説明

複合制震ダンパー

【課題】簡易な構造によって、構造物に生じる様々な振動に対して、構造物の振動特性の制御による揺れの抑制効果とエネルギー吸収による制震効果とを同時に奏することが可能になる制震ダンパーを提供する。
【解決手段】一端部11aが一方の構造物の架構に接続されて他端部11bが自由端となる第1の軸部材11と、第1の軸部材11に添設されて一端部12aが構造物の架構に接続されるとともに他端部12bが自由端となる第2の軸部材12と、これら第1および第2の軸部材11、12間に介装された粘弾性体13を備えた粘弾性ダンパーに、第1および第2の軸部材11、12の相対変位を円盤23の回転運動に変換して、円盤23の回転慣性質量による慣性力によって上記相対変位に対する復元力を生じさせる回転慣性質量ダンパー20を並列的に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強風や地震等によって構造物に生じる振動に対して、当該構造物の振動特性(周期やモード形)を制御してその揺れを抑制するとともに、同時にエネルギー吸収による制震効果も発揮することができる複合制震ダンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、強風や地震時に構造物の架構に生じる変形を円盤の回転運動に変換して、当該円盤の回転慣性質量による慣性力を復元力として利用することにより上記構造物の揺れを抑制するようにした回転慣性質量ダンパーが開発され、上記構造物の様々な箇所における振動制御に利用されつつある。
【0003】
この回転慣性質量ダンパーは、例えば図10に示すように、軸受け1によって一端部が回転自在に支持されたボールネジ2と、このボールネジ2の外周に固定された円盤3と、ボールネジ2の他端部を支持するとともに、ボールネジ2が螺合するボールナット4とから概略構成され、軸受け1が地震時等に相対変位を生じる架構における一方の部材に固定されるとともにボールナット4が他方の部材に固定されて設置されるものである。
【0004】
上記回転慣性質量ダンパーによれば、地震時等に上記部材間に相対変位が生じると、上記相対変位がボールネジ2の回転運動に変換され、これにより、円盤3の質量をm、円盤3の半径をR、ボールネジ2のリードをLとしたときに、ΔM=2×m×(π×R/L)2で表される大きな回転慣性質量ΔMを得ることができるために、当該回転慣性質量ΔMの慣性力によって、構造物の振動特性(周期やモード形)を制御して応答(揺れ)を低減させることができる。
【0005】
ところで、上記回転慣性質量ダンパーにあっては、当該ダンパーに生じる相対加速度に比例した復元力を発揮することができるものの、エネルギーの吸収機能は有していない。このため、上記回転慣性質量ダンパーを構造物の制震に利用する場合には、別途オイルダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー等の速度依存型ダンパーや、摩擦ダンパー、鋼材ダンパー等の変位依存型ダンパーといったエネルギー吸収機能を有するダンパーと組み合わせて用いる必要がある。
【0006】
しかしながら、上記回転慣性質量ダンパーに対して、これらのエネルギー吸収機能を有するダンパーを併設する場合に、ダンパーの設置場所に制限があり、加えてダンパーの総数が増えてコスト高になるなどの問題点がある。
【0007】
なお、下記特許文献1には、免震対象構造物を、鉛直免震部を介してその下方の支持構造物で支持することにより、免震対象構造物の上下振動を長周期化する上下免震装置において、上記免震対象構造物と支持構造物との間に、免震対象構造物の上下動に連動することで上下振動に関与する質量を増加させる回転慣性質量ダンパーを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−44748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造によって、構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動に対して、当該構造物の振動特性の制御による揺れの抑制効果と、エネルギー吸収による制震効果とを同時に奏することが可能になる制震ダンパーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、振動によって相対変位を生じる構造物の架構の一対の部材間に介装されて、上記相対変位を抑制するとともに上記振動のエネルギーを吸収する複合制震ダンパーであって、一端部が一方の上記部材に接続されて他端部が自由端となる第1の軸部材と、この第1の軸部材に添設されて一端部が他方の部材に