説明

複合パネルの剥離検知方法及びその装置

【課題】 簡便な手段で以って接合面における剥離の有無を確実に検出でき、かつ簡単な構造で低コストの装置をそなえた複合パネルの剥離検知方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 金属材料からなる表板と該非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知手段であって、剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球の跳ね返り時間を計測して、供試複合パネルと基準パネルとの跳ね返り時間差を算出し、該跳ね返り時間差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車のナセル等に使用される複合パネルであって、金属材料からなる表板と該非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風車のナセル等には、金属板からなる表板と樹脂材等の非金属材料からなる裏板を接着して制振性を向上させた複合パネルが用いられている。この複合パネルにおいては、金属板製の表板に他部材あるいは表板同士を溶接するような場合の熱等によって、表板と裏板との接合面に剥離が発生することがある。
かかる複合パネルにおける接合面の剥離発生の有無を検知する手段として、超音波を利用した剥離検知方法がある。
【0003】
図10は、かかる超音波式剥離検知手段の概要を示す部分断面図である。
図10の(A)は複合パネルの接合面に剥離が発生していない健全状態の複合パネル、(B)は接合面に剥離が発生している複合パネルを示している。
図において、1は複合パネル01の表板で鋼鈑からなり、2はFRP材を含む樹脂材からなる裏板、3は該表板1と裏板2との接合面である。
【0004】
前記複合パネル01における接合面3の剥離発生の有無を検知する際において、図10の(A)に示される健全状態の複合パネル01においては、超音波振動子101から発振されたエコーA1は、鋼鈑からなる表板1と樹脂材からなる裏板2との音響インピーダンスが異なるため、表板1と裏板2との接合面3で反射し、その反射エコーB1が超音波振動子101に戻される。
一方、図10の(B)に示されるように接合面3に剥離が発生している場合には、超音波振動子101から発振されたエコーA2は剥離部102の空間を通過してから裏板2に到達し、反射エコーB2となって超音波振動子101に戻される。
従って、前記接合面3に剥離が発生している場合には、前記反射エコーB2の超音波振動子101への到達時間が、健全状態の複合パネル01における反射エコーB1の超音波振動子101への到達時間よりも長くなり、かかる到達時間の差が出た場合に前記接合面3に剥離が発生しているものと判定する。
【0005】
また、非破壊検査によって、複合材料に発生する衝撃層間剥離の検出手段として、特許文献1(特開2004−301580号公報)の技術が提供されている。
かかる技術においては、ゼロ次Sモード(S0モード)の板波超音波を用いて複合材料に発生する衝撃層間剥離を非破壊で検出可能とし、板波受信探触子を用いて、衝撃層間剥離を通過した低振幅の波形を計測してS0モードの到達時間を計測し、受信波形の最大振幅を測定することにより、衝撃層間剥離の位置と大きさを検出している。
【0006】
【特許文献1】特開2004−301580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10に示される超音波振動子101を用いる手段にあっては、図10の(A)に示される健全状態の複合パネル01における反射エコーB1と、図10の(B)に示される接合面3に剥離が発生している場合の反射エコーB2とが、時間的に接近しているため、かかる2つの反射エコーB1とB2との到達時間差で剥離の発生の有無を判定するのは困難を伴い、従って剥離発生の検知精度が低くなる。また、超音波振動子101及びエコーの処理装置の設置等により装置コストが高くなる。
また、特許文献1(特開2004−301580号公報)の手段においても、板波超音波探触子及び超音波の処理装置等の装置コストが高くなり、2つの走査を組み合わせる等のため剥離の検知方法も複雑で、検知作業工数も多くなる。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、簡便な手段で以って接合面における剥離の有無を確実に検出でき、かつ簡単な構造で低コストの装置をそなえた複合パネルの剥離検知方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法であって、次の5つの方法を特徴とする。ここで、前記裏板に使用される非金属材料としては、FRP材を含む樹脂材板、ラバー板やゴム系板等の、好ましくは前記表板の材料である金属板よりも振動減衰能の大きい材料で構成する。
【0010】
(1)剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球の跳ね返り時間を計測して、前記供試複合パネルと基準パネルとの跳ね返り時間差を算出し、該跳ね返り時間差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定する。
【0011】
