説明

複合屋根部の水密構造

【課題】
複雑な形状を有する複合屋根の接合部分であっても、確実に水密状態を得ることが出来
る複合屋根部の水密構造を提供する。
【解決手段】
ユニット建物の上部に、一定の屋根勾配を有する傾斜屋根部20に隣接配置されて、略
水平に延設される陸屋根部21が設けられて、複合屋根部19が構成されている。
傾斜屋根部20の軒先側と、陸屋根部21の立ち上がり面部25との接合部分では、立
ち上がり面部25に沿って設けられた鉛直27仕上材の内側に、略鉛直に立設される躯体
側屋根仕上材28が設けられて、延設介装部28aが、傾斜屋根部20の上面側に敷設さ
れた上側アスファルトルーフィング31の軒先側端縁部31aの下側に介装されることに
より、上側アスファルトルーフィング31と、躯体側屋根仕上材28と、下側アスファル
トルーフィング32とを、傾斜屋根部20の上面側で、重合させて重合部40が構成され
ている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の屋根部に用いられて、特に、異なる形状の屋根部を接合する箇所の
水密性能を向上させることが出来る複合屋根部の水密構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すような屋根部の接合構造が、知られている(例えば、特許文献1等
参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、この従来の屋根部の接合構造では、建物1の上部に、一定
の屋根勾配を有して構成される傾斜屋根部3と、この傾斜屋根部3に隣接配置されて、略
水平に延設される陸屋根部4とが設けられることにより、複合屋根部2が、主に構成され
ている。
【0004】
このうち、前記傾斜屋根部3を構成する複数の屋根パネル部材5…は、上面視略ロ字状
に接続されて、周縁を形成する枠材5a…及び5b…と、これらの枠材5a…及び5b…
の上面部を覆うように敷設される平板状のパネル面材5cとを有して、主に、構成されて
いる。
【0005】
一般に、これらの屋根パネル部材5…と、前記隣接配置される陸屋根部4との接合部分
では、図11に示されるように、接合部分に沿って延設される前記枠材5aの前端面5d
に、陸屋根部4の立ち上がりパネル面材6の上端部6aの裏側面が、接合されている。
【0006】
このような接合部分では、建物1内部への雨水の浸入を防止する為、前記屋根パネル部
材5の前記パネル面材5cの上面側に防水紙7が敷設されると共に、この防水紙7の前端
縁7aが、前記立ち上がりパネル面材6の外側面を覆うように添着される防水紙8の上端
縁8aに、重ね合わせられて、一定寸法幅wの重合部9が、形成されている。
【0007】
更に、前記傾斜屋根部3の前記防水紙7の上面側には、金属折版で構成される屋根仕上
材10,10が、釘11…等で固着されて設けられている。
【0008】
このうち、最も、軒先側の屋根仕上材10の前端折り返し部10aには、前記立ち上が
りパネル面材6の外表面側に貼設される縦面仕上げ材12の上端屈曲部12aが、嵌着さ
れている。
【0009】
次に、この従来の複合屋根部の水密構造について説明する。
【0010】
この従来の複合屋根部の水密構造では、前記傾斜屋根部3では、前記屋根仕上材10,
10間の接続部分等から内部に、浸入した雨水が、前記防水紙7の上面を流下して、前記
重合部9の上面側を通過する。
【0011】
そして、前記重合部9の上面側を通過した雨水は、前記縦面仕上げ材12の裏面側で、
前記防水紙8の外側面との間の間隙を、流れ落ちる。
【0012】
なお、軒先近傍に、陸屋根部に相当する略平坦な底面部を有する融雪溝を設けて、隣地
を含む軒下に落下する前に、この融雪溝内に捕捉された雪を、強制的に融雪する強制融雪
機等を設けたものも知られている(例えば、特許文献2,3等参照)。
【特許文献1】特開平11−141042号公報(図1,図2、段落0012乃至段落0027)
【特許文献2】特公平8−16404号公報(図1乃至図3)