接続されるとともに他端部が自由端となる第2の軸部材と、これら第1および第2の軸部材間に介装された粘弾性体とを備えた粘弾性ダンパーに、上記第1および第2の軸部材の相対変位を円盤の回転運動に変換して、当該円盤の回転慣性質量による慣性力によって上記相対変位に対する復元力を生じさせる回転慣性質量ダンパーを並列的に設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記第1の軸部材が、その延在方向に地震による上記相対変位に対して弾性変形する弾性部分と塑性変形する降伏部分とを有し、上記弾性部分に上記粘弾性体が介装されていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記回転慣性質量ダンパーが、軸線を上記第1および第2の軸部材に沿わせて配設され、一端部が上記第1の軸部材側に固定された軸受けに回転自在に支持されたボールネジと、このボールネジの外周に固定された円盤と、上記第2の軸部材に固定されて上記ボールネジを支持するとともに、当該ボールネジの軸線方向の移動を回転運動に変換するボールナットとを備えてなることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記第1の軸部材は、平板状鋼材または十字型鋼材からなり、かつ上記第2の軸部材は、表面を上記第1の軸部材の表面に対向させて相対変位自在に配設された鋼管部材であることを特徴とするものである。
【0014】
そして、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記第1の軸部材に、面外方向に突出するブラケットを固定し、当該ブラケットに上記回転慣性質量ダンパーの上記軸受けを取り付けるとともに、上記ボールネジ、上記円盤および上記ボールナットを上記第2の軸部材を構成する上記鋼管部材の内部に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜5のいずれかに記載の発明においては、強風や地震によって構造物に振動が加わり、これによって架構の上記部材間に相対変位が生じると、これら部材間に設けられた粘弾性ダンパーの第1および第2の軸部材間に介装された粘弾性体の剪断変形によって、当該振動エネルギーを吸収することができる。また、これと同時に、第1および第2の軸部材の相対変位によって、回転慣性質量ダンパーの円盤が回転運動し、その回転慣性質量による慣性力によって生じる復元力により、構造物の振動特性(周期やモード形)を制御して、構造物の振動を抑制することができる。
【0016】
このように、本発明に係る制震ダンパーによれば、粘弾性ダンパーと回転慣性質量ダンパーとを並列的に一体化しているために、設置場所に制約がある構造物においても、簡易な構造によって、当該構造物に生じる振動に対して、振動特性の調整による揺れの抑制効果とエネルギー吸収による制震効果とを同時に奏することが可能になる。
【0017】
さらに、請求項2に記載の発明においては、第1の軸部材の延在方向に、地震による相対変位に対して弾性変形する弾性部分と塑性変形する降伏部分と形成しているために、上記粘弾性体を利用した粘弾性ダンパーと軸部材の降伏部分が奏する履歴型ダンパーとが直列に配置された構成になっている。
【0018】
この結果、上記構造物に、強風等に起因する振幅の小さな揺れが生じた場合には、先ず第1および第2の軸部材間に介装された粘弾性体の剪断変形によって、これを吸収することができる。そしてさらに、大地震が発生して構造物に作用する揺れの振幅が大きくなった場合には、粘弾性体の剪断変形が増加する過程で、第1の軸部材における降伏部分が降伏し、当該降伏部分における塑性変形によってエネルギーを吸収することができる。
【0019】
そして、いずれの場合においても、相対変位が生じる第1および第2の軸部材間に介装された回転慣性質量ダンパーによって、常に振動抑制効果を発揮させることができる。このため、強風や地震等によって構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動に対して、上記構造物の揺れを抑制するとともに同時に制震効果も発揮することができる。
