説明

製膜条件設定方法及び光電変換装置の製造方法

【課題】高性能の光電変換装置を製造するための結晶質シリコン光電変換層の製膜条件設定方法を提供する。
【解決手段】製膜条件候補に対してSiH流量を増加させて結晶質シリコンからなる光電変換層92を形成し、該光電変換層92の高輝度反射領域の面積割合及び基板面内分布を取得する。分布が均一である場合製膜条件候補を最終製膜条件に設定し、分布が不均一である場合放電電極の各給電点に供給される高周波電力密度を調整して最終製膜条件を設定する。また、予め取得した任意のラマンピーク比を有する光電変換層92についてSiH流量の変化量と高輝度反射領域の面積割合との相関関係に基づいて光電変換層92のラマンピーク比を取得する。取得したラマンピーク比が設計値を満たす場合製膜条件候補を最終製膜条件に設定し、ラマンピーク比が設計値から外れる場合SiH流量、SiH分圧または高周波電力密度を調整して最終製膜条件を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電層として結晶質シリコン層を用いる光電変換装置において、結晶質シリコン層を製膜する際の製膜条件設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換装置としては、p型シリコン系半導体(p層)、i型シリコン系半導体(i層)及びn型シリコン系半導体(n層)の薄膜をプラズマCVD法等で製膜して形成した光電変換層を備えた薄膜シリコン系太陽電池が知られている。薄膜シリコン系太陽電池では、薄膜シリコン系太陽電池の長所としては、大面積化が容易であること、膜厚が結晶系太陽電池の1/100程度と薄く、材料が少なくて済むことなどが挙げられる。このため、薄膜シリコン系太陽電池は、結晶系太陽電池と比較して低コストでの製造が可能となる。
【0003】
薄膜シリコン系太陽電池に用いる光電変換層には、一般に非晶質シリコンを主とする膜や結晶質シリコンを主とする膜が用いられる。
特許文献1では、微結晶(結晶質)シリコンを主として有する光電変換層の膜質を評価する指針として、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおけるアモルファスシリコン相のピーク強度Iaに対する結晶シリコン相のピーク強度Icの比(ラマンピーク比)Ic/Iaを用いている。特許文献2は、ラマンピーク比が所定範囲になるように、SiH/H流量比を制御することを開示している。
特許文献2は、電池性能を維持しつつスループットを向上させるための製膜条件の設定方法として、所望の製膜速度を設定した後、製膜圧力、SiH流量、H流量、投入高周波電力の順で設定することを開示している。
特許文献3は、1mを超える大面積基板を用いてラマンピーク比の平均値が3.5以上8以下の範囲となる条件で結晶質シリコンi層を製膜すると、光電変換装置の発電出力を高くすることができ、ラマンピーク比の平均値が2.5以下では可視光が散乱されるために輝度が高くなる領域(高輝度反射領域)が発生することを開示している。また、発電性能を向上させるためには高輝度反射領域の面積割合を3%以下に抑制する必要があり、高輝度反射領域の発生を抑制するために、高周波電力密度とSiH分圧とにより初期条件を調整することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−66343号公報(特許請求の範囲、[0022]〜[0024]、[0035]〜[0050])
【特許文献2】特開2007−150151号公報([0046]〜[0055]、図6)
【特許文献3】国際公開第2010/050034号([0006]、[0011]〜[0012]、[0015]〜[0016]、[0033]、[0036]〜[0048]、請求項1,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示される方法でプラズマCVD装置を用いて1mを超える大面積基板に結晶質シリコン層の製膜処理を実施するにあたり、各種製膜条件を最適化して結晶質シリコン層を製膜しても、想定よりも低い変換効率となる場合があった。これは、プラズマCVD装置の製膜用放電電極を複数領域に分けてプラズマ発生状態を均一にするように調整する際に各製膜条件を個別に設定するために、放電電極の各複数領域の製膜条件間で意図しない干渉が発生したり、基板面内で製膜条件の分布が発生したりするために、最適な製膜条件からのずれが生じることが原因と考えられた。このため、1mを超える大面積基板面内の全面で最適化された製膜条件をより簡易に設定する方法が望まれる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高い性能を有する光電変換装置を製造するための結晶質シリコン光電変換層の製膜条件設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記解題を解決するために、本発明は、基板上に結晶質シリコンからなる光電変換層を有する光電変換装置において製膜装置の放電電極の複数の給電点に高周波電力を供給して前記光電変換層を製膜するための製膜条件設定方法であって、少なくともSiH流量及び前記複数の給電点の各々に供給する高周波電力密度を含む前記光電変換層の製膜条件候補を選定する工程と、SiH流量を、前記選定された製膜条件候補に対して所定の割合で増加させた値に設定して、前記基板上に前記光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層が形成された基板を第1の分割にて所定数の評価区画に区切り、前記第1の分割の評価区画の各々について前記SiH流量を増加させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出するとともに、前記基板における前記高輝度反射領域の分布を取得する工程と、前記分布に基づいて、前記光電変換層に発生した前記高輝度反射領域の均一性を判定する工程と、前記分布が均一であると判定された場合に、前記製膜条件候補を最終製膜条件に設定する工程と、前記分布が不均一であると判定された場合に、前記製膜条件候補のうち前記複数の給電点に供給する前記高周波電力密度を調整して最終製膜条件を設定する工程とを備える製膜条件設定方法を提供する。
【0008】
上記発明において、前記複数の給電点に供給する前記高周波電力密度を調整して最終製膜条件を設定する工程が、高周波電力密度を、前記選定された製膜条件候補に対して所定の割合で増加または減少させた値に設定して、前記基板上に前記光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層が形成された基板を第2の分割にて所定数の区画に区切り、前記第2の分割の評価区画の各々について前記高周波電力密度を増加または減少させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出する工程と、前記第2の分割の評価区画毎に、前記高輝度反射領域の面積割合が所定値以下となる前記高周波電力密度のうち最も小さい値を、前記複数の給電点のうち当該評価区画に最も近い給電点に供給する前記高周波電力密度の最終製膜条件に設定する工程とを含むことが好ましい。
【0009】
本発明者らは、高輝度反射領域が発生せず高い性能が得られるように各パラメータが個別に設定された条件(製膜条件候補)について、SiH流量を所定量増加させると、高い出力が得られる条件では高輝度反射領域が均一に発生し、低い出力となる(すなわち、最適化されていなかった)条件では高輝度反射領域が不均一に発生することを見出した。本発明は、このような現象に基づいて、個別に検討され設定された製膜条件が最適なものであるかを検証し、最適値から外れる場合は該当する評価区画に最も近い放電電極の給電点の高周波電力密度の微調整を実施して、最終的な製膜条件を設定するものである。