(2)剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突による衝突力を計測して、この計測値に基づき前記供試複合パネルと基準パネルとの衝突力差を算出し、該衝突力差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定する。
【0012】
(3)前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突による振動の伝達関数を前記基準パネル及び供試複合パネルについて算出し、前記供試複合パネルと基準パネルとの伝達関数の振幅の差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定する。
この発明において、具体的には、前記伝達関数を、前記基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させたときの該金属球と前記表板との衝突による衝突音の検出値及び衝突力の検出値により算出し、あるいは前記表板の振動計測値に基づき算出するのが好ましい。
【0013】
(4)剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突後における前記表板の表面振動の減衰時間を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出してこの減衰時間検出値に基づき、該基準パネルと供試複合パネルとの減衰時間差を算出し、該減衰時間差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定する。
この発明において、具体的には、前記基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させたときの音圧の時間変化を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出してこの音圧の時間変化の検出値に基づき、該基準パネルと供試複合パネルとの音圧減衰時間差を算出し、該音圧減衰時間差を前記減衰時間差とするのが好ましい。
【0014】
(5)支持軸回りに回動可能に支持されたアームの先端部に金属球を取り付け、該金属球の自然落下によって前記アームを回動させて、前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突後における反撥による前記アームの回動角を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出して該回動角の角度差を算出し、該角度差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定する。
【0015】
かかる発明によれば、前記(1)〜(5)のような方法で複合パネルにおける接合面の剥離を検知するので、剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させて、該金属球と表板との衝突による、供試複合パネルと基準パネルとの跳ね返り時間差(前記(1))、あるいは供試複合パネルと基準パネルとの衝突力差(前記(2))、あるいは供試複合パネルと基準パネルとの伝達関数の差(前記(3))、あるいは基準パネルと供試複合パネルとの振動の減衰時間差(前記(4))を算出する、または金属球と表板との衝突後における反撥による金属球支持アームの回動角の基準パネルと供試複合パネルとの角度差を算出する(前記(5))、という金属球と複合パネルの表板との衝突による音波あるいは振動の差異を、健全な基準パネルと供試複合パネルとの比較により算出して、接合面における剥離の有無を判定するので、該接合面における剥離の有無を確実に判定でき、前記剥離の有無の検知精度が向上する。
【0016】
また、金属球を複合パネルの表板の表面に落下させて健全な基準パネルと供試複合パネルとの間の跳ね返り時間差、衝突力差、伝達関数の差、振動の減衰時間差、金属球支持アームの回動角の角度差を算出するので、きわめて簡単な検知方法でかつ短時間で接合面における剥離の有無を検知でき、複合パネルにおける剥離の有無の検知作業工数を低減できる。
【0017】
また、前記跳ね返り時間差、前記衝突力差、前記伝達関数の差、前記減衰時間差、前記回動角の角度差のいずれか1つが、一定値を超えたときにも、前記接合面における剥離の発生を判定することができる。
【0018】
そして、以上の方法発明を実施するための装置の発明、即ち、金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知装置の発明は、
(1)複合パネルの表板の表面に金属球を落下して該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、該金属球の前記表板への衝突音を検出する衝突音検出手段と、該衝突音検出手段からの衝突音の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえる。
(2)複合パネルの表板の表面に金属球を落下して該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、該金属球の前記表板への衝突時における衝突力を検出する衝突力検出手段と、該衝突力検出手段からの衝突力の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえる。
