説明

複合機

【課題】不具合の発生した基板を通知し、その基板の動作を停止するとともに、他の正常に動作する機能を活用して、利用者の利便性を向上させる複合機を提供する。
【解決手段】この複合機は、装置ブロックを構成する電子回路基板に温度検出装置を設け、該温度検出装置が所定の異常温度を検出した電子回路基板で構成される装置ブロックの動作を停止し、1つ以上の装置ブロックが停止した場合に動作を停止する動作モードを装置ブロックと対応させて記憶したルールテーブルを有し、複数の温度検出装置で検出した温度が所定の異常温度になった電子回路基板の属する装置ブロックを特定し、該特定された装置ブロックの動作を停止すると共に、該特定された装置ブロックとルールテーブルに基づいて動作を停止する動作モードを特定して、該特定された動作モードを停止し、停止した装置ブロックと停止した動作モードとを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の動作モードを有する複合機において、搭載した電子回路基板の保護を図る技術である。
【背景技術】
【0002】
各種装置には様々な電子回路基板が組み込まれて使用されているが、装置内の温度が高温になったときには、組み込まれている電子回路基板の温度も高温になる場合がある。
このように電子回路基板の温度が高温になると、電子回路基板上に実装される半導体素子等が動作不良、最悪の場合には破損してしまう場合がある。
【0003】
特許文献1の温度検出装置は、電子回路基板の表面の全域にわたって、1本の導体をつづら折り状に折り曲げて張り巡らし、この導体の抵抗値をモニタリングすることにより、この抵抗値の急激な変化を検知して、過熱状態の発生を検出している。
これにより、各種装置に組み込まれた電子回路基板それぞれの温度をリアルタイムに監視することが可能となっている。
【0004】
また、特許文献2の基板管理装置は、監視対象である電子回路基板上に、温度上昇に伴い輝度がリニアに減少する発光素子であるLEDを設置しておき、このLEDの輝度をフォトセンサにより検出して、検出された輝度が予め設定された値以下の場合には、監視対象である電子回路基板の温度が許容温度を超えたと判定し、検出されたLEDの輝度がさらに低い値以下の場合には、動作不良であると判定する。
これにより、温度センサを用いることなく電子回路基板の温度異常等の異常状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−287465号公報
【特許文献2】特開2007−309716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、各種装置内の電子回路基板が設定された許容温度以上になった場合、装置全体の動作を止めてしまったため、利用者からすれば、どこに問題があるのか特定できず、サポートセンタ等へ装置の不具合の詳細を伝えることが困難であった。
【0007】
さらに、利用者は、サービスマンが装置の修理を行うまで、異常温度となった電子回路基板に依存しない他の正常な電子回路基板のみを用いる動作さえも利用することができず、利用者の利便性を損なっていた。
【0008】
一方、ある部分が異常温度となったが、全体の動作を止めずに正常動作する機能のみを使用した場合、異常部分からの影響で電子回路素子を破壊してしまう恐れもあった。
【0009】
本発明は、上述の実情を考慮してなされたものであって、不具合の発生した基板を通知し、その基板の動作を停止することによって、影響を他の基板へ拡大させない複合機を提供することを目的とする。
さらに、正常に動作する機能を活用して、利用者の利便性を向上させる複合機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の複合機の構成は、複数の装置ブロックを備え、複数の動作モードで動作する複合機において、前記装置ブロックを構成する電子回路基板に温度検出装置を設け、該温度検出装置が所定の異常温度を検出した電子回路基板で構成される前記装置ブロックの動作を停止し、1つ以上の装置ブロックが停止した場合に動作を停止する動作モードを前記装置ブロックと対応させて記憶したルールテーブルを有し、前記複数の温度検出装置で検出した温度が所定の異常温度になった電子回路基板の属する前記装置ブロックを特定し、該特定された装置ブロックの動作を停止すると共に、該特定された装置ブロックと前記ルールテーブルに基づいて動作を停止する動作モードを特定して、該特定された動作モードを停止し、前記停止した装置ブロックと前記停止した動作モードとを表示する。
【0011】
例えば、前記ルールテーブルには、次のような対応を記憶する。
