説明

製紙用表面サイズ剤および紙

【課題】機械的安定性、各種サイズ効果、および塗工時の低発泡性に優れる、エマルジョン型の製紙用表面サイズ剤を提供する。
【解決手段】不飽和ジカルボン酸類およびスチレン類を含み、かつ不飽和モノカルボン酸類を含まない単量体群(a)が重合反応してなり、かつ、そのカルボキシル基が下記一般式(1)で表される含窒素化合物と塩を形成しており、かつ、重量平均分子量が5000〜20000である共重合体(A)、ならびに水溶性連鎖移動剤(B)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(C)を乳化重合してなるエマルジョン、を含有する製紙用表面サイズ剤。


(式(1)中、X、XおよびXは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙用表面サイズ剤、および該製紙用表面サイズ剤を紙に塗工してなる紙に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用表面サイズ剤は、原紙表面にほぼ100%歩留まるのでサイズ効果を効率よく発揮する。また、紙に直接塗工するので、抄紙系の温度が多少変化してもサイズ効果に大きな影響はない。こうした製紙用表面サイズ剤は、一般に水溶液型とエマルジョン型とに大別できるが、後者は固形分を高く設定しても比較的低粘度であり、ハンドリング性に長ける等の利点を有する。
【0003】
かかるエマルジョン型の表面サイズ剤としては、例えばアニオン性やノニオン性の乳化剤の存在下に各種不飽和単量体類を乳化重合してなるエマルジョンを用いたものが一般的であるが、サイズ効果が十分ではなく、また、ロッドメタリングサイズプレスやゲートロール等のように強い剪断力を伴う塗工方式において糟を多量に生ずるなど、機械的安定性が極端に悪い。
【0004】
機械的安定性を改善する方法としては、例えば、前記乳化剤と共に、高分子量化合物を保護コロイドとして用いる手段が考えられ、例えば、特定分子量のスチレン−マレイン酸系共重合体塩の存在下で、スチレン類等の疎水性不飽和単量体類を乳化重合してなるエマルジョンを含む表面サイズ剤が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、該表面サイズ剤はサイズ効果や機械的安定性が依然不十分であり、しかも、紙へ塗工する際の泡立ちが大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−246391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的安定性およびサイズ効果に優れ、かつ、紙へ塗工する際に泡立ちが少ない(以下、低発泡性という)、エマルジョン型の製紙用表面サイズ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、以下の表面サイズ剤であれば前記課題を解決できることを見出した。即ち本発明は、不飽和ジカルボン酸類およびスチレン類を含み、かつ不飽和モノカルボン酸類を含まない単量体群(a)が重合反応してなり、かつ、そのカルボキシル基が下記一般式(1)で表される含窒素化合物と塩を形成しており、かつ、重量平均分子量が5000〜20000である共重合体(A)、ならびに水溶性連鎖移動剤(B)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(C)を乳化重合してなるエマルジョン、を含有する製紙用表面サイズ剤、ならびに該サイズ剤を紙に塗工してなる紙、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製紙用表面サイズ剤は、これをなすエマルジョンの機械的安定性が優れるので、強い剪断力を伴う塗工方式においても糟を生じにくく、特に硬水で希釈した場合にも同様に糟が発生しにくい。また、各種サイズ効果(特にステキヒトサイズ度やペン書きサイズ度)に優れるだけでなく、塗工時の発泡も少ない。当該サイズ剤を塗工した紙は、各種印刷用紙として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製紙用表面サイズ剤をなす共重合体(A)(以下、(A)成分という)は、不飽和ジカルボン酸類およびスチレン類を含み、かつ不飽和モノカルボン酸類を含まない単量体群(a)(以下、(a)成分という)を重合反応させてなるものである。
【0010】
該不飽和ジカルボン酸類としては、各種公知のものを用い得る。具体的には、例えば、不飽和ジカルボン酸類〔マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等〕およびその中和塩、不飽和ジカルボン酸無水物類〔無水マレイン酸、無水シトラコン酸等〕、不飽和ジカルボン酸アルキルエステル類、およびそれらの中和塩、ならびに不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル類等が挙げられる。該不飽和ジカルボン酸類としては、サイズ効果等の点より、マレイン酸、無水マレイン酸およびマレイン酸モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0011】
なお、不飽和ジカルボン酸アルキルエステル類とは、前記不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の一つと、炭素数1〜18程度のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。以下、同様。)を有するアルコールとがエステル化反応してなるモノエステル化合物をいう。また、「不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル」とは、前記不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の全てと当該アルコールとがエステル化反応してなるジエステル化合物をいう。また、該炭素数1〜18程度のアルキル基としては、例えばメチル、エチル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ドコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる(以下、同様。)。また、中和塩を形成するための中和剤としては、後述の含窒素化合物等が利用できる。
【0012】