【0019】
(3)複合パネルの表板の表面に金属球を落下して該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、該金属球の前記表板への衝突時における前記表板の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段からの振動の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえる。
(4)支持軸回りに回動可能に支持されたアームの先端部に金属球を取り付け該金属球の落下によって前記アームを回動せしめる金属球落下手段と、該金属球と前記表板との衝突後における反撥による前記アームの回動角を検出するアーム回動角検出手段と、該アーム回動角検出手段からのアーム回動角の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえる。
【0020】
前記(1)〜(4)に示す複合パネルの剥離検知装置の発明によれば、複合パネルの表板の表面に金属球を落下して、該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、金属球の表板への衝突音を検出する衝突音検出手段(前記(1))、あるいは金属球の表板への衝突時における衝突力を検出する衝突力検出手段(前記(2))、あるいは該金属球の表板への衝突時における表板の振動を検出する振動検出手段(前記(3))とを組み合わせ、
または、支持軸回りに回動可能に支持されたアームの先端部に金属球を取り付け該金属球の落下によって前記アームを回動せしめる金属球落下手段と、該金属球と表板との衝突後における反撥によるアームの回動角を検出するアーム回動角検出手段とを組み合わせ(前記(4))、
これらの衝突音検出手段(前記(1))、あるいは衝突力検出手段(前記(2))、あるいは振動検出手段(前記(3))、あるいはアーム回動角検出手段(前記(4))での、衝突音あるいは衝突力あるいは振動あるいはアーム回動角の検出値に基づき、複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段を設けるという、きわめて簡単な構造で且つ低コストの装置で以って、複合パネルの表板の表面に一切傷を付けることなく複合パネルの接合面における剥離の発生を検知できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属球と複合パネルの表板との衝突による音波あるいは振動の差異を、健全な基準パネルと供試複合パネルとの比較により算出して接合面における剥離の有無を判定するので、接合面における剥離の有無を確実に判定でき、前記剥離の有無の検知精度が向上する。
また、金属球を複合パネルの表板の表面に落下させて健全な基準パネルと供試複合パネルとの間の跳ね返り時間差、衝突力差、伝達関数の差、振動の減衰時間差、金属球支持アームの回動角の角度差を算出するので、きわめて簡単な検知方法でかつ短時間で接合面における剥離の有無を検知でき、複合パネルにおける剥離の有無の検知作業工数を低減できる。
【0022】
さらには、金属球の落下手段と、金属球の表板への衝突音、あるいは衝突力、あるいは表板の振動、あるいは金属球支持アーム回動角の検出手段と、これらの検出手段による検出値に基づき複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とを設けるという、きわめて簡単な構造で且つ低コストの装置で以って、複合パネルの表板の表面に一切傷を付けることなく複合パネルの接合面における剥離の発生を検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
図1は、本発明の各実施例に係る複合パネルの剥離検知装置の全体構成図である。
図1において、1は複合パネル01の表板で鋼鈑からなり、2はFRP材からなる裏板、3は該表板1と裏板2との接合面である。前記表板1は鋼鈑以外の金属板でもよく、前記裏板2は樹脂板、ラバー板やゴム系板等の非金属板であって、好ましくは前記表板1の材料である金属板よりも振動減衰能の大きい材料で構成する。
【0025】
100は剥離検知装置で、前記複合パネル01の剥離検知時にマグネット8によって前記複合パネル01の表板1に取り付けられる。5はアーム6の先端部に取り付けられた金属球、7は該アーム6を回動自在に支持する支持軸で、該金属球5は前記アーム6の支持軸7廻りの回動により、図に破線で示す垂直位置からS方向に落下して前記複合パネル01の表板1の表面に衝突せしめられるようになっている。前記金属球5,アーム6,支持軸7等により、金属球落下手段を構成する。
【0026】
10は前記金属球5の前記表板1への衝突音を検出するマイクロホン(衝突音検出手段)、12は該金属球5の前記表板1への衝突時における反撥力を含む衝突力を検出するフォースセンサ(衝突力検出手段)、11は該金属球5の前記表板1への衝突時における該表板1の振動(振動加速度)を検出する振動センサ(振動検出手段)、16は金属球と前記表板1との衝突後における反撥による前記アーム6の回動角を検出する角度センサ(アーム回動角検出手段)である。13は増幅器、14は処理判定手段、15は表示装置である。
前記マイクロホン10で検出された前記衝突音の検出信号、フォースセンサ12で検出された前記衝突力の検出信号、振動センサ11で検出された前記振動(振動加速度)の検出信号、及び角度センサ16で検出された前記アーム回動角の検出信号は、前記増幅器13に入力される。
