複合成形品の製造方法
【課題】第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造する。
【解決手段】本発明は、表皮材60(第1成形品)と基材70(第2成形品)とを一体成形してなる車両用内装材50の製造方法であって、凹状をなす第1成形面21と凸状をなす第2成形面31との間で表皮材60を成形する第1成形工程と、第1成形面21に保持された表皮材60と第3成形面41との間で基材70を発泡成形する第2成形工程とを備え、表皮材60は、第1成形面21に沿って成形される本体部61と、本体部61の外周に設けられた外壁部61Aを外周側に折り返した形態をなし、外壁部61Aとの間で第1成形面21の開口縁部23を挟み付ける突起62Bとを備えて構成されるところに特徴を有する。
【解決手段】本発明は、表皮材60(第1成形品)と基材70(第2成形品)とを一体成形してなる車両用内装材50の製造方法であって、凹状をなす第1成形面21と凸状をなす第2成形面31との間で表皮材60を成形する第1成形工程と、第1成形面21に保持された表皮材60と第3成形面41との間で基材70を発泡成形する第2成形工程とを備え、表皮材60は、第1成形面21に沿って成形される本体部61と、本体部61の外周に設けられた外壁部61Aを外周側に折り返した形態をなし、外壁部61Aとの間で第1成形面21の開口縁部23を挟み付ける突起62Bとを備えて構成されるところに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品の製造方法として、下記特許文献1ないし6に記載の製造方法が知られている。これらのうち特許文献2ないし6では、第1成形型によって第1成形品を成形し、この第1成形品を第1成形型から離型した後、第1成形品を第2成形型に保持した状態で第2成形品となる溶融樹脂を射出成形することによって複合成形品を製造する方法が開示されている。これらの製造方法では、第1成形型と第2成形型とを別々に製造する必要がある。
【0003】
一方、第1成形型の一部と第2成形型の一部とを共用化した技術として、特許文献1に記載の製造方法が知られている。この製造方法によると、まず、第1成形工程では、凹状をなす第1成形面を有する第1成形型と凸状をなす第2成形面を有する第2成形型とを型閉じし、両成形面の間に形成される第1キャビティに樹脂を射出して第1成形品を成形し、第1成形品を第1成形面に貼り付き状態で保持されて両成形型を型開きする。次に、第2成形工程では、第2成形型を、凸状をなす第3成形面を有する第3成形型に交換し、両成形型を型閉じする。このとき、第1成形面に貼り付いた状態で保持されている第1成形品と第3成形面との間には第2キャビティが形成され、この第2キャビティに樹脂を射出して第2成形品を発泡成形することにより第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品を製造する。
【0004】
この製造方法によると、第1成形品に対して第2成形品を射出しているため、特に発泡成形の場合、発泡成形品である第2成形品に凹みなどを生じさせることがなく、複合成形品を製造することができる。これは、発泡成形品である第2成形品に対して第1成形品を射出した場合には、予め発泡成形されている第2成形品に樹脂の射出圧力や熱が加わることによって発泡セルの破壊が生じ、第2成形品の表面が凹んでしまうためであり、このような不具合を未然に回避することができる。このため、発泡成形品である第2成形品は、第1成形品を成形した後に発泡成形することが望ましく、第1成形品を第1成形面に保持して第1成形型と第2成形型を型開きしている。
【特許文献1】特開2000−52377号公報
【特許文献2】特開平7−195429号公報
【特許文献3】特開2001−150483号公報
【特許文献4】特開2001−47465号公報
【特許文献5】特開平9−332336号公報