本発明に依れば、高性能の光電変換装置となる結晶質シリコン光電変換層の最適な製膜条件を選定することができる。
【0010】
また本発明は、基板上に結晶質シリコンからなる光電変換層を有する光電変換装置において製膜装置の放電電極の複数の給電点に高周波電力を供給して前記光電変換層を製膜するための製膜条件設定方法であって、前記光電変換層中の非晶質シリコン相のラマンピーク強度に対する結晶質シリコン相のラマンピーク強度の比をラマンピーク比と定義した時に、任意の前記ラマンピーク比を有する前記光電変換層についてSiH流量の変化割合と高輝度反射領域の面積割合との相関関係を取得する工程と、少なくともSiH流量、SiH分圧及び前記複数の給電点の各々に供給する高周波電力密度を含む前記光電変換層の製膜条件候補を選定する工程と、SiH流量を、前記選定された製膜条件候補に対して所定の割合で増加させた値に設定して、前記基板上に前記光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層が形成された基板を第3の分割にて所定数の評価区画に区切り、前記第3の分割の評価区画の各々について前記SiH流量を増加させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出する工程と、前記製膜条件候補に対して所定の割合で増加させたSiH流量と、前記算出された高輝度反射領域の面積割合とを前記相関関係と照合して、前記形成された光電変換層の前記評価区画の各々についてラマンピーク比を取得する工程と、前記評価区画の各々について取得されたラマンピーク比が設計値を満たす場合に、前記製膜条件候補を最終製膜条件に設定する工程と、前記評価区画の各々について取得されたラマンピーク比が設計値と異なる場合に、前記SiH流量、前記SiH分圧及び前記複数の給電点の各々に供給する前記高周波電力密度のうち少なくとも1つを調整して最終製膜条件を設定する工程とを含む製膜条件設定方法を提供する。
【0011】
本発明において、前記評価区画の各々について取得された前記ラマンピーク比が前記設計値と異なる場合に最終製膜条件を設定する工程が、前記算出された高輝度反射領域の面積割合に基づいて前記基板における前記高輝度反射領域の分布を取得する工程と、前記分布に基づいて、前記光電変換層に発生した前記高輝度反射領域の均一性を判定する工程と、前記分布が均一であると判定されたときに、前記ラマンピーク比が前記設計値より高い場合に、前記光電変換層のラマンピーク比が前記設計値を満たすように、前記SiH流量を前記製膜条件候補に対して増加させた値を最終製膜条件に設定する工程と、前記ラマンピーク比が前記設計値より低い場合に、前記光電変換層のラマンピーク比が前記設計値を満たすように、前記SiH流量を前記製膜条件候補に対して減少させた値を最終製膜条件に設定する工程と、前記分布が不均一であると判定されたときに、前記光電変換層が形成された基板を第4の分割にて所定数の区画に区切り、前記第4の分割の評価区画の各々について前記高周波電力密度を増加または減少させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出する工程と、前記第4の分割の評価区画毎に、前記高輝度反射領域の面積割合が所定値以下となる前記高周波電力密度のうち最も小さい値を、前記複数の給電点のうち当該評価区画に最も近い給電点に供給する前記高周波電力密度の最終製膜条件に設定する工程とを含むことが好ましい。
【0012】
本発明におけるラマンピーク比は、ラマン散乱分光法により得られるラマンスペクトルを測定し、480cm−1付近の非晶質シリコン相のピーク強度Iaに対する520cm−1付近の結晶質シリコン相のラマンピーク強度Icの比Ic/Iaと定義される。
ラマンピーク比は、結晶質シリコンからなる光電変換層の膜質を評価する指標の1つであり、ラマンピーク比が2.5以下程度である時、高輝度反射領域が発生する。通常は、結晶質シリコン光電変換層が形成された基板について分光装置を用いてラマンスペクトルを測定することにより得られる指標である。基板面積が大きい場合は、基板を別の評価場所へ移動し、基板分割してそれぞれラマンスペクトルを測定する必要があった。
本願発明者らは、結晶質シリコン光電変換層のラマンピーク比によって、SiH流量を変動させたときの高輝度反射領域の発生状況が異なることを見出した。すなわち、ラマンピーク比が高いほど、SiH流量を製膜条件候補に対して増加させても高輝度反射領域が発生しにくい傾向があった。本発明は、このような現象に基づいて、基板を分割したり別装置にてラマンスペクトルを測定することなく、ある条件で製膜された結晶質シリコン光電変換層のラマンピーク比を推定するとともに、ラマンピーク比が設計値と異なる場合に製膜条件の再調整を実施して、最終的な製膜条件を設定するものである。
本発明に依れば、簡易な方法により結晶質シリコン光電変換層のラマンピーク比を得ることができるとともに、所望のラマンピーク比を有する結晶質シリコン光電変換層の製膜条件を選定することができる。
【0013】
また本発明は、プラズマCVD装置により基板上に結晶質シリコンからなる光電変換層を有する光電変換装置の製造方法であって、少なくとも上記の製膜条件設定方法により設定された最終製膜条件で、前記光電変換層を形成する。
本発明に依れば、1mを超える大面積基板面内の全面で最適な結晶質シリコン光電変換層の製膜条件が選定されているために、生産される光電変換装置は高い性能を有する。また、歩留まりを向上させて生産効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、初期調整終了後の製膜条件(製膜条件候補)の妥当性を確認することができる。このため、製膜条件候補が最適条件からずれていたために光電変換装置の性能が低下するという不具合を回避することができるとともに、高性能の光電変換装置を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明により製造されるタンデム構造の光電変換装置の構成を表す概略図である。
【図2】光電変換装置として太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。
【図3】光電変換装置として太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。
【図4】光電変換装置として太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。
【図5】光電変換装置として太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。
【図6】製膜条件候補が適切であるときの高輝度反射領域の発生状況を説明する概略図であり、(a)は製膜条件候補のSiH流量で製膜した場合、(b)はSiH流量を製膜条件候補から10%増加させて製膜した場合である。
【図7】製膜条件候補が適切でないときの高輝度反射領域の発生状況を説明する概略図であり、(a)は製膜条件候補のSiH流量で製膜した場合、(b)はSiH流量を製膜条件候補から10%増加させて製膜した場合である。
【図8】第2セル層を形成するために用いる薄膜製造装置の電極構造を示す概略図である。
【図9】種々の高周波電力密度で製膜した第2セル層の高輝度反射領域の発生状況を説明する図である。