【0020】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、上記第1の軸部材として平板状鋼材または十字型鋼材を用いるとともに、上記第2の軸部材として鋼管部材を用いて、回転慣性質量ダンパーを構成するボールネジ、円盤およびボールナット等の部材を、第2の軸部材を構成する鋼管部材の内部に配置しているために、極めてコンパクトな外観形状によって、粘弾性ダンパーや履歴減衰ダンパーおよび回転慣性質量ダンパーの機能を発揮することができ、設置が一層容易になる。加えて、回転部材であるボールネジや円盤を、管状の第2の軸部材で覆うことにより保護することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る複合制震ダンパーの第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図1の変位依存型ダンパーを示す分解斜視図である。
【図5】図4の要部の縦断面図である。
【図6】図1の変位依存型ダンパーの作用を説明するための模式図で、(a)は引張力が作用した状態、(b)は圧縮力が作用した状態を示すものである。
【図7】本発明に係る複合制震ダンパーの第2の実施形態を示すもので、第2の軸部材を縦断視した正面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】図7の側面図である。
【図10】従来の回転慣性質量ダンパーを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1〜図6は、本発明に係る複合制震ダンパーの第1の実施形態を示すもので、図中符号10が粘弾性ダンパーと履歴減衰ダンパーとの機能を発揮する変位依存型ダンパーである。
この変位依存型ダンパー10は、図4〜図6に示すように、第1の軸部材11と第2の軸部材12と粘弾性体13とから概略構成されたものである。
【0023】
ここで、第1の軸部材11は、一端部11aが構造物の骨組に接続されるとともに、他端部11bが自由端となる十字型鋼材であり、この第1の軸部材11の端部11b側には、軸面積が大きい弾性部分14が形成されている。そして、この弾性部分14と端部11aとの間には、弾性部分14よりも軸面積が小さい降伏部分15が形成されている。
【0024】
そして、第1の軸部材11の四隅には、それぞれ角型鋼管(鋼管部材)からなる上記第2の軸部材12が相対変位自在に配設されており、これら第2の軸部材12は、互いの隣接部に沿って接合されたフラットバー16により一体的に連結されている。
【0025】
さらに、第2の軸部材12と第1の軸部材11の弾性部分14との間に、上記粘弾性体13が介装されている。また、第1の軸部材11の自由端11b側には、軸方向に間隔をおいて同形の十字型鋼材からなる第2の軸部材12の接続用部材17が同軸的に配置されている。そして、この接続用部材17に第2の軸部材12の一端部12aが配置されるとともに、接続部材17に形成されたボルト挿入孔17aと、各々の第2の軸部材12の端部12aに形成されたボルト挿入孔に高力ボルト18が挿入されて締め付けられることにより一体化されている。これにより、第2の軸部材12は、一端部12aが接続用部材17を介して構造物に固定されるとともに、他端部12bが自由端とされている。
【0026】
そして、図1〜図3に示すように、上記構成からなる変位依存型ダンパー10の第1の軸部材11の一端部11aの外周縁に、当該第1の軸部材11と同一面上をさらに外方に向けて突出するようにして方形板状のブラケット19が固定され、当該ブラケット19と第2の軸部材12との間に、回転慣性質量ダンパー20が並列的に設けられている。
【0027】
この回転慣性質量ダンパー20は、軸線を第1および第2の軸部材11、12に沿わせて配設され、一端部がブラケット19に固定された軸受け21に回転自在に支持されたボールネジ22と、このボールネジの外周に固定された円盤23と、第2の軸部材12を連結するフラットバー16に固定されてボールネジ22を支持するとともに、ボールネジ22の軸線方向の移動を、内部に組み込まれてボールネジ22のネジと螺合するボール24aによって回転運動に変換するボールナット24とから構成されたものである。
【0028】
ここで、ボールナット24は、上記軸線方向に間隔をおいて複数(図では2組)配置されており、ボールネジ22の外周には、各ボールナット24の前後に位置するように複数(図では合計5つ)の円盤23が固定されている。また、ブラケット19には、ボールネジ22の軸線方向に延在する長穴19aが形成されている。そして、このブラケット19の両面に、当該ブラケット19を間に挟むようにして一対の取付板25が配置され、これら取付板25の先端部に軸受け21が接合されている。また、ブラケット19と取付板25との間には、摩擦材26が介装されている。
【0029】
そして、これら摩擦材26および取付板25は、上記軸線方向に間隔をおいて複数本(図では2本)配置され、これらを貫通してブラケット19の長穴19aに挿通されたボルト27が、所定の締め付け力でナットが締め付けられることにより、ブラケット19を挟持するようにして取り付けられている。
