説明

複写機

【課題】複写機において、原稿スキャン処理の速やかな開始を損なわず、また、原稿スキャン処理とプリント処理とが並行して行われる高速コピー処理において、画像データの記録よりもプリント処理が先行せず、光源の明るさチェックを可能とすること。
【解決手段】光源241を備えたキャリッジ240が、ADF230の参照板236に対向する第1の位置で第1ランプチェック処理を行い、その結果が良好でなければ、キャリッジを移動させて第2の位置で第2ランプチェック処理を行う。前記第1ランプチェック処理の結果が良好であれば高速コピー処理が実行され、第2ランプチェック処理の結果が良好であれば、キャリッジを第2の位置から原稿台に対向する位置へ直行させて、高速コピー処理又は通常コピー処理が実行され、その他の場合はコピー処理が中断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機は、一般に、画像読み取り部及びそれを制御するスキャナ制御部と、画像形成部及びそれを制御するプリンタ制御部と、前記スキャナ制御部及び前記プリンタ制御部を制御するメイン制御部とを備えている。前記画像読み取り部は、原稿を走査して画像を読み取りつつ、その画像のデータをメモリに記録する原稿スキャン処理を実行する。また、前記画像形成部は、前記画像読み取り部によって得られた画像データに基づいてシート材に画像を形成するプリント処理を実行する。
【0003】
前記スキャナ制御部、前記プリンタ制御部及び前記メイン制御部が独立して設けられることにより、各制御部のソフトウェアの独立性が高くなるため、高度な制御を実現するソフトウェアの生産性が向上する。
【0004】
前記画像読み取り部は、光透過性の材料からなる原稿台の下方で所定の副走査方向に移動することにより、原稿台に載置された原稿を走査するキャリッジを備えている。前記原稿台は、一般に、フラットベッドと称される。前記キャリッジは、主走査方向に伸びて形成された光源及びミラーが一体化されたユニットである。また、前記キャリッジは、前記主走査方向に直交する副走査方向において往復移動可能に支持されている。前記キャリッジにおける前記光源の光は、前記原稿台を透過して原稿に反射し、原稿からの反射光は、前記キャリッジにおける前記ミラーによって変向され、受光素子へ導かれる。前記原稿からの反射光には、原稿の画像の情報が含まれている。
【0005】
なお、通常の画像読み取り部は、前記光源及び第1のミラーが一体化された第1キャリッジと、前記第1のミラーで反射された光を変向して受光素子へ導く複数の第2のミラーが一体化された第2キャリッジとを備えている。前記第2キャリッジは、前記第1のミラーから受光素子までの光路長を一定に保持するように、前記副走査方向において前記第1キャリッジに連動する。
【0006】
前記キャリッジにおける光源の明るさが不足する場合、正常な画像データが得られない。前記光源の明るさが不足する状態でコピー処理が実行されると、現像剤及びシート材が無駄に消費される。そこで、前記画像読み取り部は、前記メイン制御部から前記原稿スキャン処理の開始指令を受けたときに、前記光源の明るさチェックするランプチェックを実行し、前記光源の明るさが正常であることを確認した上で原稿の走査を行う。
【0007】
前記ランプチェックは、原稿以外の参照面に前記光源の光を投光し、前記受光素子によって得られる前記参照面からの反射光の強度に基づいて、前記光源の良否判別を行う処理である。例えば、特許文献1には、前記ランプチェックの結果がエラーであるときに、前記画像形成部が前記プリント処理を停止することが示されている。前記参照面は、例えば、白色、薄い黄色又は薄い灰色などの均一な色の面である。
【0008】
また、複写機において、ADF(Automatic Document Feeder)は、前記原稿台の上側を開閉可能に支持された原稿カバーに設けられる。ADFを備えた複写機において、前記キャリッジは、副走査方向に移動しながら前記原稿台(フラットベッド)に載置された原稿をスキャンするキャリッジ移動スキャンと、前記ADFにおける原稿の搬送経路に対向する位置に停止して、搬送中の原稿をスキャンする原稿移動スキャンとに兼用される。前記ADFにおける原稿の搬送経路の一部には、光透過性の材料からなる読み取り窓が設けられ、前記キャリッジにおける前記光源の光は、前記読み取り窓を通じて原稿に照射され、原稿からの反射光は、前記読み取り窓を通じて前記キャリッジのミラーに戻る。
【0009】
前記ADFを備えた複写機において、前記キャリッジは、前記原稿移動スキャンを速やかに開始できるよう、待機状態において、前記ADFにおける前記読み取り窓に対向する位置に停止されている。以下、前記ADFにおける原稿の搬送経路の一部に設けられた前記読み取り窓に対向する前記キャリッジの位置のことを、ADF位置と称する。
【0010】
前記ADFにおける原稿の搬送経路の前記読み取り窓に対向する部分には、前記参照面が形成されている。原稿の搬送経路の前記読み取り窓に対向する部分は、原稿が前記ADF内で搬送されていないときに、前記ADF位置にある前記キャリッジの前記光源からの光が前記読み取り窓を通過して到達する部分である。これにより、前記キャリッジが、待機位置である前記ADF位置に存在するときに、前記キャリッジを移動させることなく速やかに前記ランプチェックを行うことが可能となる。なお、前記ADFにおいて前記参照面が形成された部材は、特許文献1において、白原稿ガイド板29として示されている。
【0011】
また、複写機は、反転コピー機能及び集約コピー機能などの応用コピー機能を備えている。前記反転コピー機能は、原稿の画像を表裏反転させた画像をシート材に出力する機能である。前記集約コピー機能は、複数の原稿の画像を縮小して並べた画像を1枚のシート材に出力する機能である。このような応用コピー機能の多くは、1枚又は複数枚の原稿についての前記原稿スキャン処理が完了し、必要な画像データが全て揃って初めて、前記プリント処理が可能となる。そのため、複写機は、通常のコピー処理において、1枚又は複数枚の原稿についての前記原稿スキャン処理によって得られる画像データを符号化により圧縮してメモリに蓄積し、その後、その画像データを復号化して得られるデータに基づいて前記プリント処理を実行する。
【0012】
一方、複写機においては、FCOT(First Copy Output Time)が、性能の指標として重要視される。FCOTとは、コピー開始操作が検知された時点から、最初のコピー済みシート材が出力されるまでの時間である。複写機は、FCOTを短縮するため、前記通常のコピー処理とは異なる高速コピー処理を実行する機能を備えている。前記高速コピー処理においては、前記画像読み取り部による前記原稿スキャン処理と、前記画像形成部による前記プリント処理とが並行して行われる。前記高速コピー処理により、原稿1ページ分の前記原稿スキャン処理の完了を待つことなくシート材の搬送が開始されるため、FCOTが短くなる。
【0013】
また、前記高速コピー処理においては、前記原稿スキャン処理によって得られる画像データが、符号化されずにメモリに記録され、前記プリント処理は、その符号化されていない画像データを用いて実行される。これにより、符号化及び復号化の時間が省略され、コピー処理を高速化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−109652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、前記原稿カバーは、コピー開始時点において完全に閉じられていることが原則であるが、前記原稿カバーが完全に閉じられていない状態でコピー開始操作がなされることもある。例えば、本などの厚みの大きな原稿が前記原稿台に載置された状態でコピーが行われる場合、及び、利用者が、前記原稿台に載置された原稿を厚みの大きな物(手など)で押さえながらコピーが行われる場合などが考えられる。
【0016】
前記キャリッジが前記ADF位置に停止した状態で前記ランプチェックが行われる場合、前記原稿カバーが完全に閉じられていなければ、前記光源が正常であっても、前記光源の異常が検知されてしまう。即ち、前記キャリッジが前記ADF位置に停止した状態での前記ランプチェックにおいて、正常なチェック結果は、前記光源が正常であることを意味するが、非正常なチェック結果は、必ずしも前記光源が異常であることを意味しないという問題点があった。
【0017】
一方、前記原稿カバーの開閉によって変位しない部分に固定の参照面が設けられ、その固定の参照面に対向する位置に前記キャリッジが停止した状態で、前記ランプチェックが行われることが考えられる。しかしながら、その場合、前記ランプチェックの実行ごとに、前記キャリッジを前記ADF位置と前記固定の参照面に対向する位置との間で移動させることが必要となる。そのため、原稿カバーが閉じられているときでさえ、前記原稿スキャン処理を速やかに開始できないという問題点があった。
【0018】
また、上記問題点は、前記高速コピー処理が行われる場合に特に顕著となる。即ち、前記ランプチェックを含む前記原稿スキャン処理と前記プリント処理とが並行して実行される場合、前記ランプチェックのための前記キャリッジの移動に要する時間が、必要な画像データのメモリへの記録よりも、前記プリント処理が先行するという弊害を招く。前記プリント処理が先行した場合、無画像のシート材又は必要な画像の一部が欠けたシート材が出力されてしまう。
【0019】
本発明の目的は、複写機において、原稿カバーが閉じられているときに原稿スキャン処理の速やかな開始を損なわず、また、FCOTの短縮のために原稿スキャン処理とプリント処理とが並行して行われる場合に画像データの記録よりもプリント処理が先行する不具合を防止しつつ、原稿スキャン用の光源の明るさチェックを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る複写機は、以下の(1)〜(5)に示される各構成要素を備え、さらに、それら構成要素に含まれる複数の制御部は、以下の(6)〜(10)に示される処理を実行する。