ネットワーク機能が動作する前記装置ブロックが停止したときに、前記動作を停止する動作モードとして、前記ネットワーク機能を含んだ機能を記憶する。
また、印刷機能が動作する前記装置ブロックが停止したときに、前記動作を停止する動作モードとして、前記印刷機能を含んだ機能を記憶する。
【0012】
前記所定の異常温度を、前記電子回路基板それぞれが動作不良になる予め設定された温度としてもよい。
また、上記のようにルールを設定してあっても、前記複数の温度検出装置が1つでも電子回路基板の動作不良を引き起こす温度を検出した場合には、すべての動作を停止するとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板毎に備えた温度検出機構により温度異常を検出した場合、この温度異常を検出した基板を通知するようにしたので、不具合箇所の特定が容易になり、サービスマンの作業性の向上にも貢献することが可能となる。
【0014】
さらに、複数の動作モードを有する複合機において、複合機全体の動作を止めるのではなく、温度異常の基板の動作のみを止めるとともに、その他正常温度の基板で動作できる動作モードを利用できるようにしたので、他の基板への影響を拡大させずに、且つ、利用者の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用される従来の複合機の構成を示すブロック図である。
【図2】温度検出機構を備える電子回路基板の一例を示す図である。
【図3】異常温度を判定する閾値を説明する図である。
【図4】温度異常を検出したときの動作制御を説明するための図である。
【図5】基板の温度が異常の場合に動作モードを選択するためのルールの例である。
【図6】電子回路基板の異常温度を監視する処理を示すフローチャートである。
【図7】基板の温度が異常の時に表示する表示画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の複合機に係る好適な実施形態について説明する。
本発明を適用する複合機は、複数の動作モードを有しており、この複数の機能を処理する電子回路基板を備えているものとする。以下では、動作モードとしては、コピー機能、プリンタ機能、ファクシミリ送受信機能、イメージ送受信機能、ドキュメントファイリング機能を備え、電子回路基板としては、表示部、プリント部、ネットワーク部を備えるものとして説明する。しかし、他の動作モードや他の電子回路基板を備える電子機器であっても容易に適用できるものである。
【0017】
図1は、本発明が適用される従来の複合機の構成を示すブロック図である。同図において、複合機1の電子回路基板は、印刷情報等を表示する表示部3、印刷を行うプリント部(印刷部)4、外部の装置と通信するネットワーク部5、当該複合機1の全体を制御する制御部2から構成されている。
また、ネットワーク部5の機能としては、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して印刷要求に応じて印刷するプリンタ機能、公衆電話回線を介したファクシミリ送受信機能、LAN等のネットワークを介して画像データの送受信するためのイメージ送受信機能を有している。
【0018】
図2は、電子回路基板における温度検出機構を説明するための図である。同図の電子回路基板は、上述の表示部3、プリント部4、ネットワーク部5等の基板であり、それぞれの機能を実現する電子回路部品を搭載している。
図2に示すように、電子回路基板10には、その表面の全域にわたって、1本の導体11が所謂つづら折り状に折り曲げられて張り巡らされている。
【0019】
電子回路基板10の何れかの部位において過熱状態が生じた場合には、それによって導体11の温度が通常時の温度から異常に上昇し、それに応じて導体11の抵抗値も急激に変化するので、導体11の抵抗値をモニタリングすることにより、この抵抗値の急激な変化を検知することができる。
【0020】
ここで、導体11の抵抗値から電子回路基板10の温度を検出する方法は、抵抗法と称され広く知られている。各記号を次のように定めると、電子回路基板10の周囲の温度Tは、検知した導体11の抵抗値Rから(式1)で求められる。
T=電子回路基板の周囲の温度
R=周囲温度Tにおける導体の抵抗値
To=予め任意に決められた周囲温度
Ro=周囲温度Toにおける導体の抵抗値
α=周囲温度Toでの導体抵抗温度係数
T=To+{R/Ro−1}/α ・・・(式1)
【0021】
この異常温度は、各電子回路基板によって異なるため、それぞれの電子回路基板に対して、下に示すような各温度境界を示す閾値を予め設定しておく。
【0022】
(1)温度T<閾値1であれば、温度Tは通常動作可能な温度である。