【特許文献6】特開平6−6127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の製造方法では、第2成形面が凸状をなしているため、第1成形型と第2成形型を型開きする際に、樹脂が収縮することで第1成形品が第2成形面側に貼り付きやすくなり、図11に示すように、本体部1の外周に設けられた外壁部2が第1成形面3から離間する。この状態のまま、第2成形型4を第3成形型5に交換し、第1成形型6と第3成形型5を型閉じすると、図12に示すように、第1成形品1の一部がシワ7になったりあるいは破れが発生したりする。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品の製造方法であって、凹状をなす第1成形面と凸状をなす第2成形面との間で第1成形品を成形する第1成形工程と、第1成形面に保持された第1成形品と第3成形面との間で第2成形品を発泡成形する第2成形工程とを備え、第1成形品は、第1成形面に沿って成形される本体部と、本体部の外周に設けられた外壁部を外周側に折り返した形態をなし、外壁部との間で第1成形面の開口縁部を挟み付ける突起とを備えて構成されるところに特徴を有する。
【0008】
このようにすると、第1成形工程で第1成形品を成形し、第1成形面と第2成形面とを離間させる際に、第1成形面の開口縁部が第1成形品の突起と外壁部との間で挟み付けられる状態となり、第1成形面に第1成形品が保持される。そして、第2成形工程では第1成形面に保持された第1成形品と第3成形型の第3成形面との間で第2成形品を発泡成形することにより複合成形品を製造する。したがって、第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造することができる。また、発泡剤の発泡により複合成形品の厚みを確保することができる。したがって、第2成形品の材料量を低減でき、複合成形品の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図10の図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の車両用内装材(本発明の「複合成形品」の一例)50を成形する成形装置10の一例であって、キャビ型11とコア型12が水平方向に移動可能に設けられている。キャビ型11の上下方向中央には、コア型12型側に突出する態様で第1成形型20が設けられている。この第1成形型20には、凹状をなす第1成形面21が設けられている。一方、コア型12には、上から順番に第2成形型30と第3成形型40とが備えられ、第2成形型30と第3成形型40とは、それぞれ上下方向に移動可能に設けられている。また、第2成形型30には、凸状をなす第2成形面31が形成され、第3成形型40には、第2成形面31よりやや小さめで凸状をなす第3成形面41が形成されている。
【0011】
本実施形態の車両用内装材50は、表皮材(本発明の「第1成形品」の一例)60と基材(本発明の「第2成形品」の一例)70とを一体成形してなる複合成形品である。なお、表皮材60は、例えばTPO樹脂(熱可塑性オレフィン樹脂)などの熱可塑性樹脂である第1の樹脂によって構成されている。また、基材70は、例えばポリプロピレンに発泡剤を添加した第2の樹脂によって発泡成形されている。発泡剤としては、例えば、化学発泡剤あるいは物理発泡剤を使用することができる。化学発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等を使用することができる。物理発泡剤としては、例えば、炭酸ガスや窒素ガス等を使用することができる。
【0012】
第1成形型20は、図1に示すように、2種類の射出装置22A,22Bを備えている。第1射出装置22Aは、表皮材60を構成する第1の樹脂を射出する装置であり、第1成形面21と第2成形面31との間に形成される第1キャビティC1内に溶融した第1の樹脂を供給して表皮材60を成形する。第2射出装置22Bは、基材70を構成する第2の樹脂を射出する装置であり、第1成形面21に貼り付き状態で保持された表皮材60と第3成形面41との間に形成される第2キャビティC2内に溶融した第2の樹脂を供給して基材70を成形する。
【0013】
次に、車両用内装材50の製造方法について説明する。まず、第1成形工程では、図2に示すように、第1成形型20と第2成形型30とを水平方向に並べて配置する。両成形型20,30を水平方向に移動させて型閉じすると、図3に示すように、第1成形面21と第2成形面31との間に第1キャビティC1が形成される。
【0014】
