説明

複合摺動部材及び複合摺動部材の製造方法。

【課題】摺動特性及び耐磨耗性に優れ、周辺治具の損傷、かじり及び異音の発生を抑制することができる複合摺動部材及び複合摺動部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る複合摺動部材は、鋼製の裏金4と、前記裏金4の表面上に形成された、第1の摺動部材3と、前記裏金4の前記第1の摺動部材3と同じ面に形成された、第2の摺動部材2を具備し、前記第1の摺動部材3は前記第2の摺動部材2より摺動特性に優れ、前記第2の摺動部材2は前記第1の摺動部材3より耐摩耗性に優れていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合摺動部材及び複合摺動部材の製造方法に関し、特に本発明は、摺動特性及び耐磨耗性に優れ、周辺治具の損傷、かじり及び異音の発生を抑制することができる複合摺動部材及び複合摺動部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摺動部材に用いられる材料は、それぞれ使用条件によって使い分けられている。例えば、作業機ブッシュ等、高面圧下や土砂にさらされる条件下では、強度が高く耐磨耗性に優れている鉄系摺動材料が用いられている。(例えば特許文献1参照)また、中高速度用の軸受材料に用いる場合には、摺動特性及び軸材との耐焼付き性に優れている銅系摺動材料が用いられている。(例えば特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2003−342700号公報(第22段落)
【特許文献2】特開2001−271129号公報(第17段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来使用されている摺動部材は、1つの種類の材料で形成されていることが多い。そのため、耐磨耗性と摺動特性という相反する特性を同時に持たせることが難しく、そのどちらかが犠牲となっている。例えば、銅系摺動材料は、摺動特性及び軸受との耐焼付き性に優れているため、軽負荷でありかつ高速で潤滑条件が良い状態では、馴染み性に優れた摺動材料として下転輪ローラーやエンジンメタル等に汎用的に活用されている。しかし、銅系摺動材料では強度が低く耐磨耗性に劣るため、作業機ブッシュ等、高面圧下や土砂にさらされ潤滑条件が厳しくなる場合では使用することが難しいという問題がある。
【0005】
そこで、上記のような条件下では、強度が高く耐磨耗性に優れている、鉄系摺動材料が使用されてきた。しかし、鉄系摺動材料は、銅系摺動材料と比較すると摺動特性や軸受との耐焼付き性に劣る。そのため、摩擦係数が高くなり周辺治具の損傷や、かじり及び異音が発生するという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情を考慮なされたもので、その目的は、摺動特性及び耐磨耗性に優れ、周辺治具の損傷、かじり及び異音の発生を抑制することができる複合摺動部材及び複合摺動部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すため、本発明に係る複合摺動部材は、鋼製の裏金と、
前記裏金の表面上に形成された第1の摺動部材と、
前記裏金の表面上に形成された第2の摺動部材と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より摺動特性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より耐摩耗性に優れていることを特徴とする。
【0008】
前記裏金は、円筒状に成形されており、前記第1の摺動部材及び前記第2の摺動部材は、前記裏金の内周面に形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記第1の摺動部材は、前記裏金の中心側に位置し、前記第2の摺動部材は、前記裏金の端部側に位置してもよく、前記第1の摺動部材は前記裏金の片側に形成され、前記第2の摺動部材は前記裏金の他方の片側に形成されていてもよい。
【0010】
前記第1の摺動部材は銅系摺動部材であり、前記第2の摺動部材は鉄系摺動部材であることが好ましい。また、前記銅系摺動部材が高力黄銅材料からなることも可能である。また、前記鉄系摺動部材が鉄系含油摺動材料からなることも可能である。
【0011】
本発明に係る複合摺動部材の製造方法は、円筒状に成形された鋼製の裏金の内周面の中心側に、第1の摺動部材を形成する工程と、
前記裏金の内周面の端部側に、第2の摺動部材を形成する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より摺動特性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より耐摩耗性に優れていることを特徴とする。
【0012】
