説明

複合弁および導出弁

【課題】貯湯式給湯装置に好適であり、簡易に実現可能な複合弁を提供する。
【解決手段】ある態様の複合弁は、流体通路58と接続通路64が設けられたボディ50と、接続通路64を封止するように挿入される弁駆動体52を備える。接続通路64は、流体通路58との接続部から開口端部に向けて第1摺動部66、第2摺動部68が段階的に拡径するように設けられる。弁体82が弁座62に着座した状態にて弁体96が第1摺動部66に挿通されるとともに栓体98が第2摺動部68に挿通され、弁体82の全開状態にて弁体96が第1摺動部66に挿通される状態が維持され、弁体96が第1摺動部66から後退した状態にて栓体98が第2摺動部68に挿通される状態が維持されるよう、各弁体と各摺動部の位置関係が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合弁および導出弁に関し、特に貯湯式給湯装置に好適な複合弁および導出弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境にやさしく光熱費も比較的低く抑えられる等の理由から貯湯式給湯装置が普及しつつある。この貯湯式給湯装置は、例えば自然冷媒である二酸化炭素等を使ったヒートポンプシステムによって大気中の熱を汲み上げ、給湯に必要な熱エネルギーとして利用するものであり、熱源としてのヒートポンプユニットと貯湯タンクにて構成される。
【0003】
貯湯タンクの下部には給水管が接続され、上水道から低温水が供給される。この低温水は、ヒートポンプユニットに送られて熱交換がなされ、高温の湯となって貯湯タンクの上部に戻される。その結果、貯湯タンクには上部に高温の湯水(高温水)、中間部に中間温度の湯水(中温水)、下部に低温の湯水(低温水)が存在する温度成層が形成される。貯湯タンクの高温層には給湯管が接続され、下流側で給水管と合流する。給湯管と給水管との合流部には混合弁が設けられ、給湯管を流れる高温水と給水管を流れる低温水との混合比を調整して下流側に流す温水の温度調整を行う。
【0004】
ところで、このような給湯装置は、貯湯タンクの設置やメンテナンス時にタンク内の湯水がヒートポンプユニットに送出されないよう止水する必要がある。また、何らかの要因により貯湯タンク内の圧力が想定外に上昇した場合、その圧力を開放しなければならないい。さらに、例えば災害などによる断水時に貯湯タンク内の湯水を生活水として利用できるよう必要に応じて取り出せる構成とするのが好ましい。このような観点から、貯湯タンクとヒートポンプユニットとの間に止水弁、逃し弁および取水弁として機能可能な複合弁が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−286181号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この複合弁は、複数の筒状の弁体を同心状に配置し、各弁体をねじ機構により相対変位させることで止水弁および取水弁のいずれか一方を機能させるものであり、取り扱い容易に構成されている。また、止水弁の弁体が取水弁のボディを構成するなど、部品点数の削減と小型化を実現している。発明者は、このような複合弁の弁構造を改良することにより、止水弁と取水弁とをさらに簡素化でき、また、貯湯式給湯装置以外の用途にも適用可能であるとの考えに想到した。さらに、その弁構造を取水弁などの導出弁単体に適用することも可能であるとの考えに想到した。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、貯湯式給湯装置にも好適であり、簡易かつ低コストに実現可能な複合弁を提供することにある。本発明のもう一つの目的は、簡易かつ低コストに実現可能な導出弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の複合弁は、上流側と下流側とをつなぐ流体通路と、その流体通路に設けられた第1弁座と、その第1弁座の下流側にて流体通路に連設された接続通路を有するボディと、接続通路を封止するように先端側から挿入される弁駆動体と、弁駆動体を接続通路内で進退させるための調整機構と、を備える。接続通路は、流体通路との接続部から開口端部に向けて第1摺動部、第2摺動部が段階的に拡径するように設けられる。
【0009】