(1)第1の構成要素は、原稿台の上側を開閉可能に支持され、自動原稿搬送装置(ADF)が設けられた原稿カバーである。
(2)第2の構成要素は、原稿に投光する光源と前記原稿からの反射光を受光素子へ導く導光部の一部とが設けられ、前記原稿台に沿って副走査方向に移動可能に支持され、前記原稿カバーが閉じられた状態において前記自動原稿搬送装置における前記原稿の搬送経路の一部に形成された第1の参照面に対向する第1の位置に停止して待機するキャリッジである。
(3)第3の構成要素は、前記キャリッジを制御し、前記受光素子により得られる画像データをメモリに記録する原稿スキャン処理を制御する第1制御部である。
(4)第4の構成要素は、シート材を供給位置から画像形成位置を経て排出位置へ搬送し、前記画像形成位置を通過する前記シート材に対して前記メモリに記録された前記画像データに基づいて画像を形成するプリント処理を制御する第2制御部である。
(5)第5の構成要素は、前記第1制御部及び前記第2制御部を制御する第3制御部である。
(6)前記第3制御部は、所定のコピー開始操作が検知されたときにおける所定条件の下で、前記原稿スキャン処理と前記プリント処理とが並行して行われる高速コピー処理の指令を前記第1制御部に対して出力する。
(7)前記高速コピー処理の指令を受けた前記第1制御部は、前記第1の位置に停止する前記キャリッジの前記光源を点灯させ、前記受光素子により検出される前記第1の参照面からの反射光の強度に基づいて前記光源の良否を検知する第1のランプチェック処理を実行するとともに該第1のランプチェック処理の結果を前記第3制御部に出力する。
(8)前記第1制御部は、前記第1のランプチェック処理の結果が良好でないときに、前記キャリッジを前記第1の位置から該第1の位置よりも前記原稿台寄りの部位に固定された第2の参照面に対向する第2の位置へ移動させるとともに前記キャリッジの前記光源を点灯させ、前記受光素子により検出される前記第2の参照面からの反射光の強度に基づいて前記光源の良否を検知する第2のランプチェック処理を実行するとともに該第2のランプチェック処理の結果を前記第3制御部に出力する。
(9)前記第2制御部は、前記第1のランプチェック処理の結果が良好であるとき、又は前記第2のランプチェック処理の結果が良好であるときに、前記原稿スキャン処理の制御へ移行し、前記第1のランプチェック処理の結果及び前記第2のランプチェック処理の結果がいずれも良好でないときに、前記原稿スキャン処理の制御へ移行しない。
(10)前記第3制御部は、前記第1制御部から前記光源が良好である旨の前記第1のランプチェック処理の結果を得たときに、前記高速コピー処理の指令を前記第2制御部に対して出力する第1の処理を実行し、前記第1制御部から前記光源が良好である旨の前記第2のランプチェック処理の結果を得たときに、前記第1の処理及び前記原稿スキャン処理の終了後に前記プリント処理が行われる通常コピー処理の指令を前記第2制御部に対して出力する第2の処理のいずれか一方を実行し、前記第1制御部から前記光源が良好でない旨の前記第2のランプチェック処理の結果を得たときに、コピー処理を中断する第3の処理を実行する。
【0021】
また、本発明に係る複写機において、前記第2制御部は、前記第2のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記キャリッジを前記第2の位置から前記原稿台に対向する第3の位置へ直行させることによって前記原稿スキャン処理の制御へ移行することが考えられる。
【0022】
また、本発明に係る複写機において、前記第1制御部及び前記第2制御部は、それぞれ次の(11)から(14)に示される処理を実行することが考えられる。
(11)前記高速コピー処理の指令を受けた前記第1制御部は、前記第1のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記原稿スキャン処理において前記受光素子により得られる画像データを符号化せずに前記メモリに記録する。
(12)前記高速コピー処理の指令を受けた前記第2制御部は、前記メモリから符号化されていない前記画像データを読み出して前記プリント処理を行う。
(13)前記高速コピー処理の指令を受けた前記第1制御部は、前記第2のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記原稿スキャン処理において前記受光素子により得られる画像データを符号化して前記メモリに記録する。
(14)前記通常コピー処理の指令を受けた前記第2制御部は、前記メモリに記録された復号化後の画像データを用いて前記プリント処理を行う。
【0023】
また、本発明に係る複写機は、前記第1制御部によって符号化されない画像データが記録される前記メモリと、前記第1制御部によって符号化された画像データが記録される前記メモリとを個別に備えることが考えられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高速コピー処理に対応した原稿スキャン処理が行われる前に、原稿スキャン用の前記光源の明るさのチェックが、少なくとも1回は実行される。そのため、前記光源が不良である状態のままコピー処理が行われることが防止される。ここで、前記高速コピー処理は、FCOTの短縮のために前記原稿スキャン処理と前記プリント処理とが並行して行われる処理である。一方、前記高速コピー処理とは異なる通常コピー処理は、前記原稿スキャン処理と前記プリント処理とが順次行われる処理である。
【0025】
また、本発明によれば、前記キャリッジは、ADFにおける原稿の搬送経路に設けられた前記第1の参照面に対向する位置で待機する。そして、前記原稿カバーが閉じられているときは、前記キャリッジの移動を伴わない迅速な前記第1のランプチェック処理によって前記光源の良否が確実に検知される。従って、前記原稿カバーが閉じられており、前記光源が正常であるときには、前記コピー開始操作が検知された時点から、迅速な前記第1のランプチェック処理を経て前記原稿スキャン処理へ速やかに移行し、FCOTの短い前記高速コピー処理が可能である。
【0026】
また、本発明によれば、前記原稿カバーが閉じられていないとき、前記キャリッジの移動を伴う前記第2のランプチェック処理によって前記光源の良否が確実に検知される。前記第2のランプチェック処理は、前記光源の光を固定部位に設けられた前記第2の参照面に反射させて前記光源の明るさをチェックする処理であるため、前記原稿カバーの状態に関わらず、前記光源の良否を確実に検知できる。そして、前記第2のランプチェック処理の結果が良好であれば、前記高速コピー処理又は前記通常コピー処理のいずれかが実行される。従って、前記原稿カバーが閉じられていないときに、前記光源が正常であるにも関わらずコピー処理が実行されないという不都合が解消される。
【0027】
また、プリント処理を制御する前記第2制御部に対する前記高速コピー処理の指令は、前記第1のランプチェック処理又は前記第2のランプチェック処理の結果が良好であることが確認された上で出力される。そのため、2回のランプチェック処理が行われている間に、前記原稿スキャン処理による画像データの記録よりも前記プリント処理が先行する不具合を防止できる。
【0028】
また、前記第2のランプチェック処理が行われるときの前記キャリッジの位置である前記第2の位置は、前記キャリッジが、起点となる前記第1の位置から前記原稿台に対向する位置へ移動する経路の途中の位置である。従って、前記第2のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記キャリッジが、前記第2の位置から前記原稿台に対向する第3の位置へ直行することにより、前記原稿スキャン処理が速やかに開始され、FCOTが短縮される。また、前記第2のランプチェック処理の結果が良好であることが確認された上で前記高速コピーが行われる場合、前記通常コピーが行われる場合に比べればFCOTが短縮される。
【0029】
また、前記第1制御部及び前記第2制御部が、符号化されない画像データを用いて前記高速コピー処理を行えば、前記高速コピー処理がより高速に実行される。一方、前記第1制御部及び前記第2制御部が、画像データの符号化による圧縮及び復号化を行いつつ前記通常コピー処理を行えば、前記メモリの容量を抑えることができる。
【0030】
また、符号化されない画像データが記録される前記メモリ(第1メモリ)と、符号化された画像データが記録される前記メモリ(第2メモリ)とが個別に設けられることにより、以下に示す効果が得られる。即ち、前記第1メモリとしてアクセス速度の速いメモリが採用されることによって前記高速コピー処理がより高速に実行される。また、前記第2メモリとして比較的安価な大容量のメモリが採用されることにより、多様な応用コピー機能を比較的低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る複写機1の概略構成を表す断面図である。
【図2】複写機1におけるキャリッジの走査範囲を下方から見た図である。
【図3】複写機1におけるキャリッジの位置の変化を表すスキャナ部の断面図である。
【図4】原稿カバー部が開閉される様子を表す複写機1の側面図である。
【図5】複写機1における制御関連の主要部のブロック図である。
【図6】複写機1における高速コピー処理の第1の例の手順を表すフローチャートである。
【図7】複写機1における通常コピー処理の手順を表すフローチャートである。
【図8】複写機1における高速コピー処理の第2の例の手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0033】