この複合摺動部材の製造方法において、前記第1の摺動部材を形成する工程は、圧入、嵌合、接着、ろう付け、バンド止め、及びクリンチ結合のいずれかの方法により前記第1の摺動部材を配置する工程であり、前記第2の摺動部材を形成する工程は、圧入、嵌合、接着、ろう付け、バンド止め、及びクリンチ結合のいずれかの方法により前記第2の摺動部材を配置する工程であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る他の複合摺動部材の製造方法は、円筒状に成形された鋼製の裏金の内周面の片側に、第1の摺動部材を焼結接合する工程と、
前記裏金の内周面の他方の片側に、第2の摺動部材を焼結接合する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より耐摩耗性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より摺動特性に優れていることを特徴とする。
【0014】
この複合摺動部材の製造方法において、前記第2の摺動部材を焼結接合する工程後に前記第1及び第2の摺動部材を急冷する工程をさらに具備し、前記第1の摺動部材は、鉄系摺動部材であり、前記第2の摺動部材は銅系摺動部材であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る他の複合摺動部材の製造方法は、板状の鋼製の裏金の表面上に第1の摺動部材を焼結接合する工程と、
前記裏金の前記第1の摺動部材と同じ面に第2の摺動部材を焼結接合する工程と、
前記裏金を前記第1及び第2の摺動部材が内周面に位置するように円筒状に成形し、端面同士を接合する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より耐摩耗性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より摺動特性に優れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、摺動特性及び耐磨耗性に優れ、周辺治具の損傷や、かじり及び異音の発生を抑制することができる複合摺動部材及び複合摺動部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る第1の実施形態を説明する。第1の実施形態は、円筒状に成形された鉄鋼製の裏金の内周面に、予め形成した複数の摺動部材を圧入することにより、複合摺動部材を製造する方法である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る製造方法によって製造した複合摺動部材1aを長手方向で切断した断面図である。まず、円筒状に成形された鋼製の裏金4を用意し、所定の長さに切断する。みがき鋼の場合は、脱脂のみで使用可能であるが、酸化皮膜が形成されている場合には、研磨によりその酸化被膜を除去した後、脱脂する。なお、裏金4の寸法は、例えば外径φ85mm、内径φ65mm、長さ70mmとする。
【0019】
次いで、裏金4の内周面に圧入する円筒状の第1の摺動部材3及び第2の摺動部材2を用意する。このとき、摺動部材の外径と裏金4の内径は同一とする。また、第1の摺動部材3は、例えば銅系摺動部材であり、第2の摺動部材2は、例えば鉄系摺動部材2及びである。また、第1の摺動部材3は、例えば高力黄銅材料からなり、第2の摺動部材2は、鉄系含油焼結材料からなる。ここで、鉄系含油材料はへたりがなく、自己潤滑特性を有している。また、高力黄銅材料は、Cu−Zn合金にアルミニウム、鉄、マンガンを添加したもので、耐焼付き性と優れた潤滑特性を備えている。
【0020】
次いで、裏金4の内周面の中心側に第1の摺動部材3を圧入し、裏金4の内周面の両端部側に第2の摺動部材2を圧入する。よって、内周面に2種類の摺動部材を有する複合摺動部材1aが製造される。
【0021】
以上、第1の実施形態によれば、複合摺動部材1aの外部から土砂が浸入しやすい両端部側に強度が高く耐磨耗性に優れた第2の摺動部材2を配置し、耐磨耗性を確保している。また、土砂の浸入し難い中心側には摺動特性に優れた第1の摺動部材3を配置し、摺動特性を確保している。よって、1つの摺動部材に、異なる摺動特性を有する摺動部材を組み合わせることにより、耐磨耗性と摺動特性という相反する特性を同時に持たせる事ができる。これにより、複合摺動部材1aを後述する作業機ブッシュ8等の軸受に使用しても、強度が高く耐磨耗性に優れ、かつ摺動特性及び軸受との耐焼付き性にも優れているため、周辺治具の損傷や、かじり及び異音の発生を抑制することができる
【0022】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、多種類の摺動部材を組み合わせることが可能である。例えば、第1の摺動部材3のさらに内側に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)等を母材とする樹脂系摺動材料、又はテフロン(登録商標)を有する第3の摺動部材として圧入する。これにより、複合摺動部材の内部にシール機能を具備することもできる。
【0023】