(A)成分には、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルによってカルボキシル基が導入される。また、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、(A)成分のカルボキシル基の一部が後述の含窒素化合物と塩を形成している限りにおいて併用可能であり、サイズ効果等の点よりマレイン酸ジエステルが好ましい。
【0013】
スチレン類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、クロルビニルトルエン等の単核体等が挙げられる。スチレン類としては、サイズ効果等の点よりスチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。
【0014】
また、(a)成分には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびこれらの中和塩等の不飽和モノカルボン酸類が含まれない。これらが含まれると、エマルジョン粒子が過大となり、サイズ効果が劣る傾向にあるためである。
【0015】
なお、(a)成分には、本発明の所期の効果を損なわない限りにおいて、後述の(C)成分として例示する(メタ)アクリルアミド類、不飽和モノアルコール類、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体類、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル類、不飽和モノカルボン酸アルキルエステル類、αオレフィン類、N,N−アミノアルキル系不飽和単量体類、ビニルエステル系単量体類、およびニトリル系単量体類を他のモノマー類として適宜含ませることができる。
【0016】
(a)成分における前記不飽和ジカルボン酸類およびスチレン類ならびに他のモノマー類の含有量は、(a)成分を100重量部とした場合において、通常、順に、20〜80重量部程度、80〜20重量部程度、および0〜10重量部程度であり、好ましくは25〜75重量部程度、75〜25重量部、および0〜5重量部である。
【0017】
また、(A)成分は、サイズ効果の点よりそのカルボキシル基の一部または全部が下記一般式(1)で表される含窒素化合物と塩を形成している必要がある。
【0018】
【化1】

【0019】
(式(1)中、X、XおよびXは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0020】
当該含窒素化合物としては、例えば、アンモニア、アルキル基の炭素数1〜3程度の脂肪族アミン類〔モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン等〕などが挙げられる。これらの中でも、サイズ効果等の点より、アンモニアおよび/またはモノメチルアミンが好ましい。
【0021】
本発明では、サイズ効果の点より、共重合体(A)の全カルボキシル基のうち50〜100モル%が、好ましくは80〜100モル%が前記一般式(1)で表される含窒素化合物と塩を形成しているのがよい。
【0022】
なお、(A)成分をなす全カルボキシル基のうち20モル%未満ないし50モル%未満は、他の塩基性化合物、例えば脂環族アミン類〔シクロヘキシルアミン等〕、芳香族アミン類〔アニリン等〕、アルカリ金属化合物〔水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等〕、およびアルカリ土類金属化合物〔水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等〕などと塩を形成していてもよい。
【0023】
また、(A)成分は、サイズ効果とハンドリング性等の点より、重量平均分子量が5000〜20000程度、好ましくは6000〜15000である。5000未満であるとサイズ効果が劣り、20000を超えるとエマルジョンの製品粘度が高くなりすぎハンドリング性が劣る。ここに「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算値をいう。該重量平均分子量は後述のラジカル重合開始剤の量により調節できる。
【0024】
(A)成分は各種公知の方法で製造できる。具体的には、(a)成分を反応溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下、通常80〜180℃程度において、通常1〜10時間程度重合反応させる。その後、得られた共重合体を、水の存在下、前記含窒素化合物および必要に応じて用いる他の中和化合物により中和すればよい。この際、該含窒素化合物を、(A)成分の全カルボキシル基に対し通常50〜150モル%程度の範囲となるように使用すれば、(A)成分の全カルボキシル基のうち50〜100モル%を該含窒素化合物と塩形成させることができる。また、(a)成分をなす前記不飽和ジカルボン酸類およびスチレン類の添加順序は問わない。
【0025】
該反応溶媒としては、アルコール類〔エチルアルコール、プロピルアルコール等〕、低級ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン〕、芳香族炭化水素類〔トルエン、ベンゼン等〕、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0026】
該ラジカル重合開始剤としては、例えば、無機過酸化物類〔過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等〕、有機過酸化物類〔t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等〕、アゾ系化合物〔2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等〕などが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。また、その使用量は、(A)成分の重量平均分子量を前記範囲とできる量であれば特に限定されないが、通常は、(a)成分の総量を100重量部とした場合において、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0027】
なお、(A)成分の重量平均分子量を調節する目的で、各種の油溶性連鎖移動剤を併用することもできる。ここに「油溶性」とは、水(25℃)に不溶若しくは難溶であるこという。具体的には、水(25℃)への溶解度が0.1g/100g未満であることをいう。該油溶性連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンクメン、ブロムトリクロルメタン、2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。また、その使用量は、(A)成分をなす不飽和単量体類の総量を100重量部とした場合において、通常0.01〜5重量部程度である。