【図10】ラマンピーク比が異なる結晶質シリコン膜についてのSiH流量増加量と高輝度反射領域の面積割合との相関関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、光電変換装置の構成を示す概略図である。光電変換装置100は、タンデム型シリコン系太陽電池であり、基板1、透明電極層2、太陽電池光電変換層3としての第1セル層91(非晶質シリコン系)及び第2セル層92(結晶質シリコン系)、中間コンタクト層5、及び裏面電極層4を備える。なお、ここで、シリコン系とはシリコン(Si)やシリコンカーバイト(SiC)やシリコンゲルマニウム(SiGe)を含む総称である。また、結晶質シリコン系とは、非晶質シリコン系以外のシリコン系を意味するものであり、微結晶シリコンや多結晶シリコンも含まれる。
上記実施の形態では太陽電池として、タンデム型太陽電池について説明したが、本発明は、この例に限定されるものではない。例えば、光電変換層として微結晶シリコンをはじめとする結晶質シリコンを適用したシングル型太陽電池、トリプル型太陽電池にも同様に適用可能である。
【0017】
図1の光電変換装置の製造方法を、太陽電池パネルを製造する工程を例に挙げて説明する。図2から図5は、本実施形態の太陽電池パネルの製造方法を示す概略図である。
【0018】
(1)図2(a)
基板1として、面積が1mを越える大型のソーダフロートガラス基板(例えば1.4m×1.1m×板厚:3.0mm〜4.5mm)を使用する。基板端面は熱応力や衝撃などによる破損防止にコーナー面取りやR面取り加工されていることが望ましい。
【0019】
(2)図2(b)
透明電極層2として、酸化錫(SnO)を主成分とする膜厚約500nm以上800nm以下の透明導電膜を、熱CVD装置にて約500℃で製膜する。この際、透明電極膜の表面には、適当な凹凸のあるテクスチャーが形成される。透明電極層2として、透明電極膜に加えて、基板1と透明電極膜との間にアルカリバリア膜(図示されず)を形成しても良い。アルカリバリア膜は、酸化シリコン膜(SiO)を50nm〜150nm、熱CVD装置にて約500℃で製膜処理する。
【0020】
(3)図2(c)
その後、基板1をX−Yテーブルに設置して、YAGレーザーの第1高調波(1064nm)を、図の矢印に示すように、透明電極膜の膜面側から照射する。加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、透明電極膜を発電セル7の直列接続方向に対して垂直な方向へ、基板1とレーザー光を相対移動して、溝10を形成するように幅約6mmから15mmの所定幅の短冊状にレーザーエッチングする。
【0021】
(4)図2(d)
第1セル層91として、非晶質シリコン薄膜からなるp層、i層及びn層を、プラズマCVD装置により製膜する。SiHガス及びHガスを主原料にして、減圧雰囲気:30Pa以上1000Pa以下、基板温度:約200℃にて、透明電極層2上に太陽光の入射する側から非晶質シリコンp層31、非晶質シリコンi層32、非晶質シリコンn層33の順で製膜する。非晶質シリコンp層31は非晶質のBドープシリコンを主とし、膜厚10nm以上30nm以下である。非晶質シリコンi層32は、膜厚200nm以上350nm以下である。非晶質シリコンn層33は、非晶質シリコンに微結晶シリコンを含有するPドープシリコンを主とし、膜厚30nm以上50nm以下である。非晶質シリコンp層31と非晶質シリコンi層32の間には、界面特性の向上のためにバッファー層を設けても良い。
【0022】
次に、第1セル層91の上に、プラズマCVD装置を用い、第2セル層92としての結晶質シリコンp層41、結晶質シリコンi層42、及び、結晶質シリコンn層43を順次製膜する。結晶質シリコンp層41はBドープした微結晶シリコンを主とし、膜厚10nm以上50nm以下である。結晶質シリコンi層42は微結晶シリコンを主とし、膜厚は1.2μm以上3.0μm以下である。結晶質シリコンn層43はPドープした微結晶シリコンを主とし、膜厚20nm以上50nm以下である。なお、結晶質シリコンn層は、非晶質シリコンn層に置換しても良い。
【0023】
微結晶シリコンを主とするi層膜をプラズマCVD法で形成するにあたり、プラズマ放電電極と基板1の表面との距離dは、3mm以上10mm以下にすることが好ましい。3mmより小さい場合、大型基板に対応する製膜室内の各構成機器精度から距離dを一定に保つことが難しくなるとともに、近過ぎて放電が不安定になる恐れがある。10mmより大きい場合、十分な製膜速度(1nm/s以上)を得難くなるとともに、プラズマの均一性が低下しイオン衝撃により膜質が低下する。
【0024】
第1セル層91と第2セル層92の間に、接触性を改善するとともに電流整合性を取るために半反射膜となる中間コンタクト層5を設ける。中間コンタクト層5として、膜厚:20nm以上100nm以下のGaまたはAlがドープされたZnO膜を、ターゲット:GaドープZnO焼結体またはAlドープZnO焼結体を用いてスパッタリング装置により製膜する。また、中間コンタクト層5を設けない場合もある。
【0025】
(5)図2(e)
基板1をX−Yテーブルに設置して、レーザーダイオード励起YAGレーザーの第2高調波(532nm)を、図の矢印に示すように、光電変換層3の膜面側から照射する。パルス発振:10kHzから20kHzとして、加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、透明電極層2のレーザーエッチングラインの約100μmから150μmの横側を、溝11を形成するようにレーザーエッチングする。またこのレーザーは基板1側から照射しても良く、この場合は光電変換層3の非晶質シリコン系の第1セル層で吸収されたエネルギーで発生する高い蒸気圧を利用して光電変換層3をエッチングできるので、更に安定したレーザーエッチング加工を行うことが可能となる。レーザーエッチングラインの位置は前工程でのエッチングラインと交差しないように位置決め公差を考慮して選定する。
【0026】
(6)図3(a)
裏面電極層4としてAg膜/Ti膜を、スパッタリング装置により、減圧雰囲気、製膜温度:150℃から200℃にて製膜する。本実施形態では、Ag膜:150nm以上500nm以下、これを保護するものとして防食効果の高いTi膜:10nm以上20nm以下を、この順に積層する。あるいは、裏面電極層4を、25nmから100nmの膜厚を有するAg膜と、15nmから500nmの膜厚を有するAl膜との積層構造としても良い。また、タンデム型太陽電池など600nm以上の長波長側反射光が必要なものにおいては、約100nm〜450nmの膜厚を有するCu膜と、約5nm〜150nmの膜厚を有するTi膜との積層構造としても良い。
n層43と裏面電極層4との接触抵抗低減と光反射向上を目的に、光電変換層3と裏面電極層4との間に、スパッタリング装置により、膜厚:50nm以上100nm以下のGaまたはAlがドープされたZnO膜を製膜して設けても良い。
【0027】
(7)図3(b)
基板1をX−Yテーブルに設置して、レーザーダイオード励起YAGレーザーの第2高調波(532nm)を、図の矢印に示すように、基板1側から照射する。レーザー光が光電変換層3で吸収され、このとき発生する高いガス蒸気圧を利用して裏面電極層4が爆裂して除去される。パルス発振:1kHz以上50kHz以下として加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、透明電極層2のレーザーエッチングラインの250μmから400μmの横側を、溝12を形成するようにレーザーエッチングする。
【0028】
(8)図3(c)と図4(a)