【特許文献3】特開平7−279481号公報(図1乃至図3、段落0007乃至段落0023)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図11に示されるような従来の複合屋根部の水密構造では、前記重合部
9が、前記パネル面材5cの上面側に敷設された防水紙7が、前記立ち上がりパネル面材
6の外側面を覆うように添着された防水紙8の上端縁8aに、重ね合わせられているだけ
である。
【0014】
このため、この重合部9から建物1躯体内部へ漏水が発生する虞があった。
【0015】
また、軒先側の前記屋根仕上材10の前端折り返し部10aに、前記立ち上がりパネル
面材6の外表面側に貼設される縦面仕上げ材12の上端屈曲部12aが、嵌着されている
部分からも、雨水が浸入して、建物1躯体内部へ漏水が発生する虞があった。
【0016】
そこで、この発明は、複雑な形状を有する複合屋根の接合部分であっても、確実に水密
状態を得ることが出来る複合屋根部の水密構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本願発明の請求項1記載のものは、建物の上部に、一定の
屋根勾配を有して構成される傾斜屋根部と、該傾斜屋根部に隣接配置されて、略水平に延
設される陸屋根部とが設けられて、複数の屋根仕上材が、接合されることにより、前記傾
斜屋根部及び前記陸屋根部とを連続して覆う複合屋根部の水密構造であって、前記傾斜屋
根部の軒先側と、前記陸屋根部の立ち上がり面部との接合部分では、該立ち上がり面部に
沿って設けられる前記屋根仕上材の内側に、略鉛直に立設される躯体側屋根仕上材の上端
部を、前記傾斜屋根部の傾斜角度に合わせて屈曲して、延設介装部を形成すると共に、該
延設介装部を、前記傾斜屋根部の上面側に敷設された防水紙の軒先側端縁部の下側に介装
することにより、該防水紙と前記躯体側屋根仕上材とを、前記傾斜屋根部の上面側で、重
合させる重合部を設けた複合屋根部の水密構造を特徴としている。
【0018】
また、請求項2に記載されたものは、前記傾斜屋根部の上面側に敷設された防水紙の下
面側に、二重となるように、躯体側防水紙を敷設すると共に、該躯体側防水紙の軒先側端
縁部を、前記躯体側屋根仕上材の延設介装部の下側に重ねて重合した請求項1記載の複合
屋根部の水密構造を特徴としている。
【0019】
更に、請求項3に記載されたものは、前記躯体側防水紙の軒先側端縁部の上面と、前記
躯体側屋根仕上材の延設介装部の下面との間に、水密部材を添着した請求項2記載の複合
屋根部の水密構造を特徴としている。
【0020】
そして、請求項4に記載されたものは、該立ち上がり面部に沿って設けられる前記屋根
仕上材の上端部と、前記傾斜屋根部の軒先側に設けられた屋根仕上材の軒先側端縁部との
接合部を、前記陸屋根部上方へ向けて軒先方向へ突設させて、前記傾斜屋根部の上面側に
敷設された防水紙の上側の流路から離間させると共に、該接合部と、前記延設介装部との
間に、流下開口を形成して、前記傾斜屋根部の流路と連通する立ち上がり面部内流路を、
前記立ち上がり面部の躯体側屋根仕上材と、前記屋根仕上材との間に形成する請求項1乃
至3のうち、何れか一項記載の複合屋根部の水密構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
このように構成された請求項1記載のものは、前記延設介装部が、前記傾斜屋根部の上
面側に敷設された防水紙の軒先側端縁部の下側に介装されることにより、該防水紙と前記
躯体側屋根仕上材とが、前記傾斜屋根部の上面側で、重合されて構成されている。
【0022】
このため、前記傾斜屋根部では、各屋根仕上材間の接合部等から、前記屋根仕上材下面
側に浸入した雨水が、該傾斜屋根部の防水紙の上面側から、該重合部を通過して、該躯体
側屋根仕上材の外側面外側方に流下される。
【0023】
該延設介装部は、前記屋根仕上材の内側に、略鉛直に立設される前記躯体側屋根仕上材
の上端部を、前記傾斜屋根部の傾斜角度に合わせて屈曲して、一体に構成されているので
、従来の重合部のように、2枚の防水紙を重ね合わせたものに比して、耐久性を向上させ
ることが出来ると共に、施工誤差を少なくすることが出来る。
【0024】
従って、水密性能のバラツキを減少させることができる。
【0025】