【0028】
こうして(A)成分を含む水溶液が得られるが、その不揮発分は通常10〜30重量%程度、pHは通常7〜10程度、粘度(20重量%の水溶液の場合における、B型粘度計による25℃での測定値をいう)は通常20〜1000mPa・s程度である。
【0029】
本発明に係るエマルジョンは、(A)成分および水溶性連鎖移動剤(B)(以下、(B)成分という)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(C)(以下、(C)成分という)を乳化重合してなるものである。
【0030】
ここに「水溶性」とは、(B)成分が水(25℃)に混和すること又は易溶であることをいう。具体的には、(B)成分の水への溶解度(25℃)が少なくとも0.1g/100g以上、いっそう具体的には1g/100g以上であることを意味する。
【0031】
(B)成分の具体例としては、例えば、非重合型チオール類〔エタンチオール、プロパンチオール等〕およびその中和塩、チオール酸類〔チオグリコール酸、チオリンゴ酸、ジメチルジチオカルバミン酸等〕およびその中和塩、第2級アルコール類〔イソプロパノール等〕、ならびに次亜リン酸塩類〔次亜リン酸ナトリウム塩〕、下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
(式(2)中、Yは水素またはメチル基を、lは1〜4の整数を、Yは水素又はアルカリ金属原子を示す。)
【0034】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸の中和塩、メタリルスルホン酸、およびメタリルスルホン酸の中和塩などが挙げられる。また、中和塩としてはリチウム塩、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易であることを考慮すると、アリルスルホン酸ナトリウム塩および/またはメタリルスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0035】
(C)成分は、親水性不飽和単量体類及び疎水性不飽和単量体類の双方を含む点に特徴があり、例えば親水性不飽和単量体類を欠くとサイズ効果が低下し、また機械的安定性も悪化する。
【0036】
ここに「親水性不飽和単量体」とは、分子内にカルボキシル基、アミド基、水酸基、エーテル基、スルホ基、リン酸基等から選ばれる1種の親水性官能基を少なくとも1つ有する不飽和単量体をいう。また、「疎水性不飽和単量体」とは、分子内に芳香環部位、長鎖アルキルエステル部位および長鎖オレフィン部位等から選ばれる疎水部位を有し、かつ、前記親水性官能基を有さない不飽和単量体をいう。
【0037】
親水性不飽和単量体類の具体例としては、前記不飽和ジカルボン酸類(不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル類を除く)、前記不飽和モノカルボン酸類、(メタ)アクリルアミド類、不飽和モノアルコール類、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体類等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0038】
該不飽和ジカルボン酸類としては、マレイン酸、無水マレイン酸およびマレイン酸モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0039】
該不飽和モノカルボン酸類としては、エマルジョンの機械的安定性等の点より、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの中和塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
該(メタ)アクリルアミド類としては、各種公知のものを用い得る。具体的には、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2‐ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、エマルジョンの機械的安定性、特に硬水系における機械的安定性を考慮すると、特にアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドが好ましい。
【0041】
該不飽和モノアルコール類としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類〔2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等〕、アリルアルコール、メタリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、エマルジョンの機械的安定性が良好になることから、当該(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類が、特に2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
該ポリアルキレングリコール系不飽和単量体類としては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
一方、疎水性不飽和単量体類としては、前記スチレン類、前記不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル類、不飽和モノカルボン酸アルキルエステル類、αオレフィン類、N,N−アミノアルキル系不飽和単量体類ビニルエステル系単量体類、およびニトリル類等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でもサイズ効果の観点より、スチレン類および/または不飽和モノカルボン酸アルキルエステル類が好ましく、特に、両者の併用が好ましい。
【0044】
該スチレン類としては、サイズ効果等の点よりスチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。
【0045】
該不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル類としては、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジイソブチルマレエート、ジオクチルマレエート、ジデシルマレエート、ジドデシルマレエート、ジヘキサデシルマレエート、ジオクタデシルマレエート、ジオクタデセニルマレエート、ジイコシルマレエート等が挙げられる。