発電領域を区分して、基板端周辺の膜端部をレーザーエッチングし、直列接続部分で短絡することを防止する。基板1をX−Yテーブルに設置して、レーザーダイオード励起YAGレーザーの第2高調波(532nm)を、基板1側から照射する。レーザー光が透明電極層2と光電変換層3で吸収され、このとき発生する高いガス蒸気圧を利用して裏面電極層4が爆裂して、裏面電極層4/光電変換層3/透明電極層2が除去される。パルス発振:1kHz以上50kHz以下として加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、基板1の端部から5mmから20mmの位置を、図3(c)に示すように、X方向絶縁溝15を形成するようにレーザーエッチングする。なお、図3(c)では、光電変換層3が直列に接続された方向に切断したX方向断面図となっているため、本来であれば絶縁溝15位置には裏面電極層4/光電変換層3/透明電極層2の膜研磨除去をした周囲膜除去領域14に相当する領域がある状態(図4(a)参照)が表れるべきであるが、基板1の端部への加工の説明の便宜上、この位置にY方向断面を表して形成された絶縁溝をX方向絶縁溝15として説明する。このとき、Y方向絶縁溝は後工程で基板1周囲膜除去領域の膜面研磨除去処理を行うので、設ける必要がない。
【0029】
絶縁溝15は基板1の端より5mmから15mmの位置にてエッチングを終了させることにより、太陽電池パネル端部からの太陽電池モジュール6内部への外部からの水分浸入の抑制に、有効な効果を呈するので好ましい。
【0030】
尚、以上までの工程におけるレーザー光はYAGレーザーとしているが、YVO4レーザーやファイバーレーザーなどが同様に使用できるものがある。
【0031】
(9)図4(a:太陽電池膜面側から見た図、b:受光面の基板側から見た図)
後工程のEVA等を介したバックシート24との健全な接着・シール面を確保するために、基板1周辺(周囲膜除去領域14)の積層膜は、段差があるとともに剥離し易いため、この膜を除去して周囲膜除去領域14を形成する。基板1の端から5〜20mmで基板1の全周囲にわたり膜を除去するにあたり、X方向は前述の図3(c)工程で設けた絶縁溝15よりも基板端側において、Y方向は基板端側部付近の溝10よりも基板端側において、裏面電極層4/光電変換層3/透明電極層2を、砥石研磨やブラスト研磨などを用いて除去を行う。
研磨屑や砥粒は基板1を洗浄処理して除去する。
【0032】
(10)図5(a)(b)
直列に並んだ一方端の発電セル7の裏面電極層4と、他方端部の発電セル7に接続した集電用セルの裏面電極層4とから銅箔を用いて集電して太陽電池パネル裏側の端子箱23の部分から電力が取出せるように処理する。集電用銅箔は各部との短絡を防止するために銅箔幅より広い絶縁シートを配置する。
集電用銅箔などが所定位置に配置された後に、太陽電池モジュール6の全体を覆い、基板1からはみ出さないようにEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)等による接着充填材シートを配置する。
接着充填材シートの上に、防水効果の高いバックシート24を設置する。バックシート24は本実施形態では防水防湿効果が高いようにPETシート/Al箔/PETシートの3層構造よりなる。
バックシート24の端子箱23の取付け部分には、開口貫通窓を設けて集電用銅箔を取出す。この開口貫通窓部分では、バックシート24と裏面電極層4の間に絶縁材を複数層で設置して外部からの水分などの侵入を抑制する。
バックシート24までを所定位置に配置したものを、ラミネータ装置により減圧雰囲気で内部の脱気を行い約150〜160℃でプレスしながら、接着充填材シート(EVA)を架橋させて密着させ、密封処理をする。
なお、接着充填材シートはEVAに限定されるものではなく、PVB(ポリビニルブチラール)など類似の機能を保有する接着充填材を利用することが可能である。この場合は、圧着する手順、温度や時間など条件を適正化して処理を行う。
【0033】
(11)図5(a)
太陽電池モジュール6の裏側に端子箱23を接着剤で取付ける。
(12)図5(b)
銅箔と端子箱23の出力ケーブルとをハンダ等で接続し、端子箱23の内部を封止剤(ポッティング剤)で充填して密閉する。これで太陽電池パネル50が完成する。
(13)図5(c)
図5(b)までの工程で形成された太陽電池パネル50について発電検査ならびに、所定の性能試験を行う。発電検査は、AM1.5、全天日射基準太陽光(1000W/m)のソーラシミュレータを用いて行う。なお、発電検査は、太陽電池パネル50が完全に完成した後に行ってもよいし、アルミフレーム枠の取り付け前に行ってもよい。
(14)図5(d)
発電検査(図5(c))に前後して、外観検査をはじめ所定の性能検査を行う。
【0034】
太陽電池モジュール6に強度を付加するとともに取付け座となるアルミフレーム枠を、太陽電池モジュール6の周囲に取り付ける。太陽電池モジュール6とアルミフレーム枠との間にはゴム製のガスケット等を介して、弾力性を保持しながら確実に保持することが好ましい。
これで、太陽電池パネル50が完成する。
【0035】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る製膜条件設定方法を以下で説明する。第1実施形態は、プラズマCVD装置により微結晶シリコン層である第2セル層92を形成するにあたり、公知の方法で個別に設定された第2セル層92の製膜条件が適切であるかを判定し、大面積基板の全面内の製膜条件に微調整を実施するものである。
第1実施形態では、以下の工程(1−1)〜(1−8)により第2セル層(結晶質シリコンp層41、結晶質シリコンi層42、及び、結晶質シリコンn層43)製膜条件が設定される。
本実施形態の第2セル層92の製膜で使用されるプラズマCVD装置は、後述の図8で示される放電電極を備える。すなわち、本実施形態で使用されるプラズマCVD装置は8個の放電電極を備え、放電電極の上下にそれぞれ8個の給電点が設けられる。
【0036】
(1−1)製膜条件候補の選定
第2セル層92を形成するための製膜条件候補が選定される。製膜条件候補の選定方法は、例えば特開2007−150151号公報に開示される方法に従うことができる。製膜条件としては、SiH流量、製膜圧力、水素希釈率、高周波電力密度、基板と放電電極との距離、基板温度などが挙げられる。具体的な条件範囲例は以下の通りである。SiH流量は、製膜圧力、水素希釈率、製膜室の大きさなどから目標とする製膜速度と必要な膜質を得る条件が適宜決定される。
製膜圧力:3000Pa以下
水素希釈率:SiH:H=1:45〜75
プラズマ発生周波数:40MHz以上100MHz以下
高周波電力密度:1.0〜1.15W/cm
基板−電極間距離:3〜10mm
基板温度:約200℃
【0037】
(1−2)SiH流量を増加させた条件での第2セル層の製膜
SiH流量が製膜条件候補から所定量増加させた値に設定され、他の条件は製膜条件候補の同じとして、基板1の第1セル層91上(または中間コンタクト層5上)に第2セル層92が製膜される。例えば、SiH流量の設定値は、製膜条件候補に対して10%増加させた値とする。SiH流量を増加させても後述する高輝度反射領域を目視で確認できない場合は、SiH流量を製膜条件候補に対して例えば15%以上に増加させても良い。ただし、SiH流量を製膜条件候補に対して20%を越えて増加させても高輝度反射領域を目視で確認できない場合は、高周波電力密度などの条件がが不適当である可能性があるので、上述の製膜条件候補を再設定を実施する。
【0038】
(1−3)高輝度反射領域の面積割合の算出及び分布の取得
上記のようにSiH流量を製膜条件候補から増加させて製膜された第2セル層92について、発生した高輝度反射領域の面積割合を算出するとともに、基板面内での分布が取得される。
基板面内での高輝度反射領域の発生状況を判定するために、第2セル層92が形成された基板は、第1の分割の評価区画として所定の区画数に区切られる。第1の分割では、基板の端部及び中央部それぞれでの均一性が確認できるように、基板は各辺で3分割以上に区切られると良い。すなわち、基板は少なくとも9区画に区切られる。なお、目視での高輝度反射領域の検出と評価を実施する場合、作業効率や判断の確実性の観点から、基板の長辺及び短辺で6分割されて36区画とされるのが上限とされる。基板の長辺及び短辺で、分割数は同じでもよく、異なっていても良い。画像処理により高輝度反射領域を検出する場合は、評価区画数に上限はないが、発生した高輝度反射領域の基板面内での分布状況の評価に適するように、評価区画数を適宜設定すると良い。例えば、基板面積が1m以上と大きい場合に高輝度反射領域が偏在する様子をより正確に評価するためには、評価区画数を100区画以上に増加させる、すなわち、1つの評価区画の面積を小さくすると良い。