弁駆動体は、内部に排出通路が設けられた筒状の本体と、本体の先端部に設けられ、第1弁座に着脱することにより流体通路を開閉可能な第1弁体と、排出通路に設けられた第2弁座と、本体に内挿され、常には第2弁座に下流側から着座して排出通路を閉じ、その前後差圧が所定の開弁差圧よりも大きくなったときに第2弁座からリフトして排出通路を開放する第2弁体と、本体の第1弁体よりも後側に設けられ、第1摺動部に挿抜されることにより本体と第1摺動部との間に形成される間隙通路を開閉可能な第3弁体と、本体の第2弁座および第3弁体よりも後側に設けられて内外を連通させる連通孔と、本体の連通孔よりも後側に設けられ、第2摺動部に挿通されることにより本体と第2摺動部との間に形成される間隙通路を閉じる栓体と、を含む。
【0010】
第1弁体が第1弁座に着座した状態にて第3弁体が第1摺動部に挿通されるとともに栓体が第2摺動部に挿通され、第1弁体の全開状態にて第3弁体が第1摺動部に挿通される状態が維持され、第3弁体が第1摺動部から後退した状態にて栓体が第2摺動部に挿通される状態が維持されるよう、各弁体と各摺動部の位置関係が設定されている。
【0011】
この態様によると、第1弁体、第2弁体、第3弁体および栓体が、弁駆動体の本体に一体に設けられる。そして、接続通路に挿入された一つの弁駆動体を進退させるという簡易な操作により複数の弁を順次開閉させることができる。すなわち、弁駆動体を接続通路の最も奥方に変位させることで、第1弁体を閉弁させて流体通路を閉じることができる。その状態から弁駆動体を後退させ、第1弁体を全開位置に調整することで、流体通路を流れる作動流体への流動抵抗をほぼなくすことができ、ボディを管路の一部とすることができる。このとき、流体通路を流れる作動流体の圧力が所定の基準値を超えると、第2弁体が開弁して排出通路を開放する。それにより、作動流体の想定外の圧力上昇を防止または抑制することができる。必要に応じて弁駆動体をさらに後退させると、第3弁体が開弁するため、作動流体を外部に取り出すことができる。その際、栓体の閉弁状態を維持できるため、作動流体を本体の後端開口部から安定に取り出すことができる。
【0012】
本発明の別の態様は、導出弁である。この導出弁は、上流側と下流側とをつなぐ流体通路と、その流体通路の中間部に連設された接続通路を有するボディと、接続通路を封止するように先端側から挿入される弁駆動体と、弁駆動体を接続通路内で進退させるための調整機構と、を備える。接続通路は、流体通路との接続部から開口端部に向けて第1摺動部、第2摺動部が段階的に拡径するように設けられる。
【0013】
弁駆動体は、内部に排出通路が設けられ、底部が流体通路の一部を形成する有底筒状の本体と、本体の側部に設けられたシール部材からなり、第1摺動部に挿抜されることにより本体と第1摺動部との間に形成される間隙通路を開閉可能な弁体と、本体の弁体よりも後側の側部に設けられて内外を連通させる連通孔と、本体の連通孔よりも後側の側部に設けられたシール部材からなり、第2摺動部に挿通されることにより本体と第2摺動部との間に形成される間隙通路を閉じる栓体と、を含む。弁体が第1摺動部から後退した状態にて栓体が第2摺動部に挿通される状態が維持されるよう、弁体、栓体および各摺動部の位置関係が設定されることにより、流体通路を流れる作動流体を本体の後端開口部から導出可能に構成されている。
【0014】
この態様によると、接続通路に挿入された弁駆動体を進退させるという簡易な操作により導出弁を開閉させることができる。すなわち、弁駆動体を接続通路の奥方に位置させることで、導出弁の閉弁状態を維持することができる。一方、その状態から弁駆動体を後退させることで弁体を開弁させ、導出弁として機能させることができる。特に、導出弁をいわゆる軸シール構造としたため、その閉弁位置を厳密に調整する必要がなくなり、設計が容易になるといったメリットがある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貯湯式給湯装置にも好適であり、簡易かつ低コストに実現可能な複合弁や導出弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の複合弁が適用される貯湯式給湯装置の構成を表すシステム図である。
【図2】複合弁の構成を表す断面図である。
【図3】複合弁の動作を例示する断面図である。
【図4】複合弁の動作を例示する断面図である。
【図5】弁駆動体周辺を示す側面図である。
【図6】変形例にかかる複合弁の構成を表す断面図である。
【図7】変形例にかかる取水弁の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態の複合弁が適用される貯湯式給湯装置の構成を表すシステム図である。本実施形態の給湯装置は、貯湯ユニット10とヒートポンプユニット12を備える。貯湯ユニット10は、貯湯タンク14のほか、湯水を循環または供給するための配管、湯水の流れを制御する制御弁、湯水の温度や流量を検出するためのセンサ等を備える。