まず、図1に示される断面図を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る複写機1の全体構成について説明する。複写機1は、電子写真方式の複写機である。前記複写機1は、原稿から画像を読み取って画像データをメモリに記録し、シート材を給紙カセットから画像形成位置を経て排紙トレイへ搬送するとともに、画像形成位置を通過する前記シート材に対し、前記メモリに記録された画像データに基づく画像をトナー像として形成する。前記シート材は、画像が転写される紙又はPET製シートなどの媒体である。
【0034】
図1に示されるように、複写機1は、画像形成部100及び画像読み取り部200を備える。前記画像形成部100は、給紙カセット101、給紙ローラ110、レジストローラ120、画像転写ユニット130、定着装置140、排紙ローラ150、及び排紙トレイ103等を備えている。なお、前記複写機1は、複写機として機能する他、さらに、プリンタ及びファクシミリ装置としても機能する、いわゆる複合機である。
【0035】
前記画像形成部100において、前記給紙カセット101は、複数枚のシート材2を収容する容器である。前記給紙ローラ110は、前記給紙カセット101に収容されたシート材2を一枚ずつ既定のシート搬送経路102へ送り出すローラである。前記レジストローラ120は、前記給紙ローラ110によって送り出されたシート材2を把持し、そのシート材2を所定のタイミングで前記画像転写ユニット130へ送り出す一対のローラである。なお、前記給紙カセット101の位置は、シート材2の供給位置の一例である。
【0036】
前記画像転写ユニット130は、前記レジストローラ120から搬送されてくるシート材2をさらに後段の前記定着装置140へ搬送しつつ、そのシート材2にトナー画像を転写する装置である。前記画像転写ユニット130は、像担持体である感光体ドラム、及びその感光体ドラムの周囲に配置された複数の機器から構成される。前記感光体ドラムの周囲には、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置及びクリーニング装置などが配置されている。
【0037】
前記定着装置140は、前記画像転写ユニット130から搬送されてくるシート材2をさらに後段へ搬送しつつ、そのシート材2に転写されたトナーをそのシート材2に溶着させる装置である。前記定着装置140は、ヒータが内包されたヒートローラとこれに圧接して従動する加圧ローラとを備え、さらに、前記ヒートローラの表面温度を検出する定着温度センサ141を備えている。
【0038】
前記排紙ローラ150は、前記定着装置140から搬送されてくるシート材2を前記排紙トレイ103へ排出するローラである。前記排紙トレイ103の位置は、シート材2の排出位置である。なお、前記排紙ローラ150は、一方の面に画像が形成されたシート材2を、両面プリントのために反転させて搬送するターンバックローラとしても機能する。また、前記複写機1は、本体側面の一部を開閉可能に支持された開閉式シートトレイを備え、その開閉式シートトレイからシート材2を供給することも可能である。ここでは、両面プリント及び開閉式シートトレイについての説明は省略する。
【0039】
前記画像読み取り部200は、原稿から画像を読み取って画像データを生成し、その画像データをメモリに記録する装置である。前記画像読み取り部200は、各々ユニット化された原稿カバー部210及びスキャナ部220を備えている。
【0040】
前記画像読み取り部200における下側のユニットである前記スキャナ部220は、原稿台221、第1読み取り窓222、シェーディング補正板223、第1キャリッジ240、第2キャリッジ250、集光レンズ260、受光素子270及びキャリッジ走査機構280を備えている。一方、前記画像読み取り部200における上側のユニットである前記原稿カバー210は、原稿トレイ211、原稿排出トレイ212、原稿押さえ部213及びADF230が設けられている。前記ADF230は、その内側に原稿搬送路231が形成され、原稿供給機構232、原稿搬送ローラ233、第2読み取り窓234及び原稿排出ローラ235を備えている。
【0041】
図4は、前記原稿カバー部210が開閉される様子を表す前記複写機1の側面図である。図4(a)は、前記原稿カバー部210が閉じられた状態、図4(b)は、前記原稿カバー部210が開かれた状態を示す。図4に示されるように、前記複写機1の本体の奥側に設けられたヒンジ219は、前記原稿カバー部210を回動可能に支持する。これにより、前記ADF230が設けられた前記原稿カバー部210は、前記原稿台221の上側を開閉可能に支持されている。
【0042】
また、前記原稿カバー部210には、前記原稿カバー部210の開状態及び閉状態を検知する開閉センサ290が設けられている。前記開閉センサ290は、例えば、押しボタンスイッチ又はリミットスイッチなどである。なお、前記複写機1の本体には、コピーのスタートボタンなどを含む操作部311と、各種の情報を表示する表示部312とが設けられている。
【0043】
図1に示される前記ADF230において、前記原稿供給機構232は、前記原稿トレイ211に載置された原稿を1枚ずつ前記原稿搬送路231に供給する。前記原稿搬送ローラ233は、前記原稿供給機構232から引き継いで、前記原稿搬送路231に沿って原稿を搬送する。さらに、前記原稿排出ローラ235は、前記原稿搬送ローラ233により送られた原稿を前記原稿排出トレイ212へ排出する。
【0044】
前記原稿搬送路231の一部には、主走査方向に伸びて形成された開口である前記第2読み取り窓234が設けられている。また、前記第2読み取り窓234に対向する前記スキャナ部220の部分には、ガラス板などの透光性の部材である前記第1読み取り窓222が設けられている。さらに、前記原稿搬送路231における、前記第2読み取り窓234に対し原稿の通過経路を挟んで対向する部分に、原稿搬送ガイドを兼ねる参照板236が設けられている。前記参照板236の下面は、前記光源241の光を反射するよう白色、薄い黄色又は薄い灰色などの均一な色を有している。なお、前記参照板236の下面は、前記第1の参照面の一例である。
【0045】
図2は、前記第1キャリッジ240の走査範囲を下方から見た図である。図2において、上下方向が主走査方向、左右方向が副走査方向である。また、図2において、前記第1キャリッジ240の走査範囲の一部は記載が省略されている。図2に示されるように、前記第1キャリッジ240は、副走査方向において、前記原稿台221の全範囲及びその隣りにおける前記ADF230の下方に位置する範囲に渡って移動可能に支持されている。前記ADF230の下方に相当する範囲内における、前記第2読み取り窓234に対向する位置には、透光性の部材である前記第1読み取り窓222が設けられている。
【0046】
また、前記原稿台221と前記第1読み取り窓222との間には、前記シェーディング補正板223が固定されている。このシェーディング補正板223の表面も、白色、薄い黄色又は薄い灰色などの均一な色を有している。なお、前記シェーディング補正板223の表面は、前記第2の参照面の一例である。
【0047】
以下、再び図1を参照する。前記原稿台221は、ガラス板などの透光性の部材であり、その上に原稿が載置される。前記第1キャリッジ240は、主走査方向に伸びて形成された光源241及び第1ミラー242が一体化されたユニットである。前記光源241は、前記原稿台221に載置された原稿に対し下方から投光する。また、前記第1ミラー242は、前記原稿からの反射光を前記受光素子270へ導く導光用の光学系の一部である。なお、図1において、奥行き方向が主走査方向である。
【0048】
前記第1キャリッジ240は、前記キャリッジ走査機構280により、前記原稿台221の下面に沿って副走査方向に往復移動可能に支持されている。前記副走査方向は、前記主走査方向に直交する方向であり、図1においては左右の方向である。前記第1キャリッジ240における前記光源241の光は、前記原稿台221を透過して原稿に反射し、原稿からの反射光は、前記第1キャリッジ240における前記第1ミラー242によって変向され、さらに、2つの第2ミラー251,252を経て前記受光素子270へ導かれる。前記受光素子270に至る光路には、前記集光レンズ260が配置されている。原稿からの反射光には、原稿の画像の情報が含まれている。
【0049】
前記第2キャリッジ250は、前記第1ミラー242で反射された光を変向して前記受光素子270へ導く2つの第2ミラー251,252が一体化されたユニットである。前記第2キャリッジ250は、前記キャリッジ走査機構280によって副走査方向に往復移動可能に支持されている。前記第2キャリッジ250は、前記第1ミラー242から前記受光素子270までの光路長を一定に保持するように、副走査方向において前記第1キャリッジ240に連動する。より具体的には、前記第2キャリッジ250は、副走査方向において、前記第1キャリッジ240の移動に対し、同じ方向へ半分の速度で移動する。
【0050】
図3は、前記第1キャリッジ240及び前記第2キャリッジ250の位置の変化を表す前記スキャナ部220の断面図である。図3(a)に示されるように、前記第1キャリッジ240は、前記第1読み取り窓222に対向する第1の位置に停止して待機する。この第1の位置は、前記原稿カバー部210が閉じられた状態において、前記ADF230における前記原稿搬送路231の一部に形成された前記参照板236の下面に対向する位置である。この第1の位置が、前記第1キャリッジ240のホームポジションである。
【0051】