【0039】
評価区画毎に、第2セル層92の高輝度反射領域の面積割合が算出される。高輝度反射領域は、目視または画像処理により検出される。
目視の場合、高輝度反射領域は輝度が高く白く光る領域として観察される。目視による評価では、限度見本を参照して高輝度反射領域の発生割合を算出する。
画像処理による高輝度反射領域の検出及び面積割合の算出は、以下の工程により実施される。第2セル層92の膜面からCCDカメラを用いて基板が撮影され、RGB二次元画像が取得される。取得されたRGB二次元画像はコンピュータに送信される。コンピュータは、RGB二次元画像をCIE−XYZ表色系に変換し、次いでCIE−L*a*b*表色系に変換する。これにより、二次元画像におけるL*値(輝度)が取得される。コンピュータはカメラで取り込んだ画素ごとに、L*値と予め設定された閾値とを比較し、閾値以上の領域を高輝度反射領域として判定する。コンピュータは基板全体の面積に対する高輝度反射領域の面積割合を算出する。
【0040】
各評価区画の高輝度反射領域の面積割合は、例えば表1に以下のA〜Dの4段階を用いて評価される。各評価区画の評価に基づいて、基板全体でのSiH流量を所定量増加させたときの高輝度反射領域の発生分布が取得される。
なお、目視による評価においても、B,C,Dでの高輝度反射領域の発生状況は明らかに違っており、限度見本を参照することにより表1に示される面積割合の評価を行うことが可能である。
【表1】

【0041】
(1−4)高輝度反射領域の均一性の判定
上述のようにして得られた高輝度反射領域の分布に基づいて、発生した高輝度反射領域の均一性が判定される。判定は以下の基準に従って実施される。
【0042】
第1の基準として、基板全体でのSiH流量を所定量増加させたときに表1によりCまたはDと判定された評価区画(高輝度反射領域の面積割合が3%より大きい評価区画)が全評価区画数の8割以上であることが要求される。
12区画(3区画×4区画)以上であって1区画あたりの面積が基板面積の2.8%より大きく10%以下となるように区切られた場合、更に第2の基準として、表1によりAまたはBと判定された区画(高輝度反射領域の面積割合が3%以下の評価区画)が2つ以上連続していないことが要求される。36区画以上100区画未満、すなわち、1区画あたりの面積が基板面積の1.0%より大きく2.8%以下となるように区切られた場合は、表1によりAまたはBと判定された評価区画が3つ以上連続していないことが要求される。1区画あたりの面積が基板面積の1.0%以下の場合(100区画以上)には、複数の区画を統合して100区画未満とし、統合後の面積割合に応じて上記と同じく2つ以上もしくは3つ以上AまたはBと判断された評価区画が連続していないことが要求される。なお、統合後の各区画の面積割合が均一になるように統合する。
【0043】
9区画で第1の基準、及び、12区画以上で第1の基準及び第2の基準を満たす場合、高輝度反射領域は基板面内で均一に発生していると判定される。
9区画で第1の基準を満たしていない場合、及び、12区画以上で第1の基準及び第2の基準のうち少なくとも一つを満たしていない場合、高輝度反射領域は基板面内で不均一に発生していると判定される。
なお、上記評価は一実施例であり、発生した高輝度反射領域の均一性判断に求められる精度に応じて、表1の評価の段階数、各段階での面積割合の数値範囲、上述の均一性の判断基準の境界とされる高輝度反射領域の面積割合の数値を適宜設定することができる。
【0044】
(1−5)最終製膜条件の設定
図6及び図7は、(a)製膜条件候補のSiH流量で製膜した第2セル層、及び、(b)SiH流量を製膜条件候補から10%増加させて製膜した第2セル層の高輝度反射領域の発生状況の一例を説明する図である。図6及び図7では、基板が4区画×4区画、計16区画に区切られている。図6は、選択した製膜条件候補が適切であり、太陽電池パネルとしたときの出力が91W/mとなった場合である。図7は選択した製膜条件候補が不適切であり、太陽電池パネルとしたときの出力が88W/mと低い場合である。
【0045】
図6(a)及び図7(a)に示すように、製膜条件候補のSiH流量で製膜した場合は高輝度反射領域の発生状況はほとんど差がなく、いずれの評価区画でも評価がAまたはB(高輝度反射領域の面積割合は3%以下)であった。
【0046】
製膜条件候補が適切である場合、SiH流量を製膜条件候補から10%増加させると、図6(b)に示すように、80%以上の評価区画で評価がDとなった。評価区画I−4のみがBと判定されており、AまたはBと判定された評価区画は2つ以上連続して発生していなかった。
一方、製膜条件候補が不適切である図7(b)では、CまたはDと判定される評価区画が80%未満であった。また、AまたはBと判定された評価区画が2つ以上連続して発生していた。SiH流量が所定量増加しても高輝度反射領域の増加が少ないことは、ラマンピークが高く結晶化率が高くなる製膜条件で製膜基準条件を選定していたためと推定できる。
【0047】
従って、上記(1−4)においてSiH流量を製膜条件候補から所定量増加させて、高輝度反射領域が均一に発生していると判定された場合、上記(1−1)で選定された製膜条件候補は適切であるとされ、製膜条件候補が最終製膜条件に決定される。図1の太陽電池パネルの生産では、この決定された最終製膜条件にて第2セル層92が製膜される。
【0048】
上記(1−4)において高輝度反射領域の発生が不均一であると判定された場合、上記(1−1)で選定された製膜条件候補は不適切であるとされる。不適切と判定された製膜条件候補は、工程(1−6)〜(1−8)に従って各給電点に供給される高周波電力密度が調整されて最適化される。
【0049】
(1−6)高周波電力密度を変化させた条件での第2セル層の製膜
各給電点に供給される高周波電力密度について、製膜条件候補に対して所定量を段階的に増加または減少させた複数の値にそれぞれ設定される。各給電点に供給される高周波電力密度は、製膜条件候補に対して増加または減少量は0.05〜0.1W/cm刻みに、放電電極103のプラズマ発生分布を考慮して−30%から+30%の範囲で選定される。例えば、本実施形態の製膜条件候補である1.15W/cmを基準値として、0.1W/cm刻みに、製膜条件候補近傍では0.05W/cm刻みに増加または減少させた値に設定される。なお、高周波電力密度の下限値と上限値は、高輝度反射領域の発生状況とともに、製造時間(製膜速度)や、製造される太陽電池パネルの出力、ならびに高周波電力供給系統の電気的安定性なども考慮されて決定される。
高周波電力密度以外の条件は製膜条件候補の同じとして、基板1の第1セル層91上(または中間コンタクト層5上)に第2セル層92が製膜される。
【0050】
(1−7)高輝度反射領域の面積割合の算出
上記のように高周波電力密度を製膜条件候補から所定量を増減させて製膜された第2セル層92について、発生した高輝度反射領域の面積割合が算出される。
【0051】
図8は、本実施形態における第2セル層を形成するために用いる薄膜製造装置の電極構造を示す概略図である。本実施形態の放電電極103は、8個の放電電極103a〜103hを備え、各々は、互いに略平行にX方向へ伸びる二本の横電極と、二本の横電極の間に設けられ互いに略平行にZ’方向へ伸びる複数の棒状の縦電極とを備える。更に複数の電極単位に分割構成しても良い。放電電極103を分割構成する場合は、好ましくは給電点の数に合わせて分割形成する。