【0030】
以上の構成からなる複合制震ダンパーによれば、第1の軸部材11に弾性部分14と降伏部分15とを形成し、弾性部分14における第1の軸部材11と第2の軸材12との間に粘弾性体13を介装するとともに、第1の軸部材11および第2の軸材12の端部11b、12bを自由端としているために、粘弾性体13を利用した粘弾性ダンパーと第1の軸部材11の降伏部分15が奏する履歴型ダンパーとが直列に配置された構成になっている。
【0031】
この結果、構造物に、強風等に起因する振幅の小さな揺れが生じて、この複合制震ダンパーに圧縮力および引張力が作用した場合には、図6(a)、(b)に示すように、先ず第1の軸部材11と第2の軸部材12との間に相対変位が生じて粘弾性体13が剪断変形することにより、上記揺れのエネルギーを吸収して、当該揺れを低減し、居住性を高めることができる。
【0032】
次いで、大地震が発生して構造物に作用する揺れの振幅が大きくなった場合には、上述した粘弾性体13の剪断変形が増加する過程で、第1の軸部材11の降伏部分15が降伏し、その履歴減衰によって上記揺れのエネルギーを吸収して、当該揺れを低減する。
【0033】
そして、いずれの場合にも、第1および第2の軸部材11、12間に相対変位が生じると、回転慣性質量ダンパー20のボールネジ22がボールナット24に対して軸線方向へ進退し、当該直線運動が当該ボールナット24によって回転運動に変換されて円盤23が回転運動することにより、円盤23の回転慣性質量の慣性力によって生じる復元力により、構造物の振動特性を調整して、構造物の振動を抑制することができる。
【0034】
この際に、回転慣性質量ダンパー20からブラケット19を介して、第1の軸部材11と構造物の架構との接合部分等に反力が作用するが、当該反力が、ボルト27の締め付け力および摩擦材27の摩擦係数によって決定される所定の値を超えると、ブラケット19と取付板25との間に滑りが生じる。これにより、回転慣性質量ダンパー20から第1の軸部材11や構造物側に、過大な反力が作用することも防ぐことができる。
【0035】
このように、本発明に係る制震ダンパーによれば、粘弾性ダンパーと回転慣性質量ダンパーとを並列的に一体化しているために、設置場所の数に制約がある構造物においても、簡易な構造によって、当該構造物に生じる振動に対して、揺れの抑制効果と制震効果とを同時に奏することが可能になる。
【0036】
この結果、構造物に振動が発生して、架構が変形した場合には、相対変位を生じる第1および第2の軸部材11、12間に介装された回転慣性質量ダンパー20によって、常に振動抑制効果を発揮させることができる。このため、強風や地震等によって構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動に対して、上記構造物の揺れを抑制するとともに同時に上記粘弾性ダンパーおよび履歴減衰ダンパーのエネルギー吸収機能によって制震効果も発揮することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図7〜図9は、本発明に係る複合制震ダンパーの第2の実施形態を示すもので、図1〜図6に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。なお、図7および図8においては、目視の便宜上、第2の軸部材12を構成する角型鋼管の外壁面を省略して内部を示した図としてある。
これらの図において、本実施形態に係る複合制震ダンパーが第1の実施形態に示したものと相違する点は、回転慣性質量ダンパー20の設置数およびそれらの配置にある。
【0038】
すなわち、この複合制震ダンパーにおいては、合計4組の回転慣性質量ダンパー20がそれぞれ変位依存型ダンパー10と並列的に設けられている。そして、第1の軸部材11には、その面外方向に突出して4本の第2の軸部材12を構成する角型鋼管の中空部に臨む位置に、それぞれブラケット19が固定されている。そして、各々のブラケット19に、上述したボルト27およびナットによって、摩擦材26を間に介して取付板25が取り付けられ、当該取付板25の先端部に固定された軸受け21および円盤23が固定されたボールネジ22が、第2の軸部材12を構成する角型鋼管の内部に挿入されている。
【0039】
他方、第2の軸部材12の角型鋼管の内部には、ボールネジ22を支持するとともに、その直線運動を回転運動に変換する複数(図では2組)のボールナット24が、軸線方向に間隔をおいて固定されている。
【0040】
以上の構成からなる複合制震ダンパーによっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