前記第1の位置は、前記原稿スキャン処理行われるときの前記第1キャリッジ240の初期位置である。読み取り画像の品質を高めるためには、前記第1キャリッジ240は、高い精度で前記初期位置に位置決めされる必要がある。そのため、本複写機1は、前記第1キャリッジ240が前記第1の位置に存在することを検知する不図示のセンサを備え、前記キャリッジ走査機構280は、そのセンサの検出結果に基づいて、前記第1キャリッジ240を前記第1の位置に位置決めする。
【0052】
前記第1キャリッジ240が前記第1の位置に停止している状態で前記光源241が点灯したとき、前記受光素子270で検出される光の強度は、前記原稿カバー部210が閉じられている場合と前記原稿カバー部210が開かれている場合とで大きく異なる。前記原稿カバー部210が閉じられている場合、前記光源241の光は、前記第1読み取り窓222及び前記第2読み取り窓234を通過して前記参照板236の下面で反射する。その反射光は、前記第1ミラー242などを経て前記受光素子270に入射する。そのため、前記受光素子270において、前記光源241の光の明るさに相当する光強度が検出される。
【0053】
一方、前記原稿カバー部210が開かれている場合、前記光源241の光は、前記第1読み取り窓222を通過して装置外部へ放射され、前記受光素子270へ到達しない。そのため、前記受光素子270による光の検出強度は、ゼロに近いごく低いレベルとなる。以上のことより、前記第1キャリッジ240が前記第1の位置に停止している状態においては、前記原稿カバー部210が閉じられている場合にのみ、ランプチェック処理の結果は正しい結果を示す。
【0054】
また、図3(b)に示されるように、前記第1キャリッジ240は、前記キャリッジ走査機構280により、前記第1の位置と前記原稿台221に対向する位置との間の第2の位置に位置決めされる場合もある。この第2の位置は、前記第1の位置よりも前記原稿台221寄りの部位に固定された前記シェーディング補正板223に対向する位置である。前述したように、前記シェーディング補正板223の表面は、前記第2の参照面の一例である。
【0055】
前記第1キャリッジ240が前記第2の位置に停止している状態で前記光源241が点灯したとき、前記受光素子270で検出される光の強度は、前記原稿カバー部210が閉じられている場合と前記原稿カバー部210が開かれている場合とでほぼ同じである。従って、前記第1キャリッジ240が前記第2の位置に停止している状態においては、前記原稿カバー部210の状態に関わらず、ランプチェック処理の結果は正しい結果を示す。
【0056】
また、図3(c)に示されるように、前記第1キャリッジ240は、前記キャリッジ走査機構280により、前記原稿台221に載置された原稿3を走査するために、前記原稿台221の下方の範囲において移動される。
【0057】
以上のことから、前記ランプチェック処理が、常に、前記第1キャリッジ240が前記第2の位置に存在する状態で行われることが考えられる。その場合、前記原稿スキャン処理が行われるごとに、前記第1キャリッジ240の移動が必要となり、速やかな前記原稿スキャン処理が損なわれ、FCOTの短縮にも反する。
【0058】
また、前記開閉センサ290により、前記原稿カバー部210が開かれていることが検知されている場合、前記ランプチェック処理を行わないことも考えられる。その場合、前記光源241が不良であるにも関わらずコピー処理が実行されてしまう可能性があり、現像剤やシート材が無駄に消費されてしまうという問題が生じる。そこで、前記複写機1は、状況に応じた前記ランプチェック処理を行う。その詳細な説明は、この明細書の後段において記載されている。
【0059】
次に、図5に示されるブロック図を参照しつつ、前記複写機1における制御関連の主要部の構成について説明する。図5に示されるように、前記複写機1は、メイン制御部310、操作部311、表示部312、第1画像メモリ313、第2画像メモリ314、スキャナ制御部320、プリンタ制御部330、ファクシミリ制御部340及びネットワーク制御部350などを備えている。
【0060】
前記操作部311は、コピー開始のイベントを発生するスタートボタン3111、その他の操作ボタン及びタッチパネルなどからなり、情報入力のために利用者によって操作されるデバイスである。前記表示部312は、液晶パネル及びLEDランプなどからなり、各種情報を表示するデバイスである。
【0061】
前記第1画像メモリ313は、符号化されていない画像データが記録されるメモリであり、RAM(Random Access Memory)などの高速でアクセス可能なメモリである。前記第2画像メモリ314は、符号化によって圧縮された画像データが記録されるメモリである。前記第2画像メモリ314は、前記第1画像メモリ313に比べてアクセス可能な速度が低速であるが、前記第1画像メモリ313よりも大容量のメモリである。前記第2画像メモリ314は、例えば、フラッシュメモリなどである。
【0062】
前記スキャナ制御部320は、前記第1キャリッジ240の動き及び前記第1キャリッジ240における前記光源241の点灯及び消灯を制御するプロセッサである。さらに、前記スキャナ制御部320は、前記受光素子270により得られる画像データを前記第1画像メモリ313及び前記第2画像メモリ314の一方又は両方に記録する。即ち、前記スキャナ制御部320は、原稿スキャン処理を制御するプロセッサである。前記原稿スキャン処理は、前記第1キャリッジ240によって原稿3を走査して画像を読み取りつつ、その画像のデータを前記第1画像メモリ313及び前記第2画像メモリ314の一方又は両方に記録する処理である。
【0063】
また、前記プリンタ制御部330は、前記給紙ローラ110、前記レジストローラ120、前記画像転写ユニット130、前記定着装置140及び前記排紙ローラ150などを制御するプロセッサである。即ち、前記プリンタ制御部330は、プリント処理を制御するプロセッサである。前記プリント処理は、前記画像読み取り部200によって前記第1画像メモリ313又は前記第2画像メモリ314に記録された画像データ、又は外部装置から得られた画像データに基づいて、シート材2に画像を形成する処理である。
【0064】
前記ファクシミリ制御部340は、電話回線を通じて他のファクシミリ装置とファクシミリデータの送受信を行うプロセッサである。例えば、前記ファクシミリ制御部340は、不図示のNCU(Network Control Unit)及びモデムを制御することにより、相手局へのダイヤルアップ処理及び相手局との間で通信方法を決定するネゴシエーション処理などを行う。
【0065】
前記ネットワーク制御部350は、例えば、標準規格であるIEEE802.3に準拠したLAN(Local Area Network)及びインターネットなどのネットワークを通じて、パーソナルコンピュータなどの外部装置との間でデータの送受信を行うプロセッサである。
【0066】
前記メイン制御部310は、前記操作部311に対する操作入力の検知、前記表示部312に対する表示情報の出力、及び他の制御部320,330,340,350の制御を行うプロセッサである。前記メイン制御部310が、前記スキャナ制御部320及び前記プリンタ制御部330を制御することにより、コピー処理が実行される。また、前記複写機1は、プリンタとして機能する場合、前記画像読み取り部200による前記原稿スキャン処理の代わりに、前記ネットワーク制御部350が、外部の計算機からの画像データの受信処理を実行する。同様に、前記複写機1は、ファクシミリ装置として受信処理を行う場合、前記画像読み取り部200による前記原稿スキャン処理の代わりに、前記ファクシミリ制御部340が、電話回線を通じて他のファクシミリ装置からの着信処理及び画像データの受信処理を実行する。
【0067】
前記複写機1は、前記スタートボタン3111の操作が検知された場合に、状況に応じて、通常コピー処理を行う場合と、高速コピー処理を行う場合とがある。前記通常コピー処理は、1枚又は複数枚の原稿3についての前記原稿スキャン処理によって得られる画像データを符号化により圧縮して前記第2画像メモリ314に蓄積し、前記スキャン処理の完了後に、前記第2画像メモリ314に蓄積された画像データを復号化して得られるデータに基づいて前記プリント処理を実行する処理である。
【0068】
一方、前記高速コピー処理は、FCOTをより短縮するためのコピー処理である。前記高速コピー処理においては、前記スキャナ部220による前記原稿スキャン処理と、前記画像形成部100による前記プリント処理とが並行して行われる。前記高速コピー処理により、原稿3の1ページ分についての前記原稿スキャン処理の完了を待つことなくシート材2の搬送が開始されるため、FCOTが短くなる。また、前記高速コピー処理においては、前記原稿スキャン処理によって得られる画像データが、符号化されずに前記第1画像メモリ313に記録される。そして、前記プリント処理において、その符号化されていない画像データが用いられる。これにより、符号化及び復号化の時間が省略され、コピー処理を高速化できる。
【0069】
次に、図6及び図7に示されるフローチャートを参照しつつ、前記複写機1が実行するコピー処理の手順の一例について説明する。前記コピー処理は、前記メイン制御部310が、前記スキャナ制御部320及び前記プリンタ制御部330を制御することによって実現される。また、前記メイン制御部310は、所定の制御プログラムを実行することにより、前記コピー処理を実現する。以下の説明において、S11,S12,…,S57は、処理の手順の識別符号を表す。また、前記コピー処理は、前記メイン制御部310が、前記スタートボタン3111の押下操作を検知したときに開始される。
【0070】
まず、図6を参照しつつ、前記スタートボタン3111の操作が検知されてから前記高速コピー処理が実行される場合の処理の第1の例の手順について説明する。
【0071】