【0046】
該不飽和モノカルボン酸アルキルエステル類とは、前記不飽和モノカルボン酸と、前記炭素数1〜18程度のアルキル基を有するアルコールとがエステル化反応してなるエステル化合物をいう。具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデセニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
該αオレフィン類としては、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1および/または2,4,4−トリメチルペンテン−2をいう)、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−テトラコセン、1−トリアコンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン等が挙げられる。
【0048】
該N,N−アミノアルキル系不飽和単量体類としては、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートN,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
該ビニルエステル系単量体類としてはプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等が、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル類としては(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0050】
該ニトリル系単量体類としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0051】
(C)成分には、サイズ効果を高める目的で、必要に応じて各種公知の架橋性単量体類を含めることができる。具体的には、例えば、ポリビニルモノマー〔ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルスルホン〕、ポリアクリレートモノマー〔ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート等〕、ビスアクリルアミド類〔N,N'−プロピレンビスアクリルアミド、ジアクリルアミドジメチルエーテル、N,N'−メチレンビスアクリルアミド等〕などが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。これらの中でも、サイズ効果の点より該ビスアクリルアミド類が、特にN,N'−メチレンビスアクリルアミドが好ましい。
【0052】
(C)成分における親水性不飽和単量体および疎水性不飽和単量体ならびに架橋性単量体類の含有量は特に制限されないが、通常は、(C)成分を100重量部とした場合において、順に、2〜50重量部および50〜98重量部程度ならびに0〜3重量部、好ましくは、3.5〜15重量部および85〜96.5重量部ならびに0.01〜1重量部である。
【0053】
本発明に係るエマルジョンは、各種公知の方法で製造できる。例えば、適当な反応容器に前記(A)成分、(B)成分、および(C)成分、ならびに水、必要に応じて反応溶媒を仕込み、撹拌下に通常40〜150℃程度、2〜12時間程度、乳化重合反応を行うことにより製造できる。また、必要により前記含窒素化合物や塩基性化合物を用いてもよい。
【0054】
(A)成分の使用量は特に制限されないが、通常は(C)成分100重量部に対して不揮発分換算で通常5〜200重量部程度、好ましくは10〜100重量部の範囲とするのがよい。5重量部以上とすることによりエマルジョンの機械的安定性が良好になる等の、また200重量部以下とすることによりサイズ効果に優れる等の利点がある。
【0055】
また、(B)成分の使用量も特に制限されないが、通常は(C)成分100重量部に対して通常0.01〜5重量部程度、好ましくは0.1〜1重量部の範囲とするのがよい。0.01重量部以上とすることによりエマルジョンの貯蔵安定性に優れる等の、また5重量部以下とすることによりサイズ効果に優れる等の利点がある。
【0056】
乳化重合反応は各種公知の乳化剤の存在下で実施できる。具体的には、非反応性タイプのものとして、アニオン性界面活性剤〔アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩エステル、α―オレフィンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホエステル塩等〕、ノニオン性界面活性剤〔ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等〕などが挙げられる。
【0057】
また、エマルジョンの機械的安定性を向上させる目的で、反応性乳化剤として、例えば下記一般式(3)または一般式(4)で表されるものを使用できる。
【0058】
【化3】

【0059】
(式(3)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有する芳香環を示す。mは0または1の整数を示す。(AO)のうちAは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは置換アルキレン基を示す。nは1〜100の整数を示す。Zは炭素−炭素二重結合を有する共重合性の官能基を示す。Zは水素、スルホン酸基、リン酸基、スルホコハク酸基およびこれらの塩ならびにスルホコハク酸基エステルから選ばれる1種を示す。)
【0060】
【化4】

【0061】
(式(4)中、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。(AO)のうちAは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは置換アルキレン基を示す。nは1〜100の整数を示す。Zは炭素−炭素二重結合を有する共重合性の官能基を示す。Zは水素、スルホン酸基、リン酸基、スルホコハク酸基およびこれらの塩ならびにスルホコハク酸基エステルから選ばれる1種を示す。)
【0062】
式(3)および式(4)におけるZとしては、(メタ)アクリル基、1−プロペニル基、2−メチルー1−プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれる1種が挙げられる。
