説明

製紙過程で出たスカムの脱水方法

【課題】薬品を使用することのない製紙過程で出たスカムの脱水方法を提供すること。
【解決手段】製紙過程で使用される白水から取り出した汚泥などのスラッジに水分を含んだスカムから水分を取り除くためのものであって、下方に開口した凹形状容器の回転体12内に、その下方から上方に伸びた供給管を介して送り込んだ前記スカムを、回転する回転体12の天板部121に接触させて飛ばし、スラッジを回転体12の側面122に付着させる一方、水分を回転体12の側面122に沿って下方に落とすようにしてスラッジと水分とを分離するようにした、製紙過程で出たスカムの脱水方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工場で使用される白水の処理に際して生じるスカムの脱水方法に関し、特に薬品を使用することなく行うスカムの脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や地球環境保全の要求が高まり、古紙および損紙のリサイクル率が高くなってきており、これまで脱墨や異物除去が困難であった雑誌の他、ラミネート処理された紙容器なども紙料として用いられるようになってきている。古紙を再生するには、パルパーに投入された古紙が水に薬剤を混合した溶液によって溶解され、得られた紙料スラリからクリーナー装置によって粗い異物が除去された後、フローテーターにより脱墨処理とともに漂白処理が行われ、更にクリーナー装置によって微細な異物除去が行われる。そうしてできた液状パルプから抄紙工程を経て再生紙が作られる。
【0003】
ところで、製紙工場では大量の水を使用するため、抄紙工程で使用した水を循環させて再びパルパーへ送り込むようにしているが、こうした循環水(白水)も繰り返し使用した後に排水処理などが行われる。そこでは、例えば加圧浮上装置が使用され、水に空気を高圧で溶かし込んで生じる微細な気泡に白水中の微細繊維や汚泥(総称して「スラッジ」という)を付着させて浮上させる。浮上した表面のスラッジは掻き取られ、残った水は放流または再利用される。そして、掻き取られたスラッジ(これを「スカム」という)は水分を多く含んでいるため脱水処理が行われ、その後に焼却などの処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表WO2006/022188号公報
【特許文献2】特開2003−119680号公報
【特許文献3】特開2000−153106号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“トリプルアール株式会社 / 商品情報 / 遠心分離機 series”、[online]、[平成21年11月20日検索]、インターネット<URL:http://www.triple-r.co.jp/products/ensin/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで従来は、スクリュープレス(特許文献2参照)やベルトプレス(特許文献3参照)などを使用したスカムの脱水が行われていたが、そのままでは微細なスラッジは隙間から水分と一緒に流れてしまうため脱水処理が困難であった。そこで、特許文献1に記載するように、高分子凝集剤などの薬品を添加することによって凝集されたスカムをベルトプレスやスクリュープレスを用いて圧搾する脱水が行われていた。しかしながら、そうした脱水処理を行っていたのでは、高分子凝集剤などの薬品にかかる費用が製紙コストを引き上げてしまう原因となってしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決すべく、薬品を使用することのない製紙過程で出たスカムの脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る製紙過程で出たスカムの脱水方法は、製紙過程で使用される白水から取り出した汚泥などのスラッジに水分を含んだスカムから水分を取り除くためのものであって、下方に開口した凹形状容器の回転体内に、その下方から上方に伸びた供給管を介して送り込んだ前記スカムを、回転する前記回転体の天板部に接触させて飛ばし、スラッジを前記回転体の側面に付着させる一方、水分を前記回転体の側面に沿って下方に落とすようにしてスラッジと水分とを分離するようにしたことを特徴とする。
また、本発明に係る製紙過程で出たスカムの脱水方法は、前記スカムを一定量連続して前記回転体内に送り込んだ後、前記スカムの送り込みを止めた状態で一定時間だけ前記回転体を回転させるようにしたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明によれば、回転体内に送り込んだスカムを天板部の回転によって飛ばし、遠心力によってスラッジを回転体の側面に付着させる一方で、水分は回転体の側面に沿って落ちることにより分離するようにしたので、薬品を使用しなくてもスカムの脱水を行うことが可能になり、その分コストを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の脱水方法で使用する遠心分離脱水機の概略構成を示した断面図である。
【図2】遠心分離脱水機によるスカムの脱水方法を示した図である。
【図3】遠心分離脱水機によるスカムの脱水方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る製紙過程で出たスカムの脱水方法について、その一実施形態を図面を参照しながら説明する。
製紙工場では、前述したように、抄紙工程で使用した水(白水)が再利用されてパルパーへと送り込まれ、繰り返し使用された白水は、ある程度使用された後、排水処理が行われて放流される。その排水処理で使用される加圧浮上装置では、使用済み白水に空気が高圧で溶かし込まれ、微細な気泡に付着させた汚泥などのスラッジを浮上させ、それを掻き取ることでスカムが得られる。
【0012】
