸眼立体像を実現する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−309975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1記載の従来の三次元画像表示技術によれば、スクリーンが2枚構成であって、図27に示すように垂直拡散スクリーン50に近接させてフレネルレンズ40が配置されており、フレネルレンズ40により、その物体側焦点距離と投射距離が一致するように構成することによって主光線を互いに平行化(テレセントリックに)するために用いられる。
【0006】
しかしながら、この構成ではフレネルレンズ40の光軸近傍の空間光変調素子からの入射光に対してはほぼ平行化できたとしても、光軸から遠く離れた空間光変調素子からの入射光に対しては平行化することは困難である。その理由は、フレネルレンズ40は本質的に単レンズだからである。すなわち、屈折面を高々2面しかもたない1枚のフレネルレンズ40で平行化できる光線の入射角の範囲には限界があり、たとえ非球面フレネルレンズを用いたとしても、複数人で観察するのに十分な角度、例えば全角40度以上で平行化することは、事実上困難である。このため、いくらプロジェクタの数を増やしても十分に視域が広がらないという課題がある。
【0007】
また、フレネルレンズの溝で光が拡散することにより、水平方向の光の指向性が低下し、スクリーンから手前に飛び出した位置での立体像の解像度が低下する。このため、スクリーン付近またはスクリーン奥にしか立体像を表示できないという課題がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、スクリーンからの光線の指向性を向上し、スクリーンから飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示でき、また、多人数で観察するのに十分に広い視域を実現可能な裸眼立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の裸眼立体表示装置は、水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の投射レンズと、複数の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた投射レンズの物体面上にあって投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の空間光変調素子と、複数の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、複数の投射レンズの像面上にあって、複数の空間光変調素子の画素からそれぞれ射出される照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素のそれぞれを二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、スクリーン上に結像された複数の画素のそれぞれから異なる方向に投射される主光線の角度ピッチを、複数の投射レンズのF値、又はスクリーンの水平拡散角、又は照明光学系のF値に一致させる手段を備えてもよい。
【0011】
また、本発明は、複数の投射レンズ、複数の空間光変調素子、及び照明光学系からなり、複数の投射レンズからそれぞれ投射された主光線によりスクリーンに共通の複数の画素を結像する構成をプロジェクタアレイユニットとしたとき、第1のプロジェクタアレイユニットに対して、水平方向でかつ一方向に所定間隔ずつシフトした複数の第2のプロジェクタアレイユニットを配置すると共に、水平方向でかつ一方向とは反対方向に所定間隔ずつシフトした複数の第3のプロジェクタアレイユニットを配置し、第1乃至第3のプロジェクタアレイユニットからスクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、スクリーンから射出する主光線を互いにテレセントリックに投射させるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明は、複数の投射レンズ、複数の空間光変調素子、及び照明光学系からなり、複数の投射レンズからそれぞれ投射された主光線によりスクリーンに結像する複数の画素の像面を共通化しない構成を非共通像面プロジェクタアレイユニットとしたとき、水平方向に所定間隔ずつシフトした複数の非共通像面プロジェクタアレイユニットを配置し、
非共通像面プロジェクタアレイユニットからスクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、スクリーンから射出する主光線を互いにテレセントリックに投射させるようにしてもよい。また、スクリーンに重ねて投射された複数の空間光変調素子からの画像の歪曲収差又は倍率色収差を電気的に補正する手段を備えるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の第1の投射レンズと、水平及び垂直の両方向に対してそれぞれ傾斜した方向に二次元配置され、かつ、水平方向に対して傾斜した方向に等間隔で配置された複数の第2の投射レンズと、複数の第1の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた第1の投射レンズの物体面上にあって第1の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第1の空間光変調素子と、複数の第2の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた第2の投射レンズの物体面上にあって第2の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第2の空間光変調素子と、複数の第1及び第2の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、複数の第1及び第2の投射レンズの像面上にあって、複数の第1及び第2の空間光変調素子の画素からそれぞれ出射される照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素のそれぞれを二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、上記の第2の空間光変調素子は、その光軸が第2の投射レンズの光軸と互いに平行に偏心され、かつ、投射レンズの光軸に対して傾きをもって偏心されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フレネルレンズを使用しない構成にしたため、スクリーンからの光線の指向性が向上し、スクリーンから飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示できる。また、本発明によれば、大きい入射角同士の光線も平行化することが可能となり、多人数で観察するのに十分に広い視域が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の実施の形態について図面と共に説明する。
【0017】
図1は、本発明になる裸眼立体表示装置の一実施の形態の電気系の基本構成図を示す。同図において、裸眼立体表示装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)2と、PC2からのデータをn分岐するハブ3と、ハブ3に接続されたn台のネットワーク接続ストレージ(Network Attached Storage:NAS)4−1〜4−nと、NAS4−1〜4−nに対して1対1に対応して設けられ、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブルを介して接続されたプロジェクタ(PJ)5−1〜5−nとからなる。
【0018】
ネットワーク上で読み取り可能な記憶媒体であるNAS4−1〜4−nのそれぞれは、1台のPC2からマルチキャストにより同時に送信されたデータを受け、映像出力のタイミングをフレーム単位で制御する。NAS4−1〜4−nのそれぞれは、ゲンロック(GENeratorLOCK、ジェンロックともいう)機構又はゲンロックと同等な同期手段を有しており、各視点画像(view1_sig〜viewn_sig)の位相と周波数を同期させる。NAS4−1〜4−nのそれぞれから出力された各視点画像(view1_sig〜viewn_sig)は、HDMIケーブルを介してプロジェクタ5−1〜5−nに入力される。
【0019】
プロジェクタ5−1〜5−nは、それぞれ入力された各視点画像を空間光変調素子に供給して二次元画像表示させ、その画像表示された光を投射レンズを通してスクリーン6に投射し、スクリーン6からの空間における各光線の交点に球形の立体像7や直方体の立体像8などの所望の立体像を表示させる。
【0020】
以上の構成のうち、本実施の形態の裸眼立体表示装置1は、プロジェクタ5−1〜5−nの配置構成が、以下説明する各実施の形態のいずれかの構成である点に特徴を有し、スクリーン6としてフレネルレンズを使用しない構成のスクリーンを用いることができるようにしたものである。
【0021】
次に、本発明の裸眼立体表示装置の光学系(プロジェクタ5−1〜5−nの配置構成)の各実施の形態について図面と共に説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図2は、本発明になる裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図において、空間光変調素子10aと投射レンズ20aとは第1のプロジェクタ内に設けられている。同様に、空間光変調素子10bと投射レンズ20b、空間光変調素子10cと投射レンズ20c、空間光変調素子10dと投射レンズ20d、空間光変調素子10eと投射レンズ20eは、それぞれ別々のプロジェクタ内に設けられている。なお、図示を省略したが、空間光変調素子10a〜10eの各照明光学系も各プロジェクタ内に設けられている。
【0023】
また、図2の基本構成図及び図3の斜視図に示すように、空間光変調素子10a〜10eと、投射レンズ20a〜20eとが、垂直拡散スクリーン50の前方に配置されている。また、図4の正面図において、実線の円は図2に示した投射レンズ20a〜20e及び図2には図示されていない他のプロジェクタ内の投射レンズを模式的に示す。投射レンズ20a〜20e等の投射レンズは、水平方向に例えば5つ配置され、斜め垂直方向に例えば5つ配置された2次元配置とされている。また、図4において、斜め垂直方向に隣接する投射レンズ間は水平方向に距離X1だけずれて配置され、最上部位置の投射レンズと水平方向に隣接する最下部位置の投射レンズとの間は水平方向に距離X2だけずれて配置されている。更に、図4に示すように、投射レンズ20f等の各投射レンズの有効径内の位置に離間対向して、空間光変調素子10f等の空間光変調素子が設けられている。
【0024】
図2において、空間光変調素子10a〜10eは、例えば、液晶表示素子(LCD)、反射型液晶表示素子(LCOS)、反射型素子(DMD:登録商標)、光の回折効果を利用して光の向きや色などを制御する投影デバイス「マイクロリボンアレイ」を使用した表示素子(GLV:登録商標)などで構成された二次元画像表示装置である。また、投射レンズ20a〜20eは、1対1に対応して設けられた空間光変調素子10a〜10eで表示された画像からの光を垂直拡散スクリーン50に投射する。ここでは、投射レンズ20a〜20eは1枚の単レンズとして描かれているが、実際には複数のレンズからなるレンズ系、および個々のレンズを保持するホルダー、通過する光線のFナンバーを決める開口絞りからなる。
【0025】
また、空間光変調素子10a〜10eは、図示しない光源及び照明光学系によってそれぞれ照明されているものとする。照明光学系は超高圧水銀ランプのような周知の白色光源のほか、発光ダイオード(LED)やレーザーのような周知の単色光源でもよい。白色光源の場合は、カラーフィルタやダイクロイックフィルター等を用いた周知のカラー化技術によって色度を付与されるが、ここでは説明を省略する。
【0026】
垂直拡散スクリーン50は、図1に示したスクリーン6に相当し、例えば、レンチキュラースクリーンやホログラフィックスクリーンなどであり、垂直方向に拡散した光を射出する。ここで垂直方向とは図2中、X方向である。また、図2中、水平方向はY方向、奥行き方向はZ方向を指す。垂直拡散スクリーン50上には、投射レンズ20a〜20eから投射された光により画素50A〜50Eが結像されている。また、投射レンズ20a、20b、20c、20d、20eから投射されて垂直拡散スクリーン50から射出される光10a1〜10a5,10b1〜10b5、10c1〜10c5,10d1〜10d5、10e1〜10e5は、主光線を表す。また、主光線10c3の周囲の10c3mは外縁光線を表す。すべての主光線に外縁光線が付随するが、10c3m以外の外縁光線は図の簡略化のため省略している。
【0027】
次に、図2の基本動作について説明する。空間光変調素子10a〜10eに対する照明光は、光の強度及び色度が画素単位で変調され、投射レンズ20a〜20eを通過する。投射レンズ20a〜20eは水平方向(Y方向)に等間隔に配置されている。これに対し、投射レンズ20a〜20eのそれぞれの図示しない光軸に対して、各々の空間光変調素子10a〜10eが水平方向及び垂直方向に偏心した位置に配置されている。プロジェクタの周知技術としてレンズシフト機構があるが、ここでは一定間隔で固定されたレンズに対して空間光変調素子10a〜10eをシフトさせている。
【0028】
空間光変調素子10a〜10eと垂直拡散スクリーン50とは共役関係にあり、外縁光線10c3mに示すように空間光変調素子10a〜10eから発散する光線は垂直拡散スクリーン50で収束して結像し、垂直拡散スクリーン50上に画素50A〜50Eを形成する。ここで形成された画素50A〜50Eは、一般的なプロジェクタで形成する画素とは異なり、方向によって異なる輝度と色度をもつ光線(主光線とその周りに付随する外縁光線)を発するものである。例えば、画素50Cからの主光線は、図2の上から10e3、10d3、10c3、10b3、10a3で、これらは各々異なる空間光変調素子10e、10d、10c、10b、10aから射出された光によるものである。
【0029】
図5は、垂直拡散スクリーン50上の一つの画素から射出される光線の様子を示す図である。図5(a)は上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は斜視図である。図5(a)に示すように、垂直拡散スクリーン50上の画素からは、水平面上異なる方向(図5では19方向)に細長い扇形の光線が射出されている。各扇形の頂角が、プロジェクタのF値に対応し、隣り合う扇形は重ならず、かつ、隙間が無いようにF値を設計する。この設計が不完全であると、視点をY方向(水平方向)に移動したときに輝度むらが観測されることになる。
【0030】
図5(b)の側面図は、画素からの光線が垂直方向に拡散される様子を示している。垂直拡散スクリーン50上で垂直拡散を行うのは、垂直方向の立体情報を放棄することにより、水平方向により高密度な光線を再現するためである。図5(c)の斜視図に示すように、垂直方向に細長い四角錘の形状の光線が多方向に射出されている。
【0031】
図6は、垂直拡散スクリーン50上の複数の画素から射出される光線の様子を示す図である。図6(a)は上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は斜視図を示す。図6(a)に示すように、垂直拡散スクリーン50上の複数の画素からの光線は、扇形空間に集積されて点の三次元画像が形成される。一般の三次元画像は、この点の三次元画像が多数個集まったものとして形成される。
【0032】