【0018】
上水道から供給される低温水は、給水管16によって貯湯ユニット10に供給される。給水管16は、貯湯ユニット10内にて分岐し、その一方である第1給水管18が貯湯タンク14の下部に接続されている。貯湯タンク14とヒートポンプユニット12との間には沸上循環回路が形成されている。すなわち、貯湯タンク14の下部に接続された導出管20がヒートポンプユニット12に接続され、ヒートポンプユニット12に接続された戻り管22が貯湯タンク14の上部に接続されている。
【0019】
このような構成により、貯湯タンク14には上部に高温水、中間部に中温水、下部に低温水が存在する温度成層が形成される。貯湯タンク14の下部に溜まった冷温水は、ヒートポンプユニット12にて熱交換されて高温水となって貯湯タンク14に戻される。導出管20には、このような沸上循環回路における湯水の循環を促進するためのポンプ24が設けられている。
【0020】
一方、貯湯タンク14の上部には、高温水を導出する給湯管26が接続されている。給水管16から分岐した他方である第2給水管28と給湯管26とが下流側で接続され、それらの合流部において高温水と冷温水とが混合される。そして、その混合によって適温となった湯水が、配管30を介して浴槽、台所その他の給湯設備に供給される。給湯管26と第2給水管28との接続点には制御弁ユニット32が設けられている。
【0021】
制御弁ユニット32は、共用のボディに混合弁34、第1逆止弁36および第2逆止弁38を一体に組み付けた複合弁である。混合弁34は、給湯管26を介して供給された高温水と、第2給水管28を介して供給された低温水との混合比を調整し、配管30に適温の湯水を導出する。配管30には上流側から温度センサ40、流量センサ42が設けられている。図示しない制御部は、温度センサ40の温度を取得し、使用者が図示しないリモートコントローラにて設定した給湯温度となるよう混合弁34の開度を制御する。一方、第1逆止弁36は、給湯が停止されたときに合流部の湯水が第2給水管28に逆流することを防止する。第2逆止弁38は、給湯が停止されたときに合流部の湯水が給湯管26に逆流することを防止する。
【0022】
一方、ヒートポンプユニット12は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷凍サイクルを備える。この冷凍サイクルは圧縮機、熱交換器、膨張弁、蒸発器を含む冷媒循環回路を備えるが、それらの構成および動作については公知であるため、その詳細な説明を省略する。上述の沸上循環回路を流れる低温水は、その熱交換器を経る際に沸き上げられて高温水となる。なお、本実施形態では給湯装置の熱源ユニットとしてヒートポンプを採用しているが、電熱ヒータ等の熱源を採用することもできる。
【0023】
そして、本実施形態の給湯装置は、導出管20におけるポンプ24の上流側に複数の弁機能を備えた複合弁46が設けられている。複合弁46は、貯湯タンク14からヒートポンプユニット12への湯水の導出を遮断可能な止水弁、貯湯タンク14の内圧が基準値を超えたときに湯水を外部に開放する逃し弁、および貯湯タンク14の湯水を手動で外部に取り出すための取水弁として機能可能に構成される。
【0024】
すなわち、貯湯タンク14の設置やメンテナンス時に複合弁46を止水弁として機能させることで、タンク内の湯水がヒートポンプユニット12に送出されないよう止水することができる。また、何らかの要因により貯湯タンク14内の圧力が想定外に上昇した場合、複合弁46が逃し弁と機能することによりその圧力を開放し、貯湯タンク14等の損傷を防止することができる。さらに、例えば災害などによる断水時に複合弁46を取水弁として機能させることで、貯湯タンク14内の湯水を生活水として利用できるようになる。
【0025】
次に、複合弁46の具体的構成について説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に部材の位置関係を表現することがある。
図2は、複合弁46の構成を表す断面図である。
複合弁46は、樹脂材を一体成形して得られたボディ50を有し、そのボディ50に弁駆動体52を脱着可能に組み付けて構成されている。ボディ50の一端には上流側から湯水を導入する導入ポート54が設けられ、他端には下流側へ湯水を導出する導出ポート56が設けられている。導入ポート54と導出ポート56とをつなぐ流体通路58の中間には弁孔60が設けられ、その下流側開口端部にテーパ状の弁座62(「第1弁座」に該当する)が設けられている。
【0026】