【0063】
反応性乳化剤としては式(3)で表されるものが好ましく、具体例としては、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
これら乳化剤の使用量は通常、(C)成分100重量部(不揮発分)に対して、通常0〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0065】
こうして得られるエマルジョンは通常、pHが通常6.0〜10.0程度、粘度が5〜200mPa・s(不揮発分20%)程度、および粒径が通常50〜150nm程度、好ましくは70〜110nmである。なお、「粒子径」とは、具体的にはエマルジョン粒子の平均一次粒子径をいい、例えば、動的光散乱法や自然沈降法等の各種公知の方法により測定できる。また、粒子径が大きくなりすぎると、サイズ効果が低下する傾向にある。
【0066】
また、該エマルジョンには、各種添加剤、例えば、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子等の紙力増強剤や、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤(シリコン系消泡剤等)、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、顔料、染料等を添加することもできる。
【0067】
本発明の製紙用表面サイズ剤は前記エマルジョンをそのまま用いたものであり、これを各種公知の手段により原紙に塗工することにより、本発明の紙が得られる。なお、当該サイズ剤は、塗工に際し、前記エマルジョンの不揮発分が通常0.01〜2重量部程度となるよう希釈されたサイズ液として実用に供される。
【0068】
塗工手段は特に限定されず、例えば、サイズプレス法、ゲートロール法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法等の各種手段が挙げられる。本発明の製紙用表面サイズ剤は前記したように機械的安定性に優れるので、2ロールサイズプレス塗工方式、ロッドメタリングサイズプレス塗工方式やゲートロール塗工方式などの各種塗工マシンで使用可能である。なお、塗布量(固形分)は通常、0.001〜2g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mである。
【0069】
原紙は特に限定されず、例えば、木材セルロース繊維を原料とする未塗工の紙を用いることができる。また、原紙の原料たる抄紙用パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプや、GP、TMP等の機械パルプ、その他古紙パルプ等が挙げられる。また、当該原紙中には、内添サイズ剤や填料、紙力剤等の薬品が含まれていてもよい。
【0070】
得られた紙は、記録用紙〔フォーム用紙、PPC用紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等〕、コート紙〔アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等〕、包装用紙〔クラフト紙、純白ロール紙等〕、洋紙〔ノート用紙、書籍用紙、印刷用紙、新聞用紙等〕、板紙〔マニラボール、白ボール、チップボール、ライナー等〕などの用途に供される。
【実施例】
【0071】
以下、参考例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお各例中、部および%は特記しない限りすべて重量基準である。
【0072】
また、各例中、重量平均分子量はゲルパーメーションクロマトグラフィー(HLC8120GPC、使用カラムTSKgel SuperHM−Nを2本使用、展開溶媒THF)にておいて測定いた測定値(ポリスチレン換算値)を、粘度はB型粘度計(東機産業(株)製)による測定値を、粒子径はレーザー粒径解析装置(製品名「LPA−3000/3100」、大塚電子(株)製)による測定値を意味する。
【0073】
事前合成例1
撹拌機、冷却管、2つの滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた反応容器に、マレイン酸285部を仕込み、撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、滴下ロートより、イソブチルアルコール215部を、約2時間を要して、反応容器内へと滴下し、約3時間保温・脱水することによりマレイン酸のイソブチルアルコールモノエステルを得た。これを以下の合成例に供した。
【0074】
事前合成例2
事前合成例1と同様の反応容器に、マレイン酸28.5部を仕込み、撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、滴下ロートより、イソブチルアルコール71.5部を、約2時間を要して、反応容器内へと滴下し、約3時間保温・脱水することによりマレイン酸のイソブチルアルコールジエステルを得た。これを以下の合成例に供した。
【0075】
事前合成例3
事前合成例1と同様の反応容器に、マレイン酸43.0部を仕込み、撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、滴下ロートより、2-エチルヘキシルアルコール57.0部を、約2時間を要して、反応容器内へと滴下し、約3時間保温・脱水することによりマレイン酸の2−エチルヘキシルアルコールモノエステルを得た。これを以下の合成例に供した。
【0076】
合成例1
撹拌機、冷却管、2つの滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水34.3部(共重合体中のカルボキシル基総モルの90%中和)、48%水酸化ナトリウム水溶液5.2部(共重合体中のカルボキシル基総モルの10%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が9000の(A−1)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が30mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0077】
合成例2
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水38.1部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が11000の(A−2)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が40mPa・s、およびpHが8.7であった。