図6(b)は、垂直拡散スクリーン50上で垂直拡散される光線の様子を示す図で、図5(b)で説明したのと同様に、画素からの光線が垂直方向に拡散される様子を示している。図6(c)の斜視図は、垂直方向に細長い四角錐の形状の光線が空間に形成され、水平方向の三次元画像が形成されている様子を示している。
【0033】
そして、上記の垂直拡散スクリーン50上で結像された図2に示す各画素から射出される主光線の周りに付随する外縁光線は拡大像のため、垂直拡散スクリーン50付近ではF10程度の大きなF値となっている。しかも、図5、図6と共に説明したように水平方向(Y方向)には垂直拡散スクリーン50による拡散を全く受けないか、または僅かに拡散されるのみであるため、水平方向には指向性の高い光線が、図2の画素50A〜50Eから異なる方向に発せられることになる。これらの指向性の高い光線が高い密度で空間に投射されると、図7に概念的に示すように光線の交点として奥行きの異なる位置に、図1に示した立体像7、8に相当する立体像31、32が形成される。
【0034】
ところで、特許文献1記載の三次元画像表示装置では、前述したように垂直拡散スクリーンに近接させてフレネルレンズが配置された構成のスクリーンを使用していた。ここで、このフレネルレンズによる悪影響について更に詳細に説明する。上記スクリーン中のフレネルレンズの球面収差の影響により、スクリーンから射出する光線はスクリーンに投射されるプロジェクタの光軸から離れるほどテレセントリック性が悪化する。
【0035】
テレセントリック性が悪化すると、光線同士の交点が空間的に歪んだ状態となるため、意図した位置に立体像が表示できなくなる。特に、スクリーンのサイズを大きくすればするほどスクリーン周辺で大きな屈折角が必要になることから、テレセットリック性は悪化する。例えば、スクリーンサイズが200インチ程度の高臨場感立体映像システムを構築する際には、非球面フレネルレンズを用いたとしても全プロジェクタをテレセントリックにすることは極めて困難である。大画面化に制約があることは、プロジェクタを用いた映像システムにとって大きなデメリットといえる。
【0036】
また、フレネルレンズは光線の指向性も悪化させる。これは、フレネルレンズの溝の段差部分(急峻な傾きを有する面で、光の屈折には寄与しない面)に光が照射されることで生じるものであり、スクリーンサイズに関わらず発生する。フレネルレンズの溝部分の拡散により外縁光線が広がり、結像F値よりも小さなF値となって、指向性の低い光線として垂直拡散スクリーンから射出されることになる。このように拡散した光線同士が交わったとしても、垂直拡散スクリーンから離れた位置に立体像を形成することは困難である。
【0037】
そこで、前述したように本発明では、フレネルレンズを排除することにより、光線の指向性を高める。もちろん、単にフレネルレンズを取り除いただけでは不十分である。なぜなら、図2からわかるように、本来テレセントリックであるべき主光線10a1〜10a5、あるいは10b1〜10b5等がテレセントリックでないからである。
【0038】
図2において、垂直拡散スクリーン50の中心付近に立体像を表示させるのであれば、このような非テレセントリックな光線を前提とした立体画像をCG(コンピュータグラフィックス)で描画して表示することも可能である。しかしながら、画素50Aや画素50Eから射出される光線が示すように、垂直拡散スクリーン50の周辺部ではスクリーン外側に向かって光線が射出されるため、スクリーン中央付近から観察する場合、スクリーン周辺が欠ける、すなわち視野が限定されるという不具合が生じる。
【0039】
そこで、本発明の第1の実施の形態では、フレネルレンズを用いることなく、垂直拡散スクリーン50から射出される光線が互いにテレセントリックになるような光学系として、図2に示した複数のプロジェクタを1つのプロジェクタアレイユニットとしたとき、複数のプロジェクタアレイユニットを互いに水平方向にシフトさせて配置した構成としたものである。
【0040】
図8は、本発明の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図、図9は、図8の要部の正面図を示す。両図中、同一構成部分には同一符号を付してある。図8において、空間光変調素子10a〜10bおよび各々の投射レンズ20a〜20eからなる複数の投射表示装置を1つのユニットとして扱い、これをプロジェクタアレイユニット10と呼ぶことにする。このプロジェクタアレイユニット10をY方向(水平方向)に一定の間隔だけシフトしたもの(太線で描いてある)を新たなプロジェクタアレイユニット11とする。
【0041】
図9の正面図において、細い実線の円の各々はプロジェクタアレイユニット10を構成する各プロジェクタの投射レンズを模式的に示す。また、太い実線の円の各々はプロジェクタアレイユニット11を構成する各プロジェクタの投射レンズを模式的に示す。また、図9において、斜め垂直方向に隣接するプロジェクタアレイユニット10の投射レンズとプロジェクタアレイユニット20の投射レンズとの間は水平方向に距離X3だけずれて配置されている。更に、図9に示すように、投射レンズ21f等のプロジェクタアレイユニット11の各投射レンズの有効径内の位置に離間対向して、空間光変調素子11f等の空間光変調素子が設けられている。
【0042】
図9にX3で示すプロジェクタアレイユニット10とプロジェクタアレイユニット11との間の水平方向のシフト量は、図8に示した垂直拡散スクリーン50上の画素50Dと50Eの間隔に等しくとるものとする。そうすると、新たなプロジェクタユニット11を構成する空間光変調素子11aから射出された主光線11a5は、もとのプロジェクタユニット10を構成する空間光変調素子10aから射出された主光線10a5と、その光路が互い平行になる。
【0043】
また、空間光変調素子11bから射出された主光線11b5と空間光変調素子10aから射出された主光線10b5の各光路も互いに平行になる。同様に、主光線11c5と主光線10c5、主光線11d5と主光線10d5、主光線11e5と主光線10e5の各光路についても各々平行になる。
【0044】
従って、画素50D、50Eから射出されるこれらの主光線についてはテレセントリックな状態が実現できる。他の画素50A〜50Cからの主光線についても同様にテレセントリックになる。しかし、まだ図8に示す状態では垂直拡散スクリーン50から射出される光線すべてがテレセントリックになっておらず、視野が限定された状態にある。
【0045】
そこで、図10に示すように、新たなプロジェクタアレイユニット12を追加する。このプロジェクタアレイユニット12は、プロジェクタアレイユニット10、11と同一構成であり、プロジェクタアレイユニット11に対して水平方向に前記シフト量X3だけシフトさせて配置される。
【0046】
図10に示す構成の裸眼立体表示装置では、まだすべての主光線はテレセントリックではないが、図10に示すように画素50Aから射出された光線のうちスクリーン内側に向かう光線も現れるようになる。これは視野が広がることを意味する。同時に、垂直拡散スクリーン50上の1つの画素から射出される光線の角度範囲も広がる。これは立体視する際に回り込んで観察可能な範囲である視域が広がることを意味する。
【0047】
そして、更に図11に示すように、プロジェクタアレイユニット10〜12と同一構成のプロジェクタアレイユニット13を新たに追加し、プロジェクタアレイユニット12に対して水平方向に前記シフト量X3だけシフトさせて配置すると、スクリーン端の画素50Aからの光線の射出角が大きくなり、更に視野が拡大すると同時に、視域も拡大する。
【0048】
更に、図12に示すように、プロジェクタアレイユニット10〜13と同一構成のプロジェクタアレイユニット14を新たに追加し、プロジェクタアレイユニット13に対して水平方向に前記シフト量X3だけシフトさせて配置すると、図12に示すように、スクリーン上端の画素50Aからの主光線はZ軸に対して対称になる。その他の画素50B〜50Eからの主光線についてはZ軸に対して非対称であるが、今度はY軸の負の方向に対してプロジェクタアレイユニットを追加しシフトさせることで図13に示すように対称化することができる。
【0049】
すなわち、図13は、本発明になる裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の最終的な構成図を示す。本実施の形態の裸眼立体表示装置は、図13に示すようにY軸の正方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニット11、12、13、14を改めて11R、12R、13R、14Rと記載し、Y軸の負方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニットを11L、12L,13L,14Lとする。
【0050】
このようにプロジェクタアレイユニット同士をシフトさせることにより、垂直拡散スクリーン50のすべての画素50A〜50Eから射出される主光線が、各画素を通りZ軸に平行な軸に対して対称になり、テレセントリックな光線が射出されるようになる。従って、図13に示した第1の実施の形態の裸眼立体表示装置によれば、図27に示した従来装置におけるフレネルレンズ40とそれに近接したスクリーン50から射出される光線10a1〜10e5と等価な光線が、複数のプロジェクタアレイユニットを互いにシフトさせて配置した構成において実現することができる。
【0051】
ここで、図27における従来装置の光線状態と図13における本発明の第1の実施の形態の光線状態との間には大きな違いがある。それは画素50A〜50Eの各々から射出される光線の最大射出角(垂直拡散スクリーン50に垂直な方向(Z方向)と光線がなす角度)が図27に比べて図13の方が大きく、視域が広いということである。これを以下に数式を用いて定量的に説明する。
【0052】
まず、図27に示した従来装置の最大射出角について説明する。図27に示す光線状態における光線の最大射出角、すなわちZ軸と主光線10a1〜10a5とがなす角度は、空間光変調素子10aと投射レンズ20aとの最大偏心量で決まる。図27において、投射レンズの焦点距離をf、投射レンズ20a〜20eの物体側主点と空間光変調素子10a〜10eの距離をa、投射レンズ20a〜20eの像側主点とフレネルレンズ40(またはそれに近接する垂直拡散スクリーン50)との距離をbとすると、結像関係の次式
(1/a)−(1/b)=1/f (1)
が成立する。
【0053】
また、空間光変調素子10a〜10eの水平方向(Y方向)の長さをyd、フレネルレンズ40(またはそれに近接する垂直拡散スクリーン50)の水平方向(Y方向)の長さをysとするとき、投射倍率Mは次式で表される。
【0054】
M=ys/yd=b/a (2)
ここで、投射レンズ20a〜20eの各々に対する空間光変調素子10a〜10eのY方向のシフト量をΔyとし、最大のシフト量△y_maxをとる空間光変調素子10aと投射レンズ20aに着目する。光線の最大射出角は、垂直拡散スクリーン50から射出される光線10a1〜10a5と垂直拡散スクリーン50の法線とのなす角であるから、この角度をφ_oldとすると、φ_oldは次式で表される。
【0055】
φ_old=tan-1(Δy/a)=tan-1(sy/a) (3)
ただし、(3)式中、sは次式で表されるシフト割合を示す。
【0056】
s=Δy/y (4)
ここで、yはY軸と同じ向きの水平方向座標を示し、その座標原点は各々の投射レンズの中心である。
【0057】
次に、図13に示す本発明の第1の実施の形態の裸眼立体表示装置における最大射出角について説明する。図13の第1の実施の形態の裸眼立体表示装置における最大射出角は、空間光変調素子10a〜10eの各々の最大物体高から発する光線がなす角である。この角度は図2における光線の最大射出角である10a5と垂直拡散スクリーン50の法線がなす角度に等しい。この角度をφ_newとすると、次式で表される。
【0058】
【数1】
従って、図27に示した従来装置の構成と図13に示す本実施の形態の装置の構成との最大射出角の差△φは次式で表される。
【0059】
【数2】
(6)式の右辺は1より大であるから、従来のフレネルレンズを用いた図27に示した装置構成における最大射出角φ_oldよりも、本実施の形態の構成の最大射出角φ_newの方が大きくなる。
【0060】
図14は、上記の最大射出角φ_old及びφ_newとシフト割合sとの関係の一例のグラフを示す。このグラフは、a=20mm、y=15mmの場合に、シフト割合sに対して最大射出角φ_old及びφ_new、並びに△φ=φ_new−φ_oldがどのようになるかをプロットしたグラフである。同図において、黒四角でプロットした本実施の形態の最大射出角φ_newは、黒丸でプロットした従来の最大射出角φ_oldに対して、シフト割合sが大きくなればなるほど大きくなることが分かる。
【0061】
例えば、レンズシフト機能を有する投射レンズが有する水平方向のシフト割合として一般的な値であるs=30%付近で見ると、従来の最大射出角φ_oldが13度であるのに対し、本実施の形態の最大射出角φ_newは31度となり、本実施の形態の方が最大射出角が2倍以上に拡大できることが分かる。この最大射出角は、そのまま立体視可能な範囲である視域(あるいは視野角)に結びついており、この例の場合は全角で62度の視域が得られ、従来にない広視域の裸眼立体表示装置が実現できる。
【0062】
このように、第1の実施の形態では、水平方向に一定間隔で配置した複数の投射レンズの各々に対して、空間光変調素子を水平方向にシフトさせることにより異なる方向に指向性の高い光線を射出する裸眼立体表示装置において、各々の投射レンズから射出される光線の角度範囲を最大限に利用できるような構成にすることで、フレネルレンズを使用しない構成にしたため、垂直拡散スクリーン50からの光線の指向性が向上し、垂直拡散スクリーン50から飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示できる。また、本実施の形態によれば、垂直拡散スクリーン50上で光が屈折することがなくなるため、大きい入射角同士の光線も平行化することが可能となり、多人数で観察するのに十分に広い視域が得られるようになるという効果がある。
【0063】
(第2の実施の形態)
図15は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態は、垂直拡散スクリーン50上で各々のプロジェクタアレイの像面を共通化せずに、つまり重ねないで水平方向(Y方向)に最初からシフトさせてある点に特徴がある。このため、空間光変調素子10a〜10eの間隔は、図2及び図13の場合に比べて大きくなっている。
【0064】
次に、本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態では、プロジェクタアレイユニットが垂直拡散スクリーン50上に投影する各々の画像を水平方向にずらすように投射する。すなわち、最大のシフト量をもつ空間光変調素子10aからの主光線のうち、例えば最大物体高の主光線10a5は、垂直拡散スクリーン50上の画素50Dを通過するように配置する。一方、空間光変調素子10aからの主光線のうち、主光線10a1は、垂直拡散スクリーン50から外れている。このような光線は不要であるから、非表示にするか、あるいは後述するような反射光学系を用いて再利用することもできる。
【0065】
このようにプロジェクタアレイユニットを構成する各プロジェクタからの像面を共通化しないで水平方向にシフトさせたプロジェクタアレイユニットを、第1の実施の形態と区別して非共通像面プロジェクタアレイユニットと呼ぶことにする。なお、基本構成である非共通像面プロジェクタアレイユニットは、図13と同様に、水平方向に複数ずらして配置される。
【0066】