以下に、前記剥離検知装置100を用いた複合パネルの剥離検知方法の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
図2は本発明の第1実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
図1において、前記金属球5を、図に破線で示す垂直位置からS方向に落下させて前記複合パネル01の表板1の表面に衝突せしめると、該金属球5は衝突後に表板1の表面から数回バウンドした後、該表面上に整定する。
かかる金属球5による複合パネル01の表板1への衝突動作を、予め用意した剥離の無い健全な複合パネル即ち基準パネル及び供試体である供試複合パネルの双方について行なう。
【0028】
そして、かかる金属球5の衝突による基準パネル及び供試複合パネルの衝突音は前記マイクロホン10で検出され、増幅器13で増幅されて前記処理判定手段14の音波解析部141に送られる。該音波解析部141においては、前記基準パネル及び供試複合パネルの衝突音の振幅、周波数等の周波数解析を行なって整理し、跳ね返り時間差算出部142に入力する。
該跳ね返り時間差算出部142においては、図3のような基準パネル及び供試複合パネルの衝突音の周波数解析結果から、金属球5の表板1の表面への衝突時から1回目のバウンド時までの時間即ち跳ね返り時間tを算出する。
【0029】
この跳ね返り時間tは、図3の(A)に示される基準パネル(健全な複合パネル)の跳ね返り時間t1の方が図3の(B)に示されるような、表板1と裏板2との接合面3に剥離が発生している供試複合パネルの跳ね返り時間t2よりも表板1の反撥係数が大きいため、大きくなる。
従って、該跳ね返り時間差算出部142においては、前記基準パネル(健全な複合パネル)の跳ね返り時間t1と供試複合パネル跳ね返り時間t2との跳ね返り時間差(Δt=t1−t2)を算出して剥離判定部153に入力する。
【0030】
144は剥離限界時間差設定部で、前記基準パネル(健全な複合パネル)の跳ね返り時間t1と剥離が発生しているときの供試複合パネルの跳ね返り時間t2との跳ね返り時間差Δtの判定値つまり跳ね返り時間差の限界値Δt0が予め設定されている。
剥離判定部153においては、前記跳ね返り時間差の算出値Δtと前記剥離限界時間差設定部144に設定されている限界値Δt0とを比較し、前記算出値Δtが限界値Δt0を超えたとき(Δt>Δt0)、前記接合面3に剥離が発生しているものと判定する。この判定結果は前記表示装置15に表示され、剥離の発生を表示する。
【実施例2】
【0031】
図4は本発明の第2実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
図4において、前記第1実施例と同様に、金属球5による複合パネル01の表板1への衝突動作を、予め用意した前記基準パネル及び供試体である供試複合パネルの双方について行なう。そして、この第2実施例においては前記金属球5と前記表板1との衝突による反撥力を含む衝突力をフォースセンサ12により計測し、増幅器13で増幅して前記処理判定手段14の衝突力解析部151に入力する。
衝突力解析部151においては、前記基準パネル及び供試複合パネルの衝突力の解析を行なって整理し、衝突力差算出部152に入力する。
該衝突力差算出部152においては、前記衝突力解析部151における基準パネル及び供試複合パネルの衝突力の解析結果から、金属球5の表板1の表面への衝突時における基準パネルと供試複合パネルの衝突力の差を算出する。
【0032】
前記衝突力は、基準パネル(健全な複合パネル)の方が、表板1と裏板2との接合面3に剥離が発生している供試複合パネルよりも表板1の反撥係数が大きいため、大きくなる。
従って、該衝突力差算出部152においては、前記基準パネル(健全な複合パネル)の衝突力F1と供試複合パネルの衝突力F2との衝突力差(ΔF=F1−F2)を算出して剥離判定部153に入力する。
【0033】
154は剥離限界衝突力差設定部で、前記基準パネル(健全な複合パネル)の衝突力F1と剥離が発生しているときの供試複合パネルの衝突力F2との衝突力差ΔFの限界値ΔF0が予め設定されている。
剥離判定部153においては、前記衝突力差の算出値ΔFと前記剥離限界衝突力差設定部154に設定されている限界値ΔF0とを比較し、前記算出値ΔFが限界値ΔF0を超えたとき(ΔF>ΔF0)、前記接合面3に剥離が発生しているものと判定する。この判定結果は前記表示装置15に表示され、剥離の発生を表示する。
【実施例3】
【0034】
図5は本発明の第3実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
図5において、前記第1実施例と同様に、金属球5による複合パネル01の表板1への衝突動作を、予め用意した前記基準パネル及び供試体である供試複合パネルの双方について行なう。
そして、この第3実施例においては、金属球5の衝突による基準パネル及び供試複合パネルの衝突音を前記マイクロホン10で検出し、増幅器13で増幅して前記処理判定手段14の伝達関数算出部161に入力するとともに、前記金属球5の衝突による衝突力をフォースセンサ12により計測し、増幅器13で増幅して前記伝達関数算出部161に入力する。