前記スタートボタン3111の操作が検知されると、まず、前記メイン制御部310は、装置の状態が予め定められた高速コピー要件を満たすか否かを判別する(S11)。前記高速コピー要件は、以下の3つの要件を含む。第1の高速コピー要件は、前記スタートボタン3111が操作される前に利用者によって設定されたコピー条件が、予め定められた要件を満たすことである。この第1の高速コピー要件は、コピー条件が、原稿3の1ページ分の画像読み取りの完了を待つことなく、前記プリント処理を開始できる条件に設定されていることである。例えば、コピー条件の設定に、反転コピー、回転コピー及び集約コピーなどの応用コピーの設定が含まれていないことが、前記第1の高速コピー要件の一例である。
【0072】
また、第2の高速コピー要件は、前記画像形成部100が、即座に前記プリント処理を実行可能な状態であることである。前記第2の高速コピー要件の具体例は、前記定着温度センサ141の検出温度が、予め設定された下限温度以上であることである。前記定着装置140は、その温度を画像の定着に必要な温度に上げるまでに比較的長い時間を要する。そのため、前記定着温度センサ141の検出温度が十分に高いことが、前記高速コピー処理の要件に含まれている。
【0073】
また、第3の高速コピー要件は、前記画像読み取り部200が、即座に前記スキャン処理を実行可能な状態であることである。前記第3の高速コピー要件の具体例は、前記第1キャリッジ240が前記第1の位置に停止していること、及び、前記第1画像メモリ313の空き容量が、予め設定された下限サイズ以上であることである。
【0074】
前記高速コピー要件が満たされている場合、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320に対し、高速コピー用の画像スキャン指令を出力する(S12)。
【0075】
一方、前記スキャナ制御部320は、前記メイン制御部310から画像スキャン指令が入力されることを監視し(S21)、前記画像スキャン指令が入力されると、以下に示す第1ランプチェック処理を実行する(S22)。さらに、前記スキャナ制御部320は、前記第1ランプチェック処理の結果を前記メイン制御部310に出力する(S22)。なお、ステップS21で入力が監視される画像スキャン指令は、前記高速コピー用の画像スキャン指令及び後述する通常コピー用の画像スキャン指令である。
【0076】
前記第1ランプチェック処理は、前記第1の位置に停止する前記第1キャリッジ240の前記光源241を点灯させ、それによって前記受光素子270により検出される前記参照板236の下面からの反射光の強度に基づいて、前記光源241の良否を検知する処理である。前記参照板236の下面からの反射光の強度が、予め設定された適正範囲内である場合、前記光源241が良好である(正常)と判別され、それ以外の場合は前記光源241が良好でない(非正常)と判別される。なお、前記第1の位置は、図3(a)に示される前記第1キャリッジ240の停止位置である。
【0077】
さらに、前記スキャナ制御部320は、前記第1ランプチェック処理の結果が良好である場合、ステップS21で入力された指令が、前記高速コピー用の画像スキャン指令と、後述する通常コピー用のスキャン指令とのいずれであるかを判別する(S24)。そして、前記メイン制御部310から受けた指令が前記高速コピー用の画像スキャン指令である場合、前記スキャナ制御部320は、前記第1画像メモリ313を用いて前記高速コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理を実行する(S25)。
【0078】
前記高速コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理において、前記スキャナ制御部320は、まず、前記第1画像メモリ313において所定サイズの予約領域を確保する。続いて、前記スキャナ制御部320は、前記第1画像メモリ313を用いた前記原稿スキャン処理を実行する。具体的には、前記スキャナ制御部320は、前記キャリッジ走査機構280を制御することにより、前記第1キャリッジ240を前記原稿台221に沿って副走査方向に移動させる。そして、前記スキャナ制御部320は、前記原稿台221に載置された原稿3を前記第1キャリッジ240によって走査して画像を読み取りつつ、その画像のデータを前記第1画像メモリ313に記録する。その際、前記スキャナ制御部320は、前記受光素子270によって得られた画像データを符号化せずに前記第1画像メモリ313に記録する。
【0079】
また、前記メイン制御部310から受けた指令が後述する通常コピー用の画像スキャン指令である場合、前記スキャナ制御部320は、その指令に対応した処理を実行する(28,S29)。その詳細については、図7を参照しつつ本明細書の後段において説明する。
【0080】
一方、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記第1ランプチェック処理の結果を取得し、その結果が良好であるか否かを判別する(S13)。そして、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から良好な前記第1ランプチェック処理の結果を得たときに、前記プリンタ制御部330に対し、高速コピー用のプリント指令を出力する(S14)。
【0081】
また、前記プリンタ制御部330は、前記メイン制御部310から前記高速コピー用のプリント指令又は通常コピー用のプリント指令が入力されることを監視する(S31,S32)。そして、前記高速コピー用のプリント指令が入力されると、前記プリンタ制御部330は、前記第1画像メモリ313を用いて前記高速コピー処理に対応した前記プリント処理を実行する(S33,S34)。なお、通常コピー用のプリント指令が入力された場合の前記プリンタ制御部330の処理については、図7を参照しつつ本明細書の後段において説明する。
【0082】
前記高速コピー処理に対応した前記プリント処理において、前記プリンタ制御部330は、まず、シート材2の搬送を開始する(S33)。前記プリンタ制御部330は、前記給紙ローラ110及び前記レジストローラ120を制御することにより、前記給紙カセット101から前記画像転写ユニット130及び前記定着装置140の位置へシート材2を搬送する。さらに、前記プリンタ制御部330は、前記画像転写ユニット130及び前記定着装置140を制御することによって前記プリント処理を実行する(S34)。このプリント処理は、ステップS25における前記原稿スキャン処理が開始された後、その原稿スキャン処理が完了する前に開始される。前記メイン制御部310は、そのようなタイミングでステップS33のプリント処理が開始されるように、前記画像スキャン指令の出力(S12)から前記プリント指令の出力(S14)の待ち時間を調整する。
【0083】
また、ステップS34において、前記プリンタ制御部330は、前記スキャナ部220によって前記第1画像メモリ313に記録された画像データに基づいて、前記プリント処理を行う。前記第1画像メモリ313に記録される画像データは、符号化及び復号化は行われない。このプリント処理により、前記画像転写ユニット130及び前記定着装置140を通過するシート材2に対してトナー画像が形成される。そして、前記プリント処理が完了すると、前記プリンタ制御部330は、前記第1画像メモリ313において確保している記憶領域を開放する。
【0084】
一方、前記第1ランプチェック処理(S32)の結果が良好ではない場合、前記スキャナ制御部320は、以下に示す第2ランプチェック処理を実行し、そのチェック結果を前記メイン制御部310に出力する(S26)。前記第2ランプチェック処理は、前記第1キャリッジ240を前記第2の位置に移動させるとともに、前記第1キャリッジ240の前記光源241を点灯させ、前記受光素子270により検出される光の強度に基づいて前記光源241の良否を判別する処理である。この第2ランプチェック処理において検出される光の強度は、前記第1の位置よりも前記原稿台221寄りの部位に配置された前記シェーディング補正板223の表面からの反射光の強度である。なお、前記第2の位置は、図3(b)に示される前記第1キャリッジ240の位置である。前記第2ランプチェック処理は、前記第1ランプチェック処理の結果が良好である場合には実行されない。
【0085】
前記第2ランプチェック処理が実行された後、前記スキャナ制御部320は、前記第2ランプチェック処理の結果が良好であるか否かを判別する(S27)。そして、前記スキャナ制御部320は、前記第2ランプチェック処理(S26)の結果が良好であることを要件として、前記通常コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理を実行する(S28)。この原稿スキャン処理では、前記第2画像メモリ314が用いられる。前記スキャナ制御部320は、前記第2ランプチェック処理の結果が良好である場合、前記第1キャリッジ240を前記第2の位置から前記原稿台に対向する位置(第3の位置)へ直行させることによって前記原稿スキャン処理の制御(S28)へ移行する。なお、前記スキャナ制御部320が、前記第1キャリッジ240を、前記第2の位置でごく短時間一時停止させて前記第2ランプチェック処理を行うことが考えられる。また、前記スキャナ制御部320が、前記第1キャリッジ240を前記第2の位置で停止させず、前記第1キャリッジ240が前記第2の位置を通過中に前記第2ランプチェック処理を行うことも考えられる。
【0086】