流体通路58は、その弁孔60を境とする上流側と下流側の軸線が互いに平行にずれるように形成されている。ボディ50の側部には、弁駆動体52が接続される接続通路64が設けられている。接続通路64は、弁座62の下流側にて流体通路58に連設されており、流体通路58との接続部からその開口端部に向けて第1摺動部66、第2摺動部68、第3摺動部70が段階的に拡径する段付円筒状をなしている。第1摺動部66、第2摺動部68および第3摺動部70は、弁駆動体52を摺動可能に支持する。第3摺動部70は、その内周面に雌ねじ部が形成されており、弁駆動体52に形成された雄ねじ部と協働して弁駆動体52を進退させる調整機構として機能する。
【0027】
弁駆動体52は、樹脂材を一体成形して得られた本体80を有する。本体80は、先端側から後端側に向けて概ね段階的に拡径する段付円筒状をなす。本体80の先端部外周面にはOリングからなる弁体82(「第1弁体」に該当する)が嵌着されている。弁体82は、弁座62に着脱することにより流体通路58を開閉する止水弁として機能する。なお、本実施形態では弁体82をOリングにて構成しているが、可撓性を有する他のシール部材にて構成してもよい。本体80を軸線方向に延びる内部通路は、流体通路58を流れる湯水を外部に排出するための排出通路84となっている。
【0028】
本体80の先端部近傍の内方、つまり排出通路84の上流部には小径の弁孔86が設けられ、その下流側開口端部により弁座88(「第2弁座」に該当する)が形成されている。排出通路84における弁孔86の下流側には、弁体90(「第2弁体」に該当する)が摺動可能に配設されている。弁体90は、樹脂材からなる支持体89の端面中央に可撓性部材91(本実施形態ではゴム)を圧入等により支持して構成され、その支持体89が本体80に摺動可能に内挿されている。支持体89の外周面には軸線に平行な連通溝93が複数設けられ、本体80の内周面との間に湯水の通路を形成している。弁体90は、弁座88に着脱することにより排出通路84を開閉する逃し弁として機能する。
【0029】
弁体90の下流側には、円筒状のばね受け92が固定されている。弁体90とばね受け92との間には、弁体90を閉弁方向に付勢するスプリング94が介装されている。すなわち、弁体90は、スプリング94の付勢力により常には弁座88に着座して排出通路84を閉じ、その前後差圧が予め設定した開弁差圧よりも大きくなったとき、つまり流体通路58を流れる湯水の圧力がスプリング94のばね荷重により設定された基準圧力よりも高くなったときに弁座88からリフトして排出通路84を開放する。本実施形態においては、本体80の内周面に雌ねじ部が形成される一方、ばね受け92の外周面に雄ねじ部が形成されており、本体80の後端開口部から専用の工具を挿入してばね受け92の螺入量を調整することにより、スプリング94のばね荷重を調整できるように構成されている。
【0030】
本体80の弁体82よりも後側の外周面にはOリングからなる弁体96(「第3弁体」に該当する)が嵌着され、さらに後側の外周面にはOリングからなる栓体98が嵌着されている。一方、本体80の弁体96と栓体98との間には、内外を連通させる連通孔100が設けられている。連通孔100は、弁孔86よりも後側に位置する。弁体96は、第1摺動部66に挿抜されることにより本体80と第1摺動部66との間に形成される間隙通路を開閉する。一方、栓体98は、第2摺動部68に挿通されることにより本体80と第2摺動部68との間に形成される間隙通路を閉じる。弁駆動体52を接続通路64から取り外す場合などを除く複合弁46の通常の使用状態においては、栓体98は第2摺動部68に挿通された状態を保つため、その間隙通路は閉じられた状態を維持する。
【0031】
ただし、弁体96と栓体98との間隔が第2摺動部68の長さよりも小さく設定されているため、弁体96が第1摺動部66から第2摺動部68側に後退しても、栓体98が第2摺動部68に挿通された状態を維持できるようになっている。このような状態において、本体80と第1摺動部66との間隙通路を通過した湯水は、連通孔100を介して本体80内に流入し、その後端開口部から排出される。すなわち、弁体96は、必要に応じて湯水を外部に取り出すための取水弁として機能する。
【0032】
本体80の栓体98よりも後側には半径方向外向きに延出するフランジ部74が設けられ、その外周面には雄ねじ部が形成されている。この雄ねじ部を第3摺動部70の雌ねじ部に螺合させ、本体80の奥方への螺入量を調整することにより、接続通路64における各弁体の位置調整を行うことができる。フランジ部74の後方には一対の係止部102が後方に突設されている。ボディ50には横方向に貫通する一対の貫通孔が設けられており、U字状の係止ピン104が脱着可能に取り付けられる(図5参照)。そして、係止ピン104が一対の係止部102またはフランジ部74を後方から係止することで、弁駆動体52の接続通路64からの脱落を防止する。