【0052】
整合器113a(113aa〜113ha)、113b(113ab〜113hb)は、出力側のインピーダンスを整合し、図示されない高周波電源から高周波給電伝送路114a(114aa〜114ha)、114b(114ab〜114hb)を介して高周波給電伝送路112a(112aa〜112ha)、112b(112ab〜112hb)を介して高周波電力を放電電極103(103a〜103h)へ送電する。なお、図8では整合器は113aa、113ah、113baのみ示した。
【0053】
工程(1−6)における第2セル層92の製膜では、各放電電極103に送電される高周波電力密度は、上記で設定された各値で略同一とされる。放電電極103a〜103hの各々には、縦電極に沿った両端付近にある給電点153a〜153hと給電点154a〜154hの近傍に各々接続された原料ガス配管から原料ガスを略均等に供給され、この原料ガスを、図中の矢印に示す方向(対向電極側)へ複数箇所から略均一に放出する。なお、図8では給電点153a及び154aのみを示してある。このように、放電電極103に高周波電力及びガスが供給されることにより、放電電極103とこれに対向する対向電極との間にプラズマが発生する。このプラズマにより、原料ガスが分解されて製膜時には基板1に第2セル層92としての結晶質シリコン膜が製膜される。
【0054】
第2セル層92が形成された基板は、第2の分割として所定の区画数に区切られ、評価区画毎に高輝度反射領域の検出及び面積割合の算出が実施される。
第2の分割では、上記(1−3)の第1の分割に一致するように区切られていても良い。あるいは、第2セル層を形成する製膜装置の電極構造に応じて、第1の分割と異なっていても良い。図8に示す構造の電極を用いた場合、第2セル層が形成された基板は、給電点153a側と給電点154a側の2つの評価区画に区切られる。また、放電電極103a〜103hが並列する方向に、基板は8つの評価区画に区切られる。すなわち、本実施形態では放電電極の構造に応じて、16区画に区切られる。
例えば、第1の分割で4区画×4区画に区切り、第2の分割で図8の電極構造に対応させて基板長辺で8区画×基板短辺で2区画に区切ると、第1の分割による評価区画と第2の分割による評価区画とを対応させることができる。例えば、図6のI−1とII−1とを合わせた領域は、図9におけるI−1とI−2とを合わせた領域に一致する。こうすると、工程(1−2)〜(1−5)の製膜条件候補を判定するときの領域と、工程(1−6)〜(1−8)の条件調整を行うときの領域とが対応関係にあると、調整精度を向上させることができるので好ましい。
【0055】
高輝度反射領域は、上記(1−3)と同様の方法で検出される。表1を用いて各区画の高輝度反射領域の面積割合が評価される。この評価により、高周波電力密度を変化させたときの高輝度反射領域の発生分布が得られる。
【0056】
(1−8)高周波電力密度の最終製膜条件の設定
図9は、種々の高周波電力密度で製膜した第2セル層92の高輝度反射領域の発生状況の一例を説明する図である。図9は、図8の電極構造に対応させて16区画に区切って評価した場合である。図9におけるI−1からI−8は図8の給電点153a〜153hに対応し、II−1からII−8は図8の給電点154a〜154hに対応させたものとする。図9において、各給電点に供給される高周波電力密度は同一値に設定されており,(a)は1.0W/cm、(b)は1.1W/cm、(c)は1.15W/cm、(d)は1.2W/cm、(e)は1.3W/cm、(f)は1.4W/cmで製膜した場合である。
図9によると、高周波電力密度が高くなるほど、高輝度反射領域の発生面積が小さくなっている。図9(a)〜(f)における斜線で示した評価区画は、最も小さい高周波電力密度で評価がAとなった時、あるいは、本例における上限値である1.4W/cmで評価Bとなった時を示している。なお、本例では高周波電力密度の上限値を1.4W/cmとしたが、これは製膜時間(製膜速度)や製造される太陽電池パネルの出力を考慮して決定された値である。
【0057】
例えば、I−8の評価区画は、1.1W/cm(図9(b))で評価がAとなり、1.15W/cm以上としても評価はAのままである。このように、ある高周波電力密度の時に高輝度反射領域が消失した評価区画は、高周波電力密度を更に高くしても高輝度反射領域は発生しない。高周波電力密度が高くなりすぎるとラマンピーク比が大きくなる、すなわち結晶化が進みすぎて太陽電池パネルの電圧が低下し出力低下を引き起こす。このため、高周波電力密度は、必要な製膜速度に対して高輝度反射領域が3%以下となる範囲内において、低い方が好ましい。
【0058】
従って、各評価区画において評価Aを達成できた最小の高周波電力密度の値、または、上限値(すなわち、図9で各評価区画が斜線で表される時の高周波電力密度の値)が、当該評価区画に最も近い給電点に供給する高周波電力密度の最終製膜条件に決定される。例えば、I−8の評価区画に対応する(すなわち、最も近い)給電点153hに供給される高周波電力密度を1.1W/cmとする。その他の製膜条件については、上記(1−1)で選定された製膜条件候補が最終製膜条件に決定される。
図1の太陽電池パネルの生産では、この決定された最終製膜条件にて第2セル層92が製膜される。
【0059】
例えば図8の電極構造では、放電電極103の上下に給電点153、154が設けられる。つまり、基板の長辺に沿って給電点153、154が配置されている。このような給電構造に対応して高輝度反射領域が発生することがある。具体的に、第2セル層92を形成すると、基板1の長辺側の2端部に高輝度反射領域が発生するが基板1中央部には発生しない場合、あるいは、基板1の中央部に高輝度反射領域が発生し長辺側の2端部には高輝度反射領域が発生しない場合がある。
工程(1−4)及び工程(1−7)で得られる高輝度反射領域の分布が給電構造に対応する場合、放電電極103に供給される高周波電力の位相が変調される。位相変調は、高周波電力密度の調整と併用されることが好ましい。
【0060】
高周波電力密度の最終製膜条件を設定するには、すべての評価区画において高輝度反射領域の発生がAまたはBと評価されることが好ましいが、高周波電力密度を高くしても高輝度反射領域が所定値(表1では3%)以下にならない評価区画が存在する場合がある。このようなときは、高周波電源が異常発振したり、熱異常などで保護回路が動作しない範囲内で、高周波電力密度を上記の上限値より更に増加させ、増加させた範囲内で最も高輝度反射領域の面積割合が小さくなる条件を最終製膜条件とする。
【0061】
工程(1−6)〜(1−8)を実施しても全評価区画において表1に基づく評価がAまたはBを達成しない場合、工程(1−1)に戻って別のSiHガス流量が製膜条件候補に設定される。あるいは、高輝度反射領域が基板全体で所定値を超える面積で発生する場合は、薄膜製造装置内部の各部品のセッティング状態の再設定や、上記(1−1)で選択された製膜条件候補の再選定が実施される。条件の再選定やセッティング状態の再設定が実施されたのち、工程(1−2)〜(1−8)が実施される。この場合、最終製膜条件が決定されるまで、工程(1−1)〜(1−8)が繰り返される。
【0062】
本実施形態では、まず製膜条件候補の妥当性が判断できる。そして、製膜条件間の干渉や基板面内での製膜条件の分布を考慮して調整が行われるため、最終製膜条件は基板全面で最適化されたものとなっている。
【0063】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る製膜条件設定方法を以下で説明する。第2実施形態は、第2セル層92のラマンピーク比を適正化するための製膜条件設定方法である。第2実施形態の製膜条件設定方法は、単独で実施しても良いし、第1実施形態の製膜条件設定方法と併せて実施されても良い。この場合、第1実施形態の製膜条件設定を実施した後、第2実施形態の製膜条件設定を実施することが作業効率を考慮すると好ましい。