また、請求項2に記載されたものは、前記傾斜屋根部では、前記防水紙と共に、軒先側
端縁部が、前記躯体側屋根仕上材の延設介装部の下側に重ねあわせられて、重合された躯
体側防水紙によって、二重となるように防水紙が敷設されている。
【0026】
このため、前記上側の防水紙等から雨漏れが、生じても、前記躯体側防水紙によって、
建物躯体内部への雨水の浸入が防止される。
【0027】
更に、請求項3に記載されたものは、前記躯体側防水紙の軒先側端縁部の上面と、前記
躯体側屋根仕上材の延設介装部の下面との間に添着された前記水密部材によって、前記躯
体側防水紙の上面を流下する雨水が、該躯体側防水紙の軒先側端縁部の上面と、前記躯体
側屋根仕上材の延設介装部の下面との間から、建物躯体内部へ浸入することなく、前記躯
体側屋根仕上材の延設介装部の上面側を通過して、前記躯体側屋根仕上材の外側に排水さ
れる。
【0028】
このため、更に、安定した水密性能を発揮することができる。
【0029】
また、請求項4に記載されたものは、前記接合部が、防水紙の上側の流路から離間され
て形成されているので、雨水が、直接、該接合部にかかり、劣化して、防水性を損なわせ
る虞を減少させることができる。
【0030】
更に、前記流下開口を介して、前記傾斜屋根部の流路内を流下する雨水が、円滑に、前
記立ち上がり面部の躯体側屋根仕上材と、前記屋根仕上材との間に形成された前記立ち上
がり面部内流路内に排水されて、建物躯体内部へ浸入する虞を、更に、減少させることが
できる。
【0031】
しかも、前記接合部から浸入した雨水も、直ちに、前記立ち上がり面部の躯体側屋根仕
上材と、前記屋根仕上材との間に形成された前記立ち上がり面部内流路内に流下されて、
建物外側に排水される。
【0032】
このため、更に、水密性が良好な複合屋根部が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の複合屋根部の水
密構造を説明する。
【0034】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0035】
図1乃至図4は、この発明の最良の実施の形態の複合屋根部の水密構造を示している。
【0036】
まず、この実施の形態の構成を説明すると、この実施の形態の建物としてのユニット建
物14は、図2に示されるように、複数の一階居室ユニット15…及び16…の上部に、
二階居室ユニット17…が載置されて、一階部分の居住スペース及び二階部分の居住スペ
ースが主に形成されている。
【0037】
これらの一,二階部分の上部には、各々、複合屋根部18,19が設けられている。
【0038】
このうち、二階部分の上部に設けられた複合屋根部19には、一定の屋根勾配を有して
構成される傾斜屋根部20と、この傾斜屋根部20の北側軒先部に隣接配置されて、略水
平に延設される陸屋根部21とが設けられていて、図3に示すように、隣地境界線L側の
二階居室ユニット17の上部に、これらの傾斜屋根部20と、陸屋根部21とを連結する
接続部30が設けられている。
【0039】
このうち、前記傾斜屋根部20は、略中央部に設けられた棟部20aから、一定の傾斜
角度を有して両側に向けて下降する傾斜面が形成されるように、一定の間隔を置いて、流
れ方向に沿って延設される垂木22…が複数本、並設されると共に、これらの垂木22…
が、軒先延設方向に沿って設けられて、建物躯体と一体となるように固設される横桁材2
3…によって、支持されている。
【0040】
また、これらの垂木22…の上面側には、平板板状の野地板部材24…が貼設されてい
て、図4に示されるように、この野地板部材24…の上面側に装着される屋根仕上材10
,10と共に、釘11…によって、前記垂木22,22に固着されている。
【0041】
これらの屋根仕上材10は、各々流れ方向前後側縁部に、係合フック部10c及び被係
合凸部10dが、一体に屈曲形成された長尺パネル状を呈していて、隣接配置される他の
屋根仕上材10,10間で、これらの係合フック部10c及び被係合凸部10d同士を係
合させることにより、複数の屋根仕上材10…が、一枚の板材のように、接合されている

【0042】