また、前記振動センサ11によって該金属球5の前記表板1への衝突時における該表板1の振動加速度を検出し、増幅器13で増幅して前記伝達関数算出部161に入力するように構成することもできる。
【0035】
伝達関数算出部161においては、前記衝突音の音圧レベルdと前記衝突による衝突力Fとにより、基準パネル及び供試複合パネルについて伝達関数d/Fを算出して伝達関数算出部163に入力する。あるいは前記伝達関数算出部161においては、前記振動センサ11からの振動加速度の計測値を用いて伝達関数を算出することもできる。
【0036】
前記伝達関数算出部163においては、前記伝達関数の算出値から、前記衝突時における前記基準パネルの伝達関数と供試複合パネルの伝達関数との伝達関数差を算出し、剥離判定部153に入力する。
図6はかかる伝達関数の一例であり、S1が基準パネルの伝達関数、S2が供試複合パネルの伝達関数を示す。図6(A)は、供試複合パネルに剥離が発生していない場合で、該供試複合パネルの伝達関数S2は基準パネルの伝達関数S1とほぼ一致する。
図6(B)は、供試複合パネルに剥離が発生している場合で、該供試複合パネルの伝達関数が大きくなるため、該供試複合パネルの伝達関数S2は基準パネルの伝達関数S1よりも高振幅側に離れ、伝達関数差が大きくなる。
【0037】
164は剥離限界伝達関数設定部で、前記基準パネル(健全な複合パネル)の伝達関数S1と剥離が発生しているときの供試複合パネルの伝達関数S2との伝達関数差の限界値が予め設定されている。
前記剥離判定部153においては、前記伝達関数算出部163からの基準パネルの伝達関数と供試複合パネルの伝達関数との伝達関数差の算出値と前記剥離限界伝達関数設定部164に設定された伝達関数差の限界値とを比較し、伝達関数差の算出値が限界値を超えたとき前記接合面3における剥離の発生を判定する。この判定結果は前記表示装置15に表示され、剥離の発生を表示する。
【実施例4】
【0038】
図7は本発明の第4実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
図7において、前記第1実施例と同様に、金属球5による複合パネル01の表板1への衝突動作を、予め用意した前記基準パネル及び供試体である供試複合パネルの双方について行なう。
そして、この第4実施例においては、かかる金属球5の衝突による基準パネル及び供試複合パネルの衝突音はマイクロホン10で検出され、増幅器13で増幅されて前記処理判定手段14の音波解析部141に送られる。該音波解析部141においては、前記基準パネル及び供試複合パネルの衝突音の振幅、周波数等の周波数解析を行なって整理し、残響時間差算出部171に入力する。
【0039】
図8は、金属球5の表板1への衝突による音圧の時間変化を示し、(A)は基準パネル(健全な複合パネル)の音圧変化、(B)は前記接合面3に剥離が発生している供試複合パネルの音圧変化である。図に明らかなように、剥離が発生している供試複合パネルの音圧は剥離のため裏板2による音圧の減衰作用が小さくなるため音圧減衰時間t2が基準パネルの音圧減衰時間t1よりも長くなる。
残響時間差算出部171においては、前記供試複合パネルの音圧減衰時間t2と基準パネルの音圧減衰時間t1との差つまり残響時間差ΔT(=t2−t1)を算出し、剥離判定部153に入力する。
【0040】
172は剥離限界残響時間差設定部で、前記供試複合パネルの音圧減衰時間と基準パネルの音圧減衰時間との残響時間差の限界値ΔT0が予め設定されている。
剥離判定部153においては、前記残響時間差の算出値ΔTと前記剥離限界残響時間差設定部172に設定されている限界値ΔT0とを比較し、前記算出値ΔTが限界値ΔT0を超えたとき(ΔT>ΔT0)、前記接合面3に剥離が発生しているものと判定する。この判定結果は前記表示装置15に表示され、剥離の発生を表示する。
尚、前記マイクロホン10による衝突音の検出値に代えて、振動センサ11による表板1の振動加速度の検出値を用いることもできる。
【実施例5】
【0041】
図9は本発明の第5実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
図9において、前記第1実施例と同様に、金属球5による複合パネル01の表板1への衝突動作を、予め用意した前記基準パネル及び供試体である供試複合パネルの双方について行なう。
そして、かかる第5実施例においては、該金属球5と前記表板1との衝突後における反撥による前記アーム6の回動角を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出して増幅器13で増幅し、前記処理判定手段14の剥離判定部153に入力する。
【0042】
181は剥離限界角度設定部で、前記基準パネル(健全な複合パネル)のアーム回動角と剥離が発生しているときの供試複合パネルのアーム回動角との回動角の限界角度差が予め設定されている。
前記剥離判定部153においては、基準パネルと供試複合パネルとのアーム回動角の差
と前記剥離限界角度設定部181に設定された限界角度差とを比較し、該アーム回動角の差が前記限界角度差を超えたとき、前記接合面3に剥離が発生しているものと判定する。この判定結果は前記表示装置15に表示され、剥離の発生を表示する。
【0043】
また、前記第1実施例における跳ね返り時間差、前記第2実施例における衝突力差、前記第3実施例における伝達関数の差、前記第4実施例における減衰時間差、前記第5実施例における回動角の角度差のいずれか1つが、前記のように予め設定された一定値を超えたときにも、前記接合面3における剥離の発生を判定する。