ここで、第1キャビティC1によって成形される表皮材60は、第1成形面21に沿って成形される本体部61と、本体部61の外周に設けられた外壁部61Aを外周側に折り返した形態をなし、外壁部61Aとの間で第1成形面21の開口縁部23を挟み付ける折り返し部62とからなる。さらに、折り返し部62は、外壁部61Aの外縁から外周側へ張り出す張り出し部62Aと、張り出し部62Aの外縁から水平方向に突出する突起62Bとからなる。つまり、第1キャビティC1は、表皮材60となる本体部61を成形する第1成形部C11と、折り返し部62を成形する第2成形部C12とからなる。
【0015】
また、突起62Bの内側面は、張り出し部62Aから水平方向に延びる垂直状に切り立った面とされているため、第1成形面21の開口縁部23に対して確実に引っ掛かるようになっている。なお、突起62Bの内側面は、外壁部61A側に向けてオーバーハング状に形成することにより、第1成形面21の開口縁部23に対する引っ掛かりをさらに強くしてもよい。一方、突起62Bの外側面は、外周側へ向けて緩やかな傾斜面とされているため、表皮材60を第1成形型20から脱型する場合に、突起62Bを脱型しやすくなっている。
【0016】
このような第1キャビティC1に表皮材60を構成する溶融した第1の樹脂を供給すると、図4に示すように、第1キャビティC1に第1の樹脂が充填され、冷却することによって表皮材60が成形される。このとき、第1の樹脂が収縮することで外壁部61Aが第2成形面31側に貼り付こうとするものの、第1成形面21の開口縁部23が突起62Bと外壁部61Aとの間で挟み付けられているため、外壁部61Aが第2成形面31側に貼り付くことが規制される。したがって、図5に示すように、両成形型20,30を型開きしても、外壁部61Aが第1成形面21に貼り付いた状態で保持される。
【0017】
次に、第2成形工程では、図6に示すように、第2成形型30と第3成形型40とをともに上方へ移動させることにより、第1成形型20と第3成形型40とを水平方向に並べて配置する。両成形型20,40を水平方向に移動させて型閉じすると、図7に示すように、第1成形面21に保持された表皮材60と第3成形面41との間に第2キャビティC2が形成される。
【0018】
第2キャビティC2に基材70を構成する発泡剤が添加された溶融した第2の樹脂を供給すると、図8に示すように、第2キャビティC2に第2の樹脂が充填される。この後、両成形型20,40を所定距離寸開させて第2の樹脂を発泡させることにより基材70を発泡成形する。そして、両成形型20,40を型開きしつつエアブローなどで表皮材60を脱型すると、図9に示すように、表皮材60と基材70とが一体に成形される。このとき、折り返し部62は、基材70の外縁よりも外周側に張り出しているため、突起62Bを除去するとともに折り返し部62を基材70の裏面に折り返すことで端部処理を行い、図10に示す車両用内装材50が完成する。
【0019】
以上のように本実施形態では表皮材60の外壁部61Aを外周側に折り返して折り返し部62を設けたから、第1成形工程で表皮材60を成形した際に、第1成形面21の開口縁部23が突起62Bと外壁部61Aとの間で挟み付けられ、外壁部61Aが第2成形面31側に貼り付いて第1成形面21から離間することを防ぐことができる。したがって、第2成形工程で基材70を成形した際に、表皮材60にシワが発生したり、あるいは破れたりすることを防ぐことができる。よって、車両用内装材50の製品品質を向上させることができる。このようにして製造される車両用内装材は、例えばドアトリム、インストルメントパネル、シートバックボード、パーティションボード、コンソールボックス、ピラーガーニッシュ、クォータトリム等に適用することができる。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では複合成形品として車両用内装材50に適用しているものの、本発明によると、車両用内装材50以外の家具、住宅用品、日用品等の成形品に適用してもよい。
【0021】
(2)本実施形態ではキャビ型11とコア型12が水平方向に移動する成形装置10を例示しているものの、本発明によると、キャビ型11とコア型12が上下方向に移動する成形装置としてもよい。
【0022】
(3)本実施形態では突起62Bが張り出し部62Aを介して外壁部61Aに連結されているものの、本発明によると、必ずしも張り出し部62Aを設ける必要はなく、外壁部61Aに突起62Bを直接連結してもよい。その場合には、突起62Bを例えば円弧状に折り返された形状としてもよい。
【0023】