第2実施形態では、以下の工程(2−1)〜(2−7)により第2セル層92の製膜条件が設定される。
【0064】
(2−1)SiH流量変化量と高輝度反射領域の面積割合との相関関係の取得
SiH流量変化量と高輝度反射領域の面積割合との相関関係が予め取得される。
上記(1−1)の製膜条件候補を基準としてSiH流量を増加または減少させて、基板上に結晶質シリコン膜が形成されたサンプルが作製される。製膜候補条件に対して高周波電力密度などを変えた場合についても、同様にSiH流量を所定量増減させて結晶質シリコン膜を形成したサンプルが作製される。高周波電力密度などを変えることにより、同じSiH流量であっても異なるラマンピーク比を有する結晶質シリコン膜となる。この製膜に関して、結晶質シリコン膜は、図1の太陽電池パネルを形成するときと同様に第1セル層(非晶質シリコン層)または中間コンタクト層上に形成されても良いし、ガラス基板上に直接形成されていても良い。相関関係は、ラマンピーク比を計測するために、基板は上述のような大面積基板から切出した試験片、例えば50mm×50mm程度の小さい試験片を用いて取得されるのが好ましい。
【0065】
各サンプルについて、高輝度反射領域の面積割合が取得される。本工程における高輝度反射領域の面積割合の取得は上記の工程(1−3)と同じとされるが、小面積基板であるため基板を区切って評価される必要はない。
【0066】
製膜条件候補のSiH流量で製膜した各サンプルについて、ラマンピーク比が取得される。ラマンピーク比は、ラマン散乱分光法により得られるラマンスペクトルを測定し、480cm−1付近の非晶質シリコン相のピーク強度Iaに対する520cm−1付近の結晶質シリコン相のラマンピーク強度Icの比Ic/Iaと定義される。
【0067】
製膜条件候補のSiH流量の変化割合が0%と設定される。各ラマンピーク比について、製膜条件候補からのSiH流量の変化割合が求められ、SiH流量の変化割合と高輝度反射領域の面積割合の相関関係を表すグラフが取得される。SiH流量が増加する場合を+、SiH流量が減少する場合を−として表される。
図10は、相関関係を表すグラフの一例である。同図において、横軸は工程(1−1)における製膜条件候補のSiH流量を基準としたときのSiH流量増加割合、縦軸は高輝度反射領域の面積割合である。図10では、SiH流量変化割合が0%の時のラマンピーク比が3.0〜3.5、3.5〜5.0、及び、5.0〜8.0の場合について示した。図10の例ではラマンピーク比3.5〜5.0を設計値としている。これらのラマンピーク比範囲の設定値は、第2セル層92に要求されるラマンピーク比や評価精度などに応じて適宜設定される。
【0068】
SiH流量変化割合が0%では、ラマンピーク比が3.0〜3.5、3.5〜5.0、5.0〜8.0と異なっていても、高輝度反射領域の面積割合は1%以下とほとんど差はない。図10から明らかなように、ラマンピーク比が小さいほど、SiH流量がわずかに増加しただけで高輝度反射領域の面積割合が大幅に増加する。例えば、SiH流量を3%増加させた場合、ラマンピーク比が3.0〜3.5の結晶質シリコン膜では高輝度反射領域の面積割合は約6%になる。一方、ラマンピーク比が3.5〜5.0及び5.0〜8.0では3%以下である。SiH流量を6%増加させた場合、ラマンピーク比3.5〜5.0の結晶質シリコン膜では高輝度反射領域の面積割合が約8%になるが、ラマンピーク比5.0〜8.0の結晶質シリコン膜では面積割合は約3%となっている。
【0069】
(2−2)製膜条件候補の選定
第2セル層92を形成するための製膜条件候補が選定される。本工程で選定される製膜条件候補は、第1実施形態の工程(1−1)と同じ条件であっても良いし、第1実施形態の工程により決定された最終候補条件としても良い。
【0070】
(2−3)SiH流量を変化させた条件での結晶質シリコン膜の製膜
SiH流量が製膜条件候補から3%及び6%増加させた値に設定され、他の条件は製膜条件候補の同じとして、基板1の第1セル層91上(または中間コンタクト層5上)に第2セル層92が製膜される。
ここではSiH流量の増加割合を3%及び6%に設定したが、取得された相関関係のグラフに基づいて、ラマンピーク比の設計値と設計値から外れた場合とで高輝度反射領域の面積割合の数値に明確な差が出るようなSiH流量の増加割合が設定される。
【0071】
(2−4)高輝度反射領域の面積割合の算出
SiH流量を製膜条件候補から3%及び6%増加させて製膜された第2セル層92の高輝度反射領域の面積割合がそれぞれ算出される。高輝度反射領域の面積割合は、第3の分割として基板を所定の評価区画数に区切り、評価区画毎に算出される。第3の分割は、工程(1−3)の第1の分割と同じでも良いし、異なっていても良い。本工程において高輝度反射領域の面積割合は工程(1−3)で説明した画像処理に算出される。
また、本工程により、各SiH流量増加割合としたときの高輝度反射領域の基板面内分布が取得される。
【0072】
(2−5)ラマンピーク比の判定
SiH流量を3%及び6%増加させた時の高輝度反射領域の面積割合を、工程(2−1)で得られた相関関係と照合させる。これにより、工程(2−2)で設定された製膜条件候補で製膜した第2セル層92について、各評価区画でのラマンピーク比範囲が取得される。
【0073】
(2−6)最終製膜条件の設定
取得されたラマンピーク比範囲がすべての評価区画において設計値であれば、工程(2−2)で設定された製膜条件候補が、最終製膜条件に決定される。図1の太陽電池パネルの生産では、この決定された最終製膜条件にて第2セル層92が製膜される。
推定されたラマンピーク比範囲が設計値と異なる評価区画が存在していた場合、工程(2−2)で設定された製膜条件候補の調整が実施される。
【0074】
(2−7)製膜条件候補の調整
工程(2−6)でラマンピーク比範囲が設計値と異なる評価区画が存在すると判定された場合、第1実施形態の工程(1−4)と同様の方法で、高輝度反射領域の分布の均一性が判定される。
【0075】
高輝度反射領域が均一であると判定された場合、SiH流量またはSiH分圧の調整が実施される。具体的に、ラマンピーク比範囲が設計値よりも低く高輝度反射領域が均一である場合、SiH流量またはSiH分圧が製膜条件候補から低減される。ラマンピーク比範囲が設計値よりも高く高輝度反射領域が均一である場合、SiH流量またはSiH分圧が製膜条件候補に対して増加される。製膜条件候補からの増加量または減少量は所定値としても良い。あるいは、製膜条件候補に対して所定の比率(具体的に製膜条件候補に対して−5%から20%の範囲内)で増加させても良い。
SiH流量またはSiH分圧を増加または減少させたのち、その条件を製膜条件候補として、工程(2−2)〜(2−6)が実施される。SiH流量またはSiH分圧調整後の第2セル層92のラマンピーク比範囲が設計値を満たすと判定されるまで、本工程の製膜条件候補の調整が実施される。
【0076】
高輝度反射領域が不均一であると判定された場合、高周波電力密度の調整が実施される。高周波電力密度の調整は、第1実施形態の工程(1−6)〜(1−8)と同様の工程で実施される。
第2セル層92が形成された基板は、第4の分割として所定の評価区画数に区切られる。第4の分割は第2の分割と同じでも良いし、異なっていても良い。この時、工程(1−7)で説明したように、第3の分割による評価区画と第4の分割による評価区画とを対応させるように区切ると、調整精度が向上するので好ましい。
【0077】