【0078】
合成例3
合成例1と同様の反応容器に、スチレン38.7部、マレイン酸3.6部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル57.6部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水24.8部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が9500の(A−3)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が55mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0079】
合成例4
合成例1と同様の反応容器に、スチレン39部、マレイン酸18.4部、マレイン酸2エチルヘキシルアルコールモノエステル42.7部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水34.2部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が9800の(A−4)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が110mPa・s、およびpHが8.9であった。
【0080】
合成例5
合成例1と同様の反応容器に、スチレン51.5部、マレイン酸48.5部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水60.1部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が12000の(A−5)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が25mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0081】
合成例6
合成例1と同様の反応容器に、スチレン38.9部、α−メチルスチレン4.9部、マレイン酸20.4部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル35.8部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水37.9部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が8100の(A−6)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が30mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0082】
合成例7
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.8部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水38.1部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が18000の(A−7)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が50mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0083】
合成例8
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート3.2部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水38.1部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が6500の(A−8)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が30mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0084】
合成例9
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、40%のモノメチルアミン48.7部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が9100の(A−9)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が55mPa・s、およびpHが8.8であった。
【0085】
合成例10
合成例1と同様の反応容器に、スチレン42.2部、マレイン酸19.9部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル27.9部、マレイン酸のイソブチルアルコールジエステル10.0部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水34.5部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が11000の(A−10)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が50mPa・s、およびpHが8.7であった。
【0086】
合成例11
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水15.2部(共重合体中のカルボキシル基総モルの40%中和)、48%水酸化ナトリウム水溶液31.4部(共重合体中のカルボキシル基総モルの60%中和)、所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が9500の共重合体塩(A−11)成分を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が30mPa・s、およびpHが8.9であった。
【0087】
比較合成例1
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸のイソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水38.1部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が25000の共重合体塩(以下、(イ)成分という)を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が15%、25℃の粘度が30mPa・s、およびpHが8.9であった。