(4)本実施形態では、固定された第1成形型20側で表皮材60を保持していたが、その逆として第1成形型20を可動可能とし、第2成形型30,40を固定した成形装置としてもよい。
【0024】
(5)本実施形態では、第2成形型30と第3成形型40とは別体で構成されているが、一体で構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態における成形装置の一例を示した断面図
【図2】第1成形型と第2成形型を型閉じする前の状態を示した断面図
【図3】第1成形型と第2成形型を型閉じして第1キャビティが形成された状態を示した断面図
【図4】第1キャビティに溶融した第1の樹脂を供給して表皮材を成形した状態を示した断面図
【図5】表皮材を第1成形面に貼り付けたまま第1成形型と第2成形型を型開きした状態を示した断面図
【図6】第1成形型と第3成形型を型閉じする前の状態を示した断面図
【図7】第1成形型と第3成形型を型閉じして第2キャビティが形成された状態を示した断面図
【図8】第2キャビティに溶融した第2の樹脂を供給して基材を成形した状態を示した断面図
【図9】第1成形型と第3成形型を型開きして表皮材と基材とが一体成形されてなる複合成形品を脱型した状態を示した断面図
【図10】表皮材と基材とが一体成形されてなる複合成形品の端部処理をして車両用内装材が完成した状態を示した断面図
【図11】従来において外壁部が第1成形面から離間した状態を示した断面図
【図12】従来において第1成形品にシワが発生した状態で第2成形品が発泡成形された状態を示した断面図
【符号の説明】
【0026】
21…第1成形面
23…第1成形面の開口縁部
31…第2成形面
41…第3成形面
50…車両用内装材(複合成形品)
60…表皮材(第1成形品)
61…本体部
61A…外壁部
62B…突起
70…基材(第2成形品)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品の製造方法として、下記特許文献1ないし6に記載の製造方法が知られている。これらのうち特許文献2ないし6では、第1成形型によって第1成形品を成形し、この第1成形品を第1成形型から離型した後、第1成形品を第2成形型に保持した状態で第2成形品となる溶融樹脂を射出成形することによって複合成形品を製造する方法が開示されている。これらの製造方法では、第1成形型と第2成形型とを別々に製造する必要がある。
【0003】
一方、第1成形型の一部と第2成形型の一部とを共用化した技術として、特許文献1に記載の製造方法が知られている。この製造方法によると、まず、第1成形工程では、凹状をなす第1成形面を有する第1成形型と凸状をなす第2成形面を有する第2成形型とを型閉じし、両成形面の間に形成される第1キャビティに樹脂を射出して第1成形品を成形し、第1成形品を第1成形面に貼り付き状態で保持されて両成形型を型開きする。次に、第2成形工程では、第2成形型を、凸状をなす第3成形面を有する第3成形型に交換し、両成形型を型閉じする。このとき、第1成形面に貼り付いた状態で保持されている第1成形品と第3成形面との間には第2キャビティが形成され、この第2キャビティに樹脂を射出して第2成形品を発泡成形することにより第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品を製造する。
【0004】
この製造方法によると、第1成形品に対して第2成形品を射出しているため、特に発泡成形の場合、発泡成形品である第2成形品に凹みなどを生じさせることがなく、複合成形品を製造することができる。これは、発泡成形品である第2成形品に対して第1成形品を射出した場合には、予め発泡成形されている第2成形品に樹脂の射出圧力や熱が加わることによって発泡セルの破壊が生じ、第2成形品の表面が凹んでしまうためであり、このような不具合を未然に回避することができる。このため、発泡成形品である第2成形品は、第1成形品を成形した後に発泡成形することが望ましく、第1成形品を第1成形面に保持して第1成形型と第2成形型を型開きしている。
【特許文献1】特開2000−52377号公報
【特許文献2】特開平7−195429号公報
【特許文献3】特開2001−150483号公報
【特許文献4】特開2001−47465号公報
【特許文献5】特開平9−332336号公報