(2)閾値1≦温度T<閾値2であれば、温度Tは温度異常である。
(3)温度T≧閾値2であれば、温度Tは動作不良を引き起こす温度である。
【0023】
例えば、図3において、基板1は、温度Tが100℃以下であれば正常動作し、100℃から130℃の間のときは温度異常としてその基板1への電力の供給を停止する等をして回路の動作を停止させる。さらに、温度Tが130℃を超えると動作不良を起こして、回路素子が破壊されてしまい、周囲の回路基板の破壊につながる可能性もでてくる。
【0024】
本発明では、図4に示すように、各電子回路基板10と制御部2とを接続し、制御部2は各電子回路基板10からそれぞれ抵抗値Rを受け取り、受け取った各抵抗値Rに基づいて各電子回路基板10の温度Tを算出して、上記の閾値とにより電子回路基板10における何れかの部位が過熱状態になっているか否かを正確に判断することが可能である。
【0025】
上述の温度検出機構では、導体の抵抗値によって算出した温度に基づいて温度異常や動作不良の温度を判断しているが、温度異常や動作不良となる抵抗値そのものを閾値として設定してもよい。また、温度検出機構が温度を計測するものであっても構わない。
【0026】
次に、本実施形態における制御部2の温度監視処理について説明する。
まず、本実施形態においては、電子回路基板毎の異常温度および動作不良を引き起こす温度閾値を図3のように予め定めておき、複合機1が備えるメモリへ記憶しておく。
【0027】
さらに、図5に示すように電子回路基板の温度が異常の場合に複合機の動作モードを選択するためのルールを予め定めておき、複合機1が備えるメモリへ記憶しておく。
【0028】
図5に示したルールは、異常温度となった基板の組み合わせに対して、動作可能な動作モード(または、動作できなくなる動作モード)の組み合わせをデシジョンテーブルの形式で表現したものである。この図5の場合、3つの基板(表示部、プリント部、ネットワーク部)と7つの動作モード(コピー機能、プリンタ機能、イメージ送受信機能、ファクシミリ送受信機能、ドキュメントファイリング機能)がある。
このデシジョンテーブルには、正常動作基板(○印)と温度異常基板(×印)の7つの組み合わせ(7つの異常態様と呼ぶ)それぞれに対して、動作可能な動作モード(○印)と停止動作モード(×印)の組み合わせが設定されている。
【0029】
例えば、図5の異常態様3は、プリント部の回路基板のみが異常温度になった場合、このプリント部の基板の動作を停止させ、さらに、プリントが必要のない機能、例えば、イメージ送信機能、ファクシミリ送信機能およびドキュメントファイリング機能のみを動作させることを意味している。
【0030】
図6は、複合機動作中の電子回路基板の異常温度を監視する処理を示すフローチャートである。
まず、各電子回路基板から温度情報(抵抗値)を取得して、各電子回路基板毎の(式1)によりそれぞれ基板の周辺温度Tに変換し、図3のように設定された閾値を参照して各基板が異常温度になったかどうかを判断する(ステップS1)。
【0031】
異常温度以上になった電子回路基板がなければ(ステップS1のNO)、各機能を通常動作で実行させる。
一方、異常温度以上になった電子回路基板があった場合(ステップS1のYES)、先に算出した電子回路基板の周辺の温度が異常温度であった基板を識別する(ステップS2)。
【0032】
図5に示したルールを参照して、ステップS2で識別した異常温度の基板の組み合わせに応じた動作基板と停止基板および動作を停止する動作モードを決定する(ステップS3)。
例えば、異常態様1のネットワーク部の基板のみが異常温度であれば、動作基板は表示部とプリント部の基板であり、停止基板はネットワーク部の基板である。また、動作モードは、コピー機能とドキュメントファイリング機能であり、停止する動作モードはプリンタ機能、イメージ送受信機能、ファクシミリ送受信機能である。
【0033】
次に、ステップS4で決定した停止基板については、電力の供給を停止する等をして回路の動作を停止させ、動作モードについてもステップS4で決定した動作モードのみを動作をさせる(ステップS4)。
【0034】
次に、表示部の基板を動作させる場合(ステップS5のYES)、動作可能な機能を通常動作で実行させるとともに、異常温度となった基板と動作・非動作モードを複合機1の表示部に表示して、ステップS1に戻る。
一方、表示部の基板を動作させない場合(ステップS5のNO)、動作可能な機能のみを動作させてステップS1に戻る。
【0035】
上記の表示部に表示される内容は、例えば、図7に示すように、異常温度となった基板の名称、動作可能な動作モードと停止した動作モードの名称を表示する。