【0033】
図3および図4は、複合弁46の動作を例示する断面図である。図3は複合弁46を止水弁として機能させた状態を示し、図4は複合弁46を取水弁として機能させた状態を示している。なお、既に説明した図2は、複合弁46を特に機能させない通常状態を示している。図5は、弁駆動体52周辺を示す側面図である。図5(A)は図2のA方向矢視図であり、図5(B)は図4のA方向矢視図である。
【0034】
通常状態においては、図2に示すように、止水弁による圧力損失が実質的に生じないよう弁体82が全開位置に調整される。本実施形態では図5(A)にも示すように、弁駆動体52の係止部102が係止ピン104によって係止される位置を止水弁の全開位置に設定している。このとき、弁体96が第1摺動部66に位置して取水弁を閉じ、栓体98が第2摺動部68に位置して間隙通路を閉じる状態が維持される。給湯装置の作動時に何らかの要因で貯湯タンク14内の圧力が基準値を超えて上昇した場合、逃し弁の前後差圧がその開弁差圧を上回るため、弁体90が弁座88から離脱し、逃し弁が開放される。その結果、貯湯タンク14が急激な圧力上昇により破損に到るといった事態を回避することができる。
【0035】
一方、複合弁46を止水弁として機能させる場合、図2の状態から弁駆動体52を手動にて回転させながら接続通路64の奥方に螺入する。その結果、図3に示すように、弁体82が弁座62に着座して止水弁が閉じる。この状態では、弁体96が第1摺動部66に挿通されて取水弁が閉じ、栓体98が第2摺動部68に挿通されて間隙通路も閉じた状態となる。
【0036】
また、複合弁46を取水弁として機能させる場合、図2の状態から弁駆動体52を手動にて90度回転させ、係止部102と係止ピン104との係合状態を解除して後退させる。それにより、図4に示すように、弁体96が第1摺動部66から離脱し、取水弁が開かれる。本実施形態では図5(B)にも示すように、弁駆動体52のフランジ部74が係止ピン104によって係止される位置を取水弁の全開位置に設定している。なお、このように取水弁を開弁させる際には、弁駆動体52の後端開口部にホースの先端を事前に接続しておいてもよい。この状態では、取水弁は開かれるものの、栓体98が第2摺動部68に位置して後方の間隙通路を閉じる状態が維持される。その結果、上流側から流入した湯水は、連通孔100から本体80の内方に導かれ、その後端開口部から排出される。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0038】
上記実施形態においては、図5等に示したように、弁駆動体52の位置決めおよび脱落防止のために、本体80に設けたフランジ部74または係止部102を後方の係止ピン104にて係止する構造を採用した。変形例においては、これとは異なる構造を採用してもよい。図6は、変形例にかかる複合弁の構成を表す断面図である。なお、同図において上記実施形態とほぼ同様の構成については同一の符号を付している。
【0039】
本変形例の複合弁246は、弁駆動体252のフランジ部74の後方に係止部102は設けられていない。一方、接続通路264の第3摺動部270には、上記実施形態よりも長い雌ねじ部が設けられている。そして、通常状態においても取水時においても、フランジ部74の雄ねじ部が第3摺動部270の雌ねじ部に螺合した状態で軸線方向への変位が規制されるように構成されている。また、フランジ部74を前後で係止する位置決めピン204、係止ピン104が脱着可能に取り付けられる。
【0040】
図6に示される通常状態においては、フランジ部74の前方に位置決めピン204が取り付けられる。これにより、弁駆動体252を手動で螺入していき、フランジ部74が位置決めピン204に係止されたときに止水弁が全開位置にあると認識でき、その位置に弁駆動体252を固定することができる。一方、取水時には、弁駆動体252を回転させながら後退させ、フランジ部74が係止ピン104に係止されたときに取水弁が全開位置にあると認識でき、その位置に弁駆動体252を固定することができる。なお、止水弁を機能させる場合には、位置決めピン204を取り外し、弁駆動体252を最も奥方まで螺入させればよい。
【0041】