図16は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例1の基本構成図を示す。この変形例は、図15に示した構成に比べて非共通像面プロジェクタアレイユニットを構成する空間光変調素子10a〜10eの間隔を更に大きくし、空間光変調素子10aからの最大物体高の主光線10aが垂直拡散スクリーン50の中心である画素50Cを形成するように配置した非共通像面プロジェクタアレイユニット構成である。
【0067】
垂直拡散スクリーン50の中心に関しては、第1の実施の形態で述べたのと同様な最大の射出角が得られ、垂直拡散スクリーン50の中心に表示した立体像については、最大の視域で視覚することができる。また、スクリーン端に表示した立体像についても、第1の実施の形態における図2、図13の場合に比べると視野が改善されている。この変形例によれば、経済的な事情からプロジェクタの台数をあまり多くできない場合に、立体表示することも可能である。
【0068】
図17は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例2の基本構成図を示す。この変形例は、図16に示した構成における非共通像面プロジェクタユニットをシフトさせた構成である。シフト後の非共通像面プロジェクタアレイユニットは、太線で描いている。図17は、図の一部が重なっているため判別しづらいが、シフト後の非共通像面プロジェクタアレイユニットの構成要素である空間光変調素子10aから射出される主光線10a5は、垂直拡散スクリーン50の画素50Bを形成する。
【0069】
図18は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例3の基本構成図を示す。この変形例は、非共通像面プロジェクタアレイユニットをさらにシフトさせて主光線10a5が垂直拡散スクリーン50の中心の画素50Cを形成するように配置した図である。この構成は、第1の実施の形態における図12に対応している。図12との違いは、この変形例の方がプロジェクタ数が少ないため光線数が少なく、またプロジェクタ間隔も疎であるため主光線の角度ピッチも疎であることが挙げられる。
【0070】
この主光線の角度ピッチは、外縁光線10c3mの広がり角、つまりF値とマッチさせる必要がある。これには、(1)垂直拡散スクリーン50に水平拡散特性をもたせる方法(すなわち、スクリーン上の画素から異なる方向に投射される各々の主光線の角度ピッチをスクリーンの水平拡散角と一致させる方法)と、(2)垂直拡散スクリーン50では何ら水平拡散は行わずに、プロジェクタの投射レンズ20aの開口サイズで結像F値を調整する方法(すなわち、スクリーン上の画素から異なる方向に投射される各々の主光線の角度ピッチを投射レンズのF値と一致させる方法)と、(3)スクリーン上の画素から異なる方向に投射される各々の主光線の角度ピッチを照明光学系のF値と一致させる方法とがある。F値と角度ピッチがマッチしない場合は、ストライプ状の輝度むらとして視覚されることになる。
【0071】
図15〜図18に示した第2の実施の形態及びその変形例によれば、プロジェクタユニットを最初から水平シフト状態で構成するため、第1の実施の形態に比べて必要なプロジェクタ数を減らすことができるとともに、プロジェクタ間隔が大きいために、設置の自由度が高まるというメリットがある。
【0072】
(第3の実施の形態)
図19は、本発明になる裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の上面図、図20は、本発明になる裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の正面図を示す。図19及び図20中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態は、プロジェクタアレイユニット10と、プロジェクタアレイユニット10に対してY軸の正方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニット11Rと、Y軸の負方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニットを11Lとを有する。
【0073】
第1の実施の形態では、プロジェクタアレイユニット10に対して、プロジェクタアレイユニット11Rと11Lとがそれぞれ同じ垂直線上に投射レンズの中心位置が重複する位置にシフトされているものがあるのに対し、本実施の形態は、図19及び図20に示すように、投射レンズは同じ垂直線上には互いに重複することなく配置されている点に特徴がある。また、図19及び図20に示すように、投射レンズ20c、21Lc、21Rcは同一水平線上に一定間隔で配置され、かつ、空間光変調素子10c、11Rc、11Lcは投射レンズ20c、21Lc、21Rcの光軸に対して互いに異なるシフト量偏心した位置に配置されている。
【0074】
同一水平線上にある他の投射レンズ20aと21Laの各光軸に対する空間光変調素子10aと11La、同一水平線上にある他の投射レンズ20bと21Lbの各光軸に対する空間光変調素子10bと11Lb、同一水平線上にある他の投射レンズ20dと21Rbの各光軸に対する空間光変調素子10dと11Rb、同一水平線上にある他の投射レンズ20eと21Rcの各光軸に対する空間光変調素子10eと11Rcも同様に、偏心した位置に配置されている。
【0075】
プロジェクタアレイユニット10を構成する空間光変調素子に供給される視差画像は、プロジェクタアレイユニット11R、11Lに供給される視差画像とは異なる。すなわち、両者の視差画像の注視点の位置は、共通像面の水平方向シフト量に対応してシフトさせるようにする。
【0076】
このようにプロジェクタアレイユニット同士をシフトさせることにより、垂直拡散スクリーン50のすべての画素から射出される主光線が、各画素を通りZ軸に平行な軸に対して対称になり、テレセントリックな光線が射出されるようになる。従って、本実施の形態も、第1、第2の実施の形態と同様に、図27に示した従来装置におけるフレネルレンズ40とそれに近接したスクリーン50から射出される光線10a1〜10e5と等価な光線を射出するように実現することができる。
【0077】
図26は、本発明になる裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の変形例の斜視図を示す。同図中、図19、図20と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。この変形例は、プロジェクタアレイユニット10に対してY軸の正方向にプロジェクタアレイユニットが11R、・・・で示すように2以上シフトして配置され、かつ、Y軸の負方向にプロジェクタアレイユニットが11L、12L、・・・で示すように2以上シフトして配置されている点に特徴がある。
【0078】
各プロジェクタの水平方向間隔は等間隔に配置されている。プロジェクタアレイユニット10は、投射レンズに対して空間光変調素子をシフトさせることにより投射方向を変え、垂直拡散スクリーン50上に共通像面を形成する。共通像面を形成することができるプロジェクタアレイの数は、上記シフト機構により制限されており、シフトの限界値を超えた場合には、共通像面に重ねて投射させることができない。そこで、プロジェクタアレイユニット11R、11Lは、プロジェクタアレイの共通像面から水平方向にシフトした位置に共通像面を形成する。
【0079】
(第4の実施の形態)
図21は、本発明になる裸眼立体表示装置の第4の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図において、図2と同一符号の空間光変調素子10a〜10e、投射レンズ20a〜20e、垂直拡散スクリーン50等は第1の実施の形態と同一構成であるためその説明を省略する。本実施の形態では、第1の実施の形態の空間光変調素子10a及び投射レンズ20aの外側に、空間光変調素子10f、10g等の複数の空間光変調素子と、投射レンズ20f、20g等の複数の投射レンズとを配置した点に特徴を有する。
【0080】
次に、本実施の形態の動作について説明する。投射レンズ20fは、空間光変調素子10fを物体面として、垂直拡散スクリーン50上に結像する。第1の実施の形態の場合と異なり、空間光変調素子10fからのすべての光線が垂直拡散スクリーン50上に投射される。当然ながら、このためには、投射レンズ20fには大きな角度で投射される主光線すなわち、10f1、10f3,10f5(10f2および10f4については図の簡略化のため図示していない)の周囲に付随する外縁光線(不図示)が垂直拡散スクリーン50上で収束するような結像性能を有することが要求される。
【0081】
すなわち、投射レンズ20fはイメージサークル径(有効径)が大きくなければならない。イメージサークル径の外側の光線は垂直拡散スクリーン50で各種収差を発生し、像のぼけや歪みなどが生じる。しかし、空間光変調素子10fに表示させる画像を予め補正しておくことにより、収差の発生を低減させることが可能である。当然ながら、すべての収差を電気的に補正することは不可能であるが、少なくとも結像位置に関する収差である歪曲収差、倍率色収差については電気的な画像処理により補正可能である。そこで、電気的な補正によりイメージサークルを実質的に拡大した後に、第1または第2の実施の形態で述べたようにプロジェクタアレイユニットを用いて視野および視域を拡大すればよい。
【0082】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態は、投射レンズの光学性能に対する要求は一般的に厳しくなるが、第1の実施の形態とは異なり、空間光変調素子上のすべての光線を有効に利用することができる。また、電気的な補正を併用することにより、投射レンズの光学性能の要求を抑えながら、第1〜第3の実施の形態に比べてシンプルな構成で本発明の第4の実施の形態と同一構成を実施することができる。
【0083】
また、本実施の形態ではすべての空間光変調素子上のすべての画素を点灯させる構成であるため、照明光を有効利用できるため明るい立体像を形成しやすく、このため、より大画面な立体表示を行うことができる。
【0084】
更に、本実施の形態では、電気的補正を行うことにより、実質的なイメージサークル径を拡大でき(偏心可能な範囲を実質的に拡大させることができ)、第1〜第3の実施の形態で述べたプロジェクタアレイユニットを構成することにより、視野または視域の周辺部分では電気的補正によりやや画質が劣化した立体像となるが、実用上重要な視野または視域の中心部分では画質劣化のない立体像が得られる。
【0085】
(第5の実施の形態)
図22は、本発明になる裸眼立体表示装置の第5の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図において、図2と同一符号の空間光変調素子10a〜10e、投射レンズ20a〜20e、垂直拡散スクリーン50等は第1の実施の形態と同一であるため、その説明を省略する。本実施の形態では、第1の実施の形態の空間光変調素子10a及び投射レンズ20aの外側に、光軸がZ軸に対して傾いた空間光変調素子10h、10i等の複数の空間光変調素子と、投射レンズ20h、20i等の複数の投射レンズとを配置した点に特徴を有する。
【0086】
次に、本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態では、空間光変調素子10h、10i等の複数の空間光変調素子と、投射レンズ20h、20i等の複数の投射レンズの各光軸が垂直拡散スクリーン50のスクリーン面に対して垂直でないため、当然ながらキーストーン歪が生じる。このため、これをキャンセルするような電気的歪み補正を行う。周知の電気的歪み補正の方法についての説明は省略する。
【0087】
本実施の形態では、イメージサークル径が大きくない固定の投射レンズのプロジェクタを用いた場合であっても、プロジェクタを傾斜させて、さらに電気的歪補正を行うことで、所期の動作を実施することができる。本実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、空間光変調素子と投射レンズとの平行偏心の量を低減させることができる。
【0088】
(第6の実施の形態)
図23(b)は、本発明になる裸眼立体表示装置の第6の実施の形態の光学系の要部の基本構成図を示す。一般的には、投射レンズ20の光軸は、図23(a)に示すように、空間光変調素子10の光軸と一致しており傾きや偏心はない。これに対し、本実施の形態では、図23(b)に示すように、投射レンズ20の光軸が空間光変調素子10に対して傾斜しており、つまり傾き偏心をもった投射レンズである点に特徴がある。本実施の形態によれば、投射レンズ20に傾き偏心をもたせることにより、投射レンズを通過する光線が屈折し、傾き偏心がない場合に比べてより大きな角度で投射することができる。
【0089】
もちろん、傾き偏心の量が過大になれば、各種の収差が無視できなくなる。そのため、垂直拡散スクリーン50上の画質劣化が許容される範囲内で実施するよう、図23(c)に示すように、投射レンズ20の光軸を空間光変調素子10の光軸に対してシフトする通常のレンズシフト(平行偏心)と併用することが好ましい。
【0090】
本実施の形態によれば、プロジェクタの配置は傾けないで投射レンズ20のみを傾けることにより、プロジェクタアレイの設置を容易化することができる。また、投射レンズ20に傾き偏心をもたせることにより、これまで述べた通常のシフト、つまり平行偏心の量を減らすことができる。
【0091】
(第7の実施の形態)
図24は、本発明になる裸眼立体表示装置の第7の実施の形態の光学系の構成図を示す。同図中、図8と同一構成部分には同一符号を付してある。本実施の形態は、図8に示した構成にミラー70Rおよび70Lを追加した点に特徴がある。ミラー70Rの一端は垂直拡散スクリーン50の垂直方向の一側端に一致し、かつ、その長手方向が投射レンズ20a〜20e等の光軸と平行になるように配置されている。また、ミラー70Lの一端は垂直拡散スクリーン50の垂直方向の他の側端に一致し、かつ、その長手方向が投射レンズ20a〜20e等の光軸と平行になるように配置されている。更に、ミラー70Rと70Lの各反射面は互いに対向するように配置されている。なお、図24において、空間光変調素子11a’及び投射レンズ21a’は、水平方向のサイズが空間光変調素子11a及び投射レンズ21aの水平方向のサイズのそれぞれ1/2倍とされている。
【0092】
本実施の形態では、ミラー70R及び70Lは本来垂直拡散スクリーン50から外れた方向に向かう光線を反射させ、再び垂直拡散スクリーン50に結像させる機能を有する。この結果、図24において、15で示す位置にはミラー70R及び70Lで囲まれた範囲内にある空間光変調素子及び投射レンズと同じ構成の空間光変調素子及び投射レンズが存在するかのような虚像が形成され、その虚像からの光が出射される。これにより、上述した実施の形態では垂直拡散スクリーン50の外側にプロジェクタが配置されていたが、本実施の形態では不要となり、プロジェクタ数及び設置スペースが節約されることになる。
【0093】
ここで、本実施の形態では、ミラー70R及び70Lを用いることにより、コマ収差やミラー70R及び70Lの平面度に依存した歪曲等が発生するため、垂直拡散スクリーン50上の画素のスポット形状や位置は、ミラー70R及び70Lで反射した光線によるものとそうでないものとで異なる。
【0094】
そのため、これを補正する光学系が必要となるが、コマ収差に関しては画像の一部のみが収差の影響を受けているのであれば補正は困難である。歪曲収差については電気的な歪補正でキャンセルすることが可能である。従って、ミラーは設置スペースの関係で使用せざるをえない場合に限り、画質劣化が許される範囲内で使用すべきである。
【0095】
(第8の実施の形態)