前記通常コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理(S28)において、前記スキャナ制御部320は、まず、前記第2画像メモリ314において所定サイズの予約領域を確保する。続いて、前記スキャナ制御部320は、前記第2画像メモリ314を用いた前記原稿スキャン処理を実行する。具体的には、前記スキャナ制御部320は、前記キャリッジ走査機構280を制御することにより、前記第1キャリッジ240を前記原稿台221に沿って副走査方向に移動させる。そして、前記スキャナ制御部320は、前記原稿台221に載置された原稿3を前記第1キャリッジ240によって走査して画像を読み取りつつ、その画像のデータを前記第2画像メモリ314に記録する。その際、前記スキャナ制御部320は、前記受光素子270によって得られた画像データを符号化することによって圧縮し、符号化後のデータを前記第2画像メモリ314に記録する。
【0087】
そして、ステップS28の前記原稿スキャン処理が完了すると、前記スキャナ制御部320は、前記メイン制御部310に対して完了通知を出力する(S29)。この完了通知は、前記通常コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理が完了した旨の通知である。
【0088】
また、前記スキャナ制御部320は、前記第2ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記原稿スキャン処理を行わずに処理を終了する(S27)。
【0089】
一方、ステップS13で得られた前記第1ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記第2ランプチェック処理の結果を取得し、その結果が良好であるか否かを判別する(S15)。そして、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から良好な前記第2ランプチェック処理の結果を得たときに、前記スキャナ制御部320から前記完了通知が入力されることを待つ(S16)。そして、前記完了通知が入力されると、前記メイン制御部310は、前記プリンタ制御部330に対し、通常コピー用のプリント指令を出力する(S17)。
【0090】
一方、前記プリンタ制御部330は、前記通常コピー用のプリント指令が入力されると、前記第2画像メモリ314を用いて前記通常コピー処理に対応した前記プリント処理を実行する(S35,S36)。
【0091】
前記通常コピー処理に対応した前記プリント処理において、前記プリンタ制御部330は、まず、ステップS33と同様に、シート材2の搬送を開始する(S35)。さらに、前記プリンタ制御部330は、前記画像転写ユニット130及び前記定着装置140を制御することによって前記プリント処理を実行する(S36)。このプリント処理は、ステップS28における前記原稿スキャン処理が完了した後に開始される。
【0092】
また、ステップS36において、前記プリンタ制御部330は、前記スキャナ部220によって前記第2画像メモリ314に記録された画像データに基づいて、前記プリント処理を行う。前記第2画像メモリ314に記録される画像データは、前記スキャナ制御部320によって符号化されている。そのため、前記プリンタ制御部330は、前記第2画像メモリ314に記録された画像データを復号化して利用する。このプリント処理により、前記画像転写ユニット130及び前記定着装置140を通過するシート材2に対してトナー画像が形成される。そして、前記プリント処理が完了すると、前記プリンタ制御部330は、前記第2画像メモリ314において確保している記憶領域を開放する。
【0093】
また、ステップS15で得られた前記第2ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記メイン制御部310は、所定のエラー処理を実行し(S18)、処理を終了する。このエラー処理は、コピー処理を中断する制御の一例である。このエラー処理において、前記光源241に異常がある旨の通知が、前記表示部312及び不図示の警報音出力部を通じて出力される。
【0094】
また、前記メイン制御部310は、装置の状態が前記高速コピー要件を満たさない場合、図7に示される通常コピー処理の制御を実行する(S19)。その詳細については、本明細書の後段において、図7を参照しつつ説明する。
【0095】
以上に示したように、前記メイン制御部310は、前記スタートボタン3111の操作が検知されたときに、前記高速コピー要件が充足している条件の下で、前記原稿スキャン処理と前記プリント処理とが並行して行われる前記高速コピー処理の指令を前記スキャナ制御部320に対して出力する(S12)。これにより、前記高速コピー処理の制御が開始する。
【0096】
そして、前記メイン制御部310は、前記第1ランプチェック処理(S22)の結果が良好であるときには、前記高速コピー処理を継続させる(S14)。しかしながら、前記メイン制御部310は、前記高速コピー処理の制御を開始した場合でも、前記第1ランプチェック処理(S22)の結果が不良である場合、前記第2ランプチェック処理の結果が良好であることを要件として、制御の内容を前記通常コピー処理の制御へ切り替える(S17)。
【0097】
即ち、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記光源241が良好である旨の前記第1ランプチェック処理の結果を得たときに(S13)、前記高速コピー処理の指令を前記プリンタ制御部330に対して出力する(S14)。また、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記光源241が良好である旨の前記第2ランプチェック処理の結果を得たときに(S15)、前記通常コピー処理の指令を前記プリンタ制御部330に対して出力する(S17)。前記通常コピー処理は、前記原稿スキャン処理の終了後に前記プリント処理が行われるコピー処理である。さらに、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記光源241が良好でない旨の前記第2ランプチェック処理の結果を得たときに(S15)、コピー処理を中断するための前記エラー処理を実行する(S18)。
【0098】
また、前記スキャナ制御部320は、前記第1ランプチェック処理(S22)の結果が良好であるとき、又は前記第2ランプチェック処理(S26)の結果が良好であるときにのみ、前記原稿スキャン処理の制御へ移行する(S25,S28)。また、前記スキャナ制御部320は、前記第1ランプチェック処理(S22)の結果及び前記第2ランプチェック処理(S26)の結果がいずれも良好でないときに、前記原稿スキャン処理の制御へ移行しない(S27)。
【0099】
次に、図7を参照しつつ、前記スタートボタン3111の操作が検知されてから前記高速コピー処理が開始されずに前記通常コピー処理が実行される場合の処理の手順について説明する。なお、図7に示される制御手順は、図6に示される制御手順に対し、前記メイン制御部310の制御手順のみが異なる。即ち、図7において、前記スキャナ制御部320及び前記プリンタ制御部330の制御手順は、図6に示される制御手順と同じである。また、前記メイン制御部310のステップS11の処理は、図6と図7とで同じである。
【0100】
前記スタートボタン3111の操作が検知されると、まず、前記メイン制御部310は、装置の状態が前記高速コピー要件を満たすか否かを判別する(S11)。前記高速コピー要件が満たされていない場合、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320に対し、通常コピー用の画像スキャン指令を出力する(S41)。
【0101】
一方、前記スキャナ制御部320は、図6において説明したように、前記画像スキャン指令が入力されると、前記第1ランプチェック処理の実行と、前記メイン制御部310への前記第1ランプチェック処理の結果の出力とを実行する(S22)。
【0102】
さらに、前記スキャナ制御部320は、前記第1ランプチェック処理の結果が良好である場合、ステップS21で入力された指令が、前記高速コピー用の画像スキャン指令と、前記通常コピー用のスキャン指令とのいずれであるかを判別する(S24)。そして、前記メイン制御部310から受けた指令が前記通常コピー用の画像スキャン指令である場合、前記スキャナ制御部320は、前記第2画像メモリ314を用いて前記通常コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理を実行する(S28)。このステップS28の処理の説明は、既に示した。
【0103】
一方、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記第1ランプチェック処理の結果を取得し、その結果が良好であるか否かを判別する(S42)。そして、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から良好な前記第1ランプチェック処理の結果を得たときに、前記スキャナ制御部320から前記完了通知が入力されるまで待つ(S44)。さらに、前記メイン制御部310は、前記完了通知が入力された後、前記プリンタ制御部330に対し、前記通常コピー用のプリント指令を出力する(S45)。これらステップS44,S45の処理は、前述したステップS16,S17の処理と同じである。
【0104】
また、前記プリンタ制御部330は、前述したように、前記メイン制御部310から前記高速コピー用のプリント指令又は前記通常コピー用のプリント指令が入力されることを監視する(S31,S32)。そして、前記通常コピー用のプリント指令が入力されると、前記プリンタ制御部330は、前記第2画像メモリ314を用いて前記通常コピー処理に対応した前記プリント処理を実行する(S35,S36)。なお、前記通常コピー処理に対応した前記プリント処理の内容は、前述した通りである。