上記実施形態においては述べなかったが、止水弁についても軸シール構造としてもよい。すなわち、上記実施形態では図3に示したように、弁体82が弁座62に対して軸線方向に着脱して止水弁を開閉する構造としたが、弁体82を弁孔60に摺動可能に挿抜される構造とし、その挿抜により止水弁を開閉する構造としてもよい。ただし、その場合には弁孔60の長さを十分に確保するのが好ましい。
【0042】
上記実施形態においては、止水弁、逃し弁および取水弁の機能を有する複合弁について説明した。変形例においては、取水弁(「導出弁」に該当する)に特化した制御弁として構成してもよい。図7は、変形例にかかる取水弁の構成を表す断面図である。なお、同図において上記実施形態とほぼ同様の構成については同一の符号を付している。
【0043】
本変形例の取水弁346は、図2に示した複合弁46から止水弁および逃し弁を除いたような構成を有する。すなわち、弁駆動体352の本体380は有底段付円筒状をなし、その底部を先端にして接続通路364に挿入される。本体380の先端部外周面にはOリングからなる弁体96が嵌着され、その後側の外周面にはOリングからなる栓体98が嵌着されている。本体80の弁体96と栓体98との間には、内外を連通させる連通孔100が設けられている。弁体96は、第1摺動部66に挿抜されることにより本体380と第1摺動部66との間に形成される間隙通路を開閉する。一方、栓体98は、第2摺動部68に挿通されることにより本体380と第2摺動部68との間に形成される間隙通路を閉じる。
【0044】
ただし、弁体96と栓体98との間隔が第2摺動部68の長さよりも小さく設定されているため、弁体96が第1摺動部66から第2摺動部68側に後退しても、栓体98が第2摺動部68に挿通された状態を維持することができる。このような状態において、本体380と第1摺動部66との間隙通路を通過した湯水は、連通孔100を介して本体380内に流入し、その後端開口部から排出される。
【0045】
本体380の栓体98よりも後側にはフランジ部374が設けられ、その後方には一対の係止部102が後方に突設されている。ただし、フランジ部374と第3摺動部370との間にねじ機構は設けられていない。フランジ部374は、第3摺動部370に摺動可能に支持されている。
【0046】
通常状態においては、図7に示すように、弁駆動体352による圧力損失が実質的に生じないよう弁体96の閉弁位置が設定される。本変形例では図示のように、弁駆動体352の係止部102が係止ピン104によって係止される位置を取水弁346の閉弁位置に設定している。すなわち、このとき弁体96が第1摺動部66に位置して取水弁346を閉じ、栓体98が第2摺動部68に位置して間隙通路を閉じる状態が維持される。
【0047】
一方、取水弁346を機能させる場合、図示の状態から弁駆動体352を手動にて90度回転させ、係止部102と係止ピン104との係合状態を解除して後退させる。それにより、弁体96が第1摺動部66から離脱し、取水弁346が開かれる。本変形例では弁駆動体352のフランジ部374が係止ピン104によって係止される位置を取水弁346の全開位置に設定している。この状態では、取水弁346は開かれるものの、栓体98が第2摺動部68に位置して後方の間隙通路を閉じる状態が維持される。その結果、上流側から流入した湯水は、連通孔100から本体380の内方に導かれ、その後端開口部から排出される。本変形例によれば、取水弁をいわゆる軸シール構造としたため、その閉弁位置を厳密に調整する必要がなくなり、設計が容易になるといったメリットがある。
【0048】
上記実施形態および変形例においては、本発明の複合弁および導出弁を作動流体として湯水の流れを調整する制御弁として構成し、貯湯式給湯装置に適用する例を示したが、即時式給湯装置の必要箇所に適用してもよい。また、湯水以外を作動流体とし、その作動流体の遮断、開放、取り出し等が必要となる流体循環装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 貯湯ユニット、 12 ヒートポンプユニット、 14 貯湯タンク、 32 制御弁ユニット、 34 混合弁、 36 第1逆止弁、 38 第2逆止弁、 46 複合弁、 50 ボディ、 52 弁駆動体、 58 流体通路、 62 弁座、 64 接続通路、 66 第1摺動部、 68 第2摺動部、 70 第3摺動部、 80 本体、 82 弁体、 84 排出通路、 86 弁孔、 88 弁座、 90,96 弁体、98 栓体、 100 連通孔、 246 複合弁、 252 弁駆動体、 264 接続通路、 346 取水弁、 352 弁駆動体、 364 接続通路、 370 第3摺動部、 374 フランジ部、 380 本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側と下流側とをつなぐ流体通路と、その流体通路に設けられた第1弁座と、その第1弁座の下流側にて前記流体通路に連設された接続通路を有するボディと、