【0088】
比較合成例2
合成例1と同様の反応容器に、軟水50部とイソプロピルアルコール100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら加熱して80℃まで昇温した。次いで、スチレン50部、アクリル酸50部を混合した単量体混合物と、過硫酸カリウム5部を水50部に溶解した重合開始剤水溶液とを約3時間かけて系内に滴下し、更に2時間保温して反応を完結させた。次いで、イソプロピルアルコールを留去し、冷却後28%アンモニア水溶液46.4部(アクリル酸に対して100モル%)を加え、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が12000の共重合体塩(以下、(ロ)成分という)を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が50mPa・s、およびpHが8.4であった。
【0089】
比較合成例3
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸イソブチルアルコールモノエステル36部およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.5部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、48%水酸化ナトリウム水溶液52.3部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が9800の共重合体塩(以下、(ハ)成分という)を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が25mPa・s、およびpHが9であった。
【0090】
比較合成例4
合成例1と同様の反応容器に、スチレン43.5部、マレイン酸20.5部、マレイン酸イソブチルアルコールモノエステル36部、およびトルエン100部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートより、t-ブチルパーオキシベンゾエート4.0部およびトルエン34部からなる混合液を、約1.5時間を要して、反応容器内へと滴下し、還流下に約3.5時間保温した。その後トルエンを減圧留去した。次いで、反応系に、28%アンモニア水38.1部(共重合体中のカルボキシル基総モルの100%中和)、および所定量の水からなる混合液を加えることにより、共重合体を中和した。次いで、水で希釈することにより、重量平均分子量が4000の共重合体塩(以下、(ニ)成分という)を含む水溶液を得た。また当該水溶液は、不揮発分が20%、25℃の粘度が20mPa・s、およびpHが8.5であった。
【0091】
【表1】

【0092】
表1中、各記号は以下の通りである。
St:スチレン
αMeSt:αメチルスチレン
MAn:マレイン酸
MAn−mIBA:マレイン酸イソブチルアルコールモノエステル
MAn−diIBA:マレイン酸イソブチルアルコールジエステル
MAn−2EHA:マレイン酸2エチルヘキシルアルコールモノエステル
AA:アクリル酸
nMA:モノメチルアミン
Mw:重量平均分子量
NV:不揮発分
Vis:粘度
【0093】
製造例1
撹拌器、還流冷却管、窒素導入管付きの反応器に、窒素雰囲気下、軟水180部、前記(A−1)の水溶液100部、非反応性のアニオン性界面活性剤(商品名「ハイテノールLA10」、第一工業製薬(株)製)1部、およびメタリルスルホン酸ナトリウム0.5部を仕込み、さらに、アクリルアミド5部、メタクリル酸5部、スチレン40部、α−メチルスチレン10部、メタクリル酸ブチル40部を仕込んだ(なお、単量体全量に対し、(A−1)は20重量部である。)次いで、48%水酸化ナトリウム水溶液4.8部(メタクリル酸に対して100モル%)を加え、撹拌下に系を加熱し、80℃まで上昇させた。次いで、過硫酸アンモニウム3部を仕込み、系を3時間保温して、(A−1)成分の存在下で、乳化重合反応を完結させた。その後、得られた組成物を、共重合体の濃度が30%になるように水で希釈した。こうして得られたエマルジョンは、25℃における粘度測定値が30mPa・s、pHが7.6、光散乱粒子径が90nmであった。該エマルジョンの組成と物性を表2に示す。
【0094】
製造例2〜21、比較製造例1〜7
(A)成分〜(C)成分、入荷財の種および使用量を表2に示すように変更した他は、製造例1と同様にして、実施例用および比較例用のエマルジョンを得た。
【0095】
【表2】

【0096】
表2中、各記号は以下の通りである。
LA:ハイテノールLA10
KH:反応性乳化剤(製品名「アクアロンKH−05」、第一工業製薬(株)製)
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
NDM:ノルマルドデシルメルカプタン
AM:アクリルアミド
MAA:メタクリル酸
2HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
St:スチレン
αMeSt:α−メチルスチレン
BMA:ノルマルブチルメタクリレート
MBAA:N,N'−メチレンビスアクリルアミド
Vis:粘度
【0097】
実施例1〜21、比較例1〜7
<表面サイズ液の調製>
製造例1のエマルジョン、10%で糊化を行った酸化澱粉(商品名「王子エースA」:王子コンスターチ(株)製)、および水を混合し、該酸化澱粉にもとづく不揮発分が約2.5%、該エマルジョンにもとづく不揮発分が約0.1%となる表面サイズ液を調製した。他の製造例および比較製造例のエマルジョンについても同様にして表面サイズ液を調製した。
【0098】
<試験用紙の作製>
2ロールサイズプレス塗工機(熊谷理機工業(株)製)を用いて、各表面サイズ液をそれぞれ、中性上質用紙(坪量60g/m、ステキヒトサイズ度0秒)に塗工した。次いで、各塗工紙を回転式ドライヤーにて乾燥(105℃、1分間)させ、試験紙を得た。
【0099】
<ステキヒトサイズ度の測定>
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P−8122に準拠して、ステキヒトサイズ度(秒)を測定した。数値が大きいほど良好なサイズ度を表す。結果を表3に示す。
【0100】
<ペン書きサイズ度の測定>
前記方法で得られた各塗工紙を用い、J.Tappi No.12に準拠して、ペン書きサイズ度を測定した。数字が大きいほど当該サイズ効果に優れることを意味する。結果を表3に示す。