【0105】
一方、前記第1ランプチェック処理(S32)の結果が良好ではない場合、前記スキャナ制御部320は、前記第2ランプチェック処理を実行し、そのチェック結果を前記メイン制御部310に出力する(S26)。
【0106】
また、前記第2ランプチェック処理が実行された後、前記スキャナ制御部320は、前述したように、前記第2ランプチェック処理の結果が良好であることを要件として、前記通常コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理を実行する(S28)。この原稿スキャン処理では、前記第2画像メモリ314が用いられる。さらに、前記スキャナ制御部320は、前記原稿スキャン処理の終了後、前記メイン制御部310に対して前記完了通知を出力する(S29)。
【0107】
また、前記スキャナ制御部320は、前記第2ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記原稿スキャン処理を行わずに処理を終了する(S27)。
【0108】
一方、ステップS42で得られた前記第1ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記第2ランプチェック処理の結果を取得し、その結果が良好であるか否かを判別する(S43)。そして、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から良好な前記第2ランプチェック処理の結果を得たときに、前記完了通知の入力待ち(S44)、及び前記完了通知が入力された後の前記通常コピー用のプリント指令の出力(S45)とを実行する。
【0109】
一方、前記プリンタ制御部330は、前記通常コピー用のプリント指令が入力されると、前記第2画像メモリ314を用いて前記通常コピー処理に対応した前記プリント処理を実行する(S35,S36)。このステップS35,S36の処理の内容は、前述した通りである。
【0110】
また、ステップS43で得られた前記第2ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記メイン制御部310は、前記エラー処理を実行し(S18)、処理を終了する。このエラー処理の内容は、前述した通りである。
【0111】
前記複写機1においては、前記高速コピー処理に対応した前記原稿スキャン処理(S25)が行われる前に、原稿スキャン用の前記光源241の明るさのチェックが、少なくとも1回は実行される(S22)。そして、そのチェック結果に応じて、前記原稿スキャン処理及び前記プリント処理が制御される。そのため、前記光源が不良である状態のままコピー処理が行われることが防止される。
【0112】
また、前記複写機1においては、前記第1キャリッジ240は、前記原稿自動搬送装置230における原稿の搬送経路に設けられた前記参照板236に対向する位置で待機する。そして、前記原稿カバー210が閉じられているときは、前記第1キャリッジ240の移動を伴わない迅速な前記第1ランプチェック処理によって前記光源241の良否が確実に検知される(S22)。従って、前記原稿カバー210が閉じられており、前記光源241が正常であるときには、前記スタートボタン3111の操作が検知された時点から、迅速な前記第1ランプチェック処理を経て前記原稿スキャン処理(S24)及び前記プリント処理(S34)へ速やかに移行し、FCOTの短い前記高速コピー処理が可能である。
【0113】
また、前記複写機1においては、前記原稿カバー210が閉じられていないとき、前記第1キャリッジ240の移動を伴う前記第2ランプチェック処理によって前記光源241の良否が確実に検知される(S26)。前記第2ランプチェック処理は、前記原稿カバー210の状態に関わらず、前記光源241の良否を確実に検知できる。そのため、例えば、前記原稿カバー部210が完全に閉じられていない状態で前記スタートボタン3111が操作された場合に、前記第1ランプチェック処理のみによって前記光源241の良否について誤った判定が行われることが防止される。
【0114】
そして、前記複写機1においては、前記第2ランプチェック処理の結果が良好であれば、前記通常コピー処理が実行される(S28,S36)。従って、前記原稿カバー210が完全に閉じられていないときに、前記光源241が正常であるにも関わらずコピー処理が実行されないという不都合が解消される。
【0115】
また、前記開閉センサ290により、前記原稿カバー部210が閉じられていることが検知されている場合、前記第1ランプチェック処理のみによって前記光源241の良否判定が行われることも考えられる。しかしながら、前記開閉センサ290の検知結果は、利用者又は原稿などが誤って前記開閉センサ290に接触している場合、及び前記原稿カバー部210がわずかに開かれている場合など、誤検知を行う場合がある。従って、前記原稿カバー部210が閉じられていることが検知されている場合においても、前記第1ランプチェック処理の結果が不良であるときには、前記第2ランプチェック処理を行うことが望ましい。
【0116】
また、前記プリンタ制御部330に対する前記高速コピー処理の指令(S14)は、前記第1ランプチェック処理の結果が良好であることが確認された上で出力される。そのため、2回のランプチェック処理が行われている間に、前記原稿スキャン処理による画像データの記録よりも前記プリント処理が先行する不具合を防止できる。
【0117】
また、前記第2の位置は、前記第1キャリッジ240が、起点となる前記第1の位置から前記原稿台221に対向する位置へ移動する経路の途中の位置である。従って、前記第2ランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記第1キャリッジ240が、前記第2の位置から前記原稿台に対向する位置(第3の位置)へ直行することにより、前記原稿スキャン処理が速やかに開始され、FCOTが短縮される。
【0118】
また、符号化されない画像データを用いて前記高速コピー処理が行われることにより、前記高速コピー処理がより高速に実行される。一方、画像データの符号化による圧縮及び復号化を伴って前記通常コピー処理が行われることにより、前記第2画像メモリ314の容量を抑えることができる。
【0119】
また、前記複写機1においては、符号化されない画像データが記録される前記第1画像メモリ313と、符号化された画像データが記録される前記第2画像メモリ314とが個別に設けられている。前記第1画像メモリ313としてアクセス速度の速いメモリが採用されることによって前記高速コピー処理がより高速に実行される。また、前記第2画像メモリ314として比較的安価な大容量のメモリが採用されることにより、多様な応用コピー機能を比較的低コストで実現できる。
【0120】
次に、図8を参照しつつ、前記スタートボタン3111の操作が検知されてから前記高速コピー処理が実行される場合の処理の第2の例の手順について説明する。図8に示されるコピー処理の手順において、前記スキャナ制御部320及び前記プリンタ制御部330の処理の手順は、図6に示される手順と同じである。即ち、前記第2の例において、前記メイン制御部310の制御手順のみが、図6に示される前記第1の例の手順と異なっている。以下、前記第2の例の説明にあたり、前記第1の例(図6)と異なる部分についてのみ説明する。
【0121】
前記スタートボタン3111の操作が検知されると、まず、前記メイン制御部310は、ステップS11と同様に、前記高速コピー要件を満たすか否かを判別する(S51)。前記高速コピー要件が満たされている場合、前記メイン制御部310は、ステップS12と同様に、前記スキャナ制御部320に対し、前記高速コピー用の画像スキャン指令を出力する(S52)。
【0122】
さらに、前記メイン制御部310は、ステップS13と同様に、前記スキャナ制御部320から前記第1ランプチェック処理の結果を取得し、その結果が良好であるか否かを判別する(S53)。そして、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から良好な前記第1ランプチェック処理の結果を得たときに、ステップ14と同様に、前記プリンタ制御部330に対し、前記高速コピー用のプリント指令を出力する(S54)。
【0123】
一方、ステップS53で得られた前記第1ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記第2ランプチェック処理の結果を取得し、その結果が良好であるか否かを判別する(S55)。そして、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から良好な前記第2ランプチェック処理の結果を得たときに、前記プリンタ制御部330に対し、前記高速コピー用のプリント指令を出力する(S54)。即ち、前記第2の例において、前記メイン制御部310は、前記第1ランプチェック処理の結果及び前記第2ランプチェック処理の結果のいずれか一方が良好であれば、前記高速コピー用のプリント指令を出力する(S54)。
【0124】
また、ステップS55で得られた前記第2ランプチェック処理の結果が良好ではない場合、前記メイン制御部310は、ステップS18と同様に前記エラー処理を実行し(S56)、処理を終了する。
【0125】
また、前記メイン制御部310は、装置の状態が前記高速コピー要件を満たさない場合、図7に示される通常コピー処理の制御を実行する(S57)。その詳細は、前述した通りである。
【0126】
前記第2の例において、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記光源421が良好である旨の前記第1ランプチェック処理の結果を得たとき(S53)、及び、前記スキャナ制御部320から前記光源421が良好でない旨の前記第2ランプチェック処理の結果を得たとき(S55)、前記第1の例における場合と同じ制御を行う(S54,S56)。