前記接続通路を封止するように先端側から挿入される弁駆動体と、
前記弁駆動体を前記接続通路内で進退させるための調整機構と、
を備え、
前記接続通路は、前記流体通路との接続部から開口端部に向けて第1摺動部、第2摺動部が段階的に拡径するように設けられ、
前記弁駆動体は、
内部に排出通路が設けられた筒状の本体と、
前記本体の先端部に設けられ、前記第1弁座に着脱することにより前記流体通路を開閉可能な第1弁体と、
前記排出通路に設けられた第2弁座と、
前記本体に内挿され、常には前記第2弁座に下流側から着座して前記排出通路を閉じ、その前後差圧が所定の開弁差圧よりも大きくなったときに前記第2弁座からリフトして前記排出通路を開放する第2弁体と、
前記本体の前記第1弁体よりも後側に設けられ、前記第1摺動部に挿抜されることにより前記本体と前記第1摺動部との間に形成される間隙通路を開閉可能な第3弁体と、
前記本体の前記第2弁座および前記第3弁体よりも後側に設けられて内外を連通させる連通孔と、
前記本体の前記連通孔よりも後側に設けられ、前記第2摺動部に挿通されることにより前記本体と前記第2摺動部との間に形成される間隙通路を閉じる栓体と、
を含み、
前記第1弁体が前記第1弁座に着座した状態にて前記第3弁体が前記第1摺動部に挿通されるとともに前記栓体が前記第2摺動部に挿通され、前記第1弁体の全開状態にて前記第3弁体が前記第1摺動部に挿通される状態が維持され、前記第3弁体が前記第1摺動部から後退した状態にて前記栓体が前記第2摺動部に挿通される状態が維持されるよう、各弁体と各摺動部の位置関係が設定されていることを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記第1弁体、前記第3弁体および前記栓体が、前記本体の外周面に嵌着された可撓性を有するシール部材からなることを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
【請求項3】
貯湯式給湯装置の沸上循環回路における貯湯タンクと熱源ユニットとの間に設けられ、前記貯湯タンクから前記熱源ユニットへの湯水の導出を遮断可能な止水弁、前記貯湯タンクの内圧が基準値を超えたときに湯水を外部に開放する逃し弁、および前記貯湯タンクの湯水を外部に取り出すための取水弁として機能可能に構成され、
前記第1弁体と前記第1弁座により前記止水弁が構成され、
前記第2弁体と前記第2弁座により前記逃し弁が構成され、
前記第3弁体と前記第1摺動部により前記取水弁が構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の複合弁。
【請求項4】
上流側と下流側とをつなぐ流体通路と、その流体通路の中間部に連設された接続通路を有するボディと、
前記接続通路を封止するように先端側から挿入される弁駆動体と、
前記弁駆動体を前記接続通路内で進退させるための調整機構と、
を備え、
前記接続通路は、前記流体通路との接続部から開口端部に向けて第1摺動部、第2摺動部が段階的に拡径するように設けられ、
前記弁駆動体は、
内部に排出通路が設けられ、底部が前記流体通路の一部を形成する有底筒状の本体と、
前記本体の側部に設けられたシール部材からなり、前記第1摺動部に挿抜されることにより前記本体と前記第1摺動部との間に形成される間隙通路を開閉可能な弁体と、
前記本体の前記弁体よりも後側の側部に設けられて内外を連通させる連通孔と、
前記本体の前記連通孔よりも後側の側部に設けられたシール部材からなり、前記第2摺動部に挿通されることにより前記本体と前記第2摺動部との間に形成される間隙通路を閉じる栓体と、
を含み、
前記弁体が前記第1摺動部から後退した状態にて前記栓体が前記第2摺動部に挿通される状態が維持されるよう、前記弁体、前記栓体および各摺動部の位置関係が設定されることにより、前記流体通路を流れる作動流体を前記本体の後端開口部から導出可能に構成されていることを特徴とする導出弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87898(P2013−87898A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230370(P2011−230370)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】