【0101】
<発泡性の試験>
各表面サイズ液にシリコン系消泡剤(商品名「DKQ1−071」:東レ・ダウコーニング(株)製)を50ppm添加した後、50℃に加温し、家庭用ミキサーで2分間処理した後に、処理直後の液面の高さの増加量を測定した。結果を表3に示す。
【0102】
<機械安定性の測定(硬水系)>
硬度60°dHの水を用いて各表面サイズ液を2倍希釈し、それぞれ酸化澱粉の不揮発分が1.25%、エマルジョンの不揮発分が0.05%となる組成とした。次いで、当該組成の表面サイズ液を、2ロールサイズプレスにおいて一時間循環させ、凝集物の発生および2本のロールの汚れを以下の規準にて目視評価した。結果を表3に示す。
◎:機械的安定性に極めて優れる(凝集物は確認できず、ロールの汚れもない)
○:機械的安定性に優れる(凝集物は確認できないが、ロールが微妙に汚れる)
△:機械的安定性がやや劣る(少量の凝集物が確認でき、ロールが汚れる)
×:機械的安定性が劣る(多量の凝集物が確認でき、ロールが著しく汚れる)
【0103】
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ジカルボン酸類およびスチレン類を含み、かつ不飽和モノカルボン酸類を含まない単量体群(a)が重合反応してなり、かつ、そのカルボキシル基が下記一般式(1)で表される含窒素化合物と塩を形成しており、かつ、重量平均分子量が5000〜20000である共重合体(A)、ならびに水溶性連鎖移動剤(B)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(C)を乳化重合してなるエマルジョン、を含有する製紙用表面サイズ剤。
【化1】

(式(1)中、X、XおよびXは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記不飽和ジカルボン酸類が、マレイン酸、無水マレイン酸およびマレイン酸モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種、ならびに必要に応じマレイン酸ジエステルからなるものであるである、請求項1に記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項3】
前記スチレン類がスチレンおよび/またはα−メチルスチレンである、請求項1または2に記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項4】
共重合体(A)の全カルボキシル基のうち50〜100モル%が一般式(1)で表される含窒素化合物と塩を形成している、請求項1〜3のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項5】
一般式(1)で表される含窒素化合物がアンモニアおよび/またはモノメチルアミンである、請求項1〜4のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項6】
水溶性連鎖移動剤(B)の水への溶解度(25℃)が少なくとも1g/100gである、請求項1〜5のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項7】
水溶性連鎖移動剤(B)が下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【化2】

(式(2)中、Yは水素またはメチル基を、lは1〜4の整数を、Yは水素又はアルカリ金属原子を示す。)
【請求項8】
単量体群(C)をなす親水性不飽和単量体類が、不飽和ジカルボン酸類および不飽和モノカルボン酸類、(メタ)アクリルアミド類、不飽和モノアルコール類およびポリアルキレングリコール系不飽和単量体類からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項9】
単量体群(C)をなす疎水性不飽和単量体類が、スチレン類および/または不飽和モノカルボン酸アルキルエステル類である、請求項1〜8のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項10】
単量体群(C)が更に架橋性単量体類を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項11】
架橋性単量体類がビスアクリルアミド類である、請求項10に記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項12】
前記エマルジョンが、共重合体塩(A)を、単量体群(C)100重量部に対して不揮発分換算で5〜200重量部含有する、請求項1〜11のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項13】
前記エマルジョンが、水溶性連鎖移動剤(B)を、単量体群(C)100重量部に対して0.01〜5重量部含有する、請求項1〜12のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項14】
乳化重合を乳化剤の存在下で行なう、請求項1〜13のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項15】
乳化剤が下記一般式(3)で表される反応性乳化剤を含有する、請求項14の製紙用表面サイズ剤。

(式(3)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有する芳香環を示す。mは0または1の整数を示す。(AO)のうちAは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは置換アルキレン基を示す。nは1〜100の整数を示す。Zは炭素−炭素二重結合を有する共重合性の官能基を示す。Zは水素、スルホン酸基、リン酸基、スルホコハク酸基およびこれらの塩ならびにスルホコハク酸基エステルから選ばれる1種を示す。)
【請求項16】
乳化剤の使用量が(C)成分100重量部に対して0.5〜5重量部である、請求項14〜16のいずれかの製紙用表面サイズ剤
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤を紙に塗工してなる紙。

【公開番号】特開2010−242280(P2010−242280A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61397(P2010−61397)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】