各評価区画について、高輝度反射領域が均一に発生するように、高周波電力密度が調整される。具体的に、(1−8)と同様に、高周波電力密度を製膜条件候補に対して0.1W/cm刻みに、製膜条件候補近傍では0.05W/cm刻みに増加または減少させた値に設定して第2セル層92を製膜する。そして、第2セル層92を所定の評価区画に区切り、各評価区画での高輝度反射領域の面積割合を取得する。各評価区画において高輝度反射領域の評価がAとなる最小の高周波電力密度の値を、当該評価区画に最も近い給電点に供給する高周波電力密度条件に設定する。設定された条件を製膜条件候補として、工程(2−2)〜(2−6)が実施される。高周波電力密度調整後の第2セル層92のラマンピーク比範囲が設計値を満たすと判定されるまで、本工程の製膜条件候補の調整が実施される。
【0078】
本実施形態により、第2セル層92のラマンピーク比を簡易な方法により評価することができる。また、1mを超える大面積基板面内の全面で、所望のラマンピーク比を有する第2セル層92の製膜条件が選定される。このため、高性能な光電変換装置(太陽電池パネル)を高い歩留まりで生産することができ、生産効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 基板
2 透明電極層
3 光電変換層
4 裏面電極層
5 中間コンタクト層
6 太陽電池モジュール
7 発電セル
31 非晶質シリコンp層
32 非晶質シリコンi層
33 非晶質シリコンn層
41 結晶質シリコンp層
42 結晶質シリコンi層
43 結晶質シリコンn層
50 太陽電池パネル
91 第1セル層
92 第2セル層
100 光電変換装置
103 放電電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に結晶質シリコンからなる光電変換層を有する光電変換装置において製膜装置の放電電極の複数の給電点に高周波電力を供給して前記光電変換層を製膜するための製膜条件設定方法であって、
少なくともSiH流量及び前記複数の給電点の各々に供給する高周波電力密度を含む前記光電変換層の製膜条件候補を選定する工程と、
SiH流量を、前記選定された製膜条件候補に対して所定の割合で増加させた値に設定して、前記基板上に前記光電変換層を形成する工程と、
前記光電変換層が形成された基板を第1の分割にて所定数の評価区画に区切り、前記第1の分割の評価区画の各々について前記SiH流量を増加させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出するとともに、前記基板における前記高輝度反射領域の分布を取得する工程と、
前記分布に基づいて、前記光電変換層に発生した前記高輝度反射領域の均一性を判定する工程と、
前記分布が均一であると判定された場合に、前記製膜条件候補を最終製膜条件に設定する工程と、
前記分布が不均一であると判定された場合に、前記製膜条件候補のうち前記複数の給電点に供給する前記高周波電力密度を調整して最終製膜条件を設定する工程とを備える製膜条件設定方法。
【請求項2】
前記複数の給電点に供給する前記高周波電力密度を調整して最終製膜条件を設定する工程が、
高周波電力密度を、前記選定された製膜条件候補に対して所定の割合で増加または減少させた値に設定して、前記基板上に前記光電変換層を形成する工程と、
前記光電変換層が形成された基板を第2の分割にて所定数の区画に区切り、前記第2の分割の評価区画の各々について前記高周波電力密度を増加または減少させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出する工程と、
前記第2の分割の評価区画毎に、前記高輝度反射領域の面積割合が所定値以下となる前記高周波電力密度のうち最も小さい値を、前記複数の給電点のうち当該評価区画に最も近い給電点に供給する前記高周波電力密度の最終製膜条件に設定する工程とを含む請求項1に記載の製膜条件設定方法。
【請求項3】
基板上に結晶質シリコンからなる光電変換層を有する光電変換装置において製膜装置の放電電極の複数の給電点に高周波電力を供給して前記光電変換層を製膜するための製膜条件設定方法であって、
前記光電変換層中の非晶質シリコン相のラマンピーク強度に対する結晶質シリコン相のラマンピーク強度の比をラマンピーク比と定義した時に、任意の前記ラマンピーク比を有する前記光電変換層についてSiH流量の変化割合と高輝度反射領域の面積割合との相関関係を取得する工程と、
少なくともSiH流量、SiH分圧及び前記複数の給電点の各々に供給する高周波電力密度を含む前記光電変換層の製膜条件候補を選定する工程と、
SiH流量を、前記選定された製膜条件候補に対して所定の割合で増加させた値に設定して、前記基板上に前記光電変換層を形成する工程と、
前記光電変換層が形成された基板を第3の分割にて所定数の評価区画に区切り、前記第3の分割の評価区画の各々について前記SiH流量を増加させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出する工程と、
前記製膜条件候補に対して所定の割合で増加させたSiH流量と、前記算出された高輝度反射領域の面積割合とを前記相関関係と照合して、前記形成された光電変換層の前記評価区画の各々についてラマンピーク比を取得する工程と、
前記評価区画の各々について取得されたラマンピーク比が設計値を満たす場合に、前記製膜条件候補を最終製膜条件に設定する工程と、
前記評価区画の各々について取得されたラマンピーク比が設計値と異なる場合に、前記SiH流量、前記SiH分圧及び前記複数の給電点の各々に供給する前記高周波電力密度のうち少なくとも1つを調整して最終製膜条件を設定する工程とを含む製膜条件設定方法。
【請求項4】
前記評価区画の各々について取得された前記ラマンピーク比が前記設計値と異なる場合に最終製膜条件を設定する工程が、
前記算出された高輝度反射領域の面積割合に基づいて前記基板における前記高輝度反射領域の分布を取得する工程と、
前記分布に基づいて、前記光電変換層に発生した前記高輝度反射領域の均一性を判定する工程と、
前記分布が均一であると判定されたときに、
前記ラマンピーク比が前記設計値より高い場合に、前記光電変換層のラマンピーク比が前記設計値を満たすように、前記SiH流量を前記製膜条件候補に対して増加させた値を最終製膜条件に設定する工程と、
前記ラマンピーク比が前記設計値より低い場合に、前記光電変換層のラマンピーク比が前記設計値を満たすように、前記SiH流量を前記製膜条件候補に対して減少させた値を最終製膜条件に設定する工程と、
前記分布が不均一であると判定されたときに、前記光電変換層が形成された基板を第4の分割にて所定数の区画に区切り、
前記第4の分割の評価区画の各々について前記高周波電力密度を増加または減少させて形成された前記光電変換層の高輝度反射領域の面積割合を算出する工程と、
前記第4の分割の評価区画毎に、前記高輝度反射領域の面積割合が所定値以下となる前記高周波電力密度のうち最も小さい値を、前記複数の給電点のうち当該評価区画に最も近い給電点に供給する前記高周波電力密度の最終製膜条件に設定する工程とを含む請求項3に記載の製膜条件設定方法。
【請求項5】
基板上に結晶質シリコンからなる光電変換層を有する光電変換装置の製造方法であって、少なくとも請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製膜条件設定方法により設定された最終製膜条件で、前記光電変換層を形成する光電変換装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−55083(P2013−55083A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190066(P2011−190066)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】