さらに、この傾斜屋根部20の軒先側縁部には、前端縁を裏面側に沿わせるように屈曲
する前端折り返し部10aが形成された前端屋根仕上材10Aが、敷設されている。
【0043】
また、前記陸屋根部21は、平坦状を呈する底面部21aの軒先側及び左,右両側に、
側壁部21b,21c…が、三方向から周囲を取り囲むように、一定の高さを有して形成
されている。これらの側壁部21b,21c…の上面には、図9に示すように、内,外側
面から延設されるシート状部材21d,21eが重ね合わせられていると共に、これらの
シート状部材21d,21eの上には、図7,若しくは図8に示すような鋼板とシート材
との複合材料で構成されるパラペット役物21fが嵌着されている。
【0044】
更に、このパラペット役物21fの上からは、図3,若しくは図5に示すような換気笠
木部材21hが、前記三方向に設けられた各側壁部21b,21c…の上面部21gを覆
うように固着されている。
【0045】
この陸屋根部21には、棟側の側縁部に、立ち上がり面部25が、前記略垂直に延設さ
れている。
【0046】
この立ち上がり面部25は、前記傾斜屋根部20の軒先側端縁に位置する横桁材23の
外側面側に、固定される鉛直壁面部材26と、この鉛直壁面部材26に沿って設けられて
、前記屋根仕上材10の前端折り返し部10aに、軒先側に向けて一体に屈曲形成された
上端部27aを嵌着させる屋根仕上材の一つとしての鉛直仕上部材27とを有して、主に
構成されている。
【0047】
この実施の形態の鉛直仕上部材27は、図4及び図5に示すように、前記立ち上がり面
部25の上下方向略全幅に渡って、前記陸屋根部21の側壁部21c,21cの換気笠木
部材21hの上端近傍に至るまで延設されている。
【0048】
そして、この鉛直仕上部材27は、上端部27a近傍及び、上下方向略中央に凹設形成
された固定凹部27bが、釘11,11を用いて、前記鉛直壁面部材26に固定されてい
て、前記傾斜屋根部20及び前記陸屋根部21とが連続して覆われるように構成されてい
る。
【0049】
前記傾斜屋根部20の軒先側と、前記陸屋根部21の立ち上がり面部25の上端との接
合部分では、前記立ち上がり面部25に沿って設けられる前記鉛直仕上材27の内側で、
前記鉛直壁面部材26の外側に介在されて、図1及び図7に示すような躯体側屋根仕上材
28が、略鉛直に立設されて設けられている。
【0050】
この実施の形態の躯体側屋根仕上材28は、ステンレス鋼板製で、上端部を、前記傾斜
屋根部20の傾斜角度に合わせて屈曲して、一定の幅寸法w1を有する延設介装部28a
が形成されている。
【0051】
更に、この躯体側屋根仕上材28の下端部は、断面略L字型を呈するように、略直角に
軒先方向に向けて一体に屈曲されていて、前記陸屋根部21の底面部21a上面を覆うよ
うに延設されている。
【0052】
また、この実施の形態の傾斜屋根部20の上面側には、防水紙としての上側アスファル
トルーフィング31が敷設されていると共に、この上側アスファルトルーフィング31の
下面側に、二重となるように、躯体側防水紙としての下側アスファルトルーフィング32
が敷設されている。
【0053】
そして、前記延設介装部28aが、この上側アスファルトルーフィング31の軒先側端
縁部31aの下側に介装されることにより、この上側アスファルトルーフィング31と前
記躯体側屋根仕上材28とが、前記傾斜屋根部20の軒先上面側で、重合される重合部4
0が設けられている。
【0054】
更に、この実施の形態の重合部40では、前記下側アスファルトルーフィング32の軒
先側端縁部32aが、前記躯体側屋根仕上材28の延設介装部28aの下側に重ねられて
重合されている。
【0055】
すなわち、前記下側アスファルトルーフィング32の軒先側端縁部32aの上面と、前
記躯体側屋根仕上材28の延設介装部28aの下面との間には、水密部材としてのゴム系
スポンジ部材41が添着されていて、これらの軒先側端縁部32aと延設介装部28aと
の間から、建物躯体側に雨水が浸入しないように水密状態としている。
【0056】
そして、この実施の形態の接続部30では、前記立ち上がり面部25に沿って設けられ
る前記鉛直仕上部材27の上端部27aと、前記傾斜屋根部20の軒先側に設けられた屋