【0044】
以上の各実施例によれば、前記のような方法で複合パネル01における接合面3の剥離を検知するので、剥離のない健全な複合パネル01からなる基準パネル及び供試複合パネルの表板1の表面に金属球5をそれぞれ落下させて、該金属球5と表板1との衝突による、供試複合パネルと基準パネルとの跳ね返り時間差(第1実施例)、あるいは供試複合パネルと基準パネルとの衝突力差(第2実施例)、あるいは供試複合パネルと基準パネルとの伝達関数の差(第3実施例)、あるいは基準パネルと供試複合パネルとの振動の減衰時間差(第4実施例)を算出する、または前記金属球5と表板1との衝突後における反撥による金属球支持アーム6の回動角の基準パネルと供試複合パネルとの角度差を算出する(第5実施例)、という金属球5と複合パネルの表板1との衝突による音波あるいは振動の差異を、健全な基準パネルと供試複合パネルとの比較により算出して、接合面3における剥離の有無を判定するので、該接合面3における剥離の有無を確実に判定でき、前記剥離の有無の検知精度が向上する。
【0045】
また、前記金属球5を複合パネルの表板1の表面に落下させて健全な基準パネルと供試複合パネルとの間の跳ね返り時間差、衝突力差、伝達関数の差、振動の減衰時間差、金属球支持アームの回動角の角度差を算出するので、きわめて簡単な検知方法でかつ短時間で接合面3における剥離の有無を検知でき、複合パネル01における剥離の有無の検知作業工数を低減できる。
【0046】
さらには、衝突音検出手段、あるいは衝突力検出手段、あるいは振動検出手段、あるいはアーム回動角検出手段での、衝突音あるいは衝突力あるいは振動あるいはアーム回動角の検出値に基づき、複合パネル01の接合面3における剥離の発生を判定する処理判定手段を設けるという、きわめて簡単な構造で且つ低コストの装置で以って、複合パネル01の表板1の表面に一切傷を付けることなく、複合パネル01の接合面3における剥離の発生を検知できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、簡便な手段で以って接合面における剥離の有無を確実に検出でき、かつ簡単な構造で低コストの装置をそなえた複合パネルの剥離装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1〜第5実施例に係る複合パネルの剥離検知装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
【図3】前記第1実施例における作用説明用線図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
【図6】前記第3実施例における作用説明用線図である。
【図7】本発明の第4実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
【図8】前記第4実施例における作用説明用線図である。
【図9】本発明の第5実施例に係る複合パネルの剥離検知方法の制御ブロック図である。
【図10】(A),(B)は従来技術に係る複合パネルの剥離検知装置の部分図である。
【符号の説明】
【0049】
01 複合パネル
1 表板
2 裏板
3 接合面
5 金属球
6 アーム
7 支持軸
8 マグネット
10 マイクロホン(衝突音検出手段)
11 振動センサ(振動検出手段)
12 フォースセンサ(衝突力検出手段)
13 増幅器
14 処理判定手段
15 表示装置
16 角度センサ(アーム回動角検出手段)
100 剥離検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法であって、
前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球の跳ね返り時間を計測して、前記供試複合パネルと基準パネルとの跳ね返り時間差を算出し、該跳ね返り時間差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする複合パネルの剥離検知方法。
【請求項2】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法であって、
前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突による衝突力を計測して、この計測値に基づき前記供試複合パネルと基準パネルとの衝突力差を算出し、該衝突力差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする複合パネルの剥離検知方法。
【請求項3】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法であって、
前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突による振動の伝達関数を前記基準パネル及び供試複合パネルについて算出し、前記供試複合パネルと基準パネルとの伝達関数の差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする複合パネルの剥離検知方法。
【請求項4】