【0127】
一方、前記第2の例において、前記メイン制御部310は、前記スキャナ制御部320から前記光源241が良好である旨の前記第2ランプチェック処理の結果を得たときに、前記高速コピー処理の指令を前記プリンタ制御部330に対して出力する(S54,S55)。この点、前記第2の例は、前記第1の例と異なっている。
【0128】
前記第2の例においても、前記第1の例の場合と同様の効果が得られる。さらに、前記第2の例では、前記第1ランプチェック処理の結果が良好でない場合、前記第2ランプチェック処理の結果が良好であることが確認された上で前記高速コピーが行われる。これにより、前記第2ランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記第2の例は、前記通常コピー処理が行われる前記第1の例に比べ、FCOTが短縮される。
【0129】
以上に示した実施形態において、前記メイン制御部310は、前記第1ランプチェック処理の結果が良好でない場合に、前記第2ランプチェック処理の結果が良好であることが確認された上で、前記プリンタ制御部330に対して前記プリント処理の指令を出力する。
【0130】
しかしながら、前記メイン制御部310が、前記第1ランプチェック処理の結果が出るのを待たずに、前記高速コピー用のプリント指令を前記プリンタ制御部330に出力することも考えられる。この場合、前記メイン制御部310は、良好でない旨の前記第1ランプチェック処理の結果を得たときに、前記プリンタ制御部330に対してプリント処理を一時中断させる指令を出力する。これに応じて、前記プリンタ制御部330は、前記レジストローラ120を停止させることにより、シート材2が前記画像転写ユニット130に至る前にシート材2の搬送を停止する。これにより、シート材2は、前記レジストローラ120の位置で停止する。そして、前記メイン制御部310は、前記光源241が良好である旨の前記第2ランプチェック処理の結果を得た場合に、前記プリンタ制御部330に対し、一時中断されたプリント処理を再開させる指令を出力する。前記プリント処理を再開させる指令の出力は、良好な前記第2ランプチェック処理の結果が得られた時点での前記高速コピー用のプリント指令、又は、前記完了通知が得られた時点での前記通常コピー用のプリント指令が考えられる。これに応じて、前記プリンタ制御部30は、前記レジストローラ120の位置をシート材2の搬送開始位置として、指示された前記プリント処理を再開する。
【0131】
また、前記メイン制御部310は、前記光源241が良好でない旨の前記第2ランプチェック処理の結果を得たときは、前記プリンタ制御部330に対し、プリント処理の中止指令を出力する。この場合、前記プリンタ制御部330は、シート材2に画像転写を実行することなく、そのシート材2を前記排紙トレイ103へ排出する制御を行う。この例では、前記第1ランプチェック処理及び前記第2ランプチェック処理のいずれか一方の結果が良好である場合、FCOTがさらに短縮される。但し、前記第2ランプチェック処理の結果が良好でない場合、無画像のシート材2が排出されてしまう。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、複写機に利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 複写機
2 シート材
3 原稿
100 画像形成部
101 給紙カセット
102 シート材搬送経路
103 排紙トレイ
110 給紙ローラ
120 レジストローラ
130 転写ユニット
140 定着装置
141 定着温度センサ
150 排紙ローラ
200 画像読み取り部
210 原稿カバー部
211 原稿トレイ
212 排出トレイ
213 原稿押さえ部
219 ヒンジ
220 スキャナ部
221 原稿台
222 第1読み取り窓
223 シェーディング補正板
230 自動原稿搬送装置(ADF)
231 原稿搬送路
232 原稿供給機構
233 原稿搬送ローラ
234 第2読み取り窓
235 原稿排出ローラ
236 参照板
240 第1キャリッジ
241 光源
242 第1ミラー
250 第2キャリッジ
251,252 第2ミラー
260 集光レンズ
270 受光素子
280 キャリッジ走査機構
290 開閉センサ
310 メイン制御部
311 操作部
312 表示部
313 第1画像メモリ
314 第2画像メモリ
320 スキャナ制御部
330 プリンタ制御部
340 ファクシミリ制御部
350 ネットワーク制御部
421 光源
3111 スタートボタン
S11,S12,…,S57 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台の上側を開閉可能に支持され、自動原稿搬送装置が設けられた原稿カバーと、
原稿に投光する光源と前記原稿からの反射光を受光素子へ導く導光部の一部とが設けられ、前記原稿台に沿って副走査方向に移動可能に支持され、前記原稿カバーが閉じられた状態において前記自動原稿搬送装置における前記原稿の搬送経路の一部に形成された第1の参照面に対向する第1の位置に停止して待機するキャリッジと、
前記キャリッジを制御し、前記受光素子により得られる画像データをメモリに記録する原稿スキャン処理を制御する第1制御部と、
シート材を供給位置から画像形成位置を経て排出位置へ搬送し、前記画像形成位置を通過する前記シート材に対して前記メモリに記録された前記画像データに基づいて画像を形成するプリント処理を制御する第2制御部と、
前記第1制御部及び前記第2制御部を制御する第3制御部と、を備えた複写機であって、
前記第3制御部は、所定のコピー開始操作が検知されたときにおける所定条件の下で、前記原稿スキャン処理と前記プリント処理とが並行して行われる高速コピー処理の指令を前記第1制御部に対して出力し、
前記高速コピー処理の指令を受けた前記第1制御部は、前記第1の位置に停止する前記キャリッジの前記光源を点灯させ、前記受光素子により検出される前記第1の参照面からの反射光の強度に基づいて前記光源の良否を検知する第1のランプチェック処理を実行するとともに該第1のランプチェック処理の結果を前記第3制御部に出力し、
前記第1制御部は、前記第1のランプチェック処理の結果が良好でないときに、前記キャリッジを前記第1の位置から該第1の位置よりも前記原稿台寄りの部位に固定された第2の参照面に対向する第2の位置へ移動させるとともに前記キャリッジの前記光源を点灯させ、前記受光素子により検出される前記第2の参照面からの反射光の強度に基づいて前記光源の良否を検知する第2のランプチェック処理を実行するとともに該第2のランプチェック処理の結果を前記第3制御部に出力し、
前記第2制御部は、前記第1のランプチェック処理の結果が良好であるとき、又は前記第2のランプチェック処理の結果が良好であるときに、前記原稿スキャン処理の制御へ移行し、前記第1のランプチェック処理の結果及び前記第2のランプチェック処理の結果がいずれも良好でないときに、前記原稿スキャン処理の制御へ移行せず、
前記第3制御部は、前記第1制御部から前記光源が良好である旨の前記第1のランプチェック処理の結果を得たときに、前記高速コピー処理の指令を前記第2制御部に対して出力する第1の処理を実行し、前記第1制御部から前記光源が良好である旨の前記第2のランプチェック処理の結果を得たときに、前記第1の処理及び前記原稿スキャン処理の終了後に前記プリント処理が行われる通常コピー処理の指令を前記第2制御部に対して出力する第2の処理のいずれか一方を実行し、前記第1制御部から前記光源が良好でない旨の前記第2のランプチェック処理の結果を得たときに、コピー処理を中断する第3の処理を実行する、ことを特徴とする複写機。
【請求項2】
前記第2制御部は、前記第2のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記キャリッジを前記第2の位置から前記原稿台に対向する第3の位置へ直行させることによって前記原稿スキャン処理の制御へ移行する、請求項1に記載の複写機。
【請求項3】
前記高速コピー処理の指令を受けた前記第1制御部は、前記第1のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記原稿スキャン処理において前記受光素子により得られる画像データを符号化せずに前記メモリに記録し、
前記高速コピー処理の指令を受けた前記第2制御部は、前記メモリから符号化されていない前記画像データを読み出して前記プリント処理を行い、
前記高速コピー処理の指令を受けた前記第1制御部は、前記第2のランプチェック処理の結果が良好である場合に、前記原稿スキャン処理において前記受光素子により得られる画像データを符号化して前記メモリに記録し、
前記通常コピー処理の指令を受けた前記第2制御部は、前記メモリに記録された復号化後の画像データを用いて前記プリント処理を行う、請求項1又は請求項2に記載の複写機。
【請求項4】
前記第1制御部によって符号化されない画像データが記録される前記メモリと、前記第1制御部によって符号化された画像データが記録される前記メモリとを個別に備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の複写機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142449(P2011−142449A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1259(P2010−1259)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】