図25(a)は、本発明になる裸眼立体表示装置の第8の実施の形態の要部の構成図、同図(b)は、本発明になる裸眼立体表示装置の第8の実施の形態の要部の変形例の構成図を示す。図25(a)に示す第8の実施の形態は、垂直拡散スクリーン50の替りに、光拡散面(レンチキュラー又はホログラム面)52にアルミニウムなどの金属反射膜あるいは誘電体反射膜53をコートした反射性垂直拡散スクリーン51Aを使用したものである。
【0096】
また、図25(b)に示す第8の実施の形態の変形例は、垂直拡散スクリーン50の替りに、表面に光拡散面(レンチキュラー又はホログラム面)54を形成し、裏面にアルミニウムなどの金属反射膜あるいは誘電体反射膜55をコートした反射性垂直拡散スクリーン51Bを使用したものである。
【0097】
この実施の形態では、反射膜付垂直拡散スクリーン51A、51Bに対して、前面に空間光変調素子及び投射レンズを配置してフロント投射する。反射膜付垂直放散スクリーン51A、51Bでは水平方向には反射又は僅かな拡散のみを行い、垂直方向には拡散したストライプ状の光線が形成される。
【0098】
本実施の形態によれば、リア投射の場合に比べて、スクリーン基材の通過による像のぼけが発生しないため、スクリーン上の画素を鮮明に結像することができるため、より解像感の高い立体像を形成することができる。
【0099】
(第9の実施の形態)
本発明になる裸眼立体表示装置の第9の実施の形態は、第1〜第8の実施の形態のうちのいずれか一の実施の形態の垂直拡散スクリーン50又は反射膜付垂直拡散スクリーン51A、51Bの替りに、円筒スクリーンを用いたものである。円筒スクリーンは、半円筒状の内面又は外面をスクリーンとするもので、リア投射とフロント投射とがある。リア投射の場合の円筒スクリーンは、プロジェクタアレイユニットを円筒スクリーンの外面側の後方に配置して円筒スクリーンの外面上に画素を形成し、その画素を二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で円筒スクリーンの内面側に投射することにより空間に形成される立体像を円筒スクリーンの内面側に位置する観測者により観測させる。
【0100】
また、フロント投射の場合の円筒スクリーンは、円筒スクリーンの外面に金属反射膜あるいは誘電体反射膜をコートした反射性スクリーンとし、プロジェクタアレイユニットを円筒スクリーンの内面側前方に円筒スクリーンの曲率にほぼ一致させて配置して円筒スクリーン上に画素を形成し、その画素を二次光源として反射される主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより空間に形成される立体像を円筒スクリーンの内面側に位置する観測者により観測させる。
【0101】
本実施の形態によれば、円筒スクリーンを用いることで、光線の最大射出角に対する要求を緩和することができる。
【0102】
(第10の実施の形態)
本発明になる裸眼立体表示装置の第10の実施の形態は、第1〜第9の実施の形態のうちのいずれか一の実施の形態のスクリーンの替りに、拡散特性が等方的なスクリーンを用いたものである。
【0103】
本実施の形態によれば、空間光変調素子からの光線はスクリーン上で結像された後、スクリーン上の画素を二次光源として主光線が垂直方向と水平方向にそれぞれ拡散され、垂直方向と水平方向それぞれに同様な結像Fナンバーで射出される。従って、本実施の形態では、垂直方向にも輝度と色度が異なる光線が射出され、水平方向と同様な運動視差が実現される。これはレンズアレイを用いないIP(インテグラルフォトグラフィー)である。
【0104】
本実施の形態と通常のIPとの違いは、レンズアレイの収差の影響を受けないことから広い視域を得られ易い点が挙げられる。反面、画像の輝度の一様性についてはレンズアレイを用いた方がより容易に一様な輝度特性が得られやすい。
【0105】
(第11の実施の形態)
本発明になる裸眼立体表示装置の第11の実施の形態は、第1〜第10の実施の形態のうちのいずれか一の実施の形態のスクリーンの替りに、ドームスクリーンを用いたものである。ドームスクリーンは、中空の半球状の内面又は外面をスクリーンとするもので、リア投射の透過型ドームスクリーンとフロント投射の反射型ドームスクリーンとがある。
【0106】
リア投射の場合の透過型ドームスクリーンは、プロジェクタアレイユニットをドームスクリーンの外部の後方に配置してドームスクリーンの外面上に画素を形成し、その画素を二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度でドームスクリーンの内部に投射することにより空間に形成される立体像をドームスクリーンの内部に位置する観測者により観測させる。
【0107】
また、フロント投射の場合の反射型ドームスクリーンは、ドームスクリーンの外面に金属反射膜あるいは誘電体反射膜をコートした反射性スクリーンとし、プロジェクタアレイユニットをドームスクリーンの内部の曲率中心位置にほぼ一致させて配置してドームスクリーン上に画素を形成し、その画素を二次光源として反射される主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより空間に形成される立体像をドームスクリーンの内部に位置する観測者により観測させる。
【0108】
この実施の形態では、ドームスクリーンの前方又は後方の球面上に配置した空間光変調素子からの光線は広角の投射レンズを介して拡散角の小さなドームスクリーンに反射または透過し、指向性の高い光線として空間に集積されて立体像を形成することで、本発明の非共通像面プロジェクタアレイユニットを適用しながら、スクリーン前面に投影像をずらしながら立体像を形成することができる。
【0109】
本実施の形態では、フレネルレンズを使用しないことにより、スクリーン射出角の制限はほとんどなく、メガネなしで立体プラネタリムなどの3Dドームコンテンツを視聴できるようになる。これはフレネルレンズを使用する構成では不可能であり、本実施の形態によりこれまでにない臨場感が飛躍的に向上した裸眼立体表示が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の裸眼立体表示装置の電気系の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の光学系の基本構成を示す図である。
【図3】プロジェクタアレイとスクリーンの関係を示す斜視図である。
【図4】図1及び図2中のプロジェクタアレイユニットの概略正面図である。
【図5】スクリーン上の1画素から射出される光線を示す概念図である。
【図6】スクリーン上の異なる画素からの光線が立体像を形成する概念図である。
【図7】立体像が形成されるしくみを示す概念図である。
【図8】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その1)である。
【図9】図8の要部の正面図である。
【図10】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その2)である。
【図11】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その3)である。
【図12】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その4)である。
【図13】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の光学系の構成図である。
【図14】本発明により視域が拡大されることを例示するグラフである。
【図15】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の基本構成図である。
【図16】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例1の基本構成図である。
【図17】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例2の基本構成図である。
【図18】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例3の基本構成図である。
【図19】本発明の裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の上面図である。
【図20】本発明の裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の正面図である。
【図21】本発明の裸眼立体表示装置の第4の実施の形態の光学系の基本構成図である。
【図22】本発明の裸眼立体表示装置の第5の実施の形態の光学系の基本構成図である。
【図23】本発明の裸眼立体表示装置の第6の実施の形態の光学系の要部の基本構成図と一般的な構成図及び変形例を示す図である。
【図24】本発明の裸眼立体表示装置の第7の実施の形態の光学系の構成図である。
【図25】本発明の裸眼立体表示装置の第8の実施の形態の要部の各例の構成図である。
【図26】本発明の裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の変形例の斜視図である。
【図27】従来の裸眼立体表示装置の一例の光学系の構成図である。
【符号の説明】
【0111】
1 裸眼立体表示装置
2 パーソナルコンピュータ(PC)
3 ハブ
4−1〜4−n ネットワーク接続ストレージ(Network Attached Storage:NAS)
5−1〜5−n プロジェクタ(PJ)5
6 スクリーン
10〜14、11R、11L、12R、12L、13R、13L、14R、14L プロジェクタアレイユニット
10a〜10i 空間光変調素子
20a〜20i、21a〜21f 投射レンズ
50 垂直拡散スクリーン
50A〜50E スクリーン上の画素
51A、51B 反射性垂直拡散スクリーン
52、55 光拡散面(レンチキュラー又はホログラム面)
53 金属反射膜又は誘電体反射膜
70R、70L ミラー
【技術分野】
【0001】
本発明は裸眼立体表示装置に係り、特にメガネを使用しないで自然な立体像を表示する裸眼立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハイビジョン市場の成熟に伴い、特殊なメガネを使用しないで立体像を視覚可能な裸眼立体表示装置の開発が活発に行われている。裸眼立体表示装置の実用化に向けた最大の課題は立体像の解像度と視域(立体像を回り込んで観察することのできる範囲。一般の二次元ディスプレイの場合は視野角と呼ばれる)の両立である。しかし、現行の表示デバイスを用いたのでは、実用的な解像度と視域を得ることは極めて困難である。
【0003】
これを解決するために、複数の表示デバイスを用いることにより解像度と視域を向上させた三次元画像表示技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。図27は、この特許文献1記載の三次元画像表示装置の一例の構成図を示す。同図に示すように、この特許文献1記載の三次元画像表示装置は、水平方向の間隔が等間隔になるように二次元配置した多数のプロジェクタ内の空間光変調素子10a〜10eから投射レンズ20a〜20eを通して射出された光線をレンズシフトにより偏向させ、スクリーン上に重畳させて投射した後に、当該スクリーンからの光線を垂直方向には拡散するとともに水平方向には平行光として(テレセントリックに)異なる方向に投射することにより、水平方向の立体視に特化した高画質な裸眼立体像を実現する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−309975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1記載の従来の三次元画像表示技術によれば、スクリーンが2枚構成であって、図27に示すように垂直拡散スクリーン50に近接させてフレネルレンズ40が配置されており、フレネルレンズ40により、その物体側焦点距離と投射距離が一致するように構成することによって主光線を互いに平行化(テレセントリックに)するために用いられる。
【0006】
しかしながら、この構成ではフレネルレンズ40の光軸近傍の空間光変調素子からの入射光に対してはほぼ平行化できたとしても、光軸から遠く離れた空間光変調素子からの入射光に対しては平行化することは困難である。その理由は、フレネルレンズ40は本質的に単レンズだからである。すなわち、屈折面を高々2面しかもたない1枚のフレネルレンズ40で平行化できる光線の入射角の範囲には限界があり、たとえ非球面フレネルレンズを用いたとしても、複数人で観察するのに十分な角度、例えば全角40度以上で平行化することは、事実上困難である。このため、いくらプロジェクタの数を増やしても十分に視域が広がらないという課題がある。
【0007】
また、フレネルレンズの溝で光が拡散することにより、水平方向の光の指向性が低下し、スクリーンから手前に飛び出した位置での立体像の解像度が低下する。このため、スクリーン付近またはスクリーン奥にしか立体像を表示できないという課題がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、スクリーンからの光線の指向性を向上し、スクリーンから飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示でき、また、多人数で観察するのに十分に広い視域を実現可能な裸眼立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の裸眼立体表示装置は、水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の投射レンズと、複数の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた投射レンズの物体面上にあって投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の空間光変調素子と、複数の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、複数の投射レンズの像面上にあって、複数の空間光変調素子の画素からそれぞれ射出される照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素のそれぞれを二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、スクリーン上に結像された複数の画素のそれぞれから異なる方向に投射される主光線の角度ピッチを、複数の投射レンズのF値、又はスクリーンの水平拡散角、又は照明光学系のF値に一致させる手段を備えてもよい。
【0011】
また、本発明は、複数の投射レンズ、複数の空間光変調素子、及び照明光学系からなり、複数の投射レンズからそれぞれ投射された主光線によりスクリーンに共通の複数の画素を結像する構成をプロジェクタアレイユニットとしたとき、第1のプロジェクタアレイユニットに対して、水平方向でかつ一方向に所定間隔ずつシフトした複数の第2のプロジェクタアレイユニットを配置すると共に、水平方向でかつ一方向とは反対方向に所定間隔ずつシフトした複数の第3のプロジェクタアレイユニットを配置し、第1乃至第3のプロジェクタアレイユニットからスクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、スクリーンから射出する主光線を互いにテレセントリックに投射させるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明は、複数の投射レンズ、複数の空間光変調素子、及び照明光学系からなり、複数の投射レンズからそれぞれ投射された主光線によりスクリーンに結像する複数の画素の像面を共通化しない構成を非共通像面プロジェクタアレイユニットとしたとき、水平方向に所定間隔ずつシフトした複数の非共通像面プロジェクタアレイユニットを配置し、
非共通像面プロジェクタアレイユニットからスクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、スクリーンから射出する主光線を互いにテレセントリックに投射させるようにしてもよい。また、スクリーンに重ねて投射された複数の空間光変調素子からの画像の歪曲収差又は倍率色収差を電気的に補正する手段を備えるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の第1の投射レンズと、水平及び垂直の両方向に対してそれぞれ傾斜した方向に二次元配置され、かつ、水平方向に対して傾斜した方向に等間隔で配置された複数の第2の投射レンズと、複数の第1の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた第1の投射レンズの物体面上にあって第1の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第1の空間光変調素子と、複数の第2の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた第2の投射レンズの物体面上にあって第2の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第2の空間光変調素子と、複数の第1及び第2の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、複数の第1及び第2の投射レンズの像面上にあって、複数の第1及び第2の空間光変調素子の画素からそれぞれ出射される照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素のそれぞれを二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、上記の第2の空間光変調素子は、その光軸が第2の投射レンズの光軸と互いに平行に偏心され、かつ、投射レンズの光軸に対して傾きをもって偏心されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フレネルレンズを使用しない構成にしたため、スクリーンからの光線の指向性が向上し、スクリーンから飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示できる。また、本発明によれば、大きい入射角同士の光線も平行化することが可能となり、多人数で観察するのに十分に広い視域が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の実施の形態について図面と共に説明する。
【0017】
図1は、本発明になる裸眼立体表示装置の一実施の形態の電気系の基本構成図を示す。同図において、裸眼立体表示装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)2と、PC2からのデータをn分岐するハブ3と、ハブ3に接続されたn台のネットワーク接続ストレージ(Network Attached Storage:NAS)4−1〜4−nと、NAS4−1〜4−nに対して1対1に対応して設けられ、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブルを介して接続されたプロジェクタ(PJ)5−1〜5−nとからなる。
【0018】
ネットワーク上で読み取り可能な記憶媒体であるNAS4−1〜4−nのそれぞれは、1台のPC2からマルチキャストにより同時に送信されたデータを受け、映像出力のタイミングをフレーム単位で制御する。NAS4−1〜4−nのそれぞれは、ゲンロック(GENeratorLOCK、ジェンロックともいう)機構又はゲンロックと同等な同期手段を有しており、各視点画像(view1_sig〜viewn_sig)の位相と周波数を同期させる。NAS4−1〜4−nのそれぞれから出力された各視点画像(view1_sig〜viewn_sig)は、HDMIケーブルを介してプロジェクタ5−1〜5−nに入力される。
【0019】
プロジェクタ5−1〜5−nは、それぞれ入力された各視点画像を空間光変調素子に供給して二次元画像表示させ、その画像表示された光を投射レンズを通してスクリーン6に投射し、スクリーン6からの空間における各光線の交点に球形の立体像7や直方体の立体像8などの所望の立体像を表示させる。
【0020】
以上の構成のうち、本実施の形態の裸眼立体表示装置1は、プロジェクタ5−1〜5−nの配置構成が、以下説明する各実施の形態のいずれかの構成である点に特徴を有し、スクリーン6としてフレネルレンズを使用しない構成のスクリーンを用いることができるようにしたものである。
【0021】
次に、本発明の裸眼立体表示装置の光学系(プロジェクタ5−1〜5−nの配置構成)の各実施の形態について図面と共に説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図2は、本発明になる裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図において、空間光変調素子10aと投射レンズ20aとは第1のプロジェクタ内に設けられている。同様に、空間光変調素子10bと投射レンズ20b、空間光変調素子10cと投射レンズ20c、空間光変調素子10dと投射レンズ20d、空間光変調素子10eと投射レンズ20eは、それぞれ別々のプロジェクタ内に設けられている。なお、図示を省略したが、空間光変調素子10a〜10eの各照明光学系も各プロジェクタ内に設けられている。
【0023】
また、図2の基本構成図及び図3の斜視図に示すように、空間光変調素子10a〜10eと、投射レンズ20a〜20eとが、垂直拡散スクリーン50の前方に配置されている。また、図4の正面図において、実線の円は図2に示した投射レンズ20a〜20e及び図2には図示されていない他のプロジェクタ内の投射レンズを模式的に示す。投射レンズ20a〜20e等の投射レンズは、水平方向に例えば5つ配置され、斜め垂直方向に例えば5つ配置された2次元配置とされている。また、図4において、斜め垂直方向に隣接する投射レンズ間は水平方向に距離X1だけずれて配置され、最上部位置の投射レンズと水平方向に隣接する最下部位置の投射レンズとの間は水平方向に距離X2だけずれて配置されている。更に、図4に示すように、投射レンズ20f等の各投射レンズの有効径内の位置に離間対向して、空間光変調素子10f等の空間光変調素子が設けられている。
【0024】
図2において、空間光変調素子10a〜10eは、例えば、液晶表示素子(LCD)、反射型液晶表示素子(LCOS)、反射型素子(DMD:登録商標)、光の回折効果を利用して光の向きや色などを制御する投影デバイス「マイクロリボンアレイ」を使用した表示素子(GLV:登録商標)などで構成された二次元画像表示装置である。また、投射レンズ20a〜20eは、1対1に対応して設けられた空間光変調素子10a〜10eで表示された画像からの光を垂直拡散スクリーン50に投射する。ここでは、投射レンズ20a〜20eは1枚の単レンズとして描かれているが、実際には複数のレンズからなるレンズ系、および個々のレンズを保持するホルダー、通過する光線のFナンバーを決める開口絞りからなる。
【0025】
また、空間光変調素子10a〜10eは、図示しない光源及び照明光学系によってそれぞれ照明されているものとする。照明光学系は超高圧水銀ランプのような周知の白色光源のほか、発光ダイオード(LED)やレーザーのような周知の単色光源でもよい。白色光源の場合は、カラーフィルタやダイクロイックフィルター等を用いた周知のカラー化技術によって色度を付与されるが、ここでは説明を省略する。
【0026】
垂直拡散スクリーン50は、図1に示したスクリーン6に相当し、例えば、レンチキュラースクリーンやホログラフィックスクリーンなどであり、垂直方向に拡散した光を射出する。ここで垂直方向とは図2中、X方向である。また、図2中、水平方向はY方向、奥行き方向はZ方向を指す。垂直拡散スクリーン50上には、投射レンズ20a〜20eから投射された光により画素50A〜50Eが結像されている。また、投射レンズ20a、20b、20c、20d、20eから投射されて垂直拡散スクリーン50から射出される光10a1〜10a5,10b1〜10b5、10c1〜10c5,10d1〜10d5、10e1〜10e5は、主光線を表す。また、主光線10c3の周囲の10c3mは外縁光線を表す。すべての主光線に外縁光線が付随するが、10c3m以外の外縁光線は図の簡略化のため省略している。
【0027】
次に、図2の基本動作について説明する。空間光変調素子10a〜10eに対する照明光は、光の強度及び色度が画素単位で変調され、投射レンズ20a〜20eを通過する。投射レンズ20a〜20eは水平方向(Y方向)に等間隔に配置されている。これに対し、投射レンズ20a〜20eのそれぞれの図示しない光軸に対して、各々の空間光変調素子10a〜10eが水平方向及び垂直方向に偏心した位置に配置されている。プロジェクタの周知技術としてレンズシフト機構があるが、ここでは一定間隔で固定されたレンズに対して空間光変調素子10a〜10eをシフトさせている。
【0028】
空間光変調素子10a〜10eと垂直拡散スクリーン50とは共役関係にあり、外縁光線10c3mに示すように空間光変調素子10a〜10eから発散する光線は垂直拡散スクリーン50で収束して結像し、垂直拡散スクリーン50上に画素50A〜50Eを形成する。ここで形成された画素50A〜50Eは、一般的なプロジェクタで形成する画素とは異なり、方向によって異なる輝度と色度をもつ光線(主光線とその周りに付随する外縁光線)を発するものである。例えば、画素50Cからの主光線は、図2の上から10e3、10d3、10c3、10b3、10a3で、これらは各々異なる空間光変調素子10e、10d、10c、10b、10aから射出された光によるものである。
【0029】
図5は、垂直拡散スクリーン50上の一つの画素から射出される光線の様子を示す図である。図5(a)は上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は斜視図である。図5(a)に示すように、垂直拡散スクリーン50上の画素からは、水平面上異なる方向(図5では19方向)に細長い扇形の光線が射出されている。各扇形の頂角が、プロジェクタのF値に対応し、隣り合う扇形は重ならず、かつ、隙間が無いようにF値を設計する。この設計が不完全であると、視点をY方向(水平方向)に移動したときに輝度むらが観測されることになる。
【0030】
図5(b)の側面図は、画素からの光線が垂直方向に拡散される様子を示している。垂直拡散スクリーン50上で垂直拡散を行うのは、垂直方向の立体情報を放棄することにより、水平方向により高密度な光線を再現するためである。図5(c)の斜視図に示すように、垂直方向に細長い四角錘の形状の光線が多方向に射出されている。
【0031】
図6は、垂直拡散スクリーン50上の複数の画素から射出される光線の様子を示す図である。図6(a)は上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は斜視図を示す。図6(a)に示すように、垂直拡散スクリーン50上の複数の画素からの光線は、扇形空間に集積されて点の三次元画像が形成される。一般の三次元画像は、この点の三次元画像が多数個集まったものとして形成される。
【0032】
図6(b)は、垂直拡散スクリーン50上で垂直拡散される光線の様子を示す図で、図5(b)で説明したのと同様に、画素からの光線が垂直方向に拡散される様子を示している。図6(c)の斜視図は、垂直方向に細長い四角錐の形状の光線が空間に形成され、水平方向の三次元画像が形成されている様子を示している。
【0033】
そして、上記の垂直拡散スクリーン50上で結像された図2に示す各画素から射出される主光線の周りに付随する外縁光線は拡大像のため、垂直拡散スクリーン50付近ではF10程度の大きなF値となっている。しかも、図5、図6と共に説明したように水平方向(Y方向)には垂直拡散スクリーン50による拡散を全く受けないか、または僅かに拡散されるのみであるため、水平方向には指向性の高い光線が、図2の画素50A〜50Eから異なる方向に発せられることになる。これらの指向性の高い光線が高い密度で空間に投射されると、図7に概念的に示すように光線の交点として奥行きの異なる位置に、図1に示した立体像7、8に相当する立体像31、32が形成される。
【0034】
ところで、特許文献1記載の三次元画像表示装置では、前述したように垂直拡散スクリーンに近接させてフレネルレンズが配置された構成のスクリーンを使用していた。ここで、このフレネルレンズによる悪影響について更に詳細に説明する。上記スクリーン中のフレネルレンズの球面収差の影響により、スクリーンから射出する光線はスクリーンに投射されるプロジェクタの光軸から離れるほどテレセントリック性が悪化する。
【0035】
テレセントリック性が悪化すると、光線同士の交点が空間的に歪んだ状態となるため、意図した位置に立体像が表示できなくなる。特に、スクリーンのサイズを大きくすればするほどスクリーン周辺で大きな屈折角が必要になることから、テレセットリック性は悪化する。例えば、スクリーンサイズが200インチ程度の高臨場感立体映像システムを構築する際には、非球面フレネルレンズを用いたとしても全プロジェクタをテレセントリックにすることは極めて困難である。大画面化に制約があることは、プロジェクタを用いた映像システムにとって大きなデメリットといえる。
【0036】
また、フレネルレンズは光線の指向性も悪化させる。これは、フレネルレンズの溝の段差部分(急峻な傾きを有する面で、光の屈折には寄与しない面)に光が照射されることで生じるものであり、スクリーンサイズに関わらず発生する。フレネルレンズの溝部分の拡散により外縁光線が広がり、結像F値よりも小さなF値となって、指向性の低い光線として垂直拡散スクリーンから射出されることになる。このように拡散した光線同士が交わったとしても、垂直拡散スクリーンから離れた位置に立体像を形成することは困難である。
【0037】
そこで、前述したように本発明では、フレネルレンズを排除することにより、光線の指向性を高める。もちろん、単にフレネルレンズを取り除いただけでは不十分である。なぜなら、図2からわかるように、本来テレセントリックであるべき主光線10a1〜10a5、あるいは10b1〜10b5等がテレセントリックでないからである。
【0038】
図2において、垂直拡散スクリーン50の中心付近に立体像を表示させるのであれば、このような非テレセントリックな光線を前提とした立体画像をCG(コンピュータグラフィックス)で描画して表示することも可能である。しかしながら、画素50Aや画素50Eから射出される光線が示すように、垂直拡散スクリーン50の周辺部ではスクリーン外側に向かって光線が射出されるため、スクリーン中央付近から観察する場合、スクリーン周辺が欠ける、すなわち視野が限定されるという不具合が生じる。
【0039】
そこで、本発明の第1の実施の形態では、フレネルレンズを用いることなく、垂直拡散スクリーン50から射出される光線が互いにテレセントリックになるような光学系として、図2に示した複数のプロジェクタを1つのプロジェクタアレイユニットとしたとき、複数のプロジェクタアレイユニットを互いに水平方向にシフトさせて配置した構成としたものである。
【0040】
図8は、本発明の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図、図9は、図8の要部の正面図を示す。両図中、同一構成部分には同一符号を付してある。図8において、空間光変調素子10a〜10bおよび各々の投射レンズ20a〜20eからなる複数の投射表示装置を1つのユニットとして扱い、これをプロジェクタアレイユニット10と呼ぶことにする。このプロジェクタアレイユニット10をY方向(水平方向)に一定の間隔だけシフトしたもの(太線で描いてある)を新たなプロジェクタアレイユニット11とする。