また、複合摺動部材1aを後述する作業機ブッシュ8等の軸受として使用した場合、ピンの変形により、軸受側の端面部分にへたり及び摩耗が生じやすくなる。そして、このへたり及び変形が極度に進行すると、ガタつきの原因となる。この様な場合には、耐磨耗性に優れ、耐焼付き性に優れた耐熱合金系の摺動部材を組み合せることも可能である。この場合、裏金4の内周面の中心部分に銅系摺動材料からなる第1の摺動部材3を圧入し、外側に鉄系摺動材料からなる第2の摺動部材2を圧入する。そして、第2摺動部材よりもさらに外側に位置する裏金4の両端部側には耐磨耗性に優れた耐熱合金系部材の第3の摺動部材を圧入することが好ましい。
【0024】
次に、図2,3,4を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。図2(a)〜(g)は、第2の実施形態に係る複合摺動部材の製造方法を説明するための製造工程図である。図3(a)は、本実施形態によって製造された複合摺動部材1bを第1の摺動部材5側から見た正面図である。図3(b)は、複合摺動部材1bを長手方向から切断した断面図である。
【0025】
第2の実施形態は、異なる性質を有する複数の摺動部材を円筒状の裏金4の内周面に接合焼結し、複合摺動部材を製造する方法である。実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。まず、円筒状に成形された鉄鋼製の裏金4を用意し、所定の長さに切断する。裏金4の前処理及び寸法は、第1の実施形態と同様である。
【0026】
次いで、裏金4の内周面の一方の端面側に耐磨耗性に優れた第1の摺動部材5を形成する。第1の摺動部材5は例えば、鉄系摺動部材である。形成方法の詳細は、まず、図2(a)に示すように第1の摺動部材5を形成する第1の金属混合粉5aを秤量する。この第1の金属混合粉5aの材料は、例えば鉄成分としてアトメル300(神戸製鋼製)を85%、銅成分としてCE25(福田金属箔粉工業製)を14%、黒鉛成分としてKS6(ロンザ製)を1%とする。尚、各成分は重量%である。これらを図2(b)に示すように、V型混合機にて30分間混合する。そして、図2(c)に示すように、第1の金属混合粉5aをプレスによって、例えば外径φ64.5mm、内径φ60mm、高さ35mmの第1の材料成形体5bに成形する。次いで、図2(e)に示すように、裏金4の内周面の片側に第1の材料成形体5bをセットする。そして、図2(f)に示すように、該裏金4を、1150℃で1時間保持して焼結を行う。よって、図2(g)に示すように、第1の摺動部材5が裏金4の内周面の片側に焼結接合される。このとき、第1の摺動部材5の組成の状態はオーステナイト状態である。
【0027】
次いで、裏金4の内周面の他方の端面側に摺動特性に優れた第2の摺動部材6を形成する。第2の摺動部材6は例えば、銅系摺動部材である。形成方法の詳細は、まず、第2の摺動部材6を形成する第2の金属混合粉を秤量する(図示せず)。この第2の金属混合粉の材料は、例えば銅成分としてCE25(福田金属箔粉工業製)を89.5%、錫成分としてSn−At(福田金属箔粉工業製)を10%、黒鉛成分としてKS6(ロンザ製)0.5%とする。尚、各成分は重量%である。これらをV型混合機にて30分間混合する。そして、第2の金属混合粉をプレスにより、例えば外径φ64.5mm、内径φ60mm、高さ35mmに第2の材料成形体に成形する(図示せず)。次いで、裏金4の内周面の第1の摺動部材5を接合した片側を除いた他方の片側に第2の材料成形体をセットする。そして、該裏金4を、950℃で1時間保持して焼結を行う。その後、焼結炉内で複合摺動部材1bを急冷する。よって、図3に示すように、裏金4の内周面の片側には第1の摺動部材5が接合され、他方の片側には第2の摺動部材6が接合される。また、裏金4の中心部には接合部7が形成される。接合部7は、焼結時に第1の摺動部材5及び第2の摺動部材6が互いに拡散して形成されたものである。これにより、第1の実施形態と同様に内周面に2種類の摺動部材を有する複合摺動部材1bが製造される。
【0028】
図4(a)及び(b)は、本実施形態に係る方法により製造した複合摺動部材1bの内周面の写真である。図4(c)は、第2の摺動部材6である銅系摺動部材の焼結部分の写真であり、図4(d)は、第1の摺動部材5である鉄系摺動部材の焼結部分と接合部7の写真である。
【0029】
以上、第2の実施形態よれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2の摺動部材6の焼結接合後に急冷することにより、第1の摺動部材5に対して焼入れ処理が行われる。これにより、第1の摺動部材5にマルテンサイト組織が形成され強度が増し、耐磨耗性がより向上する。そして、油圧ショベルにおけるバケット連結装置14の作業機ブッシュ8のような、高面圧下であり土砂にさらされ潤滑条件が厳しくなる場所に用いても、周辺治具の損傷や、かじり及び異音の発生を抑制することができる。
【0030】