加えて、本実施形態の複合制震ダンパーによれば、4組の回転慣性質量ダンパー20を、変位依存型ダンパー10の各々の第2の軸部材12を構成する角型鋼管の内部に、当該変位依存型ダンパー10と並列的に設けているために、これらの回転慣性質量ダンパー20から作用する復元力の合力を、変位依存型ダンパー10と同軸的にバランス良く作用させることができる。
【0041】
しかも、回転慣性質量ダンパー20を構成するボールネジ22、円盤23およびボールナット24等の部材を、第2の軸部材12を構成する角型鋼管の内部に配置しているために、極めてコンパクトな外観形状によって、粘弾性ダンパーや履歴減衰ダンパーおよび回転慣性質量ダンパーの機能を発揮することができ、設置が一層容易になる。さらに、回転部材であるボールネジ22や円盤23を、上記角型鋼管で覆うことにより保護することもできるという効果も得られる。
【0042】
なお、上記第1および第2の実施形態においては、いずれも回転慣性質量ダンパー20から第1の軸部材11や構造物側に、過大な反力が作用することも防ぐために、ブラケット19に長穴19aを形成して、軸受け21の取付板25を、摩擦材26を間に介してボルト27およびナットの所定の締め付け力でブラケット19に取り付けた場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、例えばブラケット19や取付板25自体を、過度の応力が作用した際に降伏する極降伏点鋼のような降伏部材によって形成すれば、同様の作用効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 変位依存型ダンパー
11 第1の軸部材
12 第2の軸部材
11a、12a 一端部
11b、12b 他端部(自由端)
13 粘弾性体
14 弾性部分
15 降伏部分
19 ブラケット
20 回転慣性質量ダンパー
21 軸受け
22 ボールネジ
23 円盤
24 ボールナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動によって相対変位を生じる構造物の架構の一対の部材間に介装されて、上記相対変位を抑制するとともに上記振動のエネルギーを吸収する複合制震ダンパーであって、
一端部が一方の上記部材に接続されて他端部が自由端となる第1の軸部材と、この第1の軸部材に添設されて一端部が他方の部材に接続されるとともに他端部が自由端となる第2の軸部材と、これら第1および第2の軸部材間に介装された粘弾性体とを備えた粘弾性ダンパーに、上記第1および第2の軸部材の相対変位を円盤の回転運動に変換して、当該円盤の回転慣性質量による慣性力によって上記相対変位に対する復元力を生じさせる回転慣性質量ダンパーを並列的に設けたことを特徴とする複合制震ダンパー。
【請求項2】
上記第1の軸部材は、その延在方向に地震による上記相対変位に対して弾性変形する弾性部分と塑性変形する降伏部分とを有し、上記弾性部分に上記粘弾性体が介装されていることを特徴とする請求項1に記載の複合制震ダンパー。
【請求項3】
上記回転慣性質量ダンパーは、軸線を上記第1および第2の軸部材に沿わせて配設され、一端部が上記第1の軸部材側に固定された軸受けに回転自在に支持されたボールネジと、このボールネジの外周に固定された円盤と、上記第2の軸部材に固定されて上記ボールネジを支持するとともに、当該ボールネジの軸線方向の移動を回転運動に変換するボールナットとを備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合制震ダンパー。
【請求項4】
上記第1の軸部材は、平板状鋼材または十字型鋼材からなり、かつ上記第2の軸部材は、表面を上記第1の軸部材の表面に対向させて相対変位自在に配設された鋼管部材であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の複合制震ダンパー。
【請求項5】
上記第1の軸部材に、面外方向に突出するブラケットを固定し、当該ブラケットに上記回転慣性質量ダンパーの上記軸受けを取り付けるとともに、上記ボールネジ、上記円盤および上記ボールナットを上記第2の軸部材を構成する上記鋼管部材の内部に配置したことを特徴とする請求項4に記載の複合制震ダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−241848(P2012−241848A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114521(P2011−114521)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】