【0041】
図9の正面図において、細い実線の円の各々はプロジェクタアレイユニット10を構成する各プロジェクタの投射レンズを模式的に示す。また、太い実線の円の各々はプロジェクタアレイユニット11を構成する各プロジェクタの投射レンズを模式的に示す。また、図9において、斜め垂直方向に隣接するプロジェクタアレイユニット10の投射レンズとプロジェクタアレイユニット20の投射レンズとの間は水平方向に距離X3だけずれて配置されている。更に、図9に示すように、投射レンズ21f等のプロジェクタアレイユニット11の各投射レンズの有効径内の位置に離間対向して、空間光変調素子11f等の空間光変調素子が設けられている。
【0042】
図9にX3で示すプロジェクタアレイユニット10とプロジェクタアレイユニット11との間の水平方向のシフト量は、図8に示した垂直拡散スクリーン50上の画素50Dと50Eの間隔に等しくとるものとする。そうすると、新たなプロジェクタユニット11を構成する空間光変調素子11aから射出された主光線11a5は、もとのプロジェクタユニット10を構成する空間光変調素子10aから射出された主光線10a5と、その光路が互い平行になる。
【0043】
また、空間光変調素子11bから射出された主光線11b5と空間光変調素子10aから射出された主光線10b5の各光路も互いに平行になる。同様に、主光線11c5と主光線10c5、主光線11d5と主光線10d5、主光線11e5と主光線10e5の各光路についても各々平行になる。
【0044】
従って、画素50D、50Eから射出されるこれらの主光線についてはテレセントリックな状態が実現できる。他の画素50A〜50Cからの主光線についても同様にテレセントリックになる。しかし、まだ図8に示す状態では垂直拡散スクリーン50から射出される光線すべてがテレセントリックになっておらず、視野が限定された状態にある。
【0045】
そこで、図10に示すように、新たなプロジェクタアレイユニット12を追加する。このプロジェクタアレイユニット12は、プロジェクタアレイユニット10、11と同一構成であり、プロジェクタアレイユニット11に対して水平方向に前記シフト量X3だけシフトさせて配置される。
【0046】
図10に示す構成の裸眼立体表示装置では、まだすべての主光線はテレセントリックではないが、図10に示すように画素50Aから射出された光線のうちスクリーン内側に向かう光線も現れるようになる。これは視野が広がることを意味する。同時に、垂直拡散スクリーン50上の1つの画素から射出される光線の角度範囲も広がる。これは立体視する際に回り込んで観察可能な範囲である視域が広がることを意味する。
【0047】
そして、更に図11に示すように、プロジェクタアレイユニット10〜12と同一構成のプロジェクタアレイユニット13を新たに追加し、プロジェクタアレイユニット12に対して水平方向に前記シフト量X3だけシフトさせて配置すると、スクリーン端の画素50Aからの光線の射出角が大きくなり、更に視野が拡大すると同時に、視域も拡大する。
【0048】
更に、図12に示すように、プロジェクタアレイユニット10〜13と同一構成のプロジェクタアレイユニット14を新たに追加し、プロジェクタアレイユニット13に対して水平方向に前記シフト量X3だけシフトさせて配置すると、図12に示すように、スクリーン上端の画素50Aからの主光線はZ軸に対して対称になる。その他の画素50B〜50Eからの主光線についてはZ軸に対して非対称であるが、今度はY軸の負の方向に対してプロジェクタアレイユニットを追加しシフトさせることで図13に示すように対称化することができる。
【0049】
すなわち、図13は、本発明になる裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の最終的な構成図を示す。本実施の形態の裸眼立体表示装置は、図13に示すようにY軸の正方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニット11、12、13、14を改めて11R、12R、13R、14Rと記載し、Y軸の負方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニットを11L、12L,13L,14Lとする。
【0050】
このようにプロジェクタアレイユニット同士をシフトさせることにより、垂直拡散スクリーン50のすべての画素50A〜50Eから射出される主光線が、各画素を通りZ軸に平行な軸に対して対称になり、テレセントリックな光線が射出されるようになる。従って、図13に示した第1の実施の形態の裸眼立体表示装置によれば、図27に示した従来装置におけるフレネルレンズ40とそれに近接したスクリーン50から射出される光線10a1〜10e5と等価な光線が、複数のプロジェクタアレイユニットを互いにシフトさせて配置した構成において実現することができる。
【0051】
ここで、図27における従来装置の光線状態と図13における本発明の第1の実施の形態の光線状態との間には大きな違いがある。それは画素50A〜50Eの各々から射出される光線の最大射出角(垂直拡散スクリーン50に垂直な方向(Z方向)と光線がなす角度)が図27に比べて図13の方が大きく、視域が広いということである。これを以下に数式を用いて定量的に説明する。
【0052】
まず、図27に示した従来装置の最大射出角について説明する。図27に示す光線状態における光線の最大射出角、すなわちZ軸と主光線10a1〜10a5とがなす角度は、空間光変調素子10aと投射レンズ20aとの最大偏心量で決まる。図27において、投射レンズの焦点距離をf、投射レンズ20a〜20eの物体側主点と空間光変調素子10a〜10eの距離をa、投射レンズ20a〜20eの像側主点とフレネルレンズ40(またはそれに近接する垂直拡散スクリーン50)との距離をbとすると、結像関係の次式
(1/a)−(1/b)=1/f (1)
が成立する。
【0053】
また、空間光変調素子10a〜10eの水平方向(Y方向)の長さをyd、フレネルレンズ40(またはそれに近接する垂直拡散スクリーン50)の水平方向(Y方向)の長さをysとするとき、投射倍率Mは次式で表される。
【0054】
M=ys/yd=b/a (2)
ここで、投射レンズ20a〜20eの各々に対する空間光変調素子10a〜10eのY方向のシフト量をΔyとし、最大のシフト量△y_maxをとる空間光変調素子10aと投射レンズ20aに着目する。光線の最大射出角は、垂直拡散スクリーン50から射出される光線10a1〜10a5と垂直拡散スクリーン50の法線とのなす角であるから、この角度をφ_oldとすると、φ_oldは次式で表される。
【0055】
φ_old=tan-1(Δy/a)=tan-1(sy/a) (3)
ただし、(3)式中、sは次式で表されるシフト割合を示す。
【0056】
s=Δy/y (4)
ここで、yはY軸と同じ向きの水平方向座標を示し、その座標原点は各々の投射レンズの中心である。
【0057】
次に、図13に示す本発明の第1の実施の形態の裸眼立体表示装置における最大射出角について説明する。図13の第1の実施の形態の裸眼立体表示装置における最大射出角は、空間光変調素子10a〜10eの各々の最大物体高から発する光線がなす角である。この角度は図2における光線の最大射出角である10a5と垂直拡散スクリーン50の法線がなす角度に等しい。この角度をφ_newとすると、次式で表される。
【0058】
【数1】
従って、図27に示した従来装置の構成と図13に示す本実施の形態の装置の構成との最大射出角の差△φは次式で表される。
【0059】
【数2】
(6)式の右辺は1より大であるから、従来のフレネルレンズを用いた図27に示した装置構成における最大射出角φ_oldよりも、本実施の形態の構成の最大射出角φ_newの方が大きくなる。
【0060】
図14は、上記の最大射出角φ_old及びφ_newとシフト割合sとの関係の一例のグラフを示す。このグラフは、a=20mm、y=15mmの場合に、シフト割合sに対して最大射出角φ_old及びφ_new、並びに△φ=φ_new−φ_oldがどのようになるかをプロットしたグラフである。同図において、黒四角でプロットした本実施の形態の最大射出角φ_newは、黒丸でプロットした従来の最大射出角φ_oldに対して、シフト割合sが大きくなればなるほど大きくなることが分かる。
【0061】
例えば、レンズシフト機能を有する投射レンズが有する水平方向のシフト割合として一般的な値であるs=30%付近で見ると、従来の最大射出角φ_oldが13度であるのに対し、本実施の形態の最大射出角φ_newは31度となり、本実施の形態の方が最大射出角が2倍以上に拡大できることが分かる。この最大射出角は、そのまま立体視可能な範囲である視域(あるいは視野角)に結びついており、この例の場合は全角で62度の視域が得られ、従来にない広視域の裸眼立体表示装置が実現できる。
【0062】
このように、第1の実施の形態では、水平方向に一定間隔で配置した複数の投射レンズの各々に対して、空間光変調素子を水平方向にシフトさせることにより異なる方向に指向性の高い光線を射出する裸眼立体表示装置において、各々の投射レンズから射出される光線の角度範囲を最大限に利用できるような構成にすることで、フレネルレンズを使用しない構成にしたため、垂直拡散スクリーン50からの光線の指向性が向上し、垂直拡散スクリーン50から飛び出した位置でも立体像を十分な解像度で表示できる。また、本実施の形態によれば、垂直拡散スクリーン50上で光が屈折することがなくなるため、大きい入射角同士の光線も平行化することが可能となり、多人数で観察するのに十分に広い視域が得られるようになるという効果がある。
【0063】
(第2の実施の形態)
図15は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態は、垂直拡散スクリーン50上で各々のプロジェクタアレイの像面を共通化せずに、つまり重ねないで水平方向(Y方向)に最初からシフトさせてある点に特徴がある。このため、空間光変調素子10a〜10eの間隔は、図2及び図13の場合に比べて大きくなっている。
【0064】
次に、本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態では、プロジェクタアレイユニットが垂直拡散スクリーン50上に投影する各々の画像を水平方向にずらすように投射する。すなわち、最大のシフト量をもつ空間光変調素子10aからの主光線のうち、例えば最大物体高の主光線10a5は、垂直拡散スクリーン50上の画素50Dを通過するように配置する。一方、空間光変調素子10aからの主光線のうち、主光線10a1は、垂直拡散スクリーン50から外れている。このような光線は不要であるから、非表示にするか、あるいは後述するような反射光学系を用いて再利用することもできる。
【0065】
このようにプロジェクタアレイユニットを構成する各プロジェクタからの像面を共通化しないで水平方向にシフトさせたプロジェクタアレイユニットを、第1の実施の形態と区別して非共通像面プロジェクタアレイユニットと呼ぶことにする。なお、基本構成である非共通像面プロジェクタアレイユニットは、図13と同様に、水平方向に複数ずらして配置される。
【0066】
図16は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例1の基本構成図を示す。この変形例は、図15に示した構成に比べて非共通像面プロジェクタアレイユニットを構成する空間光変調素子10a〜10eの間隔を更に大きくし、空間光変調素子10aからの最大物体高の主光線10aが垂直拡散スクリーン50の中心である画素50Cを形成するように配置した非共通像面プロジェクタアレイユニット構成である。
【0067】
垂直拡散スクリーン50の中心に関しては、第1の実施の形態で述べたのと同様な最大の射出角が得られ、垂直拡散スクリーン50の中心に表示した立体像については、最大の視域で視覚することができる。また、スクリーン端に表示した立体像についても、第1の実施の形態における図2、図13の場合に比べると視野が改善されている。この変形例によれば、経済的な事情からプロジェクタの台数をあまり多くできない場合に、立体表示することも可能である。
【0068】
図17は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例2の基本構成図を示す。この変形例は、図16に示した構成における非共通像面プロジェクタユニットをシフトさせた構成である。シフト後の非共通像面プロジェクタアレイユニットは、太線で描いている。図17は、図の一部が重なっているため判別しづらいが、シフト後の非共通像面プロジェクタアレイユニットの構成要素である空間光変調素子10aから射出される主光線10a5は、垂直拡散スクリーン50の画素50Bを形成する。
【0069】
図18は、本発明になる裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例3の基本構成図を示す。この変形例は、非共通像面プロジェクタアレイユニットをさらにシフトさせて主光線10a5が垂直拡散スクリーン50の中心の画素50Cを形成するように配置した図である。この構成は、第1の実施の形態における図12に対応している。図12との違いは、この変形例の方がプロジェクタ数が少ないため光線数が少なく、またプロジェクタ間隔も疎であるため主光線の角度ピッチも疎であることが挙げられる。
【0070】
この主光線の角度ピッチは、外縁光線10c3mの広がり角、つまりF値とマッチさせる必要がある。これには、(1)垂直拡散スクリーン50に水平拡散特性をもたせる方法(すなわち、スクリーン上の画素から異なる方向に投射される各々の主光線の角度ピッチをスクリーンの水平拡散角と一致させる方法)と、(2)垂直拡散スクリーン50では何ら水平拡散は行わずに、プロジェクタの投射レンズ20aの開口サイズで結像F値を調整する方法(すなわち、スクリーン上の画素から異なる方向に投射される各々の主光線の角度ピッチを投射レンズのF値と一致させる方法)と、(3)スクリーン上の画素から異なる方向に投射される各々の主光線の角度ピッチを照明光学系のF値と一致させる方法とがある。F値と角度ピッチがマッチしない場合は、ストライプ状の輝度むらとして視覚されることになる。
【0071】
図15〜図18に示した第2の実施の形態及びその変形例によれば、プロジェクタユニットを最初から水平シフト状態で構成するため、第1の実施の形態に比べて必要なプロジェクタ数を減らすことができるとともに、プロジェクタ間隔が大きいために、設置の自由度が高まるというメリットがある。
【0072】
(第3の実施の形態)
図19は、本発明になる裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の上面図、図20は、本発明になる裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の正面図を示す。図19及び図20中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態は、プロジェクタアレイユニット10と、プロジェクタアレイユニット10に対してY軸の正方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニット11Rと、Y軸の負方向にシフトして配置したプロジェクタアレイユニットを11Lとを有する。
【0073】
第1の実施の形態では、プロジェクタアレイユニット10に対して、プロジェクタアレイユニット11Rと11Lとがそれぞれ同じ垂直線上に投射レンズの中心位置が重複する位置にシフトされているものがあるのに対し、本実施の形態は、図19及び図20に示すように、投射レンズは同じ垂直線上には互いに重複することなく配置されている点に特徴がある。また、図19及び図20に示すように、投射レンズ20c、21Lc、21Rcは同一水平線上に一定間隔で配置され、かつ、空間光変調素子10c、11Rc、11Lcは投射レンズ20c、21Lc、21Rcの光軸に対して互いに異なるシフト量偏心した位置に配置されている。