【特許文献6】特開平6−6127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の製造方法では、第2成形面が凸状をなしているため、第1成形型と第2成形型を型開きする際に、樹脂が収縮することで第1成形品が第2成形面側に貼り付きやすくなり、図11に示すように、本体部1の外周に設けられた外壁部2が第1成形面3から離間する。この状態のまま、第2成形型4を第3成形型5に交換し、第1成形型6と第3成形型5を型閉じすると、図12に示すように、第1成形品1の一部がシワ7になったりあるいは破れが発生したりする。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品の製造方法であって、凹状をなす第1成形面と凸状をなす第2成形面との間で第1成形品を成形する第1成形工程と、第1成形面に保持された第1成形品と第3成形面との間で第2成形品を発泡成形する第2成形工程とを備え、第1成形品は、第1成形面に沿って成形される本体部と、本体部の外周に設けられた外壁部を外周側に折り返した形態をなし、外壁部との間で第1成形面の開口縁部を挟み付ける突起とを備えて構成されるところに特徴を有する。
【0008】
このようにすると、第1成形工程で第1成形品を成形し、第1成形面と第2成形面とを離間させる際に、第1成形面の開口縁部が第1成形品の突起と外壁部との間で挟み付けられる状態となり、第1成形面に第1成形品が保持される。そして、第2成形工程では第1成形面に保持された第1成形品と第3成形型の第3成形面との間で第2成形品を発泡成形することにより複合成形品を製造する。したがって、第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造することができる。また、発泡剤の発泡により複合成形品の厚みを確保することができる。したがって、第2成形品の材料量を低減でき、複合成形品の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1成形品が第1成形面から離間することを防ぐことで第1成形品にシワや破れを発生させることなく複合成形品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図10の図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の車両用内装材(本発明の「複合成形品」の一例)50を成形する成形装置10の一例であって、キャビ型11とコア型12が水平方向に移動可能に設けられている。キャビ型11の上下方向中央には、コア型12型側に突出する態様で第1成形型20が設けられている。この第1成形型20には、凹状をなす第1成形面21が設けられている。一方、コア型12には、上から順番に第2成形型30と第3成形型40とが備えられ、第2成形型30と第3成形型40とは、それぞれ上下方向に移動可能に設けられている。また、第2成形型30には、凸状をなす第2成形面31が形成され、第3成形型40には、第2成形面31よりやや小さめで凸状をなす第3成形面41が形成されている。
【0011】
本実施形態の車両用内装材50は、表皮材(本発明の「第1成形品」の一例)60と基材(本発明の「第2成形品」の一例)70とを一体成形してなる複合成形品である。なお、表皮材60は、例えばTPO樹脂(熱可塑性オレフィン樹脂)などの熱可塑性樹脂である第1の樹脂によって構成されている。また、基材70は、例えばポリプロピレンに発泡剤を添加した第2の樹脂によって発泡成形されている。発泡剤としては、例えば、化学発泡剤あるいは物理発泡剤を使用することができる。化学発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等を使用することができる。物理発泡剤としては、例えば、炭酸ガスや窒素ガス等を使用することができる。
【0012】
第1成形型20は、図1に示すように、2種類の射出装置22A,22Bを備えている。第1射出装置22Aは、表皮材60を構成する第1の樹脂を射出する装置であり、第1成形面21と第2成形面31との間に形成される第1キャビティC1内に溶融した第1の樹脂を供給して表皮材60を成形する。第2射出装置22Bは、基材70を構成する第2の樹脂を射出する装置であり、第1成形面21に貼り付き状態で保持された表皮材60と第3成形面41との間に形成される第2キャビティC2内に溶融した第2の樹脂を供給して基材70を成形する。