根仕上材10Aの前端折り返し部10aとの接合部が、前記鉛直仕上部材27の上端部2
7a近傍を、釘11,11を用いて固定する際に、木桟42,43を介在させることによ
り、前記陸屋根部21上方へ向けて軒先方向へ突設されていて、前記傾斜屋根部20の上
面側に敷設された上側アスファルトルーフィング31の上側の流路から離間されている。
【0057】
更に、この接合部と、前記延設介装部28a端縁との間に、流下開口44が形成されて
いる。
【0058】
そして、前記傾斜屋根部20の上側アスファルトルーフィング31の上側の流路と連通
する立ち上がり面部内流路45が、前記立ち上がり面部25の躯体側屋根仕上材28の外
側面と、前記鉛直仕上げ材27の裏面側との間に形成されている。
【0059】
また、この傾斜屋根部20の周囲には、図2及び図3に示すような装飾用パラペット部
材50,50が装着されて、前記陸屋根部21の換気笠木部材21hとの外観上の調和が
図られていると共に、反対側の傾斜屋根部20には、天窓部51が設けられている。
【0060】
次に、この実施の形態の複合屋根部の水密構造の作用について説明する。
【0061】
この実施の形態では、前記延設介装部28aが、前記傾斜屋根部20の上面側に敷設さ
れた上側アスファルトルーフィング31の軒先側端縁部31aの下側に介装されることに
より、この上側アスファルトルーフィング31と前記躯体側屋根仕上材28とが、前記傾
斜屋根部20の野地板部材24上面側で、重合されて構成されている。
【0062】
このため、前記傾斜屋根部20では、各屋根仕上材10,10間の接合部等から、万一
、前記屋根仕上材10下面側に雨水が浸入しても、図1に示されるように、この傾斜屋根
部20の上側アスファルトルーフィング31の上面側から、この重合部40の上方を通過
して、前記流下開口44を介して、立ち上がり面部25内に、円滑に流下される。
【0063】
そして、この雨水は、前記躯体側屋根仕上材28の外側面外側方を伝って、前記立ち上
がり面部内流路45から、前記陸屋根部21の底面部21a上面に向けて流下される。
【0064】
前記延設介装部28aは、前記屋根仕上材10Aの下方内側及び前記鉛直仕上部材27
の建物躯体方向内側に、略鉛直に立設される前記躯体側屋根仕上材28の上端部を、前記
傾斜屋根部20の傾斜角度に合わせて屈曲して、一体に構成されているので、例えば、ス
テンレス鋼板製等の耐腐食性の金属材料で構成出来る。
【0065】
このため、従来の重合部のように、2枚の防水紙を重ね合わせたものに比して、耐久性
を向上させることが出来ると共に、施工誤差を少なくすることが出来る。
【0066】
従って、水密性能のバラツキを減少させることができる。
【0067】
また、前記傾斜屋根部20では、前記上側アスファルトルーフィング31と共に、軒先
側端縁部32aが、前記躯体側屋根仕上材28の延設介装部28aの下側に重ねあわせら
れて、重合された下側アスファルトルーフィング32が設けられていて、防水紙が二重と
なるように敷設されている。
【0068】
このため、前記上側アスファルトルーフィング31等から雨漏れが、生じても、前記下
側アスファルトルーフィング32によって、建物躯体内部への雨水の浸入が防止される。
【0069】
従って、更に、水密性能が良好である。
【0070】
しかも、万一、下側アスファルトルーフィング32の上面まで、浸入した雨水も、前記
下側アスファルトルーフィング32の軒先側端縁部32aの上面と、前記躯体側屋根仕上
材28の延設介装部28aの下面との間に添着された前記ゴム系スポンジ部材41によっ
て、堰き止められる。
【0071】
このため、下側アスファルトルーフィング32の軒先側端縁部32aの上面と、前記躯
体側屋根仕上材28の延設介装部28aの下面との間から、浸出して、建物躯体内部へ浸
入することが無い。
【0072】
しかも、この実施の形態では、前記延設介装部28aの上面に、前記上側アスファルト
ルーフィング31の軒先側端縁部31aが重ね合わされているだけで、重合部40が構成
されているので、これらの延設介装部28aの上面と、軒先側端縁部31aの下面との間