【0074】
同一水平線上にある他の投射レンズ20aと21Laの各光軸に対する空間光変調素子10aと11La、同一水平線上にある他の投射レンズ20bと21Lbの各光軸に対する空間光変調素子10bと11Lb、同一水平線上にある他の投射レンズ20dと21Rbの各光軸に対する空間光変調素子10dと11Rb、同一水平線上にある他の投射レンズ20eと21Rcの各光軸に対する空間光変調素子10eと11Rcも同様に、偏心した位置に配置されている。
【0075】
プロジェクタアレイユニット10を構成する空間光変調素子に供給される視差画像は、プロジェクタアレイユニット11R、11Lに供給される視差画像とは異なる。すなわち、両者の視差画像の注視点の位置は、共通像面の水平方向シフト量に対応してシフトさせるようにする。
【0076】
このようにプロジェクタアレイユニット同士をシフトさせることにより、垂直拡散スクリーン50のすべての画素から射出される主光線が、各画素を通りZ軸に平行な軸に対して対称になり、テレセントリックな光線が射出されるようになる。従って、本実施の形態も、第1、第2の実施の形態と同様に、図27に示した従来装置におけるフレネルレンズ40とそれに近接したスクリーン50から射出される光線10a1〜10e5と等価な光線を射出するように実現することができる。
【0077】
図26は、本発明になる裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の変形例の斜視図を示す。同図中、図19、図20と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。この変形例は、プロジェクタアレイユニット10に対してY軸の正方向にプロジェクタアレイユニットが11R、・・・で示すように2以上シフトして配置され、かつ、Y軸の負方向にプロジェクタアレイユニットが11L、12L、・・・で示すように2以上シフトして配置されている点に特徴がある。
【0078】
各プロジェクタの水平方向間隔は等間隔に配置されている。プロジェクタアレイユニット10は、投射レンズに対して空間光変調素子をシフトさせることにより投射方向を変え、垂直拡散スクリーン50上に共通像面を形成する。共通像面を形成することができるプロジェクタアレイの数は、上記シフト機構により制限されており、シフトの限界値を超えた場合には、共通像面に重ねて投射させることができない。そこで、プロジェクタアレイユニット11R、11Lは、プロジェクタアレイの共通像面から水平方向にシフトした位置に共通像面を形成する。
【0079】
(第4の実施の形態)
図21は、本発明になる裸眼立体表示装置の第4の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図において、図2と同一符号の空間光変調素子10a〜10e、投射レンズ20a〜20e、垂直拡散スクリーン50等は第1の実施の形態と同一構成であるためその説明を省略する。本実施の形態では、第1の実施の形態の空間光変調素子10a及び投射レンズ20aの外側に、空間光変調素子10f、10g等の複数の空間光変調素子と、投射レンズ20f、20g等の複数の投射レンズとを配置した点に特徴を有する。
【0080】
次に、本実施の形態の動作について説明する。投射レンズ20fは、空間光変調素子10fを物体面として、垂直拡散スクリーン50上に結像する。第1の実施の形態の場合と異なり、空間光変調素子10fからのすべての光線が垂直拡散スクリーン50上に投射される。当然ながら、このためには、投射レンズ20fには大きな角度で投射される主光線すなわち、10f1、10f3,10f5(10f2および10f4については図の簡略化のため図示していない)の周囲に付随する外縁光線(不図示)が垂直拡散スクリーン50上で収束するような結像性能を有することが要求される。
【0081】
すなわち、投射レンズ20fはイメージサークル径(有効径)が大きくなければならない。イメージサークル径の外側の光線は垂直拡散スクリーン50で各種収差を発生し、像のぼけや歪みなどが生じる。しかし、空間光変調素子10fに表示させる画像を予め補正しておくことにより、収差の発生を低減させることが可能である。当然ながら、すべての収差を電気的に補正することは不可能であるが、少なくとも結像位置に関する収差である歪曲収差、倍率色収差については電気的な画像処理により補正可能である。そこで、電気的な補正によりイメージサークルを実質的に拡大した後に、第1または第2の実施の形態で述べたようにプロジェクタアレイユニットを用いて視野および視域を拡大すればよい。
【0082】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態は、投射レンズの光学性能に対する要求は一般的に厳しくなるが、第1の実施の形態とは異なり、空間光変調素子上のすべての光線を有効に利用することができる。また、電気的な補正を併用することにより、投射レンズの光学性能の要求を抑えながら、第1〜第3の実施の形態に比べてシンプルな構成で本発明の第4の実施の形態と同一構成を実施することができる。
【0083】
また、本実施の形態ではすべての空間光変調素子上のすべての画素を点灯させる構成であるため、照明光を有効利用できるため明るい立体像を形成しやすく、このため、より大画面な立体表示を行うことができる。
【0084】
更に、本実施の形態では、電気的補正を行うことにより、実質的なイメージサークル径を拡大でき(偏心可能な範囲を実質的に拡大させることができ)、第1〜第3の実施の形態で述べたプロジェクタアレイユニットを構成することにより、視野または視域の周辺部分では電気的補正によりやや画質が劣化した立体像となるが、実用上重要な視野または視域の中心部分では画質劣化のない立体像が得られる。
【0085】
(第5の実施の形態)
図22は、本発明になる裸眼立体表示装置の第5の実施の形態の光学系の基本構成図を示す。同図において、図2と同一符号の空間光変調素子10a〜10e、投射レンズ20a〜20e、垂直拡散スクリーン50等は第1の実施の形態と同一であるため、その説明を省略する。本実施の形態では、第1の実施の形態の空間光変調素子10a及び投射レンズ20aの外側に、光軸がZ軸に対して傾いた空間光変調素子10h、10i等の複数の空間光変調素子と、投射レンズ20h、20i等の複数の投射レンズとを配置した点に特徴を有する。
【0086】
次に、本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態では、空間光変調素子10h、10i等の複数の空間光変調素子と、投射レンズ20h、20i等の複数の投射レンズの各光軸が垂直拡散スクリーン50のスクリーン面に対して垂直でないため、当然ながらキーストーン歪が生じる。このため、これをキャンセルするような電気的歪み補正を行う。周知の電気的歪み補正の方法についての説明は省略する。
【0087】
本実施の形態では、イメージサークル径が大きくない固定の投射レンズのプロジェクタを用いた場合であっても、プロジェクタを傾斜させて、さらに電気的歪補正を行うことで、所期の動作を実施することができる。本実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、空間光変調素子と投射レンズとの平行偏心の量を低減させることができる。
【0088】
(第6の実施の形態)
図23(b)は、本発明になる裸眼立体表示装置の第6の実施の形態の光学系の要部の基本構成図を示す。一般的には、投射レンズ20の光軸は、図23(a)に示すように、空間光変調素子10の光軸と一致しており傾きや偏心はない。これに対し、本実施の形態では、図23(b)に示すように、投射レンズ20の光軸が空間光変調素子10に対して傾斜しており、つまり傾き偏心をもった投射レンズである点に特徴がある。本実施の形態によれば、投射レンズ20に傾き偏心をもたせることにより、投射レンズを通過する光線が屈折し、傾き偏心がない場合に比べてより大きな角度で投射することができる。
【0089】
もちろん、傾き偏心の量が過大になれば、各種の収差が無視できなくなる。そのため、垂直拡散スクリーン50上の画質劣化が許容される範囲内で実施するよう、図23(c)に示すように、投射レンズ20の光軸を空間光変調素子10の光軸に対してシフトする通常のレンズシフト(平行偏心)と併用することが好ましい。
【0090】
本実施の形態によれば、プロジェクタの配置は傾けないで投射レンズ20のみを傾けることにより、プロジェクタアレイの設置を容易化することができる。また、投射レンズ20に傾き偏心をもたせることにより、これまで述べた通常のシフト、つまり平行偏心の量を減らすことができる。
【0091】
(第7の実施の形態)
図24は、本発明になる裸眼立体表示装置の第7の実施の形態の光学系の構成図を示す。同図中、図8と同一構成部分には同一符号を付してある。本実施の形態は、図8に示した構成にミラー70Rおよび70Lを追加した点に特徴がある。ミラー70Rの一端は垂直拡散スクリーン50の垂直方向の一側端に一致し、かつ、その長手方向が投射レンズ20a〜20e等の光軸と平行になるように配置されている。また、ミラー70Lの一端は垂直拡散スクリーン50の垂直方向の他の側端に一致し、かつ、その長手方向が投射レンズ20a〜20e等の光軸と平行になるように配置されている。更に、ミラー70Rと70Lの各反射面は互いに対向するように配置されている。なお、図24において、空間光変調素子11a’及び投射レンズ21a’は、水平方向のサイズが空間光変調素子11a及び投射レンズ21aの水平方向のサイズのそれぞれ1/2倍とされている。
【0092】
本実施の形態では、ミラー70R及び70Lは本来垂直拡散スクリーン50から外れた方向に向かう光線を反射させ、再び垂直拡散スクリーン50に結像させる機能を有する。この結果、図24において、15で示す位置にはミラー70R及び70Lで囲まれた範囲内にある空間光変調素子及び投射レンズと同じ構成の空間光変調素子及び投射レンズが存在するかのような虚像が形成され、その虚像からの光が出射される。これにより、上述した実施の形態では垂直拡散スクリーン50の外側にプロジェクタが配置されていたが、本実施の形態では不要となり、プロジェクタ数及び設置スペースが節約されることになる。
【0093】
ここで、本実施の形態では、ミラー70R及び70Lを用いることにより、コマ収差やミラー70R及び70Lの平面度に依存した歪曲等が発生するため、垂直拡散スクリーン50上の画素のスポット形状や位置は、ミラー70R及び70Lで反射した光線によるものとそうでないものとで異なる。
【0094】
そのため、これを補正する光学系が必要となるが、コマ収差に関しては画像の一部のみが収差の影響を受けているのであれば補正は困難である。歪曲収差については電気的な歪補正でキャンセルすることが可能である。従って、ミラーは設置スペースの関係で使用せざるをえない場合に限り、画質劣化が許される範囲内で使用すべきである。
【0095】
(第8の実施の形態)
図25(a)は、本発明になる裸眼立体表示装置の第8の実施の形態の要部の構成図、同図(b)は、本発明になる裸眼立体表示装置の第8の実施の形態の要部の変形例の構成図を示す。図25(a)に示す第8の実施の形態は、垂直拡散スクリーン50の替りに、光拡散面(レンチキュラー又はホログラム面)52にアルミニウムなどの金属反射膜あるいは誘電体反射膜53をコートした反射性垂直拡散スクリーン51Aを使用したものである。
【0096】
また、図25(b)に示す第8の実施の形態の変形例は、垂直拡散スクリーン50の替りに、表面に光拡散面(レンチキュラー又はホログラム面)54を形成し、裏面にアルミニウムなどの金属反射膜あるいは誘電体反射膜55をコートした反射性垂直拡散スクリーン51Bを使用したものである。
【0097】
この実施の形態では、反射膜付垂直拡散スクリーン51A、51Bに対して、前面に空間光変調素子及び投射レンズを配置してフロント投射する。反射膜付垂直放散スクリーン51A、51Bでは水平方向には反射又は僅かな拡散のみを行い、垂直方向には拡散したストライプ状の光線が形成される。
【0098】
本実施の形態によれば、リア投射の場合に比べて、スクリーン基材の通過による像のぼけが発生しないため、スクリーン上の画素を鮮明に結像することができるため、より解像感の高い立体像を形成することができる。
【0099】
(第9の実施の形態)
本発明になる裸眼立体表示装置の第9の実施の形態は、第1〜第8の実施の形態のうちのいずれか一の実施の形態の垂直拡散スクリーン50又は反射膜付垂直拡散スクリーン51A、51Bの替りに、円筒スクリーンを用いたものである。円筒スクリーンは、半円筒状の内面又は外面をスクリーンとするもので、リア投射とフロント投射とがある。リア投射の場合の円筒スクリーンは、プロジェクタアレイユニットを円筒スクリーンの外面側の後方に配置して円筒スクリーンの外面上に画素を形成し、その画素を二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で円筒スクリーンの内面側に投射することにより空間に形成される立体像を円筒スクリーンの内面側に位置する観測者により観測させる。
【0100】
また、フロント投射の場合の円筒スクリーンは、円筒スクリーンの外面に金属反射膜あるいは誘電体反射膜をコートした反射性スクリーンとし、プロジェクタアレイユニットを円筒スクリーンの内面側前方に円筒スクリーンの曲率にほぼ一致させて配置して円筒スクリーン上に画素を形成し、その画素を二次光源として反射される主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより空間に形成される立体像を円筒スクリーンの内面側に位置する観測者により観測させる。
【0101】
本実施の形態によれば、円筒スクリーンを用いることで、光線の最大射出角に対する要求を緩和することができる。
【0102】
(第10の実施の形態)
本発明になる裸眼立体表示装置の第10の実施の形態は、第1〜第9の実施の形態のうちのいずれか一の実施の形態のスクリーンの替りに、拡散特性が等方的なスクリーンを用いたものである。
【0103】
本実施の形態によれば、空間光変調素子からの光線はスクリーン上で結像された後、スクリーン上の画素を二次光源として主光線が垂直方向と水平方向にそれぞれ拡散され、垂直方向と水平方向それぞれに同様な結像Fナンバーで射出される。従って、本実施の形態では、垂直方向にも輝度と色度が異なる光線が射出され、水平方向と同様な運動視差が実現される。これはレンズアレイを用いないIP(インテグラルフォトグラフィー)である。
【0104】
本実施の形態と通常のIPとの違いは、レンズアレイの収差の影響を受けないことから広い視域を得られ易い点が挙げられる。反面、画像の輝度の一様性についてはレンズアレイを用いた方がより容易に一様な輝度特性が得られやすい。
【0105】
(第11の実施の形態)
本発明になる裸眼立体表示装置の第11の実施の形態は、第1〜第10の実施の形態のうちのいずれか一の実施の形態のスクリーンの替りに、ドームスクリーンを用いたものである。ドームスクリーンは、中空の半球状の内面又は外面をスクリーンとするもので、リア投射の透過型ドームスクリーンとフロント投射の反射型ドームスクリーンとがある。
【0106】
リア投射の場合の透過型ドームスクリーンは、プロジェクタアレイユニットをドームスクリーンの外部の後方に配置してドームスクリーンの外面上に画素を形成し、その画素を二次光源として主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度でドームスクリーンの内部に投射することにより空間に形成される立体像をドームスクリーンの内部に位置する観測者により観測させる。
【0107】