そのスカムは水分を多く含んでいるためこれまで薬品が使用されてきたが、本実施形態では、薬品を使用することなく遠心分離脱水機を使用してスカムから水分を除去する脱水方法を採用した。図1は、本実施形態で使用する遠心分離脱水機の概略構成を示した断面図である。遠心分離脱水機10は、箱形の本体11内に凹形容器の回転体12が回転支持されている。回転体12は、凹形状を上下逆にして配置され、上方を塞いで下方が開口している。上端の天板部121は平面であり、円筒形状の筒部122は下端部分123が内側に傾斜した形状をしている。
【0013】
この回転体12は、本体11を上方に貫いた回転軸13に連結され、その回転軸13を介して軸受14によって回転支持されている。回転軸13にはVプーリー15が固定され、不図示のVベルトを介してモータの回転が伝達されるようになっている。例えばこの回転体12には、毎分2500回転の回転スピードが与えられる。一方、本体11の下側にはスカムを投入する供給管16が取り付けられている。供給管16は、本体側部から水平に入り、90度に折り曲げられて回転体12の回転中心に沿って立ち上がっている。供給管16の先端は、回転体12の天板部121に近接した位置にまで達し、送り込まれたスカムが先端から吹き出して天板部121に当たるようになっている。
【0014】
この遠心分離脱水機10は、天板部121に当たったスカムが、回転によって筒部122へ飛ばされ、汚泥などのスラッジが遠心力によって筒部122に付着する一方で、水分は下方へと垂れて流れるようになっている。ところで、回転体12の下には、スカムから分離した水分を受けための受け皿17が設けられている。受け皿17は、その中心側端部に壁を立てて貫通孔171が形成され、溜まった水分が本体11に形成された排水管18を介して流れ出るようになっている。
【0015】
回転体12内には、径方向に沿って配置され、且つその方向に移動可能なスラッジ掻板19が設けられている。スラッジ掻板19は、不図示の駆動手段によって図示する回転中心側から回転体12の筒部122へと図面右側へ移動し、回転する筒部122に付着したスラッジを掻き取るものである。そのため、回転体12からは水分の他にスラッジも落ちてくるが、受け皿17は、シャッター構造になっており、スラッジを掻き落とす時には受け皿17をスライドさせ、受け皿17に載らないようになっている。スラッジ掻板19により掻き出されたスラッジは落下し、不図示の容器に回収されるようになっている。
【0016】
次に、この遠心分離脱水機10を使用したスカムの脱水方法について説明する。図2及び図3は、遠心分離脱水機10によるスカムの脱水処理工程を示した図である。加圧浮上装置で得られたスカムは、供給管16を通して遠心分離脱水機10へと送り込まれる。供給管16を上昇して先端から吹き出したスカムは、回転する回転体12の天板部121に当たり筒部122へと飛ばされる。そのため、図2に示すように、汚泥などのスラッジSは遠心力によって筒部122に付着する一方、水分Wは下端部分123先端から垂れて受け皿17に落ち、排水管18を介して排水される。
【0017】
こうして遠心分離脱水機10に対してスカムが送り込まれると、スラッジと水分との分離が行われ、回転体12の筒部122内側面に付着したスラッジSの堆積層ができあがる。そしてスカムの送り込みが所定時間行われた後、一旦供給管16からのスカムの供給を止め、その後更に一定時間の回転を続けることにより、スラッジSを遠心力で筒部122に付着させたまま、残る水分Wをより多く落として脱水効果を上げるようにする。
【0018】
そうした後、回転体12の回転を継続したままスラッジ掻板19が図3に示すように矢印の径方向へと移動する。スラッジ掻板19が、筒部122内側面に付着したスラッジSに達すると、スラッジ掻板19に当たったスラッジSが掻き落とされ、本体11の回収孔11aを通って下に用意されている容器に回収される。スラッジSが掻き落とされた後は、再び供給管16からスカムが送り込まれ、こうした繰り返しによりスラッジと水分とを分離した脱水処理が行われる。
【0019】
よって、本実施形態におけるスカムの脱水方法によれば、遠心分離脱水機10を使用することにより、薬品を使用しなくてもスカムの脱水を行うことが可能になり、その分コストを抑えることが可能になった。また、脱水処理を行ったスラッジSは、運搬などに対して扱いやすいものとなり、ボイラーの燃料やセメントの原料としてそのまま再利用することもできる。
【0020】
以上、本実施形態に係る製紙過程で出たスカムの脱水方法について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 遠心分離脱水機
11 本体
12 回転体
13 回転軸
16 供給管
17 受け皿
19 スラッジ掻板
121 天板部
122 筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙過程で使用される白水から取り出した汚泥などのスラッジに水分を含んだスカムから水分を取り除くための、製紙過程で出たスカムの脱水方法において、
下方に開口した凹形状容器の回転体内に、その下方から上方に伸びた供給管を介して送り込んだ前記スカムを、回転する前記回転体の天板部に接触させて飛ばし、スラッジを前記回転体の側面に付着させる一方、水分を前記回転体の側面に沿って下方に落とすようにしてスラッジと水分とを分離するようにしたことを特徴とする製紙過程で出たスカムの脱水方法。
【請求項2】
請求項1に記載する製紙過程で出たスカムの脱水方法において、
前記スカムを一定量連続して前記回転体内に送り込んだ後、前記スカムの送り込みを止めた状態で一定時間だけ前記回転体を回転させるようにしたことを特徴とする製紙過程で出たスカムの脱水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−132624(P2011−132624A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291548(P2009−291548)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】