図5(a)は、上記した方法により製造された複合摺動部材1bを油圧ショベルにおけるバケット連結装置14の作業機ブッシュ8に用いたときのバケット連結装置14の概略構成を説明する図である。バケット連結装置14は、バケット10と、このバケット10に形成されたブラケット10a,ブラケット10aに支持される作業機連結ピン11およびその作業機連結ピン11に外嵌される作業機ブッシュ8,作業機ブッシュ8を介して配されるアーム9とを、互いに回転可能に連結している。このバケット連結装置14において、作業機ブッシュ8はアーム9の先端部に圧入されている。また、作業機連結ピン11は外側のブラケット10aに溶接されたストッパ13と作業機連結ピン11を貫通するピン固定用通しボルト12によって、ブラケット10aに固定されている。
【0031】
また、図5(b)は、図5(a)のバケット連結装置の一部を構成する軸受の構造の概略断面図である。外部から土砂が浸入し易い片側には、耐磨耗性に優れた鉄系摺動部材からなる第1の摺動部材5が接合され、他方には摺動特性に優れた銅系摺動材料からなる第2の摺動部材6が接合されている。
【0032】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、異なる性質を有する複数の摺動部材を板状の裏金の表面に焼結接合した後に、裏金を丸曲げ加工し、端面部を接合して複合摺動部材を製造する方法である。実施形態において第2の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
まず、表面が平らな鋼板を用意し、所定の長さに切断する。みがき鋼板の場合は、脱脂のみで使用可能であるが、酸化皮膜が形成されている場合には、研磨によりその酸化被膜を除去した後、脱脂する。次いで、鋼板の表面の片側に耐摩耗性に優れた第1の摺動部材を形成する。第1の摺動部材は、例えば鉄系摺動部材である。まず、第1の金属混合粉を鋼板の表面の片側に散布する。第1の金属混合粉の成分は、第2の実施形態と同様である。その後、所定の焼結温度及び時間で保持し焼結を行い、第1の摺動部材を鋼板に焼結接合させる。
【0034】
次いで、鋼板の他方の片側に摺動特性に優れた第2の摺動部材を形成する。第2の摺動部材は例えば、銅系摺動部材である。まず、第1の摺動部材を接合した片側を除いた他方の片側に第2の金属混合粉を散布する。第2の金属混合粉は第2の実施形態と同様である。その後、所定の焼結温度及び時間で保持し焼結を行い、第2の摺動部材を焼結接合させる。
【0035】
次いで、第1及び第2の摺動部材が焼結接合している鋼板に熱間圧延処理を行う。次いで、圧延処理した鋼板を第1及び第2の摺動部材が焼結接合されている面が内周面となるように丸曲げ加工を施し、円筒状に成形する。そして、鋼板の端面同士を接合する。これにより、第1及び第2の実施形態と同様に内周面に2種類の摺動部材を有する複合摺動部材が製造される。
【0036】
以上、第3の実施形態よれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る方法よれば、第1の実施形態と同様に耐摩耗性に優れた摺動部材を両端側に、摺動特性に優れた摺動部材を両端部側に配置することが可能である。
【0037】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。複数の摺動部材を裏金の内周面に一体化させる方法として、圧入及び焼結接合法を示したが、これらに限らず、嵌合、接着、ろう付け、バンド止め、及びクリンチ結合等を用いてもよい。
【0038】
また、摺動材料の一例として、鉄系摺動材料、銅系摺動材料、樹脂系摺動材料及び耐熱合金系摺動材料を示したが、SnとPbの合金であるホワイトメタルや、耐荷重性に優れているSn−Sb−Cu系合金や、焼結合金等を用いてもよい。この場合、隣りあう2つの摺動部材において、摺動部材の中心側の摺動部材よりも端部側の摺動部材のほうが耐磨耗性に優れており、又は摺動部材の端部側の摺動部材よりも中心側の摺動部材ほうが摺動特性に優れていることが好ましい。また、鉄系摺動部材において、摺動面を浸炭又は高周波焼入れ処理を施し、耐磨耗性を向上させてもよい。
【0039】
また、本発明における、複合摺動部材を用いた一例として、油圧ショベルにおけるバケット連結装置の作業機ブッシュに用いた例を示したが、油圧ショベルにおけるバケット連結装置に限られず、その他の軸受装置、種々のブッシュ等に利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態に係る製造方法によって製造した複合摺動部材1aを長手方向で切断した断面図。
【図2】第2の実施形態に係る複合摺動部材の製造方法を説明するための製造工程図。
【図3】(a)は、第2の形態によって製造された複合摺動部材1bを第1の摺動部材5側から見た正面図。(b)は、複合摺動部材1bを長手方向で切断した断面図。
【図4】(a)及び(b)は、複合摺動部材1bの内周面の写真。(c)は、銅系摺動部材の焼結接合部分の写真。(d)は、鉄系摺動部材の焼結接合部分と接合部7の写真。