さらに、複合機1におけるすべての動作モード名を一覧表示させて、その中で動作できない動作モード名と、動作できる動作モード名とは異なる表示を行って、利用者にわかりやすく表示するようにしてもよい。異なる表示形態としては、例えば、網掛け表示、輝度を下げた表示、あるいは色を変えた表示等がある。
【0036】
例えば、図7では、異常温度になった基板は、ネットワーク部の基板であり、使用できない動作モードは、プリンタ、イメージ送受信、ファクシミリ送受信の各機能であり、利用できる動作モードはコピー機能およびドキュメントファイリング機能であることが分かる。ここで、使用できない機能と利用できる機能とが異なる表示形態でとなっていることからより一層分かりやすくなっている。
【0037】
また、表示部の基板を動作させないときには、ファクシミリ送信、メール送信、LED表示など動作させる機能を使って異常温度のあった基板や利用できる動作モードを知らせるようにしてもよい。
【0038】
上記の実施形態では、電子回路基板の周辺温度が閾値1以上の基板の停止や動作モードの動作停止を行っていたが、電子回路素子が破壊されると想定される閾値2以上の周辺温度の基板の停止や動作モードの動作停止を行うようにしてもよい。
あるいは、周辺温度が閾値2を超える基板が1つでもあれば、装置を停止させる(即ち、全体の基板を動作停止とし、すべての動作モードを停止する)ようにしても構わない。
【0039】
本実施形態によれば、基板毎に備えた温度検出機構により温度異常を検出した場合、この温度異常を検出した基板を通知するようにしたので、不具合箇所の特定が容易になり、サービスマンの作業性の向上にも貢献することが可能となる。
【0040】
さらに、複数の動作モードを有する複合機において、複合機全体の動作を止めるのではなく、温度異常の基板の動作のみを止めるとともに、その他正常温度の基板で動作できる動作モードを利用できるようにしたので、他の基板への影響を拡大させずに、且つ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0041】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形、修正が可能であるのは勿論である。例えば、複数の動作モードを動作させる複数の基板を有する携帯端末、パソコン、テレビ等の電子機器にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…複合機、2…制御部、3…表示部、4…プリント部、5…ネットワーク部、10…電子回路基板、11…導体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装置ブロックを備え、複数の動作モードで動作する複合機において、
前記装置ブロックを構成する電子回路基板に温度検出装置を設け、該温度検出装置が所定の異常温度を検出した電子回路基板で構成される前記装置ブロックの動作を停止し、1つ以上の装置ブロックが停止した場合に動作を停止する動作モードを前記装置ブロックと対応させて記憶したルールテーブルを有し、
前記複数の温度検出装置で検出した温度が所定の異常温度になった電子回路基板の属する前記装置ブロックを特定し、該特定された装置ブロックの動作を停止すると共に、該特定された装置ブロックと前記ルールテーブルに基づいて動作を停止する動作モードを特定して、該特定された動作モードを停止し、前記停止した装置ブロックと前記停止した動作モードとを表示することを特徴とする複合機。
【請求項2】
前記ルールテーブルには、ネットワーク機能が動作する前記装置ブロックが停止したときに、前記動作を停止する動作モードとして、前記ネットワーク機能を含んだ機能を記憶することを特徴とする請求項1に記載の複合機。
【請求項3】
前記ルールテーブルには、印刷機能が動作する前記装置ブロックが停止したときに、前記動作を停止する動作モードとして、前記印刷機能を含んだ機能を記憶することを特徴とする請求項1に記載の複合機。
【請求項4】
前記所定の異常温度は、前記電子回路基板それぞれが動作不良になる予め設定された温度であることを特徴とする請求項1に記載の複合機。
【請求項5】
前記複数の温度検出装置が1つでも電子回路基板の動作不良を引き起こす温度を検出した場合には、すべての動作を停止することを特徴とする請求項1に記載の複合機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−212777(P2010−212777A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53792(P2009−53792)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】