【0013】
次に、車両用内装材50の製造方法について説明する。まず、第1成形工程では、図2に示すように、第1成形型20と第2成形型30とを水平方向に並べて配置する。両成形型20,30を水平方向に移動させて型閉じすると、図3に示すように、第1成形面21と第2成形面31との間に第1キャビティC1が形成される。
【0014】
ここで、第1キャビティC1によって成形される表皮材60は、第1成形面21に沿って成形される本体部61と、本体部61の外周に設けられた外壁部61Aを外周側に折り返した形態をなし、外壁部61Aとの間で第1成形面21の開口縁部23を挟み付ける折り返し部62とからなる。さらに、折り返し部62は、外壁部61Aの外縁から外周側へ張り出す張り出し部62Aと、張り出し部62Aの外縁から水平方向に突出する突起62Bとからなる。つまり、第1キャビティC1は、表皮材60となる本体部61を成形する第1成形部C11と、折り返し部62を成形する第2成形部C12とからなる。
【0015】
また、突起62Bの内側面は、張り出し部62Aから水平方向に延びる垂直状に切り立った面とされているため、第1成形面21の開口縁部23に対して確実に引っ掛かるようになっている。なお、突起62Bの内側面は、外壁部61A側に向けてオーバーハング状に形成することにより、第1成形面21の開口縁部23に対する引っ掛かりをさらに強くしてもよい。一方、突起62Bの外側面は、外周側へ向けて緩やかな傾斜面とされているため、表皮材60を第1成形型20から脱型する場合に、突起62Bを脱型しやすくなっている。
【0016】
このような第1キャビティC1に表皮材60を構成する溶融した第1の樹脂を供給すると、図4に示すように、第1キャビティC1に第1の樹脂が充填され、冷却することによって表皮材60が成形される。このとき、第1の樹脂が収縮することで外壁部61Aが第2成形面31側に貼り付こうとするものの、第1成形面21の開口縁部23が突起62Bと外壁部61Aとの間で挟み付けられているため、外壁部61Aが第2成形面31側に貼り付くことが規制される。したがって、図5に示すように、両成形型20,30を型開きしても、外壁部61Aが第1成形面21に貼り付いた状態で保持される。
【0017】
次に、第2成形工程では、図6に示すように、第2成形型30と第3成形型40とをともに上方へ移動させることにより、第1成形型20と第3成形型40とを水平方向に並べて配置する。両成形型20,40を水平方向に移動させて型閉じすると、図7に示すように、第1成形面21に保持された表皮材60と第3成形面41との間に第2キャビティC2が形成される。
【0018】
第2キャビティC2に基材70を構成する発泡剤が添加された溶融した第2の樹脂を供給すると、図8に示すように、第2キャビティC2に第2の樹脂が充填される。この後、両成形型20,40を所定距離寸開させて第2の樹脂を発泡させることにより基材70を発泡成形する。そして、両成形型20,40を型開きしつつエアブローなどで表皮材60を脱型すると、図9に示すように、表皮材60と基材70とが一体に成形される。このとき、折り返し部62は、基材70の外縁よりも外周側に張り出しているため、突起62Bを除去するとともに折り返し部62を基材70の裏面に折り返すことで端部処理を行い、図10に示す車両用内装材50が完成する。
【0019】
以上のように本実施形態では表皮材60の外壁部61Aを外周側に折り返して折り返し部62を設けたから、第1成形工程で表皮材60を成形した際に、第1成形面21の開口縁部23が突起62Bと外壁部61Aとの間で挟み付けられ、外壁部61Aが第2成形面31側に貼り付いて第1成形面21から離間することを防ぐことができる。したがって、第2成形工程で基材70を成形した際に、表皮材60にシワが発生したり、あるいは破れたりすることを防ぐことができる。よって、車両用内装材50の製品品質を向上させることができる。このようにして製造される車両用内装材は、例えばドアトリム、インストルメントパネル、シートバックボード、パーティションボード、コンソールボックス、ピラーガーニッシュ、クォータトリム等に適用することができる。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では複合成形品として車両用内装材50に適用しているものの、本発明によると、車両用内装材50以外の家具、住宅用品、日用品等の成形品に適用してもよい。