また、フロント投射の場合の反射型ドームスクリーンは、ドームスクリーンの外面に金属反射膜あるいは誘電体反射膜をコートした反射性スクリーンとし、プロジェクタアレイユニットをドームスクリーンの内部の曲率中心位置にほぼ一致させて配置してドームスクリーン上に画素を形成し、その画素を二次光源として反射される主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより空間に形成される立体像をドームスクリーンの内部に位置する観測者により観測させる。
【0108】
この実施の形態では、ドームスクリーンの前方又は後方の球面上に配置した空間光変調素子からの光線は広角の投射レンズを介して拡散角の小さなドームスクリーンに反射または透過し、指向性の高い光線として空間に集積されて立体像を形成することで、本発明の非共通像面プロジェクタアレイユニットを適用しながら、スクリーン前面に投影像をずらしながら立体像を形成することができる。
【0109】
本実施の形態では、フレネルレンズを使用しないことにより、スクリーン射出角の制限はほとんどなく、メガネなしで立体プラネタリムなどの3Dドームコンテンツを視聴できるようになる。これはフレネルレンズを使用する構成では不可能であり、本実施の形態によりこれまでにない臨場感が飛躍的に向上した裸眼立体表示が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の裸眼立体表示装置の電気系の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の光学系の基本構成を示す図である。
【図3】プロジェクタアレイとスクリーンの関係を示す斜視図である。
【図4】図1及び図2中のプロジェクタアレイユニットの概略正面図である。
【図5】スクリーン上の1画素から射出される光線を示す概念図である。
【図6】スクリーン上の異なる画素からの光線が立体像を形成する概念図である。
【図7】立体像が形成されるしくみを示す概念図である。
【図8】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その1)である。
【図9】図8の要部の正面図である。
【図10】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その2)である。
【図11】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その3)である。
【図12】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の構成の過程を説明する平面図(その4)である。
【図13】本発明の裸眼立体表示装置の第1の実施の形態の光学系の構成図である。
【図14】本発明により視域が拡大されることを例示するグラフである。
【図15】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の基本構成図である。
【図16】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例1の基本構成図である。
【図17】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例2の基本構成図である。
【図18】本発明の裸眼立体表示装置の第2の実施の形態の光学系の変形例3の基本構成図である。
【図19】本発明の裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の上面図である。
【図20】本発明の裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の正面図である。
【図21】本発明の裸眼立体表示装置の第4の実施の形態の光学系の基本構成図である。
【図22】本発明の裸眼立体表示装置の第5の実施の形態の光学系の基本構成図である。
【図23】本発明の裸眼立体表示装置の第6の実施の形態の光学系の要部の基本構成図と一般的な構成図及び変形例を示す図である。
【図24】本発明の裸眼立体表示装置の第7の実施の形態の光学系の構成図である。
【図25】本発明の裸眼立体表示装置の第8の実施の形態の要部の各例の構成図である。
【図26】本発明の裸眼立体表示装置の第3の実施の形態の光学系の変形例の斜視図である。
【図27】従来の裸眼立体表示装置の一例の光学系の構成図である。
【符号の説明】
【0111】
1 裸眼立体表示装置
2 パーソナルコンピュータ(PC)
3 ハブ
4−1〜4−n ネットワーク接続ストレージ(Network Attached Storage:NAS)
5−1〜5−n プロジェクタ(PJ)5
6 スクリーン
10〜14、11R、11L、12R、12L、13R、13L、14R、14L プロジェクタアレイユニット
10a〜10i 空間光変調素子
20a〜20i、21a〜21f 投射レンズ
50 垂直拡散スクリーン
50A〜50E スクリーン上の画素
51A、51B 反射性垂直拡散スクリーン
52、55 光拡散面(レンチキュラー又はホログラム面)
53 金属反射膜又は誘電体反射膜
70R、70L ミラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の投射レンズと、
前記複数の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた前記投射レンズの物体面上にあって前記投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の空間光変調素子と、
前記複数の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、
前記複数の投射レンズの像面上にあって、前記複数の空間光変調素子の画素からそれぞれ射出される前記照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素のそれぞれを二次光源として前記主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンと
を備えることを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項2】
前記スクリーン上に結像された複数の画素のそれぞれから異なる方向に投射される前記主光線の角度ピッチを、前記複数の投射レンズのF値、又は前記スクリーンの水平拡散角、又は前記照明光学系のF値に一致させる手段を備えることを特徴とする請求項1記載の裸眼立体表示装置。
【請求項3】
前記複数の投射レンズ、前記複数の空間光変調素子、及び前記照明光学系からなり、前記複数の投射レンズからそれぞれ投射された前記主光線により前記スクリーンに共通の複数の画素を結像する構成をプロジェクタアレイユニットとしたとき、第1のプロジェクタアレイユニットに対して、水平方向でかつ一方向に所定間隔ずつシフトした複数の第2のプロジェクタアレイユニットを配置すると共に、前記水平方向でかつ前記一方向とは反対方向に前記所定間隔ずつシフトした複数の第3のプロジェクタアレイユニットを配置し、
前記第1乃至第3のプロジェクタアレイユニットから前記スクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、前記スクリーンから射出する前記主光線を互いにテレセントリックに投射させることを特徴とする請求項1又は2記載の裸眼立体表示装置。
【請求項4】
前記複数の投射レンズ、前記複数の空間光変調素子、及び前記照明光学系からなり、前記複数の投射レンズからそれぞれ投射された前記主光線により前記スクリーンに結像する複数の画素の像面を共通化しない構成を非共通像面プロジェクタアレイユニットとしたとき、水平方向に所定間隔ずつシフトした複数の非共通像面プロジェクタアレイユニットを配置し、
前記非共通像面プロジェクタアレイユニットから前記スクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、前記スクリーンから射出する前記主光線を互いにテレセントリックに投射させることを特徴とする請求項1又は2記載の裸眼立体表示装置。
【請求項5】
前記スクリーンに重ねて投射された前記複数の空間光変調素子からの画像の歪曲収差又は倍率色収差を電気的に補正する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の裸眼立体表示装置。
【請求項6】
水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の第1の投射レンズと、
水平及び垂直の両方向に対してそれぞれ傾斜した方向に二次元配置され、かつ、前記水平方向に対して傾斜した方向に等間隔で配置された複数の第2の投射レンズと、
前記複数の第1の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた前記第1の投射レンズの物体面上にあって前記第1の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第1の空間光変調素子と、
前記複数の第2の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた前記第2の投射レンズの物体面上にあって前記第2の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第2の空間光変調素子と、
前記複数の第1及び第2の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、
前記複数の第1及び第2の投射レンズの像面上にあって、前記複数の第1及び第2の空間光変調素子の画素からそれぞれ出射される前記照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素(50A〜50E)のそれぞれを二次光源として前記主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンと
を備えることを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項7】
前記第2の空間光変調素子は、その光軸が前記第2の投射レンズの光軸と互いに平行に偏心され、かつ、前記投射レンズの光軸に対して傾きをもって偏心されていることを特徴とする請求項6記載の裸眼立体表示装置。
【請求項1】
水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の投射レンズと、
前記複数の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた前記投射レンズの物体面上にあって前記投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の空間光変調素子と、
前記複数の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、
前記複数の投射レンズの像面上にあって、前記複数の空間光変調素子の画素からそれぞれ射出される前記照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素のそれぞれを二次光源として前記主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンと
を備えることを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項2】
前記スクリーン上に結像された複数の画素のそれぞれから異なる方向に投射される前記主光線の角度ピッチを、前記複数の投射レンズのF値、又は前記スクリーンの水平拡散角、又は前記照明光学系のF値に一致させる手段を備えることを特徴とする請求項1記載の裸眼立体表示装置。
【請求項3】
前記複数の投射レンズ、前記複数の空間光変調素子、及び前記照明光学系からなり、前記複数の投射レンズからそれぞれ投射された前記主光線により前記スクリーンに共通の複数の画素を結像する構成をプロジェクタアレイユニットとしたとき、第1のプロジェクタアレイユニットに対して、水平方向でかつ一方向に所定間隔ずつシフトした複数の第2のプロジェクタアレイユニットを配置すると共に、前記水平方向でかつ前記一方向とは反対方向に前記所定間隔ずつシフトした複数の第3のプロジェクタアレイユニットを配置し、
前記第1乃至第3のプロジェクタアレイユニットから前記スクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、前記スクリーンから射出する前記主光線を互いにテレセントリックに投射させることを特徴とする請求項1又は2記載の裸眼立体表示装置。
【請求項4】
前記複数の投射レンズ、前記複数の空間光変調素子、及び前記照明光学系からなり、前記複数の投射レンズからそれぞれ投射された前記主光線により前記スクリーンに結像する複数の画素の像面を共通化しない構成を非共通像面プロジェクタアレイユニットとしたとき、水平方向に所定間隔ずつシフトした複数の非共通像面プロジェクタアレイユニットを配置し、
前記非共通像面プロジェクタアレイユニットから前記スクリーン上に結像させた複数の画素のそれぞれを二次光源として、前記スクリーンから射出する前記主光線を互いにテレセントリックに投射させることを特徴とする請求項1又は2記載の裸眼立体表示装置。
【請求項5】
前記スクリーンに重ねて投射された前記複数の空間光変調素子からの画像の歪曲収差又は倍率色収差を電気的に補正する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の裸眼立体表示装置。
【請求項6】
水平及び垂直の両方向に二次元配置され、かつ、水平方向に等間隔で配置された複数の第1の投射レンズと、
水平及び垂直の両方向に対してそれぞれ傾斜した方向に二次元配置され、かつ、前記水平方向に対して傾斜した方向に等間隔で配置された複数の第2の投射レンズと、
前記複数の第1の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた前記第1の投射レンズの物体面上にあって前記第1の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第1の空間光変調素子と、
前記複数の第2の投射レンズに対して1対1に対応して設けられ、対応して設けられた前記第2の投射レンズの物体面上にあって前記第2の投射レンズの光軸に対して偏心した位置に配置された、二次元画像を表示する複数の第2の空間光変調素子と、
前記複数の第1及び第2の空間光変調素子のそれぞれに対して照明光を照射する照明光学系と、
前記複数の第1及び第2の投射レンズの像面上にあって、前記複数の第1及び第2の空間光変調素子の画素からそれぞれ出射される前記照明光の輝度及び色度について変調された主光線が所定の位置で結像され、結像された複数の画素(50A〜50E)のそれぞれを二次光源として前記主光線を互いに異なる方向に異なる輝度と色度で投射することにより、空間に立体像を表示させるスクリーンと
を備えることを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項7】
前記第2の空間光変調素子は、その光軸が前記第2の投射レンズの光軸と互いに平行に偏心され、かつ、前記投射レンズの光軸に対して傾きをもって偏心されていることを特徴とする請求項6記載の裸眼立体表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図5】
【図6】
【図7】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図5】
【図6】
【図7】
【図13】
【公開番号】特開2010−54917(P2010−54917A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221155(P2008−221155)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]