から、下側アスファルトルーフィング32の上面の雨水が排水される。
【0073】
このため、雨水は、前記躯体側屋根仕上材28の延設介装部28aを乗り越えて上面側
を通過して、前記流下開口44から、前記躯体側屋根仕上材28の外側面外側方を伝って
、前記立ち上がり面部内流路45から流下されて排水される。
【0074】
従って、前記下側アスファルトルーフィング32の上面を流下する雨水は、滞留するこ
となく、排水されて、更に、安定した水密性能を発揮することができる。
【0075】
また、この実施の形態の接続部30では、前記立ち上がり面部25に沿って設けられる
前記鉛直仕上部材27の上端部27aと、前記傾斜屋根部20の軒先側に設けられた屋根
仕上材10Aの前端折り返し部10aとの接合部が、前記陸屋根部21上方へ向けて軒先
方向へ突設させれていて、前記傾斜屋根部20の上面側に敷設された上側アスファルトル
ーフィング31の上側の流路から離間されている。
【0076】
しかも、前記上側アスファルトルーフィング31の上面側まで、浸入した雨水は、前記
躯体側屋根仕上材28の外側面外側方を伝って、前記流下開口44を介して、立ち上がり
面部25内に、円滑に流下される。
【0077】
このため、雨水が、直接、前記屋根仕上材10Aの前端折り返し部10aに形成された
接合部にかかり、劣化して、防水性を損なわせる虞を減少させることができる。
【0078】
また、前記鉛直仕上部材27の上端部27a近傍を、釘11,11を用いて固定する際
に、木桟42,43を介在させることにより、容易に、前記流下開口44を形成出来、該
流下開口44を介して、前記立ち上がり面部内流路内45に排水されるので、建物躯体内
部へ浸入する虞を、更に、減少させることができる。
【0079】
しかも、前記屋根仕上材10Aの前端折り返し部10aに形成された接合部から浸入し
た雨水も、直ちに、この流下開口44を介して、前記立ち上がり面部25の躯体側屋根仕
上材28と、前記鉛直屋根仕上部材27との間に形成された前記立ち上がり面部内流路4
5内に流下されて、建物外側に排水される。
【0080】
このため、更に、水密性が良好な複合屋根部が提供されて、例えば、図2及び図3に示
すように、隣地境界線L側の二階居室ユニット17の上部に、これらの傾斜屋根部20と
、陸屋根部21とを連結する接続部30を設けて、この陸屋根部21を落雪防止用の雪止
めとして用いることができる。
【0081】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この
実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる

【0082】
即ち、前記実施の形態では、複数の一階居室ユニット15…,16…及び二階居室ユニ
ット17を組み合わせて構成されるユニット建物14に用いられる複合屋根部18,19
を用いて説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、木造在来工法や、ツーバイフォー
工法等、他の工法を用いるプレバブ建物等の他の工法で施工される建物の複合屋根部に、
用いても良く、複合屋根部の形状、前記傾斜屋根部20の傾斜角度等が限定されるもので
はない。また、前記躯体側屋根仕上材28、上,下側アスファルトルーフィング31,3
2、及びゴム系スポンジ部材41等の構成部材の材質が、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態の複合屋根部の水密構造で、要部の構成を説明する傾斜屋根部と陸屋根部との接合部に浸入した雨水の流下を模式的に説明する図2中A−A線に沿った位置に相当する位置での立ち上がり面部上端近傍の拡大断面図である。
【図2】この発明の実施の形態の複合屋根部の水密構造で、建物の全体の構成を説明する斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態の複合屋根部の水密構造で、図2中B−B線に沿った位置での複合屋根部の断面図である。
【図4】実施の形態の複合屋根部の水密構造で、図2中A−A線に沿った位置での立ち上がり面部上端近傍の拡大断面図である。