【0021】
(2)本実施形態ではキャビ型11とコア型12が水平方向に移動する成形装置10を例示しているものの、本発明によると、キャビ型11とコア型12が上下方向に移動する成形装置としてもよい。
【0022】
(3)本実施形態では突起62Bが張り出し部62Aを介して外壁部61Aに連結されているものの、本発明によると、必ずしも張り出し部62Aを設ける必要はなく、外壁部61Aに突起62Bを直接連結してもよい。その場合には、突起62Bを例えば円弧状に折り返された形状としてもよい。
【0023】
(4)本実施形態では、固定された第1成形型20側で表皮材60を保持していたが、その逆として第1成形型20を可動可能とし、第2成形型30,40を固定した成形装置としてもよい。
【0024】
(5)本実施形態では、第2成形型30と第3成形型40とは別体で構成されているが、一体で構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態における成形装置の一例を示した断面図
【図2】第1成形型と第2成形型を型閉じする前の状態を示した断面図
【図3】第1成形型と第2成形型を型閉じして第1キャビティが形成された状態を示した断面図
【図4】第1キャビティに溶融した第1の樹脂を供給して表皮材を成形した状態を示した断面図
【図5】表皮材を第1成形面に貼り付けたまま第1成形型と第2成形型を型開きした状態を示した断面図
【図6】第1成形型と第3成形型を型閉じする前の状態を示した断面図
【図7】第1成形型と第3成形型を型閉じして第2キャビティが形成された状態を示した断面図
【図8】第2キャビティに溶融した第2の樹脂を供給して基材を成形した状態を示した断面図
【図9】第1成形型と第3成形型を型開きして表皮材と基材とが一体成形されてなる複合成形品を脱型した状態を示した断面図
【図10】表皮材と基材とが一体成形されてなる複合成形品の端部処理をして車両用内装材が完成した状態を示した断面図
【図11】従来において外壁部が第1成形面から離間した状態を示した断面図
【図12】従来において第1成形品にシワが発生した状態で第2成形品が発泡成形された状態を示した断面図
【符号の説明】
【0026】
21…第1成形面
23…第1成形面の開口縁部
31…第2成形面
41…第3成形面
50…車両用内装材(複合成形品)
60…表皮材(第1成形品)
61…本体部
61A…外壁部
62B…突起
70…基材(第2成形品)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品の製造方法であって、
凹状をなす第1成形面と凸状をなす第2成形面との間で前記第1成形品を成形する第1成形工程と、
前記第1成形面に保持された前記第1成形品と第3成形面との間で前記第2成形品を発泡成形する第2成形工程とを備え、
前記第1成形品は、前記第1成形面に沿って成形される本体部と、前記本体部の外周に設けられた外壁部を外周側に折り返した形態をなし、前記外壁部との間で前記第1成形面の開口縁部を挟み付ける突起とを備えて構成されることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項1】
第1成形品と第2成形品とを一体成形してなる複合成形品の製造方法であって、
凹状をなす第1成形面と凸状をなす第2成形面との間で前記第1成形品を成形する第1成形工程と、
前記第1成形面に保持された前記第1成形品と第3成形面との間で前記第2成形品を発泡成形する第2成形工程とを備え、
前記第1成形品は、前記第1成形面に沿って成形される本体部と、前記本体部の外周に設けられた外壁部を外周側に折り返した形態をなし、前記外壁部との間で前記第1成形面の開口縁部を挟み付ける突起とを備えて構成されることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−89465(P2010−89465A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264310(P2008−264310)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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