前記伝達関数を、前記基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させたときの該金属球と前記表板との衝突による衝突音の検出値及び衝突力の検出値により算出し、あるいは前記表板の振動計測値に基づき算出することを特徴とする請求項3記載の複合パネルの剥離検知方法。
【請求項5】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法であって、
前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突後における前記表板の表面振動の減衰時間を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出してこの減衰時間検出値に基づき、該基準パネルと供試複合パネルとの減衰時間差を算出し、該減衰時間差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする複合パネルの剥離検知方法。
【請求項6】
基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させたときの音圧の時間変化を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出してこの音圧の時間変化の検出値に基づき、該基準パネルと供試複合パネルとの音圧減衰時間差を算出し、該音圧減衰時間差を前記減衰時間差とすることを特徴とする請求項5記載の複合パネルの剥離検知方法。
【請求項7】
金属材料からなる表板と該非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知方法であって、支持軸回りに回動可能に支持されたアームの先端部に金属球を取り付け、該金属球の落下によって前記アームを回動させて、前記剥離のない健全な複合パネルからなる基準パネル及び供試複合パネルの表板の表面に金属球をそれぞれ落下させ、該金属球と前記表板との衝突後における反撥による前記アームの回動角を前記基準パネル及び供試複合パネルについてそれぞれ検出して該回動角の角度差を算出し、該角度差が一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする複合パネルの剥離検知方法。
【請求項8】
前記跳ね返り時間差、前記衝突力差、前記伝達関数の差、前記減衰時間差、前記回動角の角度差のいずれか1つが、一定値を超えたとき前記接合面における剥離の発生を判定することを特徴とする請求項1ないし7に記載の複合パネルの剥離検知方法。
【請求項9】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知装置において、
前記複合パネルの表板の表面に金属球を落下して該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、該金属球の前記表板への衝突音を検出する衝突音検出手段と、該衝突音検出手段からの衝突音の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえたことを特徴とする複合パネルの剥離検知装置。
【請求項10】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知装置において、
前記複合パネルの表板の表面に金属球を落下して該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、該金属球の前記表板への衝突時における衝突力を検出する衝突力検出手段と、該衝突力検出手段からの衝突力の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえたことを特徴とする複合パネルの剥離検知装置。
【請求項11】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知装置において、
前記複合パネルの表板の表面に金属球を落下して該金属球と複合パネルの表板とを衝突せしめる金属球落下手段と、該金属球の前記表板への衝突時における前記表板の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段からの振動の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえたことを特徴とする複合パネルの剥離検知装置。
【請求項12】
金属材料からなる表板と非金属材料からなる裏板とを接合してなる複合パネルにおける接合面の剥離を検知する複合パネルの剥離検知装置において、
支持軸回りに回動可能に支持されたアームの先端部に金属球を取り付け該金属球の落下によって前記アームを回動せしめる金属球落下手段と、該金属球と前記表板との衝突後における反撥による前記アームの回動角を検出するアーム回動角検出手段と、該アーム回動角検出手段からのアーム回動角の検出値に基づき前記複合パネルの接合面における剥離の発生を判定する処理判定手段とをそなえたことを特徴とする複合パネルの剥離検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−33058(P2007−33058A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212632(P2005−212632)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】