【図5】実施の形態の複合屋根部の水密構造で、図2中C−C線に沿った位置での側壁部近傍の構成を説明する拡大断面図である。
【図6】実施の形態の複合屋根部の水密構造で、二階居室ユニットの上に載置される複合屋根部を説明する建物の上面図である。
【図7】実施の形態の複合屋根部の水密構造で、屋根仕上材を装着する前の状態で、要部の構成を説明する図2中A−A線に沿った位置に相当する位置での立ち上がり面部上端近傍の拡大断面図である。
【図8】実施の形態の複合屋根部の水密構造で、屋根仕上材を装着する前の状態で、要部の構成を説明する図2中C−C線に沿った位置に相当する位置での側壁部近傍の構成を説明する拡大断面図である。
【図9】実施の形態の複合屋根部の水密構造で、換気笠木部材を装着する前の側壁部の上部の構成を説明する縦断面図である。
【図10】従来例の複合屋根部で、全体の構成を説明する建物の斜視図である。
【図11】一般的な防水構造を、複合屋根の接続部に適用した一例を示し、図10中D−D線に沿った位置に相当する位置での断面図である。
【符号の説明】
【0084】
10,10A 屋根仕上材
27 鉛直仕上部材(屋根仕上材)
14 ユニット建物(建物)
18,19 複合屋根部
20 傾斜屋根部
21 陸屋根部
25 立ち上がり面部
28 躯体側屋根仕上材
28a 延設介装部
30 接続部
防水紙
31 上側アスファルトルーフィング
32 下側アスファルトルーフィング(躯体側防水紙)
31a,32a 軒先側端縁部
40 重合部
41 ゴム系スポンジ部材(水密部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部に、一定の屋根勾配を有して構成される傾斜屋根部と、該傾斜屋根部に隣接
配置されて、略水平に延設される陸屋根部とが設けられて、複数の屋根仕上材が、接合さ
れることにより、前記傾斜屋根部及び前記陸屋根部とを連続して覆う複合屋根部の水密構
造であって、
前記傾斜屋根部の軒先側と、前記陸屋根部の立ち上がり面部との接合部分では、該立ち
上がり面部に沿って設けられる前記屋根仕上材の内側に、略鉛直に立設される躯体側屋根
仕上材の上端部を、前記傾斜屋根部の傾斜角度に合わせて屈曲して、延設介装部を形成す
ると共に、該延設介装部を、前記傾斜屋根部の上面側に敷設された防水紙の軒先側端縁部
の下側に介装することにより、該防水紙と前記躯体側屋根仕上材とを、前記傾斜屋根部の
上面側で、重合させる重合部を設けたことを特徴とする複合屋根部の水密構造。
【請求項2】
前記傾斜屋根部の上面側に敷設された防水紙の下面側に、二重となるように、躯体側防
水紙を敷設すると共に、該躯体側防水紙の軒先側端縁部を、前記躯体側屋根仕上材の延設
介装部の下側に重ねて重合したことを特徴とする請求項1記載の複合屋根部の水密構造。
【請求項3】
前記躯体側防水紙の軒先側端縁部の上面と、前記躯体側屋根仕上材の延設介装部の下面
との間に、水密部材を添着したことを特徴とする請求項2記載の複合屋根部の水密構造。
【請求項4】
該立ち上がり面部に沿って設けられる前記屋根仕上材の上端部と、前記傾斜屋根部の軒
先側に設けられた屋根仕上材の軒先側端縁部との接合部を、前記陸屋根部上方へ向けて軒
先方向へ突設させて、前記傾斜屋根部の上面側に敷設された防水紙の上側の流路から離間
させると共に、該接合部と、前記延設介装部との間に、流下開口を形成して、前記傾斜屋
根部の流路と連通する立ち上がり面部内流路を、前記立ち上がり面部の躯体側屋根仕上材
と、前記屋根仕上材との間に形成することを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一
項記載の複合屋根部の水密構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−2360(P2006−2360A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177188(P2004−177188)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(591020696)株式会社北方住文化研究所 (8)
【Fターム(参考)】