【図5】(a)は、複合摺動部材1bを油圧ショベルにおけるバケット連結装置14の作業機ブッシュ8に用いたときのバケット連結装置14の概略構成を説明する図。(b)は、(a)のバケット連結装置の一部を構成する軸受の構造の概略断面図。
【符号の説明】
【0041】
1a、1b・・・複合摺動部材、2,5・・・第1の摺動部材、3,6・・・第2の摺動部材、4・・・裏金、5a・・・第1の金属混合粉、5b・・・第1の材料成形体、7・・・接合部、8・・・作業機ブッシュ、9・・・アーム、10・・・バケット、10a・・・ブラケット、11・・・作業機連結ピン、12・・・ピン固定用通しボルト、13・・・ストッパ、14・・・バケット連結装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の裏金と、
前記裏金の表面上に形成された第1の摺動部材と、
前記裏金の表面上に形成された第2の摺動部材と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より摺動特性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より耐摩耗性に優れていることを特徴とする複合摺動部材。
【請求項2】
前記裏金は、円筒状に成形されており、前記第1の摺動部材及び前記第2の摺動部材は、前記裏金の内周面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の複合摺動部材。
【請求項3】
前記第1の摺動部材は、前記裏金の中心側に位置し、前記第2の摺動部材は、前記裏金の端部側に位置することを特徴とする請求項2に記載の複合摺動部材。
【請求項4】
前記第1の摺動部材は前記裏金の片側に形成され、前記第2の摺動部材は前記裏金の他方の片側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合摺動部材。
【請求項5】
前記第1の摺動部材は銅系摺動部材であり、前記第2の摺動部材は鉄系摺動部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の複合摺動部材。
【請求項6】
前記銅系摺動部材が高力黄銅材料からなることを特徴とする請求項5に記載の複合摺動部材。
【請求項7】
前記鉄系摺動部材が鉄系含油摺動材料からなることを特徴とする請求項5又は6に記載の複合摺動部材。
【請求項8】
円筒状に成形された鋼製の裏金の内周面の中心側に、第1の摺動部材を形成する工程と、
前記裏金の内周面の端部側に、第2の摺動部材を形成する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より摺動特性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より耐摩耗性に優れていることを特徴とする複合摺動部材の製造方法。
【請求項9】
前記第1の摺動部材を形成する工程は、圧入、嵌合、接着、ろう付け、バンド止め、及びクリンチ結合のいずれかの方法により前記第1の摺動部材を配置する工程であり、前記第2の摺動部材を形成する工程は、圧入、嵌合、接着、ろう付け、バンド止め、及びクリンチ結合のいずれかの方法により前記第2の摺動部材を配置する工程であることを特徴とする請求項8に記載の複合摺動部材の製造方法。
【請求項10】
円筒状に成形された鋼製の裏金の内周面の片側に、第1の摺動部材を焼結接合する工程と、
前記裏金の内周面の他方の片側に、第2の摺動部材を焼結接合する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より耐摩耗性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より摺動特性に優れていることを特徴とする複合摺動部材の製造方法。
【請求項11】
前記第2の摺動部材を焼結接合する工程後に前記第1及び第2の摺動部材を急冷する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は、鉄系摺動部材であり、前記第2の摺動部材は銅系摺動部材であることを特徴とする請求項10に記載の複合摺動部材の製造方法。
【請求項12】
板状の鋼製の裏金の表面上に第1の摺動部材を焼結接合する工程と、
前記裏金の表面上に第2の摺動部材を焼結接合する工程と、
前記第1及び第2の摺動部材が内周面に位置するように前記裏金を円筒状に成形し、端面同士を接合する工程と、
を具備し、
前記第1の摺動部材は前記第2の摺動部材より耐摩耗性に優れ、前記第2の摺動部材は前記第1の摺動部材より摺動特性に優れていることを特徴とする複合摺動部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−333185(P2007−333185A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168892(P2006−168892)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】